説明

画像表示装置

【課題】保護部を有する画像表示装置において、偏光板を構成する光学フィルム上に設けられた機能性層と、光硬化型樹脂(樹脂硬化層)との密着性を十分に改良することができ、更には、高コントラスト及び優れた視認性が両立した、優れた画像表示装置を提供する。
【解決手段】保護部と、フィルム基材11上に機能性層12を有する光学フィルム10と偏光膜13とがこの順で積層された偏光板1、との間に樹脂硬化層を有する画像表示装置において、該機能性層12が突起形状16を有し、該突起形状16が不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置されており、機能性層12の算術平均粗さRaが25〜300nm、及び内部散乱に起因するヘイズが0.0〜1.0%であって、かつ該樹脂硬化層の25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保護部を有する画像表示装置としては、例えば図1に示すような液晶表示装置が知られている。
【0003】
この液晶表示装置101は、液晶表示パネル102上に、例えば、ガラスやプラスチックスからなる透明な保護部103を有している。この場合、液晶表示パネル102の最表面に配置される偏光板1を保護するため、保護部103との間にスペーサー90を介在させることによって液晶表示パネル102と保護部103との間に空隙105が存在する。しかし、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105の存在により、光散乱がおき、それに起因してコントラストや輝度が低下し、また空隙105の存在はパネルの薄型化の妨げとなっている。
【0004】
このような問題に鑑み、液晶表示パネルの最表面に配置される偏光板と保護部との間の空隙に光硬化型樹脂を充填することが知られている。また、液晶表示パネル等の画像表示装置のコントラストを向上させること等を目的に、前記保護部の外周縁に沿って所定の幅で枠状の遮光部が設けられている。前記遮光部は、液晶表示パネル周辺部の不要光を遮断する機能も有し、光漏れによる表示品位の低下を防止する役割も有する。
【0005】
しかしながら、保護パネルに遮光部を設けた場合、液晶表示パネル等の画像表示装置の最表面に配置される偏光板と保護部の間に充填された光硬化型樹脂(樹脂硬化層)に十分な光が到達せず、硬化の妨げになるという問題が発生する。樹脂の硬化が不十分であると、画像表示装置の品質を大きく損なうことになり、信頼性低下を招くおそれがあった。このような空隙充填剤である光硬化型樹脂(樹脂硬化層)の硬化不良に対する改良技術としては、例えば特許文献1及び2に開示されている。
【0006】
前記技術は、貯蔵弾性率及び光透過率が特定範囲の光硬化型樹脂を用いることで改良を図っている。
【0007】
一方、偏光板は通常偏光膜の両面に光学フィルムを貼合した構成を有しているが、光学フィルムには種々の機能性層を設ける場合がある。機能性層はハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、λ/4板、赤外線遮蔽板、電磁波遮蔽板等があり、目的に応じて選択されるが、例えばハードコート層、反射防止層などが一般的である。
【0008】
本発明者らの検討によれば、確かに前記技術により、空隙充填剤である光硬化型樹脂(樹脂硬化層)の硬化不良は改善されるものの、上記偏光板を構成する光学フィルム上に設けられた機能性層と光硬化型樹脂(樹脂硬化層)との密着性が不十分であり、剥がれが生じたりすることがあった。特に屋外用途での使用を想定した耐候性試験後において、前記密着不良が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−186955号公報
【特許文献2】特開2005−186959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は保護部を有する画像表示装置において、偏光板を構成する光学フィルム上に設けられた機能性層と、光硬化型樹脂(樹脂硬化層)との密着性を十分に改良することができ、更には、高コントラスト及び優れた視認性が両立した、優れた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0012】
1.保護部と、フィルム基材上に機能性層を有する光学フィルムと偏光膜とがこの順で積層された偏光板、との間に樹脂硬化層を有する画像表示装置において、該機能性層が突起形状を有し、該突起形状が不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置されており、機能性層の算術平均粗さRaが25〜300nm、及び内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であって、かつ該樹脂硬化層の25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下であることを特徴とする画像表示装置。
【0013】
2.前記機能性層の算術平均粗さRaが65〜130nmであることを特徴とする前記1に記載の画像表示装置。
【0014】
3.前記機能性層が表面ヘイズを有し表面ヘイズ/内部散乱に起因するヘイズ比が3.5以上であることを特徴とする前記1または2に記載の画像表示装置。
【0015】
4.前記機能性層が実質的に微粒子、または非反応性ポリマーを実質的に含有しないことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【0016】
5.前記画像表示装置が液晶表示装置であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保護部を有する画像表示装置の表面に配置される偏光板保護フィルムに設けられた機能性層と、光硬化型樹脂(樹脂硬化層)との密着性を十分に改良することができ、更には、高コントラスト及び優れた視認性が両立した、優れた画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な液晶表示装置も模式図である。
【図2】本発明の画像表示装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る突起の説明図である。
【図5】液晶表示パネルの構成の一例を示す模式図である。
【図6】実施例の光学フィルム1表面の光学干渉式表面粗さ計の観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の画像表示装置は、保護部と、フィルム基材上に機能性層を有する光学フィルムと偏光膜、とがこの順で積層された偏光板との間に樹脂硬化層を有する画像表示装置において、該機能性層が突起形状を有し、該突起形状が不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置されており、機能性層の算術平均粗さRaが25〜300nm、及び内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であって、かつ該樹脂硬化層の25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下であることを特徴とする。
【0021】
不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置された突起形状を有し、かつ特定範囲の算術平均粗さRaを有する機能性層上に前記樹脂硬化層を接着させることで、機能性層と樹脂硬化層との密着面積がより大きくなり、更に貯蔵弾性率が、特定範囲の活性線硬化型樹脂を樹脂硬化層に用いることで、機能性層と樹脂硬化層との密着力がより高まることが判り、これらの効果によって耐候性試験後において十分な密着性が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0022】
また機能性層の内部散乱に起因するヘイズが、最小限に抑えられ、機能性層と樹脂硬化層が密着することで、表面ヘイズも抑えられるため、光散乱によるコントラストの低下を十分に抑制でき、これによって高コントラスト及び優れた視認性が両立した、優れた画像表示装置を提供することができた。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
<画像表示装置>
先ず本発明の画像表示装置について、一つの実施形態として図2(I)〜(III)を用いて説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
本発明の出来上がりの画像表示装置の一例である図2の(III)に示すように、駆動回路が接続され(図示無)、フィルム基材上に本発明に係る機能性層を有する光学フィルムが表面に設けられた偏光板101を有する液晶表示パネル102と保護部103との間を充填するように樹脂硬化層140により貼り合われて構成される。
【0026】
基部20は、フレーム60を有し、このフレーム60の内側領域に、液晶表示パネル102が取り付けられている。さらに、この液晶表示パネル102の装置背面側にバックライト70が取り付けられている。保護部103は、基部20と同程度の大きさの透光性部材30から形成されている。
【0027】
透光性部材30は、例えば光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
【0028】
透光性部材30の一面側(基部20側)の液晶表示パネルの周縁の領域には、例えば黒色枠状の遮光部50が設けられている。この遮光部50は、例えば印刷法によって形成することができる。
【0029】
基部20のフレーム60の液晶表示パネル102側の周縁部には、複数のスペーサー90が所定の間隔をおいて断続的に設けられている。このスペーサー90の厚さは0.05〜1.5mm程度であり、これにより液晶表示パネル102と保護部103との表面間距離が1mm程度に保持される。また、基部20のフレーム60と、保護部103との貼り合わせは、平行である。
【0030】
次に、図2(I)、(II)について説明する。図2(I)は、保護部103の遮光部50側に活性線硬化型樹脂を含む組成物110(以下、硬化型樹脂組成物という)を所定量滴下(充填、塗設)して、保護部103と液晶表示パネル102とを対向させた図である。次に、図2(II)には、保護部103を基部20のスペーサー90上に配置し、硬化型樹脂組成物110と偏光板1の光学フィルムの機能性層とを接着させ、接着後に保護部103側から紫外線33を照射した図である。紫外線33の照射方向は、特に限定されることはないが、光硬化型樹脂の均一な硬化性の観点から、保護部103の表面に対して直交する方向に照射することが好ましい。また、紫外線33の照射に加えて、例えば光ファイバー等からなる微細な照射部を有する紫外線光照射装置32を用い、遮光部50と基部20との間から、活性線硬化型樹脂組成物110に対し、紫外線照射をしてもよい。
【0031】
この紫外線照射の方向は、特に限定されることはないが、水平方向に対して0°以上90°未満が好ましい。また、紫外線照射後、必要に応じて加熱処理を行う。
【0032】
このように紫外線照射を行った後、図2(III)に示すように、硬化型樹脂組成物110が硬化され、樹脂硬化層140が形成され、本発明に係る画像表示装置が得られる。
【0033】
なお、図2では、硬化型樹脂組成物110を保護部103に滴下(充填、塗設)して、樹脂硬化層140を設けているが、本発明では、偏光板1の光学フィルムの機能性層上に硬化型樹脂組成物110を滴下(充填、塗設)してから、偏光板1を含む基部20と保護部103を接着させ、樹脂硬化層140を形成しても良い。
【0034】
<樹脂硬化層>
次に、本発明の構成要素の一つである樹脂硬化層について説明する。樹脂硬化層は、機能性を有する光学フィルムから構成される偏光板と保護部との間に設けられる層である。樹脂硬化層は、貯蔵弾性率(25℃)が1.0×10Pa以下であることを一つの特徴している。更に好ましくは、貯蔵弾性率(25℃)は1×10Pa〜1×10Paである。
【0035】
前記貯蔵弾性率は、JISK7244に準拠する方法で測定することできる。具体的には、粘弾性測定装置(セイコーインスツル(株)製 DMS6100)を用いて測定することができる。
【0036】
また、前記貯蔵弾性率は、硬化型樹脂組成物の構成(硬化型樹脂の種類、添加物、それらの配合割合など)や膜厚などを適宜調整することで調節することができる。具体的な樹脂硬化層の厚みとしては、30〜200μmが好ましい。樹脂硬化層の屈折率は、好ましくは1.45以上1.55以下、より好ましくは1.51以上1.52以下であり、さらに、樹脂硬化層の可視光領域の透過率は90%以上であることが、画像表示画像の視認性が向上する点から好ましい。
【0037】
本発明に係る樹脂硬化層は、活性線硬化型樹脂を含有すること、すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。
【0038】
樹脂硬化層を形成する活性線硬化型樹脂の硬化収縮率は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは0〜2.0%である。このような範囲に硬化収縮率を調整することで、樹脂硬化層140と液晶表示パネル102又は保護部103との界面に歪みが生じることを防止できる。
【0039】
樹脂硬化層の算術平均粗さRaは6nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは1〜3nmである。このような算術平均粗さRaに調整することで、機能性層との密着性が良好となる。
【0040】
樹脂硬化層を形成する活性線硬化型樹脂組成物は、単官能の活性線硬化型樹脂を含有することが、目的効果が良好に発揮される点から好ましい。単官能の活性線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型アクリレート系樹脂(以下、単官能アクリレートとも言う)が好ましい。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。単官能アクリレートとしては、新中村化学工業株式会社や大阪有機化学工業株式会社、日立化成工業株式会社等から入手できる。
【0041】
単官能アクリレートの他に、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレートや後述する多官能アクリレートを用いても良い。これらアクリレートは単独或いは2種類以上、併用しても良い。
【0042】
活性線硬化型樹脂組成物は、硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化型樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
【0043】
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等および、これらの誘導体を挙げることが出来るが、これらには限定されない。また、光重合開始剤の具体的化合物としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等を挙げることができ、市販品としては例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア127、イルガキュア907、イルガキュア651、DAROCUR 1173などが好ましい例示として挙げられる。更に、保護部30には、画像表示パネル102に対する紫外線保護の観点から紫外線領域をカットする機能が付与されていることが多いため、光重合開始剤としては、可視光領域でも硬化できる光重合開始剤(例えば、商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製等)を用いることも好ましい。
【0044】
更に硬化促進のため、熱重合開始剤を用いることも好ましい。具体的には、熱により開始剤として作用する有機過酸化物等を用いることができる。有機過酸化物としては、例えばC12H24O3(日本油脂社製、商品名パーブチルOや日本油脂社製、商品名パーロイルTCP)等を挙げることができる。熱重合開始剤は、活性線硬化型樹脂に、質量比で、熱重合開始剤:活性線硬化型樹脂=10:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
【0045】
活性線硬化型樹脂組成物は、テルペン系水素添加樹脂、ブタジエン重合体等の1種以上のポリマーを含有することも好ましい。
【0046】
活性線硬化型樹脂組成物は、紫外線などの光照射により、樹脂硬化層を形成される。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は通常100〜3000mJ/cm、好ましくは100〜1500mJ/cmである。必要に応じて加熱処理をしてもよい。加熱処理の温度は、特に限定されることはないが、プラスチック材料部分の変形等を防止する観点からは、60℃〜100℃が好ましい。加熱方法としては、例えば、図2(II)のように保護部103を基部20のスペーサー90上に配置し、硬化型樹脂組成物110と偏光板1の機能性層とを接着させた後、加熱ステージに載置し、全体を加熱する方法。あるいは、液晶表示パネル102の周囲の遮光部50の形成領域に加熱ヒータを配置する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
硬化型樹脂組成物は、機能性層に記載する溶剤、導電剤或いは界面活性剤などを必要に応じて、含有しても良い。樹脂硬化層を形成する方法としては、硬化型樹脂組成物を保護部103に滴下後、基部20を対向で重ね、光照射により形成する方法、硬化型樹脂組成物を保護部103或いは基部20の機能性層を有する光学フィルム上に後述の塗布方法で塗設し、その後、保護部103と基部20を対向で重ね、光照射により形成する方法、保護部103と基部20を対向で重ねておき、その間から硬化型樹脂組成物を充填し、光照射により形成する方法などが挙げられる。
【0048】
<光学フィルム>
次に、本発明のもう一つの特徴である機能性層を有する光学フィルムについて説明する。
【0049】
本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板1の構成の一例を図3に示す。
【0050】
図3(a)は本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板1の断面図であり、偏光膜13の上にフィルム基材11及び機能性層12を有する本発明に係る光学フィルム10を有し、反対側に保護フィルム14、液晶パネルとの接着用の粘着層15で構成される。
【0051】
図3(b)は、機能性層12の斜視図であり、不規則な形状の突起16は不規則に配列されている。
【0052】
即ち、本発明に係る光学フィルムは、フィルム基材上に機能性層が設けられており、機能性層は突起形状を有し、該突起形状が不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置され、かつ機能性層の算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)が25〜300nmであること、および機能性層の内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%である。前記光学フィルムの構成と樹脂硬化層の貯蔵弾性率(25℃)を1×10Pa以下とすることで、耐候性試験後も機能性層と樹脂硬化層との密着面積が好適に得られる。更に内部散乱に起因するヘイズが、0〜1.0%と最小限に抑えられるため、光散乱によるコントラストの低下を十分に抑制でき、高コントラスト及び優れた視認性を提供できる。
【0053】
(表面形状)
先ずは、機能性層の表面形状について説明する。本発明の光学フィルムの機能性層が有する「不規則な形状の突起」とは、機能性層に表面凹凸を有した鋳型による型押しにより得られる規則的な形状を有した突起形状などではなく、形も大きさも定まらない様々な形状の突起をさす。これらに限定はされないが、例えば、図4に示す(a)や(b)といった幅も高さも異なる突起が、不規則な形状の突起として例示される。また、「不規則な配置」とは、前記不規則な形状の突起が規則的に(例えば、等間隔などで)配置されているのではなく、ランダムな間隔で不規則に配置されており、等方的であっても、異方的であってもよいことをさす。
【0054】
本発明の光学フィルムは、機能性層の内部散乱に起因するヘイズ(以後、内部ヘイズとも記載する)が0〜1.0%であり、好ましくは0.6〜1.0%である。内部ヘイズは、以下の手順で測定することができる。光学フィルムの表面および裏面にシリコーンオイルを数滴滴下し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)2枚で、裏表より挟む。表裏をガラスで挟み込んだ光学フィルムを、完全に2枚のガラス板と光学的に密着させ、この状態でヘイズ(Ha)をJIS−K7136に準じて測定する。次に、ガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみ数滴滴下して挟みこんでガラスヘイズ(Hb)を測定する。そして、光学フィルムをガラスで挟み込んだヘイズ(Ha)から、ガラスヘイズ(Hb)を引きくことで、内部ヘイズ(Hi)は算出できる。また、表面ヘイズ(フィルムの表面散乱に起因するヘイズ)は0.5〜20%であることが好ましい。表面ヘイズは、全ヘイズから内部ヘイズを引くことで求められる。全ヘイズは0.5%〜20%であることが好ましい。
【0055】
また、前記表面ヘイズと内部ヘイズの比(表面ヘイズ/内部ヘイズ)は、3.5以上であることが目的効果の点から好ましい。更に好ましくは3.5以上、100以下である。
【0056】
本発明の光学フィルムは、機能性層の算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)は25〜300nmで有る。算術平均粗さRaは、更に好ましくは25〜130nmnmであり、特に好ましくは65〜130nmである。前記範囲の算術平均粗さRaとするため突起形状の高さは、20nm〜4μm、が好ましい。また突起形状の幅は50nm〜300μm、好ましくは、50nm〜100μmである。上記突起形状の高さ、及び幅は断面観察から求めることができる。
【0057】
よりわかりやすくするために、図4に突起の説明図を示した。図4に示されているように、断面観察の画像に中心線aを引き、山の麓を形成する線b、cと中心線aとの2つの交点の距離を、突起サイズの幅tとした。また、山頂と中心線aまでの距離を突起サイズの高さhとして求められる。
【0058】
また、目的効果が得られやすい点から、本発明の光学フィルムの機能性層の10点平均粗さRzは、中心線平均粗さRaの10倍以下、平均山谷距離Smは5〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差は0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面は10%以上が好ましい。算術平均粗さRa、Sm、Rzは、JIS B0601:1994に準じて、光学干渉式表面粗さ計(たとえば、RST/PLUS、WYKO社製)で測定した値である。機能性層の尖度(Rku)は、3以下が好ましい。尖度(Rku)とは、凹凸形状の凸状部分の形状を規定するパラメータであり、この尖度(Rku)の値が大きい程、凹凸形状の凸状部分の形状は、針のように尖った形状となる。尖度(Rku)が3を超えるものは、目的効果が得られにくい。更に好ましくは、1.5〜2.8である。
【0059】
また、表面の歪度(Rsk)の絶対値は、1以下が好ましい。歪度(Rsk)は、凹凸形状の平均面に対する凸状部分と凹状部分との割合を示すパラメータであり、凹凸形状が、平均面に対して凸状部分が多いとプラスに大きな値となり、平均面に対して凹状部分が多いとマイナスに大きな値となる。歪度(Rsk)の絶対値が1を超えるものは、目的効果が得られにくい。歪度(Rsk)の絶対値は、好ましい0.01〜0.5である。尖度(Rku)及び歪度(Rsk)も、上記光学干渉式表面粗さ計を用いて計測できる。
【0060】
機能性層の詳細は、後述するが、上記特徴を有する表面形状とすることで目的効果が得られやすく、また上記表面形状は、例えば、機能性層塗布組成物の乾燥工程における減率乾燥区間の処理温度を高温制御し、樹脂の塗膜対流を発生させ、機能性層表面に不均一な状態を作り、この不均一な表面状態で硬化し、塗膜を形成する方法などによって得ることができる。次に本発明に係る機能性層の詳細を説明する。
【0061】
(機能性層)
本発明に係る機能性層は、活性線硬化型樹脂を含有すること、すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。
【0062】
活性線硬化型樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化型樹脂層が形成される。
【0063】
活性線硬化型樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が、目的効果が発揮されやすい点機械的膜強度から好ましい。
【0064】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0065】
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、およびジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。これら市販品は、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B((株)ADEKA製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(DIC(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。
【0066】
機能性層は、前記多官能アクリレートの他に、樹脂硬化層で記載した単官能アクリレート含有してもよい。単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜99:2で含有することが好ましい。
【0067】
上記した多官能アクリレートや単官能アクリレート以外の活性線硬化型樹脂を単独または2種以上混合してもよい。単独または2種以上混合した活性線硬化型樹脂の25℃における粘度が、30mPa・s以上、3000mPa・s以下が好ましく、更に30mPa・s以上2000mPa・s以下である。
【0068】
このような低粘度の樹脂を用いることで、乾燥工程において樹脂組成物の十分な流動性が得られるため、機能性層に突起形状が形成しやすい。また、30mPa・s以上の粘度の活性線硬化型樹脂であれば、十分な硬化性が得られ、3000mPa・s以下の粘度の活性線硬化型樹脂であれば、乾燥工程において樹脂組成物の十分な流動性が得られるために、機能性層に凹凸形状を形成しやすい。上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃の条件にて測定した値である。低粘度樹脂としては、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0069】
機能性層には、活性線硬化型樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化型樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等および、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
【0070】
機能性層は、本発明の目的効果が得られにくいことや、内部ヘイズの上昇により、輝度やコントラストの低下を招くことから、無機微粒子や有機微粒子といった微粒子を実質的に含有しないことが好ましい。
【0071】
また、本発明の機能性層は、非反応性ポリマーを実質的に含有しないことで、上記特性が得られているため、本発明の光学フィルムの機能性層には、非反応性ポリマーを実質的に含有しないことが好ましい。
【0072】
また機能性層は、HLB値が3〜18の化合物を含有することが本発明の目的効果が良好に得られる点から好ましい。次に、HLB値が3〜18の化合物について説明する。HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、親水性−親油性−バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
【0073】
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。或いはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、本発明はこれに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。
【0074】
花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、エマルゲンMS−110(12.7)、エマルゲンA−60(12.8)、エマルゲンA−90(14.5)、エマルゲンA−500(18.0)、エマルゲンB−66(13.2)、ラテムルPD−420(12.6)、ラテムルPD−430(14.4)、ラテムルPD−430S(14.4)、ラテムルPD−450(16.2)、レオドールSP−L10(8.6)、レオドールSP−P10(6.7)、レオドールSP−S10V(4.7)、レオドールSP−S20(4.4)、レオドールSP−O10V(4.3)、レオドールスーパーSP−L10(8.6)、レオドールAS10V(4.7)、レオドールAO−10V(4.3)、レオドールAO−15V(3.7)、エマゾールL−10V(8.6)、エマゾールP−10V(6.7)、エマゾールS−10V(4.7)、エマゾールO−10V(4.3)、レオドールTW−L120(16.7)、レオドールTW−L106(13.3)、レオドールTW−P120(15.6)、レオドールTW−S120V(14.9)、レオドールTW−S106V(9.6)、レオドールTW−S320V(10.5)、レオドールTW−O120V(15.0)、レオドールTW−O106V(10.0)、レオドールTW−O320V(11.0)、レオドールスーパーTW−L120(16.7)、レオドール430V(10.5)、レオドール440V(11.8)、レオドール460V(13.8)、レオドールMS−60(3.5)、レオドールMS−165V(11.0)、エキセルT−95(3.8)、エキセルVS−95(3.8)、エキセルO−95R(3.5)、エキセル200(3.5)、エキセル122V(3.5)、エマノーン1112(13.7)、エマノーン4110(11.6)、エマノーンCH−25(10.7)、エマノーンCH−40(12.5)、エマノーンCH−60(K)(14.0)、エマノーンCH−80(15.0)、アミート102(6.3)、アミート105(9.8)、アミート105A(10.8)、アミート302(5.1)、アミート320(15.4)、アミノーンPK−02S(5.5)、アミノーンL−02(5.8)、
日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、サーフィノールSE−F(6)、サーフィノール61(6)、サーフィノール604(8)、サーフィノール2502(8)、サーフィノール82(4)、サーフィノールDF110D(3)、サーフィノールCT111(8〜11)、サーフィノールCT121(11〜15)、サーフィノールCT136(13)、サーフィノールTG(9)、サーフィノールGA(13)、オルフィンSTG(9〜10)、オルフィンE1004(7〜9)、オルフィンE1010(13〜14)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、KF−6004(5)
HLB値が3〜18の化合物は、機能性層塗布組成物の固形分中の0.005質量%以上、10質量%未満で用いることが好ましい。これらHLB値が3〜18の化合物は2種類以上併用して用いても良い。能性層には、塗布性の観点から、フッ素−シロキサングラフトポリマーを含有させても良い。
【0075】
フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/またはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/またはオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体のポリマーをいう。このようなフッ素−シロキサングラフトポリマーは、市販品として、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.005〜10質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0076】
また機能性層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子またはπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
【0077】
機能性層は、上記した機能性層を形成する成分を溶剤等で希釈して機能性層塗布組成物として、該機能性層塗布組成物を以下の方法でフィルム基材上に塗布、乾燥、硬化して機能性層を設けることで形成できる。溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)および/または酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(メタノール、ブタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサオン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。
【0078】
機能性層の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.1〜20μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚50nm〜10μm、好ましくは100nm〜6μmである。機能性層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法、アプリケーターを用いることが出来る。これら塗布方法を用いて機能性層塗布組成物を塗布し、塗布後、乾燥し、活性線を照射(UV硬化処理とも言う)し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理することで形成できる。
【0079】
また、活性線照射は、機能性層を形成後、硬化樹脂層を積層した後に、更に行ってもよい。また、機能性層を塗布、乾燥後、硬化樹脂層を積層し、その後に活性線照射しても良い。
【0080】
また、機能性層と硬化樹脂層の層間密着性を向上させる目的から、硬化樹脂層は、ハーフキュア状態で硬化させることが好ましい。ハーフキュア状態(半硬化状態)とは、少なくとも塗膜表面のタックがない程度に硬化した状態を言う。上記ハーフキュア状態で硬化させるためのUV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常1〜200mJ/cm、好ましくは10〜100mJ/cmである。
【0081】
乾燥は、減率乾燥区間の温度を95℃以上の高温処理で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は95℃以上、150℃以下である。減率乾燥区間の温度を高温処理とすることで、機能性層の形成時に、塗膜樹脂中で対流が生じるため、その結果、不規則な表面凹凸が発現しやすく、前記算術平均粗さRaに制御しやすいため好ましい。
【0082】
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量はすべて塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、活性線硬化型樹脂組成物の温度が上昇し、樹脂粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
【0083】
活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
【0084】
機能性層は、後述する紫外線吸収剤を含有しても良い。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成としては、機能性層が2層以上で構成され、かつフィルム基材と接する防眩層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:機能性層構成樹脂=0.01:100〜10:100で含有することが好ましい。
【0085】
また、機能性層を2層以上設ける場合、フィルム基材と接する機能性層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上の防眩層をwet on wetで塗布して、機能性層を形成することである。第1防眩層の上に乾燥工程を経ずに、第2機能性層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
【0086】
なお、本発明に係る光学フィルムは、硬度の指標で有る鉛筆硬度が、HB以上が好ましく、より好ましくはH以上である。H以上であれば、液晶表示装置の偏光板化工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。次いで、フィルム基材について説明する。
【0087】
<フィルム基材>
本発明に係るフィルム基材は製造が容易であること、機能性層と接着し易いこと、光学的に透明で、等方性であることが好ましい。また、本発明ではフィルム基材を偏光板の保護フィルムとして使用する。
【0088】
上記性質を有したフィルム基材であれば何れでもよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を使用することができる。
【0089】
これらの内、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、およびKC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明では、セルロースエステルフィルムが、機能性層の突形状の得られやすいこと、製造性、コスト面から好ましい。
【0090】
フィルム基材の屈折率は、1.30〜1.70であることが好ましく、1.40〜1.65であることがより好ましい。屈折率は、屈折率は、アタゴ社製 アッペ屈折率計2Tを用いてJIS K7142の方法で測定する。
【0091】
また、フィルム基材は、フィルム幅手方向の、湿度55%RHで25℃から210℃まで温度変化させて測定したtanδが下記の関係を有することが、過酷な耐久試験で本発明の目的効果を良好に発揮する点から好ましい。
【0092】
0.5≧tanδ−40/tanδpeak≧0.24
ここでtanδpeakとは、25℃から210℃まで温度変化させてtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。
【0093】
フィルム基材のフィルム幅手方向のtanδ、即ち温度に対する貯蔵弾性率と損失弾性率のバランスを上記のような範囲とすることで、本発明の目的効果がより良く発揮される。tanδの測定は、例えば、試料をあらかじめ23℃55%RHの雰囲気下24時間調湿したものを使用し、湿度55%RH、下記条件で昇温させながら、または温度設定して測定することができる。
【0094】
測定装置:ティーエイインスツルメント社製 RSAIII
試料 :幅5mm、長さ50mm(ギャップ20mmに設定)
測定条件:引張モード
測定温度:25〜210℃、または−40℃
昇温条件:5℃/min
周波数 :1Hz
(セルロースエステルフィルム)
次にフィルム基材として好ましい、セルロースエステルフィルムについてより詳細に説明する。
【0095】
セルロースエステルフィルムは上記特徴を有するものであれば特に限定はされないが、セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステルともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0096】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
【0097】
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%が好ましく用いられる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。また、市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
【0098】
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0099】
平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
【0100】
セルローストリアセテートとしては、アセチル基置換度が、2.80〜2.95であって数平均分子量(Mn)が125000以上、155000未満、重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量(Mn)が155000以上、180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。
【0101】
さらに、セルローストリアセテートAとセルローストリアセテートBを併用する場合には、質量比でセルローストリアセテートA:セルローストリアセテートB=100:0〜20:80までの範囲であることが好ましい。セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)および(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0102】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
【0103】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
【0104】
溶媒 :メチレンクロライド
カラム :Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度 :0.1質量%
検出器 :RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ :L6000(日立製作所(株)製)
流量 :1.0ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0105】
(セルロースエステル樹脂・熱可塑性アクリル樹脂含有フィルム)
また、フィルム基材は、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含有し、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であるフィルムを用いても良い。
【0106】
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0107】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは、110000〜500000の範囲内である。
【0108】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、測定条件含めて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。また、市販品も使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。また、アクリル樹脂には、特開2009−84574号に記載の(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体に(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体を用いてもよい。前記グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体がコア(core)を構成し、その周辺に前記(メタ)アクリル系樹脂がシェル(shell)を構成するコア−シェルタイプのグラフト共重合体であることが好ましい。
【0109】
フィルム基材におけるアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、フィルム基材の55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。フィルム基材は、熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。
【0110】
(アクリル粒子)
フィルム基材は脆性の改善に優れる点から、アクリル粒子を含有しても良い。アクリル粒子とは、前記熱可塑性アクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有するフィルム基材中に粒子の状態(非相溶状態ともいう)で存在するアクリル成分を表す。
【0111】
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。フィルム基材にアクリル粒子を添加する場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂との混合物の屈折率とアクリル粒子の屈折率が近いことが、透明性が高いフィルムを得る点では好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0112】
アクリル微粒子は、該フィルムを構成するアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量に対して、含有質量比でアクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂総質量=0.5:100〜30:100の範囲で含有させることで、目的効果がより良く発揮される点から好ましく、更に好ましくは、アクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量=1.0:100〜15:100の範囲である。
【0113】
(微粒子)
本実施形態に係るフィルム基材には、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましく用いられる。
【0114】
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0115】
微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
【0116】
また二酸化ケイ素は、例えばアエロジル200V、アエロジルR812、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することもできる。
【0117】
(その他の添加剤)
フィルム基材には、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することもできる。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0118】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。またポリエステル系可塑剤の好ましくは、芳香族末端エステル系可塑剤である。芳香族末端エステル系可塑剤としては、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールとを反応させた構造を有するエステル化合物が好ましく、最終的な化合物の構造としてアジピン酸残基およびフタル酸残基を有していればよく、エステル化合物を製造する際には、ジカルボン酸の酸無水物またはエステル化物として反応させてもよい。
【0119】
ベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、安息香酸であることが最も好ましい。また、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0120】
炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられる。これらの中では特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用してもよい。芳香族末端エステル系可塑剤は、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは350〜3000の範囲である。また酸価は、1.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
【0121】
可塑剤はフィルム基材を形成する樹脂100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
【0122】
芳香族末端エステル系可塑剤の具体的は以下に示す化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
【化1】

【0124】
【化2】

【0125】
更に、フィルム基材には、糖エステル化合物を含有しても良い。糖エステル化合物とは、下記単糖、二糖、三糖またはオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物であり、具体的には一般式(1)で表わされる化合物などをあげることができる。
【0126】
【化3】

【0127】
(式中、R〜Rは、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
以下に一般式(1)で示される化合物をより具体的(化合物1−1〜化合物1−23)に示すが、これらに限定はされない。
【0128】
【化4】

【0129】
【化5】

【0130】
【化6】

【0131】
糖エステル化合物は、フィルム基材を形成する樹脂100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
【0132】
フィルム基材は、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0133】
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0134】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0135】
これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類を好ましく使用できる。
【0136】
フィルム基材には、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、フィルム基材に帯電防止性能を与えることも可能である。
【0137】
フィルム基材には、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0138】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0139】
液晶表示装置が大型化され、バックライト光源の輝度が益々高くなっていることに加え、デジタルサイネージ等の屋外用途への利用により、より高い輝度が求められていることから、フィルム基材はより高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、フィルム基材は張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断でき好ましく、特に110℃〜130℃に制御することが好ましい。
【0140】
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、フィルム基材を120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0141】
また、耐熱性の観点で、フィルム基材は、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
【0142】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0143】
偏光板用の保護フィルムとして、フィルム基材が用いられる場合は、吸湿による寸法変化によりムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色むらといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。このため、寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。フィルム基材は、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0144】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0145】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0146】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0147】
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上に機能性層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
【0148】
また、フィルム基材は、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0149】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0150】
フィルム基材の厚みは、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。
【0151】
厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
【0152】
フィルム基材は、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0153】
(フィルム基材の製膜)
次に、フィルム基材の製膜方法の例をセルロースエステルフィルム、セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムを例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
【0154】
フィルム基材の製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
【0155】
セルロースエステル樹脂やアクリル樹脂を溶解するのに用いた溶媒の残留抑制の点からは溶融流延製膜法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出し法が好ましい。また、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは流延法による溶液製膜が好ましい。また、フィルム形成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラム上またはエンドレスベルト上に押出し製膜する方法も溶融流延製膜法として含まれる。
【0156】
〔有機溶媒〕
セルロースエステル樹脂やアクリル樹脂を溶解したり、フィルム基材を溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
【0157】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0158】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0159】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0160】
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0161】
〔溶液流延法〕
フィルム基材は、溶液流延法によって製造することが出来る。溶液流延法では、樹脂および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0162】
ドープ中のセルロースエステル、およびセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0163】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0164】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0165】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0166】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0167】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0168】
残留溶媒量は下記式で定義される。
【0169】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0170】
また、セルロースエステルフィルム或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0171】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0172】
〔延伸工程〕
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
【0173】
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0174】
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。延伸する際は、フィルム基材のガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。フィルム基材のTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。
【0175】
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0176】
延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗面化する為好ましい。フィルム表面を粗面化することは、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特に防眩層の密着性が向上するため好ましい。
【0177】
〔溶融製膜法〕
フィルム基材は、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
【0178】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0179】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
【0180】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0181】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0182】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0183】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0184】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0185】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0186】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0187】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0188】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0189】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、登録特許3194904号、登録特許3422798号、特開2002−36332号、特開2002−36333号などで開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。
【0190】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0191】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0192】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0193】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0194】
(フィルム基材の物性)
本実施形態におけるフィルム基材の膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
【0195】
本発明に係るフィルム基材は、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0196】
また、フィルム基材の算術平均粗さRaは、好ましくは2.0nm〜4.0nm、より好ましくは2.5nm〜3.5nmである。
【0197】
<その他層>
本発明に係る光学フィルムは、バックコート層等を設けることができる。
【0198】
(バックコート層)
本発明に係る光学フィルムは、フィルム基材の機能性層を設けた側と反対側の面に、カールや光学フィルムを巻き状で保管した際のくっつき防止の為に、バックコート層を設けてもよい。
【0199】
バックコート層は、上記目的のため、微粒子を含有することが好ましく、微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。また、前記微粒子を分散する目的や後述するバインダーを溶解して塗布組成物とするために、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、機能性層で説明した溶剤が好ましい。バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下である。
【0200】
またバインダーとして、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0201】
<偏光板>
本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学性フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0202】
もう一方の面に光学フィルムを用いても、別の保護フィルムを用いてもよい。本発明に係る光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる保護フィルムは、前述したフィルム基材であるセルローストリアセテートフィルムや熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を含有し、該熱可塑性アクリル樹脂と該セルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50である保護フィルムを用いることが好ましい。
【0203】
また、前記光学フィルムや保護フィルムの面内方向のリターデーションRoは、590nmで0〜5nm、厚み方向のリターデーションRtが−20〜+20nmの範囲が好ましい。保護フィルムには、リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いて、視野角拡大可能な偏光板とすることもできる。更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方性層を有している光学補償フィルムを用いることもできる。また、好ましく用いられる市販の保護フィルムとしては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)、ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製)、アートンフィルム(JSR(株)製)等が挙げられる。
【0204】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。
【0205】
該偏光膜の面上に、本発明に係る光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0206】
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるために保護フィルムの片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化せしめることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
【0207】
<液晶表示パネル>
上記偏光板を組み込むことで、高コントラスト及び優れた視認性が両立した、液晶表示パネルが得られる。液晶表示パネルの構成の一例を図5に示す。
【0208】
液晶表示パネル102は液晶セル3と偏光板1、2によって構成されている。液晶セル3は、液晶21、スペーサー25の層を配向膜22、カラーフィルター23で挟持し、更に両側からガラス板24で固定化している。
【0209】
次に液晶セル3について説明する。
【0210】
(液晶セル)
表示パネルの液晶セルは、駆動方式によって任意なものが用いられる。例えば、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型のものや、スーパーツイストネマチック(STN)液晶表示装置に採用されているような、単純マトリクス型のもの等が挙げられる。
【0211】
液晶セルは、好ましくは、一対の基板と、該一対の基板に挟持された表示媒体としての液晶層を有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的には、TFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられる。他方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターが設けられる。カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板に設けてもよい。あるいは、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段にRGB3色光源(さらに、多色の光源を含んでいてもよい)が用いられる場合は、カラーフィルターは省略される。2つの基板の間隔は、スペーサーによって制御される。各基板の液晶層に接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜が設けられる。
【0212】
液晶セルの駆動方式は、前記した他に、バーティカル・アライメント(VA)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、垂直配向型電界制御複屈折(ECB)モード、光学補償複屈折(OCB)モード等が挙げられる。
【0213】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、特に液晶表示装置に使用することで、高コントラスト及び視認性に優れた性能が得られる点で好ましい。
【0214】
本発明の画像表示装置は、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置または、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置に好ましく用いられる。また、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等にも適用可能である。
【実施例】
【0215】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0216】
実施例1
光学フィルムの機能性層と樹脂硬化層の密着性を定量的に確認するため、光学フィルムの機能性層上に樹脂硬化層を積層したフィルム状態で、密着性を評価した。
【0217】
<フィルム基材1の作製>
(エステル化合物1の調製)
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価0.10mgKOH/g、数平均分子量450であった。
【0218】
(二酸化珪素分散液の調製)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径7nm)
10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0219】
二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
【0220】
〈フィルム基材1の作製〉
(ドープ組成物)
セルローストリアセテートA1(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
エステル化合物1 10質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
【0221】
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.3倍、MD方向(フィルムの流延方向)の延伸倍率は1.01倍で延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、フィルム基材1を得た。フィルム基材の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μm、巻数は3900mであった。
【0222】
<積層フィルム1の作製>
上記作製したフィルム基材1上に孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した下記機能性層組成物1を、押出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度95℃、減率乾燥区間温度95℃で乾燥後、紫外線ランプを用い照射部の照度が70mW/cmで、照射量を70mJ/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚5μmの機能性層を形成した。機能性層を形成後に巻き取り、光学フィルム1を作製した。
【0223】
光学フィルム1表面を光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)で観察した結果、図6のように不規則な突起形状が不規則に配列していることが分かった。
【0224】
次いで、上記作製した光学フィルム1をA4サイズにカットし、カットした光学フィルムの機能性層上に、樹脂硬化層組成物1を、アプリケーターを用いて塗布し、乾燥温度80℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を500mJ/cmとして塗布層を光硬化させ、更に光硬化後、80℃で60分間加熱し、熱硬化して、ドライ膜厚70μmの樹脂硬化層を形成し、積層フィルム1を得た。
【0225】
[機能性層組成物1]
下記組成物をディスパーにて撹拌混合し、機能性層組成物1を得た。また、樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、400mPa・sであった。
【0226】
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 85質量部
4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成工業(株)製) 15質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン化合物(商品名;KF−355A、信越化学工業(株)製、HLB値12) 5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 55質量部
[樹脂硬化層組成物1]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物1を得た。
【0227】
ポリウレタンアクリレート(商品名;UV−3000B、日本合成化学工業(株)製)
50質量部
イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製) 30質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 3質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 1質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製) 3質量部
<積層フィルム2〜8の作製>
光学フィルム1の作製において、減率乾燥区間の温度を表1に記載した条件に変更した以外は同様にして、積層フィルム2〜8を作製した。
【0228】
<積層フィルム9の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物2に変更した以外は同様にして積層フィルム9を作製した。
【0229】
[樹脂硬化層組成物2]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物2を得た。
【0230】
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物 70質量部
ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート 30質量部
2−ヒドロキシブチルメタクリレート 10質量部
テルペン系水素添加樹脂 30質量部
ブタジエン重合体 140質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 4質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 0.5質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製)10質量部
<積層フィルム10の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物3に変更した以外は同様にして積層フィルム10を作製した。
【0231】
[樹脂硬化層組成物3]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物3を得た。
【0232】
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物 100質量部
ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート 30質量部
2−ヒドロキシブチルメタクリレート 10質量部
テルペン系水素添加樹脂 30質量部
ブタジエン重合体 210質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 7質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 1.5質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製)13質量部
<積層フィルム11の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物4に変更した以外は同様にして積層フィルム11を作製した。
【0233】
[樹脂硬化層組成物4]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物4を得た。
【0234】
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(商品名;UC−203、(株)クラレ製) 70質量部
ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名;FA512M、日立化成工業(株)製) 30質量部
2−ヒドロキシブチルメタクリレート(商品名ライトエステルHOB、共栄社化学(株)製) 10質量部
テルペン系水素添加樹脂(商品名;クリアロンP−85、ヤスハラケミカル(株)製)
30質量部
ブタジエン重合体(商品名;Polyoil110、日本ゼオン(株)製)
35質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 2質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製) 6質量部
<積層フィルム12の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物5に変更した以外は同様にして積層フィルム12を作製した。
【0235】
[樹脂硬化層組成物5]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物5を得た。
【0236】
ポリブタジエンアクリレート(商品名;TE−2000、日本曹達(株)製)
50質量部
ヒドロキシルエチルメタクリレート(商品名;ライトエステルHO、共栄社化学(株)製) 20質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 3質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 1質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製) 2質量部
<積層フィルム13の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物6に変更した以外は同様にして積層フィルム13を作製した。
【0237】
[樹脂硬化層組成物6]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物6を得た。
【0238】
ポリウレタンアクリレート(商品名;UV−3000B、日本合成化学工業(株)製) 50質量部
トリシクロデカンジメタノールアクリレート(商品名;NKエステルLC2、新中村化学工業(株)製) 30質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 3質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 1質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製) 3質量部
<積層フィルム14の作製>
積層フィルム4の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物7に変更した以外は同様にして積層フィルム14を作製した。
【0239】
[樹脂硬化層組成物7]
下記組成物をディスパーにて混合し、樹脂硬化層組成物7を得た。
【0240】
ポリブタジエンアクリレート(商品名;TE−2000、日本曹達(株)製)
50質量部
イソボルニルアクリレート(商品名;IBXA、大阪有機化学工業(株)製)
20質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 3質量部
光重合開始剤(商品名;SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製) 1質量部
熱重合開始剤(有機過酸化物)(商品名;パーブチルO、日本油脂社製) 4質量部
<積層フィルム15の作製>
光学フィルム1の作製において、機能性層組成物1を下記機能性層組成物2とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を110℃に変更した以外は、同様にして積層フィルム15を作製した。
【0241】
[機能性層組成物2]
下記組成物をディスパーにて撹拌混合し、機能性層組成物2を得た。また、樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、700mPa・sであった。
【0242】
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(NKエステルAD−TMP、新中村化学工業(株)製) 50質量部
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルATM−35E、新中村化学工業(株)製) 30質量部
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 20質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン化合物(商品名;KF−6004、信越化学工業(株)製、HLB値5) 5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 55質量部
<積層フィルム16〜18の作製>
積層フィルム15における光学フィルム15の作製において、減率乾燥区間の温度を表1に記載した条件に変更した以外は、同様にして、積層フィルム16〜18を作製した。
【0243】
<積層フィルム19の作製>
積層フィルム16の作製において、樹脂硬化層組成物1を樹脂硬化層組成物5に変更した以外は同様にして積層フィルム19を作製した。
【0244】
<積層フィルム20の作製>
光学フィルム15の作製において、機能性層組成物2を特開2008−225195号公報の実施例1を参考にして調整した機能性層組成物3に変更し、更に乾燥温度を特開2008−225195号公報の実施例1と同じ70℃とした以外は同様にして、積層フィルム20を作製した。
【0245】
[機能性層組成物3]
下記組成物をディスパーにて混合し、機能性層組成物3を得た。
【0246】
サイクロマーP(ACA)320(不飽和基含有アクリル樹脂混合物、ダイセル化学工業(株)製) 5.65質量部
ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量480000;三菱レイヨン(株)製、BR88) 0.9質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 6.3質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
メチルエチルケトン(MEK) 0.1質量部
1−ブタノール 5.4質量部
1−メトキシ−2−プロパノール 1.89質量部
<積層フィルム21の作製>
積層フィルム15の作製において、機能性層組成物2を特開2007−58204号公報の実施例3を参考にして調整した機能性層組成物4に変更し、更に乾燥温度を特開2007−58204号公報の実施例3と同じ80℃に変更した以外は積層フィルム15と同様にして、積層フィルム21を作製した。
【0247】
[機能性層組成物4]
下記組成物をディスパーにて撹拌混合し、機能性層組成物4を得た。また、樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、6500mPa・sであった。
【0248】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 92質量部
メタアクリレート共重合ポリマー(サフトマーST3600、三菱化学(株)製)
15質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 4質量部
エタノール 45質量部
トルエン 15質量部
<積層フィルム22の作製>
光学フィルム15の作製において、機能性層組成物2を特開2007−45142号公報の実施例1の防眩層用塗布液Bを参考にして調整した機能性層塗布組成物5に変更し、更に恒率乾燥区間及び減率乾燥区間の乾燥温度を特開2007−45142号公報の実施例1と同じ90℃に変更した以外は同様にして、積層フィルム22を作製した。
【0249】
[機能性層組成物5]
下記配合割合の溶媒に架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒、6.3質量部を混ぜた後、エアーディスパーにて30分間攪拌し、粒子分散液を得た。この粒子分散液に他の素材をディスパーにて撹拌混合し、機能性層組成物5を調製した。また、樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、6000mPa・sであった。
【0250】
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製) 25.4質量部
平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.536) 6.3質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.3質量部
フッ素系表面改質剤(FP−149) 0.04質量部
シランカップリング剤(商品名:KBM−5103、信越化学工業(株)製)
5.2質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB−531−1、イーストマンケミカル(株)製) 0.5質量部
メチルイソブチルケトン 54.7質量部
プロピレングリコール 6.3質量部
<積層フィルム23の作製>
特開2006−53371号公報の実施例1を参考にして凹凸付きロールを作製した。次に、特開2006−53371号公報の実施例1を参考にして、フィルム基材1上に機能性層組成物1を塗布後、60℃で乾燥し、更に機能性層表面にロールの凹凸を押し当て、機能性層とロールを密着させた。この密着した状態で、紫外線ランプを用い照射部の照度が70mW/cmで、照射量を70mJ/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚5μmの機能性層を形成した。機能性層を形成後、巻き取り、光学フィルム2を作製した。次いで、上記作製した光学フィルム2をA4サイズにカットし、カットした光学フィルムの機能性層上に、樹脂硬化層組成物1を、アプリケーターを用いて塗布し、乾燥温度80℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を500mJ/cmとして塗布層を光硬化させ、更に光硬化後、80℃で60分間加熱し、熱硬化して、ドライ膜厚70μmの樹脂硬化層を形成し積層フィルム23を得た。
【0251】
《フィルムの評価》
得られた光学フィルム1〜23、及び積層フィルム1〜23について、以下の項目を評価した。
【0252】
結果を表1に示す。
【0253】
1.光学フィルム
a.ヘイズ測定
以下の測定により、上記作製した光学フィルム1〜23の内部ヘイズ(Hi)及び表面ヘイズ(Hs)を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0254】
・内部ヘイズ(Hi)
光学フィルムの表裏面にシリコーンオイルを数滴滴下した。次にシリコーンオイルを滴下した光学フィルムを厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)2枚で裏表より挟み、完全に2枚のガラス板と得られた光学フィルムを光学的に密着させた。この光学的に密着させ、表面ヘイズを除去したサンプルのヘイズ(Ha)を日本電色工業(株)製の測定機(NDH2000を用いて測定した。次いで、ガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんでガラスヘイズ(Hb)測定した。Haから、Hbを引き、光学フィルムの内部ヘイズ(Hi)を算出した。
【0255】
・表面ヘイズ(Hs)
光学フィルムの全ヘイズを、NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定し、全ヘイズから内部ヘイズ(Hi)を引くことで表面ヘイズ(Hs)を算出した。
【0256】
b.算術平均粗さRa測定
上記作製した光学フィルム1〜23の機能性層の算術平均粗さRaを、光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)を用いて10回測定し、その測定結果の平均から各光学フィルムの算術平均粗さRaを求めた。
【0257】
2.積層フィルム
a.貯蔵弾性率
上記作製した各積層フィルム1〜23と同条件で、ガラス上に樹脂硬化層を硬化させた試料を用いて、粘弾性測定装置(セイコーインスツル(株)製 DMS6100)により、樹脂硬化層の貯蔵弾性率(Pa)(測定周波数1Hz、25℃)を測定し、この測定結果を積層フィルムの樹脂硬化層の貯蔵弾性率とした。
【0258】
3.耐久後密着評価
a.耐久性試験
積層フィルム1〜23を90℃95%の条件で200時間保存したのち、サイクルサーモ(−40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置を交互に500サイクル)に投入後、耐候性試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、120時間光照射した。
【0259】
上記耐久試験を実施した積層フィルムの樹脂硬化層表面に、片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロハン製テープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引っ張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を目視で観察し、下記の基準で評価した。
【0260】
◎:全く剥離されなかった
○:剥離された面積割合が10%未満であった
△:剥離された面積割合が10%以上〜20%未満であった
×:剥離された面積割合が20%以上であった
【0261】
【表1】

【0262】
表1の結果から判るように、機能性層の算術平均粗さRaが25〜300nmで、かつ内部ヘイズが0〜1.0%である本発明に係る光学フィルムと、25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下である光樹脂硬化層を積層した積層フィルムは、機能性層と光樹脂硬化層の耐候性試験後の密着性が優れていることがわかる。また、本発明に係る光学フィルムの機能性層の表面ヘイズ/内部ヘイズの比が3.5以上の場合でも、耐候性試験後の密着性に優れている。また、本発明に係る光学フィルムの機能性層は、微粒子や非反応性ポリマーを実質的に含有しないことで、上記特性が得られているため、本発明に係る光学フィルムの機能性層は、微粒子や非反応性ポリマーを実質的に含有しないことが好ましい。
【0263】
実施例2
<偏光板101の作製>
(アルカリ鹸化処理)
上記作製した光学フィルム1を偏光膜の一方の面に貼り付け、光学補償フィルムであるKC4FR−1(コニカミノルタオプト株式会社製)からなる保護フィルムを偏光膜の他方の面に貼り付けて、偏光板101を作製した。(構成は図3参照。)
(a)偏光膜の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムは、平均厚みが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
【0264】
次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
【0265】
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光膜と、保護フィルム(KC4FR−1)と光学フィルム1を貼り合わせて偏光板101を作製した。
【0266】
工程1:前述の偏光膜3を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0267】
工程2:機能性層に剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けた光学フィルム1と保護フィルムとを下記条件でアルカリ鹸化処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に浸漬した偏光膜3に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を光学フィルム1と保護フィルムとで図3のように挟み込んで、積層配置した。
【0268】
(アルカリ鹸化処理)
ケン化工程 2.5M−KOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥。
【0269】
工程3:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
【0270】
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
【0271】
工程5:工程4で作製した偏光板の保護フィルム側に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。この偏光を裁断(打ち抜き)し、偏光板101を作製した。
【0272】
<保護部付き偏光板201の作製>
上記作製した偏光板101を用いて、図2の(I)〜(II)に示すように、保護部と偏光板を貼り合わせた。
【0273】
先ず、実施例1で調整した樹脂硬化層組成物1(図2では、樹脂硬化層組成物110)を滴下した保護部103と偏光板101(図2では、偏光板1)の光学フィルムの機能性層上を重ね合わせた。保護部103の外周囲には幅5mmの遮光部50が形成されている。
【0274】
次に、実施例1の樹脂硬化層の形成と同様にして、図2(II)に示すように、先ず紫外線照射による光硬化を行った。紫外線照射は、紫外線ランプを用いて照射部の照度が100mW/cm、照射量を500mJ/cmで行った。
【0275】
光硬化の後、加熱ステージ上に載せ、80℃で60分間加熱し、熱硬化して、保護部と偏光板を接着させ、保護部付き偏光板201を作製した。
【0276】
<液晶表示装置401の作製>
ソニー製液晶テレビ(KDL−40HX700)の液晶パネルの視認側の偏光板を剥離した。次に、上記作製した保護部付き偏光板201(構成は図2(II)参照)の粘着剤層(不図示)の剥離性保護フィルムを剥がし、粘着層と液晶セルのガラスとを貼り合わせて、液晶パネル301(図2では、液晶パネル102)を作製し、液晶表示装置401を得た。
【0277】
<偏光板102〜123の作製>
偏光板101の作製において、光学フィルム1を光学フィルム2〜23に、それぞれ変更した以外は同様にして偏光板102〜123を作製した。
【0278】
<保護部付き偏光板202〜223の作製>
保護部付き偏光板201の作製において、樹脂硬化層組成物1を表2に記載するように、それぞれ変更した以外は同様にして保護部付き偏光板202〜223を作製した。
【0279】
<液晶表示装置402〜423の作製>
液晶表示装置401の作製において、保護部付き偏光板201を保護部付き偏光板202〜223に、それぞれ変更した以外は同様にして液晶パネル302〜323、及び液晶表示装置402〜423を作製した。
【0280】
《評価》
上記作製した保護部付き偏光板201〜223及び液晶表示装置401〜423について下記の評価を行った。
【0281】
1.保護部付き偏光板201〜223
a.貯蔵弾性率
実施例1の積層フィルムで算出した方法と同様にして、樹脂硬化層の貯蔵弾性率を求めた。得られた結果を表2に示した。
【0282】
b.耐久性試験
保護部付き偏光板201〜223を90℃95%の条件で200時間保存したのち、サイクルサーモ(−40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置を交互に500サイクル)に投入後、耐候性試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、200時間光照射した。
【0283】
c.耐久後の密着評価
次に耐久試験後の保護部付き偏光板201〜223について、昼色光直管蛍光灯の存在下で、偏光板側から、機能性層と樹脂硬化層との密着状態を以下の基準で目視評価した。
【0284】
得られた結果を表2に示した。
【0285】
○:全く剥離されなかった
×:剥離が部分的に見られた。
【0286】
2.液晶表示装置401〜423
a.正面コントラスト評価
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。値が高い程コントラストに優れている。
【0287】
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)得られた結果を表2に示した。
【0288】
b.視認性評価
液晶表示装置401〜423について、80℃、85%RHの条件で200時間放置した後、23℃、55%RHに戻し、以下の基準で視認性を評価した。得られた結果を表2に示した。
【0289】
◎:表面に波打ち状のムラは全く認められない
○:表面にわずかに波打ち状のムラが認められる
×:表面に細かい波打ち状のムラが認められる。
【0290】
c.総合評価
正面コントラストと視認性の両立を総合評価として以下、基準で評価し、表2に示した。
【0291】
◎:正面コントラストが1100以上でかつ視認性評価が◎
○:正面コントラストが1100以上で、かつ視認性評価が○
×:正面コントラストが1100以下或いは視認性評価が×
【0292】
【表2】

【0293】
表2の結果から判るように、液晶表示装置においても、本発明の構成は保護部に設けられた樹脂硬化層と、偏光板の機能性層との耐久試験後の密着性が優れていることが分かる。また、本発明の液晶表示装置は、コントラスト及び視認性が両立されており、画像表示装置として、優れていることがわかる。その結果、本発明の液晶表示装置は、長時間見ていても目の疲れなどがなく、非常に優れたものであった。
【符号の説明】
【0294】
1 偏光板1
2 偏光板2
3 液晶セル
10 光学フィルム
11 基材フィルム
12 機能性層
13 偏光膜
14 保護フィルム
15 粘着層
16 突起部
20 基部
21 液晶
22 配向膜
23 カラーフィルター
24 ガラス板
25 スペーサー
30 透光性部材
32 紫外線光照射装置
33 紫外線
50 遮光部
60 フレーム
70 バックライト
90 スペーサー
101 液晶表示装置
102 液晶表示パネル
103 保護部
105 空隙
110 硬化型樹脂組成物
140 樹脂硬化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護部と、フィルム基材上に機能性層を有する光学フィルムと偏光膜とがこの順で積層された偏光板、との間に樹脂硬化層を有する画像表示装置において、該機能性層が突起形状を有し、該突起形状が不規則な形状でフィルム基材上に不規則に配置されており、機能性層の算術平均粗さRaが25〜300nm、及び内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であって、かつ該樹脂硬化層の25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記機能性層の算術平均粗さRaが65〜130nmであることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記機能性層が表面ヘイズを有し表面ヘイズ/内部散乱に起因するヘイズ比が3.5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記機能性層が実質的に微粒子、または非反応性ポリマーを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像表示装置が液晶表示装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−68562(P2012−68562A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214926(P2010−214926)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】