説明

画像記録装置、検査パターン生成方法及びプログラム

【課題】共通の画像データから第1液体及び第2液体の吐出が制御される構成において、第1液体と重ならない第2液体のみの検査パターンを記録することができるようにする。
【解決手段】インク波形選択部は、印刷すべき画像データの階調値から吐出量を決定すると共に決定した吐出量に対応する波形パターンを選択する。プレコート検査パターンの印刷が指示されていれば(S103:YES)、インク波形選択部が、最も小さい閾値を大きくしてインクの吐出量が0になるような波形パターンを選択する(S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から第1液体を吐出するに先だって、第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を記録媒体に吐出する画像記録装置、検査パターン生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙に形成されるドットのにじみを低減するために、ドットが形成される箇所に、インク(第1液体)に先だって、インク中の色素成分を凝集又は析出させる前処理液(第2液体)を吐出するプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前処理液の消費量を低減するという観点からは、インクドットが形成される箇所にのみ前処理液が塗布されることが好ましい。このため、印刷すべき画像に係る共通の画像データを用いてインク及び前処理液が同じ位置に吐出されるように制御回路が構成されることがある。また、この構成の場合に、ユーザのニーズにより前処理液を塗布しない記録形態を採ることも考えられるが、インクは吐出しないで前処理液のみを吐出して記録する形態については前処理液が透明な液体であることもあり、想定されてはいなかった。しかしながら、前処理液ヘッドの調整のための検査パターンを記録する場合、前処理液のみで構成された検査パターンにより、適切に前処理ヘッドの調整を行うことができる可能性があることを本願の発明者は確認した。
【0005】
本発明の目的は、共通の画像データから第1液体及び第2液体の吐出が制御される構成において、第1液体と重ならない第2液体のみの検査パターンを記録することができる画像記録装置、検査パターン生成方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッドと、記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段と、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段と、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段と、前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段と、前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段と、前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段とを備えている。前記第1波形選択手段は、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択する。
【0007】
本発明の検査パターン生成方法は、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構、記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッド、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッド、記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段、前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段、前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段、前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段、及び、前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段を備えている液体吐出装置において、前記第1波形選択手段が、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択する。
【0008】
本発明のプログラムは、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構、記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッド、及び、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置を、記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段、前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段、前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段、前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段、及び、前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段として機能させるプログラムである。前記第1波形選択手段は、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択する。
【0009】
本発明によると、共通の画像データから第1液体及び第2液体の吐出が制御される構成において、第2液体による検査パターンを記録媒体に記録させるとき、第1液体が吐出されないような波形が選択されるため、第1液体と重ならない第2液体のみの検査パターンを記録することができる。
【0010】
本発明においては、前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2波形選択手段は、前記階調値のうちの第1階調値において前記第2液体の吐出量が0を超える値に決定し、且つ、前記第1波形選択手段は、前記第1階調値において前記第1液体の吐出量を0に決定してもよい。これによると、選択する波形を変化させるという簡単な構成で、第2液体に係る検査パターンを記録媒体に記録させるときに第1液体が吐出されないようにすることができる。
【0011】
または、前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、前記第2波形選択手段は、前記階調値が第2閾値以下のときに前記第2液体の吐出量を0と決定し、前記第1波形選択手段は、前記階調値が第1閾値以下のときに前記第1液体の吐出量を0と決定すると共に、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1閾値を前記第2閾値より大きくしてもよい。これによると、第1閾値を第2閾値より大きくするという簡単な構成で、第2液体に係る検査パターンを記録媒体に記録させるときに第1液体が吐出されないようにすることができる。
【0012】
本発明においては、前記第1液体による検査パターンの記録を指示する第1液体検査パターン記録指示手段をさらに備えており、前記第2波形選択手段は、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、決定した吐出量に関わらず前記第2吐出口から前記第2液体が吐出されない前記波形を選択することが好ましい。これによると、第1液体のみの検査パターンを記録することができる。
【0013】
このとき、前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、前記第1波形選択手段は、前記階調値が第1閾値以下のときに前記第1液体の吐出量を0と決定し、前記第2波形選択手段は、前記階調値が第2閾値以下のときに前記第2液体の吐出量を0と決定すると共に、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2閾値を前記第1閾値より大きくすることがより好ましい。これによると、第2閾値を第1閾値より大きくするという簡単な構成で、第1液体に係る検査パターンを記録媒体に記録させるときに第2液体が吐出されないようにすることができる。
【0014】
または、前記第2波形選択手段は、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2吐出口から前記第2液体が吐出されないような前記波形を選択することがより好ましい。これによると、選択する波形を変化させるという簡単な構成で、第1液体に係る検査パターンを記録媒体に記録させるときに第2液体が吐出されないようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、共通の画像データから第1液体及び第2液体の吐出が制御される構成において、第2液体による検査パターンを記録媒体に記録させるとき、第1液体が吐出されないような波形が選択されるため、第1液体と重ならない第2液体のみの検査パターンを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるインクジェットプリンタの概略側面図である。
【図2】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図3】図2に示す波形パターン記憶部に記憶される波形パターンの一例である。
【図4】図2に示すインク波形選択部の機能を説明するための図である。
【図5】図1に示すインクジェットプリンタの印刷動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートにより印刷された検査パターンの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、搬送機構20と、搬送機構20によって搬送された用紙Pに、ブラック(K)のインク滴(第1液体)を吐出する吐出口が形成されたインクヘッド2aと、インクの色素成分を凝集又は析出させるプレコート液(Pre)の液滴を吐出する吐出口が形成されたプレコートヘッド2bと、制御装置16とを有している。
【0019】
搬送機構20において、ベルトローラ6、7と共に搬送ベルト8が回転することにより、搬送ベルト8上に載置された用紙Pが、インクヘッド2a及びプレコートヘッド2bとプラテン10との間を通過するように搬送される。プレコートヘッド2bのすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面における画像が形成される領域にプレコート液が塗布されるように、プレコートヘッド2bからプレコート液滴が吐出される。その後、当該用紙Pが、インクヘッド2aのすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面におけるプレコート液が塗布された領域に、インクヘッド2aからインク滴が吐出される。これにより、用紙P上に所望の画像が形成される。このとき、用紙P上に塗布されたプレコート液上にインク滴が着弾すると、プレコート液がインク滴の色素成分を凝集又は析出させるため、用紙Pにおけるインクにじみが防止される。顔料インクに対しては顔料色素を凝集させるプレコート液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させるプレコート液が使用される。プレコート液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。かかるプレコート液があらかじめ塗布された用紙Pの領域にインクが着弾すると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出により形成される。その結果、付着したインクの用紙P内への浸透度が低下し、インクを用紙P上に定着しやすくなる。
【0020】
次に、図2を参照しつつ、制御装置16について説明する。図2に示すように、制御装置16は、機能部として、画像データ記憶部41と、インク検査指示部42と、プレコート検査指示部43と、波形パターン記憶部44と、インク波形選択部45と、インク波形信号供給部46と、プレコート波形選択部47と、プレコート波形駆動信号供給部48と、搬送制御部49とを有している。また、制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記録媒体に保存されており、これらの記録媒体からEEPROMにインストールされる。なお、記録媒体に記録された制御プログラムは、CPUで直接実行可能なものであってもよいし、EEPROMにインストールすることによって初めて実行可能となるものでもよい。また、暗号化されていたり、圧縮されていたりしてもよい。
【0021】
画像データ記憶部41は、外部より送信され、印刷指令と共に受信した画像データを記憶する。画像データは、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて階調値(本実施形態においては256階調)を有している。
【0022】
インク検査指示部42は、インクヘッド2aのキャリブレーションに用いられるインク検査パターンの印刷を画素単位で指示する。また、プレコート検査指示部43は、プレコートヘッド2bのキャリブレーションに用いられるプレコート検査パターンの印刷を画素単位で指示する。インク検査指示部42によるインク検査パターンの印刷指示と、プレコート検査指示部43によるプレコート検査パターンの印刷指示とは1つの画素について同時に行われないようになっている。
【0023】
波形パターン記憶部44は、各ヘッド2a、2bの吐出口から吐出させるインク又はプレコート液の吐出量を規定する4つの波形パターンを記憶している。図3に示すように、本実施形態において、4つの波形パターンは、吐出無し、小滴、中滴及び大滴のインク又はプレコート液を吐出口から吐出させるものである。なお、波形パターンにおいては、通常時に所定の電圧V1となっており、液滴を吐出させるタイミングで電圧をV1からV0に一端降下させた後に所定時間経過後、電圧をV0から再びV1に上昇させる。本実施形態においては、インクヘッド2a及びプレコートヘッド2bの液体吐出機構が、いわゆるユニモルフタイプの圧電アクチュエータにより構成されており、圧電アクチュエータを構成する圧電素子を挟むように配置された2つの電極に図3で示す電位差を与えることにより圧電素子を変形させ、液体に吐出エネルギーを付与している。また、本実施形態では、電圧をV1からV0に一端降下させた後に所定時間経過後、電圧をV0から再びV1に上昇させる波形パターン毎に液体に付与される吐出エネルギーが増加して吐出される液体量が増加する。
【0024】
インク波形選択部45は、図4に示すように、画像データの各画素について256階調の階調値を3つの閾値を用いて4値化(00〜11)し、4値化した値から吐出量(吐出無し、小滴、中滴及び大滴)を決定する。そして、インク波形選択部45は、決定した吐出量に対応する波形パターンを波形パターン記憶部44から選択する。また、インク波形選択部45は、プレコート検査指示部43がプレコート検査パターンの印刷を指示しているとき、3つの閾値のうち最も小さい閾値(第1閾値)を、決定される吐出量が0となるように通常印刷時の閾値よりも大きくする。
【0025】
例えば、図4(a)に示すように、3つの閾値が63、127及び191となっている。通常印刷時は、インク波形選択部45が、階調値が閾値63以下のとき(0〜63)、階調値を00に4値化して吐出量を0に決定し、階調値が閾値63を超え127以下のとき(64〜127)、階調値を01に4値化して吐出量を小滴に決定し、階調値が閾値127を超え191以下のとき(128〜191)、階調値を10に4値化して吐出量を中滴に決定し、階調値が閾値191を超えているとき(192〜255)、階調値を11に4値化して吐出量を大滴に決定する。図4(b)に示すように、プレコート検査指示部43がプレコート検査パターンの印刷を指示しているときは、インク波形選択部45が、最も小さい閾値を63から255に大きくすることで、全ての階調値を00に4値化し、吐出量を0に決定する。これにより、プレコート検査パターンが印刷されるとき、インクが吐出されることがなくなり、インクと重ならないプレコート液のみでプレコート検査パターンを印刷することができる。
【0026】
図2に戻って、インク波形信号供給部46は、インク波形選択部45に選択された波形パターンを含む駆動信号をインクヘッド2aに供給する。これにより、インクヘッド2aの吐出口からのインクの吐出量が制御される。
【0027】
プレコート波形選択部47は、画像データの各画素について256階調の階調値を3つの閾値(インク波形選択部45に係る閾値と同じ値)を用いて4値化し、4値化した値から吐出量(吐出無し、小滴、中滴及び大滴)を決定する。そして、プレコート波形選択部47は、決定した吐出量に対応する波形パターンを波形パターン記憶部44から選択する。また、プレコート波形選択部47は、インク検査指示部42がインク検査パターンの印刷を指示しているとき、3つの閾値のうち最も小さい閾値(第2閾値)を、決定される吐出量が0となるように通常時の閾値よりも大きくする。具体的な内容については、インク波形選択部45と実質的に同様である(図4参照)。これにより、インク検査パターンが印刷されるとき、プレコート液が吐出されることがなくなり、プレコート液と重ならないインクのみでインク検査パターンを印刷することができる。
【0028】
プレコート波形駆動信号供給部48は、プレコート波形選択部47に選択された波形パターンを含む駆動信号をプレコートヘッド2bに供給する。これにより、プレコートヘッド2bの吐出口からのプレコート液の吐出量が制御される。
【0029】
搬送制御部49は、用紙Pが所定の速度で搬送されるように搬送機構20を制御する。
【0030】
以下、図5を参照しつつ、インクジェットプリンタ1の印刷動作について説明する。図5に示すように、印刷指令を受信すると、プレコート波形選択部47が、各画素について、インク検査指示部42によりインク検査パターンの印刷が指示されているか否を判断する(S101)。インク検査パターンの印刷が指示されていれば(S101:YES)、プレコート波形選択部47が、プレコート液の吐出量が0になるように閾値を変更する(S102)。
【0031】
インク検査パターンの印刷が指示されていなければ(S101:NO)、インク波形選択部45が、プレコート検査指示部43によりプレコート検査パターンの印刷が指示されているか否を判断する(S103)。プレコート検査パターンの印刷が指示されていれば(S103:YES)、インク波形選択部45が、インクの吐出量が0になるように閾値を変更する(S104)。プレコート検査パターンの印刷が指示されていなければ(S103:NO)、プレコート波形選択部47及びインク波形選択部45は閾値を変化させない。
【0032】
そして、当該画素について各閾値に基づいてプレコート液及びインクの吐出量をそれぞれ決定すると共にRAMの作業エリアに記憶される(S105)。このとき、プレコート波形選択部47及びインク波形選択部45によって変更された閾値は初期値に戻される。その後、全ての画素について吐出量が決定していなければ(S106:NO)、次の画素について上述の処理を繰り返す。全ての画素について吐出量が決定していれば(S106:YES)、決定した吐出量に基づいて印刷を実行する(S107)。以上で、図5のフローチャートを終了する。
【0033】
なお、上述の処理によって印刷される検査パターンの一例について図6を参照しつつ説明する。図6に示す実線の十字マークがインク検査パターンを、破線の十字マークがプレコート検査パターンをそれぞれ示している。なお、プレコート検査パターンは無色であるが、専用の照明やカメラを使用することにより目視可能である。図6(a)に示すように、検査パターンにおいては、インク検査パターン及びプレコート検査パターンが用紙Pの搬送方向及び搬送方向に直交する主走査方向に関して交互に配置されている。インクジェットプリンタ1の検査工程において、印刷された検査パターンを用いてインクの吐出位置とプレコート液の吐出位置とのずれを調整するレジストレーションが行われる。以下、レジストレーションの具体例について説明する。
【0034】
図6(a)は、レジストレーションが完了しているときの検査パターンである。インクヘッド2a及びプレコートヘッド2b相互の吐出タイミングにずれが生じている場合、図6(a)になるように検査パターンを形成したとしても、図6(b)に示すように、検査パターンにおいて、インク検査パターンとプレコート検査パターンとが搬送方向に関してずれることになる。また、インクヘッド2a及びプレコートヘッド2b相互の主走査方向に関する固定位置にずれが生じている場合、図6(a)になるように検査パターンを形成したとしても、図6(c)に示すように、検査パターンにおいて、インク検査パターンとプレコート検査パターンとが主走査方向に関してずれることになる。図6(a)に示すようなインク検査パターンとプレコート検査パターンとが搬送方向及び主走査方向に関して一致する検査パターンが印刷されるように、各ヘッド2a、2bの吐出タイミング及び固定位置の調整を行うことでレジストレーションが完了する。なお、インクヘッド2aを基準として、プレコートヘッド2bに関する吐出タイミング及び固定位置のみを調整してもよいし、プレコートヘッド2bを基準として、インクヘッド2aに関する吐出タイミング及び固定位置のみを調整してもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1によると、プレコート検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、インク波形選択部45が、インクが吐出されない波形パターンを選択するため、インクと重ならないプレコート液のみのプレコート検査パターンを印刷することができる。
【0036】
また、インク波形選択部45が、最も小さい閾値を大きくするという簡単な構成で、プレコート検査パターンを用紙Pに印刷させるときにインクが吐出されないようにすることができる。
【0037】
さらに、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート波形選択部47が、プレコート液が吐出されない波形パターンを選択するため、プレコート液と重ならないインクのみのインク検査パターンを印刷することができる。
【0038】
また、プレコート波形選択部47が、最も小さい閾値を大きくするという簡単な構成で、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるときにプレコート液が吐出されないようにすることができる。
【0039】
<変形例>
本実施形態においては、プレコートインク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、インク波形選択部45が最も小さい閾値を大きくすることで、インクが吐出されない波形パターンを選択し、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート波形選択部47が最も小さい閾値を大きくすることで、プレコート液が吐出されない波形パターンを選択する構成であるが、この限りではない。例えば、プレコートインク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、インク波形選択部が、吐出量を強制的に0に決定することでインクが吐出されない波形パターンを選択し、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート波形選択部が、吐出量を強制的に0に決定することでプレコート液が吐出されない波形パターンを選択する構成であってもよい。さらには、プレコートインク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、インク波形選択部が閾値や吐出量を変化させることなく、無条件にインクが吐出されない波形パターンを選択し、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート波形選択部が閾値や吐出量を変化させることなく、無条件にプレコート液が吐出されない波形パターンを選択する構成であってもよい。これによると、簡単な構成でインクやプレコート液が吐出されるのを規制することができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート液が吐出されないようにする構成であるが、インク検査パターンを用紙Pに印刷させるとき、プレコート液も吐出される構成であってもよい。なお、プレコート液は無色透明であるため、プレコート液がインクと重なったとしてもインク検査パターンとしての機能が損なわれることがない。
【0041】
また、上述の実施形態では、1枚の用紙においてプレコート検査パターンとインク検査パターンとが印刷可能なように、画素単位でプレコート検査パターンの印刷指示及びインク検査パターンの印刷指示を判断する構成であるが、用紙単位でプレコート検査パターン及びインク検査パターンが印刷される場合には、用紙単位の印刷指令によってプレコート検査パターンの印刷指示及びインク検査パターンの印刷指示を判断する構成であってもよい。または、用紙内における任意の一部領域単位でプレコート検査パターンの印刷指示及びインク検査パターンの印刷指示を判断する構成であってもよい。
【0042】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。また、プリンタに限定されず、画像記録を行う他の装置、例えば、ファクシミリやコピー機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 インクジェットプリンタ
2a インクヘッド
2b プレコートヘッド
41 画像データ記憶部
42 インク検査指示部
43 プレコート検査指示部
44 波形パターン記憶部
45 インク波形選択部
46 インク波形信号供給部
47 プレコート波形選択部
48 プレコート波形駆動信号供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、
記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッドと、
前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッドと、
記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段と、
前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段と、
前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段と、
前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段と、
前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段と、
前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段とを備えており、
前記第1波形選択手段は、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、
前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2波形選択手段は、前記階調値のうちの第1階調値において前記第2液体の吐出量が0を超える値に決定し、且つ、前記第1波形選択手段は、前記第1階調値において前記第1液体の吐出量を0に決定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、
前記第2波形選択手段は、前記階調値が第2閾値以下のときに前記第2液体の吐出量を0と決定し、
前記第1波形選択手段は、前記階調値が第1閾値以下のときに前記第1液体の吐出量を0と決定すると共に、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1閾値を前記第2閾値より大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記第1液体による検査パターンの記録を指示する第1液体検査パターン記録指示手段をさらに備えており、
前記第2波形選択手段は、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、決定した吐出量に関わらず前記第2吐出口から前記第2液体が吐出されない前記波形を選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記画像データは前記複数の画素のそれぞれについて階調値を有しており、
前記第1波形選択手段は、前記階調値が第1閾値以下のときに前記第1液体の吐出量を0と決定し、
前記第2波形選択手段は、前記階調値が第2閾値以下のときに前記第2液体の吐出量を0と決定すると共に、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2閾値を前記第1閾値より大きくすることを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記第2波形選択手段は、前記第1液体検査パターン記録指示手段が前記第1液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第2吐出口から前記第2液体が吐出されないような前記波形を選択することを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項7】
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構、記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッド、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッド、記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段、前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段、前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段、前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段、前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段、及び、前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段を備えている液体吐出装置における検査パターン生成方法において、
前記第1波形選択手段が、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択することを特徴とする検査パターン生成方法。
【請求項8】
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構、記録媒体に画像を記録する第1液体を吐出するための第1吐出口が形成された第1液体吐出ヘッド、及び、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を吐出するための第2吐出口を有すると共に、前記搬送方向に関して前記第1液体吐出ヘッドよりも上流に設けられた第2液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置を、
記録すべき画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段、
前記第1吐出口から吐出される前記第1液体の吐出量及び前記第2吐出口から吐出される前記第2液体の吐出量を規定する複数の波形を記憶する波形記憶手段、
前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第1液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第1波形選択手段、
前記画像データに基づき、マトリックス状に配置された複数の画素のそれぞれについて吐出すべき前記第2液体の吐出量を決定すると共に、この決定した吐出量に対応する前記波形を前記波形記憶手段より選択する第2波形選択手段、
前記第1波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第1液体ヘッドに供給する第1駆動信号供給手段、
前記第2波形選択手段に選択された前記波形を含む駆動信号を前記第2液体ヘッドに供給する第2駆動信号供給手段、及び、
前記第2液体による検査パターンの記録を指示する第2液体検査パターン記録指示手段として機能させるプログラムであって、
前記第1波形選択手段は、前記第2液体検査パターン記録指示手段が前記第2液体による検査パターンの記録を指示しているとき、前記第1吐出口から前記第1液体が吐出されないように前記波形を選択することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−232454(P2012−232454A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101559(P2011−101559)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】