説明

画像記録装置、画像記録装置における駆動位相の調整方法及び画像記録装置における位置調整チャートの出力方法

【課題】複数の記録要素列間の位置を、複数回の調整チャートを記録する必要なく、通常記録時の画素単位よりも細かい単位で、簡単に調整可能とすること。
【解決手段】記録要素列単位の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上整数)で変更可能な駆動制御手段を有し、ヘッドユニットと記録媒体とを相対移動させながら、複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位で変化させながら、該複数の記録要素列間で記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録し、得られた記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、記録要素列毎の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位で調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録装置、画像記録装置における駆動位相の調整方法及び画像記録装置における位置調整チャートの出力方法に関し、詳しくは、位置調整チャートを簡単に作成でき、それに基づいて駆動位相を1画素以内で調整可能な画像記録装置、画像記録装置における駆動位相の調整方法及び画像記録装置における位置調整チャートの出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出することにより画像を記録する画像記録装置には、それぞれノズル列を有する複数のヘッドをノズル列方向に沿って千鳥状等に配列することにより、全体として長尺なノズル列を有するヘッドユニットを備えたものがある。また、それぞれノズル列を有する複数のヘッドを並設し、複数のノズル列によって相補的に記録を行うことにより、解像度を向上させたヘッドユニットを備えたものもある。
【0003】
このような複数のノズル列を有するヘッドユニットを備えた画像記録装置では、ヘッド間の機構的配置誤差、ヘッド毎の吐出速度誤差などにより、記録媒体に対する相対的搬送方向の位置は、設計値に対して記録媒体上でずれるため、高画質が要求される場合には、各ノズル列毎の位置ずれ量を調べるための位置調整チャートを出力し、これに基づいてノズル列毎の位置合わせ(駆動タイミング調整)を行う必要がある(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−291326号公報
【特許文献2】特開2004−358759号公報
【特許文献3】特許第3591286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、印刷速度を最大限上げるため、ヘッドの吐出周期がヘッドの吐出可能な最高駆動周波数になるように、ヘッドと記録媒体の相対速度は設定される。このため、1つのノズルから吐出されるインク滴によって形成される1画素より細かい位置の制御を行う時間的余裕がない。1画素より細かい位置の制御を行うには、吐出周期に余裕が必要であり、また、1画像内の途中にヘッド単位で位相をずらすことが必要であり、更にこの位相をずらしたタイミングに合う調整画像を用意する必要がある。
【0006】
しかも、このような1画素より細かい位置の制御を、複数のノズル列間のインク滴の吐出速度やノズル面と印字面との間の距離、ノズル列間の取り付け角度の誤差に影響されずに行うことが望まれる。
【0007】
また、1画素単位の調整画像を用いて、計測又は目測によって1画素より細かい位置調整を行う方法では、正確な位置調整を行うことができず、高精細な画像を記録することができない。従って、高画質が要求される画像を記録する場合には好ましい方法とはいえない。
【0008】
一方、1画素よりも細かい位置調整を行うため、複数の位置調整チャートを数回に分けて出力する方法がある。図11〜16は、このように複数の位置調整チャートが必要となる位置調整チャートの出力方法を示している。
【0009】
図11において、ヘッドA、Bはそれぞれ複数のノズルna、nbからなるノズル列を有し、ヘッドAとBとでノズル列方向が共に記録媒体搬送方向と直交する方向となり、ヘッドA、B間のノズルピッチが記録媒体の幅方向で同一となるように配置されたヘッドユニットを構成している。ここでは、ヘッドにおける最も小さい駆動周期を100μsecとした場合の位置調整チャートを出力する例を示しており、記録媒体との相対搬送速度は、通常の入力データによる画像記録時と同一であり、ヘッドの上記駆動周期で印字した場合に、360dpi(70.5μm)で印刷する速度(705mm/sec)としている。ヘッドAとBの駆動位相は同位相である。
【0010】
この場合、ヘッドAの各ノズルnaからは所定の間隔毎にインクを吐出すると共に、ヘッドBの各ノズルnbからはヘッドAに対して吐出タイミングを段階的にずらせた複数のパターンを記録する。しかし、ヘッドBの各ノズルnbから吐出されたインクは、駆動周期単位(360dpi)の位置、すなわち1画素単位の位置にしかドットを配置することができない。
【0011】
図12はこのような方法によって得られる位置調整チャートの一例を示しているが、このように、ヘッドAによって形成されるラインパターンa1と、ヘッドBによって形成されるラインパターンb1との間にずれがなく、繋がりが最も一直線状に近いものを選択することによってヘッドA、Bの各ノズル列間の位置ずれ量を取得する際、1画素よりも細かい位置ずれが生じている場合には、この位置調整チャートではラインパターンa1とb1との繋がりが一直線状になる場合が存在せず、適正な調整を行うことができない。
【0012】
このため、この場合は図13に示すようにヘッドBの駆動位相をヘッドAの駆動位相に対して0.5画素ずらした位置調整チャートを別途記録する必要がある。図14はこれによって得られる位置調整チャートを示しており、この位置調整チャートによれば、ヘッドBによって形成されるラインパターンb2は、図12に示すラインパターンb2に対して0.5画素ずれて記録される。
【0013】
従って、ユーザーは図12に示す位置調整チャートと図14に示す位置調整チャートとの2つの別々の位置調整チャートを比較観察することによって0.5画素単位の位置ずれ量を取得することになり、極めて煩雑な手間と2つの位置調整チャートを出力するだけの時間が必要となり、また、2つの別々の位置調整チャートを比較観察するために間違いが発生し易くなる問題がある。
【0014】
また、図15は、プリントヘッドA、Bを、各ノズル列が記録媒体搬送方向と直交する方向に沿い、且つ、記録媒体搬送方向に沿って並置することにより、ヘッドの性能の倍の速度で印字するように構成した場合であり、記録媒体搬送方向に沿う奇数、偶数画素の印字を異なるプリントヘッドA、Bで交互に印字することにより、ヘッド性能の倍の速度で印字可能とした態様である。この場合、ヘッドAの駆動位相とヘッドBの駆動位相とは互いにずれているため、各プリントヘッドA、Bは、印字解像度の2画素おきに印字することになる。
【0015】
この場合の位置調整チャートは、ヘッドAの各ノズルnaから駆動位相に従って連続してインク滴を吐出することにより2本ずつのラインパターンを記録すると共に、ヘッドBの各ノズルnbからは吐出タイミングを段階的にずらせた1本ずつのラインパターンを記録する。これにより、図16に示すように、ヘッドAによって形成される2本のラインパターンa31、a32と、ヘッドBによって形成される1本のラインパターンb3との組が複数組記録され、ラインパターンa31、a32の間にラインパターンb3が位置する組を好適なものとして選択することになるが、ヘッドA、Bは2画素おきにしか印字できないため、ヘッドAとBとの間に2画素よりも小さい位置ずれが生じている場合、図16の例に示すように、この位置調整チャートだけでは好適な組を選択することができず、別途の位置調整チャートを出力する必要が生ずるものである。
【0016】
このような問題は、ノズルからインク滴を吐出して画素を形成するものに限らず、画素を形成する複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを用い、各記録要素から記録媒体上に記録材を適用することによって画像を記録する画像記録装置に共通の問題である。
【0017】
そこで、本発明は、複数の記録要素列間の位置を、複数回の調整チャートを記録する必要なく、通常記録時の画素単位よりも細かい単位で、簡単に調整可能な画像記録装置及び画像記録装置における駆動位相の調整方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、複数の記録要素列間の位置を通常記録時の画素単位よりも細かい単位で調整可能な位置調整チャートを、複数回の調整チャートを記録する必要もなく簡単に出力することのできる画像記録装置における位置調整チャートの出力方法を提供することを課題とする。
【0019】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0021】
請求項1記載の発明は、記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備えると共に、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させながら、前記複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録を行うことにより、前記記録要素列毎のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録するチャート記録手段を備え、該チャート記録手段によって得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を調整するようにした画像記録装置であって、
前記記録要素列単位の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上整数)で変更可能な駆動制御手段を有し、
前記チャート記録手段は、前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、前記駆動制御手段によって記録要素駆動周期の1/N単位で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録し、
前記駆動制御手段は、前記チャート記録手段により得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を前記記録要素駆動周期の1/N単位で調整することを特徴とする画像記録装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを1回だけ相対移動させることにより前記通常の入力データによる画像記録及び前記記録要素列位置調整チャートの記録を行うものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像記録装置である。
【0023】
請求項3記載の発明は、複数の前記記録要素列は、前記ヘッドユニットと前記記録媒体の相対移動方向に沿って複数列配置されており、前記相対移動方向に沿って各記録要素列によって前記記録媒体上に相補的に記録を行うものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像記録装置である。
【0024】
請求項4記載の発明は、記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備え、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させることにより画像を記録する画像記録装置における前記ヘッドユニットの前記記録要素列単位の駆動位相を調整する駆動位相の調整方法であって、
前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録し、
得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を前記記録要素駆動周期の1/N単位で調整することを特徴とする画像記録装置における駆動位相の調整方法である。
【0025】
請求項5記載の発明は、記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備え、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させることにより画像を記録する画像記録装置における前記ヘッドユニットの前記記録要素列単位の駆動位相を調整するための位置調整チャートを出力する方法であって、
前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録することを特徴とする画像記録装置における位置調整チャートの出力方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の画像記録装置及び画像記録装置における駆動位相の調整方法によれば、複数の記録要素列間の位置を、複数回の調整チャートを記録する必要なく、通常記録時の画素単位よりも細かい単位で簡単に調整可能である。
【0027】
また、本発明の画像記録装置における位置調整チャートの出力方法によれば、複数の記録要素列間の位置を通常記録時の画素単位よりも細かい単位で調整可能な位置調整チャートを、複数回の調整チャートを記録する必要もなく簡単に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像記録装置の全体構成を示す概略図
【図2】駆動制御部の詳細を示す構成図
【図3】通常の入力データによる画像記録時の駆動制御部を更に詳細に示す構成図
【図4】位置調整チャートの出力時の駆動制御部を更に詳細に示す構成図
【図5】位置調整チャートの出力方法を説明する説明図
【図6】図5の方法によって出力された位置調整チャート
【図7】プリントヘッドの別の配置態様に係る位置調整チャートの出力方法を説明する説明図
【図8】図7の方法によって出力された位置調整チャート
【図9】プリントヘッドの更に別の配置態様に係る位置調整チャートの出力方法を説明する説明図
【図10】位置調整チャートの他の出力方法の説明図
【図11】従来の1画素おきの位置調整チャートの出力方法を説明する説明図
【図12】図11の方法によって出力された位置調整チャート
【図13】従来の位置調整チャートの出力方法を説明する説明図
【図14】図13の方法によって出力された位置調整チャート
【図15】従来の位置調整チャートの他の出力方法を説明する説明図
【図16】図15の方法によって出力された位置調整チャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットと記録媒体とを、記録要素列を記録媒体と所定角度をなして相対移動させる際、複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録するものである。
【0030】
ヘッドユニットと記録媒体との間の移動は相対的であればよく、ヘッドユニットを不動とし、このヘッドユニットに対して記録媒体を一方向に沿って移動させる態様、記録媒体を不動とし、この記録媒体に対してヘッドユニットを一方向に沿って移動させる態様、ヘッドユニットと記録媒体とを共に移動させる態様のいずれでもよい。
【0031】
この中でも、不動のヘッドユニットに対して記録媒体だけを一方向に搬送させるようにすれば、ヘッドユニットと記録媒体との相対移動を記録媒体の搬送機構を利用することによって容易に達成できる。このような相対移動は、一般にシングルパスタイプの画像記録装置に用いられる。シングルパスタイプの画像記録装置は、ヘッドユニットと記録媒体とを1回だけ相対移動させることにより、通常の入力データによる画像記録及び記録要素列位置調整チャートの記録を行うものである。
【0032】
ヘッドユニットと記録媒体とを共に移動させる態様としては、複数の記録要素列が記録媒体の搬送方向に沿って配置され、記録媒体の幅方向に亘って往復移動することにより画像記録を行うスキャンタイプの画像記録装置がある。記録媒体に対する画像記録は、記録媒体の一方向の間欠的な搬送とヘッドユニットの記録媒体の幅方向に亘る往復移動との協働によって行われる。このようなスキャンタイプの画像記録装置は、一般にスキャン毎に印字開始位相を変更することが容易であるため、スキャン毎に印字位相をずらすことにより、1画像内で1画素よりも細かい位置調整が比較的容易である。これに対し、シングルパスタイプの画像記録装置は、1画像内での1画素よりも細かい位置調整が困難であるため、シングルパスタイプの画像記録装置は本発明において特に好ましい態様である。
【0033】
なお、ヘッドユニットと記録媒体との相対移動時に、記録要素列の長さ方向と記録媒体の搬送方向とが互いになす角度は一定であればよいが、一般には直交させることが好ましい。
【0034】
本発明において、記録要素列位置調整チャートの記録時の複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差の変化は、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)とされるが、Nを2、3、4・・・としていくことにより、記録要素列位置調整チャートの記録時に記録媒体上に記録される画素を、通常の入力データによる画像記録時の画素単位の1/2、1/3、1/4といったより細かい画素単位に記録可能となり、きめ細かな調整を可能とすることができる。Nの上限は特に限定されないが、ヘッドユニットが備える各ヘッドの解像度の限界に応じて適宜決められる。
【0035】
本発明における画像記録装置は、記録要素列単位の駆動位相差を記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上整数)で変更可能な駆動制御手段を有している。記録要素列単位の駆動位相差の記録要素駆動周期の1/N単位の変更データは、駆動制御部内に予め設定しておくことができる。この変更データは、例えばN=2、3、4等というように複数記憶され、そのうちのいずれか1つのデータ(例えばN=2)を読み出して設定しておくことができ、必要に応じて、例えばユーザーの設定操作又は自動制御によってNの設定値を、記憶された他の値(例えばN=3)に変更可能とすることもできる。
【0036】
本発明において、記録要素列位置調整チャートの記録時、ヘッドユニットと記録媒体とを相対移動させながら、複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位で変化させながら、該複数の記録要素列間で記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録するものである。
【0037】
これにより、1つの記録要素列位置調整チャートを作成する途中で、駆動位相が1/Nだけ変化するため、通常時の1/Nの画素単位の位置に印字が可能となる。従って、1回の出力、すなわちヘッドユニットと記録媒体とを1度だけ相対移動させて記録を行うことで、通常の入力データによる画像記録時の画素単位よりも1/N細かい画素単位の記録要素列位置調整チャートを簡単に作成可能となり、複数回の記録及び出力を繰り返す必要はなくなる。
【0038】
なお、本発明において1画素とは、1つの記録要素から記録媒体上に適用される1つの記録材料滴によって形成される単位である。
【0039】
また、本発明において記録要素の駆動とは、記録要素から1つの記録材料滴を記録媒体に適用して1画素を形成することである。
【0040】
複数の記録要素列間で記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録する際、複数の記録要素列のうち、いずれか1つの記録要素列を基準列とし、この基準列の各記録要素の駆動タイミングを一定のタイミングとすることが好ましい。これにより、この基準列の各記録要素の駆動タイミングに対し、他の記録要素列の各記録要素の駆動タイミングだけを、記録要素駆動周期の1/N単位で変化させながら、段階的にずらすことで、記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組の記録が簡単となる。
【0041】
画像記録装置における駆動位相の調整は、このようにして作成された記録要素列位置調整チャートを用い、その記録要素列位置調整チャート上に記録された複数の記録パターンの中から、記録要素列間のパターンの間のずれ量が最も少ない記録パターンの組を選ぶことにより、その記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、駆動制御手段により、記録要素列毎の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位で調整することによって行う。
【0042】
ここで、記録要素列毎の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位で調整するとは、記録要素を駆動可能な間隔時間(単位μsec)を1/Nの時間を単位として、記録要素列毎の駆動位相を調整することである。駆動位相の調整は、好ましくは、基準列に対する他の記録要素列の駆動位相を調整することである。
【0043】
記録要素駆動周期は、所望の周期とすることができるが、一般には記録要素の駆動可能な最小の周期に設定される。
【0044】
ずれ量が最も少ない記録パターンの組の選定及び駆動位相の調整作業は、ユーザーが記録要素列位置調整チャート上の各記録パターンの組を目視により確認し、それに対応する入力操作を各記録要素を駆動させる駆動制御部に対して実行することによって行うことができ、また、記録要素列位置調整チャートをスキャンしたデータを画像処理することによって自動的に行うこともできる。
【0045】
記録要素は、記録媒体に対して相対移動することによって該記録媒体上に記録材料滴を適用させ、画素を形成して画像を記録できるものであればよいが、好ましくは記録材料として各種の液体(インク)を使用し、記録媒体上に向けて液滴として吐出させ、着弾させることによって各種の画像を記録するプリントヘッドのノズルである。このようなプリントヘッドを備えた画像記録装置は、写真、文字、図柄等の通常の画像の記録の他、例えば半導体基板の配線パターンや液晶表示装置におけるカラーフィルターの画素パターンの描画等といった産業用途にも広く利用される。
【0046】
このような記録要素が列状に配置されることによって構成される記録要素列の数は複数列、すなわち2列以上であればよい。このような記録要素列は、例えばプリントヘッドの場合、複数のノズルが一方向に沿って配列されたノズル列として構成される。このようなノズル列は、本発明において、1つのプリントヘッドに1列だけ設けられ、そのプリントヘッドが複数平行に配列されることによって複数のノズル列を備えたヘッドユニットを構成したものであってもよいし、1つのプリントヘッドに複数平行に配列され、そのようなプリントヘッドが1又は2以上が平行に配列されることによってヘッドユニットを構成したものであってもよい。いずれの場合も、それら複数のノズル列間の位置調整を行う場合に本発明を適用することができる。
【0047】
本発明において、複数の記録要素列の配列態様は、その記録要素列の配列方向に沿うように配置され、各記録要素の配列ピッチが、複数の記録要素列間で等ピッチとなるように配置されたものであってもよいし、記録媒体との相対移動方向に沿って平行に複数列配置されることにより、記録媒体上の相対移動方向に沿って各記録要素列によって相補的に記録を行うものであってもよく、それら複数の記録要素列間で位置調整が必要となる様々な配列態様とすることができる。
【0048】
なお、相補的に記録を行うとは、1つの記録要素列によって記録される記録媒体との相対移動方向に沿う画素間を、他の記録要素列によって記録される画素が埋めるように記録を行うことをいう。
【0049】
記録要素列位置調整チャートの記録パターンは、記録要素列を構成する全ての記録要素を用いてラインパターンを記録するものとすることができるが、記録要素列間のずれ量を確認可能であれば、必ずしも1つの記録要素列を構成する全ての記録要素を用いて記録するものに限らない。例えば1つの記録要素列を構成する記録要素のうちの半分の記録要素のみを使用して記録するようにしてもよい。
【0050】
以下、プリントヘッドの各ノズルからインク滴を吐出することによって画像を記録(印刷)する画像記録装置の例を用いて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0051】
図1は、本発明に係る画像記録装置の全体構成を示す概略図であり、図中、1はヘッドユニットであり、ヘッドユニット1は、複数(ここでは2つ)のプリントヘッド10A、10Bと、各プリントヘッド10A、10Bにインクを供給するインクタンク11と、各プリントヘッド10A、10Bの駆動を制御する駆動制御部12とを有している。このプリントヘッド10A、10Bは、ここでは、それぞれ複数の記録要素であるノズル(図示せず)を列状に配置したノズル列を1列ずつ有しているものとする。13は記録媒体の搬送位置を検出するロータリーエンコーダである。
【0052】
2は記録媒体搬送部であり、記録媒体搬送部2は、紙、プラスチックシート、布帛等の記録媒体20がロール21に巻回されている。ロール21に巻回されている記録媒体20は、複数のローラ24a〜24eを介して、搬送モータ23の駆動により回転する巻き取りロール22に巻き取られることにより、図中の矢印方向に所定の一定速度で搬送されるようになっている。記録媒体20の表面は、ローラ24dとローラ24eとの間において平坦面とされ、その表面側に所定距離をおいてヘッドユニット1の各プリントヘッド10A、10Bのノズル面が対向するように配置されている。
【0053】
なお、各プリントヘッド10A、10Bは、各々のノズル列方向が記録媒体20の搬送方向と直交する方向、且つ、互いに平行となり、プリントヘッド10Aと10Bとの間でノズルピッチが同一ピッチとなるようにノズル列方向に互いにずれた位置となるように配置されており、記録媒体20をヘッドユニット1に対して1回だけ相対移動させることにより、プリントヘッド10Aのノズル列による記録幅とプリントヘッド10Bのノズル列による記録幅とを合わせた記録幅で、記録媒体20に入力データに対応する画像を記録するようになっている。
【0054】
3はPC(パーソナルコンピュータ)であり、ヘッドユニット1の駆動制御部12と信号ケーブルで接続されており、該駆動制御部12に対して制御信号を送信する。
【0055】
図2は駆動制御部12の詳細を示す構成図であり、駆動制御部12は、駆動周期作成部121と位相制御部122と全体制御部123とを有している。14は駆動開始の基準となる記録媒体20上のトリガマークを検知するためのトリガマーク検知センサであり、トリガマークの検知によって位相制御部122に対して検知信号を出力する。
【0056】
駆動周期作成部121は、記録媒体20の位置検出を行うロータリーエンコーダ13から出力されるパルス信号に基づいて、該パルス信号に対して分周、逓倍等の処理を行うことにより、所望の印字解像度からなる駆動周期信号(通常印刷周期信号)を作成し、位相制御部122に出力する。
【0057】
位相制御部122は、駆動周期作成部121から送信された駆動周期信号により各プリントヘッド10A、10Bのノズル列の駆動位相を制御する。この駆動位相は、プリントヘッド10A、10Bのノズル列単位で、1画像の印字途中に、駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で個別に設定変更可能であり、PC3から送られる入力データに基づいて、駆動位相に従った駆動タイミング信号を生成し、各プリントヘッド10A、10Bの各ノズルを選択的に駆動して、所定速度で搬送される記録媒体20に向けてインクを吐出することにより所望の画像印刷または位置調整チャートを記録する。
【0058】
この位相制御部122は、各プリントヘッド10A、10Bに対応して、通常の入力データによる画像印刷時の位相を作成する通常印刷位相作成部1221A、1221Bと、後述する位置調整チャート出力時の位相を作成する調整チャート位相作成部1222A、1222Bと、位置調整チャート出力時の駆動位相をずらせる周期を設定する位相変更周期設定部1223A、1223Bとを有している。
【0059】
図3は、通常の入力データによる画像印刷時の駆動制御部12の要部を示している。
【0060】
通常の入力データによる画像印刷時、位相制御部122からの出力は、各プリントヘッド10A、10Bに対応する通常印刷位相作成部1221A、1221Bとなるように、全体制御部123の制御によって出力切替部1224において切り替えられており、ここでは駆動周期作成部121においてロータリーエンコーダ13からの50μsec(720dpi)のパルス信号に対して、これを2分周処理することにより作成された100μsec(360dpi)の駆動周期信号により、位相制御部122の通常印刷位相作成部1221A、1221Bにおいて各プリントヘッド10A、10Bのノズル列の駆動位相を作成し、各プリントヘッド10A、10Bにそれぞれ駆動タイミング信号を出力する。
【0061】
この駆動タイミング信号は、後述する位置調整チャートによって選択された結果により、ユーザー等によってPC3から入力された値が反映され、プリントヘッド10A、10Bのノズル列単位で、駆動周期の1/N単位で駆動位相が設定変更される。ここでは通常の入力データによる画像印刷時に、記録媒体20に対して360dpiで印刷するものとされ、ユーザー等によってPC3から入力された値が反映されることで互いの駆動位相を半画素(50μsec、720dpi)ずらした状態を示している。
【0062】
このように駆動位相をずらす場合、複数のノズル列のうちの1つを基準列として扱い、その他のノズル列を基準列に対して画素をずらすようにして行う。
【0063】
次に、かかる画像記録装置において位置調整チャートを出力する方法について説明する。
【0064】
図4は、位置調整チャートを出力する時の駆動制御部12の要部を示している。
【0065】
位置調整チャート出力時、駆動周期作成部121では、ロータリーエンコーダ13からの50μsec(720dpi)のパルス信号に対して、同じく2分周処理することによって100μsec(360dpi)の駆動周期信号を作成し、位相制御部122に出力する。位相制御部122では、駆動周期作成部121から送信された100μsec(360dpi)の駆動周期信号により各プリントヘッド10A、10Bのノズル列の駆動位相を作成し、調整チャート位相モード1222A、1222Bによって各プリントヘッド10A、10Bにそれぞれ駆動タイミング信号を出力する。
【0066】
このときの駆動位相の周期は、いずれか1つのプリントヘッドのノズル列を基準列とし、この基準列に対してタイミングをずらせる側のプリントヘッドのノズル列の駆動位相のずらし量を、1つの位置調整チャートを記録する途中で駆動周期の1/N単位でずらせるように設定する。ずらせる駆動位相の周期は、位相変更周期設定部1223A、1223Bによって設定されて調整チャート位相作成部1222A、1222Bに送られ、出力切替部1224の切り替え制御によって各ヘッド10A、10Bに出力される。
【0067】
本発明において基準列は複数のノズル列のうちのいずれでも可能であるが、以下の説明では、プリントヘッド10Aのノズル列を基準列とし、このプリントヘッド10Aのノズル列に対してプリントヘッド10B側のノズル列の駆動位相を、1つの位置調整チャートを記録する途中で、駆動周期の1/N単位でずらせ、それを位相変更周期設定部1223Bによって設定された位相変更周期に基づいて繰り返すようにしている。
【0068】
図5は位置調整チャートの出力方法を説明する説明図、図6はその出力方法によって出力された位置調整チャートを示している。
【0069】
プリントヘッド10A、10Bは、ノズル列が記録媒体搬送方向に対して直交する方向となり、プリントヘッド10Aと10Bとでノズル101a、101bのピッチが等ピッチとなるように、記録媒体搬送方向に沿う位置が互いにずれて配置されている。
【0070】
ここで、この画像記録装置は、各プリントヘッド10A、10Bにおける最小の駆動周期が100μsecとされ、通常の入力データに基づく画像記録時には、記録媒体20との相対移動速度が、上記駆動周期で印字した場合に、360dpi(70.5μm)で印刷する速度(705mm/sec)とされており、ヘッドユニット1と記録媒体20とを相対移動させながら、位置調整チャート用の入力データに基づいて各ノズル101a、101bからインク滴を吐出することにより、複数のラインパターンからなる位置調整チャートを記録する。
【0071】
そして、本発明では、この1つの位置調整チャートを記録する途中で、プリントヘッド10Aと10Bの各ノズル列の相対的な駆動位相差を、プリントヘッド10Aのノズル列により記録されるラインパターンA1とそれに対応するプリントヘッド10Bのノズル列により記録されるラインパターンB1との組P1、P2・・・毎に、駆動周期の1/N単位で変化させる。
【0072】
ここでは、プリントヘッド10Aのノズル列の駆動位相を通常通り100μsecの一定間隔とし、これに対してプリントヘッド10Bのノズル列の駆動位相を、各組P1、P2・・・毎に、駆動周期の1/2(N=2とした場合)である50μsecだけ変化させている。このため、各組P1、P2・・・の間だけは、150μsecの間隔となっており、プリントヘッド10A、10Bの各ノズル列の駆動位相が同位相で記録されるラインパターンの組と50μsecだけずれた位相で記録されるラインパターンの組が所定の周期で交互に現れるようになる。
【0073】
従って、プリントヘッド10Bのノズル列からは、1つの位置調整チャート画像を作成する途中で駆動位相を1/2だけ変化させることにより、通常時の1/2の0.5画素単位の位置に印字が可能となり、1回の出力で0.5画素単位の位置調整チャートを簡単に作成することが可能となる。このため、1画素(通常の入力データによる画像記録時の画素単位)よりも細かい位置調整を行うために複数回の出力を繰り返す必要はなく、ユーザーが確認する際にも1回で出力された位置調整チャートを確認するだけで済むため、ユーザーが確認する際に間違いが発生するおそれを低減できる。
【0074】
次に、このような位置調整チャートを用いて各プリントヘッド10A、10Bの駆動位相を調整する方法について説明する。
【0075】
ユーザーは、出力された位置調整チャートを観察し、0.5画素単位で互いの位置がずれた複数のラインパターンA1、B1の組P1、P2・・・のうちから、ラインパターンA1とB1との間のずれが最も少なく、ラインパターンA1とB1との繋がりが1本の直線状に最も近いラインパターンA1、B1の組P1、P2・・・を選択する。図6では、プリントヘッド10AのラインパターンA1に対して+0.5画素ずれて印字されたラインパターンB1との組において繋がりが1本の直線状に最も近いため、通常の入力データによる画像記録時に、プリントヘッド10Aの駆動位相よりもプリントヘッド10Bの駆動位相が0.5画素分(50μsec分)遅くなるように、又は、プリントヘッド10Bの駆動位相よりもプリントヘッド10Aの駆動位相が0.5画素分早くなるように調整すればよいことがわかる。
【0076】
この駆動位相の調整作業は、例えば0.5画素分の位置ずれ調整量をユーザー自らPC3を入力操作することによって行うようにしてもよいし、出力された位置調整チャートをPC3に接続されたスキャナ(図示せず)によって読み込み、画像処理によってラインパターンA1とB1との間のずれが最も小さく、繋がりが1本の直線状に最も近い組を自動的に選択し、その組に対応する0.5画素分の位置ずれ調整量を自動設定するようにしてもよい。後者の場合でも、1枚の位置調整チャートを読み込むだけでよいため、ユーザーの操作も簡略化でき、自動読み込み調整制御のためのソフトウェアの開発負荷も軽減できる。
【0077】
PC3に取り込まれた位置ずれ調整量は、プリントヘッド10A又は10Bの駆動位相を、駆動周期の1/2である0.5画素単位で早く又は遅くするように調整するための調整量となり、全体制御部123によって駆動制御部12内の位相制御部122に送られ、通常印刷位相作成部1221A、1221Bの駆動位相に関する設定データが書き換えられる。以後、位相制御部122によって制御される各プリントヘッド10A、10Bの駆動位相は0.5画素分ずれて出力されることとなる。
【0078】
そして、通常の入力データによる画像記録時は、入力データに応じて各プリントヘッド10A、10Bの各ノズル101a、101bを選択的に駆動して記録媒体20に向けてインク滴を吐出し、所望の画像を記録する。このとき、プリントヘッド10A、10Bは、各ノズル列間の位置ずれが1画素よりも細かく位置調整されて適正化されているため、高画質の画像記録を行うことができる。
【0079】
図7は、プリントヘッド10A、10Bを、各ノズル列が記録媒体20の搬送方向と直交する方向に沿い、且つ、記録媒体20の搬送方向に沿って並置することにより、記録媒体20上の相対移動方向に沿って各ノズル列によって相補的に記録を行うことにより、ヘッドの性能の倍の速度で印字するように構成した配置態様に係る位置調整チャートの出力方法を説明する説明図、図8はその出力方法によって出力された位置調整チャートを示している。
【0080】
ここでも、上記同様、プリントヘッド10Aのノズル列の駆動位相を通常通り100μsecの一定間隔とし、これに対してプリントヘッド10Bのノズル列の駆動位相を、各組P1、P2・・・毎に、駆動周期の1/2(N=2とした場合)である50μsecだけ変化させた場合を示しており、各ノズル列間で段階的に吐出タイミングをずらせた複数のラインパターンA21、A22とB2との組P1、P2・・・からなる位置調整チャートを記録することで、印字解像度の2画素おき(通常の入力データにより画像記録時の画素単位)にしか印字できなかった図14、図15に示す従来の方法に比べて倍の解像度である1画素単位での位置調整チャートを1回の出力によって得ることが可能であることがわかる。
【0081】
記録媒体20の搬送方向に沿って並置されるプリントヘッド10A、10Bは、図9に示すように、一方のプリントヘッド10Aの各ノズル101aのノズルピッチに対し、他方のプリントヘッド10Bの各ノズル101bのノズルピッチが半ピッチずれるように配置したものであっても同様に適用可能である。このプリントヘッド10A、10Bは、一方のプリントヘッド10Aによるドット間に他方のプリントヘッド10Bによるドットを記録することで、プリントヘッド単体での解像度(360dpi)の倍の解像度(720dpi)の記録を行うものである。従って、プリントヘッド10Aによるインク滴とプリントヘッド10Bによるインク滴の着弾位置は、記録媒体搬送方向に対して同位置となるように調整される必要がある。
【0082】
ここでも、プリントヘッド10Aのノズル列の駆動位相を通常通り100μsecの一定間隔とし、これに対してプリントヘッド10Bのノズル列の駆動位相を、各組P1、P2・・・毎に、駆動周期の1/2(N=2とした場合)である50μsecだけ変化させて記録することで、1画素(通常の入力データによる画像記録時の画素単位)よりも細かい0.5画素単位(1440dpi)の位置調整が可能な位置調整チャートを1回の出力によって得ることができる。
【0083】
以上は駆動位相差を駆動周期の1/2単位(N=2)で変化させた場合であるが、変化させる駆動位相差は駆動周期の1/3、1/4という具合にNを3以上の整数とし、位置ずれ調整時に、ノズル列毎の駆動位相を駆動周期の1/N単位で設定するようにしてもよく、更に印字可能解像度を高くすることが可能である。Nの上限はプリントヘッドの解像度の限界に応じて適宜決められる。
【0084】
また、以上の説明では、プリントヘッド10Bのノズル列の駆動位相だけをプリントヘッド10Aのノズル列の駆動位相に対して変化させるようにしたが、複数のノズル列間で相対的に駆動位相差が生じればよく、例えば2つのノズル列の場合、両ノズル列の駆動位相を共に変更するようにしてもよい。
【0085】
更に、以上説明したようにプリントヘッド10A(基準ヘッド)に対してプリントヘッド10Bの駆動位相を変化させる方法では、プリントヘッド10A、10B間で位相のずれによって画像のずれが発生するため、図10に示すパルスPaの部分のように、周期的に駆動パルスを抜くようにし、プリントヘッド10A、10Bの印字画素数を同じにすることも好ましい。
【0086】
なお、一般に、複数のノズル列間でインク滴の吐出速度、ノズル面と印字面(記録媒体表面)との間の距離、ノズル列間の取り付け角度の誤差があると、記録媒体の搬送速度の違いで着弾位置が異なってしまうが、本発明によれば、位置調整チャートの出力を、ヘッドユニットと記録媒体との相対移動速度が通常の入力データによる画像記録時と同一の速度で行うことができるため、このような速度差や角度誤差に影響されずに適正な位置調整チャートを出力することができ、正確な調整を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:ヘッドユニット
10A、10B:プリントヘッド
11:インクタンク
12:駆動制御部
121:駆動周期作成部
122:位相制御部
1221A、1221B:通常印刷位相作成部
1222A、1222B:調整チャート位相作成部
1223A、1223B:位相変更周期設定部
1224:出力切替部
123:全体制御部
13:ロータリーエンコーダ
14:トリガマーク検知センサ
2:記録媒体搬送部
20:記録媒体
21:ロール
22:巻き取りロール
23:搬送モータ
24a〜24e:ローラ
3:PC(パーソナルコンピュータ)
A1、A2、A21、A22、B1、B2、B3:ラインパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備えると共に、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させながら、前記複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録を行うことにより、前記記録要素列毎のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録するチャート記録手段を備え、該チャート記録手段によって得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を調整するようにした画像記録装置であって、
前記記録要素列単位の駆動位相を記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上整数)で変更可能な駆動制御手段を有し、
前記チャート記録手段は、前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、前記駆動制御手段によって記録要素駆動周期の1/N単位で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録し、
前記駆動制御手段は、前記チャート記録手段により得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を前記記録要素駆動周期の1/N単位で調整することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを1回だけ相対移動させることにより前記通常の入力データによる画像記録及び前記記録要素列位置調整チャートの記録を行うものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像記録装置。
【請求項3】
複数の前記記録要素列は、前記ヘッドユニットと前記記録媒体の相対移動方向に沿って複数列配置されており、前記相対移動方向に沿って各記録要素列によって前記記録媒体上に相補的に記録を行うものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像記録装置。
【請求項4】
記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備え、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させることにより画像を記録する画像記録装置における前記ヘッドユニットの前記記録要素列単位の駆動位相を調整する駆動位相の調整方法であって、
前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録し、
得られた前記記録要素列位置調整チャート上の複数の記録パターンの組の中で、前記記録要素列間のずれ量が最も少ない記録パターンの組に対応する各記録要素列の記録位置に基づいて、前記記録要素列毎の駆動位相を前記記録要素駆動周期の1/N単位で調整することを特徴とする画像記録装置における駆動位相の調整方法。
【請求項5】
記録媒体に対して記録を行う複数の記録要素を列状に配置した記録要素列を複数有するヘッドユニットを備え、該ヘッドユニットと前記記録媒体とを前記記録要素列に対して所定角度をなして相対移動させることにより画像を記録する画像記録装置における前記ヘッドユニットの前記記録要素列単位の駆動位相を調整するための位置調整チャートを出力する方法であって、
前記ヘッドユニットと前記記録媒体とを相対移動させながら、前記複数の記録要素列間の相対的な駆動位相差を、記録要素駆動周期の1/N単位(Nは2以上の整数)で変化させながら、該複数の記録要素列間で前記記録要素の駆動タイミングを段階的にずらせて記録することにより、前記記録要素列間のずれ量が異なる複数の記録パターンの組からなる記録要素列位置調整チャートを記録することを特徴とする画像記録装置における位置調整チャートの出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−201732(P2010−201732A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48593(P2009−48593)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】