説明

画像記録装置および画像記録方法

【課題】吐出特性のばらつきに基づく濃度ムラの発生を抑制することができる画像記録装置および画像記録方法を提供する。
【解決手段】本発明の画像記録装置は、画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数、主走査方向に対して傾斜して配列されたノズルブロックを備え、このノズルブロックが、記録媒体が搬送される副走査方向に沿って複数配置されている記録ヘッドを、副走査方向と直交する主走査方向に走査させて、シングリングにより主走査方向にライン状の像を形成して画像を記録するものであり、ライン状の像を構成するドットを形成する複数のノズルは、副走査方向でムラが生じないようにノズルブロック内の異なる吐出特性のものが組み合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式の画像記録装置および画像記録方法に関し、特に、吐出特性のばらつきに基づく濃度ムラの発生を抑制する画像記録装置および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を記録するものとしては、画像信号に応じてノズルからインク滴を吐出させ、記録媒体上に着弾させ、画像を記録するインクジェット記録装置がある。
インクジェット記録装置の描画方式としては、シリアル方式、またはシャトル方式と呼ばれる方式がある。
これは、ノズルが複数形成されたインクジェットヘッド(記録ヘッド)をキャリッジと呼ばれるものを用いて、記録媒体が搬送される副走査方向と直交する方向(主走査方向)に往復移動させて、画像記録信号に応じてノズルからインク滴を吐出して記録媒体の幅方向に像を記録し、その後、記録媒体を主走査方向に相対的に搬送して再度インクジェットヘッドを往復移動させながら像を記録することを繰り返し行い、所望の画像を、記録媒体に記録するものである。
【0003】
シリアル方式においては、記録画像の解像度を高くすること、さらには画像記録速度を高速化するために、複数のノズル列を千鳥状に配置したインクジェットヘッドが用いられている。しかし、このようなノズル列を千鳥状に配置したインクジェットヘッドに限らず、ノズル列間のインク吐出の特性にばらつきがある。そこで、このインク吐出の特性のばらつきを解消したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1においては、インクジェット記録方式の記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置が記載されている。この特許文献1においては、記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に主走査方向に主走査させる主走査手段と、記録媒体を記録ヘッドに対して主走査方向とは異なる副走査方向に副走査させる副走査手段と、複数の記録素子列が配列された記録素子列の複数を千鳥状に配置した記録ヘッドを、記録媒体上の同一のラインに対して少くとも1回の副走査を介して相対的に複数回主走査させつつ記録させることにより同一ラインへの記録を完成させる制御手段とを有する。この制御手段により、記録素子列のうち異なる記録素子列の記録素子列を用いて、同一のラインへの記録を完成させている。
このように千鳥状に配列した記録ヘッドを用いたマルチパス印字において、同一のラインを異なるノズル列のノズルによって形成することにより同一ライン内でドットの着弾ずれの指向性を分散させ、ノズル列間のバラツキによる濃度ムラを低減するものである。
【0005】
上記特許文献1は、ノズル列間の特性のばらつきには有効であるものの、インクジェットヘッドの構造としては、他にも提案されている(特許文献2参照)。
図7に示すように、特許文献2に記載された記録ヘッド100は、本流路としての共通流路160、160A、160B、支流路162、主供給口164、バルブなどからなるインク供給系を備えている。
【0006】
共通流路160は千鳥でマトリックス状に配置されたインク室ユニット153を挟むように上下2列設けられ主走査方向に沿うように配置されている。共通流路160A,160Bの左右端部166には主供給口164が形成され、この主供給口164にはインク供給用の供給管168が連結される。記録ヘッド100においては、図7における下右側と上左側の供給管168は合流して主流路169を構成する。
【0007】
一方、支流路162は各圧力室152の配置と同列、主走査方向に沿って複数列設けられ、上下の共通流路160と連結されている。したがって、支流路162は上下2列の共通流路160に掛け渡されるようにして配置される。また、各支流路162は、各圧力室152の供給口154と連結されている。
このような構成のインク供給系によって、供給管168からインクが供給されると、共通流路160および支流路162を通じて各圧力室152にインクが供給される。
【0008】
【特許文献1】特開平11−216856号公報
【特許文献2】特開2005−313622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の記録ヘッド100においては、図7に示す流路構造となるため、特許文献1に開示されるようなノズル列間の特性のバラツキではなく、ノズル(圧力室)が接続される支流路162の位置によって、ノズル特性が異なるという問題点がある。すなわち、ノズルの位置が、支流流路のどこの位置かでノズルの吐出特性が異なる。このように、ノズル列間による特性のバラツキではないため、特許文献1では、特許文献2におけるノズル特性を解消することができない。
【0010】
図7に示す記録ヘッド100において、参照符号162Aを付す支流路において、同一支流路162A内のノズルA〜Fでは、両端のノズルAおよびノズルFは、片側にしか他のノズルがない。すなわち、クロストークの影響を受けるノズルが片側のみにしかない。これに対して、ノズルC、Dは同一支流路162A内において両側に他のノズルがあり、それら両側のノズルからクロストークの影響を受ける。このため、クロストークの影響を受ける量、またはその確率は、ノズルA、ノズルF<ノズルB、ノズルE<ノズルC、ノズルDとなる。
【0011】
特許文献2の記録ヘッド100は、具体的には、図8〜図10に示すようなノズル特性を有する。
特許文献2の記録ヘッド100においては、同一支流路162A内において、ノズルA〜Fのうち、2つのノズルからインクを同時に吐出させた場合、図8に示すように、吐出量の変化率が異なる。このように、クロストークは、近傍のノズルが同時に駆動された場合その影響で、吐出量と吐出速度が変化する。多くの場合、それらが減少し、ノズル間の距離が近いほど影響を受ける。
しかしながら、他の支流のノズルを吐出しても、その影響は受けず、同一支流流路内におけるノズル間で影響を受ける。
図8に示すように、ノズル間を4つ離した場合には、その影響がない。例えば、ノズルBであれば、ノズルFと同時駆動しても、吐出量に変化はない。
【0012】
図8に示す吐出量の変化率は、ノズル間のクロストークに起因するもので、支流路162Aの中央部では両側に他のノズルがあるのに対し、端部では片側にしかノズルがなく、両者の間でクロストークの影響度が変わることによるものである。
なお、図8の横軸に示す数字は、同時駆動するノズル間を示すものであり、正の数字は、ノズルのアルファベットが進む側における側のノズル間隔を示し、図8において、例えば、1であれば、ノズルCとノズルDである。また、負の数字は、ノズルのアルファベットが戻る側における側のノズル間隔を示し、図8において、例えば、−1であれば、ノズルDとノズルCである。
【0013】
また、図9は、ノズルA〜Fについて、隣接した両側のノズル(1ノズルずつ)を同時駆動した場合における吐出量の変化率を示すグラフである。
ノズルA、Fは、片側にしか他のノズル(ノズルBまたはノズルE)がない。このため、クロストークの影響を受けるノズルが片側のみであり、図9に示すように、吐出量の変化率が小さい。
これに対して、ノズルB〜Eは、同一支流路162A内の両側に他のノズルがあるため、それら両側のノズルからクロストークの影響を受ける。このようなことから、隣接する両側ノズルの(片側1ノズルずつ)が同時駆動された場合において、クロストークの影響を受ける量は、ノズルA、F<ノズルB〜Eとなる。
【0014】
さらに、図10は、ノズルA〜Fについて、隣接した両側のノズル(2ノズルずつ)を同時駆動した場合における吐出量の変化率を示すグラフである。
上述のように、ノズルA、Fは、クロストークの影響を受けるノズルが片側のみ(ノズルBまたはノズルE)であり、図10に示すように、吐出量の変化率が小さい。
これに対して、ノズルB、ノズルEは、その配置位置から、同時駆動されるのが、片側が1ノズル、もう一方側が2ノズルであり、これらのノズルからクロストークの影響を受ける。また、ノズルC、Dは、同時駆動されるのが、両側が2ノズルであり、これらのノズルからクロストークの影響を受ける。このようなことから、隣接する両側ノズルの(片側1ノズルずつ)が同時駆動された場合において、クロストークの影響を受ける量は、ノズルA、F<ノズルB、ノズルE<ノズルC、ノズルDとなる。
【0015】
なお、インクジェット記録方式では、誤差拡散法などのハーフトーンで階調を再現するため、隣接ドットが常に打滴されるわけでないものの、濃度ムラが問題となるような略均一濃度の画像内では、略同一確率的に打滴されるので、マクロ的に見れば、図10の特性を持つ濃度変化が観察される。
【0016】
図8〜10に示すように、同一支流路162A内において、中央部のノズルC、Dが周辺のノズルの影響を大きく受け、吐出量の低下が、端部のノズルA,Fに対して、確率的に多く発生する。このため、図11(a)に示すように、ノズルA〜Fからインク滴を吐出させた場合、記録媒体上に形成されるドットの大きさは、ノズルA、FからのドットAd、Fdが一番大きく、次に、ノズルB、EからのドットBd、Edが大きく、ノズルC、DからのドットCd、Ddが一番小さい。
このため、図11(b)に示すように、1つの流路に接続されたノズル列の繰り返し周期のムラが発生し、この主走査方向Rに走査する場合、この主走査方向Rに垂直な面にノズル列を投影した場合における列幅周期の濃度ムラ、すなわち、副走査方向Mにおける濃度ムラが発生する。
【0017】
このように、特許文献2においては、支流路162Aの中央付近のドットCd、Ddが小さく、支流路162Aの端部のドットAd、Fdが大きくなり、結果として、副走査方向Mにおけるインクジェットヘッドの折り返し周期で、濃度ムラが生じる。
【0018】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、吐出特性のばらつきに基づく濃度ムラの発生を抑制することができる画像記録装置および画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、記録ヘッドを記録媒体が搬送される副走査方向に対して直交する主走査方向に走査させて、シングリングにより前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域に像を形成して画像を記録する画像記録装置であって、前記記録ヘッドは、前記画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数、前記主走査方向に対して傾斜して配列されたノズルブロックを備え、前記ノズルブロックが前記副走査方向に沿って複数配置されているものであり、前記シングリングにより形成される前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域の像を構成するドットを形成する複数のノズルは、ムラが生じないようにノズルブロック内の異なる吐出特性のものが組み合わされていることを特徴とする画像記録装置を提供するものである。
本発明において、シングリングとは、記録媒体に記録しようとする画像について、記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域に記録ヘッドを主走査方向に少なくとも2回、主走査方向に走査させ、その間、少なくとも1回、記録媒体を副走査方向に搬送させて像を形成することである。
本発明において、同一領域とは、完全な同一領域だけではなく、略同一な領域も含まれる。
【0020】
本発明においては、前記各ノズルブロック毎に異なるインク供給流路に接続されており、各ノズルブロックにおける各ノズルは同じインク供給路に接続されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、前記各ノズルブロックにおける各ノズルの前記異なる吐出特性は、クロストークによるものであるとき、より効果を有する。
【0022】
さらに、本発明においては、前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が異なる組み合わせであることが好ましい。
さらにまた、本発明においては、前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が流路端部に接続されるノズルと、流路中央部に接続されるノズルとが同一の確率で組み合わされていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の第2の態様は、記録ヘッドを記録媒体が搬送される副走査方向に対して直交する主走査方向に走査させて、シングリングにより前記主走査方向にライン状の像を形成して画像を記録する画像記録方法であって、前記記録ヘッドは、前記画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数、前記主走査方向に対して傾斜して配列されたノズルブロックを備え、前記ノズルブロックが前記副走査方向に沿って複数配置されているものであり、前記シングリングにより形成されるライン状の像を構成するドットを形成する複数のノズルは、前記副走査方向でムラが生じないようにノズルブロック内の異なる吐出特性のものが組み合わされていることを特徴とする画像記録方法を提供するものである。
【0024】
本発明においては、前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が異なる組み合わせであることが好ましい。
また、本発明においては、前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が流路端部に接続されるノズルと、流路中央部に接続されるノズルとが同一の確率で組み合わされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、記録ヘッドの各ノズルブロックの各ノズルのインクの吐出特性のばらつきに基づく濃度ムラの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の画像記録装置および画像記録方法について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置を示す模式図である。
【0027】
画像記録装置10は、基本的に、記録媒体Pを供給する供給部12と、供給部12から供給された記録媒体Pを平面性を保持しながら、搬送する搬送部14と、搬送部14に対向して配置され、記録媒体Pに画像を描画する記録ヘッドユニット50、及びこの記録ヘッドユニット50に供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部52等を有する描画部16と、画像が描画された記録媒体Pを加熱・加圧する加熱加圧部18と、画像が描画された記録媒体Pを外部に排出する排出部20と、これらを制御する制御部22とを有する。この画像記録装置10は、インクジェット方式の記録装置である。
【0028】
供給部12は、マガジン30と、加熱ドラム32と、カッタ34とを有する。
マガジン30は、ロール状の記録媒体Pが収納されている。画像描画時には、記録媒体Pがマガジン30から加熱ドラム32に供給される。
加熱ドラム32は、記録媒体Pの搬送経路において、マガジン30の下流側に配置され、マガジン30から送り出された記録媒体Pを、マガジン30に収納されていた方向と逆の方向に曲げた状態で加熱する。
記録媒体Pを加熱ドラム32により加熱することで、マガジン30に収納されている間に記録媒体Pについた巻きクセを除去する。つまり、加熱ドラム32は、記録媒体Pのデカール処理を行う。
このとき、記録媒体Pが、印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御することが好ましい。
【0029】
カッタ34は、記録媒体Pの搬送路幅以上の長さの固定刃34Aと、固定刃34Aに沿って移動する丸刃34Bとを有し、記録媒体Pの画像が描画される面側に丸刃34Bが配置され、搬送路を挟んで対向する面に固定刃34Aが配置されている。
カッタ34は、加熱ドラム32を通過して供給された記録媒体Pを所望のサイズにカットする。
【0030】
ここで、本実施形態では、供給部のマガジンを1つとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、紙幅、紙質や種類が異なる記録媒体を収納したマガジンを複数配置してもよく、また、マガジンに替えて、または、加えて、予め所定長さに切断されている記録媒体が多数枚積層されたカセットも用いることができる。また、記録媒体Pとして、予め所定長さに切断されている記録媒体Pのみを用いる場合は、上述の加熱ローラ及びカッタを必ずしも設ける必要はない。
【0031】
また、複数のマガジン及び/又はカセットを用い、複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードまたは無線タグなどの情報記録体をマガジン及び/又はカセットに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0032】
搬送部14は、吸着ベルト搬送部36、吸着チャンバー39、ファン40、ベルト清掃部42及び加熱ファン44を有し、供給部12でデカール処理され、所定長さにカットされた記録媒体Pを描画位置つまり、後述する描画部16により画像が描画される位置に搬送する。
【0033】
吸着ベルト搬送部36は、記録媒体Pの搬送経路において、カッタ34の下流側に配置されており、ローラ37a、ローラ37b及びベルト38と、モータ98aとを有する。
ベルト38は、記録媒体Pの幅よりも広い幅寸法を有する無端状のベルトであり、ローラ37aとローラ37bとで張架されている。また、ベルト38は、ベルト面に多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。
また、吸着ベルト搬送部36の少なくとも画像描画(印字)位置、つまり、描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の記録ヘッド50K〜50Y(図2参照)のノズル面に対向する部分は、ノズル面に対して水平(フラット)に保持されている。
ベルト38が巻かれているローラ37a、37bの少なくとも一方は、モータ98aに接続されており、モータ98aの動力がローラ37a、37bの少なくとも一方を介してベルト38に伝達されることにより、ベルト38は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト38上に保持された記録媒体Pは方向a(図1の左から右)に搬送される。この方向aは、画像記録時に、モータ98aにより、記録媒体Pが搬送される副走査方向Mと同じ方向である。画像記録時においては、記録媒体Pは、間欠的に搬送される。
【0034】
ここで、記録媒体Pの搬送手段は特に限定されず、吸着ベルト搬送部36に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いることもできる。しかしながら、描画領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題があるため、印字領域では、本実施形態のように、画像面と接触しない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0035】
吸着チャンバー39は、ベルト38の内側において描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の記録ヘッド50K〜50Y(図2参照)のノズル面に対向する位置に設けられている。また、ファン40は吸着チャンバー39に接続されている。吸着チャンバー39をファン40で吸引して負圧にすることによってベルト38上の記録媒体Pがベルト38に吸着保持される。
記録媒体Pをベルト38に吸着させることで、記録媒体Pを安定して保持することができる。
【0036】
ベルト清掃部42は、ベルト38の外側、つまりリング形状の外周面と対向する側で、かつ、記録媒体Pの搬送経路から外れた位置に配置されている。つまり、ベルト38は、描画部16を通過し、記録媒体Pを後述する加圧ローラ54に排出した後、ベルト清掃部42に対向する位置を通過する。
ベルト清掃部42は、縁無しプリント等を行うことによりベルト38上に付着したインクを除去する。ベルト清掃部42としては、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、またはこれらを組み合わせた方式などが用いられる。なお、清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0037】
加熱ファン44は、ベルト38の外側で、かつ記録媒体Pの搬送経路上において描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の上流側に配置されている。
加熱ファン44は、描画前の記録媒体Pに加熱空気を吹き付け、記録媒体Pを加熱する。描画直前に記録媒体Pを加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0038】
描画部16は、画像を描画(印字)する記録ヘッドユニット50と、記録ヘッドユニット50にインクを供給するインク貯蔵/装填部52とを有する。
【0039】
図2は、本実施形態の画像記録装置の記録ヘッドユニット周辺の要部を示す模式的平面図である。
記録ヘッドユニット50は、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yを有しており、ノズル面がベルト38の記録媒体Pが載置される面に対向して配置されている。
この記録ヘッドユニット50においては、記録媒体Pの幅方向(主走査方向R)に延びる2本のガイドレール53に沿って往復移動可能なキャリッジ55が設けられている。キャリッジ55には、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクに対応する記録ヘッド50K、50C、50M、50Yが搭載されている。これらの記録ヘッド50K、50C、50M、50Yは、キャッリッジ55に対して着脱自在に構成されている。また、キャリッジ55には、モータ98bが接続されており、このモータ98bにより、キャリッジ55が記録ヘッド50K、50C、50M、50Yと一体的に主走査方向Rに走査される。
記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、それぞれ、吐出部60(図3(a)参照)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
【0040】
なお、本実施形態においては、KCMYの標準色(4色)の構成としたが、インク色、色数の組み合わせについては、本実施形態には限定されるものではなく、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インク滴を吐出するヘッドを追加する。
また、記録ヘッドユニットをK(黒)インク滴を吐出する記録ヘッドのみ、つまり、単色の記録ヘッドユニットとし、単色の画像を描画する画像記録装置として用いることもできる。
【0041】
インク貯蔵/装填部52は、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンクを有する。
インク供給タンクとしては、例えば、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示せず)からタンク内にインクを補充する方式や、タンクごと交換するカートリッジ方式を用いることができる。
インク貯蔵/装填部52の各インク供給タンクは、図示しない管路を介して各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yと連通されており、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yにインクを供給する。
【0042】
ここで、インク貯蔵/装填部52は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有することが好ましい。
また、使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式を用いることが好ましい。また、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0043】
加熱・加圧部18は、後乾燥部46と、加圧ローラ対54とを有し、描画部16で画像が描画された記録媒体Pを加熱・加圧し、画像部を乾燥し定着させる。
後乾燥部46は、記録媒体Pの搬送経路において、記録ヘッドユニット50の下流側でかつ、ベルト38に対向する位置に配置されている。後乾燥部46は、加熱ファン等であり、記録媒体Pの画像面に熱風を吹き付け、描画された画像を乾燥させる。
ここで、後乾燥部46には、ヒータ99(図4参照)が設けられている加熱ファンを用い、熱風を吹き付けることが好ましい。
加熱ファンにより、記録媒体上の画像部のインクを乾燥させることで、画像部に接触することなく乾燥させることができる。これにより、記録媒体Pに描画された画像に画像欠陥、画像汚れが生じることを防止できる。
【0044】
また、加圧ローラ対54は、記録媒体Pの搬送経路において、後乾燥部46の下流側に配置されている。加圧ロール対54は、後乾燥部46を通過した後、ベルト38から分離された記録媒体Pを、挟持搬送する。
加圧ローラ対54は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、吸着ベルト搬送部36により搬送された記録媒体Pの画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ54で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0045】
また、多孔質のぺーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことができ、画像の耐候性が向上させることができる。
【0046】
排出部20は、加熱・加圧部18で画像が定着された記録媒体Pを排出する。
また、排出部20には、オーダ別に画像を集積するソーターが設けることが好ましい。
なお、本実施形態のように、排出部を1つ設けに限定されるものではなく、目的に応じて排出部を選択できるようにすることが好ましく、例えば、排出部を2つ以上設けてもよい。
【0047】
次に、制御部22は、供給部12、搬送部14、描画部16、加熱・加圧部18、排出部20による記録媒体の搬送、加熱、描画等を制御する。制御部22の構成については、後ほど詳細に説明する。
【0048】
次に、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの構造について説明する。ここで、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、吐出するインクの色を除いて、構成は同一であるので、以下、代表して記録ヘッド50Kについて説明する。また、ノズルA〜Fについても、構成は同じであるため、代表して、ノズルAに基づいて説明する。
【0049】
図3(a)は、本発明の実施形態の画像記録装置の記録ヘッドを示す模式図であり、(b)は、記録ヘッドの吐出部の構造を示す模式的断面図である。
なお、図3(b)に示す吐出部60は、流路の構成は、図7に示す特許文献2の記録ヘッド100と同様の構成であるため、それと同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図3(a)に示すように、記録ヘッド50Kにおいて、記録媒体P面上に画像形成されるドットピッチを高密度化するためには、記録ヘッド50Kにおけるノズルピッチを高密度化する必要がある。
本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数(ノズルA〜F)、主走査方向Rに対して、所定の角度θ傾斜して配列されており、これらのノズルA〜Fによりノズル列(ノズルブロック)が構成されている。このノズル列が副走査方向Mに沿って、所定の解像度となるよう複数配置されており、ノズルA〜Fが、千鳥状で、かつマトリックス状に配置されている。
本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、インク滴が吐出される各ノズルA〜Fには、それぞれ吐出部60が設けられている。各吐出部60が、千鳥状で、かつマトリックス状に配置されている。このノズルA〜F、すなわち、吐出部60の配置により、見かけ上のノズルピッチの高密度化が達成されている。
【0051】
記録ヘッド50においては、ノズルA〜F(各吐出部60)が主走査方向Rに対して所定の角度θ傾けて配置されている。このように、主走査方向Rに対して所定の角度θ傾けて、吐出部60を一定のピッチdで複数配列することにより、主走査方向Rに並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×COSθとなる。
【0052】
主走査方向Rについては、各ノズルA〜Fが一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向Rに並ぶように投影されるノズル列が、例えば、1インチ当たり1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度の記録解像度(ドットピッチ)のノズル構成を実現することができる。
【0053】
図3(a)に示すように、本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、主走査方向Rに沿って、例えば、6行のノズル行α〜αが設けられている。この6行の各ノズル列Nは、6個のノズルA〜Fにより構成されている。各ノズル列N毎に、1つの支流路162が配置されており、各ノズル列Nにおいては、互いの流路は隔離されている。このように、1つの支流路162に対して1つのノズル列Nが設けられている。これをノズルブロックともいう。
【0054】
図3(a)に示すように、記録ヘッド50Kには多数のノズルA〜Fが千鳥状に設けられており、副走査方向Mのノズル密度(ノズルピッチ)は、例えば、1インチあたり1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度の記録解像度(ドットピッチ)にできる。
【0055】
次に、記録ヘッド50Kの吐出部60の内部構造について説明する。
ノズルAには、対応して圧力室152が設けられている。この圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズルAと供給口154が設けられている。各圧力室152は供給口154を介して支流路162(図7参照)と連通されている。なお、圧力室152の形状は、特に限定されるものではなく、平面形状が四角形、五角形、または六角形などの多角形、円形、または楕円形とすることができる。
記録ヘッド50Kの吐出部60は、図3(b)に示すように、例えば、振動板70および複数の基板72,74,76の積層構造によって構成されている。
【0056】
本実施形態の振動板70は、導電性部材からなり、圧電素子62(ピエゾ素子)の下面電極と電気的に接続され、共通電極としても機能するものである。この圧電素子62は、アクチュエータとして機能するものである。
【0057】
基板72には圧力室152用の開口が形成されており、基板74には、基板76に形成された支流路162から圧力室152にインクを供給する供給口154が形成されている。
また、基板76内に形成された支流路162は、上述のように、共通流路160に接続されている(図7参照)。
基板76の下面には、ノズルAが形成されたノズルプレート78が設けられている。このノズルAと圧力室152とを連通するインク吐出用の開口64が基板74、76に形成されている。
【0058】
なお、圧電素子62上面には、圧電素子62を駆動制御するための駆動信号を入力されるフレキシブル配線板(図示せず)が設けられている。この圧電素子62に駆動信号が印加されると、ノズルAからインク滴が吐出する。
【0059】
また、共通流路160、支流路162、主供給口164などからなるインク供給系には、終端部、すなわち流路の行き止まりとなる部分が介在しない。具体的には、上下2列の共通流路160に掛け渡されるようにして配置される支流路162によって、支流路162の行き止まり部分をなくしている。この構造により、インクの停留が発生せず、インクがよどまずにスムーズに流れ易い。
【0060】
なお、共通流路160および支流路162の横方向(すなわちノズルプレート78のノズル面と並行な方向)の幅を広げると、インクの単位時間あたりの流量を増加させることができるが、同時に記録ヘッド50Kが横方向(主走査方向)に大型化し、ノズルAからFの配置密度が低下する。したがって、これを防止するために共通流路160および支流路162は、縦方向(すなわちノズルプレート78のノズル面と垂直な方向)に幅を広げることが望ましい。
【0061】
次に、吐出部60のインク吐出方法について説明する。
インクは、支流路162から供給口154を経て圧力室152及びノズルAに供給される。
圧力室152及びノズルAにインクが満ちている状態で、圧電素子62に駆動信号(駆動電圧)が印加されると、振動板70がノズルA側に凸になるように変形し、これにより圧力室152が加圧されてノズルAからインク滴が吐出される。このように圧電素子62を駆動させることにより、ノズルAからインク滴を吐出させることができる。
そして、ノズルAからインク滴が吐出されると、支流路162から供給口154を経て圧力室152に新しいインクが供給される。
【0062】
なお、本実施形態において吐出部の構造は、特に限定されるものではない。
また、本実施形態においては、圧電素子(ピエゾ素子)に代表されるアクチュエータの変形によって、インク滴を吐出させる方式を用いているが、本発明は、これに限定されるものではない。インク滴を吐出させる方式は、特に限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0063】
図4は、画像記録装置10の制御部22のシステム構成を示す要部ブロック図である。
制御部22は、通信インターフェース80、システムコントローラ82、画像メモリ84、モータドライバ86、ヒータードライバ88、プリント制御部90、画像バッファメモリ92、ヘッドドライバ94等を備え、上述したように、供給部12、搬送部14、描画部16、加熱・加圧部18、排出部20による記録媒体Pの搬送、加熱、描画等を制御する。
【0064】
システムコントローラ82は、通信インターフェース80、画像メモリ84、モータドライバ86、ヒータードライバ88等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ82は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ96との間の通信制御、画像メモリ84の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ98やヒータ99を制御する制御信号を生成する。
【0065】
通信インターフェース80は、ホストコンピュータ96から送られてくる画像データを受信し、システムコントローラ82に送信する。通信インターフェース80としては、USB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを用いることができる。さらに、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
【0066】
画像メモリ84は、通信インターフェース80を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ82を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ84は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
ホストコンピュータ96から送り出された画像データは通信インターフェース80を介して画像記録装置10に取り込まれ、システムコントローラ82を通じて、画像メモリ84に記憶される。
【0067】
モータドライバ86は、システムコントローラ82からの指示にしたがってモータ98を駆動するドライバ(駆動回路)である。
ヒータードライバ88は、システムコントローラ82からの指示にしたがって、後乾燥部46に設けられたヒータ99を駆動するドライバ(駆動回路)である。
【0068】
プリント制御部90は、システムコントローラ82の制御に従い、画像メモリ84内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ94に供給する制御部である。プリント制御部90において所要の信号処理が施され、この画像データに基づいてヘッドドライバ94を介して記録ヘッド50K,50C,50M,50Yのインク滴の吐出量、吐出タイミングの制御、およびモータ98bによるキャリッジ55の主走査方向Rの走査、すなわち、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの主走査方向Rの走査の制御が行われる。これにより、記録する画像に応じたドット配置が実現され、記録媒体P上にライン状の像が形成され、これが副走査方向に繰り返し行われ最終的に画像が形成される。
【0069】
プリント制御部90には画像バッファメモリ92が備えられており、プリント制御部90における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ92に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ92はプリント制御部90に付随する態様で示されているが、画像メモリ84と兼用することも可能である。また、プリント制御部90とシステムコントローラ82とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0070】
ヘッドドライバ94はプリント制御部90から与えられる画像(印字)データに基づいて各色の記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの各吐出部60の圧電素子62(アクチュエータ)を駆動する。ヘッドドライバ94にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0071】
次に、画像記録装置10によりプリント、印刷物を作成する方法を説明する。本実施形態においては、シングリングにより所望の画像を形成するものである。
先ず、供給部12のマガジン30から供給された記録媒体Pは、加熱ドラム32でデカール処理され、平坦化される。その後、カッタ34で所定長さに切断された後、搬送部14に供給される。
搬送部14に供給された記録媒体Pは、吸着ベルト搬送部36のベルト38上に載置され、ベルト38の回転と共に搬送される。
【0072】
吸着ベルト搬送部36により搬送される記録媒体Pは、加熱ファン44に対向する位置を通過して、所定温度に加熱され、その後、記録ヘッドユニット50に対向する位置を通過する。このとき、記録媒体Pの表面に対して、各記録ヘッド50K、50C、50M、50Yをキャリッジ55を介してモータ98bにより主走査方向Rに走査しつつ、記録媒体Pに所定の幅で主走査方向Rに伸びた領域に、K、C、M、Yの順でインク滴を吐出する。1回の走査が終了した後、記録媒体Pを所定のピッチだけ、例えば、記録ヘッド50K、50C、50M、50Yの副走査方向Mの長さの半分だけ、副走査方向Mに移動させる。そして、モータ98bにより主走査方向Rに走査しつつ、インク1回目の主走査によりインク滴を吐出した記録媒体Pの主走査方向Rに伸びる同一領域(略同一領域も含む)に、K、C、M、Yの順で再度インク滴を吐出する。これにより、形成する画像の一部の像を形成する。これを逐次繰り返し、副走査方向Mに、記録ヘッドにより記録する副走査方向Mにおける長さを、間欠的に搬送しつつ、主走査方向Rに沿って像を形成し、最終的な画像を記録媒体P上に記録する。
【0073】
なお、記録媒体Pが記録ヘッドユニット50と対向する位置を通過する時は、吸着チャンバー39により吸引されており、記録媒体Pと記録ヘッドユニット50との距離は一定となる。記録ヘッドユニット50で画像が形成された記録媒体Pは、さらに、ベルト38により搬送され、後乾燥部46に対向する位置を通過して、インクで形成された画像部が乾燥され、加圧ローラ54で定着されたのち排出部20から排出される。
画像記録装置10は、このようにして記録媒体P上に画像を描画(記録)し、プリント、印刷物を作製する。
【0074】
本実施形態の記録ヘッドユニット50による画像形成時において、シングリングする際に、記録媒体に記録しようとする画像について、記録媒体P上の主走査方向Rに伸びる同一領域に記録ヘッド50K、50C、50M、50Yを主走査方向Rに少なくとも2回、主走査方向Rに走査させ、主走査する間には、少なくとも1回、記録媒体Pを副走査方向Mに搬送させて略同一の領域にライン状の像(略同一領域の像)を形成し、この像の形成を繰り返し行い、最終的に、記録媒体P上に所望の画像を形成する。
【0075】
具体的には、本実施形態において、図5に符号Sで示す1回目の走査(第1パス)で、形成する画像に応じた画像記録信号に基づいてインク滴を吐出して、図6(a)に示すように、画像を構成するドットを形成する。
これにより、図6(a)に示すように、第1パスによる第1のドットDS1が形成される。この第1のドットDS1においては、ノズルA、FによるドットAd、FdによりラインLa、ノズルB、EによるドットBd、EdによりラインLb、ノズルC、DによるドットCd、DdによりラインLc、ノズルD、CによるドットDd、CdによりラインLd、ノズルE、BによるドットEd、BdによりラインLe、ノズルF、AによるドットFd、AdによりラインLfが形成されている。
なお、各ラインLa〜Lfは、記録ヘッド50K、50C、50M、50Yを主走査することにより形成される記録媒体Pの主走査方向Rに伸びる領域の像を構成するためのものである。
【0076】
次に、2回目の主走査(第2パス)をするとき、記録ヘッド50K〜50Yの副走査方向Mにおける長さをLとするとき、図5に符号Sで示すように記録ヘッド50K〜50Yの長さLの半分の長さL/2、記録媒体Pを副走査方向Mに相対的に移動させた後、主走査方向Rに記録ヘッド50K〜50Yを移動させつつ、形成する画像に応じた画像記録信号に基づいて、インク滴を吐出して記録媒体Pの主走査方向Rに伸びる領域にライン状の像J(図6(b)参照)を記録する。このようなライン状の像Jを副走査方向Mに逐次形成することにより、記録媒体Pに所望の画像を記録することができる。
なお、図6(b)において、白丸は、第1パスSで形成された第1のドットDS1を示すものであり、グレーの丸は、第2パスSで形成された第2のドットDS2を示すものである。
【0077】
本実施形態においては、以下の条件を満たすように記録媒体Pを副走査方向Mに搬送している。
本実施形態においては、第1パスSで支流路162の端部のノズルA、F(図5ではノズル列N11、N12)により形成された同一ラインLa、Lf上には、第2のパスSでは支流路162の中央部のノズルC、D(図5ではノズル列N21)によりドットが形成されるように、第1パスSで支流路162の中央部のノズルC、D(図5ではノズル列N12)によりドットが形成されたラインLc、Ld上には、第2のパスSでは、支流路162の端部のノズルF、A(図5ではノズル列N21、N22)によりドットが形成されるように、第1パスSでノズルB、E(図5ではノズル列N12)によりドットが形成されたラインLb、Le上には、第2のパスSでは、ノズルE、B(図5ではノズル列N21、N22)によりドットが形成されるように、記録媒体Pを副走査方向Mに搬送している。
【0078】
これにより、図6(b)に示すように、像Jにおいては、第1パスSで、支流流路端部のノズルA、Fにより形成されたライン上には、第2のパスSでは支流中央部のノズルC、Dでドットが形成される。これにより、像Jを構成する各ラインLa〜Lfの平均的な濃度は均一になり、クロストークによるノズル間の吐出特性のばらつきに基づく、スジ、濃度ムラが補正される。このようして、画像形成によるスジ、ムラの発生を抑制することができる。特に、隣接ノズルの同時駆動率が高くなる場合のベタ画像において有効である。
【0079】
なお、本実施形態においては、2回の主走査によりシングリングして、すなわち、2パスで、記録媒体Pに、記録ヘッドに応じた所定の幅で主走査方向Rに伸びる領域に、画像を構成する像を形成するものとしたが、本発明は、これに限定されるものではなく、シングリングとしては、3パス以上でもよい。この場合、像Jを構成する各ライン上に同一確率で支流路上の各位置のノズルによる打滴が同一確率で現れるか、端部と中央部のノズルが同一確率で現れるように画像を記録する構成とすれば、特に限定されるものではない。
【0080】
以上、本発明の画像記録装置および画像記録方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る画像記録装置を示す模式図である。
【図2】本実施形態の画像記録装置の記録ヘッドユニット周辺の要部を示す模式的平面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態の画像記録装置の記録ヘッドを示す模式図であり、(b)は、記録ヘッドの吐出部の構造を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態の画像記録装置の制御部のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態の画像記録装置の画像記録方法を説明するための模式図である。
【図6】(a)および(b)は、本実施形態の画像記録方法を工程順に示す模式図である。
【図7】特許文献2の記録ヘッドを示す模式図である。
【図8】縦軸に吐出量の変化率をとり、横軸に同時駆動するノズル間を示す数字をとって、同時駆動するノズルの位置と吐出量の変化率を示すグラフである。
【図9】縦軸に吐出量の変化率をとり、横軸にノズルの位置をとって、隣接した両側のノズル(1ノズルずつ)を同時駆動した場合における吐出量の変化率を示すグラフである。
【図10】縦軸に吐出量の変化率をとり、横軸にノズルの位置をとって、隣接した両側のノズル(2ノズルずつ)を同時駆動した場合における吐出量の変化率を示すグラフである。
【図11】(a)は、特許文献2の記録ヘッドにより形成されるドットを説明するための模式図であり、(b)は、特許文献2の記録ヘッドにより形成される画像の濃度ムラを説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0082】
10 画像記録装置
12 供給部
14 搬送部
16 描画部
18 加熱・加圧部
20 排出部
22 制御部
30 マガジン
32 加熱ドラム
34 カッタ
34a 固定刃
34b 丸刃
36 吸着ベルト搬送部
37a、37b ローラ
38 ベルト
39 吸着チャンバー
40 ファン
42 ベルト清掃部
44 加熱ファン
46 後乾燥部
50 記録ヘッドユニット
50K、50C、50M、50Y 記録ヘッド(インクジェットヘッド)
52 インク貯蔵/装填部
53 ガイドレール
54 加圧ローラ
55 キャリッジ
60 吐出部
62 圧電素子(ピエゾ素子)
64 開口
80 通信インターフェース
82 システムコントローラ
84 画像メモリ
86 モータドライバ
88 ヒートドライバ
90 プリント制御部
92 画像バッファメモリ
94 ヘッドドライバ
96 ホストコンピュータ
98a、98b モータ
99 ヒータ
100 記録ヘッド
152 圧力室
154 供給口
160、160A、160B 共通流路
162 支流路
164 主供給口
A〜F ノズル
La〜Lf ライン
M 副走査方向
R 主走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを記録媒体が搬送される副走査方向に対して直交する主走査方向に走査させて、シングリングにより前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域に像を形成して画像を記録する画像記録装置であって、
前記記録ヘッドは、前記画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数、前記主走査方向に対して傾斜して配列されたノズルブロックを備え、前記ノズルブロックが前記副走査方向に沿って複数配置されているものであり、
前記シングリングにより形成される前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域の像を構成するドットを形成する複数のノズルは、ムラが生じないようにノズルブロック内の異なる吐出特性のものが組み合わされていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記各ノズルブロック毎に異なるインク供給流路に接続されており、各ノズルブロックにおける各ノズルは同じインク供給路に接続されている請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記各ノズルブロックにおける各ノズルの前記異なる吐出特性は、クロストークによるものである請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が異なる組み合わせである請求項2または3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が流路端部に接続されるノズルと、流路中央部に接続されるノズルとが同一の確率で組み合わされている請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドを記録媒体が搬送される副走査方向に対して直交する主走査方向に走査させて、シングリングにより前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域に像を形成して画像を記録する画像記録方法であって、
前記記録ヘッドは、前記画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズルが複数、前記主走査方向に対して傾斜して配列されたノズルブロックを備え、前記ノズルブロックが前記副走査方向に沿って複数配置されているものであり、
前記シングリングにより形成される前記記録媒体上の主走査方向に伸びる同一領域の像を構成するドットを形成する複数のノズルは、ムラが生じないようにノズルブロック内の異なる吐出特性のものが組み合わされていることを特徴とする画像記録方法。
【請求項7】
前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が異なる組み合わせである請求項6に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記主走査方向に伸びる同一領域の像の形成に利用される複数のノズルは、前記ノズルブロックの流路内の位置が流路端部に接続されるノズルと、流路中央部に接続されるノズルとが同一の確率で組み合わされている請求項6に記載の画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241445(P2009−241445A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91468(P2008−91468)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】