説明

画像記録装置及びその画像記録装置における記録媒体の搬送制御方法

【課題】巻き芯に固定されたロール紙を用いて記録を行う際にロール紙が巻き芯から剥がれて搬送された場合でも、記録動作の安定性の低下を防ぐ画像記録装置を提供する。
【解決手段】巻き芯に巻かれたロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し搬送路上で記録ヘッドより搬送方向上流に位置する第1のローラ対と、狭持状態と離間状態とを有し搬送路上で記録ヘッドより搬送方向下流に位置する第2のローラ対と、搬送路上で第1のローラ対より搬送方向上流において、ロール紙の終端を検出するセンサとを備える。第2のローラ対を離間状態とし第1のローラ対を狭持状態としてロール紙を搬送しセンサによりロール紙の終端を検出すると、第1のローラ対を離間状態とし、第2のローラ対を狭持状態としてロール紙を搬送する。その後、センサにより検出された終端まで、ロール紙上に記録ヘッドにより記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を搬送し、該ロール紙に記録する画像記録装置及びその画像記録装置における記録媒体の搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、画像記録装置、特にインクジェット記録装置は、多様な記録媒体(用紙等)への記録が可能である。例えば、光沢紙やコート紙といった様々な記録媒体種別、A4定型サイズやA0定型サイズといった様々な記録媒体サイズ、カット紙やロール紙といった複数種類の記録媒体への記録が可能である。そのような特徴を用いることで、文書や写真といった一般的な印刷物のみでなく、POPやポスターなどといった多様な用途に向けた印刷物を出力することができる。
【0003】
特許文献1には、ロール紙とカット紙とを共通の給紙口から挿入して取り付ける構成の画像記録装置が記載されている。そのような構成の画像記録装置においては、用紙を画像記録装置に取り付けるのに先立って、ロール紙又はカット紙の何れの用紙を取り付けるのかということを選択して装置に入力する。事前に画像記録装置に用紙形状を入力することで、給紙、記録、排紙といった各種動作において、それぞれの用紙形状に最適な用紙搬送制御を行うことができる。
【0004】
用紙形状の選択の構成として特許文献2には、操作パネルに設けられた各々の用紙形状を選択可能に構成された複数のボタンの何れかを押下する構成が記載されている。また、特許文献3には、単一のボタンの押下時間の長さによる構成が記載されている。又は、単一のボタンを押下する毎にトグル動作で順次選択される用紙形状が切り替わり、LCDやLEDなどの表示によって、選択されている用紙形状を随時確認できるような構成が知られている。
【0005】
ロール紙とカット紙とを共通の用紙搬送路から排紙する構成を有する画像記録装置が知られている。そのような画像記録装置においては、上記のような用紙形状を選択又は判別する構成等によって、排紙しようとする対象の用紙の用紙形状を特定して最適な排紙制御が行われる。特許文献3には、用紙形状を判別する構成として、用紙を下流方向に搬送する場合に、所定搬送量以内で用紙の後端が検出されるかによって判別を行う構成が記載されている。
【0006】
一般的に、ロール紙は巻き芯に対して何重にも巻かれて構成されている。そのために、記録動作を続けると巻き芯に近づき、最後には巻き芯との接点、即ちロール紙終端に達する。ロール紙終端の処理は、ロール紙種類によって異なり、大きく2つある。一つは、巻き芯に対して固定されずそのままロール紙を巻きつけた構成であり、一つは、両面テープを用いて、巻き芯に対して数箇所、ロール紙裏面と巻き芯表面とを固定した構成である。特許文献4には、そのような終端の処理が異なったロール紙を用いて記録する場合に、ロール紙終端における巻き芯への固定有無を判別可能な場合に、直ちに記録処理の停止を行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−324052号公報
【特許文献2】特開2002−234222号公報
【特許文献3】特開2001−97582号公報
【特許文献4】特開2004−136514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、ロール紙終端部は両面テープを用いて接着されて固定されているが、両面テープの接着力は弱く、記録媒体の搬送中に巻き芯から剥がれ、そのまま搬送路上にロール紙が流れてしまう。ロール紙が巻き芯から剥がれて流れた場合に、そのロール紙終端部をセンサで検出し、可能であればロール紙後端限界まで記録を行なうことが理想である。
【0009】
しかしながら、ロール紙終端部に両面テープが付着しているので、搬送路上を流れると、両面テープが搬送ローラに巻きついてしまい、搬送ローラを損傷してしまう原因となる。そのような問題を解決するために記録処理及びロール紙搬送を停止することが考えられるが、記録処理の停止によって、搬送路上に記録未処理であるロール紙空白部分が残ってしまい、記録媒体を無駄に消費することになってしまう。
【0010】
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決することにある。そこで、上記の点に鑑み、本発明は、巻き芯に固定されたロール紙を用いて記録を行う際にロール紙が巻き芯から剥がれて搬送された場合においても、記録動作の安定性の低下を防ぐ画像記録装置及びその画像記録装置における記録媒体の搬送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像記録装置は、巻き芯に巻かれたロール紙を搬送路上に引き出し、引き出された前記ロール紙上に記録ヘッドにより記録する画像記録装置であって、
2つのローラにより前記ロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、前記搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向上流に位置する第1のローラ対と、
2つのローラにより前記ロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、前記搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向下流に位置する第2のローラ対と、
前記搬送路上で前記第1のローラ対より搬送方向上流において、前記ロール紙の終端を検出する検出手段と、
前記第2のローラ対を前記離間状態とし前記第1のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送し、前記検出手段により前記ロール紙の終端を検出すると、前記第1のローラ対を前記離間状態とし、前記第2のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送する搬送制御手段と、
前記検出手段により検出された前記終端まで、前記搬送制御手段により前記狭持状態とされた前記第2のローラ対により搬送される前記ロール紙上に前記記録ヘッドにより記録する記録制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、巻き芯に固定されたロール紙を用いて記録を行う際にロール紙が巻き芯から剥がれて搬送された場合においても、記録動作の安定性の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像記録システムの構成を示す図である。
【図2】画像データを処理するブロック構成を示す図である。
【図3】画像記録装置のブロック構成を示す図である。
【図4】画像記録装置の構成を示す図である。
【図5】カット紙を搬送する場合の搬送経路周辺の構成を示す図である。
【図6】ロール紙を搬送する場合の搬送経路周辺の構成を示す図である。
【図7】ロール紙を画像記録装置に装着する際に用いられるスプールを示す図である。
【図8】ロール紙の搬送処理を説明するための図である。
【図9】巻き芯にロール紙を固定する様子を示す図である。
【図10】ロール紙の種類と、巻き芯への固定の有無との対応を示す図である。
【図11】記録媒体の搬送制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】記録媒体の搬送制御処理の手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳しく説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0015】
[実施例1]
[画像記録システム]
図1は、本発明に係る実施例における画像記録システムの概略構成を示すブロック図である。以下、本画像記録システムにおいて用いられる画像記録装置の一例としてインクジェット記録装置を説明する。しかしながら、後述する図8において説明するロール紙搬送機構を有する画像記録装置であるならば、インクジェット記録装置でなく、熱転写方式等他の記録方式を用いた画像記録装置であっても良い。
【0016】
図1に示す画像記録装置100は、インクジェット方式により画像を記録するプリンタエンジン120を含む。プリンタエンジン120は、カラー記録用のプリンタエンジンで、YMCKの各色に対応したインクを吐出する複数の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)を備え、これら複数の記録ヘッドを往復走査させて記録媒体上に画像を記録する。画像記録装置100の構成は、図4〜図6を参照して詳しく後述する。
【0017】
ホストコンピュータ200は、各種アプリケーションプログラム220、画像記録装置100用のプリンタドライバ221等を不図示のハードディスクに記憶している。本実施例における画像処理は、画像記録装置100により実行されても、或いはホストコンピュータ200のプリンタドライバ221により実行されても良い。このプリンタドライバ221は、CD−ROM等の記憶媒体により画像記録装置100のメーカから提供され、ホストコンピュータ200のハードディスクにインストールされている。そして、実行時にホストコンピュータ200のRAM223にロードされ、CPU222の制御の下に実行される。
【0018】
画像記録装置100は、プリンタドライバ221から送られてくる記録データを受信し、指示された記録方法、例えばマルチパスにより、画像を記録する。尚、この画像記録装置100は、各走査において記録するドット位置を決定するためのマスク情報を有しており、このマスク情報に従って、各パスで記録するドット位置(ノズル)を決定している。但し、このマスク情報をホストコンピュータ200に設け、画像記録装置100は単に受信した記録データに基づいて記録するように構成されてもよい。
【0019】
図2は、本実施例におけるプリンタドライバ221における画像データを処理するブロック構成を示す図である。図2に示す入力補正部301は、例えばアプリケーションプログラム220などから入力されるRGB各8ビットで表される画像データを入力し、記録で用いられるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)それぞれ8ビットデータに変換する。色調補正部302は、入力補正部301で補正されたCMYデータに基づいてCMYK(黒)データを生成して出力する。出力補正部303は、画像記録装置100で記録する際、各パスで記録される画像データの値を決定している。この場合、補正用テーブル113の補正データに基づいて、各パスで記録するデータを補正しても良い。量子化部304は、出力補正部303から出力されるCMYK各8ビットの画像データを、例えば誤差拡散法などを用いて量子化し、その量子化結果であるCMYK各1ビットデータ(記録データ)を出力している。
【0020】
図3は、画像記録装置のブロック構成を示す図である。尚、画像記録装置100の説明では、画像記録装置100自体が前述の図2に示すような画像処理機能を備えている場合で説明する。しかしながら、ホストコンピュータ200側のプリンタドライバ221がこの機能を備えている場合には、この機能を省略した、より簡易な構成とすることができる。図3に示す制御部101は、画像記録装置100全体の動作を制御する。ヘッドドライバ102は、制御部101からの記録データに基づいて、記録ヘッド11を駆動して記録を行う。モータドライバ103、104は、それぞれ対応するキャリッジモータ106、LFモータ(ラインフィードモータ)107を回転駆動する。入力部108は、例えばホストコンピュータ200などの外部機器から画像データを入力して制御部101に供給する。
【0021】
次に、制御部101の構成について説明する。CPU110は、例えばマイクロプロセッサ等である。プログラムメモリ111は、CPU110により実行されるプログラム等を記憶する。RAM115は、CPU110の動作時に各種データを記録するワークエリアを有するとともに、記録データを格納するプリントバッファ116も有する。プリントバッファコントローラ(PBC)112は、プリントバッファ116からプリントすべき記録データの取り出しを行うように制御する。補正用テーブル113、マスクデータ114は、記録ヘッド11の各走査時において記録すべき記録データを決定するために使用される。
【0022】
[画像記録装置の記録部周辺の機構]
図4は、本実施例における画像記録装置100の斜視図である。本実施例においては、画像記録装置100がインクジェット記録装置である場合を説明する。図4に示すように、画像記録装置100は、記録ヘッド11、記録ヘッド11を搭載して往復移動するキャリッジ12を含む。記録ヘッド11及びキャリッジ12により画像記録部80が構成される。記録ヘッド11の記録媒体と対向する面には吐出面が設けられている。吐出面には複数の吐出口列が形成され、それぞれの吐出口列からは異なるインクが吐出される。各吐出口列は、複数の吐出口を所定ピッチで配列して構成される。画像記録装置100にはインクタンク14が装着されており、インクタンク14から記録ヘッド11の各吐出口列に対して、各色ごとのインク供給チューブ13を介し各色インクが供給される。
【0023】
キャリッジ12は、ガイド部材であるガイドシャフト16及びガイドレール(不図示)に沿って摺動可能に案内支持されている。ガイドシャフト及びガイドレールは、画像記録装置100のフレーム15等に互いに平行になるように固定されている。用紙等のシート状の記録媒体が画像記録部80まで搬送されてくると、キャリッジ12を往復移動させながら記録ヘッド11から記録媒体にインクを吐出することにより、記録媒体に画像が形成される。なお、キャリッジ12の動きは、不図示のキャリッジモータ106、タイミングベルト及びリニアエンコーダなどにより制御される。この画像記録を行う場合には、キャリッジ12の速度を一定に保つ必要があり、リニアエンコーダの信号により常に監視している。キャリッジ12の移動中に何らかの負荷によってリニアエンコーダの信号が変化すると、速度を一定にするためにキャリッジモータ106への供給電流を増減させる。
【0024】
[カット紙の搬送機構]
図5は、図4に示す画像記録装置100において、カット紙を搬送する場合の縦断面図を示す図である。また、図6は、図4に示す画像記録装置100でロール紙を搬送する場合の縦断面図である。図7は、ロール紙供給用のスプールの分解斜視図である。
【0025】
次に、図4〜図7を用いて、本実施例における画像記録装置100の給紙搬送機構について説明する。本実施例において、画像記録装置100の底部に装着されたカセット2からカット紙Pを給紙する給紙機構と、画像記録装置100の後部に装着されたロール紙スプール32からロール紙Rを給紙する給紙機構とが設けられている。
【0026】
まず、カット紙Pの給紙搬送機構について説明する。画像記録装置100の底部には、記録媒体であるカット紙Pを収納したカセット2が着脱自在に装着されている。カセット2のシート送り出し部には、カット紙を1枚ずつ分離して送り出すための給紙ローラ5及び分離ローラからなるローラ対が配置されている。カセット2には、複数枚のカット紙を矢印方向に押圧可能に積載支持するための圧板3と、複数枚のカット紙の側端及び後端を規制するための端縁規制板(不図示)が設けられている。圧板3は、カセット2に揺動可能に取り付けられ、不図示のバネにより矢印方向に付勢されている。圧板カム等による規制を解除することにより、圧板3上のカット紙は給紙ローラ5に圧接される。不図示のモータにより給紙ローラ5が図示反時計回りに回転することにより、圧板3上のカット紙Pの最上層の1枚が送り出される。この際、2枚目以降の下位のシートは分離ローラ6の摩擦抵抗により搬送を阻止される。
【0027】
分離ローラ6の内部には、所定の回転負荷トルクを発生するトルクリミッタが設けられている。このため、分離ローラ6は、回転負荷トルクを超えたトルクが発生した場合に、給紙ローラ5とともにカット紙を挟持して搬送力を発生するニップローラとして機能する。即ち、給紙ローラ5とシートPの間の摩擦力をF1、シート同士の間の摩擦力をFp、シートPと分離ローラ6の間の摩擦力(回転負荷トルクの接線力)をF3とすると、これらの関係は「F1>F3>Fp」となっている。よって、最上位のシートのみがカセット2から搬送路Aへ送り出され、やがて搬送路中の搬送ローラ7aとピンチローラ7bのニップに到達する。
【0028】
さらに、シートPは、搬送ローラ対7a、7bの搬送力を得て搬送され、やがて画像記録部80の搬送方向上流側近傍に配置された搬送ローラ9及びピンチローラ10のニップに到達する。なお、搬送ローラ対9、10の上流側には、後述するロール紙Rの搬送路との切り替えを行うためのフラップ18と、ロール紙Rを給紙するための搬送ローラ対8a、8bが配置されている。フラップ18及び搬送ローラ対8a、8bは、カット紙Pを給紙搬送する場合には、図5に示すような退避位置にあり、カット紙の搬送路が確保される。記録ヘッド11と対向する位置にはプラテン19が配置されており、カット紙Pは搬送ローラ9、10に挟持された狭時状態でプラテン19上へ搬送される。そして、カット紙Pの記録面に対する画像記録が開始される。記録されたカット紙Pは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して排紙トレイ22上へ排出される。
【0029】
[ロール紙の搬送機構]
次に、図4〜図7を用いてロール紙スプール32にセットされたロール紙Rの給紙搬送について説明する。図7において、ロール紙スプール32は、ロール紙Rの巻き中心にある紙管Sに挿通されている。ロール紙スプール32の一端には、ロール紙ホルダ30が固定され、ロール紙ホルダ30の内側にはロック部30aが設けられている。挿通されたロール紙スプール32は、ロック部30aを紙管Sの内面にバネ力によって食い込ませることにより固定保持される。次いで、ロール紙スプール32の他端部にロール紙ホルダ31に固定することにより、ロール紙Rはロール紙スプール32に対し巻き出し可能にセットされる。つまり、ロール紙スプール32を装置本体100に回転自在に装着することにより、ロール紙Rがロール紙スプール32から巻き出し可能にセットされる。
【0030】
なお、ロール紙Rの搬送動作においては、ロール紙自身による慣性力を考慮する必要がある。このため、ロール紙スプール32にトルクリミッタ33(図7)を設け、ロール紙Rの回転(巻き出し及び巻き取り)に一定の負荷トルクを与えている。かかる構成によれば、搬送ローラ9の回転によってロール紙Rが自転(回転)を始めた後、搬送ローラ9が停止した際、トルクリミッタ33による負荷トルクが作用しているため、慣性力による自転を早急に収束させることができる。すなわち、搬送中のロール紙Rに慣性力による弛みが生じないように配慮されている。
【0031】
装置内にセットされたロール紙Rは搬送路Bを通して送り出される。送り出されたロール紙は、フラップ18を押し下げるとともに、ニップ解除された搬送ローラ8a、8bの間を通過して、搬送ローラ9の手前に配置された用紙検出構成(不図示)まで送り出される。本実施例では、搬送ローラ8aは振り子アーム式のフラップ8に軸支されている。ここまでのロール紙の送り出しは、ユーザの操作で行っても良い。用紙検出構成によってロール紙Rが検出されると、フラップ8が回動し、搬送ローラ8aがピンチローラ8bに圧接されることでロール紙Rをニップ(挟持)する。そして、搬送ローラ8aを回転駆動することで、ロール紙を搬送ローラ9へ自動的に繰り出していく。図6は、このときの搬送機構の状態を示す。
【0032】
次いで、ロール紙Rは搬送ローラ9、10に挟持された状態でプラテン19上へ搬送され、ロール紙Rに対すて画像記録が開始される。記録されたロール紙Rは、搬送ローラ20a及び拍車20bからなる2組のローラ対を通して搬送され、その後端をカッター21で裁断されることで排紙トレイ22上に排出される。
【0033】
また、搬送路Bはロール紙Rだけでなく、カット紙を搬送することも可能である。上述のロール紙Rの搬送と同様に、装置内セットされたカット紙は搬送路Bを通して送り出される。以降、ロール紙Rの搬送と同様にしてプラテン19上へ搬送される。そして、プラテン19上に搬送された後は、図5におけるカット紙Pの搬送と同様に画像記録と排出がされる。搬送路Aを通して送り出すのに比べて緩やかな形状で構成されているので、比較的厚手のカット紙を搬送することが可能である。また、カセット2に収まらないような長尺のカット紙を搬送することも可能である。
【0034】
[記録ヘッドを用いた記録動作]
次に、図4〜図6を用いて、画像記録部80における記録動作について説明する。本実施形態に係る画像記録装置はインクジェット記録装置であり、画像情報に基づいて記録ヘッド11から記録媒体へインクを吐出して画像を記録する。記録ヘッド11とキャリッジ12に搭載されている。装置本体のフレーム15には、キャリッジ12の移動を案内するガイド部材16が設置されている。つまり、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ12は、ガイド部材16に沿って主走査のために往復移動可能に案内支持されている。図示のガイド部材16はシャフトで形成されており、キャリッジ12は軸受を介してガイド部材16に摺動可能に支持されている。記録ヘッド11には、複数の吐出口の配列からなる吐出口列が形成された吐出面が設けられている。カラー画像を記録する場合は、インクの種類の数に応じて複数の吐出口列が使用される。
【0035】
プラテン19上へ搬送された記録媒体(カット紙Pまたはロール紙R)に対し、記録ヘッド11による画像記録動作が開始される。キャリッジ12の移動に同期した記録ヘッド11による1ライン分(1走査分)の記録が終了すると、一旦記録動作を中断し、プラテン19上に位置する記録媒体を搬送ローラ9により所定量だけ搬送する。そして、再び記録ヘッド11をガイド部材16に沿って移動させながら次の1ライン分の画像を記録する。このような1ライン分の記録と記録媒体の搬送を繰り返し実行することで、記録媒体全体の画像記録が行われる。
【0036】
図4において、キャリッジ12の移動範囲であって記録領域を外れた位置(通常、ホームポジション)には、記録ヘッド11のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット23が配設されている。記録動作の待機中、記録の前後、もしくは1ライン分の記録の合間に、記録ヘッド11を回復ユニット23と対向する位置へ移動させ、所望の回復動作が行われる。回復動作としては、記録ヘッド11の吐出口をキャップで密閉するキャッピング、吐出口からインクを吸引する吸引回復、記録ヘッドの吐出面をクリーニングするワイピングなどがある。これらの回復動作により、吐出口の目詰まり等を防止し、記録画像の画質を維持することができる。
【0037】
プラテン19上で順次記録ヘッド11による画像記録が行われた後、カット紙Pの場合は搬送ローラ20a及び拍車20bで搬送され、排紙トレイ22上へ排出される。一方、ロール紙Rの場合は、画像記録が終了した後、搬送ローラ対9、19によってさらに搬送方向下流へ搬送し、搬送ローラ20aと拍車20bでニップした狭持状態でカッター21により裁断し、排紙トレイ22上へ排出させる。なお、ロール紙の場合は、裁断及び排出を終了した後、搬送ローラ対9、10及びロール紙スプール32を逆回転させて巻き取り動作を行い、ロール紙の先端を所定の位置まで後退させることにより次の画像記録に備える。
【0038】
[ロール紙の搬送動作]
図8は、図6における画像記録装置100の搬送路上(搬送路B)を記録媒体(ロール紙R)が搬送される様子を模式的に示した図である。図8を参照すると、画像記録装置100がロール紙Rを搬送している様子を示している。このとき、事前に画像記録装置100の操作部(不図示)を介してユーザよりロール紙記録モードが選択されている。ロール紙の取り付けについてはユーザは、ロール紙Rの紙管Sにスプール32を通した状態で、ロールカバー34を開けて、ロールカバー34内のスプール軸受け部にスプール32の両端部を積載し、ロール紙Rの用紙先端を巻き解いて給紙口37に挿入する。次に、ユーザは、不図示の画像記録部80上流側に配置された搬送ローラ9(この位置の搬送ローラを特にLFローラという)とピンチローラ10とからなるLFローラ対9、10(第1のローラ対)に突き当たるまで送り込む。用紙先端が搬送路Bの途中に配置された用紙検出構成のPEセンサ38の位置を通過すると、PEセンサ38により紙有りが検出されて、ロール紙Rの給紙動作が開始される。給紙動作が開始されると、不図示のLFモータ107の駆動によって、LFローラ9が回転してロール紙RをLFローラ対9、10に挿入し、下流の画像記録部80にロール紙Rを搬送する。
【0039】
ロール紙RがLFローラ9により下流に搬送されると、搬送量に応じた分だけロールから巻き解かれていくので、ロールが矢印の方向に回転する。このとき、ロール紙Rの紙管Sに通されて、ロール紙Rを円周方向に回転自在に支持しているスプール32も一体となって回転する。スプール32の回転は、不図示のギア列を介してロータリエンコーダ36のコードホイールに伝達されるように構成されているので、このコードホイールの回転によって発生する状態変化をロータリエンコーダ36が電気信号を2つの位相パルスとして出力する。即ち、ロータリエンコーダ36が出力する2つの位相パルスを監視し、位相差を検出することで正転、逆転が判断され、ロールの回転状況(巻き解かれる方向に回転していること)が検出される。
【0040】
図9は、ロール紙終端部が巻き芯に固定されているイメージを示す図である。ロール紙Rの裏面に両面テープ51が数箇所付着し、この両面テープ51が巻き芯50の表面に付着する形で固定されている。図10は、画像記録装置内部で保持するテーブル、即ち画像記録装置100がサポートするロール紙種類に対応付けられた、ロール紙終端部の巻き芯固定有無情報を示す。このテーブルは、ロール紙の搬送中に、ロール紙センサ40によりロール紙の終端が検出された際に、搬送中のロール紙種類から、ロール紙終端部が固定されている種類のものか否かを判定するために用いられる。
【0041】
次に、図11のフローチャートを参照しながら、本実施例における記録処理におけるロール紙終端部の用紙搬送処理を詳細に説明する。図11に示す各処理は、例えば、画像記録装置100のCPU110によって実行される。記録処理中、ロール紙の搬送処理は、給紙口37から挿入されたロール紙RをLFローラ対9、10にニップされるようにLFローラ9を所定量回転することで、搬送路Bを通して送り込み、画像記録部80のあるプラテン19上まで搬送し、画像記録動作を行う。その搬送動作中に、ロール紙センサ40によって、ロール紙終端部を検出すると(S101)、搬送中のロール紙種類に応じたロール紙固定有無情報をテーブルから取得し(S102)、ロール紙終端部が固定されているか否かを判定する(S103)。
【0042】
ここで、ロール紙終端部が固定されていないと判定された場合には、引き続きロール紙RをLFローラ対9、10にニップされるようにLFローラ9を用いて搬送を行い(S110)、PEセンサ38でロール紙終端が検出されるまで記録を行う。ロール紙終端が検出されると記録処理を終了し(S111)、LFローラ9を用いて所定量搬送することでロール紙Rを排出する(S112)。
【0043】
一方、S103におけるロール紙終端部の固定判定で、固定されているロール紙種類であると判定された場合を説明する。その場合に、固定されているにも係わらずロール紙Rの終端が検出されたことから、巻き芯から外れてしまいロール紙Rの裏面に両面テープが付着していることが考えられる。従って、LFローラ10をモータ(不図示)を用いて上昇させニップ状態を開放し(即ち、離間状態とする)、ロール紙R裏面と接触するLFローラ9による搬送を停止する(S104)。それと同時に、拍車20bを降下させて(S105)、対となる20aとの2本のローラ(第2のローラ対)を狭持状態としてロール紙Rの搬送を開始する(S106)。その後、記録処理を行う途中、PEセンサ38でロール紙R終端が検出(終端検出の一例)されたか否かを判定する。ここで、終端が検出された場合には、拍車20a、20bを用いて所定量搬送し、ロール紙上に記録処理を行って本記録処理を終了する(S107、記録制御の一例)。本実施例においては、例えば、終端を検出した場合に、記録ヘッドからPEセンサ38までの予め定められた距離とロール紙の搬送速度とに基づいて、拍車20a、20bの駆動を制御して、記録ヘッドによりロール紙の終端まで記録を行うようにしても良い。その後、拍車20a、20bで抑えられているロール紙Rをユーザ操作により除去させ(S108)、一連の搬送処理を終了する。なお、図11に示すS102において、ロール紙固定有無情報をテーブルから取得できない場合には、固定されているとして処理する。
【0044】
[実施例2]
実施例1においては、ロール紙の終端部限界まで印刷を行って、ロール紙の余白部分が残らないように記録を行う。しかしながら、ロール紙センサ40でロール紙の終端部を検出した時点で拍車20a、20bを用いて搬送を行うので、拍車20a、20bが、画像が形成されたロール紙Rの箇所に接触してしまう。これは、画像記録面への影響として一般的に好ましくないので、本実施例においては、ホストコンピュータ200から指定された印刷品位を考慮しつつ、実施例1において説明した処理を行う。
【0045】
図12は、本実施例における記録媒体の搬送制御処理の手順を示すフローチャートである。図12に示す各処理は、例えば、画像記録装置100のCPU110によって実行される。給紙口37から挿入されたロール紙RをLFローラ対9、10にニップされるように搬送路Bを通して送り込み、LFローラ9を所定量回転することでロール紙Rを画像記録部80のあるプラテン19まで搬送し、画像記録を行う。搬送動作中に、ロール紙センサ40によってロール紙の終端部を検出すると(S101)、搬送中のロール紙種類に応じたロール紙固定有無情報をテーブルから取得し(S102)、ロール紙の終端部が固定されているか否かを判定する(S103)。
【0046】
ここで、ロール紙の終端部が固定されていないと判定された場合に、引き続きロール紙RをLFローラ対9、10にニップした狭持状態でLFローラ9により搬送する。その後、PEセンサ38がロール紙Rの終端を検出すると、記録処理を終了し(S111)、LFローラ9を用いて所定量搬送してロール紙Rを排出し(S112) 、一連の搬送処理を終了する。一方、S103において、終端部が固定されているロール紙種類であると判定された場合には、本実施例においては、ホストコンピュータ200からの記録モードにおける印刷品位の指定を判定する(S113、モード判定の一例)。印刷品位の指定は、例えば、ユーザがホストコンピュータ200を介して指定する。ここで、印刷品位として高品位モードが指定されていると判定された場合には本記録処理を中止し、LFローラ9、10で抑えられているロール紙Rをユーザ操作により除去させ(S108)、一連の記録処理と搬送処理を終了する。
【0047】
一方、S113において、印刷品位として高品位モードが指定されていないと判定された場合には、LFローラ10をモータ(不図示)を用いて上昇させてニップ状態を開放し、ロール紙R裏面と接触するLFローラ9による搬送を停止する(S104)。それと同時に、拍車20bを降下させて(S105)、対となる20aとの2本のローラを用いたロール紙Rによりロール紙Rの搬送を開始する(S106)。その後、記録処理の途中、PEセンサ38がロール紙R終端を検出すると、拍車20a、20bを用いて所定量搬送して記録処理を行う(S107)。その後、拍車20a、20bで抑えられているロール紙Rをユーザ操作により除去させ(S108)、一連の搬送処理を終了する。
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯に巻かれたロール紙を搬送路上に引き出し、引き出された前記ロール紙上に記録ヘッドにより記録する画像記録装置であって、
2つのローラにより前記ロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、前記搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向上流に位置する第1のローラ対と、
2つのローラにより前記ロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、前記搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向下流に位置する第2のローラ対と、
前記搬送路上で前記第1のローラ対より搬送方向上流において、前記ロール紙の終端を検出する検出手段と、
前記第2のローラ対を前記離間状態とし前記第1のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送し、前記検出手段により前記ロール紙の終端を検出すると、前記第1のローラ対を前記離間状態とし、前記第2のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送する搬送制御手段と、
前記検出手段により検出された前記終端まで、前記搬送制御手段により前記狭持状態とされた前記第2のローラ対により搬送される前記ロール紙上に前記記録ヘッドにより記録する記録制御手段と
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記搬送路上で前記記録ヘッドと前記第1のローラ対との間において、前記ロール紙の終端を検出する終端検出手段をさらに備え、
前記終端検出手段により前記ロール紙の終端が検出されると、前記記録制御手段は、前記記録ヘッドと前記終端検出手段との間の距離に基づき、前記検出手段により検出された前記終端まで、前記搬送制御手段により前記狭持状態とされた前記第2のローラ対により搬送される前記ロール紙上に前記記録ヘッドにより記録することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記搬送路上に搬送されている前記ロール紙の種類に基づき、ロール紙の種類とロール紙の終端が前記巻き芯に固定されているか否かを示す情報とが対応付けられたテーブルを参照して、前記搬送路上に搬送されている前記ロール紙の終端が前記巻き芯に固定されているか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記搬送制御手段は、前記検出手段により前記ロール紙の終端が検出され、前記判定手段により前記搬送路上に搬送されている前記ロール紙の終端が前記巻き芯に固定されていると判定された場合に、前記第1のローラ対を前記離間状態とし、前記第2のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記判定手段により前記搬送路上に搬送されている前記ロール紙の終端が前記巻き芯に固定されていると判定された場合に、前記ロール紙への記録モードが高品位モードであるか否かをユーザからの指定に基づき判定するモード判定手段をさらに備え、
前記モード判定手段により前記ロール紙への記録モードが前記高品位モードでないと判定された場合に、前記搬送制御手段は前記第1のローラ対を前記離間状態とし、前記第2のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送し、一方、前記モード判定手段により前記ロール紙への記録モードが前記高品位モードであると判定された場合に、前記記録制御手段は前記ロール紙への記録処理を終了することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記画像記録装置は、インクジェット記録装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
巻き芯に巻かれたロール紙を2つのローラにより狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向上流に位置する第1のローラ対と、2つのローラにより前記ロール紙を狭持して搬送する狭持状態と2つのローラが離間した離間状態とを有し、前記搬送路上で前記記録ヘッドより搬送方向下流に位置する第2のローラ対と、前記搬送路上で前記第1のローラ対より搬送方向上流において、前記ロール紙の終端を検出するセンサとを備え、前記ロール紙上に記録ヘッドにより記録する画像記録装置において実行される搬送制御方法であって、
前記画像記録装置の搬送制御手段が、前記第2のローラ対を前記離間状態とし前記第1のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送し、前記センサにより前記ロール紙の終端を検出すると、前記第1のローラ対を前記離間状態とし、前記第2のローラ対を前記狭持状態として前記ロール紙を搬送する搬送制御工程と、
前記センサにより検出された前記終端まで、前記搬送制御工程において前記狭持状態とされた前記第2のローラ対により搬送される前記ロール紙上に前記記録ヘッドにより記録する記録制御工程と
を有することを特徴とする搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−131038(P2012−131038A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282394(P2010−282394)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】