説明

画像記録装置

【課題】 本発明は、塗布を必要としないような用紙に対して塗布処理無しで印写可能として処理能力を落とさず、用紙反転構造をなして小型化を図りつつジャムの発生を防止できるコンパクトな機構で構成され得る高速な画像記録装置を提供する。
【解決手段】 本発明の画像記録装置は、処理液塗布手段によって記録媒体に前処理液を塗布する塗布工程経路と、塗布しない塗布不要経路とを設け、画像記録手段は、用紙給紙ユニットから引き出されて前処理液を塗布した後塗布工程経路を通って上方側へと反転して用紙給紙ユニット方向に搬送された記録媒体に対して記録を行い、前処理液を塗布された記録媒体は、記録媒体の表裏両面に各々設けられたガイド板(42)で、鉛直上方よりも用紙給紙ユニット方向に向かうまでガイドされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録装置に関し、詳細にはインクジェット方式の画像記録法に有効な、記録媒体の前処理手段に関するものであり、具体的には画像品質を向上させるための前処理液を塗布する前処理液塗布装置を具備した画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタは低騒音、低ランニングコスト、カラー化が容易といった利点から急速に普及してきている。しかしながら、普通紙に記録すると、にじみ、濃度、色調や裏写り等といった初期品質問題に加え、耐水性、耐候性といった画像の堅牢性に関わる問題を抱えていたため、これらの問題を解決する様々な提案が成されてきた。
【0003】
それらの解決手段として、インクによる画像が形成された際に、普通紙などの被記録材表面にインク中の染料を定着するための材料を予め塗工した被記録材、又は表面に白色顔料や水溶性高分子を塗工した被記録材を使用することが、特許文献1〜4等に開示されている。しかし、この方法では、予め塗工処理した専用紙を購入しなければならないため、身近にある紙を自由に使えるというわけにはいかないという不便さがあり、また鉛筆やペンによる加筆性の問題があった。
【0004】
また、2色重ね部分等の色境界での滲みを抑えるために、インクに界面活性剤などを添加することにより、インクの浸透性を高めることが特許文献5等に開示されている。この方法は、インクが記録紙に高速に浸透するため、2色重ね部分等の色境界での滲みの解決やスメア(印字後の接触による画像汚れ)に対しては効果的だが、滲みや裏写りは解決できない。更に、インクに揮発性溶剤を添加する方法が特許文献6に開示されているが、上記浸透性インクと同様の効果が得られるがノズルが目詰まりを起こしやすい。また、耐水性、耐光性を向上させるために色剤として顔料を含有するインクの使用も増加してきているが、顔料を含有するインクでは目詰まり等ノズル周りの信頼性を維持するのが難しく、また写真画像やCG等の高い色再現性を要求される場合にはシアンやマゼンタ色の発色が不十分となり満足な画像が得られないという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、特許文献7には、被記録材上に予めカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリマー溶液を噴射し、ついでそのポリマー溶液が付着した部分にインクを噴射して印字するインクジェット記録方法が提案されている。しかし、この方法では印字画像のシャープネスの向上は得られるが、印字画像の乾燥性の向上に効果が得られずカラー画像での画質改善効果があまり認められない。また、インク中の染料を不溶化する化合物を含む画像記録促進液を被記録材上にインクジェット方法により付着した後にその画像記録促進液が付着した部分にインクを噴射して印字するインクジェット記録方法が特許文献8〜10等に開示されているが、この方法では2色重ね部での水分付着量が大きいため、色境界での滲みを十分に抑えることができず、またインクの裏写りが大きいという問題がある。さらに、被記録材のコックリング(波打ち)が発生するという問題がある。また、画像記録促進液をインクジェットヘッドで吹き付けるため、噴射を安定的に得るためには液の粘度や表面張力に制約があり、さらに目詰まりを起こさないためにノズルの径や液の組成に制約条件が加わり自由度が著しく小さくなるという問題があった。
【0006】
この問題を解決するための方法として、ローラを用いて紙面全体に塗布する方法が特許文献11(以下従来例と称す)に開示されている。図2は従来例におけるローラを用いて記録媒体にコーティング材料を塗布する構成を示す概略断面図である。同図において、図示していないモータ等で回動するプラテンローラ61には押えチャック62をもって記録媒体63が巻き付けられる。また、コーティングユニット64内にはコーティング材料65が収納されており、コーティング材料65は攪拌・供給ローラ66、輸送・薄膜化ローラ67,68によってコーティングローラ69のローラ面に薄膜化される。そして、コーティングローラ69は回転するプラテンローラ61に巻き付けられている記録媒体63上に押し付けながら回転され、記録媒体63の表面にコーティング材料65が塗工される。同時に、インクジェットヘッド70はコーティング材料65が塗工された記録媒体63の表面にインクを吐出して記録を行う。このように、画質品質を向上させるための前処理液を予め塗布ローラで記録領域に塗布する従来例の方法によれば、噴射ヘッドを用いて吹き付ける方法に比べ比較的粘度の高い液を薄く塗布することができ、画像滲みやカラーブリードを一段と低減できる点で優れている。
【特許文献1】特開昭56−86789号公報
【特許文献2】特開昭55−144172号公報
【特許文献3】特開昭52−53012号公報
【特許文献4】特開昭56−89594号公報
【特許文献5】特開昭55−65269号公報
【特許文献6】特開昭55−66976号公報
【特許文献7】特開昭56−89595号公報
【特許文献8】特開昭64−63185号公報
【特許文献9】特開平8−20159号公報
【特許文献10】特開平8−20161号公報
【特許文献11】特開平7−156538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、全ての用紙種類に塗布ローラによる前処理が必要な訳ではない。塗布ローラによる前処理は主に普通紙対して上述の不具合を解消するために施され、コート紙、光沢紙、OHP等の用紙種類では通常、前処理が不要となる。このような用紙種類に対して、前処理塗布ローラを通過搬送させることは、塗布ローラの速度が低い場合は処理能力及び処理速度の低下につながり、さらには前処理液の無駄にもなり、ひいては環境上も好ましくない。また、前処理液を塗布するために被記録材の剛性が低下し、被記録材を記録手段によって記録する記録エリアまで搬送する間に被記録材のコックリング(波打ち)が発生してジャムが発生するという問題がある。
【0008】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、塗布を必要としないような用紙に対して塗布処理無しで印写可能として処理能力を落とさず、用紙反転構造をなして小型化を図りつつジャムの発生を防止できるコンパクトな機構で構成され得る高速な画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、記録液中の色剤を不溶化する化合物を含有する液体である前処理液を記録媒体の記録領域に塗布する塗布ローラと該塗布ローラに対向するカウンタローラとを含む前処理液塗布手段と、記録液を吐出することにより記録媒体の記録領域に画像を記録する画像記録手段とを有する、本発明の画像記録装置において、処理液塗布手段によって記録媒体に前処理液を塗布する塗布工程経路と、塗布しない塗布不要経路とを設け、画像記録手段は、用紙給紙ユニットから引き出されて前処理液を塗布した後塗布工程経路を通って上方側へと反転して用紙給紙ユニット方向に搬送された記録媒体に対して記録を行い、前処理液を塗布された記録媒体は、記録媒体の表裏両面に各々設けられたガイド板で、鉛直上方よりも用紙給紙ユニット方向に向かうまでガイドされていることに特徴がある。よって、簡単な構成で、かつ前処理液の塗布が必要としない記録媒体に対して前処理液を無駄にすることがなくなり、かつ塗布工程を行わない分高速化が図れる画像記録装置を提供できる。また、用紙反転構造をなして小型化を図りつつジャムの発生を防止できるコンパクトな機構で構成され得る画像記録装置を提供できる。
【0010】
また、記録媒体の表裏両面に設けられたガイド板の間隔が記録媒体の出口側に向けて狭くなっていることにより、前処理液を塗布したことによって剛性が低下した被記録材でもジャムが発生することなく上方側へと反転して用紙給紙ユニット方向に搬送することができる。
【0011】
更に、ガイド板の出口側先端部にローラ対を有することにより、ガイド板通過後の被記録材がジャムすることなく上方側へと反転して用紙給紙ユニット方向に搬送することができる。
【0012】
また、処理液が塗布された記録媒体は、一旦上方に搬送され、その後下方に押し下げられてから画像記録手段による記録を行うことにより、被記録材がジャムすることなく確実に反転することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像記録装置によれば、前処理液塗布手段によって記録媒体に前処理液を塗布する塗布工程経路と、塗布しない塗布不要経路とを設け、その上で画像記録手段は、用紙給紙ユニットから引き出されて前処理液を塗布した後塗布工程経路を通って上方側へと反転して用紙給紙ユニット方向に搬送された記録媒体に対して記録を行い、前処理液を塗布された記録媒体は、記録媒体の表裏両面に各々設けられたガイド板で、鉛直上方よりも用紙給紙ユニット方向に向かうまでガイドされている。よって、印字中の間欠搬送でも、塗布ローラは搬送ローラ対と別駆動による一定速度で回動するので、塗布ムラによる波打ちや画質ムラがなく、塗布ローラによる塗布条件を常に一定に保つことができる。また、簡単な構成で、かつ前処理液の塗布が必要としない記録媒体に対して前処理液を無駄にすることがなくなり、かつ塗布工程を行わない分高速化が図れる画像記録装置を提供できると共に、用紙反転構造をなして小型化を図りつつジャムの発生を防止できるコンパクトな機構で構成され得る画像記録装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る画像記録装置の構成を示す断面図である。同図において、本実施の形態の画像記録装置1は、主に、用紙供給ユニット10、前処理液塗布ユニット20、そして画像記録ユニット30を含んで構成されている。用紙供給ユニット10は用紙11を送り出す給紙ローラ12を有する。前処理液塗布ユニット20は、色剤と、該色剤を分散または溶解する溶媒からなる記録液中の色剤を不溶化する化合物とを含有する液体である前処理液22を収納する前処理液タンク21と、前処理液22を攪拌して汲み上げる汲上げローラ23と、汲み上げられた前処理液22を塗布ローラ25に均一な膜厚に制御する膜厚制御ローラ24と、塗布ローラ25とによって搬送されてくる用紙11に前処理液22を塗工するカウンタローラ26と、塗布加工が不要である用紙の裏面に例えば着色、穴等のマーキングを検出するセンサ27と、塗布工程経路(図中矢印Aで示す)と塗布不要経路(図中矢印Bで示す)に用紙の搬送路を切り換える回動可能な切り換え爪28と、塗布不要経路内の搬送ローラ対29と、各経路を構成して用紙の搬送をガイドするガイド板42とを含んで構成されている。そして、画像記録ユニット30は、搬送されてきた用紙11を後述する記録ヘッド37の記録エリアに搬送する搬送ローラ31〜33と、案内ロッド対34に沿って移動するキャリッジ35に搭載された記録ヘッド37を有する記録部36と、記録された用紙11を排出するための排出ローラ対38,39、塗布ユニット20からの用紙11を画像記録ユニット30へ導く搬送ローラ対40及びブレード41とを含んで構成されている。
【0015】
次に、このような構成を有する本実施の形態の画像記録装置1における一連の画像記録動作について図1を用いて説明する。
先ず、用紙給紙ユニット10に収納されている用紙11は給紙ローラ12によって送り出される。そのとき、用紙11の裏面の所定の位置に施されているマーキングをセンサ27によって検出し、検出した結果用紙11が塗布を必要とする例えば普通紙であれば切り換え爪28を図中破線表示した位置まで回動させて用紙11を塗布工程経路に導く。このとき、前処理液塗布ユニット20の前処理液タンク21内の前処理液22は汲上げローラ23によって汲み上げられ、塗布ローラ25のローラ面に膜厚制御ローラ24によって均一な膜厚に制御されている。そして、塗布ローラ25とカウンタローラ26によって前処理液22が用紙11の記録領域に均一に薄く塗布される。そして、用紙11の記録領域は前処理液塗布ユニット20によって前処理液22を塗布され、そしてガイド板42によってガイドされて塗布不要経路より外側を搬送されながら上方側であって鉛直上方から記録ヘッド37のある記録エリアまでガイドされる。よって、前処理液22が塗布されて用紙自体の剛性が低下した用紙11はコックリング(波打ち)によるジャムの発生を防止することができる。なお、ガイド板42は図1に示すように各ガイド板の間隔が用紙11の搬送出口側に向けて狭くなっている。その後、用紙11は、ガイド板42の出口側の先端部に設けられている搬送ローラ対40によって一旦鉛直上方へ向って、更にブレード41、搬送ローラ31〜33によって反転するように先ず下方に押し下げられてから、用紙給紙ユニット10から送り出された用紙11の送り方向に対して反転する方向に位置している記録ヘッド37のある記録エリアに送られる。その後、キャリッジ35が案内ロッド対34に沿って画像信号に基づいて往復動作しキャリッジ35に搭載された記録ヘッド37によって前処理液22が塗布された用紙11の記録領域上に逐次記録がなされ、排出ローラ対38,39によって排出部に排出される。
【0016】
一方、センサ27によって検出した結果が用紙11に対して塗布不要である例えばOHPや光沢フィルム等の用紙であれば切り換え爪28を図中実線表示した位置で用紙11を塗布不要経路に導く。そして、ガイド板42によってガイドされて搬送されながら上方側であって鉛直上方から記録ヘッド37のある記録エリアまでガイドされる。更に、用紙11は、ガイド板42の出口側の先端部に設けられている搬送ローラ対40によって一旦鉛直上方へ向って、更にブレード41、搬送ローラ31〜33によって反転するように先ず下方に押し下げられてから、用紙給紙ユニット10から送り出された用紙11の送り方向に対して反転する方向に位置している記録ヘッド37のある記録エリアに送られる。その後、キャリッジ35が案内ロッド対34に沿って画像信号に基づいて往復動作しキャリッジ35に搭載された記録ヘッド37によって用紙11の記録領域上に逐次記録がなされ、排出ローラ対38,39によって排出部に排出される。
【0017】
なお、本実施の形態では、用紙11の裏面における所定の位置に前処理液の塗布要・不要を示すマーキングを施してそのマーキングをセンサで検出して経路を切り換える例であるがこれに限定する必要はなく、パソコン等の上位装置において操作者が塗布要の普通紙等あるいは塗布不要の用紙を選択した制御信号をもって切り換え爪を切り換えても同様な効果を得られることは言うまでもない。また、操作者の指示によって強制的に塗布不要というキャンセルモードによる制御信号をもって切り換え爪を切り換えても構わない。更に、切り換え爪を設けずに切り換え爪における用紙のジャム発生を回避するために用紙種別に用紙を収納する各給紙ユニットを塗布工程経路及び塗布不要経路に対応させて設けてもよい。
【0018】
なお、本発明の記録方式は上記実施の形態で説明したインクジェット方式に限定されるものではない。更に、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像記録装置の構成を示す断面図である。
【図2】従来例における前処理液塗布部の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1;画像記録装置、10;用紙供給ユニット、
11;用紙、12;給紙ローラ、20;前処理液塗布ユニット、
21;前処理液タンク、22;前処理液、23;汲上げローラ、
24;膜厚制御ローラ、25;塗布ローラ、26;カウンタローラ、
27;センサ、28;切り換え爪、29,40;搬送ローラ対、
30;画像記録ユニット、31〜33;搬送ローラ、
34;案内ロッド対、35;キャリッジ、36;記録部、
37;記録ヘッド、38,39;排出ローラ対、
41;ブレード、42;ガイド板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液中の色剤を不溶化する化合物を含有する液体である前処理液を記録媒体の記録領域に塗布する塗布ローラと該塗布ローラに対向するカウンタローラとを含む前処理液塗布手段と、記録液を吐出することにより前記記録媒体の記録領域に画像を記録する画像記録手段とを有する画像記録装置において、
前記前処理液塗布手段によって前記記録媒体に前記前処理液を塗布する塗布工程経路と、塗布しない塗布不要経路とを設け、
前記画像記録手段は、用紙給紙ユニットから引き出されて前記前処理液を塗布した後前記塗布工程経路を通って上方側へと反転して前記用紙給紙ユニット方向に搬送された前記記録媒体に対して記録を行い、
前記前処理液を塗布された前記記録媒体は、前記記録媒体の表裏両面に各々設けられたガイド板で、鉛直上方よりも前記用紙給紙ユニット方向に向かうまでガイドされていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体の表裏両面に設けられたガイド板の間隔が記録媒体の出口側に向けて狭くなっていることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ガイド板の前記出口側先端部にローラ対を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前処理液が塗布された前記記録媒体は、前記塗布工程経路を通った後一旦上方に搬送され、その後下方に押し下げられてから前記画像記録手段による記録を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−279773(P2008−279773A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168273(P2008−168273)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【分割の表示】特願2000−337050(P2000−337050)の分割
【原出願日】平成12年11月6日(2000.11.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】