画像診断支援装置及びプログラム
【課題】乳房画像における「構築の乱れ」に該当する領域を医師が容易に検出できるようにする。
【解決手段】画像診断支援装置10のCPU11によれば、一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出し、抽出された乳房領域内の線構造を検出し、抽出された乳房領域内に複数のROIを設定し、設定したROIのそれぞれを線構造の方向のパターンによって分類する。そして、各ROIに線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを付与して左右の乳房画像上に重畳して表示部14に表示する。
【解決手段】画像診断支援装置10のCPU11によれば、一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出し、抽出された乳房領域内の線構造を検出し、抽出された乳房領域内に複数のROIを設定し、設定したROIのそれぞれを線構造の方向のパターンによって分類する。そして、各ROIに線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを付与して左右の乳房画像上に重畳して表示部14に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳房を放射線撮影して得られた乳房画像は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置に表示されるか又はフィルム上にプリントされ、医師の読影診断に供されている。左右の乳房における正常構造は略同じであるため、医師が乳房画像を診断する場合、一対の左右の乳房画像を並べて表示して比較する所謂比較読影が行われている。
【0003】
比較読影の際には、医師は、左右の乳房画像の濃淡差、乳腺の分布、乳腺の流れ等に着目して診断を行っている。しかしながら、これらは主観的な医師の判断によるものであり、診断結果は読影する医師の経験や読影能力の高低に依存する。
【0004】
そこで、医師の技量に依存することなく異常部分を的確に検出できるよう支援する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、左右の乳房画像の濃度に基づいて乳腺分布マップを作成し、左右非対称性陰影を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−334183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、左右の乳房画像の濃度差の違いによる所見の検出が可能である。検出可能な所見は、腫瘤、左右非対称陰影(FAD)である。
【0007】
しかしながら、乳癌の重要所見の一つである「構築の乱れ」については、乳腺が周辺と異なる流れを示しているのみで乳房画像において濃度差を生じないため(図8A参照)、特許文献1に記載の技術では検出することができない。
【0008】
本発明の課題は、乳房画像における「構築の乱れ」に該当する領域を医師が容易に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像診断支援装置は、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段と、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段と、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段と、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段と、
を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記表示手段は、前記左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、前記左右の乳房画像上の前記対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている領域に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を重畳表示する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出手段を備え、
前記表示手段は、前記識別情報とともに前記異常陰影候補検出手段により検出された異常陰影候補の位置を示すマークを前記左右の乳房画像上に重畳表示する。
【0012】
請求項4に記載の発明のプログラムは、
コンピュータを、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乳房画像における「構築の乱れ」に該当する領域を医師が容易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における画像診断支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】図1のCPUにより実行される乳腺構造ラベル付け処理を示すフローチャートである。
【図3】乳房画像において抽出される各領域を説明するための図である。
【図4】図2のステップS2の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5A】乳房画像に設定する座標軸を説明するための図である。
【図5B】乳頭の検出を説明するための図である。
【図6】ROIの設定を説明するための図である。
【図7】Sobelフィルタの一例を示す図である。
【図8A】線構造の検出前の左右の乳房画像の一例を示す図である。
【図8B】図8Aの乳房画像から線構造を検出した左右の乳房画像の一例を示す図である。
【図9】図2のステップS4の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】線構造の方向のパターンを分類する際に設定されるベクトルを説明するための図である。
【図11A】線構造の方向のパターンに応じたラベル付けの一例を示す図である。
【図11B】ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベルが重畳表示された乳房画像の一例を示す図である。
【図12】ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベル及び異常陰影候補の検出位置を示すマークが重畳表示された乳房画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
【0016】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1に、本実施の形態における画像診断支援装置10の機能構成例を示す。
図1に示すように、画像診断支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)1
1、I/F(Inter Face)12、操作部13、表示部14、通信部15、RAM(Random Access Memory)16、ROM(Read Only Memory)17等を備えて構成され、各部はバス18より接続されて構成されている。
【0017】
CPU11は、ROM17に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM16内に展開し、展開されたプログラムとの協働により後述する乳腺構造ラベル付け処理を始めとする各種処理を実行し、画像診断支援装置10の各部の動作を集中制御する。
【0018】
I/F12は、画像生成装置Gと接続するためのインターフェイスであり、画像生成装置Gにおいて生成された画像データを画像診断支援装置10に入力する。
【0019】
画像生成装置Gは、患者の乳房を被写体として撮影し、撮影した画像をデジタル変換して、乳房画像の画像データを生成する装置である。画像生成装置Gとしては、例えば、CR(Computed Radiography)装置、FPD(Flat Panel Detector)装置等が適用可能である。
なお、本実施の形態において、画像生成装置Gは、一の患者について左右一対の乳房画像を生成し、画像診断支援装置10に入力する。
【0020】
操作部13は、カーソルキーや数字キー、各種機能キーからなるキーボードを備えて構成され、押下されたキーに対応する操作信号をCPU11に出力する。なお、必要に応じてマウスやタッチパネル等のポインティングディバイスを含むこととしてもよい。
【0021】
表示部14は、LCDやCRT等のモニタにより構成され、CPU11から入力される表示信号の指示に従って、乳房画像等の表示を行う。
【0022】
通信部15は、ネットワークインターフェイスカード、モデム、ターミナルアダプタ等の通信用インターフェイスにより構成され、通信ネットワーク上の外部機器と各種情報の送受信を行う。例えば、通信部15を介して画像生成装置Gから画像データを受信する構成としてもよいし、通信部15を介して病院内の画像サーバ等に接続する構成としてもよい。
【0023】
RAM16は、CPU11によって実行される各種プログラムやこれらプログラムによって処理されたデータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0024】
ROM17は、CPU11で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU11は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0025】
(画像診断支援装置10の動作)
次に、本実施の形態における動作について説明する。
画像診断支援装置10においては、画像生成装置Gから一対の左右の乳房画像の画像データが入力されると、以下に説明する乳腺構造ラベル付け処理が実行される。なお、画像診断支援装置10に入力される乳房画像の画素値は、濃度を表す値として説明する。
【0026】
図2に、画像診断支援装置10において実行される乳腺構造ラベル付け処理のフローを示す。当該処理は、CPU11とROM17に記憶されている乳腺構造ラベル付け処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される。
【0027】
まず、入力された左右の乳房画像のそれぞれにおいて、乳房領域Sa1(図3参照)の抽出が行われる(ステップS1)。
【0028】
乳房領域Sa1の抽出は、公知のどのような技術を用いても良いが、例えば、下記の方法により行うことができる。
(1)まず、乳房画像の画素値の分散ヒストグラムを求め、判別分析法(分散ヒストグラムを2つのクラスに分割したとき2つのクラスでクラス内分散とクラス間分散の判別比(分散比)が最大になるように閾値を決定する方法)を用いて閾値を決定し、決定された閾値を用いて乳房画像の画素値を2値化し、乳房画像を被写体領域Saとそれ以外の被写体外領域(放射線が直接到達した素抜け領域)Sbに分割することにより被写体領域Saを抽出する(図3参照)。撮影方向がCC(上下方向)である場合は、抽出された被写体領域Saが乳房領域Sa1となる。
(2)撮影方向がMLO(斜位方向)の場合には、(1)の被写体領域Saに胸筋領域Sa2が含まれるため、(1)で抽出された被写体領域Saから胸筋領域Sa2を除いた乳房領域Sa1を抽出する。例えば、被写体領域Sa内の濃度勾配を調べて被写体領域Saを胸筋領域Sa2と乳房領域Sa1とに分割し、乳房領域Sa1を抽出する。特開2001−238868号公報に記載されているように局所領域を設定し、局所領域内の画素値に基づき閾値を設定して被写体領域Sa内を2値化し、被写体領域Saから胸筋領域Sa2及び乳房領域Sa1を抽出するようにしてもよい。
【0029】
次いで、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、抽出された乳房領域Sa1内にROI(関心領域)が設定される(ステップS2)。
図4に、ステップS2における処理の詳細フローを示す。
ステップS2においては、まず、乳頭位置の検出が行われる(ステップS101)。
乳頭位置の検出は、例えば、図5Aに示すように、乳房画像中の乳房の上下方向をX軸、これと垂直方向をY軸とした座標(X,Y)とし、図5Bに示すように、乳房領域Sa1と被写体外領域Sbとの境界SL上の各点S(X)について、S(X)とS(X+d(dは、例えば10))とを結んだ直線と、S(X)〜S(X+d)の間の各点(S(X+1)、S(X+2)・・・S(X+d−1))との距離Dをそれぞれ算出し、算出した距離Dの最大値D(X)が取得される。そして、各S(X)についての最大値D(X)のうち最も大きい値をもつS(X)の位置が乳頭位置として検出される。
【0030】
次いで、検出された乳頭位置の座標(x、y)を中心としたn×n画素(nは正の整数)の画素ブロックからなるROIが設定され、そのROIの位置が基準B(x、y)として設定される(ステップS102)。ここで、ステップS102以降の処理においては、例えば、図6に示すように、乳房画像中の乳房の上下方向をy軸、これと垂直方向をx軸としてROIの位置を定める。各軸のスケールはROIを1単位としている。ROIを構成する画素ブロックのサイズ(n×n画素)は、実験的経験的に適宜決定される。また、設定されたROIの位置は、それぞれRAM16に記憶される。
【0031】
次いで、設定されたROIが乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS103)。設定されたROIが乳房領域外ではない(即ち、乳房領域内である)と判断されると(ステップS103;NO)、B(x、y+1)が次のROIの位置M(x、y)として設定され(ステップS104)、処理はステップS103に戻る。M(x、y)をy方向に+1ずつずらしながら順次ROIを設定していき、設定されたROIが乳房領域外となるまでこのステップS103〜S104の処理が繰り返し実行される。
【0032】
ステップS103において、ROIが乳房領域外であると判断されると(ステップS103;YES)、基準B(x、y)にROIの位置が移動される(ステップS105)。
【0033】
次いで、設定されたROIが乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS106)。設定されたROIが乳房領域外ではない(即ち、乳房領域内である)と判断されると(ステップS106;NO)、B(x、y−1)が次のROIの位置M(x、y)として設定され(ステップS107)、処理はステップS106に戻る。y方向に−1ずつずらしながら順次ROIを設定していき、設定されたROIが乳房領域外となるまでこのステップS106〜S107の処理が繰り返し実行される。
【0034】
ステップS106において、ROIが乳房領域外であると判断されると(ステップS106;YES)、B(x−1、y)が基準B(x、y)として設定され(ステップS108)、B(x、y)が乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS109)。基準B(x、y)が乳房領域外ではないと判断されると(ステップS109;NO)、基準B(x、y)にROIが設定され(ステップS110)、処理はステップS103に戻り、ステップS103〜S109の処理が繰り返し実行される。ステップS109において、基準Bが乳房領域外であると判断されると(ステップS109;NO)、ステップS2の処理は終了し、処理は図2のステップS3に移行する。
【0035】
このように、まず乳頭位置を基準B(x、y)としてROIを設定し、基準Bに対して、まず+y方向に1ずつずらしながら乳房領域外となるまでROIを設定していき、次いで、基準Bに対して−y方向に1ずつずらしながら乳房領域外となるまでROIを設定していく。基準Bに対するy軸方向へのROIの設定が終了すると、基準Bをx方向に−1ずつずらして、同様の処理を行っていく。このようにして、図6に示すように、乳房領域内全体にROIが設定される。このステップS2の処理により、乳房画像中の乳房領域内を複数のROI領域に分割することができる。
なお、図4のフローは、左の乳房画像に対してROIを設定する場合を示している。右乳房画像に対しては、ステップS108の処理が基準B(x、y)=B(x+1、y)となる。
【0036】
図2のステップS3においては、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、乳房領域内の線構造の検出が行われる(ステップS3)。具体的には、左右の乳房画像のそれぞれにSobelフィルタ処理が施されることにより、乳房領域内の線構造が検出される。乳腺は、乳房領域内で線構造をなしており、乳房領域内の線構造を検出することで、乳腺構造を検出することができる。
図7にSobelフィルタの一例を示す。Sobelフィルタ処理では、注目画素を中心とした上下左右の9つの画素値に対して、図7に示す縦方向、横方向の2つのフィルタの係数をそれぞれ乗算し、結果を合計する。横方向の合計値をfx(x、y)、縦方向の合計値をfy(x、y)とすると、注目画素の画素値f´(x、y)は下記の[数1]により求められる。
【数1】
【0037】
図8Aに、線構造の検出前の左右の乳房画像の一例を示す。図8Aにおいて矩形で囲った領域は、乳腺の構築の乱れがあるが、乳腺構造は乳房画像上で濃淡差として表れないため、図8Aに示す画像から構築の乱れを視認することは困難である。
図8Bに、図8Aの乳房画像から線構造を検出した左右の乳房画像の一例を示す。図8Bに示すように、線構造検出後の画像においては、乳腺構造の流れをある程度は視認することができる。ただし、図8Bからもわかるように、線構造が検出された乳房画像においても、抽出された左右の線構造の流れ、即ち左右の乳腺の流れを識別して構築の乱れを検出することは容易とはいえない。
【0038】
次いで、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、各ROIが乳腺構造の方向のパターンによって分類される(ステップS4)。
【0039】
ステップS4においては、図9に示すフローの処理が実行される。
まず、変数Kに1が設定されるとともに、P[θj](j=1、2、3・・・)の各カウンタに0が設定され、初期化される(ステップS200)。
次いで、K番目のROI内のSobelフィルタ処理後の画素値が予め定められた閾値を用いて2値化されることにより線構造が認識され、認識された線構造にラベリング処理が行われ、連続する線構造毎にL1〜Lm(mは認識された連続する線構造の個数)の識別番号が付与される(ステップS201)。
【0040】
次いで、変数iに1が設定され(ステップS202)、i>mであるか否かが判断される(ステップS203)。i>mではないと判断されると(ステップS203;NO)、図10に示すように線構造Liの始点と終点を結んだベクトルgiが設定される(ステップS204)。
次いで、x軸方向と水平方向のベクトルhとベクトルgiと内積の式に基づいて、ベクトルhとベクトルgiのなす角θgihが算出される(ステップS205)。ここで、−90°≦θgih≦90°である。
【0041】
次いで、算出されたθgihに基づいて、線構造Liの方向がパターンP[θj](j=1、2、3・・・)の何れかに分類される(ステップS206)。分類するパターンは、適宜設定することができる。ここでは、例えば、パターンP[θ1]:0°≦θ1<45°、パターンP[θ2]:45°≦θ2≦90°、パターンP[θ3]:−45°<θ3<0°、パターンP[θ4]:−90°≦θ4≦−45°に分類する。
次いで、θgihが分類されたパターンP[θj]に対応するカウンタが1カウントアップされる(ステップS207)。そして、変数iが1インクリメントされ(ステップS208)、処理はステップS203に戻る。
【0042】
一方、ステップS203において、変数i>mであると判断されると(ステップS203;YES)、配列ROI[K]にカウンタの値が最大となったP[θj]が格納される(ステップS209)。そして、変数Kが1インクリメントされ(ステップS210)、K>設定されたROIの数であるか否かが判断される(ステップS211)。K>設定されたROIの数ではないと判断されると(ステップS211;NO)、処理はステップS201に戻り、次のROIについてステップS201〜ステップS209の処理が実行される。K>設定されたROIの数であると判断されると(ステップS211;YES)、処理は図2のステップS5に移行する。
【0043】
図2のステップS5においては、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、ROI毎に、ステップS4において分類された線構造の方向のパターンに応じたラベル付けが行われる(ステップS5)。図11Aに、ラベル付けの一例を示す。そして、左右の乳房画像上に各ROIの線構造のパターンに応じたラベル(線構造の方向のパターンを示す識別情報)が重畳されて表示部14に表示され(ステップS6)、本処理は終了する。
【0044】
図11Bに、ステップS6において表示部14に表示される乳房画像の一例を示す。図11Bに示すように、左右の乳房画像のそれぞれに、ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベルを重畳表示することで、左右の乳房における乳腺の流れ(乳腺構造の方向)を可視化することができるので、読影医は、左右の乳房で乳腺の流れが異なっている領域を容易に把握して、「構築の乱れ」のある部分を容易に検出することが可能となる。例えば、図11Bにおいては、画像中の上部領域の乳腺の流れのパターンが左右の乳房で異なっているので、画像中の上部領域に局所的に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」があることを読影医が容易に認識することができ、読影精度を向上させることができる。
【0045】
なお、ステップS6においては、設定したROIの全てについてのラベルを表示することとしてもよいが、左右の乳房画像中の対応する領域同士の乳腺の流れのパターンが異なる場合に、それらの領域のみにラベルを重畳表示してもよい。このようにすれば、医師はより容易に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」がある部分を認識することが可能となる。左右の乳房画像における対応する領域は、例えば、特開2009−82564号公報に記載のように、左右の乳房画像から乳頭位置を検出し、乳頭の位置に基づいて乳房の傾きを示す直線を算出し、検出された乳頭の位置を原点、算出された乳房の傾きを示す直線を軸とする極座標系を設定し、この極座標系において一致する位置を前記左右の乳房画像における位置の対応付けを行うことにより特定することができる。
【0046】
また、入力された左右の乳房画像のそれぞれについて線構造を有する異常陰影候補を検出する処理を施し、図12に示すように、検出された異常陰影候補の位置を示すマークMを線構造の方向のパターンを示すラベルとともに表示部14に表示された左右の乳房画像上に重畳表示してもよい。このようにすれば、診断の参考となる更なる情報を医師に提供することができる。線構造を有する異常陰影候補を検出する手法としては、例えば、特開2004-209059公報に記載の手法を用いることができる。この手法によれば、画像中の線構造を抽出し、抽出された線構造の線集中度を画像中の各画素について算出し、抽出された線構造の方向分布指数を各画素について算出し、画素毎に線集中度と方向分布指数との積を算出し、算出された積に基づいて画像中の異常陰影候補の領域を検出する。異常陰影候補の検出処理は、ROMに記憶されているプログラムとCPU11との協働により実現することができる。
【0047】
以上説明したように、画像診断支援装置10のCPU11によれば、一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出し、抽出された乳房領域内の線構造を検出し、抽出された乳房領域内に複数のROIを設定し、設定したROIのそれぞれを線構造の方向のパターンによって分類する。そして、各ROIに線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを付与して左右の乳房画像上に重畳して表示部14に表示する。
【0048】
従って、乳房画像上に濃度差として現れない、左右の乳房における乳腺の流れ(乳腺構造の方向)を可視化することができるので、読影医は、左右の乳房で乳腺の流れが異なっている領域を容易に把握して、「構築の乱れ」のある部分を容易に検出することが可能となる。
【0049】
また、左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、その異なっている領域に対して線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを重畳表示することで、医師はより容易に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」がある部分を認識することが可能となる。
【0050】
また、左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出処理を行って、線構造の方向のパターンを示すラベルとともに異常陰影候補の位置を示すマークを左右の乳房画像上に重畳表示することで、診断の参考となる更なる情報を医師に提供することができる。
【0051】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る画像診断支援装置10の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0052】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0053】
その他、画像診断支援装置を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 画像診断支援装置
11 CPU
12 I/F
13 操作部
14 表示部
15 通信部
16 RAM
17 ROM
18 バス
G 画像生成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳房を放射線撮影して得られた乳房画像は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置に表示されるか又はフィルム上にプリントされ、医師の読影診断に供されている。左右の乳房における正常構造は略同じであるため、医師が乳房画像を診断する場合、一対の左右の乳房画像を並べて表示して比較する所謂比較読影が行われている。
【0003】
比較読影の際には、医師は、左右の乳房画像の濃淡差、乳腺の分布、乳腺の流れ等に着目して診断を行っている。しかしながら、これらは主観的な医師の判断によるものであり、診断結果は読影する医師の経験や読影能力の高低に依存する。
【0004】
そこで、医師の技量に依存することなく異常部分を的確に検出できるよう支援する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、左右の乳房画像の濃度に基づいて乳腺分布マップを作成し、左右非対称性陰影を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−334183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、左右の乳房画像の濃度差の違いによる所見の検出が可能である。検出可能な所見は、腫瘤、左右非対称陰影(FAD)である。
【0007】
しかしながら、乳癌の重要所見の一つである「構築の乱れ」については、乳腺が周辺と異なる流れを示しているのみで乳房画像において濃度差を生じないため(図8A参照)、特許文献1に記載の技術では検出することができない。
【0008】
本発明の課題は、乳房画像における「構築の乱れ」に該当する領域を医師が容易に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像診断支援装置は、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段と、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段と、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段と、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段と、
を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記表示手段は、前記左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、前記左右の乳房画像上の前記対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている領域に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を重畳表示する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出手段を備え、
前記表示手段は、前記識別情報とともに前記異常陰影候補検出手段により検出された異常陰影候補の位置を示すマークを前記左右の乳房画像上に重畳表示する。
【0012】
請求項4に記載の発明のプログラムは、
コンピュータを、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乳房画像における「構築の乱れ」に該当する領域を医師が容易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における画像診断支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】図1のCPUにより実行される乳腺構造ラベル付け処理を示すフローチャートである。
【図3】乳房画像において抽出される各領域を説明するための図である。
【図4】図2のステップS2の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5A】乳房画像に設定する座標軸を説明するための図である。
【図5B】乳頭の検出を説明するための図である。
【図6】ROIの設定を説明するための図である。
【図7】Sobelフィルタの一例を示す図である。
【図8A】線構造の検出前の左右の乳房画像の一例を示す図である。
【図8B】図8Aの乳房画像から線構造を検出した左右の乳房画像の一例を示す図である。
【図9】図2のステップS4の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】線構造の方向のパターンを分類する際に設定されるベクトルを説明するための図である。
【図11A】線構造の方向のパターンに応じたラベル付けの一例を示す図である。
【図11B】ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベルが重畳表示された乳房画像の一例を示す図である。
【図12】ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベル及び異常陰影候補の検出位置を示すマークが重畳表示された乳房画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
【0016】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1に、本実施の形態における画像診断支援装置10の機能構成例を示す。
図1に示すように、画像診断支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)1
1、I/F(Inter Face)12、操作部13、表示部14、通信部15、RAM(Random Access Memory)16、ROM(Read Only Memory)17等を備えて構成され、各部はバス18より接続されて構成されている。
【0017】
CPU11は、ROM17に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM16内に展開し、展開されたプログラムとの協働により後述する乳腺構造ラベル付け処理を始めとする各種処理を実行し、画像診断支援装置10の各部の動作を集中制御する。
【0018】
I/F12は、画像生成装置Gと接続するためのインターフェイスであり、画像生成装置Gにおいて生成された画像データを画像診断支援装置10に入力する。
【0019】
画像生成装置Gは、患者の乳房を被写体として撮影し、撮影した画像をデジタル変換して、乳房画像の画像データを生成する装置である。画像生成装置Gとしては、例えば、CR(Computed Radiography)装置、FPD(Flat Panel Detector)装置等が適用可能である。
なお、本実施の形態において、画像生成装置Gは、一の患者について左右一対の乳房画像を生成し、画像診断支援装置10に入力する。
【0020】
操作部13は、カーソルキーや数字キー、各種機能キーからなるキーボードを備えて構成され、押下されたキーに対応する操作信号をCPU11に出力する。なお、必要に応じてマウスやタッチパネル等のポインティングディバイスを含むこととしてもよい。
【0021】
表示部14は、LCDやCRT等のモニタにより構成され、CPU11から入力される表示信号の指示に従って、乳房画像等の表示を行う。
【0022】
通信部15は、ネットワークインターフェイスカード、モデム、ターミナルアダプタ等の通信用インターフェイスにより構成され、通信ネットワーク上の外部機器と各種情報の送受信を行う。例えば、通信部15を介して画像生成装置Gから画像データを受信する構成としてもよいし、通信部15を介して病院内の画像サーバ等に接続する構成としてもよい。
【0023】
RAM16は、CPU11によって実行される各種プログラムやこれらプログラムによって処理されたデータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0024】
ROM17は、CPU11で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU11は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0025】
(画像診断支援装置10の動作)
次に、本実施の形態における動作について説明する。
画像診断支援装置10においては、画像生成装置Gから一対の左右の乳房画像の画像データが入力されると、以下に説明する乳腺構造ラベル付け処理が実行される。なお、画像診断支援装置10に入力される乳房画像の画素値は、濃度を表す値として説明する。
【0026】
図2に、画像診断支援装置10において実行される乳腺構造ラベル付け処理のフローを示す。当該処理は、CPU11とROM17に記憶されている乳腺構造ラベル付け処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される。
【0027】
まず、入力された左右の乳房画像のそれぞれにおいて、乳房領域Sa1(図3参照)の抽出が行われる(ステップS1)。
【0028】
乳房領域Sa1の抽出は、公知のどのような技術を用いても良いが、例えば、下記の方法により行うことができる。
(1)まず、乳房画像の画素値の分散ヒストグラムを求め、判別分析法(分散ヒストグラムを2つのクラスに分割したとき2つのクラスでクラス内分散とクラス間分散の判別比(分散比)が最大になるように閾値を決定する方法)を用いて閾値を決定し、決定された閾値を用いて乳房画像の画素値を2値化し、乳房画像を被写体領域Saとそれ以外の被写体外領域(放射線が直接到達した素抜け領域)Sbに分割することにより被写体領域Saを抽出する(図3参照)。撮影方向がCC(上下方向)である場合は、抽出された被写体領域Saが乳房領域Sa1となる。
(2)撮影方向がMLO(斜位方向)の場合には、(1)の被写体領域Saに胸筋領域Sa2が含まれるため、(1)で抽出された被写体領域Saから胸筋領域Sa2を除いた乳房領域Sa1を抽出する。例えば、被写体領域Sa内の濃度勾配を調べて被写体領域Saを胸筋領域Sa2と乳房領域Sa1とに分割し、乳房領域Sa1を抽出する。特開2001−238868号公報に記載されているように局所領域を設定し、局所領域内の画素値に基づき閾値を設定して被写体領域Sa内を2値化し、被写体領域Saから胸筋領域Sa2及び乳房領域Sa1を抽出するようにしてもよい。
【0029】
次いで、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、抽出された乳房領域Sa1内にROI(関心領域)が設定される(ステップS2)。
図4に、ステップS2における処理の詳細フローを示す。
ステップS2においては、まず、乳頭位置の検出が行われる(ステップS101)。
乳頭位置の検出は、例えば、図5Aに示すように、乳房画像中の乳房の上下方向をX軸、これと垂直方向をY軸とした座標(X,Y)とし、図5Bに示すように、乳房領域Sa1と被写体外領域Sbとの境界SL上の各点S(X)について、S(X)とS(X+d(dは、例えば10))とを結んだ直線と、S(X)〜S(X+d)の間の各点(S(X+1)、S(X+2)・・・S(X+d−1))との距離Dをそれぞれ算出し、算出した距離Dの最大値D(X)が取得される。そして、各S(X)についての最大値D(X)のうち最も大きい値をもつS(X)の位置が乳頭位置として検出される。
【0030】
次いで、検出された乳頭位置の座標(x、y)を中心としたn×n画素(nは正の整数)の画素ブロックからなるROIが設定され、そのROIの位置が基準B(x、y)として設定される(ステップS102)。ここで、ステップS102以降の処理においては、例えば、図6に示すように、乳房画像中の乳房の上下方向をy軸、これと垂直方向をx軸としてROIの位置を定める。各軸のスケールはROIを1単位としている。ROIを構成する画素ブロックのサイズ(n×n画素)は、実験的経験的に適宜決定される。また、設定されたROIの位置は、それぞれRAM16に記憶される。
【0031】
次いで、設定されたROIが乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS103)。設定されたROIが乳房領域外ではない(即ち、乳房領域内である)と判断されると(ステップS103;NO)、B(x、y+1)が次のROIの位置M(x、y)として設定され(ステップS104)、処理はステップS103に戻る。M(x、y)をy方向に+1ずつずらしながら順次ROIを設定していき、設定されたROIが乳房領域外となるまでこのステップS103〜S104の処理が繰り返し実行される。
【0032】
ステップS103において、ROIが乳房領域外であると判断されると(ステップS103;YES)、基準B(x、y)にROIの位置が移動される(ステップS105)。
【0033】
次いで、設定されたROIが乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS106)。設定されたROIが乳房領域外ではない(即ち、乳房領域内である)と判断されると(ステップS106;NO)、B(x、y−1)が次のROIの位置M(x、y)として設定され(ステップS107)、処理はステップS106に戻る。y方向に−1ずつずらしながら順次ROIを設定していき、設定されたROIが乳房領域外となるまでこのステップS106〜S107の処理が繰り返し実行される。
【0034】
ステップS106において、ROIが乳房領域外であると判断されると(ステップS106;YES)、B(x−1、y)が基準B(x、y)として設定され(ステップS108)、B(x、y)が乳房領域外であるか否かが判断される(ステップS109)。基準B(x、y)が乳房領域外ではないと判断されると(ステップS109;NO)、基準B(x、y)にROIが設定され(ステップS110)、処理はステップS103に戻り、ステップS103〜S109の処理が繰り返し実行される。ステップS109において、基準Bが乳房領域外であると判断されると(ステップS109;NO)、ステップS2の処理は終了し、処理は図2のステップS3に移行する。
【0035】
このように、まず乳頭位置を基準B(x、y)としてROIを設定し、基準Bに対して、まず+y方向に1ずつずらしながら乳房領域外となるまでROIを設定していき、次いで、基準Bに対して−y方向に1ずつずらしながら乳房領域外となるまでROIを設定していく。基準Bに対するy軸方向へのROIの設定が終了すると、基準Bをx方向に−1ずつずらして、同様の処理を行っていく。このようにして、図6に示すように、乳房領域内全体にROIが設定される。このステップS2の処理により、乳房画像中の乳房領域内を複数のROI領域に分割することができる。
なお、図4のフローは、左の乳房画像に対してROIを設定する場合を示している。右乳房画像に対しては、ステップS108の処理が基準B(x、y)=B(x+1、y)となる。
【0036】
図2のステップS3においては、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、乳房領域内の線構造の検出が行われる(ステップS3)。具体的には、左右の乳房画像のそれぞれにSobelフィルタ処理が施されることにより、乳房領域内の線構造が検出される。乳腺は、乳房領域内で線構造をなしており、乳房領域内の線構造を検出することで、乳腺構造を検出することができる。
図7にSobelフィルタの一例を示す。Sobelフィルタ処理では、注目画素を中心とした上下左右の9つの画素値に対して、図7に示す縦方向、横方向の2つのフィルタの係数をそれぞれ乗算し、結果を合計する。横方向の合計値をfx(x、y)、縦方向の合計値をfy(x、y)とすると、注目画素の画素値f´(x、y)は下記の[数1]により求められる。
【数1】
【0037】
図8Aに、線構造の検出前の左右の乳房画像の一例を示す。図8Aにおいて矩形で囲った領域は、乳腺の構築の乱れがあるが、乳腺構造は乳房画像上で濃淡差として表れないため、図8Aに示す画像から構築の乱れを視認することは困難である。
図8Bに、図8Aの乳房画像から線構造を検出した左右の乳房画像の一例を示す。図8Bに示すように、線構造検出後の画像においては、乳腺構造の流れをある程度は視認することができる。ただし、図8Bからもわかるように、線構造が検出された乳房画像においても、抽出された左右の線構造の流れ、即ち左右の乳腺の流れを識別して構築の乱れを検出することは容易とはいえない。
【0038】
次いで、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、各ROIが乳腺構造の方向のパターンによって分類される(ステップS4)。
【0039】
ステップS4においては、図9に示すフローの処理が実行される。
まず、変数Kに1が設定されるとともに、P[θj](j=1、2、3・・・)の各カウンタに0が設定され、初期化される(ステップS200)。
次いで、K番目のROI内のSobelフィルタ処理後の画素値が予め定められた閾値を用いて2値化されることにより線構造が認識され、認識された線構造にラベリング処理が行われ、連続する線構造毎にL1〜Lm(mは認識された連続する線構造の個数)の識別番号が付与される(ステップS201)。
【0040】
次いで、変数iに1が設定され(ステップS202)、i>mであるか否かが判断される(ステップS203)。i>mではないと判断されると(ステップS203;NO)、図10に示すように線構造Liの始点と終点を結んだベクトルgiが設定される(ステップS204)。
次いで、x軸方向と水平方向のベクトルhとベクトルgiと内積の式に基づいて、ベクトルhとベクトルgiのなす角θgihが算出される(ステップS205)。ここで、−90°≦θgih≦90°である。
【0041】
次いで、算出されたθgihに基づいて、線構造Liの方向がパターンP[θj](j=1、2、3・・・)の何れかに分類される(ステップS206)。分類するパターンは、適宜設定することができる。ここでは、例えば、パターンP[θ1]:0°≦θ1<45°、パターンP[θ2]:45°≦θ2≦90°、パターンP[θ3]:−45°<θ3<0°、パターンP[θ4]:−90°≦θ4≦−45°に分類する。
次いで、θgihが分類されたパターンP[θj]に対応するカウンタが1カウントアップされる(ステップS207)。そして、変数iが1インクリメントされ(ステップS208)、処理はステップS203に戻る。
【0042】
一方、ステップS203において、変数i>mであると判断されると(ステップS203;YES)、配列ROI[K]にカウンタの値が最大となったP[θj]が格納される(ステップS209)。そして、変数Kが1インクリメントされ(ステップS210)、K>設定されたROIの数であるか否かが判断される(ステップS211)。K>設定されたROIの数ではないと判断されると(ステップS211;NO)、処理はステップS201に戻り、次のROIについてステップS201〜ステップS209の処理が実行される。K>設定されたROIの数であると判断されると(ステップS211;YES)、処理は図2のステップS5に移行する。
【0043】
図2のステップS5においては、左右の乳房画像のそれぞれにおいて、ROI毎に、ステップS4において分類された線構造の方向のパターンに応じたラベル付けが行われる(ステップS5)。図11Aに、ラベル付けの一例を示す。そして、左右の乳房画像上に各ROIの線構造のパターンに応じたラベル(線構造の方向のパターンを示す識別情報)が重畳されて表示部14に表示され(ステップS6)、本処理は終了する。
【0044】
図11Bに、ステップS6において表示部14に表示される乳房画像の一例を示す。図11Bに示すように、左右の乳房画像のそれぞれに、ROI毎の線構造の方向のパターンを示すラベルを重畳表示することで、左右の乳房における乳腺の流れ(乳腺構造の方向)を可視化することができるので、読影医は、左右の乳房で乳腺の流れが異なっている領域を容易に把握して、「構築の乱れ」のある部分を容易に検出することが可能となる。例えば、図11Bにおいては、画像中の上部領域の乳腺の流れのパターンが左右の乳房で異なっているので、画像中の上部領域に局所的に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」があることを読影医が容易に認識することができ、読影精度を向上させることができる。
【0045】
なお、ステップS6においては、設定したROIの全てについてのラベルを表示することとしてもよいが、左右の乳房画像中の対応する領域同士の乳腺の流れのパターンが異なる場合に、それらの領域のみにラベルを重畳表示してもよい。このようにすれば、医師はより容易に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」がある部分を認識することが可能となる。左右の乳房画像における対応する領域は、例えば、特開2009−82564号公報に記載のように、左右の乳房画像から乳頭位置を検出し、乳頭の位置に基づいて乳房の傾きを示す直線を算出し、検出された乳頭の位置を原点、算出された乳房の傾きを示す直線を軸とする極座標系を設定し、この極座標系において一致する位置を前記左右の乳房画像における位置の対応付けを行うことにより特定することができる。
【0046】
また、入力された左右の乳房画像のそれぞれについて線構造を有する異常陰影候補を検出する処理を施し、図12に示すように、検出された異常陰影候補の位置を示すマークMを線構造の方向のパターンを示すラベルとともに表示部14に表示された左右の乳房画像上に重畳表示してもよい。このようにすれば、診断の参考となる更なる情報を医師に提供することができる。線構造を有する異常陰影候補を検出する手法としては、例えば、特開2004-209059公報に記載の手法を用いることができる。この手法によれば、画像中の線構造を抽出し、抽出された線構造の線集中度を画像中の各画素について算出し、抽出された線構造の方向分布指数を各画素について算出し、画素毎に線集中度と方向分布指数との積を算出し、算出された積に基づいて画像中の異常陰影候補の領域を検出する。異常陰影候補の検出処理は、ROMに記憶されているプログラムとCPU11との協働により実現することができる。
【0047】
以上説明したように、画像診断支援装置10のCPU11によれば、一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出し、抽出された乳房領域内の線構造を検出し、抽出された乳房領域内に複数のROIを設定し、設定したROIのそれぞれを線構造の方向のパターンによって分類する。そして、各ROIに線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを付与して左右の乳房画像上に重畳して表示部14に表示する。
【0048】
従って、乳房画像上に濃度差として現れない、左右の乳房における乳腺の流れ(乳腺構造の方向)を可視化することができるので、読影医は、左右の乳房で乳腺の流れが異なっている領域を容易に把握して、「構築の乱れ」のある部分を容易に検出することが可能となる。
【0049】
また、左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、その異なっている領域に対して線構造の方向のパターンの分類に応じたラベルを重畳表示することで、医師はより容易に乳腺組織が乱れている「構築の乱れ」がある部分を認識することが可能となる。
【0050】
また、左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出処理を行って、線構造の方向のパターンを示すラベルとともに異常陰影候補の位置を示すマークを左右の乳房画像上に重畳表示することで、診断の参考となる更なる情報を医師に提供することができる。
【0051】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る画像診断支援装置10の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0052】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0053】
その他、画像診断支援装置を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 画像診断支援装置
11 CPU
12 I/F
13 操作部
14 表示部
15 通信部
16 RAM
17 ROM
18 バス
G 画像生成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段と、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段と、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段と、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段と、
を備える画像診断支援装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、前記左右の乳房画像上の前記対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている領域に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を重畳表示する請求項1に記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出手段を備え、
前記表示手段は、前記識別情報とともに前記異常陰影候補検出手段により検出された異常陰影候補の位置を示すマークを前記左右の乳房画像上に重畳表示する請求項1又は2に記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
コンピュータを、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段と、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段と、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段と、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段と、
を備える画像診断支援装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記左右の乳房画像の対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている場合に、前記左右の乳房画像上の前記対応する領域同士の線構造の方向のパターンが異なっている領域に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を重畳表示する請求項1に記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記左右の乳房画像のそれぞれから異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出手段を備え、
前記表示手段は、前記識別情報とともに前記異常陰影候補検出手段により検出された異常陰影候補の位置を示すマークを前記左右の乳房画像上に重畳表示する請求項1又は2に記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
コンピュータを、
一対の左右の乳房画像のそれぞれから乳房領域を抽出する乳房領域抽出手段、
前記抽出された乳房領域内の線構造を検出する線構造検出手段、
前記抽出された乳房領域内を複数の領域に分割し、前記複数の領域のそれぞれを前記検出された線構造の方向のパターンによって分類するパターン分類手段、
前記複数の領域の一部又は全部に前記線構造の方向のパターンの分類に応じた識別情報を付与し、前記左右の乳房画像上に重畳して表示する表示手段、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図11B】
【図12】
【図2】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図11B】
【図12】
【公開番号】特開2012−161497(P2012−161497A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24544(P2011−24544)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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