説明

画像読取装置のドライバ及び画像処理方法

【課題】符号化後の画像データが十分な画質を保持しながらも、所望のデータ量による符号化データを出力することができる画像読取装置のドライバ及び画像処理方法を提供すること、2値化処理前の画像データを常に保持する必要がないよう処理する画像読取装置のドライバ及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】小切手5に記録された画像を読み取る小切手処理装置1によって読み取られた画像データを処理するドライバであって、画像データを2値化し2値画像データを出力する2値化処理部110と、2値画像データを符号化し符号化データを出力する符号化処理部111と、符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定するデータ量判定部112と、データ量が所定量より大きい場合は、所定量より小さくなるまで2値画像データのデータ量を段階的に削減するデータ削減部(ノイズ除去部113)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取装置によって読み取られた画像データを処理する画像読取装置のドライバ及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像処理技術の発展はめざましく、写真/文字が混在するフルカラー画像等の多値画像の処理や、多値画像内の文字認識処理等が可能な画像読取装置が普及してきている。このような画像処理技術において、写真/文字が混在する多値画像の2値化処理は不可欠な技術となっている。
【0003】
特許文献1には、出力結果における文字可読性を向上させ、読み取り画像データの圧縮率の低下を防止するよう構成された画像読取装置が記載されている。画像読取装置は、2値化処理部Aにより2値化された画像データ及び2値化処理部Bにより2値化された画像データと、をそれぞれ圧縮し、互いの圧縮率を比較し、比較結果に応じて何れか一方により2値化され圧縮された画像データを出力又は記憶する。圧縮率の高いほうを出力することによって記憶媒体等の使用効率を高めることができる。
【0004】
2値画像の圧縮処理には、例えば、連続する同一の画素値とその連続数との並びに変換するランレングス圧縮や、CCITTファックスグループ3(fax Group 3)及びファックスグループ4(fax Group 4)などファクシミリ送信において実施されている圧縮方法などがある。2値化された画像データを圧縮処理することによってさらにデータ量を小さくすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−214990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、圧縮率の大小比較が2値化処理部A及び2値化処理部Bの2つのアルゴリズム間の相対的なものであり、絶対的な圧縮率を提供することができない。上述したようにランレングス圧縮やCCITTG4圧縮を適用しても、2種類の2値化処理部A,Bのいずれでも十分ではない画像データが得られた場合、所望の圧縮率を得ることができない可能性がある。また、2値化処理Bの適用によって圧縮率が改善されることは保証されていないが、必ず2値化処理部A及び2値化処理部Bによる両方の処理を実行しなければならないため、無駄な処理時間となる可能性がある。また、2値化処理前のグレースケールデータを常に保持しなければならないため、メモリの利用効率が良くない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、符号化後の画像データが十分な画質を保持しながらも、所望のデータ量による符号化データを出力することができる画像読取装置のドライバ及び画像処理方法を提供することを目的とする。また、2値化処理前の画像データを常に保持する必要がないよう処理する画像読取装置のドライバ及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明は、記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取装置によって読み取られた画像データを処理する画像読取装置のドライバであって、
前記画像データを2値化し2値画像データを出力する2値化処理部と、
前記2値画像データを符号化し符号化データを出力する符号化処理部と、
前記符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定するデータ量判定部と、
前記データ量が前記所定量より大きい場合は、前記所定量より小さくなるまで前記2値画像データのデータ量を段階的に削減するデータ削減部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、符号化データのデータ量が所定量より小さくなるまで、2値画像データのデータ量を削減するので、確実に所定量より小さい画像データへ符号化することができる。したがって、所望のデータ量による符号化データを出力することができる。また、本発明のデータ削減処理は、常に2値化処理を行った後の2値画像データに対して行うため、従来のように2値化処理前のグレースケール画像を常に保持しておく必要がなく、記憶領域を効率的に使用することができる。
【0009】
また本発明のドライバにおいて、前記データ削減部は、パラメータを変更することによってデータの削減量を段階的に変更することを特徴とする。
2値化された画像データからデータを削減すると、必然的に画質は劣化する。データの削減量を段階的に変更せず一度に削減して符号化すると、所望の符号化量を実現することはできても、必要以上に画質が劣化してしまう場合がある。上記構成によればデータの削減量を段階的に変更しながら所望の符号化量を実現するので、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0010】
また、本発明のドライバにおいて、データ削減後の2値画像データから重畳的にデータ量を削減することを特徴とする。
上記構成によれば、最初に得られる2値画像データに対して重畳的にデータ削減処理を実行する。したがって、比較的データ削減効果の低いフィルタを採用することによって、データ削減量を段階的に増やしつつ所望の符号化量を実現するので、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0011】
記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取装置によって読み取られた画像データの画像処理方法であって、
前記画像データを2値化し2値画像データを出力する2値化ステップと、
前記2値画像データを符号化し符号化データを出力する符号化ステップと、
前記符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定する判定ステップと、
前記データ量が前記所定量より大きい場合は、前記所定量より小さくなるまで前記2値画像データのデータ量を段階的に削減するデータ削減ステップと、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、符号化データのデータ量が所定量より小さくなるまで、2値画像データのデータ量を削減するので、確実に所定量より小さい画像データへ符号化することができる。したがって、所望の圧縮率による圧縮処理を実現することができる。
【0012】
また本発明の画像処理方法は、前記判定ステップにおいて前記データ量が前記所定量より大きいと判定した場合に前記データ量を削減するデータ削減部のパラメータを変更するパラメータ変更ステップを含み、
前記パラメータ変更ステップを繰り返し実行することによって、前記2値画像データのデータ削減量を段階的に変更することを特徴とする。
上記構成によれば、データの削減量を段階的に変更しながら所望の符号化量を実現するので、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0013】
また本発明の画像処理方法は、データ削減後の2値画像データに対して、前記データ削減ステップを繰り返し実行することによって、前記2値画像データから重畳的にデータ量を削減することを特徴とする。
上記構成によれば、繰り返しデータ削減ステップを実行することによって、データ削減量を段階的に増やしつつ所望の符号化量を実現し、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0014】
また本発明の画像処理方法は、前記データ削減ステップは、
前記2値画像データに対してパラメータをX1とするDilation処理を適用するステップと、
前記Dilation処理後のデータに対してパラメータをX2とするErosion処理を適用するステップと、
前記2値画像データと前記Erosion処理後のデータとの論理和を演算するステップと、を含み、
前記パラメータX1は前記パラメータX2よりも小さい値であることを特徴とする。
Dilation処理とは、いわゆる膨張処理と言われるもので、2値画像におけるDilation処理では、背景色を白(論理的には1)、前景色を黒(論理的には0)とした場合、ある画素の近傍に一つでも1(白)があればその画素を1にする処理のことをいう。一方、Erosion処理とは、いわゆる収縮処理と言われるもので、2値画像におけるErosion処理では、ある画素の近傍に一つでも0(黒)があればその画素を0にする処理のことをいう。すなわち、膨張処理を実行すると、小さな突起や小さな塊のような黒ノイズを除去し、収縮処理を実行すると、黒地の中の小さな白ノイズを除去することができるので、CCITTG4の圧縮率が改善される。上記構成によれば、Erosion処理は、Dilation処理のパラメータX1よりも大きいパラメータX2によって実行される。したがって、Erosion処理後の画像データのうち特に文字情報が含まれる部分は全体的に黒っぽくなり、黒い文字領域が形成される。Erosion処理後の画像データと2値画像データとの論理和をとることによって、小さな突起や小さな塊のような黒ノイズを除去する一方で、文字領域に含まれるドット文字「.」等を残存させることができる。したがって、銀行名、金額、磁気インク文字やサイン等の文字情報を含む小切手を読み取る小切手読取処理に効果的に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の画像読取装置のドライバ及び画像読取方法の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施形態では画像読取装置の一実施形態として小切手処理装置を例示して説明する。本実施形態の小切手処理装置は、小切手の表面に印刷されている磁気インク文字列、銀行名、金額、サイン等の文字情報、その表面画像および裏面画像を読み取り処理を行う。また小切手処理装置は、ホストコンピュータと通信可能に接続されており、ホストコンピュータにインストールされているドライバによって制御されている。
【0016】
(小切手処理装置の全体構成)
まず、小切手処理装置1の機械的構成について説明する。
図1は本実施の形態に係る小切手処理装置の外観斜視図である。小切手処理装置1は、装置本体側の本体ケース2と、左右の開閉カバー3、4とを備えている。本体ケース2と開閉カバー3、4の間には、小切手5を搬送するための小切手搬送路6が形成されている。小切手搬送路6は、上から見た場合に略U字状に湾曲して延びている細幅の垂直溝によって規定されている。小切手搬送路6の小切手搬送方向の上流端は、細幅の垂直溝からなる小切手送り出し通路7を介して広幅の垂直溝からなる小切手供給部8に繋がっている。小切手搬送路6の下流端は、左右に分岐している細幅の垂直溝からなる左右の分岐通路9および10を介して、左右の広幅の垂直溝からなる第1および第2小切手排出部11、12に繋がっている。
【0017】
小切手5は、その表面5aの下端部分に、その長辺方向に磁気インク文字列5Aが印刷されている。また、表面5aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、裏面5bには裏書き欄などが設けられている。小切手5は、上下方向を揃え、表面5aがU形状の小切手搬送路6の外側を向くように、小切手供給部8に挿入される。
【0018】
小切手供給部8から小切手送り出し通路7を介して送り出された小切手5は、小切手搬送路6に沿って搬送されながら、その表面5aに印刷されている磁気インク文字列5A、銀行名、金額、サイン等の文字情報、その表面画像および裏面画像が読み取られる。これらの情報が正常に読み取られた小切手5は、「電子決済済み」などの印刷が行われた後に、第1小切手排出部11に振り分けられて、そこに排出される。読み取り不能、読み取り異常などが発生した小切手5については、そのような印刷が行われることなく、第2小切手排出部12に振り分けられて、そこに排出されるようになっている。
【0019】
図2は、開閉カバー3、4を開いて小切手搬送路6を開放した状態の小切手処理装置1を示す外観斜視図であり、図3は、その平面図である。これらの図も参照して説明すると、本体ケース2は、U字状の小切手搬送路6に沿った輪郭形状の垂直な外周側面部分21を備えた中央ケース部分22と、左右の側方ケース部分23、24と、中央ケース部分22および側方ケース部分24の間に配置されている仕切り用ケース部分25とを備えている。中央ケース部分22と側方ケース部分23の間には小切手供給部8が形成されている。中央ケース部分22と他方の側方ケース部分24の間は、仕切り用ケース部分25によって左右に仕切られて、小切手排出部11、12が形成されている。
【0020】
中央ケース部分22における左右の側方ケース部分23、24から突出している部分の外周側面部分は小切手5をガイドするための本体側ガイド面21であり、この本体側ガイド面21は、左右から開閉カバー3、4によって覆われている。開閉カバー3は、側方ケース部分23の側に配置されており、その内側のカバー側ガイド面30が本体側ガイド面21に一定の間隔で対峙しており、これら本体側ガイド面21とカバー側ガイド面30によって規定される上方に開口した垂直溝によって上流側搬送路部分6aが規定されている。
【0021】
同様に、開閉カバー4は側方ケース部分24の側に配置されており、その内側のカバー側ガイド面40が本体側ガイド面21に一定の間隔で対峙しており、これら本体側ガイド面21とカバー側ガイド面40とによって規定される上方に開口した垂直溝によって下流側搬送路部分6bが規定されている。
【0022】
なお、開閉カバー3の先端部3aと開閉カバー4の先端部4aは、本体ケース2の側に配置されている垂直な開閉中心軸26を中心として左右に開閉可能な状態で、当該開閉中心軸26に取り付けられている。
【0023】
次に、開閉カバー3、4はロック機構によってその閉じ位置にロックされている。開閉カバー3のロック機構は、図2、3に示すように、当該開閉カバー3の後端面3bに形成したカバー側係合爪31と、側方ケース部分23における端面23aに進退可能に取り付けた本体側係合爪32とを備えている。本体側係合爪32は、装置本体内部に配置されている不図示のばね部材のばね力によって、端面23aから突出する方向に付勢されている。側方ケース部分23の外側面部分にはロック解除用のスライドボタン33が取り付けられている。他方の開閉カバー4のロック機構も同様に、本体側係合爪35、ケース側係合爪36およびスライドボタン37を備えている。
【0024】
開閉カバー3によって規定されている上流側搬送路部分6aには、その上流側から順に、不図示の表面側読み取りヘッド、裏面側読み取りヘッド83が配置されている。本例では、装置本体側に、裏面側読み取りヘッド83、磁気ヘッド84および印刷機構86が搭載されており、開閉カバー3に表面側読み取りヘッドが搭載されている。
【0025】
(画像処理について)
次に、小切手処理装置1が備えるイメージスキャナが読み取った画像データの処理について説明する。図4は、小切手処理装置1の動作を制御するドライバを備えたホストコンピュータ103の内部処理を説明するためのブロック図である。ここでは、小切手読取装置1が実行する画像読取処理に着目して説明する。
本実施形態の小切手処理装置1は、上述した表面側読み取りヘッドに搭載されているイメージセンサ82a及び裏面側読み取りヘッド83に搭載されているイメージセンサ83aが読み取った画像データをA/D変換器90によってグレースケール画像に変換する。
【0026】
A/D変換によって量子化され階調値とされた各グレースケールの画素値は、濃度レベルのむらを除くため、いわゆるシェーディング補正される。シェーディング補正された画像は各画像メモリに一時的に記憶される。すなわち、表面側グレースケール画像は表面側画像メモリ92へ、裏面側グレースケール画像は裏面側画像メモリ93へ記憶される。各グレースケール画像は、ホストコンピュータ103からの送信要求に応じて、不図示の通信インターフェースを介してホストコンピュータ103へ送信される。
【0027】
図4に示すように、ホストコンピュータ103は、表示部103a、キーボード、マウスなどの操作部103b,103cなどの入出力機器と接続されており、これらの入出力機器を介して当該ホストコンピュータ103側から小切手読取動作の開始指令や、各コンタクトイメージスキャナの解像度の倍率レベル等を入力することができるようになっている。
【0028】
ホストコンピュータ103の内部構成としては、少なくとも小切手処理装置1の動作を制御するドライバ104と、ドライバ104が小切手処理装置1から送信されたグレースケール画像を2値化し符号化した後の符号化データが格納される画像データ記憶部114と、を備えている。さらにドライバ104は、主として2値化処理部110、符号化処理部111、データ量判定部112及びノイズ除去部113を備えている。
【0029】
2値化処理部110は、小切手処理装置1から送信されたグレースケール画像を2値化し、2値画像データを出力する。例えば、8ビットなら白と黒を含めて256階調の灰色で表現された画像を、白(1)と黒(0)の2値だけの画像データに変換する。
符号化処理部111は、2値化された2値画像データを一定の規則に基づいて符号化し、符号化データとして出力する。具体的には、ランレングス圧縮やCCITTG4圧縮などの2値画像データに対応した圧縮処理を実行する。
【0030】
データ量判定部112は、符号化処理部111によって符号化された符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定する。
ノイズ除去部113(データ削減部)は、符号化データのデータ量が所定量より大きい場合に、所定量より小さくなるまで2値画像データのデータ量を段階的に削減する。本実施形態では、パラメータを変更することによってデータの削減量を段階的に変更することができるパラメトリックなフィルタを使用する。
【0031】
なお、本実施形態でいうノイズは、小切手5のうち小切手の処理に必要な記載情報以外のもの全般を指し、セキュリティ模様やコピー防止の透かし文字などが繰り返し印刷されている背景領域のデータ、電気回路の熱雑音、量子化誤差、シェーディング補正時の丸め誤差等を原因とするもの等が含まれる。
ノイズ除去方法としては、2値画像データに対して、所定のパラメータによるDilation処理を適用し、Dilation処理後のデータに対して所定のパラメータによるErosion処理を適用する、いわゆるClosing処理を実行する。
【0032】
画像データ記憶部114は、データ量判定部112によってデータ量が所定量より小さいと判定されたときの符号化データを記憶する。すなわち、画像データ記憶部114に記憶されるデータは、予め定めた所定量よりも小さい符号化データの集合である。この所定量を可能な限り小さく設定すれば、より多くの小切手読取画像を記憶させておくことができる。
【0033】
(ノイズ除去方法について)
次に、本実施形態の画像処理の具体的なノイズ除去処理の流れを図5〜7を参照し説明する。図5は、本実施形態の画像処理の流れを説明するためのフローチャートであり、図6は、Dilation処理及びErosion処理を適用した場合の具体的な画像データの変化を示した図であり、図7は、Closing処理においてパラメータを変更した場合の具体的な各画像データを示した図である。
【0034】
図6(a)は本実施形態のClosing処理を適用する前の符号化データであり、図6(b)はパラメータとして3pix(pixはピクセルを表す)を設定しDilation処理を適用した後の2値画像データであり、図6(c)はDilation処理後の(b)の2値画像データにパラメータとして3pixのErosion処理を適用した後の符号化データであり、図6(d)はパラメータとして5pixを設定しDilation処理を適用した後の2値画像データであり、図6(e)はDilation処理後の(d)の2値画像データにパラメータとして5pixのErosion処理を適用した後の符号化データである。
【0035】
図7(a)は本実施形態のClosing処理を適用する前の符号化データであり、図7(b)はパラメータとして2pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(c)はパラメータとして3pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(d)はパラメータとして4pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(e)はパラメータとして5pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(f)はパラメータとして6pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(g)はパラメータとして7pixを設定しClosing処理を適用した後の符号化データであり、図7(h)はノイズがない状態の符号化データである。
【0036】
小切手5の両面に印刷された画像を各イメージセンサ82a,83aが読み取り、A/D変換器90によってデジタル処理されたグレースケール画像は、ホストコンピュータ103へ送信される。グレースケール画像を受信すると、2値化処理部110が白と黒のみの2値画像データに変換し(ステップS11)、符号化処理部111が2値画像データを符号化する(ステップS12)。
【0037】
次に、データ量判定部112が、出力された符号化データのデータ量が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。例えば、所定値を450byteと設定した場合、図6(a)に示すようにノイズ除去前の符号化データは1664byteであるため、符号化データのデータ量が450byteより大きいと判定する(ステップS13:Yes)。データ量が450byteより大きい場合は、データ量を小さくするためノイズ除去処理(closing処理)を実行する。
【0038】
次に、Closing処理のパラメータを設定する(ステップS14)。パラタメータの値は、小さい値から設定し、段階的に大きくしてゆくのが望ましい。本実施形態ではまず、高さ:1、幅:X1,X2=3pixと設定し、ステップS11で2値化した2値画像データに対してノイズ除去処理を実行する(ステップS15)。ノイズ除去部113が、高さ:1、幅:X1=3pixのDilation処理を実行すると、図6(b)に示す2値画像データが得られる。さらに、ノイズ除去部113が、高さ:1、幅:X2=3pixのErosion処理を実行する。
【0039】
次に、符号化処理部111がClosing処理後の2値化データを符号化すると(ステップS16)、図6(c)に示すように648byteの符号化データが得られる。データ量判定部112は、図6(c)に示すようにパラメータ:X1,X2=3pixのclosing処理を実行した後の符号化データは648byteであるため、符号化データのデータ量が450byteより大きいと判定する(ステップS17:Yes)。データ量が450byteよりまだ大きいため、次に大きいパラメータ:X1,X2=4pixに変更し、再びステップS11で2値化した2値画像データに対してノイズ除去処理を実行する(ステップS19,ステップS15)。
【0040】
パラメータ:X1,X2=4pixのclosing処理後の2値化データを符号化すると(ステップS16)、図7(d)に示すように486byteの符号化データが得られる。データ量判定部112は、パラメータ:X1,X2=4pixのclosing処理を実行した後の符号化データは486byteであるため、符号化データのデータ量は450byteよりまだ大きいと判定する(ステップS17:Yes)。次に大きいパラメータ:X1,X2=5pixに変更し、ステップS11で2値化した2値画像データに対して再びノイズ除去処理を実行する(ステップS19,ステップS15)。
【0041】
ノイズ除去部113が、高さ:1、幅:X1=5pixのDilation処理を実行すると、図6(d)に示す2値画像データが得られる。さらに、ノイズ除去部113が、高さ:1、幅:X2=5pixのErosion処理を実行する。符号化処理部111がClosing処理後の2値化データを符号化すると(ステップS16)、図6(e)に示すように472byteの符号化データが得られる。データ量判定部112は、パラメータ:X1,X2=5pixのclosing処理を実行した後の符号化データは472byteであるため、符号化データのデータ量が450byteよりまだ大きいと判定する(ステップS17:Yes)。次に大きいパラメータ:X1,X2=6pixに変更し、ステップS11で2値化した2値画像データに対して再びノイズ除去処理を実行する(ステップS19,ステップS15)。
【0042】
パラメータ:X1,X2=6pixのclosing処理後の2値化データを符号化すると(ステップS16)、図7(f)に示すように438byteの符号化データが得られる。データ量判定部112は、パラメータ:X1,X2=6pixのclosing処理を実行した後の符号化データは438byteであるため、符号化データのデータ量は450byteより小さいと判定する(ステップS17:No)。この場合は、図7(f)に示すパラメータ:X1,X2=6pixのclosing処理を実行した後の符号化データを出力し(ステップS18)、画像データ記憶部114に記憶する。
【0043】
このように、本実施形態のドライバ104によれば、符号化データのデータ量が本実施形態では450byteより小さくなるまで、2値画像データにclosing処理を行ってデータ量を削減する。すなわち、符号化データのデータ量が所望の値となるまでデータ量を削減された2値画像データに基づき、圧縮処理を実行するので2値画像データをさらに小さくするとともに、確実に450byteより小さい画像データへ符号化することができる。また、本実施形態のclosing処理は、ステップS11で2値化処理を行った後の2値画像データに対して行うため、従来のように2値化処理前のグレースケール画像を常に保持しておく必要がない。このため、記憶領域を効率的に使用することができる。
【0044】
また、本実施形態のドライバ104によれば、closing処理のパラメータを段階的に変更しながら所望の符号化量を実現するので、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、パラメータの値を段階的に小さくしながら、初めの2値画像データに対してclosing処理を繰り返し実行したが、初めの2値画像データに対して重畳的に同じパラメータのclosing処理を実行してもよい。以下、変形例について説明する。
【0046】
図8は、本実施形態のclosing処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
変形例におけるノイズ除去部113は、closing処理後の2値画像データから重畳的にデータ量を削減するフィルタである。すなわち、パラメトリックではないフィルタを使用する。
【0047】
まず、小切手5の両面に印刷された画像を各イメージセンサ82a,83aが読み取り、A/D変換器90によってデジタル処理されたグレースケール画像は、ホストコンピュータ103へ送信される。グレースケール画像を受信すると、2値化処理部110が白と黒のみの2値画像データに変換し(ステップS21)、符号化処理部111が2値画像データを符号化する(ステップS22)。
【0048】
次に、データ量判定部112が、出力された符号化データのデータ量が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。データ量が所定量より大きい場合は(ステップS23:Yes)、データ量を小さくするためステップS21で2値化された2値画像データに対してノイズ除去処理を実行する(ステップS25)。
【0049】
符号化処理部111がノイズ除去後の2値画像データを符号化すると(ステップS22)、データ量判定部112が出力された符号化データのデータ量が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。データ量が所定量よりまだ大きい場合は(ステップS23:Yes)、データ量を小さくするため前回ステップS25でノイズ除去した後の2値画像データに対してノイズ除去処理を実行する(ステップS25)。
【0050】
以降、ステップS23でデータ量が所定値より小さいと判定されるまで、ステップS22,ステップS24,ステップS25を繰り返し実行する。
このように、変形例によれば、ステップS21で得られた2値画像データに対して重畳的にノイズ除去処理を実行する。つまり、前回のノイズ除去処理後の2値画像データに対してclosing処理を実行する。したがって、比較的ノイズ除去効果の低いフィルタを採用することによって、データ削減量を段階的に増やしつつ所望の符号化量を実現することができるので、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
【0051】
(ノイズ除去方法の変形例)
また、上記実施形態では、Dilation処理とErosion処理のパラメータを同じ値で処理したが、異なる値に設定することもできる。すなわち、2値画像データに対してパラメータをX1とするDilation処理を適用した後、Dilation処理後のデータに対してパラメータをX1より大きいX2とするErosion処理を適用する。さらに、2値画像データとErosion処理後のデータとの論理和をとることで、ノイズを除去することができる。
【0052】
図9は、ノイズ除去方法の変形例を説明するための図である。
図9(a)は、ノイズ除去処理を実行する前のデータであり、セキュリティ模様が2pixel以下の細い線として画像上に残っている。図9(a)の画像データに、高さ:1、幅:X1=3pixelの直線状のオペレータを使用したDilation処理を適用すると、図9(b)に示すようにセキュリティ模様がいくらか除去される。
【0053】
次に、図9(b)の画像データに、長さX2=25の直線状のオペレータを使用したErosion処理を適用すると、図9(c)に示す画像データとなる。このように文字領域におけるノイズと細線の分離は困難であるため残す。
さらに、図9(a)と図9(c)との論理和(OR演算)をとると、図9(d)に示すように背景領域のノイズが消える。これにより、ファイルサイズを半分以下にすることができる。
【0054】
上述したノイズ処理の変形例によれば、Erosion処理は、Dilation処理のパラメータX1よりも大きいパラメータX2によって実行される。したがって、Erosion処理後の画像データのうち特に文字情報が含まれる部分は全体的に黒っぽくなり、黒い文字領域が形成される。Erosion処理後の画像データと2値画像データとの論理和をとることによって、小さな突起や小さな塊のような黒ノイズを除去する一方で、文字領域に含まれるドット文字「.」等を残存させることができる。このため、銀行名、金額、磁気インク文字やサイン等の文字情報を含む小切手を読み取る小切手読取処理に効果的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態に係る小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】開閉カバーを開いて小切手搬送路を開放した状態の小切手処理装置を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示した小切手処理装置の平面図である。
【図4】小切手処理装置の動作を制御するドライバを備えたホストコンピュータの内部処理を説明するためのブロック図である。
【図5】本実施形態の画像処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】Dilation処理及びErosion処理を適用した場合の具体的な画像データの変化を示した図である。
【図7】Closing処理においてパラメータを変更した場合の具体的な各画像データを示した図である。
【図8】本実施形態のclosing処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【図9】ノイズ除去方法の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1:小切手処理装置、5:小切手、6:小切手搬送路、46,47:ヘッド駆動モータ、83:裏面側読み取りヘッド、82a:表面側イメージセンサ、83a:裏面側イメージセンサ、90:A/D変換器、92:表面側画像、93:裏面側画像メモリ、103:ホストコンピュータ、104:ドライバ、110:2値化処理部、111:符号化処理部、112:データ量判定部、113:ノイズ除去部、114:画像データ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取装置によって読み取られた画像データを処理する画像読取装置のドライバであって、
前記画像データを2値化し2値画像データを出力する2値化処理部と、
前記2値画像データを符号化し符号化データを出力する符号化処理部と、
前記符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定するデータ量判定部と、
前記データ量が前記所定量より大きい場合は、前記所定量より小さくなるまで前記2値画像データのデータ量を段階的に削減するデータ削減部と、を有することを特徴とする画像読取装置のドライバ。
【請求項2】
前記データ削減部は、パラメータを変更することによってデータの削減量を段階的に変更することを特徴とする請求項1に記載のドライバ。
【請求項3】
前記データ削減部は、データ削減後の2値画像データから重畳的にデータ量を削減することを特徴とする請求項1に記載のドライバ。
【請求項4】
記録媒体に記録された画像を読み取る画像読取装置によって読み取られた画像データの画像処理方法であって、
前記画像データを2値化し2値画像データを出力する2値化ステップと、
前記2値画像データを符号化し符号化データを出力する符号化ステップと、
前記符号化データのデータ量が所定量より大きいか否かを判定する判定ステップと、
前記データ量が前記所定量より大きい場合は、前記所定量より小さくなるまで前記2値画像データのデータ量を段階的に削減するデータ削減ステップと、を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記判定ステップにおいて前記データ量が前記所定量より大きいと判定した場合に前記データ量を削減するデータ削減部のパラメータを変更するパラメータ変更ステップを含み、
前記パラメータ変更ステップを繰り返し実行することによって、前記2値画像データのデータ削減量を段階的に変更することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
データ削減後の2値画像データに対して、前記データ削減ステップを繰り返し実行することによって、前記2値画像データのデータ削減量を段階的に変更することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記データ削減ステップは、
前記2値画像データに対してパラメータをX1とするDilation処理を適用するステップと、
前記Dilation処理後のデータに対してパラメータをX2とするErosion処理を適用するステップと、
前記2値画像データと前記Erosion処理後のデータとの論理和を演算するステップと、を含み、
前記パラメータX1は前記パラメータX2よりも小さい値であることを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−141427(P2010−141427A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313531(P2008−313531)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】