説明

画像読取装置及びこれに用いられるホルダユニット

【課題】複数種類の透過原稿に対して共通のホルダユニットで読取りを行なうことができ、使用者の使い勝手に優れた画像読取装置及びこれに用いるホルダユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】ホルダユニットに保持されている透過原稿を照明して読取る画像読取装置であって、上記ホルダユニットは、複数種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有し、上記複数の保持部に対して、透過原稿を押さえる部材をそれぞれ異なる方向へ開閉する機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿台ガラス上の透過原稿を読取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿台ガラス上に置かれている透過原稿を読取る機能を有する画像読取装置(フラットベッド型スキャナ)において、原稿台ガラス上に写真フィルム等の透過原稿を保持する場合、使用する透過原稿の種類に応じて、専用のホルダを用いる(特許文献1参照)。
【0003】
また、1コマずつ四角いマウントに保持されている透過原稿に関しては、原稿ガラス上に直接載置する。または、マウントの外形サイズとほぼ同じ穴が設けられている専用フィルムホルダに、マウントに保持されている透過原稿を嵌め込んで、画像を読取る。また、異なる透過原稿を、1枚のフィルムホルダで保持する場合、異なるフィルムホルダを組み合わせた装置が知られている(特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−337384号公報
【特許文献2】特開2003−005304号公報
【特許文献3】特開2000−358132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来例には、次のような解決すべき課題がある。
【0005】
読取る透過原稿に応じて、異なるフィルムホルダを用いる場合、各透過原稿専用のフィルムホルダを必要とし、使用者は、透過原稿の種類を変える度に、フィルムホルダを頻繁に交換する必要がある。また、フィルムホルダの非使用時に、それらの収納性が問題である。
【0006】
また、マウントに保持された透過原稿に関しては、原稿ガラス上に直接載置する場合、透過原稿をそのまま原稿台に載せるので、透過原稿が原稿ガラス上で位置決めされない。したがって、異なる透過原稿を読取るためには、読取りたい画像の範囲指定は、透過原稿の種類に応じて変更する必要がある。
【0007】
また、異なる透過原稿を1枚のフィルムホルダで保持する場合、全ての異なる透過原稿を保持する必要があるので、フィルムホルダのサイズが大きくなる。さらに、透過原稿用の光源が持つ有効範囲も限られているので、透過原稿の種類を変える度に、原稿台ガラス上でフィルムガイドを設置し直す必要がある。長尺状透過原稿は、カールや反りを持っていることが多く、この対策として異なる透過原稿を1枚のフィルムホルダで保持する場合でも、別部材を組み合わせ、透過原稿を押さえる必要があり、作業が煩雑である。
【0008】
本発明は、たとえば長尺状透過原稿、マウントに保持された透過原稿等、複数種類の透過原稿に対して共通のホルダユニットで読取りを行なうことができ、使用者の使い勝手に優れた画像読取装置及びこれに用いるホルダユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ホルダユニットに保持されている透過原稿を照明して読取る画像読取装置であって、上記ホルダユニットは、複数種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有し、上記複数の保持部に対して、透過原稿を押さえる部材をそれぞれ異なる方向へ開閉する機構を有する画像読取装置である。
【0010】
また、本発明は、透過原稿を照明して読取る画像読取装置に用いられ、透過原稿を保持するホルダユニットであって、上記ホルダユニットは、複数種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有し、上記複数の保持部に対して、透過原稿を押さえる部材をそれぞれ異なる方向へ開閉する機構を有するホルダユニットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、たとえば長尺状透過原稿、マウントに保持された透過原稿等、複数種類の透過原稿に対して共有のホルダユニットで読取りを行なうことができ、使用者の使い勝手に優れた画像読取装置及びこれに用いるホルダユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明を実施するための最良の形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0013】
図5は、透過原稿を読取可能な画像読取装置R1を示す断面図である。
【0014】
画像読取装置R1は、大きくは画像読取ユニット41と、透過原稿照明装置43とを有する。
【0015】
画像読取ユニット41は、反射原稿用光源40と、ミラー49と、レンズ50と、CCD等の撮像素子45とを有する。装置本体42は、画像読取ユニット41を内部に備えている。
【0016】
透過原稿照明装置43は、装置本体42に対してヒンジ機構等の回動自在に設けられている。また、透過原稿照明装置43は、光拡散作用を有する半透明の下カバー44と、透過原稿用光源46と、透過原稿用光源46を移動させるための駆動ユニット51とを有する。
【0017】
透過原稿を読取る場合、後述する専用のホルダユニットに入れた1種類または複数種類の透過原稿47を原稿台ガラス48上に載置する。そして、透過原稿用光源46を点灯させて照明しながら、透過原稿用光源46と画像読取ユニット41とを、図5中、矢印X方向に同期させて移動走査させる。
【0018】
透過原稿用光源46からの照明光は、光拡散作用を有する半透明の下カバー44と透過原稿47とを介して、画像読取ユニット41内の撮像素子45に伝わる。撮像素子45は、画像を電気的な画像信号に変換し、この画像信号は、AD変換器、画像処理用のASICやインタフェース回路等を有する信号処理部に送られる。信号処理部では、AD変換、シェーディング補正、マスキング等の必要な処理を施し、デジタル画像データとして、所定のインタフェースを介して、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器へ送る。なお、この読取動作中は、画像読取ユニット41に設けられている反射原稿用光源40が消灯する。
【0019】
図1は、画像読取装置R1に用いられるホルダユニットFU1の概略を示す斜視図である。
【0020】
ホルダユニットFU1は、カバーホルダ1と、サブホルダ2と、メインホルダ3とを有する。カバーホルダ1とサブホルダ2とによって、現像済みのロールフィルム等の長尺状透過原稿20を固定し保持する。また、メインホルダ3によって、リバーサルフィルムのスライド等のマウントに保持された透過原稿を保持する。すなわち、ホルダユニットFU1は、複数種類の透過原稿を保持する。
【0021】
カバーホルダ1は、サブホルダ2と、カバーホルダ1から突き出した凸部A1(B−B断面参照)とによって、短手方向に位置決めされる。カバーホルダ1は、透過原稿(長尺状透過原稿)を載置する際に、サブホルダ2が具備する回転軸A2(B−B断面参照)を中心に開閉する開閉機構を持つ。
【0022】
また、カバーホルダ1から突き出した舌部凸部A3(A−A断面参照)は、サブホルダ2のロック機構A4(A−A断面参照)によって保持されることによって、不用意に開くことを回避する。
【0023】
サブホルダ2は、サブホルダ2から突き出した凸部A5(C−C断面参照)によって、長手方向に位置決めされる。また、サブホルダ2は、透過原稿(マウントに保持された透過原稿)を載置する際に、メインホルダ3が有する回転軸A6(C−C断面参照)を中心に、カバーホルダ1とは異なる方向に開閉する開閉機構を持つ。
【0024】
また、カバーホルダ1と同様に、不用意に開くことを回避するために、ロック部材4によってメインホルダ3を固定する。部材中央に、開口部A9が設けられている。メインホルダ3は、ホルダユニットのベースとなる部材であり、メインホルダ3に、カバーホルダ1、サブホルダ2が組み合わされ、ユニットとして完成する。
【0025】
また、長手方向の両端には、舌部A7、A8が設けられ、上記原稿台の上の所定位置に設置する位置決めの役目を担う。また、シェーディングデータを取得するためのシェーディング窓5が設けられ、各透過原稿に対応できる大きさの開口部を有する。
【0026】
図2は、実施例1において、長尺状透過原稿20を設置・使用する方法を説明する図である。
【0027】
長尺状透過原稿20を設置する際、サブホルダ2が有する回転軸A2を中心に、カバーホルダ1を開くことによって、開口部A9(図1参照)と凹面A21とが表れる。開口部A9は、長手が長尺状透過原稿20のn個の画像コマA10に対応し、短手が画像コマA10の短手と一致する。凹面A21は、開口部A9の周囲に設けられ、画像コマA10が開口部A9と一致するように、長尺状透過原稿20を位置決め載置できる第1保持部の役割を担う。つまり、凹面A21は、長尺状透過原稿を保持する第1保持部の例である。
【0028】
長尺状透過原稿20を、サブホルダ2の2箇所の透過原稿長手方向基準A22に合わせた状態で、凹面A21に載置する。そして、カバーホルダ1の舌部凸部A3を、サブホルダ2のロック機構A4に嵌め込むことによって、長尺状透過原稿20を、カバーホルダ1とサブホルダ2との間に挾持し、長尺状透過原稿20のカール等を押さえることができる。すなわち、カバーホルダ1は、サブホルダ2の第1保持部に保持された透過原稿を押さえる部材としての役割を持っている。
【0029】
図3は、実施例1において、マウントに保持されている透過原稿30を設置・使用する方法を説明する図である。
【0030】
マウントに保持されている透過原稿30を設置する際、ロック部材4を外し、サブホルダ2を、メインホルダ3が有する回転軸A6によって、カバーホルダ1とは異なる方向に開閉する。このように、サブホルダ2を開閉することによって、メインホルダ3の位置決めリブA31が表れる。
【0031】
このときに、カバーホルダ1は、サブホルダ2のロック機構A4によって固定されているので、サブホルダ2と一体で開閉する。メインホルダ3には、マウントに保持されている透過原稿の画像コマA32の短手が開口部A9と一致するように、位置決めリブA31が設けられている。つまり、画像コマA32を保持するマウントA33の外形で、マウントに保持された透過原稿30を位置決め載置できるように、位置決めリブA31が設けられ、上記第2保持部の役割を担う。つまり、位置決めリブA31は、マウントに保持されている透過原稿を保持する第2保持部の例である。すなわち、サブホルダ2は、メインホルダ3の第2保持部に保持された透過原稿を押さえる部材としての役割を持っている。
【0032】
ホルダユニットFU1は、図2に示す第1保持部である凹面A21で保持された長尺状透過原稿20の画像コマA10と、図3に示す第2保持部である位置決めリブA31とによって、画像コマA32の短手中心位置を、同一箇所に設置することができる。つまり、マウントに保持されている透過原稿30の画像コマA32の短手中心位置を、同一箇所に設置することができる。また、第1保持部に保持されている長尺状透過原稿20の上記原稿台ガラスからの高さは、マウントに保持されている透過原稿30と略同じ位置にすることができる。
【0033】
つまり、ホルダユニットFU1は、互いに異なる種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有する。上記保持部は、互いに異なる透過原稿に応じて、異なる方向へ開閉する部材である。上記保持部は、長尺状透過原稿20を保持する第1保持部と、マウントに保持されている透過原稿を保持する第2保持部とを有する。
【0034】
ホルダユニットFU1は、長尺状透過原稿20を押さえるカバーホルダ1と、長尺状透過原稿20を保持するサブホルダ2と、メインホルダ3とを有する。メインホルダ3は、マウントに保持されている透過原稿を保持し、かつ透過原稿を上記原稿台の上の所定位置に設置する。サブホルダ2は、メインホルダ3に回転可能に支持されている。また、カバーホルダ1は、サブホルダ2に回転可能に支持されている。さらに、サブホルダ2は、カバーホルダ1と一体で開閉するホルダである。
【実施例2】
【0035】
図4は、本発明の実施例2であるホルダユニットFU2を示す斜視図である。
【0036】
上記実施例1は、図2、図3に示すように、カバーホルダ1の回転軸A2とサブホルダ2の回転軸A6とは直角である。これに対して、実施例2でのホルダユニットFU2は、図4に示すように、カバーホルダ1aの回転軸A51aと、サブホルダ2aの回転軸A6aとを平行に配置したことを特徴とする。
【0037】
透過原稿をセットしたホルダユニットFU2は、長手方向の両端の舌部A7、A8によって、上記原稿台の上の所定位置に設置する。
【0038】
ホルダユニットFU2は、図5に示す構成の画像読取装置において、反射原稿用光源40やミラー49、レンズ50や撮像素子45を内蔵する画像読取ユニット41を、矢印X方向に走査または、透過原稿用光源46と同期させて移動走査する。これによって、透過原稿用光源46から光拡散作用を有する半透明状の下カバー44を介して、透過原稿47に光が照明され、その透過光は、原稿台ガラス48を介して、画像読取ユニット41に導かれ、画像が読取られる。
【0039】
以上説明した各実施例によれば、共通のホルダユニットを用いることによって、長尺状透過原稿20と、マウントに保持されている透過原稿30はいずれも原稿台ガラス48上の所定の位置に載置される。このために、画像読取ユニット41から得られた画像を処理する画像読取ソフトは、読取範囲を特定しやすく、画像処理効率が向上する。
【0040】
また、長尺状透過原稿20、マウントに保持された透過原稿のいずれにおいても、専用のフィルムホルダを準備する必要がない。
【0041】
また、透過原稿の種類に応じた異なる方向への開閉機構を持つので、使用者は、直感的に使用方法を理解することができる。
【0042】
また、長尺状透過原稿20の画像コマと、マウントに保持されている透過原稿の画像コマとを、同一箇所に設置することができるので、透過原稿用の光源が持つ有効範囲内に、各透過原稿を必ず設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1である画像読取装置R1を構成するホルダユニットFU1の概略を示す斜視図である。
【図2】実施例1において、長尺状透過原稿20を設置・使用する方法を説明する図である。
【図3】実施例1において、マウントに保持されている透過原稿30を設置・使用する方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2であるホルダユニットFU2の斜視図である。
【図5】透過原稿を読取可能な画像読取装置R1を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…カバーホルダ、
2…サブホルダ、
3…メインホルダ、
4…ロック部材、
20…長尺状透過原稿、
30…マウントに保持された透過原稿。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダユニットに保持されている透過原稿を照明して読取る画像読取装置であって、
上記ホルダユニットは、複数種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有し、
上記複数の保持部に対して、透過原稿を押さえる部材をそれぞれ異なる方向へ開閉する機構を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記複数の保持部は、長尺状透過原稿を保持する第1保持部と、マウントに保持されている透過原稿を保持する第2保持部とを有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
上記ホルダユニットは、長尺状透過原稿を押さえるカバーホルダと、長尺状透過原稿を保持するサブホルダと、マウントに保持されている透過原稿を保持し、かつ透過原稿を原稿台の上の所定位置に設置するメインホルダとを有し、
上記サブホルダは、上記メインホルダに回転可能に支持され、
上記カバーホルダは、上記サブホルダに回転可能に支持されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記サブホルダは、上記カバーホルダと一体で開閉することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
透過原稿を照明して読取る画像読取装置に用いられ、透過原稿を保持するホルダユニットであって、
上記ホルダユニットは、複数種類の透過原稿を保持する複数の保持部を有し、
上記複数の保持部に対して、透過原稿を押さえる部材をそれぞれ異なる方向へ開閉する機構を有することを特徴とするホルダユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−102091(P2010−102091A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273038(P2008−273038)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】