説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】原稿を安定した速度で搬送することのできる画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿読取位置160のシート搬送方向上流側に設けられたリードローラ対32と、原稿読取位置160のシート搬送方向下流側に設けられ、リードローラ対32よりも速い速度で原稿Dを搬送するリード排紙ローラ対33との間に、原稿Dの上面に接触しながら原稿を搬送する下流プラテンローラ25を設ける。そして、この下流プラテンローラ25を回転自在に支持する回動可能な下流回動アーム43の回動軸48を下流プラテンローラ25よりも原稿搬送方向下流側とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関し、特にシートの画像を読み取る際、シートを搬送する搬送ローラの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、画像形成部と、画像読取装置とを備え、画像読取装置によって読み取った画像情報に基づいて画像形成部により、画像を形成するようにしたものがある。この画像読取装置の読み取り方法として、シートである原稿をプラテンガラス上に載置した後、圧板により原稿をプラテンガラスに密着させ、この状態で画像読取部を走査させることにより原稿画像を読み取る方法がある。
【0003】
また、画像読取装置としては、ADF(自動原稿搬送装置)を備えたものがある。そして、このような画像読取装置では、プラテンガラスの所定の画像読取位置の下方に画像読取部を固定し、この画像読取位置上を、ADFにより原稿を一定の速度で搬送することにより、原稿画像を読み取る方法(以下、流し読みという)がある。
【0004】
なお、このような流し読みの際、画像読取部をモータにより読取位置の直下に移動して停止させた後、ランプユニットから光を出射して画像読取位置を通過する原稿を走査し、その反射光を画像読取部により検出するようになっている。ここで、このような従来の画像読取装置においては、原稿をプラテンガラスに沿って搬送する際、原稿上面に接触し、原稿の上方への移動を規制しながら原稿を搬送するプラテンローラを備えたものがある(特許文献1参照)。
【0005】
図8は、従来の画像読取装置の、流し読みを行う際の状態を示す図である。図8において、111は不図示のランプユニットから光を不図示の原稿に出射し、画像読取位置Rにて原稿画像を読み取る画像読取部である。102は画像読取部111による画像読取位置Rにシートを搬送する上流リードローラ、101、104はシートの上方への移動を規制する上流側のプラテンローラ及び下流側のプラテンローラである。
【0006】
なお、上流側のプラテンローラ101は、上流リードローラ102の回転中心と同軸上で回動自在な回動アーム103の回動端に回転自在に支持されている。また、上流側のプラテンローラ101は、軸方向両端に設けられた突き当て部材107が不図示のバネ部材によってプラテンガラス108の表面に突き当てられることによってプラテンガラス108と所定の距離が保たれている。
【0007】
下流側のプラテンローラ104は、上流側のプラテンローラ101の回転中心と同軸上で回動可能な回動アーム105に回転自在に支持されている。そして、この下流側のプラテンローラ104は、軸方向両端に設けられた突き当て部109がプラテンガラス108の表面に不図示のバネ部材によって突き当てられることにより、プラテンガラス108と所定の距離が保たれている。110は上流側のプラテンローラ101及び下流側のプラテンローラ104の間に設けられ、原稿の上方への移動を規制するプラテンガイドである。
【0008】
そして、このような構成の画像読取装置では、画像を流し読みにより読み取る際、原稿は、上流リードローラ102によって搬送される。そして、上流側のプラテンローラ101、プラテンガイド110、下流側のプラテンローラ104とプラテンガラス108の間を通る時、プラテンガイド110の直下に停止している画像読取部111により、画像が読取られる。なお、原稿は画像読取部近傍を搬送されるとき、自身のコシにより、上流及び下流のプラテンローラ101,104に押し付けられており、これにより各プラテンローラ101,104の回転力が原稿へ伝達され、原稿が画像読取位置Rを通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−189069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このような従来の画像読取装置において、上流リードローラ102と下流リードローラ106の間で原稿が撓まないように、下流リードローラ106に対して上流リードローラ102の搬送速度は若干遅い搬送速度になっている。そして、この搬送速度差により、原稿後端が上流リードローラ102のニップを抜ける瞬間、それまで上流リードローラ102で挟持されてブレーキがかけられていた原稿が一気に開放される。このため、原稿の搬送速度が瞬間的に速くなり、上流リードローラ102による搬送速度より瞬間的に速くなろうとする。
【0011】
なお、原稿の後端が上流リードローラ102を通過するときに、原稿の厚さだけ離れていた上流リードローラ102のローラ対同士が互いに近づくように動くことに起因して原稿の後端が押し出されるようになる。そして、このように原稿の後端が上流リードローラ102を通過するときに、上流リードローラ102で原稿の後端が押し出されるようになることで瞬間的に原稿の後端側の搬送速度が速くなる。なお、上流リードローラ102による原稿後端の押し出しに伴う原稿の後端側の高速化は、下流リードローラ106に対して上流リードローラ102の搬送速度が若干遅い搬送速度ではない場合でも生じる。
【0012】
そして、このように原稿の搬送速度が瞬間的に速くなると、すなわち原稿の搬送速度が変化すると、読取画像にブレが発生したり、カラーの読取の場合、色ズレが発生したりすることがある。
【0013】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シート(原稿)を安定した速度で搬送することのできる画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、原稿台ガラスに沿って搬送されるシートの画像を画像読取部により読み取る画像読取装置において、前記画像読取部により画像を読み取る画像読取位置のシート搬送方向上流側に設けられた上流側搬送ローラ対と、前記読取位置のシート搬送方向下流側に設けられ、シートを搬送する下流側搬送ローラ対と、前記上流側搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対の間に設けられ、シートの上面に接触しながらシートを搬送する中間ローラと、前記中間ローラを回転自在に支持する回動可能な支持部材と、を備え、前記支持部材の回動支点を前記中間ローラよりもシート搬送方向下流側としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のように、上流側搬送ローラ対と下流側搬送ローラ対との間に設けられた中間ローラを支持部材により回転自在に支持し、この支持部材の回動支点を中間ローラよりもシート搬送方向下流側とすることによりシートを安定した速度で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成を説明する図。
【図2】上記画像読取装置の要部拡大図。
【図3】上記画像読取装置の駆動系を示す図。
【図4】上記画像読取装置に設けられた原稿搬送装置の制御ブロック図。
【図5】上記原稿搬送装置による原稿搬送時において発生する原稿の急速な速度変動を説明する図。
【図6】上記原稿搬送装置の原稿読み取り時における上流及び下流プラテンローラの動きを説明する図。
【図7】本発明の他の構成に係る画像読取装置の要部拡大図。
【図8】従来の画像読取装置の、流し読みを行う際の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置の構成を説明する図であり、図1において、1は画像読取装置、1Aは画像読取装置本体(以下、装置本体という)である。この装置本体1Aは、上面にプラテンガラス161及び原稿台ガラス3が取り付けられると共に、画像が形成されたシートである原稿の画像を読み取る画像読取部(以下、リーダ部という)150を備えている。また、画像読取装置1は、リーダ部150に原稿Dを供給する原稿搬送装置(以下、ADFという)2を備えている。
【0018】
ここで、リーダ部150は、原稿Dの画像面に光を照射するランプ152と、このランプ152によって照射された原稿Dからの反射光をレンズ157に導くミラー153,155,156、電荷結合素子(CCD)158等によって構成されている。なお、159は光学台であり、ランプ152とミラー153は、この光学台159に取り付けられている。この光学台159は、不図示のモータの駆動によって原稿台ガラス3と平行に往復移動するようになっている。
【0019】
また、リーダ部150は、ユーザによって選択された、流し読みモード(ADF原稿読取モード)と、固定読みモード(原稿台ガラス原稿読取モード)とのいずれかのモードによって原稿を読み取るようになっている。流し読みモードは、ADF2により原稿を、停止した光学台159の上方のプラテンガラス161上の原稿読取位置(画像読取位置)160を通過させて原稿の画像を読み取るモードである。
【0020】
固定読みモードは、ユーザにより原稿台ガラス3上に載置された原稿画像を、光学台159を副走査方向に移動させながら読み取るモードである。そして、固定読みモードの場合は、光学台159を往復移動することにより、原稿台ガラス3上の原稿が光学的に走査される。
【0021】
ここで、流し読みモード及び固定読みモードにおいて、原稿からの反射光は、ミラー153,155,156によってレンズ157に導かれ、レンズ157によってCCD158上に集光される。CCD158は、原稿情報を反映した反射光を光電変換し、電子的な画像信号として不図示のプリンタ部に出力する、あるいはデータとしてメモリに蓄積する。
【0022】
なお、光学台159を移動させるモータは、光学台159のホームポジション位置を検知するポジションセンサの位置を基準にして正転、逆転して、光学台159を往復移動させるようになっている。また、このモータは、ステッピングモータであり、モータには、不図示のエンコーダが接続されており、このエンコーダにより、光学台159が何パルス分移動したかを検知できるようになっている。したがって、リーダ部150は、ポジションセンサとエンコーダからのエンコーダーパルスによって、光学台159の位置を把握することができる。
【0023】
ADF2は、不図示の蝶番によって後部が装置本体1Aの上面に接続されており、蝶番を介して装置本体1Aに開閉自在に設けられている。そして、固定読みモードのときには、ユーザが、ADF2の手前を持ち上げ、表出した原稿台ガラス3に原稿を載置するようにしている。
【0024】
ここで、ADF2は、原稿Dが積載される原稿トレイ4を備えており、この原稿トレイ4には、1対の幅方向規制板19が原稿の給送方向と直交する幅方向にスライド自在に配置されている。そして、この幅方向規制板19により、原稿トレイ4に積載された原稿Dの幅方向を規制することで原稿供給時に、幅方向の位置を揃えて原稿を供給できるようにしている。
【0025】
また、原稿トレイ4の上方には、上下方向に回動自在な不図示のアームの回動端に回転自在に支持され、アームの回動に伴って昇降する原稿供給ローラ5が設けられている。なお、この原稿供給ローラ5は、通常、ホームポジションである上方(図中実線位置)に待避しており、原稿トレイ4に原稿を載置するとき、原稿の邪魔にならないようにしている。
【0026】
ここで、流し読みモードの場合、原稿供給ローラ5は、図中実線の位置から破線の位置に下降して、原稿Dの上面に当接するようになっている。そして、この原稿供給ローラ5により送り出された原稿は、分離搬送ローラ8と、分離搬送ローラ8に圧接している分離パッド6とにより構成される分離部により1枚ずつ分離される。なお、原稿供給ローラ5は、分離搬送ローラ8の回転駆動に連れて回転し、原稿をADF内に供給するようになっている。また、原稿供給ローラ5によって供給される原稿Dを、分離搬送ローラ8と協働して捌き、1枚ずつに分離する分離パッド6としては、分離搬送ローラ8より摩擦が若干小さいゴムなどの摩擦部材を使用している。
【0027】
なお、このように分離部により1枚ずつに分離された原稿は、この後、レジストローラ12とレジスト従動ローラ11とにより構成される斜行補正部に搬送される。そして、この斜行補正部において、分離搬送ローラ8によって送られてきた原稿が斜めになっているとき、原稿の向きを真っ直ぐに修正するようになっている。
【0028】
さらに、斜行補正部により斜行が補正された原稿は、原稿読取位置160の搬送方向上流側(シート搬送方向上流側)に設けられた上流側搬送ローラ対であるリードローラ対32によりプラテンガラス161に向けて搬送される。そして、プラテンガラス161を通過するとき、リーダ部150によって画像が読み取られる。なお、画像が読み取られた後の原稿は、原稿読取位置160の下流側(シート搬送方向下流側)に位置する下流側搬送ローラ対であるリード排紙ローラ対33により、原稿排出ローラ対18に搬送され、原稿排出ローラ対18は、原稿を排出トレイ10に排出する。
【0029】
なお、図1において、162は、プラテンガラス161とリード従動ローラ14との間に設けられ、プラテンガラス161から原稿をすくい上げるジャンプ台である。また、21は分離搬送ローラ8から原稿排出ローラ対18まで原稿を案内するU字状に湾曲した案内パスであり、この湾曲した案内パス21の内側に上流プラテンローラ24、下流プラテンローラ25が配設されている。20は、原稿の表裏両面を読み取る際、一面が読み取られた後の原稿を反転させて再度、案内パス21に向かわせるスイッチバックパスである。
【0030】
ここで、図2に示すように、リードローラ対32は、リードローラ22とリード従動ローラ14から構成され、リード排紙ローラ対33は、リード排出ローラ23とリード排出従動ローラ16から構成されている。そして、上流プラテンローラ24及び下流プラテンローラ25は、流し読み用のプラテンガラス161に対向した位置に、プラテンガラス161に対して、所定の隙間を設けて配置されている。なお、この隙間は、原稿の通過を許容する隙間であり、約0.15mm〜約0.6mmである。また、この隙間は上流プラテンローラ24及び上流プラテンローラ25の外周面における最下点とプラテンガラス161との距離である。
【0031】
さらに、上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25の間の、原稿読取位置の上方には表面が白色のプラテンガイド26が配設されている。ここで、このプラテンガイド26は、下流プラテンローラ25の回転軸と同軸上で回動可能な構成になっており、不図示の付勢手段によってプラテンガラス方向に押圧されている。さらに、このプラテンガイド26の回動端部は、上流プラテンローラ24の回転軸に直接、又は、軸受け等の部材を介して当接している。これにより、プラテンガイド26は、2本のプラテンローラ24,25と所定の位置で位置決めされる構成になっている。
【0032】
なお、リーダ部150が原稿を読み取るとき、厚みの薄い透けやすい原稿であっても、ローラが透けて読み取られないようプラテンガイド26は白色である。なお、このプラテンガイドは白色に限定されない。例えば、プラテンガイドが黒色であった場合は、原稿のエッジが判別しやすく、読み取った後の画像を加工する場合に、有利になる。
【0033】
ところで、本実施の形態において、原稿読取位置160とリードローラ対32の間には、上流側中間ローラである上流プラテンローラ24が設けられている。また、原稿読取位置160とリード排出ローラ対33の間には、中間ローラである上流側下流プラテンローラ25が設けられている。これにより、原稿を搬送する際、原稿の剛性・コシ等により上流プラテンローラ24直下の下流側から上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25の中間位置近傍までの領域において、原稿の浮き上がりを防ぐことができる。
【0034】
このため、本実施の形態においては、上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25の中間位置から上流プラテンローラ24直下までの間に原稿読取位置160を設定している。これにより、原稿の浮き上がりによる画像のピントボケ、カブリ等の不具合を生じずに画像を読み取ることができる。なお、ここでカブリとは、原稿が浮くことにより照明と原稿の位置関係が変わり、輝度が暗くなり原稿の色よりも黒く読取られる画像不良のことである。
【0035】
また、本実施の形態においては、上流プラテンローラ24、下流プラテンローラ25は、各々独立に回転するように構成されている。図3は各ローラ等を駆動するモータ、及びソレノイド類を有する駆動系を示す図である。図3に示すように、分離搬送ローラ8は分離モータ51により回転し、原稿供給ローラ5は、分離搬送ローラ8の回転駆動に連れて回転して原稿をADF内に供給するようになっている。
【0036】
また、原稿供給ローラ5は、分離ソレノイド57により昇降するようになっている。なお、通常、分離ソレノイド57は、原稿供給ローラ5をホームポジションである上方(図中実線の位置)に持ち上げて保持するようになっている。これにより、原稿トレイ4に原稿Dをセットするとき、原稿Dのセットの邪魔にならない位置に原稿供給ローラ5を保持することができる。さらに、分離ソレノイド57は、ADF2の原稿供給開始時に、キープ力をオフして原稿供給ローラ5を下降させて、原稿トレイ4上の最上位の原稿にその原稿供給ローラ5を圧接するようになっている。
【0037】
レジストローラ12、リードローラ22、上流プラテンローラ24、下流プラテンローラ25、リード排出ローラ23は、リードモータ53により駆動されている。なお、これらのローラ12,22〜25は、駆動ローラであり、原稿の読取速度で原稿を搬送するようになっている。原稿排出モータ50は、原稿排出ローラ対18を回転するようになっている。なお、本実施の形態において、分離モータ51、リードモータ53、原稿排出モータ50には、ステッピングモータを使用している。
【0038】
また、図3に示すように、原稿トレイ4には、原稿Dが原稿トレイ4に載置されたことを検知する透過型の光センサである原稿セット検知センサ40を設けられている。また、原稿トレイ4の下部には、幅方向規制板19の位置を検知して原稿トレイ4に載置した原稿束の幅寸法を検知する原稿幅検知センサ44(図4参照)が設けられている。分離搬送ローラ8とレジスト従動ローラ11との間には、原稿を検知する透過型の光センサであるレジストセンサ7が設けられている。なお、このレジストセンサ7は、分離給送された原稿の先端を検知して、レジストローラ対11,12への突き当て量(ループ量)を制御するタイミングを計るのに使用される。
【0039】
リード従動ローラ14の上流側には、原稿を検知する反射型光センサであるリードセンサ(位置検知センサ)13が設けられている。なお、このリードセンサ13は、原稿の先端(下流端部)を検知して、リーダ部150での画像読取開始タイミングを計る基準信号を発するようになっている。さらに、原稿排出ローラ対18の上流側には、原稿を検知する透過型光センサである原稿排出センサ17が設けられている。なお、この原稿排出センサ17は、原稿の排出タイミングを測るのに使用される。
【0040】
図4は、ADF2の制御ブロック図である。54はADF2を制御するマイクロプロセッサ(以下、CPUという)である。このCPU54は、装置本体1Aに設けられた本体側CPU9と接続されており、また不図示の電池によりバックアップされるRAM54aと、制御シーケンスソフトの格納されたROM54bが接続されている。
【0041】
このCPU54には不図示のステッピングモータドライバによって駆動される分離モータ51、リードモータ53及び原稿排出モータ50が接続されている。そして、ステッピングモータドライバには、CPU54から相励磁信号とモータ電流制御信号とが入力されるようになっている。
【0042】
また、CPU54にはドライバによって駆動される分離ソレノイド57が接続されており、この分離ソレノイド57は、CPU54の信号に基づいて動作が制御される。さらに、このCPU54にはレジストセンサ7、原稿セット検知センサ40、リードセンサ13、原稿排出センサ17、原稿幅検知センサ44等の各種センサが接続されており、これら各センサにより原稿の挙動及び可動部の挙動をモニターするようになっている。
【0043】
次に、このような構成のADF2の原稿搬送動作について説明する。原稿の読取を開始する前に、まず原稿セット検知センサ40により、原稿トレイ4上に原稿Dが載置してあるか否かを検知する。原稿Dが載置してあれば、次に原稿トレイ4上の原稿幅検知センサ44により、原稿サイズの検知を行う。また、分離ソレノイド57が、原稿供給ローラ5を下降させる。これにより、原稿供給ローラ5が最上位の原稿Dに当接して、原稿Dを分離搬送ローラ8と分離パッド6との間に送り込む。
【0044】
ここで、原稿トレイ4から供給された原稿Dが複数枚重なっている場合、分離搬送ローラ8と分離パッド6は、原稿を1枚ずつに分離してレジストローラ対11,12に搬送する。そして、レジストローラ対11,12は、原稿が斜行しているとき原稿を真っ直ぐに修正し、リードローラ22とリード従動ローラ14のニップに搬送する。
【0045】
次に、リードローラ22とリード従動ローラ14は、原稿Dを所定の原稿挟持力で挟持しながら回転する。これにより、原稿Dは、既述した図2に示すプラテンガラス161と上流プラテンローラ24との隙間、プラテンガラス161と下流プラテンローラ25との隙間を通過し、リード排出ローラ23とリード排出従動ローラ16とのニップに送り込まれる。
【0046】
なお、このとき上流プラテンローラ24及び下流プラテンローラ25はリードモータ53により駆動されている。これにより、上流プラテンローラ24、下流プラテンローラ25とプラテンガラス161との隙間を通過する原稿に対して上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25は、搬送力を加える。また、原稿がリード排出ローラ23に到達したときに、リードローラ対32、下流プラテンローラ24、上流プラテンローラ25、リード排出ローラ対33がリードモータ53の回転力によって原稿を搬送することになる。
【0047】
そして、このときリーダ部150は、原稿読取位置160に停止している光学台159で、プラテンガラス161と上流プラテンローラ24、下流プラテンローラ25との隙間を通過する原稿を走査して読み取る。次に、リーダ部150が原稿の読み込みを終了すると、原稿排出ローラ対18で原稿を排出トレイ10に排出して積載する。
【0048】
なお、本実施の形態の画像読取装置1は原稿の両面に形成されている画像を読み取る場合がある。この場合は、一方の面の画像をリーダ部150が読み終えたとき、ADF2は、原稿排出ローラ対18により原稿を排出トレイ10に排出することなく、原稿をスイッチバック搬送してスイッチバックパス20に送り込む。この後、レジスト従動ローラ11とレジストローラ12は、原稿が斜行している場合、原稿を真っ直ぐに矯正し、以後、ADF2は、既述したように原稿を搬送する。
【0049】
ところで、ADF2は、原稿搬送時において、原稿の撓みを回避するため、下流側のローラの周速度が速くなるように設定している。このため、例えば、原稿に対してリードローラ対32とリード排紙ローラ対33間で原稿に対して引っ張り力が生じており、この引っ張り力により原稿に張りが生じる。
【0050】
また、原稿読取位置160の上流及び下流で、各々独立に揺動する上流プラテンローラ24及び下流プラテンローラ25は、プラテンガラス161方向に一定の押し付け力を加えて配置されている。このため、既述した図2に示すように、原稿読取位置160近傍での原稿の湾曲部は、原稿に生じた張りによって上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25に接触することによって支持される。さらに、原稿Dの先端が、リード排紙ローラ対33に入る直前や、後端がリードローラ対32を抜けた直後も湾曲パスにある原稿の剛性によってプラテンローラ24,25への押し付け力が発生し、それぞれのプラテンローラ24,25での搬送力が発生している。
【0051】
このように、原稿読取位置160の上流及び下流に配置されていて、回転駆動される上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25は原稿を挟持することなく、ローラの摩擦力と原稿への押し付け力によって原稿を追従させることができる。また、上流及び下流プラテンローラ24,25を、間隔を空けて配設することにより、リードローラ対32又はリード排紙ローラ対33との間隔が狭まり、原稿の巻き付き角度が増加する。そして、このように原稿の巻き付き角度が増加することによって、2つのプラテンローラ24,25の原稿搬送力が大きくなる。
【0052】
ところで、既述した図2に示すように、上流プラテンローラ24は、回動可能な支持部材である上流回動アーム42の回動端に回転自在に支持されている。また、この上流プラテンローラ24は、軸方向両端に設けられた突き当て部材45が不図示のバネ部材によってプラテンガラス161の表面に突き当てられることによってプラテンガラス161と所定の距離が保たれている。
【0053】
下流プラテンローラ25は、回動可能な支持部材である下流回動アーム43の回動端に回転自在に支持されている。そして、この下流側のプラテンローラ25は、軸方向両端に設けられた突き当て部46がプラテンガラス161の表面に不図示のバネ部材によって突き当てられることにより、プラテンガラス161と所定の距離が保たれている。
【0054】
ここで、上流回動アーム42は、上流プラテンローラ24の搬送方向上流側にある回動軸41を回動中心(回動支点)として回動し、下流回動アーム43は下流プラテンローラ25の搬送方向下流側にある回動軸48を回動中心(回動支点)として回動する。つまり、本実施の形態において、上流プラテンローラ24と下流プラテンローラ25は上流回動アーム42及び下流回動アーム43により、各々独立して上下方向に回動するように構成されている。このため、プラテンローラ24,25と原稿の接触によって生じる微小な振動をプラテンローラ同士が互いに伝達しない構成となり、原稿読取位置160での原稿の搬送速度の安定化効果を高めている。
【0055】
また、上流及び下流プラテンローラ24,25は回動アーム42,43が回動することで位置が変わっても駆動が伝達されるように、自在継ぎ手等によって駆動が伝達されている。なお、上流プラテンローラ24に対し、リードモータ53の回転を、回動軸41を経由してギア、タイミングベルト等の駆動伝達手段により伝達して良い。また、下流プラテンローラ25に対し、リード排出ローラ対33から回動軸48を経由してギア、タイミングベルト等の駆動伝達手段によって伝達してもよい。
【0056】
ところで、既述したようにADF2は、原稿搬送時において、原稿の撓みを回避するため、下流側のローラの周速度が速くなるように設定している。このため、リード排出ローラ対33のニップに進入する時と原稿の後端がリードローラ対32のニップを抜ける瞬間に原稿の急速な速度変動が発生する。そして、このように急速な速度変動が発生すると、読取画像にブレが発生したり、カラーの読取の場合、色ズレが発生したりすることがある。
【0057】
次に、このような原稿の急速な速度変動について図5を用いて説明する。通常、ローラの周速は、ニップ位置でシート搬送速度と同じになり、ニップ以外の部分では、周速のシート搬送方向の速度成分であるシート搬送速度は遅くなる。また、原稿先端がリード排出ローラ対33のニップ部の進入するときの搬送速度Vは、ニップ部での周速で与えられる。即ち、リード排出ローラ対33のニップ位置を0°とした時、ニップからθ°ずれた位置の周速のシート搬送方向の速度成分vは、v=Vcosθで与えられる。
【0058】
つまり、原稿がニップ位置から少しでもずれた位置でリード排出ローラ23に当接すると、瞬間的に搬送速度が遅くなることになる。そして、このように原稿がリード排出ローラ23に当接する時、原稿は、後端側は、屈曲した搬送パスや、上流プラテンローラ24、リードローラ対32によって拘束されているが、先端は搬送パス内で自由な状態である。
【0059】
このため、下流プラテンローラ25は搬送力を十分に原稿に伝えることができない状態となっている。一方、上流プラテンローラ24は、原稿の後端側がリードローラ対32に挟持されており、原稿は屈曲した搬送パス内で拘束されているため、原稿に対し搬送力を伝えることが可能な状態になっている。
【0060】
ここで、このような状態のときの上流プラテンローラ24の動きを図6の(a)を用いて詳細に説明する。上流プラテンローラ24は、原稿Dを搬送する際、反時計回り方向(A方向)に自転して原稿Dを搬送している。つまり、原稿搬送時には上流プラテンローラ24は、原稿Dからの搬送抵抗力Faに抗して自転回転している。
【0061】
また、上流プラテンローラ24の回動軸41は、上流プラテンローラ24よりも搬送方向上流側に設けられている。従って、上流プラテンローラ24の中心24aには、搬送抵抗力Faと平行な方向の力Fbが働いており、この力Fbは、上流プラテンローラ24を、回動軸(公転軸)41に対して時計回り(B方向)に回動させる力Fcを発生させている。
【0062】
これにより、原稿がニップ位置からずれた位置でリード排出ローラ23に当接して原稿Dから受ける搬送抵抗力Faが大きくなると、上流プラテンローラ24は、強い力で原稿Dに押し付けられることになる。従って、原稿Dが、その先端がリード排出ローラ対33のニップに進入する直前に搬送抵抗が増して速度が遅くなろうとすると、より強い力で上流プラテンローラ24は原稿Dに押し付けられる。
【0063】
つまり、上流プラテンローラ24の回動軸41を搬送方向上流側に設けることにより、原稿Dがリード排出ローラ対33のニップに進入する直前に速度が遅くなろうとすると、より強い力で上流プラテンローラ24を原稿Dに押し付けることができる。これにより、原稿Dの速度が遅くなるのを防ぐことができる。
【0064】
一方、既述したようにリードローラ対32とリード排出ローラ対33の間で原稿Dが撓まないように、リード排出ローラ対33に対して、リードローラ対32の搬送速度は若干遅い搬送速度になっている。このため、原稿後端が、リードローラ対32のニップを抜ける瞬間は、それまでリードローラ対32で挟持されブレーキがかけられていた原稿Dが一気に開放される。このため、原稿の搬送速度が瞬間的に速くなり、上流プラテンローラ24による搬送速度より速くなろうとする。
【0065】
また、原稿の後端がリードローラ対32のニップを通過するときに、原稿の厚さだけ離れていたリードローラ対32のローラ対同士が互いに近づくように動くことに起因して原稿の後端が押し出されるようになる。そして、このようなリードローラ対32による原稿後端の押し出し作用によっても、原稿の後端がリードローラ対32のニップを通過するとき瞬間的に原稿の後端側の搬送速度が速くなる。
【0066】
この時、原稿は、先端側は屈曲した搬送パスや、下流プラテンローラ25、リード排出ローラ33によって拘束されているが、後端は、リードローラ32から抜けた直後であり、搬送パス内で自由な状態となっている。このため、上流プラテンローラ24は搬送力を十分に原稿Dに伝えることができない状態となっている。一方、下流プラテンローラ25は、原稿Dの先端側がリード排出ローラ33に挟持されており、原稿Dは屈曲した搬送パス内で拘束されているため、搬送力を伝えることが可能な状態になっている。
【0067】
ここで、このような状態のときの下流プラテンローラ25の動きを図6の(b)を用いて詳細に説明する。下流プラテンローラ25は、反時計回り方向(A方向)に自転して原稿Dを搬送している。つまり、原稿搬送時には下流プラテンローラ25は、原稿Dからの搬送抵抗力Fdに抗して自転回転している。
【0068】
また、下流プラテンローラ25を回転自在に支持する下流回動アーム43の回動軸48は、下流プラテンローラ25よりも搬送方向下流側に設けられている。従って、下流プラテンローラ25の中心25aには、搬送抵抗力Fdと平行な方向の力Feが働いており、この力Feは、下流プラテンローラ25を回動軸(公転軸)48に対して時計回り(B方向)に回転させる力Ffを発生させている。
【0069】
通常、下流プラテンローラ25は、原稿Dを搬送する際、既述した突き当て部46をプラテンガラス161の表面に突き当てる不図示のバネ部材により、この力Ffに勝る力Fgで原稿Dに押し付けられている。つまり、下流プラテンローラ25は「Fg−Ff」の力で原稿Dに押し付けられている。ここで、後端がリードローラ対32のニップを抜ける瞬間、リードローラ対32よりも速い搬送速度のリード排出ローラ33により搬送される原稿Dの搬送速度が速くなろうとすると、搬送抵抗力Fdが小さくなる。
【0070】
そして、このように搬送抵抗力Fdが小さくなれば、下流プラテンローラ25が原稿に押し付けられる力「Fg−Ff」が大きくなる。この結果、後端がリードローラ32のニップを抜けた直後に速度が速くなろうとする時、より強い力で下流プラテンローラ25が原稿Dに押しつけられる。
【0071】
このように、下流回動アーム43の回動軸48を搬送方向下流側に設けることにより、後端がリードローラ対32のニップを抜ける瞬間、原稿Dの搬送速度が速くなろうとすると、より強い力で上流プラテンローラ24を原稿Dに押し付けることができる。これにより、原稿Dの速度が速くなるのを防ぐことができる。なお、剛性の低い原稿の場合は、先端の速度変動が読み取り部近傍まで波及することはない。したがって、本実施の形態の構成によれば、原稿の剛性によらず安定した速度で原稿を搬送することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態においては、下流プラテンローラ25を下流回動アーム43により回転自在に支持し、この下流回動アーム43の回動軸48を下流プラテンローラ25よりもシート搬送方向下流側としている。これにより、原稿Dを安定した速度で搬送することができ、この結果、読取画像にブレが発生したり、カラーの読取の場合、色ズレが発生したりするのを防ぐことができる。
【0073】
なお、図7は、本実施の形態の他の構成に係る画像読取装置の要部拡大図である。なお、図7において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0074】
図7において、242は上流側のリードローラ22の回転中心と同軸上に設けられた回動自在な回動アームであり、上流プラテンローラ24は、この回動アーム242の回動端に回転自在に支持されている。また、243はリード排紙ローラ対33を構成する下流搬送ローラであるリード排出ローラ23の回転軸を中心に揺動する回動アームであり、下流プラテンローラ25は、この回動アーム243の回動端に回転自在に支持されている。
【0075】
そして、上流プラテンローラ24には回転するリードローラ22から、また下流プラテンローラ25には回転するリード排出ローラ23から直接、不図示のタイミングベルトによって駆動が伝達されている。
【0076】
ここで、このように構成した場合、上流及び下流プラテンローラ24,25の回動を可能とする専用の回動軸を設ける必要がなくなるので、より簡易な構成で下流プラテンローラ25を食い込み勝手の構成にして原稿搬送速度の安定化を図ることができる。なお、これまでの説明においては、画像読取装置1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、画像読取装置1により読み取られた原稿画像情報に基づいて画像形成部により画像を形成する画像形成装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…画像読取装置、1A…画像読取装置本体、2…原稿搬送装置、23…リード排出ローラ、24…上流プラテンローラ、25…下流プラテンローラ、32…リードローラ対、33…リード排紙ローラ対、41…回動軸、42…上流回動アーム、43…下流回動アーム、48…回動軸、150…画像読取部、160…原稿読取位置、161…プラテンガラス、242…回動アーム、D…原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台ガラスに沿って搬送されるシートの画像を画像読取部により読み取る画像読取装置において、
前記画像読取部により画像を読み取る画像読取位置のシート搬送方向上流側に設けられた上流側搬送ローラ対と、
前記読取位置のシート搬送方向下流側に設けられ、シートを搬送する下流側搬送ローラ対と、
前記上流側搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対の間に設けられ、シートの上面に接触しながらシートを搬送する中間ローラと、
前記中間ローラを回転自在に支持する回動可能な支持部材と、を備え、
前記支持部材の回動支点を前記中間ローラよりもシート搬送方向下流側としたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記支持部材の回動支点を、前記下流側搬送ローラ対を構成する下流搬送ローラの回転軸と同軸上に設けたことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記下流搬送ローラの駆動により前記中間ローラを駆動することを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記中間ローラを前記下流側搬送ローラ対と前記読取位置の間に設け、
前記上流側搬送ローラ対と前記読取位置の間に設けられ、シートの上面に接触しながらシートを搬送する上流側中間ローラと、
前記上流側中間ローラを回転自在に支持する回動可能な支持部材と、を備え、
前記支持部材の回動支点を前記上流側中間ローラよりもシート搬送方向上流側としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置と、前記画像読取装置により読み取られた原稿画像情報に基づいて画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239072(P2012−239072A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107383(P2011−107383)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】