説明

画像読取装置

【課題】原稿の供給及び排出の際に利用されるトレイの構造が従来よりも簡素で、薄型化を図ることも容易な画像読取装置を提供すること。
【解決手段】複合機1は、上部にスキャナユニット3を備え、スキャナユニット3は、読取対象となる原稿を搬送するADF部6を備えている。ADF部6には、開閉可能なサブトレイ11が設けられている。原稿を搬送する際には、サブトレイ11が開かれて、搬送対象となる原稿が仕切板17aの下方へ導入される。このとき、サブトレイ11の裏面11b及びメイントレイ15が供給トレイとして利用される。また、搬送された原稿は、仕切板17aの上面へと排出され、さらにサブトレイ11の裏面11bへと送り出される。このとき、サブトレイ11の裏面11b及び仕切板17aの上面が排出トレイとして利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動原稿送り装置(Automatic Document Feeder;以下ADFと略称する。)を備えた画像読取装置において、給紙トレイが給紙口を覆う位置へと回動可能に構成されるとともに、排紙トレイが排紙口を覆う位置へと回動可能に構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような画像読取装置であれば、ADFを使用しないときには、給紙トレイで給紙口を覆うことができ、また、排紙トレイで排紙口を覆うことができるので、これら給紙口や排紙口から装置本体内へ異物が侵入するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された画像読取装置の場合、給紙トレイ及び排紙トレイは、双方がそれぞれ別の回動軸を中心に回動可能な構造とされる。そのため、各回動軸を支持する軸受部もそれぞれ必要となり、それらの配設箇所を装置上で確保すると、相応に大がかりな可動機構になる、という問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載された画像読取装置の場合、利用者が給紙トレイ側を回動させると、それに連動して排紙トレイ側も回動する仕組みになっているので、このような仕組みを設けると、相応に複雑な可動機構になる、という問題もあった。
【0007】
さらに、上記特許文献1に記載された画像読取装置の場合、給紙トレイが給紙可能となる位置へ展開された際、排紙トレイは、展開された給紙トレイの下方となる位置において、上下方向へと移動する。そのため、展開された給紙トレイの下方には、排紙トレイが上下方向へ移動する際に必要となるスペースを確保せざるを得ず、その分、画像読取装置の高さ方向寸法が増大しやすいので、装置の薄型化を図ることが難しくなる一因になる、という問題もあった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、原稿の供給及び排出の際に利用されるトレイの構造が従来よりも簡素で、薄型化を図ることも容易な画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載の画像読取装置は、原稿を所定の搬送経路に沿って搬送する原稿搬送手段と、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿から画像を読み取り可能な読取手段と、前記原稿搬送手段と隣り合う位置に設けられたメイントレイと、開閉可能な構造で、閉じられた際には裏面が下方に向けられた状態で前記メイントレイの上方に配置される一方、開かれた際には前記裏面が上方に向けられた状態で前記メイントレイを挟んで前記原稿搬送手段とは反対側となる位置に配置され、その状態で前記裏面が原稿載置面として利用されるサブトレイとを備え、前記サブトレイは、開かれた際に、前記原稿搬送手段へ供給される原稿が載置される供給トレイとして利用されるとともに、前記原稿搬送手段から排出される原稿が載置される排出トレイとしても利用されることを特徴とする。
【0010】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイを開いた際には、サブトレイが、供給トレイとしても排出トレイとしても利用される状態になる。そのため、供給トレイ及び排出トレイそれぞれが独立に設けられているものに比べ、装置の構造をコンパクトにすることができる。
【0011】
また、サブトレイを閉じた際には、原稿載置面として利用されるサブトレイの裏面が下方に向けられるとともに、メイントレイの上方にサブトレイが配置される。したがって、サブトレイの裏面やメイントレイの上面に、ほこりが溜まったり異物が落下したりするのを防止ないし抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の画像読取装置は、請求項1に記載の画像読取装置において、前記メイントレイ上には、原稿の搬送方向に対し直交する方向へスライド可能で、当該スライドに伴って互いの間隔を変更可能に構成された一対の原稿ガイドが設けられ、前記原稿ガイドには、前記メイントレイの上方となる位置において前記メイントレイとの間に間隙をなす形態とされた仕切板が設けられており、前記サブトレイが開かれた際に、前記サブトレイの前記裏面及び前記メイントレイの上面は、前記供給トレイとして利用されるとともに、前記サブトレイの前記裏面及び前記仕切板の上面は、前記排出トレイとして利用されることを特徴とする。
【0013】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿搬送手段へ供給される原稿は、仕切板の下方においてメイントレイ上に載置され、原稿搬送手段から排出される原稿は、仕切板の上面に排出される。したがって、このような仕切板が設けられていない場合に比べ、原稿搬送手段へ供給される原稿と原稿搬送手段から排出される原稿との互いの接触面積を低減させることができ、ジャム等の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の画像読取装置は、請求項2に記載の画像読取装置において、前記サブトレイが開かれた際に、前記メイントレイに隣接する位置にある前記サブトレイの端部は、前記メイントレイの上面よりも上方にあり、且つ、前記仕切板の上面よりも下方にあることを特徴とする。
【0015】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿搬送手段へ供給される原稿は、サブトレイの裏面に沿って移動してから、その下方にあるメイントレイの上面へと移動する。そのため、サブトレイの裏面よりも上方にメイントレイの上面がある場合とは異なり、原稿の先端部がメイントレイに引っかかるのを防止ないし抑制することができる。
【0016】
また、原稿搬送手段から排出される原稿は、仕切板の上面に沿って移動してから、その下方にあるサブトレイの裏面へと移動する。そのため、仕切板の上面よりも上方にサブトレイの裏面がある場合とは異なり、原稿の先端部がサブトレイに引っかかるのを防止ないし抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記サブトレイは、回動軸を中心に回動可能な状態で支持されており、前記回動軸の下方となる位置で、前記メイントレイから連続する部分には、前記サブトレイが回動して前記サブトレイの端部が前記メイントレイの上面よりも下方へと移動した際に、当該サブトレイの端部を通過させる凹部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイの端部とメイントレイから連続する部分との接触を避けて、サブトレイをスムーズに回動させることができる。また、凹部がある分だけ、メイントレイの上面と回動軸を高さ方向について接近させることができるので、装置の薄型化を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記サブトレイを開く際に、前記サブトレイが所定の位置まで移動したら、それ以上の移動を規制する位置決め部が設けられており、当該位置決め部は、前記サブトレイの表面には接触しない位置で、前記サブトレイの移動を規制するとともに、当該位置決め部によって前記サブトレイの移動が規制された際に、前記サブトレイの表面と他の部材との間には間隙が形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイを開く際には、位置決め部によってサブトレイの移動が規制され、その際、サブトレイの表面と他の部材との間には間隙が形成される。したがって、サブトレイの表面を他の部材で傷つけてしまうのを防止することができる。
【0021】
請求項6に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記サブトレイが閉じられた際に前記サブトレイの周囲を囲む位置にある部分のうち、前記サブトレイが開かれた際に前記サブトレイの表面が接近することとなる部分には、開かれた状態にある前記サブトレイの表面と同方向に向かって傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイを開く際に、サブトレイの傾斜角を十分に緩傾斜とすることができるので、原稿の排出をスムーズなものとすることができる。
【0023】
請求項7に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記サブトレイの裏面には、原稿の搬送方向と平行な方向へ延びる複数のリブが形成されていることを特徴とする。
【0024】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイの裏面に載置された原稿は、複数のリブの先端で支持される状態となるので、原稿とサブトレイとの間の摩擦が低減され、原稿の供給及び排出をよりスムーズに行うことができる。
【0025】
請求項8に記載の画像読取装置は、請求項7に記載の画像読取装置において、前記複数のリブは、中央にあるリブが、その両側にあるリブよりも高く形成されていることを特徴とする。
【0026】
このように構成された画像読取装置によれば、サブトレイの裏面に載置された原稿は、搬送方向に直交する方向について中央部分が両側部分よりも上に凸となる形態に湾曲するので、搬送方向へと送出する際に原稿の座屈を抑制することができる。
【0027】
請求項9に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記サブトレイの先端には、排出される原稿の先端に当接することにより、それ以上原稿が移動するのを規制する原稿ストッパーが設けられていることを特徴とする。
【0028】
このように構成された画像読取装置によれば、排出される原稿がサブトレイの先端方向へ過剰に送り出されてしまうのを、原稿ストッパーで防止することができる。
請求項10に記載の画像読取装置は、請求項9に記載の画像読取装置において、前記原稿ストッパーは、排出される原稿の先端に当接する使用位置、及び排出される原稿の先端に当接しない不使用位置のうち、いずれかの位置へ移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿ストッパーを使用したくない場合には、原稿ストッパーを不使用位置へ移動させることができる。したがって、例えば、原稿が搬送方向に長尺な場合などは、原稿ストッパーを不使用位置へ移動させることで、原稿と原稿ストッパーとの当接を回避することができる。
【0030】
請求項11に記載の画像読取装置は、請求項10に記載の画像読取装置において、前記原稿ストッパーは、前記サブトレイからの突出量が、前記原稿ストッパーを使用位置に移動させた状態のまま前記サブトレイを閉じた場合でも、前記原稿ストッパーと前記メイントレイとが接触しない突出量とされていることを特徴とする。
【0031】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿ストッパーを使用位置に移動させた状態のままサブトレイを閉じても、原稿ストッパーがメイントレイに接触しないので、原稿ストッパー又はメイントレイの損傷を防止することができる。
【0032】
請求項12に記載の画像読取装置は、請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記一対の原稿ガイドは、当該一対の原稿ガイドが互いの間隔を最も狭くされた状態で前記サブトレイが閉じられた場合でも、前記原稿ストッパーと前記原稿ガイドとの接触が発生しない形態とされていることを特徴とする。
【0033】
このように構成された画像読取装置によれば、一対の原稿ガイドが互いの間隔を最も狭くされた状態でサブトレイが閉じられても、原稿ストッパーが原稿ガイドに接触しないので、原稿ストッパー又は原稿ガイドの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】画像読取装置を備えた複合機を示す図であり、(a)は画像読取装置のサブトレイが閉じられた状態を示す斜視図、(b)は画像読取装置のサブトレイが開かれた状態を示す斜視図。
【図2】画像読取装置の縦断面図。
【図3】図2に示したK部の拡大図。
【図4】(a)は画像読取装置の平面図、(b)は画像読取装置のA−A線断面図。
【図5】(a)はサブトレイの裏面を示す説明図、(b)はサブトレイのB−B線断面図、(c)はサブトレイのC−C線断面の一部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
図1(a)及び同図(b)に示す複合機1は、画像読取装置としての機能(スキャン機能)に加え、その他の機能(例えば、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ送受信機能など)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0036】
複合機1は、メインユニット2と、メインユニット2の上部に搭載されたスキャナユニット3を備えている。スキャナユニット3は、後端側を回動中心にして前端側が上下に変位する方向へ回動可能に構成され、これにより、メインユニット2の上部開口を閉鎖する位置又は同上部開口を開放する位置へと変位可能な構造とされている。
【0037】
また、スキャナユニット3は、フラットベッド(以下、FBと略称する。)型イメージスキャナのカバー部分にADFが組み込まれた構造とされたもので、FB本体部5と、このFB本体部5の上面側を覆うADF部6とを備えている。
【0038】
ADF部6は、後端側を回動中心にして前端側が上下に変位する方向へ回動可能に構成され、これにより、FB本体部5上面にある原稿載置面を覆う位置又は同原稿載置面を露出させる位置へと変位可能な構造とされている。
【0039】
なお、メインユニット2の前部上側には、利用者によって操作される操作パネル7が設けられている。また、操作パネル7の下方には、印刷後の被記録媒体を排出する排出口8が形成され、さらにその下方には、印刷前の被記録媒体が収納される給紙カセット9などが装着されている。
【0040】
ADF部6の上面には、図1(a)及び同図(b)に示すように、サブトレイ11が設けられている。このサブトレイ11は、図2及び図3に示すように、回動軸12を中心に回動可能で、回動軸12から遠い方の端部が最も左方へと変位する位置(図2及び図3中に実線で示す位置)へ回動すると閉じられた状態になる。
【0041】
サブトレイ11が閉じられた場合、図1(a)に示すように、サブトレイ11の表面11a側は、上方に向けられた状態となる。このとき、サブトレイ11の表面11aは、サブトレイ11の左右両側にある上部カバー13の表面13a,13bに対して面一(段差がない状態)になり、これらの表面11a,13a,13bが、過度に大きい隆起部分のない平坦な面を形成する。
【0042】
また、サブトレイ11は、回動中心から遠い方の端部が最も右方へと変位する位置(図2及び図3中に二点鎖線で示す位置)へ回動すると開かれた状態になる。この状態にすると、ADF部6の上面側においては、メイントレイ15や、メイントレイ15上に設けられた一対の原稿ガイド17が外部に露出する状態となる。
【0043】
一対の原稿ガイド17は、図4(a)及び同図(b)に実線及び二点鎖線で示すように、双方とも前後方向へスライド可能で、しかも、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドする仕組みになっている。そのため、一対の原稿ガイド17の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせることができる。
【0044】
また、原稿ガイド17には、仕切板17aが設けられている。この仕切板17aは、メイントレイ15の上方となる位置にあり、メイントレイ15との間には間隙をなす形態とされている。
【0045】
サブトレイ11が開かれた場合、図1(b)に示すように、サブトレイ11の裏面11b側は、上方に向けられた状態となり、且つ、メイントレイ15側に向かって下り勾配となる傾斜をなす状態になる。この状態において、メイントレイ15に隣接する位置にあるサブトレイ11の端部の位置P1は、図3に示すように、メイントレイ15の上面の位置P2よりも上方にあり、且つ、仕切板17aの上面の位置P3よりも下方にある。
【0046】
また、サブトレイ11の回動軸12の下方となる位置で、メイントレイ15から連続する部分(メイントレイ15の右方となる部分)には、凹部21が形成されている。この凹部21は、サブトレイ11が回動してサブトレイ11の端部がメイントレイ15の上面の位置P2よりも下方へと移動した際に、サブトレイ11の端部を通過させるために形成された領域である。
【0047】
このような凹部21を形成しておくと、サブトレイ11の端部とメイントレイ15から連続する部分との接触を避けて、サブトレイ11をスムーズに回動させることができる。また、凹部21がある分だけ、メイントレイ15の上面と回動軸12を高さ方向について接近させることができるので、ADF部6の薄型化を図ることができる。
【0048】
さらに、サブトレイ11の近傍には、サブトレイ11を開く際に、サブトレイ11が所定の位置(図2及び図3中に二点鎖線で示す位置)まで移動したら、それ以上の移動を規制する位置決め部23が設けられている。この位置決め部23は、サブトレイ11の表面には接触しない位置で、サブトレイ11上の当接片25に当接することにより、サブトレイ11の移動を規制する。
【0049】
この位置決め部23によってサブトレイ11の移動が規制された際、サブトレイ11の表面と、このサブトレイ11の表面に最接近する他の部材(本実施形態では上部カバー13)との間には間隙が形成される状態となる。
【0050】
より詳しくは、本実施形態において、サブトレイ11が閉じられた際にサブトレイ11の周囲を囲む位置には、上部カバー13が設けられている。そして、この上部カバー13のうち、サブトレイ11が開かれた際にサブトレイ11の表面11aが接近することとなる部分には、傾斜面13cが形成されている。
【0051】
この傾斜面13cは、開かれた状態にあるサブトレイ11の表面11aと同方向に向かって傾斜しており、且つ、開かれた状態にあるサブトレイ11の表面11aとの間には間隙が形成されるように設計されている。また、サブトレイ11の表面11aと傾斜面13cは、両者の接触が発生しない範囲内で両者間の間隙が十分に狭くされ、これにより、サブトレイ11を閉じたときに、ADF部6の上面に過大な凹みができないようにされている。
【0052】
このような位置決め部23を設ければ、サブトレイ11の表面11aと他の部材との間には間隙が形成されるので、サブトレイ11の表面11aを他の部材で傷つけてしまうのを防止することができる。また、傾斜面13cを設けておけば、サブトレイ11を開く際に、サブトレイ11の傾斜角を十分に緩傾斜とすることができるので、原稿の排出をスムーズなものとすることができる。
【0053】
また、サブトレイ11の裏面11bには、図5(a)及び同図(b)に示すように、原稿の搬送方向と平行な方向へ延びる複数のリブ27a〜27gが形成されている。複数のリブ27a〜27gは、中央にあるリブ27dが、その両側にあるリブ27a〜27c,27e〜27gよりも、突出方向寸法が高く形成されている。
【0054】
さらに、FB本体部5の上面側には、図2に示すように、原稿載置面を形成するガラス板31が配設されている。また、ガラス板31の下方には、イメージセンサ33が設けられている。本実施形態において、イメージセンサ33としては、密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)が利用されている。このイメージセンサ33は、ガラス板31の直下となる位置を、左右方向へ往復移動可能に構成されている。
【0055】
また、ADF部6には、図2中に破線で示す搬送経路に沿って、読取対象となる原稿を搬送する原稿搬送機構35が設けられている。この原稿搬送機構35は、動力源からの動力で駆動される複数の駆動ローラ、及び駆動ローラとの間に原稿を挟み込みつつ従動するピンチローラなどによって構成される。ガラス板31の上方には原稿ホルダ37が配設され、上述の搬送経路を搬送される原稿は、原稿ホルダ37によってガラス板31側に押し当てられる。
【0056】
以上のように構成されたスキャナユニット3がADFスキャナとして利用される場合、サブトレイ11は開かれた状態とされる。そして、サブトレイ11は、ADF部6での読取対象となる原稿が載置される供給トレイとして利用されるとともに、読取完了後に排出される原稿が載置される排出トレイとしても利用される。
【0057】
より詳しく説明すると、読取対象となる原稿をADF部6にセットする際には、サブトレイ11が開かれて、原稿が仕切板17aの下方に導入される。これにより、メイントレイ15の上面及びサブトレイ11の裏面11bが供給トレイとして利用される状態になる。
【0058】
この状態において、複数のリブ27a〜27gは、それぞれの先端で原稿に当接しているので、原稿との接触面積は十分に小さくなり、サブトレイ11と原稿との間に作用する摩擦抵抗が低減される。また、中央にあるリブ27dの突出量が大きく、これにより、原稿は僅かに湾曲して上に凸な円筒曲面をなす形態になるので、原稿を搬送方向へと搬送したときに原稿が座屈するのを抑制することができる。
【0059】
また、このとき、読取対象となる原稿の両側端に当接する位置へ原稿ガイド17をスライドさせれば、原稿ガイド17を基準にして原稿を整列させることができ、また、原稿が搬送方向に対して傾くのを抑制することができる。
【0060】
このように原稿をセットした後は、ADFスキャンを指示する操作(例えば、操作パネル7でのパネル操作やPCからの遠隔操作など)を行うと、スキャナユニット3では、画像の読み取りを開始する。
【0061】
より詳しくは、ADFスキャンを指示する操作が行われると、イメージセンサ33は、原稿ホルダ37の直下となる位置へ移動し、その位置で静止する。また、原稿搬送機構35を構成するローラ群が駆動され、ADF部6にセットされた原稿は、図2に破線で示した搬送経路に沿って搬送される。
【0062】
そして、このように搬送される原稿がガラス板31と原稿ホルダ37との間を通過する際、イメージセンサ33は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、副走査方向へ移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取る。
【0063】
読取を完了した原稿は、原稿搬送機構35から仕切板17aの上面側へと排出され、その原稿はサブトレイ11上へと送り出される。すなわち、このとき、仕切板17aの上面及びサブトレイ11上面が、排出トレイとして利用される状態になる。
【0064】
搬送対象となる原稿が複数枚ある場合、排出される原稿は、未搬送の原稿の上に一部が重なる状態で排出されることになるが、排出される原稿の末端側は仕切板17aの上面に留まるので、排出される原稿が未搬送の原稿として再び搬送されてしまうことはない。
【0065】
ところで、サブトレイ11の先端には、原稿ストッパー41が設けられている。この原稿ストッパー41は、原稿搬送機構35から排出される原稿の先端に当接することにより、それ以上原稿が移動するのを規制する部材である。
【0066】
このような原稿ストッパー41を利用すれば、後から排出される原稿からの力で、先に排出された原稿が押されたとしても、先に排出された原稿の先端に原稿ストッパー41が当接することで、先に排出された原稿がそれ以上押し出されないようにすることができる。
【0067】
また、この原稿ストッパー41は、排出される原稿の先端に当接する使用位置(図5(a)及び同図(c)に二点鎖線で示す位置)、及び排出される原稿の先端に当接しない不使用位置(図5(a)及び同図(c)に実線で示す位置)のうち、いずれかの位置へ択一的に移動可能な構造とされている。
【0068】
そのため、原稿ストッパー41を使用したくない場合には、原稿ストッパー41を不使用位置へ移動させることができる。原稿ストッパー41を使用したくない場合としては、例えば、原稿が搬送方向に長尺な場合などを挙げることができ、この場合、原稿ストッパー41を不使用位置へ移動させることで、長尺な原稿が原稿ストッパー41に当接して皺が生じてしまう、といったトラブルを回避することができる。
【0069】
また、原稿ストッパー41は、サブトレイ11からの突出量が、図4(b)に示したとおり、原稿ストッパー41を使用位置に移動させた状態のままサブトレイ11を閉じた場合でも、原稿ストッパー41とメイントレイ15とが接触しない突出量とされている。
【0070】
そのため、仮に原稿ストッパー41を使用位置に移動させた状態のままサブトレイ11を閉じたとしても、原稿ストッパー41がメイントレイ15に接触することはないので、原稿ストッパー41又はメイントレイ15の損傷を防止することができる。
【0071】
さらに、一対の原稿ガイド17については、これら一対の原稿ガイド17が互いの間隔を最も狭くされた状態(図4(a)及び同図(b)に二点鎖線で示した状態)でサブトレイ11が閉じられた場合でも、原稿ストッパー41と原稿ガイド17との接触が発生しない形態とされている。したがって、このような構造によっても、原稿ストッパー41の損傷が防止されることになり、原稿ガイド17の損傷も防止することができる。
【0072】
なお、以上、スキャナユニット3がADFスキャナとして利用される場合について詳述したが、このスキャナユニット3は、FBスキャナとしても利用することができる。スキャナユニット3がFBスキャナとしてされる場合には、まず、ADF部6が開かれて原稿がガラス板31上に載置される。
【0073】
ADF部6は、FB本体部5に対して回動可能な他、FB本体部5に対して上下方向へ変位可能な構造にもなっている。そのため、ADF部6を上方へと持ち上げれば、比較的厚みのある原稿(例えば書籍等)であっても、FB本体部5とADF部6との間に原稿を挟み込むことができる。
【0074】
そして、原稿をセットしたら、FBスキャンを指示する操作(例えば、操作パネル7での操作やPCからの遠隔操作など)を行うと画像の読み取りを開始する。画像の読み取りを開始した場合、イメージセンサ33は、複合機1の前後方向を主走査方向、左右方向を副走査方向として、ガラス板31の下方を副走査方向へ移動しながら、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることになる。
【0075】
以上説明したように、上記複合機1によれば、サブトレイ11を開いた際には、サブトレイ11が、供給トレイとしても排出トレイとしても利用される状態になる。そのため、供給トレイ及び排出トレイそれぞれが独立に設けられているものに比べ、装置の構造をコンパクトにすることができる。
【0076】
また、サブトレイ11を閉じた際には、原稿載置面として利用されるサブトレイ11の裏面11bが下方に向けられるとともに、メイントレイ15の上方にサブトレイ11が配置される。したがって、サブトレイ11の裏面11bやメイントレイ15の上面に、ほこりが溜まったり異物が落下したりするのを防止ないし抑制することができる。
【0077】
さらに、搬送対象となる原稿は、仕切板17aの下方においてメイントレイ15上に載置され、排出される原稿は、仕切板17aの上面に排出される。したがって、このような仕切板17aが設けられていない場合に比べ、搬送前の原稿と搬送済みの原稿との互いの接触面積を低減させることができ、ジャム等の発生を抑制することができる。
【0078】
また、上記複合機1において、サブトレイ11を開いた際には、サブトレイ11の端部の位置P1は、メイントレイ15の上面の位置P2よりも上方にあり、且つ、仕切板17aの上面の位置P3よりも下方にある(図3参照)。そのため、搬送される原稿は、サブトレイ11の裏面11bに沿って移動してから、その下方にあるメイントレイ15の上面へと移動する。また、排出される原稿は、仕切板17aの上面に沿って移動してから、その下方にあるサブトレイ11の裏面11bへと移動する。
【0079】
したがって、サブトレイ11の裏面11bよりも上方にメイントレイ15の上面がある場合や、仕切板17aの上面よりも上方にサブトレイ11の裏面11bがある場合とは異なり、原稿の先端部がメイントレイ15やサブトレイ11に引っかかるのを防止ないし抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態においては、原稿の搬送経路のうち、原稿をUターンさせる経路よりも上流側の部分が下側、原稿をUターンさせる経路よりも下流側の部分が上側に配置されていた、原稿の搬送方向が逆向きになっていても、本発明の構成を採用することができる。
【0081】
また、上記実施形態においては、スキャナユニット3が、複合機1に組み込まれる事例を示したが、単機能のイメージスキャナ装置として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1・・・複合機、2・・・メインユニット、3・・・スキャナユニット、5・・・FB本体部、6・・・ADF部、7・・・操作パネル、8・・・排出口、9・・・給紙カセット、11・・・サブトレイ、11a…サブトレイの表面、11b…サブトレイの裏面、12・・・回動軸、13・・・上部カバー、13a,13b…上部カバーの表面、13c・・・上部カバーの傾斜面、15・・・メイントレイ、17・・・原稿ガイド、17a・・・仕切板、21・・・凹部、23・・・位置決め部、25・・・当接片、27a〜27g・・・リブ、31・・・ガラス板、33・・・イメージセンサ、35・・・原稿搬送機構、37・・・原稿ホルダ、41・・・原稿ストッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を所定の搬送経路に沿って搬送する原稿搬送手段と、
前記原稿搬送手段によって搬送される原稿から画像を読み取り可能な読取手段と、
前記原稿搬送手段と隣り合う位置に設けられたメイントレイと、
開閉可能な構造で、閉じられた際には裏面が下方に向けられた状態で前記メイントレイの上方に配置される一方、開かれた際には前記裏面が上方に向けられた状態で前記メイントレイを挟んで前記原稿搬送手段とは反対側となる位置に配置され、その状態で前記裏面が原稿載置面として利用されるサブトレイと
を備え、
前記サブトレイは、開かれた際に、前記原稿搬送手段へ供給される原稿が載置される供給トレイとして利用されるとともに、前記原稿搬送手段から排出される原稿が載置される排出トレイとしても利用される
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記メイントレイ上には、原稿の搬送方向に対し直交する方向へスライド可能で、当該スライドに伴って互いの間隔を変更可能に構成された一対の原稿ガイドが設けられ、
前記原稿ガイドには、前記メイントレイの上方となる位置において前記メイントレイとの間に間隙をなす形態とされた仕切板が設けられており、
前記サブトレイが開かれた際に、前記サブトレイの前記裏面及び前記メイントレイの上面は、前記供給トレイとして利用されるとともに、前記サブトレイの前記裏面及び前記仕切板の上面は、前記排出トレイとして利用される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記サブトレイが開かれた際に、前記メイントレイに隣接する位置にある前記サブトレイの端部は、前記メイントレイの上面よりも上方にあり、且つ、前記仕切板の上面よりも下方にある
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記サブトレイは、回動軸を中心に回動可能な状態で支持されており、
前記回動軸の下方となる位置で、前記メイントレイから連続する部分には、前記サブトレイが回動して前記サブトレイの端部が前記メイントレイの上面よりも下方へと移動した際に、当該サブトレイの端部を通過させる凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記サブトレイを開く際に、前記サブトレイが所定の位置まで移動したら、それ以上の移動を規制する位置決め部が設けられており、
当該位置決め部は、前記サブトレイの表面には接触しない位置で、前記サブトレイの移動を規制するとともに、当該位置決め部によって前記サブトレイの移動が規制された際に、前記サブトレイの表面と他の部材との間には間隙が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記サブトレイが閉じられた際に前記サブトレイの周囲を囲む位置にある部分のうち、前記サブトレイが開かれた際に前記サブトレイの表面が接近することとなる部分には、開かれた状態にある前記サブトレイの表面と同方向に向かって傾斜する傾斜面が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記サブトレイの裏面には、原稿の搬送方向と平行な方向へ延びる複数のリブが形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記複数のリブは、中央にあるリブが、その両側にあるリブよりも高く形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記サブトレイの先端には、排出される原稿の先端に当接することにより、それ以上原稿が移動するのを規制する原稿ストッパーが設けられている
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記原稿ストッパーは、排出される原稿の先端に当接する使用位置、及び排出される原稿の先端に当接しない不使用位置のうち、いずれかの位置へ移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記原稿ストッパーは、前記サブトレイからの突出量が、前記原稿ストッパーを使用位置に移動させた状態のまま前記サブトレイを閉じた場合でも、前記原稿ストッパーと前記メイントレイとが接触しない突出量とされている
ことを特徴とする請求項10に記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記一対の原稿ガイドは、当該一対の原稿ガイドが互いの間隔を最も狭くされた状態で前記サブトレイが閉じられた場合でも、前記原稿ストッパーと前記原稿ガイドとの接触が発生しない形態とされている
ことを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126530(P2012−126530A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280384(P2010−280384)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】