説明

画像読取装置

【課題】結露除去に最低限必要な光源のみを点灯させることで、電力の無駄な消費を防止することが可能な画像読取装置を提供すること。
【解決手段】
制御部50は、電源投入直後の内部温度Tが露点温度T以下の場合にLED31を全点灯する(S7)。その後、各位置Pの受光量を示す受光データ40Aが取得され、時間Twの経過後に再び受光データ40Bが取得される(S8〜S10)。そして、これら受光データの差ΔD(P)が算出された後に、差ΔD(P)が閾値以下であるか否かが判定され(S11、S12)、閾値以下の場合は、位置Pに対応するLED31が消灯される(S13)。これらの処理は、全てのLED31が消灯されるまで繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に沿って配列された複数の光源から原稿へ光を照射させ、その反射光から原稿画像を読み取る画像読取装置に関し、特に、前記光源等の光学部材の表面に生じた結露を除去する機能を備えた画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿の画像情報を読み取るスキャナー等の画像読取装置が知られている。一般に画像読取装置はLED等の光源を有しており、その光源から原稿へ向けて光が照射され、そして、その原稿から反射された反射光をCCDやCIS等の撮像素子で読み取る。この種の画像読取装置の一例として、結露除去機能を備えた画像読取装置が特許文献1に開示されている。この画像読取装置では、前日の最終のシェーディングデータと本日の最初のシェーディングデータとの差が所定値以上であるか否かを判定し、前記差が前記所定値以上である場合にのみ、光学系に結露が発生していると判断して、読み取り用の光源を点灯して光源周辺を加熱させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−127304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された従来の画像読取装置では、光源が複数の光源で構成されている場合でも、全ての光源が点灯される。しかしながら、結露を生じていない部分に対応する光源の点灯は結露発生部の結露除去にほとんど寄与しておらず、却って、無駄な電力消費を招くという問題がある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、結露除去に最低限必要な光源のみを点灯させることで、電力の無駄な消費を防止することが可能な画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光学部材と、受光手段と、判定手段と、制御手段とを備えた画像読取装置として構成されている。前記光学部材は一方向に沿って配置された複数の光源を有する。前記受光手段は、前記複数の光源全てを点灯させた状態で前記一方向に亘る光を受光する。前記判定手段は、前記受光手段によって受光された前記一方向に亘る光の受光データと予め定められた基準値とに基づいて、前記光学部材における前記一方向の結露発生箇所を判定する。前記制御手段は、前記判定手段により判定された結露発生箇所に対応する前記光源を点灯させ、前記結露発生箇所以外に対応する前記光源の光を抑制又は消灯する。
【0007】
画像読取装置には、原稿画像へ向けて光を照射させる複数の光源が備えられており、その光源は、通常、シェーディング補正データを取得するとき或いは原稿画像を読み取るときに点灯され、シェーディング補正データの取得及び原稿画像の読取が終了すると消灯される。本発明の画像読取装置では、例えば結露が生じ易い時間帯に電源が投入されると、前記光源が全て点灯された状態で前記受光手段によって一方向の光が受光される。前記受光手段による受光後は、前記光源が消灯される。そして、前記受光手段によって受光された受光データと前記基準値とに基づいて、前記判定手段が前記光学部材における前記一方向の結露発生箇所を判定し、前記制御手段が前記結露発生箇所に対応する光源を点灯させる。前記結露発生箇所に対応する光源が点灯されることで、その光源が発生する熱によって前記結露発生箇所周辺の温度が上昇し、当該結露発生箇所の結露が除去される。これにより、結露が発生していない箇所に対する不要な熱供給を防止することにより、無駄な電力消費を防止することができる。
【0008】
前記基準値が、前記受光手段によって受光された第1受光データである場合、前記判定手段は、以下のようにして判定処理を行う。つまり、前記判定手段は、前記第1受光データの受光後に前記複数の光源全てを一定期間点灯させ、その後に前記受光手段によって再び第2受光データを受光し、そして、この第2受光データと前記第1受光データとの差を前記一方向に区分けされた区画ごとに算出し、前記差が予め定められた閾値以上となる区画に対応する箇所を前記結露発生箇所と判定する。
【0009】
これにより、前記判定手段によって判定された結露発生箇所に対応する光源だけが点灯され、前記一定期間の点灯によって結露が解消された箇所に対応する光源は光の輝度を抑制したり、或いは消灯したりすることによって、余計な電力の消費を抑制することができる。
【0010】
前記判定手段は、前記受光手段によって受光された前記一方向に亘る受光データのうち前記一方向に区分けされた各区画において受光量が前記基準値未満となる区画に対応する箇所を前記結露発生箇所と判定することが好ましい。
これにより、前記基準値を基準にして、結露発生箇所か否かを明確に判定することができる。
【0011】
本発明の画像読取装置は、予め定められた条件を満たすまで前記受光手段による受光、前記判定手段による判定、及び前記制御手段による点灯制御を繰り返すことが好ましい。
【0012】
これにより、前記受光手段による受光処理、前記判定手段による判定処理、及び前記制御手段による点灯制御が繰り返されることによって、結露が解消された箇所に対応する光源の点灯が徐々に減っていく。このため、前記各処理が繰り返される度に消費電力が低減する。
【0013】
本発明の画像読取装置は、前記判定手段によって判定された前記結露発生箇所の位置情報を履歴として蓄積記憶する記憶手段を更に備える。この場合、前記判定手段は、前記記憶手段によって記憶された前記位置情報に基づいて前記結露発生箇所を判定する。
【0014】
これにより、判定手段は、負荷の高い演算を行うことなく、受光データと基準値とに基づく過去の判定結果の履歴データから結露発生箇所を割り出すことができる。
【0015】
本発明の画像読取装置は、第1センサーと、第2センサーと、を更に備える。第1センサーは、当該画像読取装置の外部の温度及び湿度を検出する。第2センサーは、前記光学部材周辺の温度を検出する。この場合、前記判定手段は、前記第2センサーによる検出結果が前記第1センサーによる検出結果に基づいて算出された露点温度以下であることを条件に、前記結露発生箇所の判定を行う。
【0016】
そもそも結露が生じていない環境に画像読取装置がある場合は、結露発生箇所を判定する判定処理を行う必要がない。したがって、光学部材周辺の温度が露点温度以下である場合に判定処理を行わないようにすることで、画像読取装置における無駄な処理が廃除される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、結露除去に最低限必要な光源のみを点灯させることで、電力の無駄な消費を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るスキャナー10の内部構成を模式的に示す模式構成図。
【図2】スキャナー10の制御システムの構成を示すブロック図。
【図3】前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の一例を示すフローチャート。
【図4】CCD25で受光された受光データの受光量特性の一例を示すグラフである。
【図5】CCD25で受光された受光データの受光量特性の一例を示すグラフである。
【図6】前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の他の一例を示すフローチャート。
【図7】前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の一例であるスキャナーについて説明する。尚、本発明の画像読取装置は、スキャナー、複合機、コピー機等を含む。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
〈第1実施形態〉
まず、図1乃至図3を参照して本発明の第1実施形態に係るスキャナー10(本発明の画像読取装置の一例)について説明する。なお、本発明は、前記スキャナー10のみならず、複写機やプリンター、ファクシミリー、複合機などにも適用することができる。
【0021】
図1に示されるように、前記スキャナー10は、装置本体12と、自動原稿送り装置13(以下「ADF13」と称する。)と、を備えている。ADF13は、前記装置本体12の上方に配置されている。
【0022】
前記装置本体12の上面には原稿台として機能するコンタクトガラス21が設けられている。ADF13は、前記コンタクトガラス21上の原稿読取位置22を図1における左右方向35の右向きへ通過するように、原稿15を移動させるものである。具体的には、ADF13は、原稿セット部11にセットされた原稿15を原稿送りモータ(不図示)で駆動される複数の搬送ローラ対17により順次搬送して前記原稿読取位置22を通過させる。ADF13の内部には、移動する原稿15を押さえるための原稿押さえ14が設けられている。前記原稿押さえ14は、前記原稿読取位置22の上方へ原稿15が通過できる間隙を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ14は、図1において奥行き方向へ延出されている。
【0023】
前記原稿押さえ14の裏面は、全体が一様に白色にされた白色シートが貼り付けられている。前記スキャナー10は、シェーディング補正を行う際に、後述の光源ユニット19を移動させて、光を前記白色シートに照射させる。この白色シートから反射された光の受光データがシェーディング補正用のデータとして利用される。
【0024】
前記装置本体12の内部には、光源ユニット19が設けられている。前記光源ユニット19は、原稿15や前記白色シートに光を照射するための複数のLED31(本発明の光源、光学部材の一例)が実装されたアレイ基板23や後述のミラー27などを備えている。前記アレイ基板23は、図1において奥行き方向へ延出されており、その方向に沿って複数のLED31が配置されている。前記光源ユニット19は、モータ(不図示)によって前記左右方向35へ移動可能に構成されている。したがって、前記光源ユニット19が移動すると、複数の前記LED31やミラー27も同方向へ移動する。
【0025】
また、前記装置本体12の内部には、CCD25と、光学レンズ26と、ミラー27〜29と、制御部50とが設けられている。ここで、前記CCD25、前記光学レンズ26、前記ミラー27〜29、及び複数の前記LED31は、本発明の光学部材の一例である。前記光学レンズ26及び前記ミラー27〜29は、図1において奥行き方向へ延出されている。複数の前記LED31から照射され原稿15や前記白色シートで反射された反射光は、適宜配置された前記ミラー27〜29によって前記光学レンズ26に導かれる。前記光学レンズ26は、入射した光を集光して前記CCD25に入射させる。前記CCD25に光が入射すると、前記CCD25は受光した光の量(受光量)に応じたデジタル信号を生成し、この生成されたデジタル信号は原稿15の画像データとして前記制御部50に入力される。なお、この実施形態では、撮像素子として前記CCD25を用いた例について説明するが、前記CCD25による読取機構に代えて、前記CCD25よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS: Contact Image Sensor)を用いた読取機構にも本発明は適用可能である。
【0026】
この前記スキャナー10による原稿画像の読み取りは、従来の読取処理と特に変わるところはなく、以下の手順でおこなわれる。まず、ADF13により原稿15が前記原稿読取位置22を前記左右方向35の右向きへ搬送されるか、コンタクトガラス21上に載置される。その後、前者の場合は、前記原稿読取位置22に光を照射することができる位置に固定された前記光源ユニット19の複数の前記LED31から搬送中の原稿15へ向けて光が照射され、後者の場合は、光源ユニット23を前記左右方向35の右向きへ移動させつつ複数の前記LED31から原稿15へ向けて光が照射される。そして、原稿15からの反射光が前記ミラー27〜29及び前記光学レンズ26により前記CCD25に導かれ、前記CCD25にてデジタル信号が生成されて読み取られる。なお、前記CCD25によるデジタル信号の生成及び生成されたデジタル信号の処理については、従来の画像読取装置と特に異なるところはなく、また本発明と直接の関係はないので、ここでは説明を省略する。
【0027】
図2に示されるように、前記スキャナー10は、サーミスター37(本発明の第2センサーの一例)と、温湿センサー38(本発明の第1センサーの一例)とを備えている。前記サーミスター37は、前記装置本体12の内部に設けられている。前記サーミスター37は、前記装置本体12の内部の温度、とりわけ、前記LED31や前記ミラー27〜29、前記光学レンズ26などのように結露を生じ易い光学部材の周辺の温度を検出するためのものであり、例えば、前記LED31とともに前記アレイ基板23(図1参照)に搭載されている。前記温湿センサー38は、前記装置本体12の外部の温度及び湿度を検出するためのものである。前記サーミスター37及び前記温湿センサー38は、いずれも、前記制御部50に接続されており、前記サーミスター37及び前記温湿センサー38からのセンシング信号は前記制御部50に入力される。
【0028】
図2に示されるように、前記制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53及びEEPROM54などを有している。前記制御部50は、ROM52に格納された所定の制御プログラムに従った処理をCPU51で実行することにより当該前記スキャナー10を統括的に制御する。なお、前記制御部50は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0029】
ところで、寒冷地や冬季に気温が低下している環境に長時間放置された前記スキャナー10が起動されると、モータや電源部などで発生した熱によって前記装置本体12の内部の温度が上昇する。この場合、前記LED31や、前記ミラー27〜29、前記光学レンズ26などの光学部材の表面に結露が発生する場合がある。この結露は、読取画像の画質を低下させる大きな要因である。本実施形態の前記スキャナー10では、前記結露を除去する機能(結露除去機能)を有している。詳細には、後述の結露除去処理(図3のフローチャート参照)を実行するためのプログラムがROM42に格納されており、前記制御部50が当該プログラムを実行することによって、前記結露除去機能が実現される。この機能が備えられているため、前記LED31や前記ミラー27〜29、前記光学レンズ26などの光学部材に生じた結露の除去が迅速に行われる。
【0030】
以下、図3のフローチャートを参照して、前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の一例について説明する。図中のS1、S2、…は処理手順(ステップ)の番号を表している。本実施形態では、前記スキャナー10の電源が投入された場合に当該結露除去処理が実行されるものとする。なお、前記制御部50は、本発明の受光手段、判定手段、制御手段、記憶手段として動作する。
【0031】
前記スキャナー10の電源が投入されると(S1)、前記制御部50は、前記温湿センサー38を動作させて装置外部の温度及び湿度を測定する(S2)。具体的には、前記制御部50は、前記温湿センサー38から入力される温度情報及び湿度情報を含むセンシング信号に基づいて前記温度及び湿度を測定する。そして、前記制御部50は、測定された温度及び湿度から露点温度Tを算出する(S3)。露点温度Tは、温度と湿度とから周知の計算式で求められる。なお、露点温度テーブルをEEPROM44などに予め格納しておき、測定された温度及び湿度に対応する露点温度Tが前記露点温度テーブルから特定されてもよい。
【0032】
続いて、前記制御部50は、前記装置本体12の内部温度Tを測定する(S4)。具体的には、前記制御部50は、前記サーミスター37を動作させて、前記サーミスター37から入力されるセンシング信号に基づいて内部温度Tを測定する。なお、得られた露点温度T及び内部温度Tは、EEPROM44に格納される。
【0033】
次に、前記制御部50は、前記ステップS4で測定された内部温度Tが前記ステップS3で算出された露点温度T以下であるかどうかを判定する(S5)。ここで、内部温度Tが露点温度Tよりも大きいと判定された場合は、前記装置本体12の内部に結露が生じることはないため、前記制御部50は、ステップS6以降の処理を行うことなく、結露除去処理を終了する。一方、内部温度Tが露点温度T以下であると判定された場合は、前記制御部50はステップS6以降の処理を実行する。
【0034】
ステップS6では、前記制御部50は、不図示のモータを駆動させて、前記LED31からの光が前記原稿押さえ14の裏面に照射される位置に前記光源ユニット19を移動させる。その後、全ての前記LED31を点灯させる(S7)。前記LED31からの光は前記原稿押さえ14の裏面に照射され、そこから反射した反射光が前記ミラー27〜29及び前記光学レンズ26を経て前記CCD25に入射する。前記CCD25は、入射した光を受光し、その受光データに基づいて受光量に応じたデジタル信号を生成する。このとき前記CCD25で受光された受光データは、前記原稿押さえ14の裏面の白色シートの画像(白画像)を示すものである。
【0035】
図4及び図5は、前記CCD25で受光された受光データの受光量特性の一例を示すグラフである。各グラフの縦軸は、受光データの受光量を示している。また、各グラフの横軸は、前記白色シートの長手方向(図1における奥行き方向の一致する方向)の一方端から他方端に亘る長さに対応する受光データ上の位置(受光位置)を示すものであり、本実施形態では、位置P〜P(n個)に区分けされている。なお、これらn個の位置P〜Pが、本発明の区画に相当する。
【0036】
前記LED31の性能にばらつきがなく、結露がどこにも生じていない場合は、図4(A)に示されるように、前記長手方向に亘ってn個に区分けされた各位置P〜Pそれぞれの受光量が一定値(=D(P))を示す受光データ40Aが前記CCD25で受光される。一方、前記LED31や前記ミラー27〜29、前記光学レンズ26などに結露が発生している場合は、その結露発生箇所を光が通過する際に光が乱反射し、結露発生箇所を通った光だけがその他の箇所を通る光よりも受光量が低くなる。したがって、例えば、各光学部材において位置P及び位置Pに対応する箇所に結露が生じている場合は、図4(B)に示されるように、位置Pの受光量D(P)及び位置Pの受光量D(P)が他の位置の受光量よりも低い前記受光データ40Bが前記CCD25で受光されることになる。
【0037】
処理がステップS8に進むと、前記制御部50は、前記LED31が全て点灯された状態で前記CCD25に入射した光の受光データを取得する。なお、ステップS8で取得された受光データが、本発明の基準値および第1受光データに相当する。取得された受光データは、EEPROM44に格納される。このとき、図4(B)に示される前記受光データ40Bが取得されたと仮定する。前記受光データ40Bが取得されると、予め定められた一定の時間Tw(本発明の一定期間に相当)が経過したかどうかが判定される(S9)。この一定の時間Twの間、全ての前記LED31が連続点灯されている。なお、この一定の時間Twは、任意に設定される時間であり、本実施形態では例えば10分に設定されている。
【0038】
ステップS9において時間Twが経過したと判定された場合は、前記制御部50は、前記LED31が全て点灯された状態で、前記CCD25に入射した光の受光データを再び取得する(S10)。なお、ステップS10で取得された受光データが、本発明の第2受光データに相当する。このとき、図5(A)に示される受光データ40Cが取得されたと仮定する。図5(A)に示される前記受光データ40Cは、前記受光データ40Bに比べて、位置Pの受光量が大幅に増加しており、位置Pの受光量が小幅ではあるが増加している。これは、前記時間Twが経過するまでの間、全ての前記LED31が点灯されていたため、前記装置本体12の内部が前記LED31の点灯時の発熱によって暖められ、これにより結露が部分的に解消されことが要因である。なお、その他の位置は、受光量に変化がないため、もともと結露が発生していなかったと評価できる。
【0039】
次のステップS11では、前記制御部50は、前記受光データ40Cと前記受光データ40Bとの差を算出する。詳細には、位置P〜Pごとに各受光データの受光量の差が算出される。具体的には、前記受光データ40Cの位置Pに対応する受光量D(P)から前記受光データ40Bの位置Pに対応する受光量D(P)を減算した結果(差)として、ΔD(P)が算出され、前記受光データ40Cの位置Pに対応する受光量D(P)から前記受光データ40Bの位置Pに対応する受光量D(P)を減算した結果(差)として、ΔD(P)が算出される。同様にして、前記受光データ40Cの位置Pに対応する受光量D(P)から前記受光データ40Bの位置Pに対応する受光量D(P)を減算した結果(差)として、ΔD(P)が算出される。
【0040】
その後、前記制御部50は、算出されたΔD(P)が所定の閾値以下であるかどうかを判定する(S12)。この閾値としては、結露が発生しているかどうかを決定するための数値が設定される。かかる閾値は、例えば、結露発生状況と受光量差ΔD(P)との関係を示す統計データから求めることができる。本実施形態では、前記受光データ40Bと前記受光データ40Cとを比較して明らかなように、位置P及び位置Pを除く位置の受光量差ΔD(P)は「ΔD(P)=0」のため閾値以下である。また、位置Pの受光量差ΔD(P)は閾値以上であり、位置Pの受光量差ΔD(P)は閾値未満とする。
【0041】
ステップS12において、ΔD(P)が所定の閾値よりも大きいと判定されると(S12のNO)、次のステップS15の処理が実行される。例えば、光学部材全域に結露が生じている場合に前記LED31が時間Twだけ連続点灯されると、全ての位置Pnにおいて結露状態が改善し、受光量差ΔD(P)が閾値よりも大きくなる。この場合は、受光量差ΔD(P)が前記閾値よりも大きいと判定される。一方、ΔD(P)が前記閾値以下であると判定されると(S12のYES)、位置Pに対応する光学部材の結露状態が十分に改善されたとみなされ、前記制御部50は、位置Pに対応する前記LED31を消灯する(S13)。なお、その他の前記LED31は継続して連続点灯される。本実施形態では、上述したように、位置Pの受光量差ΔD(P)が閾値以上であり、その他の位置の受光量差ΔD(P)は閾値未満であるため、位置Pを除く位置P(n≠5)に対応する前記LED31が消灯され、位置Pに対応する前記LED31は継続して連続点灯される。なお、この実施形態では、前記LED31を消灯するか点灯するかの点灯制御について説明するが、例えば、消灯せずに輝度を抑えて点灯させたり、あるいは間欠的に点灯させるなどして、消費電力を抑制させるように点灯させてもかまわない。
【0042】
次のステップS14では、前記LED31が全部消灯されたかどうかが判定される。ここで、全ての前記LED31が消灯されたと判定されると(S14のYES)、全ての結露が除去されたとみなされ、結露除去処理が終了する。一方、ステップS14で前記LED31が全て消灯されていないと判定された場合は(S14のNO)、次のステップ15の処理が実行される。
【0043】
ステップS15では、前記制御部50は、受光データの取得カウント(=k)をインクリメントする。その後、前記制御部50は、そのカウント値が既定回数に達したかどうかを判定する(S16)。ステップ16の判定処理は、前記スキャナー10に予期せぬエラーが生じている場合にステップS9〜S16のループ処理を無限回数繰り返すことを回避するためのものである。前記既定回数は任意の数値に設定されている。ここで、前記カウント値が前記既定回数に達していると判定されると(S16のYES)、前記制御部50はエラーメッセージやエラー信号を出力し(S17)、その後、カウント値をリセットしてから結露除去処理を終了する。
【0044】
前記カウント値が前記既定回数に達していないと判定された場合は(S16のNO)、ステップS9以降の処理が繰り返される。つまり、消灯されなかった位置Pに対応する前記LED31が連続点灯された状態で時間Twが経過すると(S9のYES)、全ての前記LED31が一時的に点灯された状態で受光データが取得される(S10)。このとき、図5(B)に示される受光データ40Dが取得されたと仮定する。図5(B)に示される前記受光データ40Dは、前記受光データ40Cに比べて、位置Pの受光量が小幅ではあるが増加しており、位置Pの受光量はほとんど変化していない。前記受光データ40Dの取得後、前記制御部50は、前記受光データ40Dと直前に取得された前記受光データ40Cとの差、詳細には、連続点灯されていた前記LED31に対応する位置Pにおける受光量差ΔD(P)を算出する(S11)。その後、全ての前記LED31が消灯されるか、前記カウント値が前記既定回数に達するまで、上述したステップS12以降の処理が繰り返される。なお、全ての前記LED31が消灯すること、又は前記カウント値が前記既定回数に達することが、本発明の予め定められた条件に相当する。
【0045】
以上説明したように、最初に取得された受光量とその後に取得された受光量との差ΔD(P)が閾値以下の場合は、その位置Pに対応する光学部材の結露が除去されたとみなして、位置Pに対応する前記LED31が消灯され、差ΔD(P)が閾値より大きい場合は、その位置Pに対応する光学部材の結露が除去されていないとみなして、位置Pに対応する前記LED31が継続して連続点灯される。そのため、結露が発生していない箇所に対する不要な熱供給を防止することにより、無駄な電力消費を防止することができる。
【0046】
また、前記スキャナー10は、前記装置本体12の内部の温度Tが露点温度T以下のときは、そもそも前記装置本体12の内部に結露が生じていないので、電源投入後の結露除去処理を行わないようにすることで、前記スキャナー10における無駄な処理が排除される。
【0047】
また、上述したように、全ての前記LED31が消灯されるまで、ステップS9からS16までのループ処理が繰り返されることにより、ステップS12の条件を満足する位置Pに対応する前記LED31が順次消灯される。これにより、結露が除去された箇所に対応する前記LED31の点灯が徐々に減っていき、前記ループ処理が繰り返される度に消費電力が低減する。
【0048】
〈第2実施形態〉
以下、本発明の第2実施形態として、図6のフローチャートを参照して、前記スキャナー10において前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の他の一例について説明する。なお、上述の第1実施形態と同じ構成については同符号を付し示すことによりその詳細な説明を省略する。また、上述の第1実施形態と同じ処理についてはその詳細な説明を省略する。
【0049】
まず、前記制御部50は、上述のステップS1〜S8と同じ処理をステップS21〜28の各ステップにおいて実行する。ステップS28で受光データが取得されると、続いて、位置P〜Pごとに各受光データの受光量を抽出し、その受光量D(P)(ただし、k=1,2,3…)と予め定められた基準値とを比較し、受光量D(P)が基準値以上であるかどうかを判定する(S29)。この基準値は、受光量D(P)が前記原稿押さえ14の裏面の白画像に相当する受光量であるかどうかを判定するためのものであり、例えば、前記白画像に相当する受光量の90%値や、過去に実行されたシェーディング補正データから得られた前記白画像に関する補正値などが考えられる。
【0050】
ステップS29において、受光量D(P)が前記基準値以上であると判定されると(S29のYES)、前記基準値以上と判定された位置Pに対応する光学部材には結露が生じていないとみなされて、当該位置Pに対応する前記LED31が消灯される。受光量D(P)が前記基準値未満であると判定されると(S29のNO)、前記制御部50は、受光データの取得カウント(=k)をインクリメントし(S32)、カウント値が既定回数に達したかどうかの判定処理を行う(S33)。そして、前記カウント値が前記既定回数に達していると判定されると(S33のYES)、前記制御部50はエラー出力を行い(S35)、その後、カウント値をリセットしてから結露除去処理を終了する。一方、前記カウント値が前記既定回数に達していない場合は(S33のNO)、時間Tw経過後に(S34のYES)、ステップS28以降の処理が繰り返される。
【0051】
このように構成されているため、時間Twが経過する前に熱供給の不要な箇所に対応する前記LED31が消灯されるため、無駄な電力消費を効果的に防止することができる。
【0052】
なお、上述の第2実施形態では、結露除去処理は、前記光源ユニット19が移動された後に、全ての前記LED31が点灯される手順(S26,S27)で行われている。これに対して、例えば、内部温度T2が露点温度T1以下であると判定されると(S25のYES)、前記光源ユニット19の移動及び前記LED31の点灯が行われずに、ステップS28の受光データ取得処理、およびステップS29の判定処理が行われ、受光量D(P)が前記基準値以上と判定された場合に、その位置Pに対応する前記LED31が消灯され、位置P以外の位置に対応する前記LED31が連続点灯される手順で結露除去処理が行われてもよい。
【0053】
〈第3実施形態〉
以下、本発明の第3実施形態として、図7のフローチャートを参照して、前記スキャナー10において前記制御部50によって実行される結露除去処理の手順の他の一例について説明する。なお、上述の各実施形態と同じ構成については同符号を付し示すことによりその詳細な説明を省略する。また、上述の各実施形態と同じ処理についてはその詳細な説明を省略する。
【0054】
まず、前記制御部50は、上述のステップS21〜S27と同じ処理をステップS41〜47の各ステップにおいて実行する。ステップS47で全ての前記LED31が点灯されると、次のステップS48では、蓄積データがEEPROM54に記憶されているかどうかが判定される。この蓄積データは、過去に実行された結露除去処理において消灯された前記LED31の位置情報や、前記LED31が消灯されるまでに要した時間、LED31ごとに記録されたステップS52の判定回数などのように、結露発生箇所を特定し得る情報である。前記蓄積データは、これらの情報が履歴データとして前記制御部50によってEEPROM54に蓄積記憶されたものである。
【0055】
この蓄積データがEEPROM54に記憶されている場合は、前記制御部50は、前記蓄積データから結露発生箇所を割り出し、その結露発生箇所に対応する前記LED31だけを消灯し、他の前記LED31を継続して連続点灯させる。その後、時間Twが経過すると(S52のYES)、前記制御部50は、上述のステップS28〜S33と同じ処理をステップS51〜S56の各ステップにおいて実行する。そして、ステップS56で受光データの取得カウント(=k)が既定回数に達していると判定されると(S56のYES)、前記制御部50はエラー出力を行い(S57)、その後、カウント値をリセットしてから結露除去処理を終了する。一方、前記カウント値が前記既定回数に達していない場合は(S56のNO)、ステップS50以降の処理が繰り返される。
【0056】
なお、前記蓄積データは、例えば、季節ごとに分類されたデータベースであってもよく、また、早朝、正午、夕刻、深夜というように所定の時間帯ごとに分類されたものであってもよい。この場合、前記スキャナー10に搭載されたカレンダー機能や時計機能によって特定された時期に応じた蓄積データを読み出して、結露発生箇所を特定すれば、季節や時間帯に応じて結露発生箇所が変化する場合にも正確な結露発生箇所を特定することができる。
【0057】
このように構成されているため、蓄積データがある場合は、負荷の高い判定処理を行うことなく消灯すべき前記LED31を容易に特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、スキャナー等の画像読取装置や、スキャン機能を備えた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10:スキャナー
11:原稿セット部
12:装置本体
14:原稿押さえ
19:光源ユニット
23:アレイ基板
25:CCD
27〜29:ミラー
31:LED
37:サーミスター
38:温湿センサー
50:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って配置された複数の光源を有する光学部材と、
前記複数の光源全てを点灯させた状態で前記一方向に亘る光を受光する受光手段と、
前記受光手段によって受光された前記一方向に亘る光の受光データと予め定められた基準値とに基づいて、前記光学部材における前記一方向の結露発生箇所を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された結露発生箇所に対応する前記光源を点灯させ、前記結露発生箇所以外に対応する前記光源の光を抑制又は消灯する制御手段と、を備える画像読取装置。
【請求項2】
前記基準値は、前記受光手段によって受光された第1受光データであり、
前記判定手段は、前記第1受光データの受光後に前記複数の光源全てを一定期間点灯させた後に前記受光手段によって再び受光された第2受光データと前記第1受光データとの差を前記一方向に区分けされた区画ごとに算出し、前記差が予め定められた閾値以上となる区画に対応する箇所を前記結露発生箇所と判定するものである請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記受光手段によって受光された前記一方向に亘る受光データのうち前記一方向に区分けされた各区画において受光量が前記基準値未満となる区画に対応する箇所を前記結露発生箇所と判定する請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
予め定められた条件を満たすまで前記受光手段による受光、前記判定手段による判定、及び前記制御手段による点灯制御が繰り返される請求項2又は3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記判定手段によって判定された前記結露発生箇所の位置情報を履歴として蓄積記憶する記憶手段を更に備え、
前記判定手段は、前記記憶手段によって記憶された前記位置情報に基づいて前記結露発生箇所を判定するものである請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
当該画像読取装置の外部の温度及び湿度を検出する第1センサーと、
前記光学部材周辺の温度を検出する第2センサーと、を更に備え、
前記判定手段は、前記第2センサーによる検出結果が前記第1センサーによる検出結果に基づいて算出された露点温度以下であることを条件に、前記結露発生箇所の判定を行うものである請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12900(P2013−12900A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144207(P2011−144207)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】