説明

画像通信装置及び画像通信装置を制御するためのプログラム

【課題】 近年IP網の整備が進んだことから、IP網に接続されたファクシミリ端末が増えている。IP網上ではファクシミリ信号はみなし音声信号として処理されるが、周波数帯の損失やパケットの遅延/喪失による回線障害が発生し易い。この対策として、IP網側でファクシミリ信号を検出した場合にQoS制御を行いパケット遅延/喪失の軽減を行うIP−PBXやGWが存在するが、ファクシミリ信号が検出されない場合にはQoS制御が行われずファクシミリ通信に十分な帯域が確保されないために通信エラーになる場合がある。
【解決手段】 IP網経由でファクシミリ通信を行う場合に、発呼側が非音声端末であることを示す信号の送出を停止する条件を、従来よりも遅いタイミングにすることにより、IP網側で確実にCNG信号を検出できるようにし、QoS制御が確実にできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信に関し、画像通信装置がIP網経由で通信を行う場合の通信制御手順に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭や中小規模のオフィスにおいてはADSL(Asymmetric Digital Subscriber Lineの略)やFTTH(Fiber To The Homeの略)を利用したインターネット接続サービスが普及している。これに伴い、ネットワークの構成は、従来の専用線のネットワークからVPN(Virtual Private Network:インターネットに専用線を作る技術)を用いたIPネットワークへと変化してきている。
【0003】
また、これらのIPネットワークを利用したIP電話もまた広く普及してきている。IP電話は、音声をIPパケットとして送る技術(VoIP:Voice over Internet Protocol)を利用した通話手段である。これによって、高価な交換機といった設備を使用しなくても、安価なIPネットワーク/ルータ等で音声通話が行える。IP電話によって、遠距離通話が多いユーザは通信費用を大幅に抑制することができる。
【0004】
これらIPネットワーク/IP電話の整備・普及を背景として、企業はもとより家庭でもIPネットワークに接続されたファクシミリ端末が増加し、またIPネットワークを経由したファクシミリ通信が増えてきている(図1)。
【0005】
従来の公衆電話網のみを経由するファクシミリ通信(図1の通信経路(1))から、IPネットワーク経由のファクシミリ通信が増えてきている。IPネットワーク経由のファクシミリ通信には、以下のような形態がある。まず、VoIPルータでISP(Internet Service Provider)と接続しインターネットを経由するファクシミリ通信(図1の通信経路(2))である。次に、VoIPルータで企業の専用線やVPNなどIPネットワークと接続しVoIPゲートウェイを経由して公衆電話網と接続するファクシミリ通信(図1の通信経路(3))である。さらに、IPネットワーク内に接続されたファクシミリ間での通信(図1の通信経路(4))等と様々な接続形態でのIPネットワーク経由のファクシミリ通信である。
【0006】
従来の公衆電話網でのファクシミリ通信は、必要な伝送路上の帯域が保証されているため通信障害があまり発生しなかった。しかしながら、IPネットワークの普及に伴ってIPネットワーク経由のファクシミリ通信が増えてくるとIPネットワークに起因する通信障害が徐々に増加してきている。
【0007】
IPネットワーク経由のファクシミリ通信では、ファクシミリ信号は音声信号としてパケットに分割して伝送され、受信側でパケットを組み立て音声信号に復号する。IPネットワークでは信号を伝達する時間に保証がないため、IPネットワークが混雑している場合に音声信号の帯域が十分に取れないために、周波数帯の損失やパケットの遅延/喪失による回線障害が発生する場合がある。
【0008】
これらの障害は、通信するデータ量の大きい企業内ネットワークで発生しやすく、データ通信が集中する時間帯などに集中して発生する。
【0009】
送信機側の音声信号は受信機側に到達するまでに、VoIPルータ(又は公衆回線網とIPネットワークとの間にあるVoIPゲートウェイ)で信号のアナログ−デジタル変換、符号化、パケット分割し送信される。IPネットワーク内でのルータでルーティング中継/転送され、受信機側のVoIPルータ(又はVoIPゲートウェイ)でパケット組み立て、復号化、デジタル−アナログ変換され音声信号が復元される。
【0010】
IPネットワーク内では、転送されるパケットの通信速度は一定であるわけではなく、転送されるパケットは途中のIPネットワークでのネットワーク混雑や障害により受信機側のVoIPルータへの到着タイミングに差(ゆらぎ)が発生する(図2)。このゆらぎの度合いが大きかったり、IPネットワーク内でのパケット消失(パケットロス)が発生したりすると、VoIPルータが送信機側でサンプリングした信号波形を復元できない場合が発生し、音声信号に瞬断が発生しものとして再生される。
【0011】
IPネットワークのゆらぎやパケットロスにより発生した信号の瞬断は、ファクシミリ通信に影響を及ぼす。
【0012】
ファクシミリ通信は、送信機側のモデムと受信機側のモデムで同期をとりながら手順信号/画像データ転送を繰返し行う通信方式である。このような送信機側と受信機側で同期を必要とする通信方式において、瞬断による通信信号の欠落は、モデムの同期を失わせる。手順の維持、画像データ受信の継続が困難になる。
【0013】
IPネットワーク上の通信においては、ある特定の通信のために帯域を予約したり、パケットに優先度を付けて、特定の通信に対して一定の通信速度を保証する技術としてQoS(Quality of Service)がある。QoSは音声やテレビ会議といったリアルタイム性が要求される通信において適用されている。手順信号や画像信号にリアルタイム性が必要であり、またパケットロス等による瞬断に弱いファクシミリ通信に対してもこのQoSを実施しているIPネットワーク網も多く存在する。ファクシミリ通信に対してQoSが行われれば、帯域保証や優先制御が行われるために、これまで述べてきたようなパケットの遅延や消失による通信障害が発生しなくなる。
【0014】
IP網側のVoIPルータはファクシミリ通信に対してQoSを行う場合に、受信機が最初に出すCED信号や送信機が最初に出すCNG信号の検出をもって、QoSの開始を行うのが一般的である。ここで、CED信号は、被呼局を識別するため被呼局識別信号とも呼ばれ、2100HZのトーン信号である。またCNG信号は、発呼側が非音声端末であることを示す信号で、1100HZのトーン信号である。送信機側は、受信機側のCED信号を検出するとCNG信号を停止するのが一般的である。しかし、CNG信号の停止が早すぎると、IP網側がCNG信号のみをQoSのトリガとしている場合に、CNG信号が検出できない。これによって、IP網側はQoS制御を行えず、回線に瞬断等が発生して通信はエラー終了してしまう問題が発生する。
【0015】
図3は、V.17、V.27ter、V.29変調方式のいずれかの通信モードでファクシミリ通信を開始した場合に、IP網側がCNG信号を検出できなかった為に発生する通信エラー過程を、送信/受信信号の様子から時系列的に示した図である。送信機側はCED信号を検出して、VoIPルータがファクシミリ信号を検知可能になる前にCNG信号を停止してしまっている。このため、IP網側がCNG信号のみをQoSのトリガとしている場合には、CNG信号が検出できずにQoS制御を行わない。これによって、回線に瞬断等が発生し、通信はエラー終了してしまう場合が発生しうる。
【0016】
通信処理手順の中断/再開するファクシミリ装置の従来例としては、特開平5−30273が知られている。当該特許文献では、電話機と接続されたファクシミリ装置に着信した場合に、発信側からのDTMF信号検出によって通話処理を行う。ファクシミリ装置で、手順信号送出中にDTMF信号を検知した場合には手順処理を中断し通話要求処理をファクシミリ装置に行う事が開示されている。また、通話要求に対して応答がない場合には一定時間経過後に手順処理を再開する事が開示されている。
【0017】
しかしながら、当該特許文献は、発呼側ファクシミリ装置が、IP網側のQoS機能を動作させるべく、信号の送出タイミングを制御するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平5−30273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これまで述べたようにIP網経由のファクシミリの通信を行う場合、従来の公衆回線網経由のファクシミリ通信に比べて瞬断等の回線障害が発生し易く、その為に通信エラーとなるケースが多くなってしまう。
【0020】
そこで本発明の目的は、IP網側のQoS機能を積極的に利用してファクシミリ通信の帯域を確保し、信号伝達時間の保証のないIP網においてもファクシミリ通信の品質を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題・問題点を解決するために、本発明は、
画像通信装置がIP網に接続されているかどうか判断する判断手段と、被呼側の画像通信装置からのV.21変調方式で変調された信号を検出する第1の検出手段と、回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出手段と、前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第1の検出手段によってV.21変調方式で変調された信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明は、
画像通信装置がIP網に接続されているかどうか判断する判断手段と、被呼側の画像通信装置からの被呼局を識別するためのトーン信号を検出する第2の検出手段と、回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出手段と、前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第2の検出手段によって前記被呼局を識別するためのトーン信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、IP網側でファクシミリ信号を確実に検出できるため、IP網側で適切にQoS制御ができ、ファクシミリ通信の品質を維持できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】IPネットワーク経由のファクシミリ通信の増加を示すネットワークの関係図。
【図2】IPネットワークでの音声品質劣化の発生を示す機構図。
【図3】V.27ter、V.29、V.17変調方式のいずれかの通信モードを従来処理で送信を行った場合の回線障害が発生しエラー終了する過程を示したシーケンス図。
【図4】本発明の実施例1に係わる通信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1における、V.27ter、V.29、V.17変調方式のいずれかの通信モードでの回線障害を回避する様子を示したシーケンス図。
【図6】V.34変調方式の通信モードで送信を行った場合に回線障害が発生しエラー終了する過程を示したシーケンス図。
【図7】本発明の実施例1における、V.34変調方式の通信モードでの回線障害を回避する様子を示したシーケンス図。
【図8】本発明の実施例1における、送信処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1)
以下、図4から図8に示す実施例に基づき、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図4は、本発明の一実施例による画像通信装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
図4において、
101:CPUは、システム制御部であり、装置全体を制御する。
102:ROMは、CPUの制御プログラムを格納するものである。
103:RAMは、SRAM等で構成され、画像データを蓄積する為のものである。
104:画像メモリは、DRAM等で構成され、画像データを蓄積する為のものである。
105:解像度変換処理部は、ラスタデータのミリ−インチ解像度変換等の解像度変換制御を行うものである。
106:読取・記録用符号化復号化処理部(読取・記録用コーデック)は、通信装置で扱う画像データの符号化復号化処理を行う。
107:時計部は、動作間隔等を計測し、IC等で構成される。
108:モデムは、回線からの変調された信号を受信して復調し、逆に装置からの信号を変調し、回線に送出するものである。モデム108はV.27ter、V.29、V.17、V.34等の変調方式に対応している。
109:回線i/f部は、NCU等で構成されるネットワーク制御部である。電話機の接続端子が2個の場合には、夫々の端子でオフフック/オンフック検知をするために接続端子毎にフック検知回路を有する。
110:電話機は、回線i/f部(NCU)を通して電話回線に接続されるハンドセット(ダイヤラを持たない電話機)や外付け電話機(留守番電話機等)である。
111:IPネットワークと端末をつなぐVoIPルータである。VoIPルータはIPネットワークと通信装置をアナログポートで接続する。
112:VPN等のIPネットワークである。
113:画像処理部は、スキャナによって読み込まれた画像データに補正処理を施して高精細な画像データを出力するものである。
114、115:シートスキャナ、ブックスキャナは、CSイメージセンサ、原稿搬送機構などで構成され、原稿を光学的に読み取って電気的な画像データに変換するものである。両面原稿の読み取りを行う。
116:操作部は、キーボード、表示部等で構成され、オペレータが各種入力操作を行うためのものである。ハンドセットがオフフック時に即時ダイヤル操作可能を示し。また、外付け電話機がオフフック時には、通信中であること
の表示及び通信予約受け付け可能なことを表示する。
117:ラインバッファは。画像データの転送制御を行う場合に使用するするラインバッファである。
118:プリントバッファは、印字用文字コードを格納する為の1ページ分のバッファメモリである。
119:プリンタは、受信画像やファイルデータを普通紙に記録するLBP等のプリンタであり、両面記録を行うことができる。
【0028】
図5は、本発明の実施例における、V.27ter、V.29、V.17のいずれかの通信スピードをもつモデムの変調モードの通信をする時に、回線障害を回避するためのシーケンスを示す。送信側のCNG信号停止するタイミングを、従来のCED信号検出したタイミングではなくDIS信号(デジタル識別信号)のフラグまたはフレームを検出したタイミングに切替えている。このため、CNG信号の停止タイミングがIP網側でファクシミリ信号を検知することが可能になる範囲まで延びている。これによって、IP網は、この通信がファクシミリ通信だと判断できQoS制御を行うことができ、それ以降の通信が正常に行われている。
【0029】
図6は、V.34の通信モードでファクシミリ通信を開始した場合にIP網側がCNG信号を検出できなかったために発生する通信エラーについて説明したものである。送信機側はANSam信号(2100HZを15HZで振幅変調したトーン信号)を検出することによって、V.8手順(V.34フェーズ1)を行う。ANSam信号も被呼局を識別するため被呼局識別信号の一例である。図5では、IP網がファクシミリ信号を検知することが可能になる前に、CNG信号が停止されてしまう。このため、IP網側がCNG信号のみをQoSのトリガとしている場合には、CNG信号が検出できずにQoS制御を行わない。これによって、回線に瞬断等が発生し、通信はエラー終了してしまう場合が発生しうる。
【0030】
図7は、本発明の実施例における、V.34の通信モード時に回線障害を回避する様子を示したシーケンス図である。送信側は、受信側の送出するANSamを検出してもCM信号を送出せずに、CNG信号を送出し続けるように制御する。このため、受信機側はANSamタイムアウトしてV.21変調方式を用いた低速手順へ移行しDIS信号を送出する。CNG信号の停止タイミングがIP網側でファクシミリ信号を検知することが可能になる範囲まで延びている。その為、IP網は、この通信がファクシミリ通信だと判断できQoS制御を行うことができる。この後、送信機側はDIS信号のV.8能力を確認してCI信号を送出し再びV.8手順を開始してV.34手順へ移行することができ、通信は正常に行われる。ここでは、受信機側はANSamタイムアウトしてV.21変調方式を用いた低速手順へ移行しる例について説明した。しかしながら、V.34手順を利用するまでに時間をようするため、このような場合は、V.34手順の通信を禁止し、V.27ter、V.29、V.17のいずれかの通信を行うように制御してもよい。
【0031】
図8は、本発明の実施例における、送信処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、ROM102に格納されたプログラムに従って、CPU101によって実行される。
【0032】
送信の指示がされると、CPU101は、NCU(109)に回線補足を指示する(S1)。続いて、相手先電話番号をダイヤルする(S2)。ダイヤル後に初期識別信号を検出するのためのT1タイマ(60秒)をセットする(S3)。引き続いて、1秒後にCNG信号が送出されるようにCNGオフタイマへタイマ値をセットする(S4)。
【0033】
(S5)〜(S15)までは信号検出をしながらCNG信号を送出するためのループ処理となっている。CPU101がファクシミリの初期識別を検出するタイマのタイムアウト(T1タイムアウト)を検出した場合(S5)には、IP網経由フラグをセット(S6)する。ここで、IP網経由フラグをセットするのは、T1タイムアウトの原因が、IP網側でCNG信号を検出できず、必要なQoS制御が行われなかったために通信が成立しなかったと考えられるためである。その後、リダイヤルセット(S7)を行い回線開放する。相手先が話し中等で応答できない場合にはビジートーンが送られてくるので、ビジートーンを検出した場合(S8)には、IP網経由フラグをセットせずに、リダイヤルセット(S7)を行い回線開放する。ここで、IP網経由フラグをセットしないのは、相手先と通信が成立しない原因が、IP網側でQoS制御を行わなかったことではなく、相手先が話中であることがはっきりしているからである。
【0034】
(S9)では、IP網のQoS機能を有効にするための制御を行うかを判断するIP網フラグを確認する。IP網フラグがオフの場合に、(S10)にて被呼側端末からのANSam信号を確認する。ANSam信号が検出できれば、(S16)〜(S21)まではV.8手順(V.34フェーズ1)の処理となり信号検出をしながらV.8手順の終了を待ち、V.8手順の結果、V.34の通信モードで通信が可能(S21)ならV.34フェーズ2処理へ移行する。V.8手順の結果、V.34モードでの通信が不可ならば(B)へ移行し、V.21変調方式を用いた低速手順を実行する。
【0035】
(S10)にてANSam信号を検出できなかった場合には、被呼側端末からCED信号を示すトーン信号を検出したかどうかを確認する(S11)。CED信号が検知できた(V.17以下の通常送信の)場合には、CNG信号を停止(S23)する。
【0036】
(S11)にてCED信号が検知できなかった場合には、受信機側から送出されるDIS信号を早期にまたは一部でも検出するためにV.21Hキャリア(手順信号の搬送周波数)検出を行う(S12)。同様に、(S9)でIP網フラグがオンの場合も、V.21Hキャリアの検出を行う(S12)。V.21Hキャリアが検出された場合には、DIS信号の検知のためにCNG信号を再び送信するまでのタイマを延長し(S22)、CNG信号を停止させる(S23)。CNGオフタイマがタイムアウト(S24)したら、(S14)にて再度発呼側が非音声端末であることを示すCNG信号を送出する。このように送信機はDIS信号を検出した後も、CNG信号を送出するため、IP網に対してファクシミリ通信を実行することを確実に通知できる。DIS信号が検知できた(S25)場合には、DIS信号中のV.8能力ビットを確認する(S26)。V.8能力が確認できなければ、V.17以下の通信を行うために、T.30ノードAへ移行する。これによって、送信機は、DCS信号を送出し、V.17以下でファクシミリ通信を開始することができる。V.8能力が確認できれば、再びV.34モードでの通信が可能なので、CI信号送出モードにセット(S27)する。以降は、V.34モードでのファクシミリ通信を実行する。
【0037】
(S9)の判定で(S10)(S11)をスキップしDIS信号を検出していることから、既にIP網側のQoS機能を有効にしていると判断できるので、IP網フラグをリセット(S28)する。
【0038】
以下に図8で述べたフローチャートの変形例について説明する。以下西メス変形例のいくつかを、図8のフローチャートと組み合せて実行してもよい。
【0039】
ここでは、(S5)でT1タイムアウトが発生した場合に、(S6)でIP網経由フラグをセットする例について説明したが、これに限らない。ユーザが送信機がIP網に接続されていることを知っている場合、ユーザに、操作部116を介してIP網経由フラグを設定させるようにしてもよい。この場合、(S1)で、ユーザはIP網経由フラグをセットし、(S8)でCPU101はS5のT1タイムアウトが発生しなくとも、IP網経由であることが判断できる。同様に、相手先番号が050で始まる場合に、CPU101はIP網に接続されていると判断し、IP網経由フラグをセットするようにしてもよい。
【0040】
さらに、(S9)でIP網フラグがオンの場合に、(S12)でV.21Hキャリアの検出を行う例について説明したがこれに限らない。(S12)でV.21Hキャリアの検出を行うかわりに、(S11)と同様にCED信号を示すトーン信号を検出するようにしてもよい。ただし、この場合、CED信号を検出し、(S22)と同様にCNGオフタイマを延長する。これによって、再度、CNGを送出することができるため、確実にQoS機能を働かせることができる。ただし、IP網フラグがオフである場合は、(S11)でCED信号を検出した場合は、CNGオフタイマを延長せずに、CNGの送出を停止する。
【0041】
さらに、(S25)でDIS信号を検知し、(S26)でV.8能力があることを確認できれば、(S27)を実行し、V.34でファクシミリ通信を実行する例について説明したが、これに限らない。(S26)でV.8能力があることを確認できた場合でも、IP網経由フラグがセットされている場合は、V.8モード、V.34モードでの通信を禁止し、T.30ノードAに移行するようにしてもよい。すなわち、IP網経由フラグがセットされていない場合のみ、V.34モードでの通信を実行するようにしてもよい。このようにすることによって、前手順を何度も実行することが防止でき、通信時間を短くすることができる。
【0042】
さらに、ここでは、(S22)に示すように、V.21Hキャリアを検出後にCNGオフタイマを制御することによって、CNG信号の送出するタイミングを制御するようにしたが、これに限らない。IP網側で、確実にCNG信号を検出できるように、V.21Hキャリアを検出後に送出する回数を増やしたり、CNG信号のオン時間を長くするように制御したりしてもよい。要するに、被呼側からの識別信号を検出した場合でも、すぐにCNG信号の送出を停止せず、少なくとも1回以上CNG信号の送出を継続することができれば、IP網側で確実にQoS機能を行わせることができる。
【0043】
また、ここでは単一のCPUが、図8のフローチャートを実行する例について記載したが、これに限らない。複数のCPUが分散して実行するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0045】
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 蓄積メモリ(画像メモリ)
105 解像度変換処理部
106 読取記録用符号化複合化処理部
107 時計部
108 モデム
109 NCU(回線if部)
110 電話機
111 VoIPルータ
112 IPネットワーク
113 画像処理部
114 シートスキャナ
115 ブックスキャナ
116 操作部
117 ラインバッファ
118 プリントバッファ
119 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像通信装置がIP網に接続されているかどうか判断する判断手段と、
被呼側の画像通信装置からのV.21変調方式で変調された信号を検出する第1の検出手段と、
回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出手段と、
前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第1の検出手段によってV.21変調方式で変調された信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする画像通信装置。
【請求項2】
被呼側の画像通信装置からの被呼局を識別するためのトーン信号を検出する第2の検出手段と、
前記判断手段によってIP網に接続されていると判断されない場合に、前記第2の検出手段によってトーン信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、発呼側が非音声端末であることを示す信号の送出を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像通信装置。
【請求項3】
画像通信装置がIP網に接続されているかどうか判断する判断手段と、
被呼側の画像通信装置からの被呼局を識別するためのトーン信号を検出する第2の検出手段と、
回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出手段と、
前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第2の検出手段によって前記被呼局を識別するためのトーン信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする画像通信装置。
【請求項4】
前記判断手段によってIP網に接続されていると判断されない場合に、前記第2の検出手段によってトーン信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、発呼側が非音声端末であることを示す信号の送出を停止することを特徴とする請求項3に記載の画像通信装置。
【請求項5】
ANSam信号を検出する第3の検出手段を有し、
前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第3の検出手段によってANSam信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項6】
被呼側の画像通信装置からのデジタル識別信号を検出する第4の検出手段を更に有し、前記判断手段によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第4の検出手段により被呼側の画像通信装置からのデジタル識別信号を検出されたことに従って、V.8手順を実行することを特徴とする請求項5に記載の画像通信装置。
【請求項7】
前記判断手段によってIP網に接続されていないと判断された場合に、前記第3の検出手段によってANSam信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、発呼側が非音声端末であることを示す信号の送出を停止し、V.8手順を実行することを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項8】
前記判断手段は、画像通信装置がIP網に接続されていると判断した場合に、V.8手順の実行を禁止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記被呼側の画像通信装置との通信が成立しなかったことにより、IP網に接続されていると判断することを特徴する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項10】
IP網に接続されているかどうかを設定する設定手段を更に有し、
前記判断手段は、前記設定手段によりIP網に接続されていると設定されている場合、IP網に接続されていると判断することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項11】
相手先番号が050で始まる番号かどうか検出する第5の検出手段を更に有し、前記判断手段は、第5の検出手段によって相手先番号が050で始まる番号であることが検出された場合にIP網に接続されていると判断することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像通信装置。
【請求項12】
画像通信手段がIP網に接続されているかどうか判断する判断工程と、
被呼側の画像通信装置からのV.21変調方式で変調された信号を検出する第1の検出工程と、
回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出工程と、
前記判断工程によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第1の検出工程によってV.21変調方式で変調された信号が検出されたことに従って、前記送出手段は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする画像通信装置を制御するためのプログラム。
【請求項13】
画像通信手段がIP網に接続されているかどうか判断する判断工程と、
被呼側の画像通信装置からの被呼局を識別するためのトーン信号を検出する第2の検出工程と、
回線補足に従って、発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出する送出工程と、
前記判断工程によってIP網に接続されていると判断された場合に、前記第2の検出工程によって前記被呼局を識別するためのトーン信号が検出されたことに従って、前記送出工程は、再度発呼側が非音声端末であることを示す信号を送出することを特徴とする画像通信装置を制御するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−124664(P2011−124664A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278959(P2009−278959)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】