説明

画面情報漏洩防止装置、及び画面情報漏洩防止方法

【課題】画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止する画面情報漏洩防止装置及び画面情報漏洩防止方法を提供することを課題とする。
【解決手段】デジタル信号列として入力された複数の画素強度信号に対して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させると共に、更に所定のフレーム数(画面数)ごとに強弱パターンをも反転可能な変調信号を印加した後にアナログ信号に変換して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ類の画面に表示される画面情報の電磁的漏洩を防止する画面情報漏洩防止装置及び画面情報漏洩防止方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、通信機器などの情報機器から意図せずに放射される不要電磁波は、情報機器内部又は情報機器を結ぶインタフェース中の電気信号から生成されており、その不要電磁波は情報機器上の画面情報を含んでいる。そして、既知の情報インタフェースであれば、その不要電磁波を受信して再生することで、画面情報そのものを取得することができる。
【0003】
このような画面情報の電磁的漏洩を防止するため、画面情報の画面表示信号と共に擬似信号を同期して発生させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−060384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、アンテナから擬似信号を空間へ放射する特殊なハードウェアを情報機器とは別に準備する必要があるため、利便性やコスト面で簡易に利用できないという問題があった。また、擬似信号を発生させるため、周囲の電磁環境に悪影響を与える可能性があるという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止する画面情報漏洩防止装置及び画面情報漏洩防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する入力手段と、入力された前記複数の画素強度信号を格納する格納手段と、前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱する変調信号を印加する印加手段と、前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する変換手段と、変換された前記画素強度信号を出力する出力手段と、を有することを要旨とする。
【0007】
本発明にあっては、デジタル信号列として入力された複数の画素強度信号に対して変調信号を印加した後にアナログ信号に変換して出力するため、従来のように特殊なハードウェアを新たに準備することなく、デジタル処理によって、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記印加手段が、所定の画面数ごとに前記変調信号の強弱を反転させることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する入力手段と、入力された前記複数の画素強度信号を格納する格納手段と、前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、対象となる画素および当該画素に連続する複数の画素の総強度を平均化する変調信号を印加する印加手段と、前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する変換手段と、変換された前記画素強度信号を出力する出力手段と、を有することを要旨とする。
【0010】
本発明にあっては、デジタル信号列として入力された複数の画素強度信号に対して変調信号を印加した後にアナログ信号に変換して出力するため、従来のように特殊なハードウェアを新たに準備することなく、デジタル処理によって、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する第1のステップと、入力された前記複数の画素強度信号を格納手段に格納する第2のステップと、前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱する変調信号を印加する第3のステップと、前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する第4のステップと、変換された前記画素強度信号を出力する第5のステップと、を有することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、前記第2のステップが、所定の画面数ごとに前記変調信号の強弱を反転させることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する第1のステップと、入力された前記複数の画素強度信号を格納手段に格納する第2のステップと、前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、対象となる画素および当該画素に連続する複数の画素の総強度を平均化する変調信号を印加する第3のステップと、前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する第4のステップと、変換された前記画素強度信号を出力する第5のステップと、を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止する画面情報漏洩防止装置及び画面情報漏洩防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る画面情報漏洩防止装置の機能ブロックを示す機能ブロック図である。この画面情報漏洩防止装置100は、入力部10と、印加部20と、変換部30と、出力部40と、格納部50とを備えた構成である。
【0017】
最初に、入力部10は、画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する。そして、入力された複数の画素強度信号は格納部50に格納される。
【0018】
なお、入力される各画素の画素強度信号は、図2に示すようにSi,j,kで表現されるものとし、iはフレーム番号,jはフレーム内の行番号,kはフレーム内の列番号を意味するものであって、1フレームはJ行K列で構成されるものとする。また、i番目のフレームを構成する各画素強度信号は、Si,1,1,Si,1,2,…,Si,1,K,Si,2,1,Si,2,2,…,Si,2,K,Si,J,1,Si,J,2,…,Si,J,Kの順で入力されるものとする。
【0019】
次に、印加部20は、格納部50から読み出した各画素強度信号Si,j,kに対して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させると共に、更に所定のフレーム数(画面数)ごとに強弱パターンをも反転可能な式(1)で示す変調信号を印加する。
【数1】

【0020】
ここで、Aは印加する変調信号の大きさを与える定数であり、1〜3程度の範囲内で設定することが好ましい。また、Nは上記所定の画素数を示す定数であり、1〜5程度の範囲内で設定することが望ましい。例えばNを5に設定した場合には、5画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させることになり、より具体的には、1画素目〜5画素目の各画素の強度を強めて6画素目〜10画素目の各画素の強度を弱めることを5画素数ごとに交互に繰り返すことになる。更に、Nは上記所定のフレーム数を示す定数であり、1〜10程度の範囲内で設定することが望ましい。例えばNを10に設定した場合には、10フレームごとに画素の強弱パターンを反転させることになり、より具体的には、1フレーム目〜10フレーム目における各画素の強度に対して与える強弱パターンを強→弱とし、11画素目〜20画素目における各画素の強度に対して与える強弱パターンを弱→強とすることになる。なお、cは、出力部40から出力されて伝送ケーブル等から放射される電磁波の信号に角度を付与するパラメータであり、−5〜5程度の範囲内で設定することが望ましい。
【0021】
最後に、変換部30は、式(2)に示すように印加部20で変調信号が印加された各画素強度信号(Si,j,k)’をアナログ信号に変換し、出力部40は、伝送ケーブル等を介して変換された各画素強度信号を図示しない画面表示装置に順次出力する。
【数2】

【0022】
続いて、以上説明した処理動作によって画面情報漏洩防止装置100から出力される画素強度信号(Si,j,k)’について説明する。図3は、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させる変調信号を印加する場合に説明上必要となる各信号の出力波形を示す波形図である。同図(a)はN=2の場合における強→弱の強弱パターンを示す変調信号の波形であり、同図(b)は入力部10に入力された各画素強度信号Si,j,kのデジタル信号列である。また、同図(c)は、同図(a)に示す変調信号が同図(b)に示す各画素強度信号Si,j,kに印加された各画素強度信号(Si,j,k)’である。更に、同図(d)は、変調信号が印加された各画素強度信号(Si,j,k)’が出力部40から出力された場合に、伝送ケーブル等から放射される電磁波の信号である。なお、変調信号を印加しない場合の放射信号が同図(e)に記載されている。
【0023】
同図(c)によれば、変調信号が印加された各画素強度信号(Si,j,k)’は、同図(b)に示す変調信号を印加する前の各画素強度信号Si,j,kに対して2Nを周期とする矩形波を加えた波形となっている。例えば、(Si,1,1)’や(Si,1,2)’については画素強度信号が変調信号の大きさA分だけ強められ、(Si,1,3)’や(Si,1,4)’については画素強度信号が変調信号の大きさA分だけ弱められている。
【0024】
そして、このような各画素強度信号(Si,j,k)’が出力された場合、伝送ケーブル等から放射される電磁波の信号は、同図(d)に示すような波形となる。オリジナルの画素強度信号Si,j,kが変調信号によってマスクされるため、同図(e)に示すような変調信号を印加する前の画素強度信号に基づく放射信号を再現することが困難となり、画面情報の電磁的漏洩を防止することができる。
【0025】
更に、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させると共に、所定のフレーム数ごとに強弱パターンを反転させる変調信号を印加した場合には、強弱パターンの反転により式(1)で示す変調信号の大きさが時間平均で零(ゼロ)になるため、画面情報が時間平均で相殺されて視覚的に無信号状態(ストライプが表示されない)となる。
【0026】
本実施の形態によれば、デジタル信号列として入力された複数の画素強度信号に対して変調信号を印加した後にアナログ信号に変換して出力するので、従来のように特殊なハードウェアを新たに準備することなく、デジタル処理によって、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止することができる。
【0027】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態に係る画面情報漏洩防止装置100は、図1を用いて説明した第1の実施の形態に係る画面情報漏洩防止装置と同様に、入力部10と、印加部20と、変換部30と、出力部40と、格納部50とを備えた構成である。入力部10、変換部30、出力部40、格納部50の各処理動作は、第1の実施の形態で説明した処理動作と同様なので重複説明は省略し、印加部20の処理動作について以下説明する。
【0028】
印加部20は、格納部50から読み出した各画素強度信号Si,j,kに対して、対象となる画素及び当該画素に連続する複数の画素の総強度を平均化する式(3)で示す変調信号を印加する。
【数3】

【0029】
ここで、M(M>0)は連続する画素数を決める値であり、1又は2に設定することが望ましい。また、Wは重み係数であり、式(4)の関係式を満たし、W=1/(2M+1)とすることが望ましい。
【数4】

【0030】
例えばMを1に設定した場合、印加対象となる画素の画素強度信号Si,j,kに対して連続する画素の画素強度信号がSi,j,k−1、Si,j,k+1となりW=1/3となるので、変調信号が印加された画素強度信号は、前後に位置する画素の画素強度信号の強度を含めた総強度の平均値になる。
【0031】
続いて、このような印加部20の処理動作によって画面情報漏洩防止装置100から出力される画素強度信号(Si,j,k)’について説明する。図4は、変調信号を印加する際に説明上必要となる各信号の出力波形を示す波形図である。同図(a)は入力部10に入力された各画素強度信号Si,j,kのデジタル信号列であり、同図(b)は、変調信号が同図(a)に示す各画素強度信号Si,j,kに印加された各画素強度信号(Si,j,k)’である。また、同図(c)は、変調信号が印加された各画素強度信号(Si,j,k)’が出力部40から出力された場合に、伝送ケーブル等から放射される電磁波の信号である。
【0032】
同図(b)によれば、変調信号が印加された各画素強度信号(Si,j,k)’のうち例えば(Si,1,2)’は、(Si,1,1+Si,1,2+Si,1,3)の総強度を3で除算した平均値の強度を有する矩形波となっている。そして、このような各画素強度信号(Si,j,k)’が出力された場合、伝送ケーブル等から放射される電磁波の信号は、同図(c)に示すような波形となる。各画素強度信号の強度を前後に位置する画素の強度を用いて平均化するため、各画素強度信号(Si,j,k)’間の立ち上がり及び立ち下りが第1の実施の形態で説明した場合よりも総じて小さくなるので、漏洩する電磁波の強度が全体的に低下することになる。言い換えれば、画素強度信号の平均化処理によりオリジナルの画素強度信号をぼかすことが可能となる。その結果、再現に必要とされる信号の強度がより小さく微弱化されるので、変調信号を印加する前の画素強度信号に基づく放射信号を再現することが困難となる。
【0033】
本実施の形態によれば、デジタル信号列として入力された複数の画素強度信号に対して変調信号を印加した後にアナログ信号に変換して出力するので、従来のように特殊なハードウェアを新たに準備することなく、デジタル処理によって、画面情報の電磁的漏洩を簡易に防止することができる。
【0034】
最後に、各実施の形態で説明した画面情報漏洩防止装置100は、画像処理装置の一機能としてモジュール化することも可能である。また、この画面情報漏洩防止装置100はコンピュータで構成され、各部の処理はプログラムで実行される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態に係る画面情報漏洩防止装置の機能ブロックを示す機能ブロック図である。
【図2】各画素の位置関係の説明に用いる説明図である。
【図3】所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱させる変調信号を印加する場合に説明上必要となる各信号の出力波形を示す波形図である。
【図4】変調信号を印加する際に説明上必要となる各信号の出力波形を示す波形図である。
【符号の説明】
【0036】
10…入力部
20…印加部
30…変換部
40…出力部
50…格納部
100…画面情報漏洩防止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する入力手段と、
入力された前記複数の画素強度信号を格納する格納手段と、
前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱する変調信号を印加する印加手段と、
前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する変換手段と、
変換された前記画素強度信号を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画面情報漏洩防止装置。
【請求項2】
前記印加手段は、
所定の画面数ごとに前記変調信号の強弱を反転させることを特徴とする請求項1に記載の画面情報漏洩防止装置。
【請求項3】
画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する入力手段と、
入力された前記複数の画素強度信号を格納する格納手段と、
前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、対象となる画素および当該画素に連続する複数の画素の総強度を平均化する変調信号を印加する印加手段と、
前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する変換手段と、
変換された前記画素強度信号を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画面情報漏洩防止装置。
【請求項4】
画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する第1のステップと、
入力された前記複数の画素強度信号を格納手段に格納する第2のステップと、
前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、所定の画素数ごとに画素の強度を交互に繰り返し強弱する変調信号を印加する第3のステップと、
前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する第4のステップと、
変換された前記画素強度信号を出力する第5のステップと、
を有することを特徴とする画面情報漏洩防止方法。
【請求項5】
前記第3のステップは、
所定の画面数ごとに前記変調信号の強弱を反転させることを特徴とする請求項4に記載の画面情報漏洩防止方法。
【請求項6】
画面を構成する複数の画素の強度を夫々表す複数の画素強度信号をデジタル信号列として入力する第1のステップと、
入力された前記複数の画素強度信号を格納手段に格納する第2のステップと、
前記格納手段に格納された前記画素強度信号を読み出して、対象となる画素および当該画素に連続する複数の画素の総強度を平均化する変調信号を印加する第3のステップと、
前記変調信号が印加された前記画素強度信号をアナログ信号に変換する第4のステップと、
変換された前記画素強度信号を出力する第5のステップと、
を有することを特徴とする画面情報漏洩防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−212952(P2009−212952A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55219(P2008−55219)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】