説明

画面盗視防止方法、ビデオボード、ディスプレイ装置、及びコンピュータシステム

【課題】コンピュータ本体とディスプレイ装置間で画像信号以外の特別な信号の送受信を行うことなしに、漏洩電波によって出力画面が盗視される危険性を低くする。
【解決手段】コンピュータ本体からディスプレイ装置に画像信号を送信するとき、出力画面が変更された直後に変更画面のデータを1回だけ送信し、それ以外は「全白画面」、ダミー画面、もしくはランダムな画面のデータを送信するようにする。ディスプレイ装置側には、コンピュータ本体から送信された画像信号の中から変更画面のデータだけを取り込んで記憶する表示用ビデオメモリを備え、この表示用ビデオメモリに記憶された画面データを読み出して表示部に画面を描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムにおいてディスプレイ装置に送信される画像信号の漏洩電波を傍受して出力画面を盗み見るという画面盗視行為を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンピュータシステムにおいてディスプレイ装置に画面を出力する場合は、コンピュータ本体によってビデオメモリに書き込まれた1画面分の画像データが、アナログまたはディジタルの画像信号に変換されて、1秒間に数十回の頻度で連続して送信され、ディスプレイ装置側で、この画像信号を受信して、やはり1秒間に数十回の頻度で画面を連続して描画することによって画像の表示が行われる。
【0003】
コンピュータ本体からディスプレイ装置への画像信号の送信は、ビデオメモリに書き込まれた画像データがまったく変化していない場合にも、コンピュータ本体に組み込まれたビデオ回路によって常時行われているため、万一この画像信号の漏洩電波が傍受されると、コンピュータシステムの出力画面を盗視される危険性が高い。
【0004】
そこで、重要なデータを取り扱うコンピュータシステムでは、コンピュータ本体、ディスプレイ装置との接続ケーブル、ディスプレイ装置等からこの画像信号の漏洩電波が傍受されないようにするための対策として、主としてシールドを強化して漏洩電波を弱くしたり、傍受を妨害するための電波を発信するといった方法が採用されていた。
【0005】
また、特許文献1には、アナログRGB信号で送信される画像信号の再生に使用される同期信号の位相を変化させることにより、その漏洩電波からは乱れた画像しか再生できないようにする技術が開示されており、特許文献2及び特許文献3には画像信号中にダミーデータを付加することによって漏洩電波からの画像の再生を防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−83298号公報(段落0039〜0041、図3)
【特許文献2】特開平5−151114号公報(段落0016〜0022、図1)
【特許文献3】特開平6−214750号公報(段落0005〜0010、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、傍受した画像信号を解析することによって、画像データに含まれている文字を推定できてしまうという問題があった。また前記の従来技術は、いずれもコンピュータ本体とディスプレイ装置との間で画像信号以外に特別な信号の送受信が必要となっていた。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、コンピュータ本体とディスプレイ装置間で画像信号以外の特別な信号の送受信を行うことなしに、漏洩電波によって出力画面が盗視される危険性を低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による画面盗視防止方法は、コンピュータ本体からディスプレイ装置に所定の周期で画像信号を送信するとき、コンピュータ本体に備えた出力用ビデオメモリに記憶される画面データが変更された直後に、変更された画面データを1回だけ送信し、それ以外は常時「全白画面」のデータを送信するようにし、ディスプレイ装置側に、コンピュータ本体から送信された画像信号の中から「全白画面」以外の画面データだけを取り込んで記憶する表示用ビデオメモリを備え、この表示用ビデオメモリに記憶された画面データを読み出して表示部に画像を描画するようにした。
【0009】
また、本発明による他の画面盗視防止方法は、コンピュータ本体からディスプレイ装置に所定の周期で画像信号を送信するとき、コンピュータ本体に備えた出力用ビデオメモリに記憶される画面データが変更された直後に、変更された画面データを2つの「全白画面」に挟んで1回だけ送信し、それ以外はダミー画面又はランダムな画面のデータを送信するようにし、ディスプレイ装置側に、コンピュータ本体から送信された画像信号の中から2つの「全白画面」で挟まれた画面データだけを取り込んで記憶する表示用ビデオメモリを備え、この表示用ビデオメモリに記憶された画面データを読み出して表示部に画像を描画するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンピュータ本体とディスプレイ装置間で画像信号以外の特別な信号の送受信を行う必要がなく、かつ、出力画面に変化がないときには、「全白画面」、ダミー画面、もしくはランダムな画面しか送受信されないので、漏洩電波によって出力画面が盗視される危険性を低くすることができる。また、出力画面に変化があったときには、画面データを1回だけ送信し、続いて「全白画面」を送信するので、盗視された画像が残像効果が大きい表示装置に表示された場合にも、出力画面が盗視される危険性を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る画面盗視防止方法の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る画面盗視防止方法を用いたコンピュータシステムの構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、コンピュータシステム10は、コンピュータ本体1と、ディスプレイ装置2と、両者の間を接続する接続ケーブル3とを備えて構成される。
【0014】
コンピュータ本体1には、CPU11と、出力用ビデオメモリ12及び画像信号出力部13を備えたビデオボード14とが備えられる。画像信号出力部13は、CPU11が出力用ビデオメモリ12に書き込んだ出力画面の画像データ(以下、「画面データ」という)を所定周期(例えば、60回/秒)で読み出し、読み出した画面データを所定形式の画像信号(例えば、アナログRGB信号)に変換して、接続ケーブル3を介してディスプレイ装置2に送信する。
【0015】
ただし、画像信号出力部13は、出力用ビデオメモリ12への画面データの書き込みが行われたかどうかを常時監視しており、出力用ビデオメモリ12への画面データの書き込みが行われた直後の1周期のみ、前記出力用ビデオメモリ12から読み出した画面データの送信を行い、それ以外の各周期には、画面全体が「白」となる画像データ(以下、「全白画面」)を送信する。
【0016】
一方、ディスプレイ装置2には、出力画面抽出部21と、表示用ビデオメモリ22と、表示回路23と、表示部24とが備えられる。出力画面抽出部21は、接続ケーブル3を介してコンピュータ本体1の画像信号出力部13から所定周期で送信される画像信号を受信し、受信した画像信号に含まれる画面データが「全白画面」であればそれを読み飛ばし、「全白画面」以外の画面データであれば、その画面データを表示用ビデオメモリ22に格納する。
【0017】
表示回路23は、表示用ビデオメモリ22に格納された画面データを所定周期(例えば、60回/秒)で読み出し、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部24に読み出した画面データの画像を繰り返し描画する。
【0018】
図2は、従来のコンピュータシステムの画像信号(従来の画像信号)と本実施形態に係るコンピュータシステム10の画像信号(本実施形態の画像信号)を比較したタイムチャートである。
【0019】
図2は、時刻t1において出力画面が「A」から「B」に更新され、更に時刻t2において「C」に更新された場合の例を示しており、従来の画像信号では、出力画面が更新されたかどうかに関わらず連続して出力画面のデータが送信されているのに対して、本発明の画像信号では、出力画面が更新された直後のみ出力画面のデータが送信され、それ以外の各周期ではすべて記号「W」で示される「全白画面」が送信されている。
【0020】
したがって、有効な出力画面のデータの送信回数が少なくなる分、従来に比べて画面が盗視される可能性は小さくなり、もし出力画面が盗視されて残像効果が大きい表示装置に出力されたとしても、画面上には有効な出力画面が一瞬表示された後すぐに「全白画面」が表示されるので、出力画面からデータが盗視される危険性は極めて低くなるものと考えられる。
【0021】
なお、出力画面が更新されなかったときに連続して「全白画面」を送信する方法では、有効な画面データと「全白画面」のデータとの区別が容易であり、そこから有効な画面データだけが抽出される可能性があるので、出力画面が更新されなかったときに連続して「全白画面」を送信する代わりに、中間の「全白画面」の部分(図2の記号「W」と「W」の間の「・・・」で示されている部分)にダミー画面やランダムに生成した画面のデータを送信するとともに、有効な画面データは2つの「全白画面」に挟んで送信するようにし、ディスプレイ装置側では2つの「全白画面」によって挟まれた画面データだけを取り込み、それ以外はすべて読み飛ばすようにしてもよい。
【0022】
本実施形態における、画面データを送信するための画像信号は、アナログRGB以外にLVDS(Low Voltage Differential Signaling)やTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)等のディジタル信号であってもよい。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る画面盗視防止方法を用いたコンピュータシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】従来の画像信号と本実施形態の画像信号を比較したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0024】
1 コンピュータ本体
2 ディスプレイ装置
3 接続ケーブル
10 コンピュータシステム
11 CPU
12 出力用ビデオメモリ
13 画像信号出力部
14 ビデオボード
21 出力画面抽出部
22 表示用ビデオメモリ
23 表示回路
24 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ本体からディスプレイ装置に所定の周期で出力画面の画像信号を送信するときに発生する漏洩電波が傍受され、前記出力画面が盗視されることを防止する画面盗視防止方法であって、
前記コンピュータ本体から、前記出力画面が変更された直後の1周期に、変更後の出力画面の画像信号を送信し、それ以外の各周期には全白画面の画像信号を送信する第1のステップと、
前記ディスプレイ装置において、前記全白画面の画像信号以外の画像信号を受信したときに、その画像信号を画面データに変換して表示用ビデオメモリに格納する第2のステップと、
前記ディスプレイ装置において、前記表示用ビデオメモリから前記画面データを読み出して表示部に出力画面を描画する第3のステップと
を備えたことを特徴とする画面盗視防止方法。
【請求項2】
コンピュータ本体からディスプレイ装置に所定の周期で出力画面の画像信号を送信するときに発生する漏洩電波が傍受され、前記出力画面が盗視されることを防止する画面盗視防止方法であって、
前記コンピュータ本体から、前記出力画面が変更された直後の3周期に、全白画面、変更後の出力画面、全白画面の順序で1周期に1画面ずつ画像信号を送信し、それ以外の各周期にはダミー画面又はランダムな画面の画像信号を送信する第1のステップと、
前記ディスプレイ装置において、2つの全白画面に挟まれた前記変更後の出力画面の画像信号を受信したときに、その出力画面の画像信号を画面データに変換して表示用ビデオメモリに格納する第2のステップと、
前記ディスプレイ装置において、前記表示用ビデオメモリから前記画面データを読み出して表示部に出力画面を描画する第3のステップと
を備えたことを特徴とする画面盗視防止方法。
【請求項3】
出力画面の画面データを記憶する出力用ビデオメモリを備え、所定の周期で画像信号を送信するビデオボードにおいて、
前記出力画面が変更された直後の1周期に、前記出力用ビデオメモリに記憶された変更後の出力画面の画像信号を送信し、それ以外の各周期には全白画面の画像信号を送信する画像信号出力部
を備えたことを特徴とするビデオボード。
【請求項4】
所定の周期で送信される画像信号を受信し、受信した画像信号によって表示部に画像を描画するディスプレイ装置において、
全白画面の画像信号以外の画像信号を受信したときに、その画像信号を画面データに変換して表示用ビデオメモリに格納する出力画面抽出部と、
前記表示用ビデオメモリから前記画面データを読み出して前記表示部にその画面データの画像を描画する表示回路と
を備えたことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項3に記載のビデオボードを備えたコンピュータ本体と、請求項4に記載のディスプレイ装置とが、接続ケーブルによって接続されたコンピュータシステム。
【請求項6】
出力画面の画面データを記憶する出力用ビデオメモリを備え、所定の周期で画像信号を送信するビデオボードにおいて、
前記出力画面が変更された直後の3周期に、全白画面、変更後の出力画面、全白画面の順序で1周期に1画面ずつ画像信号を送信し、それ以外の各周期にはダミー画面又はランダムな画面の画像信号を送信する画像信号出力部
を備えたことを特徴とするビデオボード。
【請求項7】
所定の周期で送信される画像信号を受信し、受信した画像信号によって表示部に画像を描画するディスプレイ装置において、
2つの全白画面によって挟まれた出力画面の画像信号を受信したときに、その出力画面の画像信号を画面データに変換して表示用ビデオメモリに格納する出力画面抽出部と、
前記表示用ビデオメモリから前記画面データを読み出して前記表示部にその画面データの画像を描画する表示回路と
を備えたことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項6に記載のビデオボードを備えたコンピュータ本体と、請求項7に記載のディスプレイ装置とが、接続ケーブルによって接続されたコンピュータシステム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129016(P2010−129016A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305874(P2008−305874)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】