説明

畑わさび抽出物を有効成分とする体脂肪抑制剤

【課題】畑わさびの未利用部分である葉および葉柄に、生活習慣病の予防に役立つ機能性を見出すこと。
【解決手段】畑わさびの辛味成分が遊離しないよう、葉および葉柄部分を完全乾燥し、加熱により酵素失活、均一な紛体化、無水状態での溶媒抽出、遠心分離と膜濾過、そして減圧下濃縮を行うことで、体脂肪抑制効果を有する畑わさび抽出物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑わさび抽出物を有効成分とする体脂肪抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
わさびに関する研究は進んでおり、わさびの種々のからし油成分による抗菌作用、抗カビ作用、抗虫作用、抗ガン作用、抗血栓作用や、わさび抽出物による消化管吸収促進作用、抗下痢作用、骨増強作用などがすでに知られている。わさびはアブラナ科の多年草であり、栽培方法により沢わさびと畑わさびとに分けられる。わさびは香辛料原料として用いられているが、その際用いられるのは沢わさびの根茎および畑わさびの根茎であり、特に畑わさびの葉や葉柄の部分は、産業的には多くの場合廃棄されているのが現状である。
【0003】
高機能性であるわさびといえども、全体を利用せずに廃棄物を出してしまうことは現代社会の目標となるゼロエミッションとは相反するため、未利用部分である畑わさびの葉および葉柄部分の有効活用法の開発が望まれている。
【0004】
一方、日本人の死因を見ると第一位が悪性新生物で、次いで心疾患、脳血管疾患が多く、このことは肥満症や高血圧症、高脂血症などの生活習慣病を患う中高年者や小児の増加に関連しているといえる。特に肥満症は高血圧症や高脂血症に合併していく可能性が高いため、これらの生活習慣病の予防には肥満や高コレステロール血症の状態にならぬよう日常摂取する食品に注意することが大切である。
【0005】
現在、肥満や高コレステロール血症の予防の目的で、種々の特定保健用食品が販売されている。このような特定保健用食品に関与する成分には、例えば体脂肪をつきにくくするジアシルグリセロールや中鎖脂肪酸、コレステロールの吸収を抑制する植物ステロールや大豆蛋白質、低分子アルギン酸ナトリウム、サイリウム種皮由来食物繊維などがある。また体脂肪を燃焼しやすくする成分としては緑茶カテキンなどがある。
【0006】
このような機能性をもった食品成分や素材が畑わさびの葉および葉柄の部分にも見出されれば、畑わさびの未利用部分が産業的に有効活用されるものと期待されるが、未だ需要の高い機能性の発見は種々のからし油成分以外には見出されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2005−143391号公報
【特許文献2】特開2005−047822号公報
【特許文献3】特開2003−081820号公報
【特許文献4】特開平10−279492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、畑わさびの葉および葉柄部分に辛味成分以外で肥満や高コレステロール血症の予防に寄与する機能性が見出されていない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
わさびの効用を得るための手段としては水と有機溶媒による加水抽出が主となっており、これまでに発見されている有効成分もからし油に由来するものが多かった。そこでわさびの葉および葉柄部分より抽出を行うに当たっては辛味成分の加水分解による遊離がないよう加熱した上で非加水抽出を行い、からし油由来の辛味成分を除いた新規抽出物を調製し、体脂肪抑制作用を有するかどうか鋭意研究を行った。その結果、本抽出物に体脂肪抑制効果のあることを見出した。
【0009】
本発明は、畑わさびから無水状態で有効抽出物を得、それが体脂肪抑制作用を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、畑わさびの未利用部分に付加価値を付与するとともに、本発明による有効成分を食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品に配合して摂取することにより、現在多くの日本人の健康維持と生活習慣病予防のために必要とされている肥満の防止に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
畑わさびの未利用部分となっている葉または葉柄部分を完全乾燥、紛体化、非加水抽出することで、生活習慣病の予防に役立つ体脂肪抑制効果のある有効成分含有抽出物を得ることができる。次に本発明を具体的に説明するため実施例を掲げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
畑わさびの葉および葉柄60kgを天日干しにより乾燥させ、さらに電気低温乾燥機により75℃で6時間加熱した後、さらに105度で30分間の加熱を行い、完全乾燥と酵素失活を行った。得られた畑わさび乾燥物をミルを用いて粉砕し、80メッシュの金網を通して均一な粉体とした。
【0013】
上述で得られた粉体に対して5〜10倍量の無水メタノールで還流下9時間の連続抽出を行った後、250×gで20分間遠心分離を行い油層を除去した。残渣の溶液を5μmの膜フィルターで濾過し、得られた濾液の溶媒を減圧下留去して乾固物約48g(試料1)を得た。
【0014】
上述で得られた試料1を4週齢のWister系ラット(日本クレア株式会社)24匹を用いた次のような実験に供した。ラットの飼育は室温23±2℃、湿度50±5%、12時間ごとの明暗サイクル(明:7〜19時)の環境下で行った。実験は「実験動物の飼養および保管に関する基準」(昭和55年3月、総理府告示第6号)を遵守して行った。ラット用基本飼料にラードを20%添加した負荷食餌を用意し、この負荷食餌に試料1を2%添加したものと添加しないものとを調製し、それぞれを2群のラットに自由摂取の形で与えて3週間飼育を行った。そして飼育3週間後に両群のラットの体重増加量と腹腔内脂肪量を測定し、両群間で有意差検定を行ったところ、体重増加量、腹腔内脂肪量とも試料1添加食餌摂取群のほうが危険率5%で有意に少ない数値となった。すなわち試料1の摂取により、体重増加および体脂肪増加が有意に抑制される効果が得られた。なお、両群の3週間における食餌摂取総量に有意差は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による畑わさび抽出物を得ることで、畑わさびの未利用部分の活用が可能となり、わさび加工産業のゼロエミッションに貢献できるとともに、その抽出物の体脂肪抑制効果は日本人の健康維持、生活習慣病の予防に役立つことから、日本人の医療費削減への貢献も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畑わさびの葉または葉柄の乾燥物を無水溶媒で抽出することで得られる抽出物を有効成分とする、体脂肪抑制剤。

【公開番号】特開2007−246499(P2007−246499A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109166(P2006−109166)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(306010406)株式会社北上オフィスプラザ (2)
【出願人】(598095204)
【Fターム(参考)】