説明

畑作用苗移植機

【課題】 従来の6輪構成では、機体の安定した支持は得られるが、前輪及び後輪の左右方向の向きが変向できない構成であるため、機体の操向性、畝に対する追従性が悪くなる問題がある。
【解決手段】 本発明は、左右一対の前輪(5),(5)、駆動輪(6),(6)、尾輪(7),(7)を前側から順に配備して6輪構成とする。畝の斜面に接触する畝案内ローラ(16),(16)を左右移動自在に設ける。畝案内ローラ(16),(16)の左右移動に関連して前輪(5),(5)を操舵すべく連動構成する。尾輪(7),(7)は操舵自在に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畑作用苗移植機に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、前側に左右一対の前輪を、前後中間に左右一対の駆動車輪を、また、その後側に左右一対の座席支持用後輪を備えた6輪車構成の苗移植機は知られている。
【特許文献1】特開2005−6545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のものでは、機体の安定した支持は得られるが、前輪及び後輪の左右方向の向きが変向できない構成であるため、機体の操向性、畝に対する追従性が悪くなる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、左右一対の前輪(5),(5)、駆動輪(6),(6)、尾輪(7),(7)を前側から順に配備して6輪構成とし、畝の斜面に接触する畝案内ローラ(16),(16)を左右移動自在に設け、該畝案内ローラ(16),(16)の左右移動に関連して前輪(5),(5)を操舵すべく連動構成し、尾輪(7),(7)は操舵自在に構成してあることを特徴とする。
【0005】
畝(U)の法面に沿って移動する畝案内ローラ(16),(16)が左右方向に移動すると、これに関連して左右の前輪(5),(5)が同方向に操舵され、畝に対する追従性が良好となる。尾輪(7),(7)は操舵自在であるため、機体の操向の支障にならず、尾輪の操舵によって機体の操向を変えることができ、操向性が良好となる。
【発明の効果】
【0006】
以上要するに、本発明によれば、前、中、後の6輪車構成であるため、機体の支持が安定するばかりでなく、畝案内ローラによる前輪操舵で畝に対する追従が良好に行え、また、尾輪も操舵自在であるため、機体の操向に支障をきたさず、操向性並びに追従性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2に示す苗移植機は、車体1を自走させる走行部Aと操縦ハンドル2を備えた機体に、苗を供給搬送する苗供給搬送部3と、該苗供給搬送部3によって搬送されてきた苗を圃場に植付ける苗植付部4とを備えた苗移植機である。
【0008】
走行部Aは、図例ではエンジンEと、該エンジンEの動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動輪6,6と、該駆動輪6,6の前方に操向(操舵)自在に支持した左右一対の前輪5,5と、前記駆動輪6,6の後方に操舵自在に支持された左右一対の尾輪7,7を備えたものとなっている。この左右一対の前輪5,5、駆動輪6,6及び尾輪7,7は、圃場に造成された畝Uを跨いだ状態で走行するようになっている。
【0009】
上記エンジンEの後部にはミッションケ−ス8を配置してあり、エンジンEからの回転動力がミッションケ−ス8内の伝動機構に伝達されるようになっている。 ミッションケ−ス8の左右端には該ケ−ス8に対して回動可能な走行エクステンションケ−ス10,10を左右それぞれ設け、前記左右の走行エクステンションケ−ス10,10のそれぞれの端部に伝動ケ−ス9,9を固着して設けている。従って、前記エンジンEから入力されるミッションケ−ス8内の動力を伝動ケ−ス9,9内に伝動する構成となっている。前記伝動ケ−ス9,9の回動先端部の車軸6a,6aには左右一対の駆動輪6,6をそれぞれ取り付け、この左右一対の駆動輪6,6の駆動により機体が走行するようになっている。
【0010】
前記走行エクステンションケ−ス10,10には上方に向けてア−ム11,11が突設されていて、該アーム11,11とミッションケ−ス8との間に連結された昇降用油圧シリンダ12の伸縮作動によって駆動輪6,6が昇降する構成としている。なお、昇降用油圧シリンダ12は、畝上面の凹凸変化に応じて上下動し、機体に対する畝上面高さを検出する接地上下センサ24の検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動すべく構成してある。
【0011】
前輪5,5は、伝動ケース9から前方に突設した上下動可能な前輪支持アーム13の軸受ボス14に対し、上下方向の前輪操向軸15を介して縦軸芯Y1回りに操向回動自在に軸受保持させた構成としている。また、前輪5,5には、図5に示すように、ウエイト25,25を装着できるように設け、前輪の接地圧が弱いと駆動輪の誘導が不確実であるため、ウエイトによって接地圧を高め、駆動輪を確実に誘導できる構成としている。
【0012】
畝の斜面(法面)に接触して追従移動する畝案内ローラ16,16は、基部が前輪操向軸15に固着されてこれより前方に突設するスイングアーム17とこのスイングアームの先端に横架された横軸杆18に架設してあり、前記縦軸芯Y1回りにスイング可能なスイングアーム17を介して左右方向に移動する構成としている。そして、畝案内ローラ16,16の左右移動に関連して、前輪操向軸15を縦軸芯Y1回りに回動させることで、前輪5,5が操舵するようになっている。
【0013】
尾輪7,7は、上下方向の尾輪操向軸19が縦軸芯Y2回りに回動し操舵する構成としている。例えば、この尾輪7,7を左向きに操舵すると、機体は右側方向に前進移動することになる。
【0014】
なお、畝案内ローラ16,16の左右間隔は、畝幅に応じて任意に調整できるものであることはもとより、前輪5,5、駆動輪6,6及び尾輪7,7においても、畝幅に応じてトレッド調節ができるものであることはいうまでもない。
【0015】
操縦ハンドル2は、ハンドルフレーム20に着脱自在に連結するが、歩行作業者の高さに応じて上下調節ができるように菊座式取付具21を介して上下調節自在に取付構成している。
【0016】
座席22は、機体の横幅方向中央位置に設置され、機体側から立設する座席支持フレーム23によって装着支持している。
苗供給搬送部3及び苗植付部4は、前輪5と駆動輪6との間に配置してあり、駆動輪のサイドクラッチを「入」「切」すると、即座に反応し条合わせがやり易くなる。
【0017】
なお、苗植付部4の後方位置には鎮圧輪26が設けられ、この鎮圧輪26は、苗植付位置の後方位置において設けられ、機体の進行に伴って畝Uの上面を転動し、苗植付後の跡を軽く鎮圧をするようになっている。鎮圧輪軸受体27は、横軸芯X回りに上下動可能な前輪支持アーム13に固着支持され、鎮圧輪26が前輪5と共に上下動する構成としている。
【0018】
操縦ハンドル2による歩行運転時は、歩行用操作レバー28の操作で、畝案内ローラ16及び前輪5(鎮圧輪26含む)等を連結ロッド29を介して持ち上げることができ、座席22による乗用運転時は、ステップ前方の乗用操作レバー30の操作によって上記同様に畝案内ローラ16及び前輪5(鎮圧輪26含む)等を操作アーム31を介して上方へ持ち上げることができ、しかも、この持ち上げ操作は乗車したままで行えるように構成している。
【0019】
図3及び図4に示す実施例では、駆動輪6が上下動しても畝案内ローラ16の姿勢が変わらないように、前輪支持アーム13が駆動輪6の車軸6aと同一軸芯上を支点として上下回動するように構成している。また、図4に示すように、平面視において、左右の前輪支持アーム13,13と、これより前方の左右スイングアーム17,17と、左右スイングアームを結ぶ横軸杆18とで、苗供給搬送部3及び苗植付部4を取り囲むように配置構成することで、特に、苗植付部の保護を図るようにしている。更に、機体を旋回操作する旋回レバー32を操作(図3の実線位置から仮想線の状態位置)すると、自動的に油圧バルブが上げ側に切り替わり、昇降用油圧シリンダ12の作動により、駆動輪6が下降し機体を所定高さまでリフトするように構成している。
【0020】
植付時は、前方視界を良くするため、図7に示すように、操縦ハンドル2を支点P回りに押し下げた状態で作業が行えるようにしておくとよい。旋回時はハンドルを通常の所定位置に持ち上げた状態に戻して旋回操作する。なお、旋回時、駆動輪の下降によって機体をリフトすると、これに関連して操縦ハンドルも元の操作姿勢位置に自動的にリフトするよう構成することもできる。また、旋回時の操縦ハンドルの持ち上げに連動して畝案内ローラ16及び鎮圧輪26がリフトするように構成しておくと便利である。
【0021】
また、図6に示すように、旋回時、左右の操向ペダル35L,35Rを踏み込み操作すると、ロッド36,36及び操向アーム37を介して尾輪7,7を操舵するように連動構成している。左の操向ペダル35Lを踏み込むと、左側の尾輪7が右向きに回動して機体は左向きに旋回し、また、右の操向ペダル35Rを踏み込むと、右側の尾輪7が左向きに回動して機体は右向きに旋回する。これによれば、乗車したままでの機体旋回が容易に行える。なお、操向ペダルを踏み込むと、尾輪の操舵と同時に駆動輪の旋回内側のサイドクラッチも切れるようにしておくと、旋回が更に容易となる。
【0022】
次に苗植付部4及び苗供給搬送部3について説明する。
苗植付部4は、その苗植付け作用部4aを昇降動させる駆動部と連結し、該苗植付部4の苗植付け作用部4aが、苗供給搬送部3により搬送されてきた苗を取って苗を圃場に植え付ける構成としたものである。
【0023】
要するに、苗植付部4は、適宜の駆動機構を介して作動し、その下端部に備えた苗植付け作用部4a,4aの先端部(下端部)が、図中に示すような軌跡Tを描きながら下降して畝Uに突入して土中で前後に開き、内部の苗を落下させて植え付けるようになっている。
【0024】
また、苗供給搬送部3は、苗植付部4の上方位置を周回して、植付作用が終了して上昇してきた苗植付け作用部4aのすぐ上側に達すると、苗収容体3aの底蓋が開放されて内部の苗を苗植付け作用部4aに上側から落下供給するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】畑作用苗移植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】苗移植機の別実施例の側面図
【図4】同上平面図
【図5】苗移植機の要部の斜視図
【図6】別実施例の苗移植機要部の平面図
【図7】別実施例の苗移植機の側面図
【符号の説明】
【0026】
5 前輪 6 駆動輪
7 尾輪 13 前輪支持アーム
15 前輪操向軸 16 畝案内ローラ
17 スイングアーム 18 横軸杆
19 尾輪操向軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(5),(5)、駆動輪(6),(6)、尾輪(7),(7)を前側から順に配備して6輪構成とし、畝の斜面に接触する畝案内ローラ(16),(16)を左右移動自在に設け、該畝案内ローラ(16),(16)の左右移動に関連して前輪(5),(5)を操舵すべく連動構成し、尾輪(7),(7)は操舵自在に構成してあることを特徴とする畑作用苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−54553(P2008−54553A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233946(P2006−233946)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】