説明

留置針組立体

【課題】構造が簡単で内針全体を被覆することのできる安全な留置針組立体を提供する。
【解決手段】カテーテル3に挿通した内針5を備えた針基7に、内針5の先端部を被覆可能な第1スリーブ15を備えると共に第1スリーブ15を内針5の先端部方向へ付勢する弾性部材25を備え、針基7に固定した円筒形状の本体カバー17と第1スリーブ15との間に、内針5の先端部方向へ第1スリーブ15と一体的に移動可能な第2スリーブ19を備え、弾性部材25の付勢力に抗して本体カバー17に対して第1スリーブ15を固定状態に保持するロック機構を備えると共に、ロック状態を解除するためのロック解除手段を本体カバー17に備え、第1,第2のスリーブ15,19の戻りを防止するために、本体カバー17と第2スリーブ19との間及び第2スリーブと第1スリーブとの間にそれぞれ係止手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば輸液、輸血等を行う際に使用される留置針組立体に係り、さらに詳細には、カテーテルを留置して当該カテーテルから内針を抜去したときに、内針をカバーすることによって安全性の向上を図ることのできる留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内針及びカテーテル(外針)を血管に穿刺してカテーテルから内針を抜去したとき、安全性の向上を図るために、前記内針を伸縮可能なテレスコピックパイプによって被覆することが行われている。この場合、二重、三重のテレスコピックパイプを片方の手で引き出す構成の場合には、危険性が残るので、例えばコイルスプリングの蓄勢力を利用して、前記テレスコピックパイプを伸張する構成も開発されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−126090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載の構成は、円筒形状の針ガードの内部に円筒形状の第1針ガードを軸方向へ移動可能に嵌入し、この第1針ガード内に第2針ガードを移動可能に嵌入してある。そして、前記針ガードと第1針ガードとの間及び第1針ガードと第2針ガードとの間に、それぞれ第1,第2のコイルスプリングが弾装してある。さらに、前記第2針ガードの先端部内側には、カテーテルに挿通した内針の内針ハブが嵌入してあり、この内針ハブと前記針ガードの底部との間には、内針を針ガード内に引き込むための引込み用コイルスプリングが張設してある。
【0004】
そして、前記第1,第2のコイルスプリングによって第1,第2の針ガードが伸張されること及び引込みコイルスプリングによって内針が引き込まれることを防止するためのロック機構が前記第2針ガードの先端部に設けてある。このロック機構によるロックを解除すると、第1,第2のコイルスプリングによって第1,第2の針ガードが移動伸張されると共に、引込みコイルスプリングによって内針が針ガード内に引き込まれる。そして、第1,第2の針ガードが伸張されると、係止機構によって、第1,第2の針ガードが戻らないように係止されて安全性の向上が図られている。
【0005】
前記構成においては、針ガードによって内針が被覆されるので安全性の向上を図ることができるものの、針ガードと第1ガードとの間及び第1ガードと第2ガードとの間にそれぞれコイルスプリングを弾装し、かつ内針ハブと針ガードとの間に引込み用のコイルスプリングを張設した構成であるから、全体的構成が複雑であり、かつその組立が厄介であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、カテーテルに挿通した内針を先端部に備えた針基に、前記内針の先端部を被覆可能な第1スリーブを摺動可能に備えると共に前記第1スリーブを前記内針の先端部方向へ付勢する弾性部材を、前記針基と第1スリーブとの間に備え、前記針基の基端部に固定した円筒形状の本体カバーと前記第1スリーブとの間に、前記内針の先端部方向へ前記第1スリーブと一体的に移動可能な第2スリーブを備え、前記弾性部材の付勢力に抗して前記本体カバーに対して前記第1スリーブを固定状態に保持するロック機構を備えると共に、当該ロック機構のロック状態を解除するためのロック解除手段を前記本体カバーに備え、かつ前記内針の先端部側へ移動した前記第1,第2のスリーブの戻りを防止するために、前記本体カバーと第2スリーブとの間及び第2スリーブと第1スリーブとの間にそれぞれ係止手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また前記留置針組立体において、前記弾性部材は、前記針基の先端部付近と前記第1スリーブの先端部に取付けたスリーブキャップとの間に弾装してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば弾性部材としてのコイルスプリングは1個でよいものであり、構成が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係る留置針組立体1は、カテーテル3に挿通した内針5を先端部に備えた針基7を備えている。この針基7は小径の中空パイプ部9の基部側に大径の基端部11を備えた構成であって透明の樹脂によりパイプ状に形成してあり、前記基端部11の開口部には、気体は透過可能であるが液体を透過することのない膜部材13が備えられている。
【0010】
前記中空パイプ9の外周には、前記内針5の先端部を被覆可能な第1スリーブ15が前記内針5の先端部方向へ移動可能(摺動可能)に嵌合してある。そして、前記針基7の前記基端部11に一端部を嵌合固定した円筒形状の本体カバー17の内周面と前記第1スリーブ15との間には、筒状の第2スリーブ19が前記内針5の先端部方向へ移動可能に嵌合して備えられている。前記第1スリーブ15を前記内針5の先端方向へ移動するために、前記第1スリーブ15の先端部に一体的に取付けたスリーブキャップ21と前記中空パイプ9の先端部付近に形成した段部23との間には、例えばコイルスプリング等のごとき弾性部材25が弾装してある。
【0011】
なお、前記スリーブキャップ21は第1スリーブ15に一体的に取付けてあるから、前記弾性部材25は、前記中空パイプ9と第1スリーブ15との間に弾装してあることに等しいものである。
【0012】
前記第1スリーブ15が内針5の先端部側へ移動するときに、第2スリーブ19も一体的に移動し、移動後の戻りを防止するための係止手段が備えられている。すなわち、前記第1スリーブ15の基端部側付近には、径方向へ弾性変形可能な係止片(係止爪)27が備えられていると共に係合凹部29が備えられている。そして、前記第2スリーブ19の長手方向の中間位置付近の内周面には、前記係合凹部29に係合する環状の係合凸部31が備えられている。
【0013】
したがって、前記針基7に対して第1スリーブ5が前記内針5の先端部方向へ移動するとき、前記係合凹部29と第2スリーブ19の係合凸部31が対応すると、前記係合凹部29と係合凸部31とが係合して、第1スリーブ15と第2スリーブ19は一体的に移動するものである。なお、前記係合凹部29と係合凸部31との係合状態の解除は極めて困難である。ところで、前記係合凹部29を第1スリーブ15に設けて係合凸部31を第2スリーブ19に設けるかは相対的なものであり、係合凸部を第1スリーブ15の外周面に設けて、係止片及び係合凹部を第2スリーブ19に設ける構成とすることも可能である。
【0014】
前記内針5の先端部側へ移動した第2スリーブ19が戻らないように係止するための係止手段が設けられている。より詳細には、前記第2スリーブ19の基端部側には前記係止片(係止爪)27と同様の係止片(係止爪)33及び前記係合凹部29と同様の係合凹部35が備えられている。そして、前記本体カバー17の先端部付近の内周面には、前記係合凸部31と同様の環状の係合凸部37が形成してある。
【0015】
したがって、前記第2スリーブ19の基端部付近が本体カバー17の先端部付近に移動すると、前記係合凹部35に前記係合凸部37が係合して、本体カバー17に対して第2スリーブ19を不動状態に係止するものである。よって、本体カバー17に対して第2スリーブ19の戻りが防止されるものである。
【0016】
使用前の状態において、前記弾性部材25の作用によって前記第1,第2のスリーブ15,19が前記内針5の先端部側へ移動しない固定状態に保持するためのロック機構が設けられている。より詳細には、前記第1スリーブ15の先端部付近の外周面に形成した係合凹部に、前記スリーブキャップ21の内周面に形成した凸部を係合することによって前記第1スリーブ15の先端部に一体的に取付けた前記スリーブキャップ21の一部には、径方向に弾性変形可能な係止爪39が設けてあり、この係止爪39の先端部が、前記本体カバー17の先端付近に形成した係止穴41が入り込み係止されている。
【0017】
そして、前記ロック機構によるロック状態を解除するために、ロック解除手段が前記本体カバー17に備えられている。より詳細には、前記本体カバー17の先端部には、スイッチ部材43が一体的に取付けてある。このスイッチ部材43には、前記係止穴41を貫通して前記係止爪39を内方向へ押圧可能な押圧片45が弾性変形可能に備えられている。
【0018】
したがって、前記スイッチ部材43における押圧片45を内方向へ押圧し、当該押圧片45の内方向へ屈曲した先端部でもって前記係止爪39を内方向へ押圧すると、係止穴41に対する係止爪39の係止が解除されるので、弾性部材25の付勢力によって第1スリーブ15が内針5の先端部方向へ移動される。そして、第1スリーブ15の係合凹部29が第2スリーブ19の係合凸部31に対応すると、上記係合凹部29に係合凸部31が係合し、第2スリーブ19も一体的に移動する。
【0019】
そして、第2スリーブ19の係合凹部35が本体カバー17の係合凸部37と対応すると、上記係合凹部35に係合凸部37が係合して、第2スリーブ19と本体カバー17とが一体化される。すなわち、図2に示すように、スリーブキャップ21が内針5の先端部を囲繞するように被覆した状態となり、元の状態に戻ることのないように、第1,第2スリーブ15,19が一体化されると共に第2スリーブ19と本体カバー7とが一体化されるものである。
【0020】
ところで、図1に示すごとき初期の組立状態は、組立順の一例として、例えば次のように組立てることにより容易に得ることができる。先ず、第2スリーブ19の基端部側から第1スリーブ15を挿入した状態のスリーブ組立体を作成する。そして、スイッチ部材43を先端部に取付けた本体カバー17の基端部側から本体カバー17内へ前記スリーブ組立体を挿入する。
【0021】
次に、先端部に内針5を備えた針基7を、前記スリーブ組立体の基端部側から第1スリーブ15内へ挿通し、前記本体カバー17の基端部の径が大きくなるように弾性変形せしめて嵌合することにより、本体カバー17と針基7の基端部11とを一体的に係合嵌合する。その後、前記内針15の先端側から前記針基7の段部23に弾性部材25が当接するようにセットした後、同方向からスリーブキャップ21を装着し、このスリーブキャップ21によって前記弾性部材25を圧縮する。そして、前記スリーブキャップ21に備えた係止爪39が本体カバー17の係止穴41に係止されるように本体カバー17の先端部側から挿入すると共に、前記スリーブキャップ21の内周面に備えた係合凸部を第1スリーブ5の外周面に備えた係合凹部に係合して、第1スリーブ15とスリーブキャップ21とを一体化する。その後、カテーテル3をセットすることにより、初期の組立状態となるものである。なお、この組立体は、全体が透明又は半透明に構成してある。
【0022】
上記構成において、カテーテル3に内針5を挿通した状態において内針5を血管に穿刺すると、血液が針基7内に流入するので、穿刺されたことを確認できる。その後、カテーテル3を留置して、カテーテル3から内針5を抜去し、スイッチ部材43における押圧片45を押して、本体カバー17の係止穴41とスリーブキャップ21の係止爪39とのロック状態(係止状態)を解除すると、弾性部材25の蓄勢力により、前述したように、第1,第2スリーブ15,19が内針5の先端部側へ移動され、内針5を被覆するので、安全性が確保されるものである。
【0023】
以上のごとき説明より理解されるように、前記構成によれば、留置針組立体の組立てを容易に行うことができると共に、1個の弾性部材でもって第1,第2スリーブ15,19を移動することができ、構成が簡単になるものであって、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る留置針組立体の初期状態を示す断面説明図である。
【図2】上記留置針組立体において、第1,第2のスリーブによって内針を被覆した状態を示す断面説明図である。
【図3】上記留置針組立体を分解した状態を示す分解説明図である。
【符号の説明】
【0025】
3 カテーテル
5 内針
7 針基
15 第1スリーブ
17 本体カバー
19 第2スリーブ
21 スリーブキャップ
25 弾性部材
27 係止片(係止爪)
29 係合凹部
31 係合凸部
33 係止片(係止爪)
35 係合凹部
37 係合凸部
39 係止爪
41 係止穴
43 スイッチ部材
45 押圧片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルに挿通した内針を先端部に備えた針基に、前記内針の先端部を被覆可能な第1スリーブを摺動可能に備えると共に前記第1スリーブを前記内針の先端部方向へ付勢する弾性部材を、前記針基と第1スリーブとの間に備え、前記針基の基端部に固定した円筒形状の本体カバーと前記第1スリーブとの間に、前記内針の先端部方向へ前記第1スリーブと一体的に移動可能な第2スリーブを備え、前記弾性部材の付勢力に抗して前記本体カバーに対して前記第1スリーブを固定状態に保持するロック機構を備えると共に、当該ロック機構のロック状態を解除するためのロック解除手段を前記本体カバーに備え、かつ前記内針の先端部側へ移動した前記第1,第2のスリーブの戻りを防止するために、前記本体カバーと第2スリーブとの間及び第2スリーブと第1スリーブとの間にそれぞれ係止手段を備えていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の留置針組立体において、前記弾性部材は、前記針基の先端部付近と前記第1スリーブの先端部に取付けたスリーブキャップとの間に弾装してあることを特徴とする留置針組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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