説明

畜産飼料用ドリル式コアサンプラー

【課題】サイレージその他の集積化、団塊化又は梱包してなる畜産飼料〔被検査畜産飼料〕の化学的成分組成や発酵品質などを検査するにあたり、コア採取筒を正逆どちら側へ回転させても先進駆動可能で穿孔掘削可能とする。
【解決手段】被検査畜産飼料から品質評価等の標本となる試料を採取するための畜産飼料用ドリル式コアサンプラーXであって、先端に正逆回転のいずれによっても穿孔掘削可能なコアビット11(好適には波刃111)を形設したコア採取筒1と、該コア採取筒1の後端に接続されサンプリング深度に相応する軸長にロッド形成した回転軸3と、該回転軸3に脱着可能に接続され正逆回転可能なドリル駆動源を具備してなり、被検査畜産飼料の外表面からコア採取筒1を正逆自在に回転させながら先進駆動して標本試料を筒内に掘り取るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア採取筒を用い、かつ、ドリル駆動して、筒内に標本試料を堀り取るようにしたドリル式コアサンプラーに係り、詳しくは、サイレージその他の集積化、団塊化又は梱包してなる畜産飼料〔以下、被検査畜産飼料。〕から品質評価等の標本となる試料を採取するための畜産飼料用ドリル式コアサンプラーに関する。ここで、被検査畜産飼料には、生飼料を貯蔵するサイレージの他に乾草などの粗飼料及び混合飼料(TMR)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、サイレージ用のドリル式コアサンプラーが知られているが(例えば、非特許文献1及び2を参照)、特許出願はみあたらない。
【非特許文献1】名久井忠,高木正季,野中和久,大下友子:バンカーサイロの簡易密度測定法の検討,日本草地学会誌,第43巻別号〔平成9年度日本草地学会大会〕,pp.282-283(1997)
【非特許文献2】名久井忠:コアサンプラーによるバンカーサイロの簡易密度測定,[online],社団法人畜産技術協会,[平成18年8月30日検索],インターネット<URL:http://jlta.lin.go.jp/chikusan/houkoku/h09_079.hyml>
【0003】
上掲のコアサンプラーでは、鉄製円筒(コア採取筒に相当)の先端の挿入部分に帯鋸刃(コアビットに相当)を回転方向と逆向きに取り付けている。
【0004】
この種のコアサンプラーをロールベールサイレージ(ラッピングサイレージに同じ。)などの繊維状の粗飼料のサンプリングに適用する場合、刃の回転が植物繊維に阻害され、穿孔掘削が進行困難となるという問題があった。このため、筒内に掘り取る飼料の詰込密度が低くなるという問題もあった。
【0005】
ところで、わが国の食料自給率を向上する施策の一環として、自給粗飼料の生産が推進され、これら粗飼料の貯蔵方法はラッピングサイレージ方式に変遷してきている。
【0006】
ラッピングサイレージは、圃場ごと、あるいはロールごとに化学的成分組成が異なり、特に発酵品質の変動が大きいため、広域流通や家畜への給与においては成分値や発酵品質の確認が不可欠である。
【0007】
今後、自給粗飼料の生産が拡大する局面では、より適正な試料採取による品質評価が必要であり、コアサンプラーの性能向上が要請される。また、サイレージの他に乾草などの粗飼料及び混合飼料(TMR)を検査する場合にも適用可能な汎用性も求められる。
【0008】
利用先として考慮される畜産や草地関連の研究所、大学、普及所、農業団体、飼料メーカー、各地の混合飼料(TMR)供給センターなどでの需要が期待でき、産業上も有益である。
【0009】
こうしたなかで本発明者は、飼養技術の研究開発に従事しており、ラッピングサイレージにおける精度の高いサンプリング手順を提案してきた(学会発表報告済;文献名省略)。本発明は継続的な研究開発の成果物のひとつである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、被検査畜産飼料の化学的成分組成や発酵品質などを検査するにあたり、コアビットの刃物形状を改変してコア採取筒を正逆どちら側へ回転させても穿孔掘削可能で先進駆動可能に構成するとともに、鋭利な刃面により、ビニールやトワインなどの包装用紐も切断可能で、目的位置における所定量のサンプリングを可能とする点にある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、被検査畜産飼料から効率的なサンプリングを可能とする改善された畜産飼料用ドリル式コアサンプラーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するために本発明は、コア採取筒を用い、かつ、ドリル駆動して、筒内に標本試料を堀り取るようにしたドリル式コアサンプラーにおいて、
サイレージその他の集積化、団塊化又は梱包してなる畜産飼料〔以下、被検査畜産飼料。〕から品質評価等の標本となる試料を採取するための畜産飼料用ドリル式コアサンプラーであって、
先端に正逆回転のいずれによっても穿孔掘削可能なコアビットを形設したコア採取筒と、該コア採取筒の後端に接続されサンプリング深度に相応する軸長にロッド形成した回転軸と、該回転軸に脱着可能に接続され正逆回転可能なドリル駆動源を具備してなり、
被検査畜産飼料の外表面から前記コア採取筒を正逆自在に回転させながら先進駆動して標本試料を筒内に掘り取るようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成よりなるものであり、これによれば被検査畜産飼料の化学的成分組成や発酵品質などを検査するにあたり、コア採取筒を正逆どちら側へ回転させても先進駆動可能で穿孔掘削可能である。また、鋭利なコアビットにより、ビニールやトワインなどの包装用紐も切断可能で、目的位置における所定量の効率的なサンプリングが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良形態は、上記構成のコアサンプラーにおいて、コアビットは、コア採取筒の先端周縁に左右対称形状の刃を周期的に反復形成している。
【0015】
また、コア採取筒には、筒壁にスリット、長孔その他の試料掻き出し用操作孔を形設している。
【0016】
また、コア採取筒は、その縦断面形状を後端方向にテーパ状、又は先端方向にフレア状に形成する場合がある。
【0017】
また、コア採取筒は、その後端を閉蓋又は有底形成して回転軸を衝合立設し、かつ、蓋面部材又は底面部材の一部に試料掻き出し用操作穴を形設する場合がある。
【0018】
さらに、コア採取筒は、閉蓋部材又は底面部材を脱着可能に螺合する場合がある。
【実施例1】
【0019】
本発明の一実施例である畜産飼料用ドリル式コアサンプラー〔以下、第1実施例コアサンプラーX。〕について添付図面を参照して以下説明する。
【0020】
図1は、第1実施例コアサンプラーXのコア採取筒1(回転軸3を含む)の構造を示す外観視説明図である。
【0021】
図2は、同じくコア採取筒1の先端の刃物構造(コアビット11)を示す説明図である。
【0022】
図3は、同じくコア採取筒1の後端の閉蓋構造及び回転軸3の取着構造を示す説明図である。
【0023】
図4は、同じくドリル駆動源4を示す外観視説明図である。
【0024】
図示するように、第1実施例コアサンプラーXは、先端に正逆回転のいずれによっても穿孔掘削可能なコアビット11を形設したコア採取筒1と、該コア採取筒1の後端に接続されサンプリング深度に相応する軸長にロッド形成した回転軸3と、該回転軸3に脱着可能に接続され正逆回転可能なドリル駆動源4を具備している。
【0025】
ここで、コアビット11は、コア採取筒1の先端周縁に左右対称形状の刃を周期的に反復形成している。好適には、図2に刃物構造を示すように、コア採取筒1の先端に波刃111(11) を周設したものである。
【0026】
また、コア採取筒1には、筒壁にスリット、長孔その他の試料掻き出し用操作孔12を形設している〔図1〕。
【0027】
また、コア採取筒1は、その後端を閉蓋又は有底形成して回転軸3を衝合立設し、かつ、蓋面部材又は底面部材2の一部に試料掻き出し用操作穴21を形設している。なお、閉蓋部材又は底面部材2は、筒端に脱着可能に螺合する場合がある〔図3〕。
【0028】
参考までに、各部の寸法を示して具体的な構造について以下説明しておく。
【0029】
コア採取筒1は、長さ250mm,直径75mm寸法のステンレス製の筒形中空容器である。
【0030】
コア採取筒1後端に閉蓋又は有底形成した蓋面部材又は底面部材2に衝合立設する回転軸3は14mm径の丸棒で長さは140mm である。
【0031】
蓋面部材又は底面部材2に形設した試料掻き出し用操作穴21は、回転軸3の両サイドに直径20mmの丸穴を形成したものである。
【0032】
コア採取筒1先端に周設した波刃111(11) は半円形状の波形を反復形成したものである。
【0033】
コア採取筒1の筒壁に形設した試料掻き出し用操作孔12は、横断面視4等配位置に軸方向に沿って幅0.5cm で長さ8.0cm のスリットを対向形成したものである。
【0034】
そして、図5に使用状態を示すように、被検査畜産飼料Aの外表面からコア採取筒1を正逆自在に回転させながら先進駆動して標本試料を筒内に掘り取るようにしている。
【実施例2】
【0035】
本発明の他の実施例である畜産飼料用ドリル式コアサンプラー〔以下、第2実施例コアサンプラーY。〕について添付図面を参照して以下説明する。
【0036】
図6は、第2実施例コアサンプラーYのコア採取筒の内面構造を示す縦断面視説明図である。
【0037】
図示するように、第2実施例コアサンプラーYにおけるコア採取筒1は、その縦断面形状を後端方向にテーパ状、又は先端方向にフレア状に形成したものである。この場合、筒内壁に複数の楔形リブ5を等配形成(対向設置)することが考慮される。
【0038】
また、別途、断面肉厚を漸減又は漸増変更した樹脂製内筒6を嵌挿し、所望の断面形状を満たすようにしてもよい。
【0039】
いずれにしても、この形状的、構造的変更は、詰込密度の低下を来すことなく試料を筒内に堀り取り、かつ、採取試料の取り出しを容易にするための改変例である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、サイレージその他の集積化、団塊化又は梱包してなる畜産飼料を被検査畜産飼料として、それらの外表面から品質評価等の標本となる試料を採取するために、正逆回転のいずれによっても穿孔掘削可能なコアビットを形設したコア採取筒を用いて、適正で効率的なコアサンプリングを可能とするものであり、利用先として考慮される畜産や草地関連の研究所、大学、普及所、農業団体、飼料メーカー、各地の混合飼料(TMR)供給センターなどで有用であり、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施例コアサンプラーのコア採取筒(回転軸を含む)の構造を示す外観視説明図である。
【図2】同じく、コア採取筒の先端の刃物構造(コアビット)を示す説明図である。
【図3】同じく、コア採取筒の後端の閉蓋構造及び回転軸の取着構造を示す説明図である。
【図4】同じく、ドリル駆動源を示す外観視説明図である。
【図5】同じく、使用状態を示す説明図である。
【図6】第2実施例コアサンプラーのコア採取筒の内面構造を示す縦断面視説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コア採取筒
11 コアビット
111 波刃
12 試料掻き出し用操作孔
2 蓋面部材又は底面部材
21 試料掻き出し用操作穴
3 回転軸
4 ドリル駆動源
5 楔形リブ
6 樹脂製内筒
A 被検査畜産飼料
X 第1実施例コアサンプラー
Y 第2実施例コアサンプラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア採取筒を用い、かつ、ドリル駆動して、筒内に標本試料を堀り取るようにしたドリル式コアサンプラーにおいて、
サイレージその他の集積化、団塊化又は梱包してなる畜産飼料〔以下、被検査畜産飼料。〕から品質評価等の標本となる試料を採取するための畜産飼料用ドリル式コアサンプラーであって、
先端に正逆回転のいずれによっても穿孔掘削可能なコアビットを形設したコア採取筒と、該コア採取筒の後端に接続されサンプリング深度に相応する軸長にロッド形成した回転軸と、該回転軸に脱着可能に接続され正逆回転可能なドリル駆動源を具備してなり、
被検査畜産飼料の外表面から前記コア採取筒を正逆自在に回転させながら先進駆動して標本試料を筒内に掘り取るようにしたことを特徴とする畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項2】
コアビットが、コア採取筒の先端周縁に左右対称形状の刃を周期的に反復形成したものである請求項1記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項3】
コアビットが、コア採取筒の先端に波刃を周設したものである請求項1又は2記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項4】
コア採取筒が、筒壁にスリット、長孔その他の試料掻き出し用操作孔を形設したものである請求項1乃至3のいずれか1項記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項5】
コア採取筒が、その縦断面形状を後端方向にテーパ状、又は先端方向にフレア状に形成したものである請求項1乃至4のいずれか1項記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項6】
コア採取筒が、その後端を閉蓋又は有底形成して回転軸を衝合立設し、かつ、蓋面部材又は底面部材の一部に試料掻き出し用操作穴を形設したものである請求項1乃至5のいずれか1項記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。
【請求項7】
コア採取筒が、閉蓋部材又は底面部材を脱着可能に螺合したものである請求項6記載の畜産飼料用ドリル式コアサンプラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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