説明

畝整形培土機

【課題】カバーへの土の付着を防止することができる畝整形培土機を提供する。
【解決手段】圃場を走行可能な走行装置1に取り付けられたロータ11で耕耘した土Tを略V字状に取り付けたカバー15に衝突させて畝Uに盛りつけるようにした畝整形培土機において、上記カバー15の土衝突部位A及びその周囲部位Bにわたってアメゴム製の板材23を配置し、その周囲をカバー15に対して固定し、中央部を浮かせた状態としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畝整形培土機に係り、特に、土を衝突させて畝に盛り付けるカバーへの土付着を防止したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畝整形培土機は、圃場を走行可能な走行装置に取り付けられたロータで耕耘した土を略V字状に取り付けたカバーに衝突させて畝に盛り付けるようにしたものであり、カバーには金属製の板材を使用している。また、土入れ作業機に関するものであるが、耕耘した土を側方へ排出するための案内経路内に弾性シートを取り付けたものが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−49701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーとして金属製の板材を付設した従来の畝整形培土機の場合には、耕耘して砕かれた土を衝突させる部位には土が付着しないが、その周囲の部位に土が付着してしまう。このため、耕耘した土をうまく畝に盛り付けることができず、畝の整形に支障を生じたり、作業機が重くなって移動が大変になるという問題がある。また、定期的に付着した土を剥がす作業を余儀なくされ、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
また、仮に土の衝突箇所に弾性シートを取り付けた場合でも、土の付着現象が起き、上記の問題を解消することはできないことが実験で確かめられている。本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、カバーへの土の付着を防止することができる畝整形培土機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく本発明による畝整形培土機は、走行装置に取り付けられたロータで耕耘した土を略V字状に取り付けたカバーに衝突させて畝に盛り付けるようにした畝整形培土機において、上記カバーの土衝突部位及びその周囲部位にわたってアメゴム製の板材を配置し、その周囲をカバーに対して固定し、中央部を浮かせた状態としたことを特徴とするものである。
【0007】
カバーの土衝突部位及びその周囲部位にわたってアメゴム製の板材を配置し、その周囲をカバーに対して固定した場合には、アメゴム製の板材の中央部が浮いた状態となっており、ここに衝突した土は、アメゴムの柔軟性や伸縮性に優れた特性と、衝突による凹陥変形及びその復元力により、付着することなく跳ね返され、畝側に飛ばされる。これにより、カバーへの土の付着を防止し、耕耘した土を確実に畝に盛り付けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の畝整形培土機によると、耕耘して砕かれた土を衝突させる部位及びその周囲の部位に土が付着しない。よって、耕耘した土を確実に畝に盛り付けることができ、畝の整形に支障を生じたり、作業機が重くなって移動が大変になるという問題を解消することかできる。また、付着した土を剥がす作業を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1乃至図6を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態の畝整形培土機は、走行装置としての耕耘機1の前部に支持体3を介して畝整形培土装置が取り付けられたものであり、エンジン等の回転駆動機構5により、走行駆動用の2つの回転車輪7が駆動され、且つ、回転駆動機構5に連結した回転軸9に取り付けたロータ11を回転駆動される。
【0010】
上記ロータ11は、チエーンケースに設けた回転軸9の両側に耕耘爪13を取り付けたものである。ロータ11は上記回転駆動機構5により回転駆動されて土を斜め上方へ飛ばして溝を形成するとともに、側方の畝に土を盛り付ける。この両耕耘爪13の両側部上方には耕耘して撥ね飛ばされた土を畝側に誘導する略V字状のカバー15が取り付けられている。
【0011】
また、上記ロータ11の後方には土押体17を具える。土押体17は上記回転駆動機構5により開閉揺動運動されて、盛り付けた土を片面から叩き付け、畝の法面として押し固める。また、ロータ11の前方には、支持体3から延長した支持棒19に車輪21が取り付けられている。このものは、走行する機体を安定支持するためのものであり、高さ調節機構が備えられている。
【0012】
上記カバー15は、図3に示すように、金属製のカバー本体の内面側にアメゴム製の板材23を配置し、その周囲を枠材25で保持し、ボルト・ナット27によりカバー15に支持して固定されている。アメゴム製の板材23の中央部は、1箇所をボルト29でカバー15に固定されている。これは、カバー15を支持するために機体から延長されたアームにカバー15を取り付けるためのものであり、これを利用してアメゴム製の板材23の中央部をカバー15に固定するものである。この結果、アメゴム製の板材23の中央部が土が衝突する部位Aとなり、その周囲部位Bとともに、カバー15から浮いた状態となるように形成されている。
【0013】
上記アメゴムは、加硫の程度が低いか、又は、加硫されていない天然ゴム(生ゴム)で、一般にホースやバンド等に使用されている材料である。アメゴム製板材23は、曲げ応力や耐候性はやや劣るが柔軟性や伸縮性に優れたものである。上記アメゴム製板材としては、一般に市販されている種々のアメゴム材を使用し得るが、例えば、株式会社十川ゴム製の天然アメゴムシートの品番C−330、硬度38(タイプAデュロメータにより計測「JIS K 6253準拠」)のものを使用している。
【0014】
以上の構成を基にその作用を説明する。先ず、上記畝整形培土機を走行させると、回転駆動機構5により回転駆動するロータ11が耕耘した土Tを両側上方に飛ばして略V字状に取り付けたカバー15に衝突させて畝Uに盛り付ける。この片側に盛り付けた土は、図2に示すように、土押体17の開閉揺動運動により叩かれ、1つの畝Uの法面を押し固める。
【0015】
上記ロータ11が耕耘した土Tを両側上方に飛ばして略V字状に取り付けたカバー15に衝突させた時に、土Tの一部が付着しようとする。しかし、図4〜図6に示すように、カバー15の土衝突部位A及びその周囲部位Bにわたってアメゴム製の板材23を配置し、その周囲をカバー15に対して枠材25で固定したから、アメゴム製の板材23の中央部は浮いた状態となっており、ここに衝突した土Tは、アメゴムの柔軟性や伸縮性に優れた特性により、アメゴム製の板材23の衝突による凹陥変形とその復元力で付着することなく跳ね返され、畝側に飛ばされる。これにより、耕耘した土Tが畝Uに盛り付けられる。
【0016】
次に、本発明に係る製品を他の構成のものと比較しながら土の付着度を試験した。上記カバーの土衝突部位A及びその周囲部位Bにわたってアメゴム製の板材23を配置し、その周囲をカバー15に対して枠材25で固定し、アメゴム製の板材23の中央部は浮いた状態としたものを使用した場合、100m走行させて畝Uを整形する作業を行ったが、カバー15への土の付着はまったく見られなかった。これに対して、比較例として、表面が平滑な合成ゴム製の板材を本発明と同様にカバーの内面に取り付けた場合は、100m走行させて畝Uを整形する作業後、カバーへの土の付着が見られた。
【0017】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。先ず、畝整形培土機によると、耕耘して砕かれた土を衝突させる部位及びその周囲の部位に土が付着しない。よって、耕耘した土を確実に畝に盛り付けることができ、畝の整形に支障を生じたり、作業機が重くなって移動が大変になるという問題を解消することかできる。また、付着した土を剥がす作業を省略することができる。
【0018】
次に、図7乃至図9を参照して本考案の第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態の場合には、上記第1の実施の形態におけるアメゴム製の板材の中央部をボルト・ナットでカバー側に固定した構成に代えて、アメゴム製の板材23の周囲を枠材25で固定し、中央部全体を浮かせたものである。アメゴム製の板材23は周囲が弛んだ状態でカバー15から浮き上がった状態で取り付けられている。その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであるので、同一部分には同一符合を付して示しその説明は省略する。
【0019】
上記第2の実施の形態の場合には、実験の結果、耕耘して砕かれた土を衝突させる部位及びその周囲の部位への土の付着は見られなかった。よって、耕耘した土を確実に畝に盛り付けることができ、畝の整形に支障を生じたり、作業機が重くなって移動が大変になるという問題を解消することかできる。また、付着した土を剥がす作業を省略することができる。
【0020】
尚、本発明は前記第1〜第2の実施の形態に限定されるものではない。第1の実施の形態の場合には、アメゴム製の板材の中央部を1箇所ボルト・ナットでカバー側に固定する構成としたが、複数箇所としても良い。また、カバーへアメゴム製の板材の周囲を固定する手段は、例えば接着によっても良い。
【0021】
また、畝整形培土機の構成も、ロータとこれで耕耘した土をカバーにより側方の畝に盛り付ける構成を備えたものであれば良く、上記土押体を省略したものでも良いし、他の土押体、例えば、円錐状の土押体を回転させて畝の法面を押圧するものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で畝整形培土機の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で畝整形培土機の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す平面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図でアメゴム製板材への土の衝突時の状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す図でカバーへのアメゴム製板材の取付状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 走行装置
11 ロータ
15 カバー
23 アメゴム製の板材
25 枠材
27 ボルト・ナット
U 畝
T 土
A カバーの土衝突部位
B 周囲部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に取り付けられたロータで耕耘した土を略V字状に取り付けたカバーに衝突させて畝に盛りつけるようにした畝整形培土機において、上記カバーの土衝突部位及びその周囲部位にわたってアメゴム製の板材を配置し、その周囲をカバーに対して固定し、中央部を浮かせた状態としたことを特徴とする畝整形培土機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−288292(P2006−288292A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114383(P2005−114383)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(590000101)
【Fターム(参考)】