説明

畦塗り機

【課題】 天場処理ロータの着脱が可能であり、畦塗り機を小型軽量化し、新畦の高さ調整をし易くし、前処理ロータに発生する振動を抑制する。
【解決手段】 畦塗り機は、旧畦Kの上部を切り崩す天場処理ロータ51、旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理ロータ61、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部70を備える。天場処理ロータ51と前処理ロータ61の回転中心軸53、62は平面視において整畦部70の回転中心軸71と交差する方向に配置される。天場処理ロータ51は、前処理ロータ61の進行方向前方に設けられて、前処理ロータ61の回転軸62の先端部に回動自在に連結された天場動力伝達ケース52を介して上下動自在であり、天場側動力伝達機構56を介して前処理ロータ61から動力伝達される。天場動力伝達ケース52は前処理ロータ61に対して着脱自在であり、この取り外しにより天場処理ロータ51の着脱が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田を区画する旧畦を畦塗り修復して新畦を形成する畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
旧畦を畦塗り修復する畦塗り作業は、旧畦の水漏れを防ぐとともに、旧畦の側面部の崩れた部分や旧畦の上部(以下、「天場部」と記す。)が踏圧されて凹んだ部分を平らに補修することを目的として行なわれるが、この畦塗り作業は労力を要することから、機械化された畦塗り機が開発されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の畦塗り機は、走行機体の後部に取り付けられる機枠に機枠進行方向に対して左右方向に移動自在な可動機枠が取り付けられ、この可動機枠に旧畦の天場部を切り崩す天場処理ロータ(文献内では前処理ロータリー6)、旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理ロータ(文献内では盛土ロータリー4)及び盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける畦塗り体をそれぞれ配設して構成されている。天場処理ロータ、前処理ロータ及び畦塗り体は、機枠の進行方向に対して左右方向に延びる回転軸を備える。
【0004】
可動機枠には、走行機体から伝達された動力を天場処理ロータ、前処理ロータ及び畦塗り体のそれぞれに伝達するための動力伝達機構を内蔵した第1から第4の伝動ケースが設けられている。第1の伝動ケースは可動機枠の前側に配置されて左右方向に延び、第2の伝動ケースは第1の伝動ケースの右側端部に連結されて前側に延びる。第3の伝動ケースは第2の伝動ケースの前側端部に連結されて前側に延びる。第4の伝動ケースは第1の伝動ケースの後方側に第1の伝動ケースに沿って配設されて左右方向に延びる。第3の伝動ケースの前側端部に天場処理ロータの回転軸が回転可能に連結され、第2の伝動ケースと第3の伝動ケースの連結部分に前処理ロータの回転軸が回転可能に連結されている。第4の伝動ケースの右側端部に畦塗り体の回転軸が回転可能に連結されている。
【0005】
一方、特許文献2に記載の畦塗り機は、天場処理ロータ及び前処理ロータの回転軸が旧畦の延びる方向に略平行になるように配置される点で特許文献1記載の畦塗り機と相違する。
【0006】
【特許文献1】特開2000−83407号公報
【特許文献2】特開2002−325502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、旧畦の天場部を切り崩す天場処理作業は、旧畦の状態によっては不要な場合がある。このような場合、天場処理ロータを取り外すことができれば、畦塗り機が軽量化されて取り扱いが便利となるので、天場処理作業の必要性に応じて天場処理ロータを着脱可能な畦塗り機が望まれている。
【0008】
また特許文献1記載の天場処理ロータは、第3の伝動ケースに内蔵され動力伝達機構と、この機構と天場処理ロータとの間に連結された他の動力伝達機構とを介して動力伝達されるようになっている。特許文献2記載の天場処理ロータは複数のチェーン伝動機構を介して動力伝達されるようになっている。つまり、従来の天場処理ロータは、複数の動力伝達機構を介して動力伝達される。このため、畦塗り機全体が大型化するとともに、重量が重くなるという問題がある。
【0009】
さらに特許文献1記載の天場処理ロータの回転軸は旧畦の延びる方向に対して左右方向に略直交する方向に延びているので、天場処理ロータに設けられた天場処理爪は旧畦の延びる方向と略平行に延びる。このため、天場処理爪によって削られた旧畦の天場部の土はその殆どが天場部上に残り、水田に落下するのは僅かである。このため、天場部には天場処理ロータによって削られた土と前処理ロータから供給される土が堆積することになり、畦塗り体によって整畦される新畦の高さは旧畦のそれより高くなり、新畦の高さを旧畦の高さと同程度や低くしたりする調整がし難いという問題がある。また、特許文献2記載の天場処理ロータは回転軸が旧畦の延びる方向に略平行に配置されるので、天場処理爪は天場処理ロータの進行方向に対して略直交する方向になる。このため、天場処理ロータが回転動しながら進行方向前側に移動した場合、天場処理爪の裏面側(天場処理ロータの進行方向前側)には、天場部の土との接触による大きな負荷が作用して、天場処理爪を介して天場処理ロータに振動を発生させるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、天場処理作業が不要なときに天場処理ロータを取り外すことができ、畦塗り機の小型軽量化が可能であり、新畦の高さ調整をし易くし、天場処理ロータに発生する振動を抑制可能な畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の畦塗り機は、走行機体に装着され、該走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置に配置され、旧畦の上部を切り崩す天場処理部、旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部及び盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部を備えた畦塗り機において、天場処理部は、その回転中心軸が平面視において整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びて設けられることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、天場処理部を、その回転中心軸が平面視において整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びるように設けることで、整畦部の回転中心軸を旧畦の延びる方向に対して直交する方向に配置すると、天場処理部の回転中心軸は旧畦の延びる方向に対して斜め方向に配置される。この状態で天場処理部による天場処理作業が行われると、天場処理部によって削られた旧畦上部の土の一部は、水田側に飛ばされて旧畦の際の水田内に落下する。このため、天場処理部によって削られた土の全てがそのまま天場部に堆積して残ることはなく、畦塗り体によって整畦される新畦の高さを旧畦のそれと略同じにしたり低くめにしたりするような、新畦の高さ調整をし易くすることができる。また天場処理部が進行方向前側に移動する場合、天場処理部の前進移動にともなう天場処理部の天場処理爪にかかる抵抗は、天場処理部の回転中心軸が旧畦の延びる方向と同方向にある場合と比較して、小さくなる。これは、回転中心軸から放射状に延びる天場処理爪の背面部(進行方向前側の天場処理爪の側面部)に受ける力のうちの直交成分の力が小さくなると考えられるからである。このため、天場処理爪を介して天場処理部に発生する振動を抑制することができる。
【0013】
また本発明は、前処理部の回転中心軸が、平面視において整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びて設けられ、天場処理部を、前処理部の進行方向前方に設けたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前処理部をその回転中心軸が整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びるように設け、天場処理部を前処理部の進行方向前方に設けることにより、天場処理部の回転中心軸と前処理部の回転中心軸とを略平行に配置すると、前処理部及び天場処理部の近接配置が可能となり、畦塗り機全体を小型化することができる。
【0015】
また本発明は、天場処理部が、前処理部に連結された動力伝達機構(例えば、実施形態における天場側動力伝達機構56)を介して動力伝達されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、天場処理部は前処理部に連結された動力伝達機構を介して動力伝達されることにより、前処理部に伝達された動力を、動力伝達機構を介して天場処理部に伝達することができる。このため、前処理部及び天場処理部を近接配置した状態で前処理部に伝達された動力を天場処理部に伝達することができる。その結果、動力伝達機構の長さを短縮化することができ、畦塗り機全体を軽量化することができる。
【0017】
さらに本発明は、天場処理部が前処理部に対して上下動可能に設けられることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、天場処理部を前処理部に対して上下動可能にすることで、天場処理部によって旧畦上部を削るときに、石等の固い物に天場処理部の天場処理爪が当接すると、天場処理部自体が上方へ移動して規制された天場処理爪の回転動作を許容する。このため、天場処理部による天場処理作業が中断する事態を未然に防止することができる。
【0019】
また本発明は、天場処理部が前処理部に対して着脱可能に設けられたことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、天場処理部を前処理部に対して着脱可能に設けることにより、天場処理作業が必要なときに天場処理部を前処理部に装着し、天場処理作業が不要なときに天場処理部を前処理部から脱着することができる。このため、畦塗り作業の内容に応じて天場処理部を装着したり脱着したりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係わる畦塗り機によれば、天場処理部及び前処理部を、その回転中心軸が平面視において整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びるようにして設け、天場処理部を前処理部の進行方向前方に設け、天場処理部を前処理部に対して着脱可能に設けることにより、畦塗り作業内容に応じて天場処理部を装着したり脱着したりすることができ、畦塗り機の小型軽量化が可能であり、新畦の高さ調整をし易くし、天場処理部に発生する振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係わる畦塗り機の好ましい実施の形態を図1から図4に基づいて説明する。本実施の形態は、走行機体90の前進動に応じて畦塗り作業を行なう畦塗り機を例にして説明する。なお、説明の都合上、図1(平面図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0023】
畦塗り機1は、図1及び図2(正面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体90の前進動に応じて進行する。畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸15aを備えた装着部10と、装着部10に設けられた旋回シリンダ11によって装着部10から左右方向に移動可能なオフセット機構20と、オフセット機構20の移動端側(後端側)に垂直方向に延びる回動支点Oを回動中心として水平方向に回動可能に配設されて入力軸15aから伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部30とを有してなる。
【0024】
装着部10は、左右方向に延びるヒッチフレーム12と、ヒッチフレーム12の前側に取り付けられて走行機体90の三点リンク連結機構に連結可能な連結フレーム13とを有してなる。ヒッチフレーム12の左右方向の中央下部にはギアボックス15が設けられ、このギアボックス15には前述した入力軸15aが設けられている。入力軸15aは、走行機体90のPTO軸(図示せず)からの動力を図示しない伝動軸を介して伝達されるようになっている。
【0025】
オフセット機構20は、前端側をヒッチフレーム12に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム21と、オフセットフレーム21の右側に沿って並設されて前端側がヒッチフレーム12の右側端部に回動自在に連結されたリンク部材22とを有してなる。リンク部材22の後端側は、オフセットフレーム21の後端部に回動自在に設けられた連結部材23に繋がる連結アーム部材24に回動自在に設けられている。オフセット機構20は、オフセットフレーム21、リンク部材22、ヒッチフレーム12及び連結アーム部材24によって平行リンク機構を形成している。
【0026】
オフセットフレーム21は、前述した旋回シリンダ11の伸縮動作により左右方向に揺動可能であり、オフセットフレーム21内に設けられた図示しない動力伝達機構を介してオフセットフレーム21の後端側に設けられた略垂直方向に延びる従動軸25を回転駆動させるようになっている。従動軸25の下部には作業部30の回動支点Oとなる回転駆動軸31が従動軸25と同軸上に連結されている。
【0027】
回転駆動軸31の外側にはこれを覆う回転軸ケース32が配設されている。回転軸ケース32はその上端部がオフセットフレーム21の後端下部に回動可能に連結され、回転軸ケース32の下端部が作業部30に固定された状態で取り付けられている。また回転軸ケース32の上部には、回転軸ケース32に対して回動自在な前述した連結部材23が設けられている。つまり、連結部材23は回転軸ケース32及び回転駆動軸31と非結合状態にあり、回転駆動軸31を回動支点Oとして回動自在である。この連結部材23に前述した連結アーム部材24が横方向に延びて繋がっている。
【0028】
作業部30は、連結部材23と回転軸ケース32との間に繋がれた連結機構40により回動支点Oに対して回動可能であるとともに、連結機構40によりオフセット機構20の揺動に対して作業部30の作業方向を示す作業方向軸O2が走行機体90の進行方向Aと平行になるように保持される。連結機構40は、連結部材23と伸縮シリンダ41とを有してなる。伸縮シリンダ41は連結アーム部材24の先端部に枢結された固定部42と回転軸ケース32の上部との間に枢結されている。このため、伸縮シリンダ41が伸縮動すると、作業部30は、連結アーム部材24を介して回動支点Oを回動中心として回動する。なお、作業部30の回動角度範囲は伸縮シリンダ41のストロークの大きさに応じて設定される。このため、大きさストロークを有した伸縮シリンダ41を用いた場合には、作業部30を走行機体90の左右両側の一方側から他方側に向きを反転させた状態で移動させることができる。
【0029】
連結機構40は、オフセット機構20の左右揺動に対して作業部30の作業方向軸O2が走行機体90の進行方向と平行になるように保持する。つまり、連結機構40は、作業部30の作業方向軸O2が前後方向に平行に延びた状態で伸縮シリンダ41の伸縮動作を規制すると、作業部30と連結部材23とを一体化させる。このため、作業部30と連結部材23とが一体化された状態で、オフセット機構20を左右方向に揺動させると、作業部30は、平行リンク機構を構成するオフセット機構20の連結アーム部材24に繋がる連結部材23を介して作業部30の作業方向軸O2が前後方向に平行に維持されたままで移動する。
【0030】
作業部30は、図3(平面図)に示すように、前側から天場処理部50、前処理部60及び整畦部70を配置して構成されている。天場処理部50は水田の周辺に沿って形成された旧畦の上部(天場部)を切り崩し、前処理部60は切り崩した土の土盛りを行ない、整畦部70は盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける機能を有する。
【0031】
整畦部70は、左右方向に延びて回転動自在に支持された回転中心軸71に取り付けられた多面体ドラム73と、多面体ドラム73の右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部75とを有してなる。整畦部70は整畦動力伝達ケース77を介して回転軸ケース32に連結されて支持される。整畦動力伝達ケース77内には図示しない整畦側動力伝達機構が内蔵され、この整畦側動力伝達機構は回転駆動軸31に繋がっており、回転駆動軸31からの動力が整畦側動力伝達機構を介して整畦部70に伝達されるようになっている。
【0032】
前処理部60は、回転動自在な前処理ロータ61を備える。前処理ロータ61は前処理動力伝達ケース64を介して回転軸ケース32に連結されて支持される。前処理動力伝達ケース64内には、回転駆動軸31からの動力を受けて回転駆動する前処理側駆動軸66を有した前処理側動力伝達機構65が内蔵されている。前処理側駆動軸66の先端部に前処理ロータ61が挿着されている。前処理ロータ61の回転中心軸62は前処理側駆動軸66と同軸上に配設されている。前処理ロータ61は、その回転中心軸62が平面視において整畦部70の回転中心軸71と交差する方向に延びて配置されている。このため、整畦部70の回転中心軸71を旧畦Kの延びる方向に対して略直交する方向に配置すると、前処理ロータ61の回転中心軸62は旧畦Kの延びる方向に対して斜め方向に配置されることになる。
【0033】
天場処理部50は、回転動自在な天場処理ロータ51を備える。天場処理ロータ51は天場動力伝達ケース52を介して前処理ロータ61に支持されている。天場処理ロータ51はその回転中心軸53に複数の天場処理爪54を放射状に取り付けてなる。天場処理爪54は基端側が真っ直ぐ延び、先端側が側方に屈曲して旧畦上部を削り取る。天場処理ロータ51は、その回転中心軸53が平面視において整畦部70の回転中心軸71と交差する方向に延びるように配置されている。このため、整畦部70の回転中心軸71を旧畦Kの延びる方向に対して直交する方向に配置すると、天場処理ロータ51の回転中心軸53は旧畦Kの延びる方向に対して斜め方向に配置されることになる。つまり、天場処理ロータ51の回転中心軸53は前処理ロータ61の回転中心軸62と略平行に配置される。このため、天場処理ロータ51と前処理ロータ61の回転軌跡も略平行になり、天場処理ロータ51及び前処理ロータ61を近接配置することが可能になる。その結果、天場処理ロータ51の回転中心軸53の後端側端部を前処理ロータ61に近接した位置に配置することができる。
【0034】
天場動力伝達ケース52は天場処理ロータ51の基端側に配置されて天場処理ロータ51の回転中心軸53に対して直交する方向に延びる。天場動力伝達ケース52の先端部は天場処理ロータ51を覆うカバー部55に固定され、基端部は前処理ロータ61の回転中心軸62の先端部に対して上下回動自在に取り付けられている。つまり天場動力伝達ケース52は基端部を回動中心として上下方向に回動自在である。このため、天場処理ロータ51は天場動力伝達ケース52の回動支点を回動中心とし上下方向に移動可能である。その結果、天場処理爪54が大きな石等に当接して天場処理ロータ51の回転動が規制されようとすると、天場処理ロータ51は上方へ移動して天場処理ロータ51の回転動を許容する。このため、畦塗り作業の中断を未然に防止することができ、畦塗り作業を連続して行うことができる。
【0035】
天場動力伝達ケース52内には天場側動力伝達機構56が内蔵されている。この天場側動力伝達機構56は、チェーン伝動式であり、前処理ロータ61の回転中心軸62からの動力を天場処理ロータ51に伝達する。さらに詳細には、天場側動力伝達機構56は、天場動力伝達ケース52の基端側に回転動自在に支持された第1スプロケット57と、天場動力伝達ケース52の先端側に回転動自在に支持された第2スプロケット58と、これらのスプロケット間に掛け渡されたチェーン59とを有してなる。
【0036】
第1スプロケット57を取り付けた回転軸57aは、その基端部が前処理ロータ61の回転中心軸62の先端部に接合した状態でボルト等の締結手段67によって前処理ロータ61に着脱可能に固定される。このため、締結手段67の締結を解いて回転軸57aを前処理ロータ61から取り外すことで、天場動力伝達ケース52及び天場処理ロータ51を含んだ組み立て部品を前処理ロータ61から脱着することができる。このため、天場処理作業が必要な場合に天場処理ロータ51を前処理ロータ61に装着したり、天場処理作業が不要なときに天場処理ロータ51を前処理ロータ61から脱着したりすることができる。つまり、畦塗り作業の内容に応じて天場処理ロータ51を装着し及び脱着することができる。
【0037】
ここで、天場処理ロータ51は前処理ロータ61に近接した位置に配置されているため、作業部30全体の前後方向長さを短くすることができ、作業部30の小型化を図ることができる。また、天場処理ロータ51及び前処理ロータ61の各回転中心軸53、62間の距離は短いので、天場動力伝達ケース52及び天場側動力伝達機構56の長さを短くすることがでる。その結果として作業部30の重量を軽くすることができる。なお、天場側動力伝達機構56はギヤ伝動式にしてもよい。
【0038】
天場処理ロータ51は、図1及び図2に示すように、前処理ロータ61を覆うカバー部63と天場処理ロータ51を覆うカバー部55との間に回動自在に取り付けられた押圧部80によって下方に付勢されている。押圧部80はカバー55、63部間に回動自在に取り付けられた支持部材81と支持部材81の下端部に取り付けられたばね部材82とを有してなる。ばね部材82は圧縮された状態で支持部材81に取り付けられて天場処理ロータ51を下方に付勢する。このため、天場処理ロータ51の天場処理爪54が石等に当接して天場処理ロータ51が上方へ移動したときの衝撃をばね部材82によって吸収することができる。
【0039】
次に、畦塗り機1の動作について水田Sの一辺Saを畦塗りする場合を例にして説明する。図1に示すように、先ず、走行機体90を水田Sの一辺Saに沿うように配置する。そして、作業部30の作業方向軸O2が走行機体90の進行方向と平行になるように、伸縮シリンダ41を伸縮動させ、そして伸縮シリンダ41の伸縮動作を規制する。その結果、作業部30は図2に示す連結部材23及び回転軸ケース32と一体化されて、平行リンク機構をなすオフセット機構20の右側揺動によって作業部30の作業方向が前後方向に平行に保持されながら、作業部30を走行機体前進走行により畦塗り作業が可能な右側オフセット作業位置に移動させることができる。
【0040】
そして、走行機体90を前進動させるとともに作業部30を駆動させる。作業部30が前側に進行しながら駆動すると、天場処理部50が水田Sの一辺Saの旧畦上部(天場部)を切り崩し、前処理部60が切り崩した土の土盛りを行ない、整畦部70が盛られた土を切り崩された旧畦K上に塗り付けて、水田Sの一辺Saが連続的に畦塗りされる。
【0041】
ここで、天場処理ロータ51の天場処理爪54の前側部分(裏側部分)には、走行機体90の前進動に伴って旧畦の上部の土を介して後方側へ向く力Fが作用するが、天場処理爪54は斜め方向に傾いているので、その力Fの平行成分Fxは天場処理爪54の延びる方向に沿って作用して、天場処理爪54に直交する方向の直交成分力Fyを小さくする。つまり、天場処理爪54に直交する力を小さくすることができる。このため、天場処理爪54に作用する力Fyによって天場処理ロータ51に発生する振動を抑制することができる。なお、力Fyの大きさは、天場処理ロータ51の回転中心軸53の延びる方向と旧畦Kの延びる方向とのなす角度θが大きく成る程小さくなる。なお、実施例では、角度θを25°程度に設定しているが、天場処理ロータ51、前処理ロータ61、多面体ドラム73等の回転径や大きさによって、最適な角度を設定すればよい。
【0042】
また天場処理ロータ51はその回転中心軸53が旧畦Kの延びる方向に対して斜め方向に向いて配置されているので、図4(断面図)に示すように、天場処理ロータ51によって削られた旧畦Kの上部の土の一部は水田S側に向かって飛ばされて、旧畦Kの際の水田S内に落下する。このため、天場処理ロータ51によって削られた土の全てがそのまま旧畦Kの上部に堆積して残ることはなく、前処理ロータ61によって削られた土の一部が旧畦上部に供給されても、旧畦Kの上部に供給される土の量を旧畦上部が削られる前の旧畦上部を形成する土の量よりも多くなることはない。このため、整畦部70によって整畦された新畦Ksの高さを旧畦Kのそれと略同じにしたり低くめにしたりするような、新畦Ksの高さ調整をし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の平面図を示す。
【図2】この畦塗り機の正面図を示す。
【図3】この畦塗り機に搭載された作業部の平面図を示す。
【図4】作業部による畦塗り作業を模式的に表わした畦の断面図を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 畦塗り機
50 天場処理部
53、71 回転中心軸
56 天場側動力伝達機構(動力伝達機構)
60 前処理部
70 整畦部
90 走行機体
K 旧畦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着され、該走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置に配置され、旧畦の上部を切り崩す天場処理部、前記旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部及び盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部を備えた畦塗り機において、
前記天場処理部は、その回転中心軸が平面視において前記整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びて設けられることを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
前記前処理部の回転中心軸は、平面視において前記整畦部の回転中心軸と交差する方向に延びて設けられ、
前記天場処理部を、前記前処理部の進行方向前方に設けたことを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記天場処理部は、前記前処理部に連結された動力伝達機構を介して動力伝達されることを特徴とする請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記天場処理部は、前記前処理部に対して上下動可能に設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の畦塗り機。
【請求項5】
前記天場処理部は、前記前処理部に対して着脱可能に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−6259(P2006−6259A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190955(P2004−190955)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】