説明

異常判定装置

【課題】センサのゼロ点学習を行なうものにおいて、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときの異常判定の精度の低下を抑制する。
【解決手段】ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、電流検出センサからの電流Ibの絶対値を電流検出センサの公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)としての閾値Iref2と比較し(S140)、電流Ibの絶対値が閾値Iref2以下のときには異常は生じていないと判断し、電流Ibの絶対値が閾値Iref2を超えているときには異常が生じていると判断する。これにより、ゼロ点学習が正常に行なわれていないにも拘わらずにゼロ点学習に基づく補正を施した電流Ibを用いることにより、誤差となるオフセット電流αに公差の大きさβが重畳的に作用することに基づく異常判定の精度の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置に関し、詳しくは、測定対象をセンシングするセンサからの検出値に対してゼロ点学習に基づく補正を施して得られる補正値を用いて制御対象を制御するシステムにおける異常を判定する異常判定装置や、バッテリと、バッテリを充電する充電器と、充電器を制御する充電器制御手段と、バッテリの端子に接続された電力ラインから電力供給を受けて駆動する電力消費機器と、バッテリの端子に流れる電流を検出する電流検出センサと、電力消費機器を駆動制御する駆動制御手段と、バッテリの充放電が行なわれないようにした状態のときに電流検出センサからの検出値に基づいて電流検出センサのゼロ点学習を行なうゼロ点学習手段と、を備える駆動システムにおける異常を判定する異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、車両の走行開始後に、車両のイグニッションスイッチがオンであり且つモータが駆動しておらず、更に補機システムの消費電流が微小であるとみなせるときに電流センサにより検出される検出値をオフセット電流とし、車両が走行している最中に電流センサにより検出される検出値からオフセット電流を引き算することにより、オフセット補正後の充放電電流値を算出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、上述した手法によってオフセット電流を得ることにより、車両の走行開始後に、温度ドリフト等によってオフセット電流に変動が生じても、適正なオフセット電流を得ることができるため、正しくオフセット補正を行なうことができると、している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−78377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の車両において、電流が流れていない状態としたときに電流センサからの検出値に基づいて異常を判定する場合、オフセット電流が正常に得られているか否かにより異常判定を適正に行なうことができない場合が生じる。オフセット電流が正常に得られているときには、オフセット補正後の電流値の絶対値が異常判定のために予め定めた閾値を超えているか否かにより異常判定することができるが、オフセット電流が正常に得られていないときには、オフセット補正後の電流値の絶対値が閾値を超えているからといって異常と判定することができない。この場合、電流センサの公差と適正でないオフセット電流とが重畳的に作用することを考えると、オフセット電流が正常に得られていないときの閾値はオフセット電流の大きさと公差の大きさとの和の値となり、異常判定の精度が低くなってしまう。
【0005】
本発明の異常判定装置は、センサのゼロ点学習を行なうものにおいて、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときの異常判定の精度の低下を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常判定装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の異常判定装置は、
測定対象をセンシングするセンサからの検出値に対してゼロ点学習に基づく補正を施して得られる補正値を用いて制御対象を制御するシステムにおける異常を判定する異常判定装置において、
システムを前記測定対象が予め定めた所定値となるようにした状態で、前記ゼロ点学習が正常に行なわれているときには前記補正値が前記所定値から前記センサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定し、前記ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには前記検出値が前記所定値から前記センサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の第1の異常判定装置では、システムを測定対象が予め定めた所定値となるようにした状態で、ゼロ点学習が正常に行なわれているときにはゼロ点学習に基づく補正を施して得られる補正値が所定値からセンサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する。即ち、補正値が所定値を中心とした第1の閾値の範囲外か否かで異常の有無を判定するのである。これは、ゼロ点学習が正常に行なわれているため、第1の閾値はセンサの公差の大きさより小さい値を用いることができることに基づく。これにより、高い精度で異常判定を行なうことができる。一方、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときにはセンサからの検出値が所定値からセンサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する。即ち、ゼロ点学習に基づく補正を施していない検出値が所定値を中心とした第2の閾値(センサの公差)の範囲外か否かで異常の有無を判定するのである。これにより、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときにゼロ点学習に基づく補正を施すことによる補正値の大きさとセンサの公差の大きさとが重畳的に作用するために異常判定の閾値の大きさが大きくなることにより異常判定の精度が低下するのを抑制することができる。ここで、所定値としては、如何なる値であってもよく、値0としてのよい。また、異常は、センサの異常とシステムの異常の一方または双方が含まれる。即ち、システムは正常であるがセンサに異常が生じているために異常判定される場合と、センサは正常であるがシステムに異常が生じているために異常判定される場合と、システムとセンサとの双方に異常が生じているために異常判定される場合とが含まれる。
【0009】
本発明の第2の異常判定装置は、
バッテリと、前記バッテリを充電する充電器と、前記充電器を制御する充電器制御手段と、前記バッテリの端子に接続された電力ラインから電力供給を受けて駆動する電力消費機器と、前記バッテリの端子に流れる電流を検出する電流検出センサと、前記電力消費機器を駆動制御する駆動制御手段と、前記バッテリの充放電が行なわれれないようにした状態のときに前記電流検出センサからの検出値に基づいて該電流検出センサのゼロ点学習を行なうゼロ点学習手段と、を備える駆動システムにおける異常を判定する異常判定装置において、
予め定めた所定電流値により前記バッテリの充放電が行なわれているようにした状態で、前記ゼロ点学習が正常に行なわれているときには前記電流検出センサからの検出値に対してゼロ点学習によるゼロ点補正を行なった補正値が前記所定電流値から前記電流検出センサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定し、前記ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには前記電流検出センサからの検出値が前記所定電流値から前記電流検出センサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する、
ことを特徴とする。
【0010】
この本発明の第2の異常判定装置では、予め定めた所定電流値によりバッテリの充放電が行なわれているようにした状態で、ゼロ点学習が正常に行なわれているときには電流検出センサからの検出値に対してゼロ点学習によるゼロ点補正を行なった補正値が所定電流値から電流検出センサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する。即ち、ゼロ点学習による補正値が所定電流値を中心とした第1の閾値の範囲外であるか否かで異常の有無を判定するのである。これは、ゼロ点学習が正常に行なわれているため、第1の閾値は電流検出センサの公差の大きさより小さい値を用いることができることに基づく。これにより、高い精度で異常判定を行なうことができる。一方、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、電流検出センサからの検出値が所定電流値から電流検出センサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する。即ち、ゼロ点学習に基づく補正を施していない検出値が所定電流値を中心とした第2の閾値(電流検出センサの公差)の範囲外であるか否かにより異常の有無を判定するのである。これにより、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときにゼロ点学習に基づく補正を施すことによって補正値の大きさと電流検出センサの公差の大きさとが重畳的に作用するために異常判定の閾値の大きさが大きくなることにより異常判定の精度が低下するのを抑制することができる。ここで、所定電流値としては、如何なる値を用いてもよく、値0を用いるものとしてもよい。また、異常は、電流検出センサの異常と駆動システムの異常の一方または双方が含まれる。即ち、駆動システムは正常であるが電流検出センサに異常が生じているために異常判定される場合と、電流検出センサは正常であるが駆動システムに異常が生じているために異常判定される場合と、駆動システムと電流検出センサとの双方に異常が生じているために異常判定される場合とが含まれる。
【0011】
こうした本発明の第2の異常判定装置において、前記所定電流値はゼロであり、前記充電器による充電が行なわれておらず且つ前記電力消費機器が駆動していない状態を前記所定電流値により前記バッテリの充放電が行なわれているようにした状態として異常を判定する、ことを特徴とするものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例としての異常判定装置が組み込まれた駆動システム20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】駆動用ECU38により実行される異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】ゼロ点学習が正常に行なわれたときの異常判定用の閾値Iref1と実施例の閾値Iref2と比較例の閾値とを模式的に比較する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例としての異常判定装置が組み込まれた駆動システム20の構成の概略を示す構成図である。実施例の駆動システム20は、図示するように、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ30と、バッテリ30の端子に接続された電力ライン32に取り付けられてバッテリ30を充放電する電流Ibを検出する電流検出センサ36と、電力ライン32からの電力により駆動する機器34と、電流検出センサ36からの電流Ibを入力すると共に機器34を駆動制御する駆動用電子制御ユニット(以下、「駆動用ECU」という)38と、電力ライン32に接続されてバッテリ30を充電する充電器40と、充電器40を駆動制御する充電器用制御ユニット(以下、「充電器用ECU」という)48と、を備える。ここで、異常判定装置としては、駆動用ECU38が該当する。
【0015】
次に、こうして構成された実施例の駆動システム20の動作、特に電流検出センサ36の異常や駆動システム20の異常を検出する際の動作について説明する。図2は、駆動用ECU38により実行される異常判定処理の一例を示すフローチャートである。この異常判定処理は、充電器40によるバッテリ30の充電が行なわれておらず、且つ、機器34が駆動していない状態のときに実行される。この状態は、充電器用ECU48により充電器40が停止するよう制御すると共に、駆動用ECU38により機器34が停止するよう制御することにより実現することができる。
【0016】
異常判定処理が実行されると、駆動用ECU38は、まず、電流検出センサ36からの電流Ibを入力し(ステップS100)、電流検出センサ36のゼロ点学習が正常に行なわれているか否かを判定する処理を実行する(ステップS110)。ここで、電流センサ36のゼロ点学習は、例えば、駆動用ECU38により、充電器40によるバッテリ30の充電が行なわれておらず、且つ、機器34が駆動されていない状態とし、この状態のときに電流検出センサ36からの電流Ibが所定時間(例えば、1秒や2秒或いは数秒など)に亘って安定して一定値を示したときに、その値(電流Ib)をオフセット電流αとして記憶することにより行なうことができる。このようにオフセット電流αを記憶することができたときにはゼロ点学習が正常に行なわれていると判定し、オフセット電流αを記憶することができないときにはゼロ点学習が正常に行なわれていないと判定することができる。
【0017】
ゼロ点学習が正常に行なわれているときには、ゼロ点学習により記憶したオフセット電流αを電流Ibから減じて補正後の電流Ibとして計算し(ステップS120)、計算した電流Ibの絶対値と閾値Iref1とを比較する(ステップS150)。そして、補正後の電流Ibの絶対値が閾値Iref1以下のときには異常は生じていないと判断して本処理を終了し、補正後の電流Ibの絶対値が閾値Iref1を超えているときには異常が生じていると判断して異常を出力し(ステップS150)、本処理を終了する。ここで、閾値Iref1は、電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)より小さな値として実験などにより予め定めておくことができる。このように、閾値Iref1を電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)より小さな値とすることができるのは、ゼロ点学習が正常に行なわれていることにより、ゼロ点学習に基づく補正後の電流Ibが補正前の値に比してより確からしいことに基づく。また、異常としては、駆動システム20には異常は生じていないが電流検出センサ36に異常が生じていることによる異常や、電流検出センサ36には異常は生じていないが駆動システム20に異常が生じていることによる異常、駆動システム20に異常が生じていると共に電流検出センサ36にも異常が生じていることによる異常が含まれる。
【0018】
ステップS110でゼロ点学習が正常に行なわれていないと判定されたときには、電流検出センサ30からの電流Ibの絶対値を閾値Iref2と比較し(ステップS140)、電流Ibの絶対値が閾値Iref2以下のときには異常は生じていないと判断して、本処理を終了し、電流Ibの絶対値が閾値Iref2を超えているときには異常が生じていると判断して異常を出力し(ステップS150)、本処理を終了する。ここで、閾値Iref2は、電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)である。このように、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、電流検出センサ30からの電流Ibと電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)とにより異常を判定することにより、ゼロ点学習が正常に行なわれていないにも拘わらずにゼロ点学習に基づく補正を施した電流Ibを用いることにより、誤差となるオフセット電流αに公差の大きさβが重畳的に作用することに基づく異常判定の精度の低下を抑制することができる。
【0019】
図3は、ゼロ点学習が正常に行なわれたときの異常判定用の閾値Iref1と実施例の閾値Iref2と比較例の閾値とを模式的に比較する説明図である。図中、中央の水平線が電流値として値0を示し、中央の「学習正常時」がゼロ点学習が正常に行なわれたときの異常判定用の閾値Iref1を示し、左側の「学習非正常時実施例」がゼロ点学習が正常に行なわれていないときの実施例の異常判定用の閾値Iref2を示し、右側の「学習非正常時比較例」がゼロ点学習が正常に行なわれていないにも拘わらずにゼロ点学習に基づく補正を施した電流Ibを用いたときの閾値を示す。比較例では、ゼロ点学習が電流検出センサ30の公差の範囲内で行なわれることを考慮すると、ゼロ点学習が正常に行なわれなかったことによる誤差(公差の大きさβ)とセンサの公差の大きさβとが重畳的に作用するため、異常判定用の閾値は、公差の大きさの2倍(|2β|)、即ち、閾値Iref2の2倍を用いる必要がある。一方、実施例では、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、ゼロ点学習に基づく補正を施した電流Ibではなく、電流検出センサ30からの電流Ibを直接用いるため、異常判定の閾値は、電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)、即ち、閾値Iref2を用いることができる。このため、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときの異常判定の精度を比較例のように低下するのを抑制することができる。
【0020】
以上説明した実施例の異常判定装置によれば、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、電流検出センサ30からの電流Ibの絶対値を電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)としての閾値Iref2と比較し、電流Ibの絶対値が閾値Iref2以下のときには異常は生じていないと判断し、電流Ibの絶対値が閾値Iref2を超えているときには異常が生じていると判断することにより、ゼロ点学習が正常に行なわれていないにも拘わらずにゼロ点学習に基づく補正を施した電流Ibを用いることにより、ゼロ点学習による誤差(公差の大きさβ)とセンサの公差の大きさβとが重畳的に作用することに基づく異常判定の精度の低下を抑制することができる。もとより、ゼロ点学習が正常に行なわれているときには、ゼロ点学習により記憶したオフセット電流αを電流Ibから減じて得られる補正後の電流Ibの絶対値と電流検出センサ36の公差(例えば、±β)の大きさ(|β|)より小さな値として設定された閾値Iref1とを比較し、補正後の電流Ibの絶対値が閾値Iref1以下のときには異常は生じていないと判断し、補正後の電流Ibの絶対値が閾値Iref1を超えているときには異常が生じていると判断することにより、異常判定の精度を高くすることができる。
【0021】
実施例の異常判定装置では、電流センサ36のゼロ点学習は、充電器40によるバッテリ30の充電が行なわれておらず、且つ、機器34が駆動されていない状態とし、この状態のときに電流検出センサ36からの電流Ibが所定時間に亘って安定して一定値を示したときに、その値をオフセット電流αとして記憶することにより行なうものとしたが、この手法に限定されるものではない。
【0022】
実施例の異常判定装置では、充電器40によるバッテリ30の充電が行なわれておらず、且つ、機器34が駆動されていない状態のときに、バッテリ30に流れる電流が値0の状態であるとして異常判定するものとしたが、予め定めた所定電流値によりバッテリ30が充放電されている状態として異常判定するものとしてもよい。この場合、ゼロ点学習が正常に行なわれているときには、ゼロ点学習により記憶したオフセット電流αを電流Ibから減じて得られる補正後の電流Ibが所定電流値を中心とした閾値Iref1の範囲外か否かを判定し、補正後の電流Ibが所定電流値を中心とした閾値Iref1の範囲内のときには異常は生じていないと判定し、補正後の電流Ibが所定電流値を中心とした閾値Iref1の範囲外のときには異常が生じていると判定し、ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには、電流検出センサ30からの電流Ibが所定電流値を中心とする閾値Iref2の範囲外か否かを判定し、電流Ibが所定電流値を中心とする閾値Iref2の範囲内のときには異常は生じていないと判定し、電流Ibが所定電流値を中心とする閾値Iref2の範囲外のときには異常が生じていると判定するものとしてもよい。ここで、予め定めた所定電流値によりバッテリ30が充放電されている状態としては、極めて誤差の小さい外部電源からの電力を用いた定電流値によるプラネタリギヤ30の充電を行なったときや、機器34を極めて安定した定電流値によって駆動したときに、バッテリ30の出力端子に高精度の電流検出センサを取り付けてバッテリ30を定電流値により充放電したとき、などを考えることができる。
【0023】
実施例の異常判定装置では、電流検出センサ36からの電流Ibに対してゼロ点学習を行なうと共にゼロ点学習に基づく補正を施すものに対してゼロ点学習が正常に行なわれたか否かにより補正後の電流Ibと電流検出センサ36の公差の大きさより小さい閾値Iref1との比較か電流検出センサ36からの電流Ibと電流検出センサ36の公差の大きさとしての閾値Iref2との比較かにより異常を判定するものとしたが、電流検出センサ以外のセンサ、例えば、電圧センサや温度センサなどの種々のセンサに対してゼロ点学習を行なうと共にゼロ点学習に基づく補正を施すものに対してゼロ点学習が正常に行なわれたか否かによりゼロ点学習に基づく補正を施した補正値とセンサの公差の大きさより小さい閾値との比較かセンサからの検出値とセンサの公差の大きさとしての閾値との比較かにより異常を判定するものとしてもよい。
【0024】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例と本発明の第1の異常判定装置では、電流Ibが「測定対象」に相当し、電流検出センサ36が「センサ」に相当し、駆動システム20が「システム」に相当し、図2の異常判定処理を実行する駆動用ECU38が「異常判定装置」に相当する。実施例と本発明の第2の異常判定装置では、バッテリ30が「バッテリ」に相当し、充電器40が「充電器」に相当し、充電器用ECU48が「充電器制御手段」に相当し、機器34が「電力消費機器」に相当し、電流検出センサ36が「電流検出センサ」に相当し、駆動用ECU38が「駆動制御手段」に相当し、充電器40によるバッテリ30の充電が行なわれておらず、且つ、機器34が駆動されていない状態とし、この状態のときに電流検出センサ36からの電流Ibが所定時間(例えば、1秒や2秒或いは数秒など)に亘って安定して一定値を示したときに、その値(電流Ib)をオフセット電流αとして記憶する駆動用ECU38が「ゼロ点学習手段」に相当し、図2の異常判定処理を実行する駆動用ECU38が「異常判定装置」に相当する。
【0025】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0026】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、異常判定装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
20 駆動システム、30 バッテリ、32 電力ライン、34 機器、36 電流検出センサ、38 駆動用電子制御ユニット(駆動用ECU)、40 充電器、48 充電器用電子制御ユニット(充電器用ECU)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象をセンシングするセンサからの検出値に対してゼロ点学習に基づく補正を施して得られる補正値を用いて制御対象を制御するシステムにおける異常を判定する異常判定装置において、
システムを前記測定対象が予め定めた所定値となるようにした状態で、前記ゼロ点学習が正常に行なわれているときには前記補正値が前記所定値から前記センサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定し、前記ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには前記検出値が前記所定値から前記センサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する、
ことを特徴とする異常判定装置。
【請求項2】
バッテリと、前記バッテリを充電する充電器と、前記充電器を制御する充電器制御手段と、前記バッテリの端子に接続された電力ラインから電力供給を受けて駆動する電力消費機器と、前記バッテリの端子に流れる電流を検出する電流検出センサと、前記電力消費機器を駆動制御する駆動制御手段と、前記バッテリの充放電が行なわれれないようにした状態のときに前記電流検出センサからの検出値に基づいて該電流検出センサのゼロ点学習を行なうゼロ点学習手段と、を備える駆動システムにおける異常を判定する異常判定装置において、
予め定めた所定電流値により前記バッテリの充放電が行なわれているようにした状態で、前記ゼロ点学習が正常に行なわれているときには前記電流検出センサからの検出値に対してゼロ点学習によるゼロ点補正を行なった補正値が前記所定電流値から前記電流検出センサの公差の大きさより小さい第1の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定し、前記ゼロ点学習が正常に行なわれていないときには前記電流検出センサからの検出値が前記所定電流値から前記電流検出センサの公差の大きさとしての第2の閾値の範囲を超えているときに異常が生じていると判定する、
ことを特徴とする異常判定装置。
【請求項3】
請求項2記載の異常判定装置であって、
前記所定電流値は、ゼロであり、
前記充電器による充電が行なわれておらず且つ前記電力消費機器が駆動していない状態を前記所定電流値により前記バッテリの充放電が行なわれているようにした状態として異常を判定する、
ことを特徴とする異常判定装置。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−92401(P2013−92401A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233317(P2011−233317)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】