説明

異常検出支援装置、異常検出支援方法、及び異常検出支援プログラム

【課題】所定の空間において読取対象として配置されている記録媒体の異常の検出を適切に支援すること。
【解決手段】異常検出支援装置は、移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手段と、前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手段と、前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出支援装置、異常検出支援方法、及び異常検出支援プログラムに関し、特に、所定の空間に配置されたICタグ等の記録媒体の異常の検出を支援する異常検出支援装置、異常検出支援方法、及び異常検出支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグを倉庫の床面に配置し、フォークリフトの下面に設置されたRFIDアンテナによって読み取ることで、在庫管理を行うことが検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなRFIDタグを利用したシステムに関しては、RFIDタグが正常に読み取り可能であることがシステムの信頼性の前提となる。例えば、故障や不良により読み取り不能なRFIDタグが混在している場合、システムによる演算処理等に誤差を生じさせ、当該システムによる演算結果の信頼性を損なうことになる。また、誤った演算結果は、業務の遂行に大きな支障をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210428号公報
【特許文献2】特開2002−220199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、倉庫の床面等、広範囲にわたって多数のRFIDタグが設置されている場合、各RFIDタグに関して故障等の有無を確認するには非常に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、所定の空間において読取対象として配置されている記録媒体の異常の検出を適切に支援することのできる異常検出支援装置、異常検出支援方法、及び異常検出支援プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで上記課題を解決するため、異常検出支援装置は、移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手段と、前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手段と、前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
所定の空間において読取対象として配置されている記録媒体の異常の検出を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態が適用される空間の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における異常検出支援システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における異常検出支援装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における異常検出支援装置の機能構成例を示す図である。
【図5】移動情報の蓄積及び集計処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】移動履歴記憶部の構成例を示す図である。
【図7】読取実績記憶部の構成例を示す図である。
【図8】異常の可能性のあるタグの判定処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】読取回数が閾値を超えるレコード数の周辺タグごとの集計例を示す図である。
【図10】候補タグの異常の可能性の程度の判定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態が適用される空間の一例を示す図である。同図は、倉庫Sの平面図を示す。すなわち、倉庫Sの床面Fを上方より見た図である。床面Fは、本実施の形態において、移動体が移動する面(移動面)の一例に相当する。なお、本実施の形態において、フォークリフトが移動体の一例として用いられる。
【0011】
同図に示されるように、床面Fは、仮想的に行方向(L1〜L8)及び列方向(R1〜R7)に分割されている。すなわち、床面Fは、複数の矩形領域に仮想的に分割されている。各矩形領域には、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等のICタグt(以下、単に「タグt」という。)が一つずつ配置されている。本実施の形態において、タグtは、床面Fにおける位置を識別する識別情報が記録された記録媒体の一例である。したがって、各タグtに記録されている識別情報(以下、「タグID」という。)は、床面Fにおいて一意である。本実施の形態において、各タグtの配置位置は、当該タグtが属する矩形領域の行番号及び列番号によって識別される。
【0012】
なお、本実施の形態では、便宜上、タグtの配置位置を示す概念として、矩形領域という概念を導入したが、タグtの配置に関して矩形領域という概念は必ずしも必要ではない。例えば、タグtが、倉庫Sの2つの壁面(側面)からの距離によって、各タグtの位置が管理されてもよい。
【0013】
いずれの方法によってタグtの配置位置が管理される場合も、隣り合うタグtの間隔(本実施の形態における行幅及び列幅)は、移動体(本実施の形態ではフォークリフト)によって同時に読み取られない程度の距離であることが望ましい。
【0014】
同図には、倉庫内において保管されている物品bも示されている。物品bが配置されている矩形領域にも、タグtは配置されている。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態における異常検出支援システムの構成例を示す図である。同図の異常検出支援システム1において、異常検出支援装置10は、LAN(Local Area Network)又はインターネット等のネットワーク30を介して、アクセスポイント20に接続されている。
【0016】
アクセスポイント20は、例えば、倉庫S内に設置され、フォークリフト50による無線LAN通信を仲介する。
【0017】
フォークリフト50は、タグリーダ51及び車載端末52等を有する。タグリーダ51は、読取装置の一例であり、倉庫Sの床面Fに設置されたタグtよりタグIDを読み取る(検出する)、いわゆるRFIDタグリーダ51である。
【0018】
車載端末52は、無線LAN通信が可能な通信機器である。車載端末52は、フォークリフト50の移動に応じてタグリーダ51によってタグtより読み取られたタグIDを含む移動情報を、異常検出支援装置10に送信する。なお、倉庫S内において、複数のフォークリフト50が同時に利用されていてもよい。すなわち、複数の車載端末52より、移動情報が並列的に異常検出支援装置10に送信されてもよい。
【0019】
異常検出支援装置10は、車載端末52より転送される移動情報に基づいて、異常の発生している可能性を評価する。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態における異常検出支援装置のハードウェア構成例を示す図である。異常検出支援装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100と、補助記憶装置102と、メモリ装置103と、CPU104と、インタフェース装置105と、表示装置106と、入力装置107とを有する。
【0021】
異常検出支援装置10での処理を実現するプログラムは、CD−ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0022】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って異常検出支援装置10に係る機能を実現する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置106はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置107はキーボード及びマウス等であり、様々な操作指示を入力させるために用いられる。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態における異常検出支援装置の機能構成例を示す図である。同図において、異常検出支援装置10は、移動情報受信部11、移動履歴記憶部12、読取実績集計部13、読取実績記憶部14、候補抽出部15、周辺タグ特定部16、指標値算出部17、異常判定部18、及び出力制御部19等を有する。これら各部は、異常検出支援装置10にインストールされたプログラムが、CPU104に実行させる処理によって実現される。
【0024】
移動情報受信部11は、ネットワーク30を介して受信される、フォークリフト50の移動情報を受信する。移動情報には、フォークリフト50のタグリーダ51によって読み取られたタグIDが含まれている。
【0025】
移動履歴記憶部12は、補助記憶装置102を用いて、移動情報受信部11によって受信された移動情報を、例えば、受信順に記憶する。
【0026】
読取実績集計部13は、移動履歴記憶部12に記録されている移動情報に基づいて、各タグt(タグID)について、読み取られた(検出された)回数(読取回数)を所定期間ごとに集計する。
【0027】
読取実績記憶部14は、補助記憶装置102を用いて、読取実績集計部13による集計結果を記憶する。すなわち、読取実績記憶部14は、各タグt(タグID)について、所定期間ごとの読取回数を記憶する。
【0028】
候補抽出部15は、所定期間の読取回数が予め設定された第一閾値以下であるタグt(タグID)を読取実績記憶部14を用いて抽出する。抽出されたタグt(以下、「候補タグ」という。)は、異常の可能性のある候補とされる。なお、本実施の形態では、複数種類の閾値が用いられる。それらを区別するため、ここでは、第一閾値という言葉が用いられている。
【0029】
周辺タグ特定部16は、床面Fにおける配置関係において、候補タグの周辺又は周囲のタグt(以下、「周辺タグ」という。)を特定する。「候補タグの周辺又は周囲のタグt」とは、候補タグが属する矩形領域の周囲(当該矩形領域を囲む)の矩形領域に属するタグtをいう。なお、床面Fにおける配置関係は、タグIDを用いて判断される。すなわち、本実施の形態において、タグIDの値は、床面Fにおけるタグtの配置位置を示す。
【0030】
指標値算出部17は、周辺タグの読取回数に基づいて、候補タグが異常である可能性を示す指標値を算出する。
【0031】
異常判定部18は、指標値算出部17によって算出された指標値を、予め設定された第二閾値と比較することにより、候補タグの異常の可能性の程度を判定する。
【0032】
出力制御部19は、異常判定部18による判定結果を出力先に応じた形式のデータに変換し、当該データを出力先に出力する。出力先は、所定のものに限定されない。表示装置106であってもよいし、補助記憶装置102であってもよい。又は、インタフェース装置105(すなわち、ネットワークを介して接続される他のコンピュータ等)であってもよい。
【0033】
以下、異常検出支援装置10の処理手順について説明する。図5は、移動情報の蓄積及び集計処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0034】
フォークリフト50の車載端末52は、倉庫S内におけるフォークリフト50の移動に応じてタグリーダ51によってタグIDが読み取られる度に、当該タグIDを含む移動情報を異常検出支援装置10に送信する。異常検出支援装置10の移動情報受信部11は、当該移動情報が受信されると(S101でYes)、当該移動情報に対応する一つのレコードを移動履歴記憶部12に記録する(S102)。
【0035】
図6は、移動履歴記憶部の構成例を示す図である。同図において、移動履歴記憶部12のレコードは、フォークリフトID、月日、時刻、及びタグID等を格納するための項目を有する。フォークリフトIDは、各フォークリフト50に対する識別子である。車載端末52の識別子(例えば、IPアドレス等)がフォークリフトIDとして用いられてもよい。但し、本実施の形態において、フォークリフトIDを格納するための項目は、必ずしも必要ではない。各移動情報をフォークリフト50ごとに区別する必要はないからである。
【0036】
月日は、タグIDが読み取られた月日である。時刻は、タグIDが読み取られた時刻である。タグIDは、読み取られたタグIDである。なお、フォークリフトID、月日、時刻、及びタグIDは、車載端末52より送信される移動情報に含まれている。但し、月日及び時刻の項目に関しては、移動情報が異常検出支援装置10において受信された月日及び時刻が記録されてもよい。この場合、月日及び時刻の項目に記録される値は、移動情報受信部11によって、異常検出支援装置10が有する時計を用いて与えられる。
【0037】
移動履歴記憶部12には、フォークリフト50の移動に応じて読み取られたタグID等が逐次記録される。したがって、移動履歴記憶部12に蓄積された情報は、フォークリフト50の移動履歴(移動軌跡)を示す情報となる。
【0038】
一方、読取実績集計部13は、所定の時期(時刻)の到来を検知すると(S103でYes)、移動履歴記憶部12に記録されている移動情報に基づいて、各タグIDについて、所定期間内に読み取られた(検出された)回数(読取回数)を集計する(S104)。本実施の形態では、例えば、終業時刻後の所定の時刻を所定の時期とする。すなわち、所定の時期の間隔(所定の期間)は、一日である。したがって、読取実績記憶部14は、移動履歴記憶部12の当日分のレコードに基づいて、タグIDごとに読取回数の集計を実行する。タグIDごとの読取回数の集計は、タグIDごとのレコード数の集計によって行われる。移動履歴記憶部12における一つのレコードは、一回の読み取りに相当するからである。
【0039】
続いて、読取実績記憶部14は、タグIDごとの集計結果を読取実績記憶部14に記録する(S105)。
【0040】
図7は、読取実績記憶部の構成例を示す図である。同図において、読取実績記憶部14の一レコードは、当該レコードが対応する日付における、各タグIDの読取回数を記憶する。
【0041】
なお、読取実績集計部13による集計のタイミングは、運用(例えば、移動体の移動量)に応じて適宜変更されてもよい。例えば、1週間ごとに行われてもよいし、1時間ごとにおこなわれてもよい。
【0042】
続いて、読取実績記憶部14に記録された情報を用いて実行される、異常の可能性の有る(異常の疑いの有る)タグtの判定処理について説明する。
【0043】
図8は、異常の可能性のあるタグの判定処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。例えば、入力装置107を介して入力される、ユーザによる指示入力に応じて同図の処理手順は開始される。
【0044】
ステップS201において、候補抽出部15は、読取実績記憶部14の直近の過去の(すなわち、最後の)Nレコード分の読取回数の合計値が、第一閾値以下であるタグt(候補タグ)を抽出(特定)する。ここで、Nは、1以上の整数である。例えば、本実施の形態では、読取実績記憶部14の1レコードは、1日分の読取回数を示す。したがって、N=3の場合、直近の過去3日分の読取回数が第一閾値以下であるタグtが候補タグとして抽出される。第一閾値及びNの値は、予め設定値として設定され、補助記憶装置102に記憶されていればよい。なお、最後のNレコードに限定せず、任意のNレコードを選択可能としてもよい。また、本実施の形態において、読取実績記憶部14の一レコードが対応する期間は、第一の期間に相当し、Nレコードが対応する期間は、第二の期間に相当する。
【0045】
該当するタグtが無い場合(S202でNo)、図8の処理は終了する。該当するタグt(候補タグ)が少なくとも一つ抽出された場合(S202でYes)、周辺タグ特定部16は、抽出された候補タグのうち、未処理の候補タグの一つを処理対象とする(S203)。未処理の候補タグとは、ステップS204以降の処理の実行対象とされていない候補タグをいう。したがって、最初にステップS203が実行されるときは、全ての候補タグが未処理の候補タグである。以下、処理対象とされた一つの候補タグを「カレント候補タグ」という。
【0046】
続いて、周辺タグ特定部16は、カレント候補タグの周辺タグを特定する(S204)。本実施の形態において、タグIDは、タグtの配置位置を示す。すなわち、タグIDの値は、図6又は図7に示されるように、「<倉庫ID>L<行番号>R<列番号>」という形式を有する。したがって、カレント候補タグの周辺タグのタグIDは、カレント候補タグのタグIDに基づいて特定することができる。具体的には、カレント候補タグのタグIDに対して、行番号及び列番号の少なくともいずれか一方に1が加算又は1が減算されたタグIDが、周辺タグのタグIDとなる。したがって、カレント候補タグが両端の行又は両端の列に配置されたものでなければ、周辺タグは8個となる。但し、周辺タグの更に外周のタグtを周辺タグに含めてもよい。
【0047】
なお、タグIDの値は、直接的に配置位置を示すものでなくてもよい。この場合、タグIDと配置位置情報との対応情報が補助記憶装置102に予め設定されていればよい。カレント候補タグのタグIDを当該対応情報に当てはめて、カレント候補タグの配置位置を特定することができる。また、カレント候補タグの配置位置の周辺の配置位置に対応するタグIDを当該対応情報に基づいて特定することができる。ここで特定されたタグIDに係るタグtが、カレント候補タグの周辺タグである。
【0048】
タグIDの値が直接的に配置位置を示すものでない場合であっても、タグIDは、対応情報によって配置位置情報に関連付けられる。したがって、この場合においても、タグIDは、タグtの配置位置を識別する情報であるといえる。すなわち、本実施の形態において、タグtを識別することは、タグtの配置位置を識別すること等価であるといえる。
【0049】
続いて、指標値算出部17は、各周辺タグについて、読取実績記憶部14の直近の過去の(すなわち、最後の)N個のレコードを取得する(S205)。続いて、指標値算出部17は、周辺タグごとに、N個のレコードの中で読取回数が第一閾値を超えるレコード数を集計し、集計値の合計値を算出する(S206)。ステップS206で用いられる閾値は、ステップS201の第一閾値と同じ値である。S206の処理内容の一例を図9に示す。
【0050】
図9は、読取回数が第一閾値を超えるレコード数の周辺タグごとの集計例を示す図である。同図には、(1)及び(2)の二つの例が示されている。以下、それぞれを、例1、例2という。
【0051】
例1では、タグIDが「b01L4R5」である候補タグ、及びその8個の周辺タグについて、過去3日(3レコード)の読取回数が抽出されている。3つのレコードの下には、読取回数が第一閾値を超えるレコード数の集計結果が周辺タグごとに記されている。なお、本実施の形態において、第一閾値は「0」であるとする。したがって、3つのレコードの読取回数が0であるタグtが、候補タグとされている。
【0052】
例えば、例1の表において左端の周辺タグ「b01L3R4」については、読取回数が0を超えているレコード数は、3個である。したがって、「3」が記されている。その2つ右の周辺タグ「b01L3R6」については、読取回数が0を超えているレコード数は、1個である。したがって、「1」が記されている。他の周辺タグに付いても同様に、読取回数が0を超えるレコード数が集計される。その結果、周辺タグごとの集計値の合計は、「18」となる。
【0053】
例2は、例1と候補タグ、周辺タグ、及び各タグtの読取回数の値が異なる例である。例2においても、同様の集計方法によって周辺タグごとに集計が行われ、その集計値の合計として「10」が算出されている。
【0054】
続いて、指標値算出部17は、各周辺タグの読取回数が第一閾値を超えるレコード数のNに対する割合の平均値を算出する(S207)。当該平均値は、周辺タグごとの集計値の合計を、N×周辺タグ数によって除することによって算出される。したがって、図9の例1において、当該平均値は、18÷(3×8)=0.75=75%となる。
【0055】
また、例2において、当該平均値は、10÷(3×8)=0.42=42%となる。
【0056】
本実施の形態では、当該平均値が、候補タグが異常である可能性を示す指標値とされる。したがって、例1においては、候補タグが異常である可能性は75%であり、例に2おいては、候補タグが異常である可能性は42%ということになる。すなわち、過去の所定期間(図9の例では、3日間)において、周辺タグが読み取られている割合が高いほど、候補タグが異常である可能性は高くなる。この点の妥当性について説明する。
【0057】
候補タグが読み取られていないケースは、大きく二に分けられる。ケース1は、候補タグに異常が有る場合である。ケース2は、候補タグ上をフォークリフト50が通過していない場合である。ケース2の場合は、候補タグが正常であっても読み取りは発生しない。したがって、単に読取回数が第一閾値以下である全てのタグtを、異常の可能性が高いと判定しては、ケース2に該当するタグtも含まれ、ユーザの作業負担を大幅に軽減することは困難である。したがって、ケース1とケース2とを区別する必要がある。
【0058】
そこで、検討すると、周辺タグが読み取られているにも拘わらず、候補タグが読みとられていないとすると、ケース1に該当する可能性、すなわち、候補タグが異常である可能性が高いと考えられる。一方、周辺タグが読み取られていない場合は、候補タグbの周辺や、候補タグb上に物品bが配置されている等の原因によって、ケース2に該当する可能性が高いと考えられる。
【0059】
以上の考えに基づいて、本実施の形態では、周辺タグの読取回数に基づいて、より厳密には、所定期間において周辺タグが読み取られている割合に基づいて、候補タグの異常の可能性を判断しているのである。
【0060】
続いて、異常判定部18は、指標値算出部17によって算出された指標値(平均値)を第二閾値と比較する(S208)。続いて、異常判定部18は、比較結果に基づいて、カレント候補タグの異常の可能性の程度を判定(分類)する。本実施の形態では、異常の可能性の程度は、「大」又は「小」の2段階に分類される。すなわち、指標値が第二閾値を超える場合(S208でYes)、異常判定部18は、カレント候補タグの異常の可能性は「大」であると判定する(S209)。一方、指標値が第二閾値以下である場合(S208でYes)、異常判定部18は、カレント候補タグの異常の可能性は「大」であると判定する(S210)。
【0061】
第二閾値は、当初適当な値(例えば、50%)を設定し、経験に基づいて妥当な値を探るとよい。また、異常の可能性の程度の分類は、3以上であってもよい。その場合、各分類の境界となる複数の閾値を定めておけばよい。
【0062】
上述したステップS203〜S210は、ステップS201において抽出された各候補タグについて実行される。全ての候補タグについて、処理が終了すると(S211でNo)、出力制御部19は、異常判定部18による判定結果を出力する(S212)。表示装置106が出力先とされる場合、当該判定結果は、例えば、図10に示されるような形式で表示される。
【0063】
図10は、候補タグの異常の可能性の程度の判定結果の表示例を示す図である。同図では、床面Fの矩形領域(すなわち、タグt)ごとに、異常の可能性の程度の判定結果が、床面Fにおける各タグtの配置位置に対応させて表示されている。判定結果は、記号に置換されている。「×」は、異常の可能性は「大」であることを示す。「△」は、異常の可能性は「小」であることを示す。「○」は、異常の可能性は無いことを示す。「○」が表示されるのは、候補タグとされなかったタグtである。
【0064】
図10に示されるような表示形式によれば、ユーザは、異常の可能性の有るタグtの位置を一目で把握することができる。したがって、検査対象を異常の可能性の高いタグtに限定することによって、タグtのメンテナンス作業を効率化することができる。
【0065】
なお、指標値の値(例えば、百分率の値)が、そのまま図10のような表示形式でタグtごと(矩形領域ごと)に表示されてもよい。ユーザは、当該指標値を参照し、異常の可能性の高さを把握することができる。
【0066】
また、指標値は、他の方法で算出されてもよい。例えば、周辺タグの過去N個のレコードの読取回数の合計値が指標値とされてもよい。この場合、図9の例1の指標値は、55となり、例2の指標値は、32となる。または、当該合計値を(N×周辺タグの数)によって除した値を指標値としてもよい。いずれの場合であっても、周辺タグが読み取られている程度を把握することが可能だからである。後者の場合、前者に比較して、周辺タグの数の相違による不均衡を是正することができる。これらいずれかの場合は、読取実績記憶部14には、読取回数の集計期間ごとではなく、過去N回の集計期間の読取回数の集計値がタグtごとに記録されていてもよい。
【0067】
なお、第一閾値が0より大きい場合、過去の所定期間において少なくとも1回は読み取られたタグtが、候補タグとなりうる。すなわち、少なくとも1回は読み取りに成功しているタグtが候補タグとなりうる。しかし、読み取り精度が劣化し、上手く読み取れるときと読み取れないときとが有るタグtの存在も否定し得ない。したがって、第一閾値が0より大きい場合は、不完全な故障を検出できる可能性が有るという点において意義がある。
【0068】
また、本実施の形態は、ICタグ以外の記録媒体が床面Fに配置される場合についても適用可能である。例えば、バーコードや2次元コード等が床面Fに貼付される場合、バーコード等を示す画像が印刷されたシール等は、床面Fの位置を識別する識別情報が記録された記録媒体であるといえる。そして、バーコード等は、汚れや表面の摩耗等によって読み取り精度が劣化する可能性がある。したがて、このような記録媒体に関しても本実施の形態は有効に適用されうる。
【0069】
また、移動体は、フォークリフトに限られない。他の車両であってもよいし、台車のように人力によって移動するものであってもよい。
【0070】
また、本実施の形態は、移動体の移動面に配置されたICタグ等によって、移動体の移動軌跡を記録する必要がある環境であれば、倉庫以外の環境においても適用可能である。
【0071】
上述したように、本実施の形態によれば、所定の空間に配置されたICタグ等の記録媒体の異常の検出を適切に支援することができる。その結果、異常の発生した記録媒体の修理又は交換等を速やかに行うことができ、当該記録媒体を用いたシステムの信頼性を維持することができる。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0073】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手段と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手段と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手段とを有する異常検出支援装置。
(付記2)
前記指標値算出手段は、前記第二の記録媒体の前記回数の中で、前記閾値を超える前記回数の割合を前記指標値として算出する付記1記載の異常検出支援装置。
(付記3)
前記指標値算出手段による算出結果を、前記移動面における前記記録媒体の位置に対応させて表示手段に表示させる出力手段を有する付記1又は2記載の異常検出支援装置。
(付記4)
前記読取実績記憶手段は、前記記録媒体ごと及び第一の期間ごとに、前記識別情報が読み取られた回数を記憶し、
前記候補抽出手段は、前記第一の期間を一以上含む第二の期間に関して、前記第二の記録媒体ごとに前記回数が前記閾値を超える第一の期間の第一の数を集計し、前記第二の記録媒体ごとの、前記第二の期間に含まれる前記第一の期間の第二の数に対する前記第一の数の平均値を前記指標値として算出する付記3記載の異常検出支援装置。
(付記5)
コンピュータが、
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手順と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手順と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手順とを実行する異常検出支援方法。
(付記6)
前記指標値算出手順は、前記第二の記録媒体の前記回数の中で、前記閾値を超える前記回数の割合を前記指標値として算出する付記5記載の異常検出支援方法。
(付記7)
前記指標値算出手順による算出結果を、前記移動面における前記記録媒体の位置に対応させて表示手順に表示させる出力手順を前記コンピュータが実行する付記5又は6記載の異常検出支援方法。
(付記8)
前記読取実績記憶手段は、前記記録媒体ごと及び第一の期間ごとに、前記識別情報が読み取られた回数を記憶し、
前記候補抽出手順は、前記第一の期間を一以上含む第二の期間に関して、前記第二の記録媒体ごとに前記回数が前記閾値を超える第一の期間の第一の数を集計し、前記第二の記録媒体ごとの、前記第二の期間に含まれる前記第一の期間の第二の数に対する前記第一の数の平均値を前記指標値として算出する付記7記載の異常検出支援方法。
(付記9)
コンピュータに、
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手順と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手順と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手順とを実行させるための異常検出支援プログラム。
(付記10)
前記指標値算出手順は、前記第二の記録媒体の前記回数の中で、前記閾値を超える前記回数の割合を前記指標値として算出する付記9記載の異常検出支援プログラム。
(付記11)
前記指標値算出手順による算出結果を、前記移動面における前記記録媒体の位置に対応させて表示手順に表示させる出力手順を前記コンピュータに実行させるための付記9又は10記載の異常検出支援プログラム。
(付記12)
前記読取実績記憶手段は、前記記録媒体ごと及び第一の期間ごとに、前記識別情報が読み取られた回数を記憶し、
前記候補抽出手順は、前記第一の期間を一以上含む第二の期間に関して、前記第二の記録媒体ごとに前記回数が前記閾値を超える第一の期間の第一の数を集計し、前記第二の記録媒体ごとの、前記第二の期間に含まれる前記第一の期間の第二の数に対する前記第一の数の平均値を前記指標値として算出する付記11記載の異常検出支援プログラム。
【符号の説明】
【0074】
1 異常検出支援システム
10 異常検出支援装置
11 移動情報受信部
12 移動履歴記憶部
13 読取実績集計部
14 読取実績記憶部
15 候補抽出部
16 周辺タグ特定部
17 指標値算出部
18 異常判定部
19 出力制御部
20 アクセスポイント
50 フォークリフト
51 タグリーダ
52 車載端末
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
106 表示装置
107 入力装置
B バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手段と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手段と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手段とを有する異常検出支援装置。
【請求項2】
前記指標値算出手段は、前記第二の記録媒体の前記回数の中で、前記閾値を超える前記回数の割合を前記指標値として算出する請求項1記載の異常検出支援装置。
【請求項3】
前記指標値算出手段による算出結果を、前記移動面における前記記録媒体の位置に対応させて表示手段に表示させる出力手段を有する請求項1又は2記載の異常検出支援装置。
【請求項4】
前記読取実績記憶手段は、前記記録媒体ごと及び第一の期間ごとに、前記識別情報が読み取られた回数を記憶し、
前記候補抽出手段は、前記第一の期間を一以上含む第二の期間に関して、前記第二の記録媒体ごとに前記回数が前記閾値を超える第一の期間の第一の数を集計し、前記第二の記録媒体ごとの、前記第二の期間に含まれる前記第一の期間の第二の数に対する前記第一の数の平均値を前記指標値として算出する請求項3記載の異常検出支援装置。
【請求項5】
コンピュータが、
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手順と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手順と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手順とを実行する異常検出支援方法。
【請求項6】
コンピュータに、
移動体が移動する移動面に配置され、前記移動面における位置を識別する識別情報が記録された複数の記録媒体ごとに、前記移動体が有する読取装置によって前記識別情報が読み取られた回数を記憶した読取実績記憶手段より、前記回数が所定の閾値以下である第一の記録媒体を抽出する候補抽出手順と、
前記記録媒体の前記識別情報に基づいて、前記移動面において前記第一の記録媒体の周辺に配置された第二の記録媒体を特定する周辺媒体特定手順と、
前記第二の記録媒体に関して前記読取回数実績記憶手段が記憶する前記回数に基づいて、前記第一の記録媒体の異常の可能性を示す指標値を算出する指標値算出手順とを実行させるための異常検出支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8856(P2012−8856A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145077(P2010−145077)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000237156)株式会社富士通アドバンストエンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】