説明

異常検出機能を有する液体吐出装置及びその制御装置

【課題】液体吐出装置の異常を簡易に検知する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプを有する液体吐出装置を制御する制御装置を提供する。この制御装置は、ノズルのオリフィス特性と圧縮空気で駆動される容積型ポンプの供給流量特性とに応じて決定された所定の範囲の閾値と、容積型ポンプを駆動する空気圧モータに供給する圧縮空気の圧力指令値と、を比較してノズルと容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧で液体を吐出して洗浄する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗浄液を5MPaから30MPaといった高圧状態に加圧し、数百ミクロンのオリフィス径のマイクロジェットノズルから微小液滴化した洗浄液をワークに向かって高速噴射(吐出)する物理的洗浄システムが実現された。この洗浄システムは、微細なオリフィス径を有するノズルのノズル詰まりや消耗によるノズル径拡大といった故障モードの発生が他の故障モードと比較して顕著であることが本願発明者から見出され、このような故障モードを検知する技術も本願発明者から提供されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、この検知方法では、正常運転状態における標準値からの遊離に応じて検知され、洗浄対象毎にシステムの仕様(たとえば洗浄面積や液滴の運動エネルギ分布)が変動するので、標準値の設定が困難であった。特に、正常運転状態における計測値を基準にして標準値を決定する場合には、試験運転によって正常運転状態であることが確認されるまで標準値を設定することができなかった。このため、従来は、洗浄システムを含む生産システム全体で試験運転を行って洗浄が正常に行われたか否かで正常運転を確認しなければならず、検査の負担が大きかった。さらに、このような問題は、洗浄装置に限られず塗装装置その他の液体吐出装置一般に共通する課題であった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−225620公報
【特許文献2】特開2004−245181公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、液体吐出装置の異常を簡易に検知する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[適用例1]
液体吐出装置を制御する制御装置であって、
前記液体吐出装置は、
所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプと、
前記供給された液体を吐出するノズルと、
前記容積型ポンプから前記ノズルに前記液体を配送する配管部と、
空気圧モータと、圧縮空気を前記空気圧モータに供給する電空レギュレータとを備え、前記圧縮空気の供給圧力を操作することによって前記容積型ポンプを可変に駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルに供給される液体の圧力であるノズル圧を観測する観測部と、
予め設定された目標圧力値と前記観測されたノズル圧との差に応じて、前記圧縮空気の供給圧力の指令値を決定する指令値決定部と、
前記ノズルのオリフィス特性と前記容積型ポンプの供給流量特性とに基づいて決定された所定の範囲の閾値と、前記圧縮空気の供給圧力の指令値と、を比較して前記ノズルと前記容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知する異常検知部と、
を備え、
前記オリフィス特性は、前記ノズルの流量と圧力降下量との間の関係を表し、
前記供給流量特性は、前記サイクル毎に供給されるほぼ一定量の液体の流量を表す制御装置。
【0007】
適用例1の制御装置は、ノズルのオリフィス特性と圧縮空気で作動する容積型ポンプの供給流量特性とに応じて決定された所定の範囲の閾値と、圧縮空気の供給圧力の指令値と、を比較してノズルと容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知することができる。ノズルのオリフィス特性や容積型ポンプの供給流量特性は、いずれも液体吐出装置全体の特性に依存しない既知の情報として取得可能なので、液体吐出装置全体の特性データを取得する前に異常検知のための閾値を決定できることになる。これにより、液体吐出装置の実運用前の試運転前における機能確認試験の基準値を設定することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1の制御装置であって、
前記閾値は、前記所定のサイクルにおける前記容積型ポンプの吐出圧力の実測値の積分値に応じて調整されている制御装置。
【0009】
適用例2の制御装置では、所定のサイクルにおける容積型ポンプの吐出圧力の実測値の積分値に応じて閾値が調整されているので、容積型ポンプの死点の存在に起因する特性を補償して精度の高い異常検知を実現することができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または2の制御装置であって、
前記調整量は、前記容積型ポンプへの前記洗浄水の供給圧力を計測する供給圧力センサを有し、前記センサの計測値に応じて修正されている制御装置。
【0011】
適用例3の制御装置では、容積型ポンプへの液体の供給圧力に応じて容積型ポンプの供給流量特性を修正することができるので、たとえば供給圧力の低下に伴って容積型ポンプの駆動サイクル毎の吐出流量の低下を考慮した供給流量特性に修正して異常検知精度を高めることができる。
【0012】
[適用例4]
適用例2または3の制御装置であって、
前記調整量は、前記目標圧力値に応じて修正されている制御装置。
【0013】
適用例4の制御装置では、調整量が目標圧力値に応じて修正されているので、たとえば吐出圧力の上昇に伴って容積型ポンプの駆動サイクル毎の吐出流量の低下を考慮した供給流量特性に修正して異常検知精度を高めることができる。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか1項の制御装置であって、
前記異常検知部は、予め設定された初期状態において、前記圧縮空気の供給圧力の指令値が前記所定の範囲の閾値の下方に外れたときには前記ノズルに異常が発生していると判定する制御装置。
【0015】
適用例5の制御装置では、予め設定された初期状態において、圧縮空気の供給圧力の指令値が所定の範囲の閾値の下方に外れたときにはノズルに異常が発生していると判定することができるので、より利用価値の高い故障探知を実現することができる。なお、予め設定された初期状態は、たとえば液体吐出装置の組立て直後の状態を含む。
【0016】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかの制御装置であって、
前記異常検知部は、予め設定された初期状態において、前記圧縮空気の供給圧力の指令値が前記所定の範囲の閾値の上方に外れたときには前記容積型ポンプに異常が発生している判定する制御装置。
【0017】
適用例6の制御装置では、予め設定された初期状態において、駆動動力の指令値が所定の範囲の閾値の上方に外れたときには、駆動サイクル毎の吐出量が減っているので、容積型ポンプに異常が発生していると判定することができる。
【0018】
なお、本発明は、制御装置だけでなく、この制御装置を備えた液体吐出装置あるいは制御方法、液体吐出方法、コンピュータプログラムといった種々の方法で実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液体吐出装置の異常を簡易に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例の超高圧洗浄システムの構成と動作:
B.第2実施例の超高圧洗浄システムの構成と動作:
C.変形例:
【0021】
A.第1実施例の超高圧洗浄システムの構成と動作:
図1は、第1実施例の超高圧洗浄システム100を有する半導体研磨加工装置10を示すハードウェアブロック図である。半導体研磨加工装置10は、超高圧洗浄システム100と、研磨装置200と、を備えている。研磨装置200は、プラテン本体222に研磨パッド221が装着されたプラテン220と、半導体ウェハSを移送するウェハキャリア210と、を備えている。ウェハキャリア210は、キャリア本体211に半導体ウェハSを保持するためのバッキングフィルム212が備えられた構成を有している。
【0022】
半導体ウェハSの研磨は以下のようにして行われる。プラテン220は、図示しないモータによって矢印の方向に高速回転させられる。ウェハキャリア210は、高速回転中のプラテン220に装着された研磨パッド221に対して、半導体ウェハSを所定の圧力で押し付け研磨する。半導体ウェハSの研磨によって生成された研磨くずは、超高圧洗浄システム100のノズル160から吐出される高圧洗浄水で研磨パッド221の表面から排出される。
【0023】
超高圧洗浄システム100は、外部から供給された電力によって洗浄水を加圧するポンプユニット110と、ポンプユニット110による加圧の脈動を抑制するアキュムレータ120と、洗浄水をろ過する高圧フィルタ130と、高圧バルブ140と、圧力センサ150と、ノズル160と、ポンプユニット110から圧力センサ150までを接続する高圧ホースHpと、圧力センサ150からノズル160までを接続するノズルホースHnと、を備えている。
【0024】
本実施例では、ポンプユニット110は、圧力センサ150によって計測されたノズル圧(圧力計測値Pm)に応じて、フィードバック制御によって洗浄水を加圧する。なお、ポンプユニット110の構成と、超高圧洗浄システム100の制御内容の詳細については後述する。
【0025】
アキュムレータ120は、ポンプユニット110の間欠的な作動(後述)に起因する吐出圧の脈動を抑制するために装備されている。
【0026】
高圧フィルタ130は、洗浄水に含まれるコンタミネーションをろ過してノズル160の目詰まりを防止する役割を果たす。高圧フィルタ130は、高圧フィルタ130の入口と出口の差圧を計測する圧力センサ(図示せず)を有し、高圧フィルタ130における圧力損失を出力することができる。この圧力損失は、フィルタエレメント(図示せず)の交換時期の決定に使用される。
【0027】
高圧バルブ140は、ノズル160に接続される配管P5を開閉する。ノズル160は、直径数百μmの穴をスリット状に加工したオリフィス形状を有している。これらのノズルの各々は、オリフィス効果によって高速の洗浄水を吐出し、吐出された洗浄水は数十μmの水滴となって研磨パッド221を洗浄することができる。なお、ノズル160の具体的構成については、本願出願人の特開2006−15223公報に例示されているので、詳細な説明は省略する。
【0028】
図2は、第1実施例のポンプユニット110の構成を示す説明図である。ポンプユニット110は、電動プランジャポンプ112と、制御部111とを備えている。電動プランジャポンプ112は、本実施例では、ポンプ本体112pと、ポンプ本体112pを駆動する交流電動機112mと、極数6の交流電動機112mに交流電力Apを供給するインバータ112iとを備えている。
【0029】
ポンプ本体112pは、シリンダ112pcと、シリンダ112pc内でピストンとして機能するプランジャ112ppと、を備えている。シリンダ112pcには、2個のチェックバルブCv1、Cv3が備えられている。プランジャ112ppには、1個のチェックバルブCv2が備えられている。
【0030】
プランジャ112ppには、上面に第1のピストン面112ppa1が形成されているとともに、第1のピストン面112ppa1の反対側に第2のピストン面112ppa2が形成されている。第2のピストン面112ppa2は、本実施例では、第1のピストン面112ppa1の半分ほどのピストン面積を有する。これにより、第1のピストン面112ppa1の上面には、第1のピストン面112ppa1の面積と等しいシリンダ面積を有する第1のシリンダ室V1が形成されている。一方、第2のピストン面112ppa2の下面には、第2のピストン面112ppa2の面積と等しいシリンダ面積を有する第2のシリンダ室V2が形成されている。なお、ポンプ本体112pの実装例は、本願出願人による特開2004−245181公報に開示されているので、説明を省略する。
【0031】
ポンプ本体112pは、交流電動機Mによって駆動されるプランジャ112ppの往復運動によって洗浄水を加圧する。具体的には、プランジャ112ppの上昇中においては、第1のピストン面112ppa1がシリンダ112pc内部の洗浄水を上方に加圧してチェックバルブCv2を洗浄水が通過する。チェックバルブCv2を通過した洗浄水は、第1のシリンダ室V1と第2のシリンダ室V2のシリンダ面積の差に応じた量だけチェックバルブCv3から高圧洗浄水として吐出される。
【0032】
一方、プランジャ112ppの下降中においては、第2のピストン面112ppa2が第2のシリンダ室V2の内部の洗浄水を下方に加圧してチェックバルブCv3から高圧洗浄水として吐出する。プランジャ112ppは、同時に第1のピストン面112ppa1を下降させることによってチェックバルブCv1から洗浄水を第1のシリンダ室V1の内部に吸入する。
【0033】
このように、電動プランジャポンプ112は、プランジャ112ppの一往復毎にほぼ一定量の液体を供給することができる。このようなポンプは、一般に容積型ポンプと呼ばれ、プランジャ112ppの作動サイクル(往復動)の周波数を操作することによって加圧洗浄水の流量を制御することができる。
【0034】
プランジャ112ppの駆動サイクルの周波数は、交流電動機Mの回転数に対応する。交流電動機Mの回転数は、インバータ112iから供給される交流電力の周波数fr(Hz)と、交流電動機Mの極数とによって決定される。具体的には、説明を簡単にするために、すべりがないと仮定すると、交流電動機Mの回転数Nm(rpm)は、周波数fr(Hz)と120の積を極数(本実施例では6)で割ることによって算出することができることが知られている。
【0035】
制御部111は、設定された圧力目標値Pt(固定値)と制御プログラムとを格納する記憶部111mと、記憶部111mから読み出された圧力目標値Ptと計測ノズル圧(圧力計測値Pm)とを比較して偏差δを算出する演算処理部111dと、偏差δに応じて周波数指令値Cfを決定してインバータ112iに与える指令値決定部111cと、周波数指令値Cfを監視することによって異常検知処理を実行する異常検知部111eと、を備えている。
【0036】
図3は、第1実施例の超高圧洗浄システム100の制御ブロック図を示す説明図である。この制御系は、一般的なフィードバック方式のPID制御として構成されている。この制御系は、予め設定された圧力目標値Ptがポンプユニット110に入力されることによって作動が可能となり、ノズルホースHnの内部圧力の計測値Pmと圧力目標値Ptとの間の偏差δが小さくなるように制御される。すなわち、この制御系は、ノズルホースHnの内部圧力の計測値Pmが圧力目標値Ptに近くづくように作動する。
【0037】
この制御系は、制御部111と、電動プランジャポンプ112と、ノズル160と、圧力センサ150といった構成要素で構成されている。各構成要素は、ハードウェアブロック図等(図1、図2)の各要素に対応している。ただし、説明を分かりやすくするために、アキュムレータ120と、高圧フィルタ130と、高圧バルブ140は省略している。なお、高圧フィルタ130は、超高圧洗浄システム100の組立て直後の運用前においては、無視できる程度の圧力損失しか生じさせないことが本願発明者によって確認されている。
【0038】
圧力センサ150は、ノズル160に直結したノズルホースHnの入り口の内部圧力に応じた電圧としての圧力計測値Pmを発生させ、ポンプユニット110の制御部111(図2、図3)が有する演算処理部111d(図2、図3)に伝達する。
【0039】
演算処理部111dは、電圧としての圧力計測値Pmをアナログデジタル変換して、デジタル情報としての圧力計測値Pmと、予め入力された圧力目標値Ptとを比較(減算処理)することによって偏差δを生成し、指令値決定部111c(図3)に伝達する。
【0040】
指令値決定部111cは、偏差δに応じて周波数指令値Cfを生成し、電動プランジャポンプ112に送信する。周波数指令値Cfは、記憶部111mから読み出されて指令値決定部111cにロードされた制御プログラムに基づいて生成される。周波数指令値Cfは、たとえば制御プログラムが有する近似計算式や偏差δと周波数指令値Cfとの間の関係を表すマップ(図示せず)を使用して生成することができる。なお、本実施例では、超高圧洗浄システム100の定常状態における周波数指令値Cfを問題とするので、制御プログラム(図2)に含まれる制御則は、定常状態における偏差δである定常偏差を抑制するために積分要素を含んでいることが望ましい。
【0041】
異常検知部111e(図2)は、たとえば偏差δが十分小さな値で安定していることの確認に応じて、周波数指令値Cfが予め設定された所定の範囲内(後述)にあるか否かに基づいて異常検知処理を実行する。なお、異常検知部111eによる偏差δの監視は、異常検知処理を自動化するためのものであって必須の構成要素ではなく、技術者によるトリガーに応じて異常検知処理を実行するように構成しても良い。
【0042】
電動プランジャポンプ112は、プランジャ112ppの往復運動の周期が周波数指令値Cfにほぼ相当する値でプランジャ112ppを駆動する。電動プランジャポンプ112は、前述のように容積型ポンプなので、電動プランジャポンプ112の周期の操作は実質的に電動プランジャポンプ112の吐出流量の操作となる。電動プランジャポンプ112から吐出された洗浄水は、ノズル160に供給される。
【0043】
ノズル160は、本実施例では、直径数百μmの穴をスリット状に加工したオリフィス形状を有し、供給流量に応じた圧力損失pを発生させて大気開放されている。電動プランジャポンプ112の吐出流量の制御は、実質的にノズル160への供給圧力の制御にも相当することになる。この圧力損失pは、ノズル圧pに相当する。
【0044】
このように、本制御系は、所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプの特性を利用して、ポンプの作動周期を操作することによってノズル160に供給される圧力を制御していることになる。
【0045】
図4は、電動プランジャポンプ112のシステムダイナミクスを示す説明図である。電動プランジャポンプ112は、インバータ112iが供給する交流電力frの周波数(実装上は、周波数に応じて実効電圧も操作)を操作することによって、プランジャ112ppの往復運動の周期が周波数指令値Cfに相当する値に近づくようにプランジャ112ppの駆動が制御される。このように、第1実施例の構成では、電動プランジャポンプ112の駆動サイクルの周期(周波数)をダイレクトに操作することができる。
【0046】
図5は、第1実施例において半導体研磨加工装置10に対して超高圧洗浄システム100を設置する手順を示すフローチャートである。ステップS100では、技術者は、洗浄装置組立工程を実行する。洗浄装置組立工程とは、洗浄対象となる研磨パッド221の大きさ等の確認に応じて洗浄水の圧力や噴霧範囲を設定するとともに、この設定に基づいて超高圧洗浄システム100を組立てる工程である。
【0047】
具体的には、現地での超高圧洗浄システム100の組立において、洗浄対象と洗浄内容に応じて、洗浄面に衝突する液滴の運動エネルギ分布を適切に設定する。液滴の運動エネルギ分布の設定は、ノズル160の吐出圧pと吐出量(L/min)の観点から決定可能なので、ノズル160の吐出圧pとノズル160の数が決定されることになる。本実施例では、説明を簡単にするためにノズル160の数が1個に設定されたものとする。
【0048】
ステップS200では、技術者は、作動確認工程を実行する。作動確認工程は、超高圧洗浄システム100を実際に作動させてシステム100からの洗浄水の漏洩が無く、かつ各機能が正常であることを確認する工程である。このような制御系の作動確認は、たとえば圧力目標値Ptを変動(動特性確認)あるいは一定時間維持(静特性確認)させ、偏差δが所定の範囲内であることを確認することによって行うことができる。
【0049】
このようにして、作動確認工程(S200)が完了すると、処理が予備確認試験(S300)に進められる。
【0050】
図6は、第1実施例における超高圧洗浄システム100の予備確認試験(S300)の手順を示すフローチャートである。S310では、技術者は、検査基準値設定工程を実行する。検査基準値設定工程とは、予備確認試験の検査基準値を設定する工程である。
【0051】
検査基準値は、予め特性データが取得されている検査用ノズル圧に基づいて準備されたものであっても良い。こうすれば、予め取得された検査用ノズル圧におけるノズル160や電動プランジャポンプ112の特性データを使用して、予め想定された故障モード(たとえばノズルの目詰まり)の検知を簡易に実現することができる。一方、検査基準値は、実運用状態に応じて以下のように設定していも良い。こうすれば、実運用状態に即した作動確認を行うことができるという利点がある。
【0052】
図7及び図8は、第1実施例における超高圧洗浄システム100の検査基準値を設定するための計算式を示す説明図である。図7は、検査基準値として使用される閾値の中心値を決定するための計算式(計算式F4)を示している。図8は、設定された中心値からの乖離が許容される許容幅を決定するための計算式(計算式F6)を示している。
【0053】
図7の計算式は、電動プランジャポンプ112の理論給水量q1と、ノズル160からの吐出量q2とが一致することに着目して設定された計算式である(計算式F3)。電動プランジャポンプ112の理論給水量q1は、容積型ポンプの特性を利用し、各プランジャ(図示せず)のピストン面積(=(Dp/2)×π)とストローク長Lsとプランジャ数Npと交流電動機Mの回転数Nmの積として算出することができる(計算式F1)。
【0054】
一方、ノズル160からの吐出量q2は、ノズル160の数n(本実施例では1個)とノズルサイズzとノズル圧pの平方根の積として算出することができる(計算式F2)。このような算出が可能なのは、ノズルサイズzが基準圧力(たとえば1MPa)における吐出量として定義された値だからである。
【0055】
このようにして、計算式F1乃至計算式F3に基づいて、検査基準値として使用される閾値の中心値を決定するための計算式(計算式F4)は設定されている。計算式F4から分かるように、閾値の中心値は、洗浄装置組立工程において決定されるノズル160の数nやノズル圧pに応じて変動する値である。
【0056】
図8の計算式(計算式F6)は、中心値からの乖離が許容される許容幅を決定するための計算式である。この許容幅は、予め超高圧洗浄システム100に許容された公差内の乖離があっても正常と判定するためのものである。なお、実際に使用される許容幅は、計測誤差その他の要因による誤差を含むようにしても良い。
【0057】
この計算は、本実施例では、統計学的手法によって、ノズルサイズzの誤差であるノズルサイズ誤差Erの標準偏差の和(計算式F5)として設定されている。この計算式は、ノズル160が量産されれば、一般的に、そのノズルサイズ誤差Erの確率分布が正規分布に近似することを仮定して設定されたものである。計算式F6は、計算式F5を変形してまとめたものである。
【0058】
具体的には、ノズル160の量産において、設定された公差が5%で全生産品の95%が合格(±2σの範囲内)すると仮定すると、たとえば25個のノズル160の公差集積は、統計上はノズルサイズ誤差Er×5(=25の平方根)となる。すなわち、25個のノズル160の公差の和は、ノズルサイズ誤差Erの5倍以下となる確率が95%(±2σの範囲内)となるのである。
【0059】
このような手法によって、ノズル160が25個接続されたシステムであっても、25個のノズル160のノズルサイズ誤差Erの集積に起因する誤差は、1個のノズル160の圧力損失の25%(=5%×5)となることが分かる。すなわち、ノズル160が25個装備されていても、1個のノズル160の詰まりによる圧力変動(25%超)は、95%以上の確率で検知可能であることが分かる。なお、ノズル160の検査成績書等に圧力損失の実測値が含まれている場合には、それを利用して許容幅を小さくしても良い。
【0060】
なお、本実施例では、圧力センサ150からノズル160までを接続するノズルホースHnにおける圧力損失は実測されないので、この圧力損失は推定されることになる。
【0061】
図9は、本願発明者が行ったノズルホースにおける圧力損失の実測値のデータである。この実測値は、複数のノズル160に所定の圧力が定常的に加えられているときに、ノズルホースにおける圧力損失がどのように変化するかを表したものである。この図から分かるように、ノズルホースにおける圧力損失は、ホース長さに比例し、比例定数はノズル数によって一義的に決定されることが分かる。本実施例は、このような特性を利用して、ノズルホースの長さとノズル数とに応じて圧力センサ150からノズル160までに発生する圧力損失を高い信頼性で推測することができる。
【0062】
なお、本実施例では、このような圧力損失を圧力センサ150の計測値から減ずることによってノズル160のノズル圧pを推測することが、特許請求の範囲における「ノズル圧の観測」に相当する。
【0063】
このような計算式や推定値を用いて、予備確認試験におけるノズル160の目詰まり等の異常を検知するための最小閾値Th1(図6)および最大閾値Th2とが算出され、ポンプユニット110の制御部111に入力される。最小閾値Th1は、中心値(計算式F4で算出)から許容幅(計算式F6で算出)を減ずることによって算出される。最大閾値Th2は、中心値(計算式F4で算出)に許容幅(計算式F6で算出)を加えることによって算出される。なお、最小閾値Th1および最大閾値Th2は、たとえばノズル160の個数やノズル圧pに応じて制御部111で計算するように構成しても良い。
【0064】
このようにして、検査基準値設定工程(S310、図6)が完了すると、処理がステップ(S320)に進められる。
【0065】
ステップS320では、技術者は、超高圧洗浄システム100の圧力目標値Ptを固定値としてセットして定常運転状態とする。過渡状態が終了し、偏差δが十分に小さくなって安定したら、定常運転状態になったと判断され、処理がステップ(S330)に進められる。
【0066】
ステップS330では、技術者は、周波数指令値Cfの監視を開始する。指令値Cfの監視は、たとえば周波数指令値Cfや計測値(周波数指令値Cfの関連データ(偏差δや圧力計測値Pm))を外部の計測機(図示せず)に出力して時系列データとして記録することによって行われる。技術者は、このようにして生成された時系列データに基づいて超高圧洗浄システム100が正常に機能しているか否かを分析する。
【0067】
なお、周波数指令値Cfの監視(ステップS330)は、異常検知部111eによる自動検知のみとして、技術者による監視を省略しても良いし、あるいは双方を実行するようにしても良い。
【0068】
また、技術者による監視のみとして、異常検知部111eを削除しても良い。本実施例は、制御部111から外部に出力される出力データである周波数指令値Cfを異常検知に使用しているので、制御対象の状態量を計測するためのセンサも制御部111からデータを取得するための回路も必要とせず、簡易に適用することができるという利点を有している。
【0069】
ステップS340では、技術者は、このような分析に基づいて以下のような判定を行うことができる。具体的には、たとえば周波数指令値Cfが過度に低い場合、すなわち閾値Th1よりも低いときにはノズル160に目詰まりが発生している可能性があると判定することができる。一方、たとえば周波数指令値Cfが過度に高い場合、すなわち閾値Th2よりも高いときには電動プランジャポンプ112に異常が発生している可能性があると判定することができる。
【0070】
このような判定は、超高圧洗浄システム100の組立て直後においては、制御対象(図3)のうちノズル160の目詰まりの発生確率が顕著に高いという本願発明者の知見に基づいて実現されたものである。この知見は、電動プランジャポンプ112やノズル160は、現地での組立て前に単体で検査が行われているので、組立て後に故障が発生するとすれば、組立て時に混入あるいは生成された異物がノズル160を目詰まりさせるという故障モードの発生確率が顕著に高いというものである。なお、このような組立て後の状態は、特許請求の範囲における「予め設定された初期状態」に相当する。
【0071】
このような判定の結果、周波数指令値Cfが2つの閾値Th1、Th2の間に維持されなかったときには、超高圧洗浄システム100に異常があると決定して、処理をステップS100(図5)に戻す。一方、周波数指令値Cfが2つの閾値Th1、Th2の間に維持されたときには、超高圧洗浄システム100が正常であると決定して、処理をステップS400に進める。
【0072】
ステップS400では、技術者は、システム確認試験を実行する。システム確認試験とは、超高圧洗浄システム100を有する半導体研磨加工装置10の全体を作動させて正常に研磨が行われていることを確認する試験である。正常に研磨が行われていなかった場合には、超高圧洗浄システム100を含むシステム全体の点検が行われる。一方、正常に研磨が行われていた場合には、処理をステップS500に進める。
【0073】
ステップS500では、技術者は、標準値設定工程を実行する。標準値設定工程とは、超高圧洗浄システム100の標準値としての周波数指令値Cfを設定する工程である。標準値とは、超高圧洗浄システム100の実運用運転において、その運転が正常か否かを判定するための基準となる値である。
【0074】
具体的には、この標準値を基準として徐々に周波数指令値Cfが高くなるときには、ノズル160の磨耗によってオリフィス径が大きくなったと推定することができる。一方、周波数指令値Cfが急激に小さくなったときには、ノズル160の少なくとも一部に目詰まりが発生したと推定することができる。さらに、周波数指令値Cfが急激に高くなったときには、後述するように電動プランジャポンプ112に異常が生じたと推定することができる。
【0075】
このように、超高圧洗浄システム100の正常運転時のデータが得られると、このデータを標準値として利用することによって、精密な異常検知を行うことができる。標準値が記憶部111mに格納されると、半導体研磨加工装置10の運転が開始される(ステップS600)。
【0076】
このように、第1実施例では、所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプの特性を利用し、ポンプの作動周期(周波数指令値Cf)が予め想定された範囲内であるか否かに基づいて制御対象(図3)の異常を検知することができる。
【0077】
本来は、超高圧洗浄システム100の機能試験で確認されるのは、洗浄面に衝突する液滴の運動エネルギ分布が予め設定されたとおりとなっているかである。したがって、本来は、ノズル160における吐出圧力と吐出流量の確認が要請されるので、通常の技術常識によれば、洗浄水の流量測定を行うことになる。
【0078】
しかしながら、本願発明者は、敢えて流量測定センサを使用しない異常検知方法を創作した。この異常検知方法は、本願発明者による以下の故障モード解析に基づいて創作されたものである。
(1)ノズル160の故障モード:超高圧洗浄システム100の運転に起因する減耗と、異物混入によるノズル160の目詰まり。
(2)ポンプユニット110の故障モード:超高圧洗浄システム100の運転に起因する電動プランジャポンプ112の減耗と、チェックバルブCv1〜Cv3のシート不良。
【0079】
これらの故障モードにおいて、超高圧洗浄システム100の組立て直後においては、減耗の可能性を排除できるので、ノズル160の故障モードとしては、異物混入によるノズル160の目詰まりを考慮すればよく、ポンプユニット110の故障モードとしては、チェックバルブCv1〜Cv3のシート不良のみを考慮すれば良いことが分かる。一方、ノズル160の目詰まりは、周波数指令値Cfを過度に低下させ、チェックバルブCv1〜Cv3のシート不良は、周波数指令値Cfを過度に上昇させるので、これらの故障モードは、周波数指令値Cfの監視によって分離することが可能であることも本願発明者によって見出された。
【0080】
本願発明者は、これらの想定された故障モードのいずれにも該当しない、すなわち、ポンプの作動周期(周波数指令値Cf)が予め想定された範囲内であれば、故障の可能性がほとんど無いことをつきとめた。これにより、周波数指令値Cfが予め想定された範囲内であれば、正常なノズル160と正常なプランジャポンプ112とによって、極めて高い確率で液滴の適切な運動エネルギ分布が実現されていることが推定できることを見出したのである。
【0081】
一方、このような高圧液体の流量測定には、一般的に高価で取扱いが難しいな特殊なセンサ(たとえばコリオリ流量計)の使用が必要とされるので、技術常識に従って流量測定を行う構成と比較して、本願発明は、極めて簡易な構成で異常検知を実現していることになる。
【0082】
加えて、標準値設定工程(ステップS500)によって標準値が決定されると、実質的に流量測定が不要となるので、実運用においては、上述の特殊なセンサがほとんど無駄になってしまうという超高圧洗浄システム100固有の問題を解決することもできるという顕著な効果をもたらすことも見出された。
【0083】
B.第2実施例の超高圧洗浄システムの構成と動作:
図10は、第2実施例の超高圧洗浄システムが有するポンプユニット110aの構成を示す説明図である。第2実施例のポンプユニット110aは、電動プランジャポンプ112の代わりにエアプランジャポンプ112aを備える点で第2実施例のポンプユニット110と相違する。一方、第2実施例の制御部111は、記憶部111mに格納されている制御プログラムのみが第1実施例と相違し、ハードウェアは共通である。
【0084】
エアプランジャポンプ112aの構成は、プランジャ112ppを往復駆動する交流電動機Mの代わりに空気モータ112maを備えるとともに、インバータ112iの代わりに電空レギュレータ112rを備える点で第1実施例の電動プランジャポンプ112と相違する。空気モータ112maは、外部から供給される空気圧で駆動されるモータである。
【0085】
図11は、第2実施例の超高圧洗浄システムの制御ブロック図を示す説明図である。この制御系は、エアプランジャポンプ112aに供給される空気圧を空気圧指令値Cpに応じて操作することによってノズル圧pを制御する点で、ポンプ本体112pの駆動サイクルの周期を直接的に操作してノズル圧pを制御する第1実施例の電動プランジャポンプ112と相違する。
【0086】
図12は、エアプランジャポンプ112aのシステムダイナミクスを示す説明図である。エアプランジャポンプ112aは、電空レギュレータ112rが供給する圧縮空気の圧力を操作することによって、空気モータ112maの駆動トルクを変動させる。この駆動トルクはポンプ本体112pの駆動に使用されるので、駆動トルクの変動は、ポンプ本体112pの駆動周期を間接的に変動させることになる。
【0087】
このように、第2実施例では、エアプランジャポンプ112aの駆動周期を直接的に操作することができないので、所定の駆動周期を実現させるために要求される圧縮空気の圧力を推定することが望まれることになる。具体的には、たとえばポンプユニット110aの吐出圧(実効値)に基づいて空気モータ112maに供給すべき圧力を推定することができる。これは、洗浄水の水圧を圧縮空気の空気圧で発生させていて、物理的次元が同一であるという点に着目して本願発明者に考案されたものである。
【0088】
図13は、第2実施例のポンプユニット110aの吐出圧力のタイムヒストリー(吐出圧特性)を示す説明図である。この図から分かるように、上昇工程と下降工程の切替時(プランジャ112ppの上死点や下死点)においては、プランジャ112ppの減速に伴って吐出圧が低下している。加えて、本実施例のポンプ本体112p(図2、図10)は、プランジャ112ppが構造的に非対称なので、上昇工程と下降工程とで圧力が相違している。
【0089】
本願発明者は、このようなポンプユニット110aの特性を踏まえ、吐出圧の実測値の時間積分としてポンプユニット110aの吐出圧の実効値を算出する方法を創作した。この方法によれば、あらゆる特性のポンプユニット110aに対して、その固有の特性を補償して空気モータ112maに供給すべき圧力を推定することができる。なお、この推定は、このような特性に基づいてポンプユニット110aの吐出圧力が一定であると仮定したときの値に対してオフセット値を加えるという方法で実現しても良い。
【0090】
このように、第2実施例は、所定の計算式F4、F6(図8、図9)に基づいて算出された駆動周期と、ポンプユニット110aの駆動周期と空気モータ112pmaへの供給圧力の関係とに基づいて、供給圧力に関する閾値を設定する構成において、容積型ポンプの死点の存在に起因する固有の特性を補償して精度の高い異常検知を実現することができる。
【0091】
このように、本願発明者は、容積型ポンプの吐出流量に対して線形性を有する駆動周波数(駆動周期)を直接操作することができないエアプランジャポンプ112aのようなポンプに対しても、ポンプ単体の特性データを使用することによって本願発明を適用する方法を創作した。
【0092】
なお、ポンプユニット110aの特性を表す吐出圧の実測値の時間積分を算出するためには、各駆動サイクルにおける吐出圧力のタイムヒストリデータを測定することが要求される。一方、ポンプユニット110aの特性は、厳密には、ポンプユニット110aへの洗浄水の供給圧や吐出圧によって有意な変動を生じさせる場合があるので、洗浄水の供給圧や吐出圧の状態ごとにデータが必要となる。
【0093】
しかし、本願発明者は、洗浄水の供給圧や吐出圧の代表的な少なくとも1つの状態の実測値を取得すれば、実運転時や作動確認時の洗浄水の供給圧や吐出圧に応じて、たとえば内挿や外挿によって修正することによって各状態のタイムヒストリデータを得ることができることを見出した。さらに、本願発明者は、たとえば内挿や外挿によって圧力指令値Cpの調整量を直接的に修正しても良いことも見出した。
【0094】
C.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。特に、上記各実施例における構成要素中の独立請求項に記載された要素以外の要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。さらに、独立請求項に記載された要素についても、本願明細書に開示された範囲で独立請求項に記載されていない要素と適宜入れ替えが可能である。
【0095】
さらに、上述の実施例において、上述の利点や効果の各々の全てが本願発明の必須の構成要件につながるものではなく、本願発明は、上述の利点や効果の各々を簡易に実現させる設計自由度を与えるものであって、少なくとも一つの利点あるいは効果を実現させるものであれば良い。
【0096】
C−1.第1変形例:上述の実施例では、プランジャポンプが使用されているが、たとえばベーンポンプを使用しても良い。本発明で使用可能なポンプは、一般に所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプであれば良い。ただし、容積型ポンプであっても、容積型ポンプへの液体の供給圧力に応じて所定のサイクル毎の液体供給量が有意な影響を受ける場合もあるので、たとえば供給圧力の低下に伴って容積型ポンプの駆動サイクル毎の吐出流量の低下を考慮した供給流量特性に修正して異常検知精度を高めるようにしても良い。
【0097】
C−2.第2変形例:上述の実施例や変形例では、交流電動機や空気圧モータが使用されているが、たとえば油圧モータを使用するようにしても良い。本発明で使用可能な駆動部は、一般に容積型ポンプを可変に駆動できるものであれば良い。
【0098】
C−3.第3変形例:上述の実施例や変形例では、本発明は、洗浄装置への適用例に基づいて説明されているが、たとえば塗装装置にも適用可能である。本発明は、一般に液体を吐出する液体吐出装置に適用可能である。
【0099】
C−4.第4変形例:上述の実施例や変形例では、ノズル160への洗浄水の供給を開閉する高圧バルブ140は1個だけであるが、たとえば2個以上のノズル160の各々に対して、高圧バルブ140を1個ずつ装備するようにしても良い。このような構成では、様々な運用形態に対応するために、高圧バルブ140が1個だけ開いている場合や複数個開いている場合に対応して、圧力目標値Ptや周波数指令値Cfを設定することが好ましい。さらに、各運用形態は、制御部111によって自動的に認識されるように構成されることが好ましい。
【0100】
さらに、高圧バルブ140を個々に開閉して複数のノズル160の各々について周波数指令値Cfや圧力指令値Cpを計測し、相互に比較することによって機能確認を行うようにしても良い。この方法によれば、実用性の高い異常検知を実現することができる。全てのノズル160が偶然に同程度の目詰まりを生じさせる可能性は極めて低いからである。
【0101】
C−5.第5変形例:上述の実施例や変形例では、一入力一出力系における古典制御論の範囲で構成されているが、たとえば複数入力複数出力系における状態フィードバック系(現代制御論)にも拡張可能である。このような拡張においては、たとえば異常検知対象のシステムダイナミクスを表す数学モデルを有する故障検出用のオブザーバを制御部111の内部に設けることによって実現することができる。この場合も、定常状態を標定とすれば、指令値を監視することによって簡易に異常検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1実施例の超高圧洗浄システム100を有する半導体研磨加工装置10を示すハードウェアブロック図。
【図2】第1実施例のポンプユニット110の構成を示す説明図。
【図3】第1実施例の超高圧洗浄システム100の制御ブロック図を示す説明図。
【図4】電動プランジャポンプ112のシステムダイナミクスを示す説明図。
【図5】第1実施例において半導体研磨加工装置10に対して超高圧洗浄システム100を設置する手順を示すフローチャート。
【図6】第1実施例における超高圧洗浄システム100の予備確認試験(S300)の手順を示すフローチャート。
【図7】第1実施例における超高圧洗浄システム100の検査基準値を設定するための計算式を示す説明図。
【図8】第1実施例における超高圧洗浄システム100の検査基準値を設定するための計算式を示す説明図。
【図9】ノズルホースにおける圧力損失の実測値のデータ。
【図10】第2実施例の超高圧洗浄システムが有するポンプユニット110aの構成を示す説明図。
【図11】第2実施例の超高圧洗浄システムの制御ブロック図を示す説明図。
【図12】エアプランジャポンプ112aのシステムダイナミクスを示す説明図。
【図13】第2実施例のポンプユニット110aの吐出圧力のタイムヒストリー(吐出圧特性)を示す説明図。
【符号の説明】
【0103】
10…半導体研磨加工装置
100…超高圧洗浄システム
110、110a…ポンプユニット
111…制御部
111c…指令値決定部
111d…演算処理部
111m…記憶部
112…電動プランジャポンプ
112a…エアプランジャポンプ
112ppa1…第1のピストン面
112ppa2…第2のピストン面
112pma…空気モータ
112i…インバータ
112m…交流電動機
112p…ポンプ本体
112r…電空レギュレータ
112pc…シリンダ
112pp…プランジャ
120…アキュムレータ
130…高圧フィルタ
140…高圧バルブ
150…圧力センサ
160…ノズル
210…ウェハキャリア
212…バッキングフィルム
220…プラテン
221…研磨パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置を制御する制御装置であって、
前記液体吐出装置は、
所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプと、
前記供給された液体を吐出するノズルと、
前記容積型ポンプから前記ノズルに前記液体を配送する配管部と、
空気圧モータと、圧縮空気を前記空気圧モータに供給する電空レギュレータとを備え、前記圧縮空気の供給圧力を操作することによって前記容積型ポンプを可変に駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルに供給される液体の圧力であるノズル圧を観測する観測部と、
予め設定された目標圧力値と前記観測されたノズル圧との差に応じて、前記圧縮空気の供給圧力の指令値を決定する指令値決定部と、
前記ノズルのオリフィス特性と前記容積型ポンプの供給流量特性とに基づいて決定された所定の範囲の閾値と、前記圧縮空気の供給圧力の指令値と、を比較して前記ノズルと前記容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知する異常検知部と、
を備え、
前記オリフィス特性は、前記ノズルの流量と圧力降下量との間の関係を表し、
前記供給流量特性は、前記サイクル毎に供給されるほぼ一定量の液体の流量を表す制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置であって、
前記閾値は、前記所定のサイクルにおける前記容積型ポンプの吐出圧力の実測値の積分値に応じて調整されている制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の制御装置であって、
前記調整量は、前記容積型ポンプへの前記洗浄水の供給圧力を計測する供給圧力センサを有し、前記センサの計測値に応じて修正されている制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の制御装置であって、
前記調整量は、前記目標圧力値に応じて修正されている制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記異常検知部は、予め設定された初期状態において、前記圧縮空気の供給圧力の指令値が前記所定の範囲の閾値の下方に外れたときには前記ノズルに異常が発生していると判定する制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記異常検知部は、予め設定された初期状態において、前記圧縮空気の供給圧力の指令値が前記所定の範囲の閾値の上方に外れたときには前記容積型ポンプに異常が発生していると判定する制御装置。
【請求項7】
液体吐出装置であって、
所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプと、
前記供給された液体を吐出するノズルと、
前記容積型ポンプから前記ノズルに前記液体を配送する配管部と、
空気圧モータと、圧縮空気を前記空気圧モータに供給する電空レギュレータとを備え、前記圧縮空気の供給圧力を操作することによって前記容積型ポンプを可変に駆動する駆動部と、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備える液体吐出装置。
【請求項8】
液体吐出装置を制御する制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプと、
前記供給された液体を吐出するノズルと、
前記容積型ポンプから前記ノズルに前記液体を配送する配管部と、
空気圧モータと、圧縮空気を前記空気圧モータに供給する電空レギュレータとを備え、前記圧縮空気の供給圧力を操作することによって前記容積型ポンプを可変に駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御方法は、
前記ノズルに供給される液体の圧力であるノズル圧を観測する観測工程と、
予め設定された目標圧力値と前記観測されたノズル圧との差に応じて、前記圧縮空気の供給圧力の指令値を決定する指令値決定工程と、
前記ノズルのオリフィス特性と前記容積型ポンプの供給流量特性とに基づいて決定された所定の範囲の閾値と、前記圧縮空気の供給圧力の指令値と、を比較して前記ノズルと前記容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知する異常検知工程と、
を備え、
前記オリフィス特性は、前記ノズルの流量と圧力降下量との間の関係を表し、
前記供給流量特性は、前記サイクル毎に供給されるほぼ一定量の液体の流量を表す制御方法。
【請求項9】
液体吐出装置を制御する制御装置の機能を実現させるためのコンピュータプログラムであって、
前記液体吐出装置は、
所定のサイクル毎にほぼ一定量の液体を供給する容積型ポンプと、
前記供給された液体を吐出するノズルと、
前記容積型ポンプから前記ノズルに前記液体を配送する配管部と、
空気圧モータと、圧縮空気を前記空気圧モータに供給する電空レギュレータとを備え、前記圧縮空気の供給圧力を操作することによって前記容積型ポンプを可変に駆動する駆動部と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
前記ノズルに供給される液体の圧力であるノズル圧を観測する観測機能と、
予め設定された目標圧力値と前記観測されたノズル圧との差に応じて、前記圧縮空気の供給圧力の指令値を決定する指令値決定機能と、
前記ノズルのオリフィス特性と前記容積型ポンプの供給流量特性とに基づいて決定された所定の範囲の閾値と、前記圧縮空気の供給圧力の指令値と、を比較して前記ノズルと前記容積型ポンプの少なくとも一方の異常を検知する異常検知機能と、
を前記制御装置に実現させるプログラムを備え、
前記オリフィス特性は、前記ノズルの流量と圧力降下量との間の関係を表し、
前記供給流量特性は、前記サイクル毎に供給されるほぼ一定量の液体の流量を表すコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−14094(P2010−14094A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177174(P2008−177174)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】