説明

異常検出装置

【課題】コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる異常検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の降圧型DC−DCコンバータ装置1は、DC−DCコンバータ回路2と、異常検出装置3とを備えている。異常検出装置3は、入力電圧モニタ回路30と、マイクロコンピュータ31とから構成されている。入力電圧モニタ回路30は、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧を周波数に変換してパルス信号として出力する。マイクロコンピュータ31は、第1回路部310と、第2回路部311とを備えている。第1回路部310は、入力されるパルス信号の周波数が所定周波数未満のとき、別のパルス信号を出力する。第2回路部311は、パルス信号が入力されると、連続して出力される別のパルス信号を、それ以降停止する。第1回路部310と第2回路部311とを組合せることで、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される物理量の異常を検出する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力される物理量の異常を検出する異常検出装置を備えた装置として、特開2006−101680号公報に開示されている入出力絶縁分離型DC−DCコンバータ装置がある。この入出力絶縁分離型DC−DCコンバータ装置は、異常検出装置に当たる、入力状態モニタ回路と、コントローラとを備えている。入力状態モニタ回路には、突入電流制限抵抗噐の電圧降下、及びDC−DCコンバータ回路の入力電圧が入力されている。入力状態モニタ回路は、これらが変化すると、その電圧に応じて異なる周期のパルス信号を出力する。このパルス信号は、フォトカプラを介してコントローラに入力される。コントローラは、パルス信号の周期に基づいて異常状態を判定し、必要に応じて外部へ警告する。
【特許文献1】特開2006−101680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、パルス信号の周期の判別は、ソフトウェアによって行うこともできるし、ハードウェアによって行うこともできる。ソフトウェアによって行う場合、回路の追加が不要であり、コストの増加を抑えることができる。しかし、処理時間の短縮には限界がある。これに対して、ハードウェアで処理する場合、ソフトウェアに比べ処理時間を短縮することができる。しかし、回路の追加によりコストの増加を招いてしまう。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、マイクロコンピュータに内蔵されている2つの回路部の機能を組合せることで、回路を追加することなく、異常検出信号出力までの時間を短縮できることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、請求項1に記載の異常検出装置は、入力される物理量の大きさを周波数に変換し、パルス信号として出力する変換回路と、変換回路の出力に基づいて物理量の異常を検出し異常検出信号を出力するマイクロコンピュータとを備えた異常検出装置において、 変換回路は、物理量の大きさが異常状態になったとき、周波数のより低いパルス信号を出力し、マイクロコンピュータは、第1端子及び第2端子を有し、第1端子に入力されるパルス信号の周波数が所定周波数未満のとき、第2端子からパルス信号を出力する第1回路部と、第3端子及び第4端子を有し、第3端子にパルス信号が入力されると、以降、第4端子から出力されるパルス信号を停止する第2回路部とを備え、変換回路の出力を第1端子に入力するとともに、第2端子の出力を第3端子に入力することで、第4端子から異常検出信号を出力させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる。マイクロコンピュータは、第1回路部と、第2回路部とを備えている。第1回路部と、第2回路部とを組合せることで、物理量の異常を検出し異常検出信号を出力することができる。第1回路部及び第2回路部は、回路であり、マイクロコンピュータの内部にハードウェアとして構成されている。そのため、マイクロコンピュータの外部に新たな回路を追加する必要がない。また、ソフトウェアに比べ処理時間を短縮することができる。従って、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる。なお、第1回路部と、第2回路部とを備えたマイクロコンピュータは、広く普及しており、安価に入手することが可能である。
【0008】
請求項2に記載の異常検出装置は、請求項1に記載の異常検出装置において、さらに、異常検出信号は、スイッチング素子を制御する制御信号と兼用されていることを特徴とする。この構成によれば、制御信号に関連する回路を簡素化することができる。
【0009】
請求項3に記載の異常検出装置は、請求項1又は2に記載の異常検出装置において、さらに、物理量は、電圧であることを特徴とする。この構成によれば、電圧の異常を検出することができる。
【0010】
請求項4に記載の異常検出装置は、請求項3に記載の異常検出装置において、さらに、物理量は、DC−DCコンバータの入力電圧であることを特徴とする。この構成によれば、DC−DCコンバータの入力電圧の異常を検出することができる。
【0011】
なお、本明細書でいう第1及び第2回路部、並びに第1〜第4端子は、回路部並びに端子を区別するために便宜的に導入したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る異常検出装置を、降圧型DC−DCコンバータ装置に適用した例を示す。
【0013】
まず、図1を参照して降圧型DC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態における降圧型DC−DCコンバータ装置のブロック図である。図2は、第1回路部の動作を説明するためのタイミングチャートである。図3は、第2回路部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0014】
図1に示す降圧型DC−DCコンバータ装置1は、高電圧を低電圧に変換して外部装置に供給する装置である。図1に示すように、降圧型DC−DCコンバータ装置1は、DC−DCコンバータ回路2と、異常検出装置3とから構成されている。
【0015】
DC−DCコンバータ回路2は、スイッチング素子を備え、これをスイッチングすることにより、入力される高電圧を低電圧に変換して出力する回路である。また、異常検出装置3から異常検出信号が入力されると、スイッチング素子のスイッチングを停止する機能を有する回路でもある。DC−DCコンバータ回路2の正極入力端子20は、高電圧バッテリスイッチ4を介して高電圧バッテリ5の正極端子に接続されている。高電圧バッテリ5の負極端子は接地されている。DC−DCコンバータ回路2の負極入力端子21は接地されている。また、制御端子22は異常検出装置3に接続されている。さらに、正極出力端子23及び負極出力端子24は外部装置(図略)に接続されている。
【0016】
異常検出装置3は、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧の異常を検出して異常検出信号を出力する装置である。異常検出装置3は、入力電圧モニタ回路30と、マイクロコンピュータ31とから構成されている。
【0017】
入力電圧モニタ回路30は、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧をモニタし、周波数に変換してパルス信号として出力する回路である。入力電圧モニタ回路30は、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧が所定範囲以内のとき、周波数f1のパルス信号を連続して出力する。これに対し、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧が所定範囲外、つまり、所定範囲の上限値を超えたとき、又は下限値未満のとき、異常と判断して周波数f1より低い周波数f2のパルス信号を連続して出力する。入力電圧モニタ回路30の入力端子300は、DC−DCコンバータ回路2の正極入力端子20に接続されている。また、出力端子301はマイクロコンピュータ31に接続されている。
【0018】
マイクロコンピュータ31は、入力電圧モニタ回路30の出力するパルス信号に基づいてDC−DCコンバータ回路2の入力電圧の異常を検出し、異常検出信号を出力する素子である。マイクロコンピュータ31は、ハードウェアからなる第1回路部310と、第2回路部311とを備えている。
【0019】
第1回路部310は、入力端子312(第1端子)と出力端子313(第2端子)とを有し、入力端子312に入力されるパルス信号の周波数が所定周波数未満のとき、出力端子313から別のパルス信号を出力する機能を有する回路である。より具体的には、図2に示すように、入力端子312に入力されるパルス信号の周期を内部タイマによってカウントし、所定周波数に対応する所定周期を超えたとき、出力端子313から別のパルス信号を出力する。ここでは、所定周波数が周波数f1となるように設定されている。
【0020】
図1に示すように、第2回路部311は、入力端子314(第3端子)と出力端子315(第4端子)とを有し、入力端子314にパルス信号が入力されると、出力端子315から連続して出力される別のパルス信号を、それ以降停止し、出力端子315をハイインピーダンス状態にする機能を有する回路である。より具体的には、図3に示すように、入力端子314に入力されるパルス信号の立下がりエッジで、出力端子315から出力される別のパルス信号を停止し、ハイインピーダンス状態にする。つまり、出力端子315から出力されるパルス信号が停止し、ハイインピーダンス状態になることで、異常検出信号を出力する。図1に示すように、第1回路部310の入力端子312は、入力モニタ回路30の出力端子301に接続されている。また、第1回部310の出力端子313は、第2回路部311の入力端子314に接続されている。第2回路部311の出力端子315は、DC−DCコンバータ回路2の制御端子22に接続されている。
【0021】
次に、図1を参照して、降圧型DC−DCコンバータ1の動作について説明する。高電圧バッテリスイッチ4がオンすると、高電圧バッテリ5の出力する高電圧がDC−DCコンバータ回路2に入力される。
【0022】
高電圧バッテリ5の出力電圧が所定範囲以内のとき、入力電圧モニタ回路30は、出力端子301から周波数f1のパルス信号を連続して出力する。入力端子312に入力されるパルス信号の周波数がf1であるため、第1回路部310は、出力端子313からパルス信号を出力しない。入力端子314にパルス信号が入力されないため、第2回路部311は、出力端子311からパルス信号を連続して出力する。つまり、異常検出信号を出力しないこととなる。制御端子22に異常検出信号が入力されないため、DC−DCコンバータ回路2は、スイッチング素子をスイッチングし、高電圧バッテリ5の出力電圧を低電圧に変換して外部装置に供給する。
【0023】
これに対し、高電圧バッテリ5の出力電圧が所定範囲外、つまり、所定範囲の上限値を超えたとき、又は下限値未満のとき、入力電圧モニタ回路30は、出力端子301から周波数f1より低い周波数f2のパルス信号を連続して出力する。入力端子312に入力されるパルス信号の周波数がf1より低いf2であるため、第1回路部310は、出力端子313からパルス信号を連続して出力する。入力端子314にパルス信号が入力されるため、第2回路部311は、出力端子315から連続して出力されるパルス信号を、それ以降停止し、ハイインピーダンス状態にする。つまり、異常検出信号を出力することとなる。制御端子22に異常検出信号が入力されるため、DC−DCコンバータ回路2は、スイッチング素子のスイッチングを停止し、外部装置への給電を停止する。
【0024】
最後に、効果について説明する。本実施形態によれば、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧の異常を検出し、異常検出信号を出力することができる。しかも、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる。マイクロコンピュータ31は、第1回路部310と、第2回路部311とを備えている。第1回路部310と、第2回路部311とを組合せることで、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧の異常を検出し、異常検出信号を出力することができる。第1回路部310及び第2回路部311は、回路であり、マイクロコンピュータ31の内部にハードウェアとして構成されている。このようなマイクロコンピュータは、一般的に広く普及しており、安価に入手することができる。そのため、マイクロコンピュータ31の外部に新たな回路を追加する必要がない。また、ソフトウェアに比べ処理時間を短縮することができる。具体的には、ソフトウェアによって100μsかかっていた処理時間を1μsにすることができた。従って、コストの増加を抑え、異常検出信号出力までの時間を短縮することができる。また、高電圧バッテリ5の出力電圧が所定範囲の上限値を超えたとき、DC−DCコンバータ回路2のスイッチング素子のスイッチングを停止することで、スイッチング素子の破損を防止することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、電圧、具体的には、DC−DCコンバータ回路2の入力電圧の異常を検出する例を挙げているが、これに限られるものではない。電圧以外の物理量の異常を検出する場合にも適用できる。また、DC−DCコンバータ回路以外の装置においても広く適用できる。
【0026】
また、本実施形態では、異常検出信号が入力されると、DC−DCコンバータ回路2が
スイッチング素子のスイッチングを停止する例を挙げているが、これに限られるものではない。異常検出信号を、スイッチング素子をスイッチングさせるための制御信号と兼用させてもよい。この場合、制御に関連する回路を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態における降圧型DC−DCコンバータ装置のブロック図である。
【図2】第1回路部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】第2回路部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1・・・降圧型DC−DCコンバータ、2・・・DC−DCコンバータ回路、20・・・正極入力端子、21・・・負極入力端子、22・・・制御端子、23・・・正極出力端子、24・・・負極出力端子、3・・・異常検出装置、30・・・入力電圧モニタ回路(変換回路)、300・・・入力端子、301・・・出力端子、31・・・マイクロコンピュータ、310・・・第1回路部、311・・・第2回路部、312・・・入力端子(第1端子)、313・・・出力端子(第2端子)、314・・・入力端子(第3端子)、315・・・出力端子(第4端子)、4・・・高電圧バッテリスイッチ、5・・・高電圧バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される物理量の大きさを周波数に変換し、パルス信号として出力する変換回路と、該変換回路の出力に基づいて該物理量の異常を検出し異常検出信号を出力するマイクロコンピュータとを備えた異常検出装置において、
該変換回路は、該物理量の大きさが異常状態になったとき、周波数のより低いパルス信号を出力し、
該マイクロコンピュータは、第1端子及び第2端子を有し、該第1端子に入力されるパルス信号の周波数が所定周波数未満のとき、該第2端子からパルス信号を出力する第1回路部と、第3端子及び第4端子を有し、該第3端子にパルス信号が入力されると、以降、該第4端子から出力されるパルス信号を停止する第2回路部とを備え、該変換回路の出力を該第1端子に入力するとともに、該第2端子の出力を該第3端子に入力することで、該第4端子から該異常検出信号を出力させることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記異常検出信号は、スイッチング素子を制御する制御信号と兼用されていることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記物理量は、電圧であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記物理量は、DC−DCコンバータの入力電圧であることを特徴とする請求項3に記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−118748(P2008−118748A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297836(P2006−297836)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】