説明

異常検知装置

【課題】トイレ内での人の異常を検知する異常検知装置において、トイレのドアの開閉を確実に検知でき、トイレ内での在室時間を正確に測定して異常検知を行うことを可能にする。
【解決手段】トイレ2内での利用者5の異常を検知する異常検知装置1であって、トイレ2の上方から下方に向けて超音波を発信し、その超音波の反射波を受信する超音波センサ12、13と、トイレ2のドア3の高さH1を記憶する記憶部16と、超音波センサ12、13の反射波に応じた受信信号と記憶部16内のドア3の高さH1とに基づいてドア3の開閉を検知する開閉検知部21と、開閉検知部21で検知したドア3の開閉に基づいてトイレ2内での利用者5の在室時間T1を測定し、在室時間T1が第1許容時間TS1を超える場合に異常と判定する異常判定部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象室内での人の身体的な異常を検知する異常検知装置に関し、特に、トイレ等の密室で発生する身体的な異常を検知する検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療技術の進歩等に伴って高齢者の割合が高くなっており、在宅中に身体的な異常を訴える機会が増加している。リビング等の家族が集まり易い場所で異常が発生した場合であれば、比較的に速やかに対処することが可能であるものの、トイレ等の密室で異常が発生した場合には、発見が遅れるケースが少なくなく、大事に至る危険性も否定できない。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、トイレのドアにロックセンサを設け、トイレ内の人の在室時間を測定して異常を検知する異常監視装置が開示されている。この異常監視装置では、ロックセンサの信号に基づいて、施錠されてから解錠されるまでの時間を測定し、その測定時間が許容時間を超えれば、異常が発生したと判断して異常警報等を出力する。
【0004】
上記異常監視装置によれば、トイレ内で異常が発生した際に、それが直ちに家族やケア担当者等へ通知されるため、周りの者が随時注意していなくても、異常事態の発生を迅速に察知することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−330952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の異常監視装置においては、トイレのドアが施錠されない限り、トイレ内に人が入室したと判断されないため、ドアを施錠しなかった場合には、在室中の時間が測定されず、異常の監視自体が行われないという問題がある。
【0007】
また、上記方式の他、ドア部分に電磁方式や光学方式の接点センサ等を設けてドアの開閉を検知するシステムも考案されているが、かかるシステムをトイレ内での異常監視に利用したとしても、所定の閉扉位置までドアを閉めなければ、ドアの閉扉を検知することができない。このため、在室時間を正確に測定できない危険性があり、依然として異常事態の発生を見落とす虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、監視対象室のドアの開閉を確実に検知でき、監視対象室内での在室時間を正確に測定して異常検知を行うことが可能な異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、監視対象室内での人の異常を検知する異常検知装置であって、前記監視対象室の上方から下方に向けて超音波を発信し、該超音波の反射波を受信する超音波センサと、前記監視対象室のドアの高さを記憶する記憶部と、前記超音波センサの反射波に応じた受信信号と前記記憶部内のドアの高さとに基づいてドアの状態変化を検知する変化検知部と、該変化検知部の検知結果を利用して前記監視対象室内での人の在室時間を測定し、該在室時間が所定の許容時間を超える場合に異常と判定する異常判定部とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、記憶部に記憶したドアの高さに関する情報と、実使用時の超音波センサの受信信号とに基づいてドアの状態変化を検知するため、ドアが超音波センサの感知エリア内を通過するだけで、ドアの開扉操作や閉扉操作を検知することができる。このため、人が完全にドアを閉めなくともドアを動かしたことを検知でき、高い精度で人の入退室を検知することが可能になる。これにより、監視対象室内での人の在室時間を正確に測定できるようになり、確実な異常検知を行うことが可能になる。
【0011】
上記異常検知装置において、前記超音波センサを複数設け、該複数の超音波センサを前記ドアの開閉方向に沿って配列することができる。この構成によれば、ドアが開扉方向又は閉鎖方向に移動するのみでドアの開閉を検知することができるため、より高精度に人の入退室を検知することが可能になる。
【0012】
上記異常検知装置において、前記超音波センサの受信信号に基づいて前記監視対象室内の人の身長を検知する身長検知部を備え、前記記憶部は、前記身長検知部で検知した人の身長を記憶し、前記異常判定部は、前記超音波センサの受信信号と前記記憶部内の人の身長とに基づいて前記監視対象室内での人の姿勢を識別し、該識別した人の姿勢が所定の正常姿勢と異なる場合に異常と判定することができる。
【0013】
上記構成によれば、人が監視対象室内で倒れる等の異常姿勢をとれば、即座に異常が発生したと検知されるため、人の在室時間が異常時間に達する前であっても、監視対象室内で異常が発生したと検知することができる。このため、監視対象室内で発生した利用者の身体的な異常を迅速に察知できるようになり、速やかに対処することが可能になる。
【0014】
上記異常検知装置において、前記異常判定部が、前記監視対象室の床面から所定の高さを有する領域を異常領域として設定し、該異常領域内に人の頂部が位置する場合に異常と判定することができる。
【0015】
上記構成によれば、人の姿勢全体を識別するのではなく、人の頂部の位置を基準に異常を判定するため、超音波センサを監視対象室内に数多く設置する必要がなく、簡単な構成で異常検知を行うことが可能になる。
【0016】
上記異常検知装置において、前記異常領域内で人の頂部を感知し得ないように前記超音波センサの出力を調整する出力調整部を備え、前記異常判定部が、人が入室後の前記監視対象室内において、前記超音波センサの受信信号から人の頂部の位置を識別できなかったときに、人の頂部が前記異常領域内に属すると判定することができる。
【0017】
上記構成によれば、異常領域内で人の頂部を感知し得ないように超音波センサの出力を制限するのみで、異常を検知することが可能になるため、より簡単な構成で異常検知を行うことが可能になる。また、この場合、一般的に市販されている超音波センサであれば、出力を下げて用いることになるため、消費電力の削減を図ることも可能になる。
【0018】
上記異常検知装置において、前記出力調整部が、前記監視対象室の高さと前記異常領域の高さとに基づいて前記超音波センサの出力を自動調整することができる。
【0019】
この構成によれば、異常検知装置を設置する監視対象室の高さに合わせて超音波センサの出力が自動調整されるため、異常検知装置を利用可能な監視対象室のサイズ等が制限されるのを回避することができ、汎用性を向上させることが可能になる。また、異常検知装置を設置した際に、利用者自らが超音波センサの出力を微調整する必要もなくなるため、利便性を向上させることも可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、監視対象室のドアの開閉を確実に検知でき、監視対象室内での在室時間を正確に測定して異常検知を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる異常検知装置をトイレに適用したシステムの一実施の形態を示し、本異常検知装置1は、天井部2a等のトイレ2の上部に設置されて使用される。
【0023】
異常検知装置1は、例えば、図2に示す外観を有し、2組の超音波センサ12、13と、発光手段としてのLED14とが装置本体11に付設されて構成される。このうち、超音波センサ12、13は、いずれも、超音波を発信するための発信用センサ12a、13aと、反射波を受信するための受信用センサ12b、13bとを一対にして構成される。
【0024】
異常検知装置1の設置に際しては、異常検知装置1の設置位置及び方向を調整し、図3に示すように、超音波センサ12が反射波を受信可能なエリア(以下、「感知エリア」という)12cと、超音波センサ13の感知エリア13cとを、ドア3の先端部3aの移動軌跡上に配列させる。また、その際、感知エリア13cが感知エリア12cよりも内側に位置するように設置し、超音波センサ13をドア3の開扉位置の周辺で作動させ、超音波センサ12を閉扉位置の周辺で作動させる。
【0025】
また、異常検知装置1は、図4に示す機能的構成を有し、上記の超音波センサ12、13と、天井部2aから物体までの距離を算出する距離算出部15と、各種データを記憶する記憶部16と、利用者5の異常を検知する異常検知部17と、異常検知部17で検知した異常を外部装置に出力する出力部18と、設定操作や異常検知等に応じて発光するLED14と、超音波センサ12、13の出力を調整する出力調整部19と、異常検知装置1全体の動作を統括的に制御する制御部20とを備える。
【0026】
距離算出部15は、超音波センサ12、13から出力される受信信号に基づいて超音波の発信から反射波の受信までの時間を導き出し、天井部2aから超音波を反射した物体までの距離を算出するものである。この距離算出部15は、ドア3の高さやトイレ2内の利用者5の身長、利用者5の頂部が位置する高さ(図1を参照)等を検出するために設けられる。
【0027】
記憶部16は、超音波センサ12、13を用いて測定した測定値や各種の設定時間等を記憶する内部メモリである。この記憶部16には、ドア3や身長等の高さに関するデータや、異常判定に用いる許容時間に関するデータ等が格納される。
【0028】
異常検知部17は、超音波センサ12、13の受信信号や記憶部16内のデータ等を用いて異常の有無を検知するものであり、開閉検知部21、タイマ22及び異常判定部23から構成される。開閉検知部21は、ドア3の開閉を検知するためのものであり、タイマ22は、利用者5の在室時間等を計時するためのものである。また、異常判定部23は、超音波センサ12、13の受信信号やタイマ22のカウント値等に基づいて利用者5に身体的な異常が生じているか否かを判別するためのものである。
【0029】
出力部18は、異常検知部17から出力される異常検知信号を外部の表示装置やケアセンタ(不図示)等に送信するための通信装置である。この出力部18には、有線LANや無線LAN等で用いる通信装置の他、特開2004−336708号公報に記載の電力線通信装置を利用することもできる。
【0030】
出力調整部19は、超音波センサ12、13から発信する超音波の強度や、それらセンサ12、13での反射波の受信感度を調整するためのものである。超音波センサ12、13の出力の調整は、両センサ12、13に可変抵抗器等を接続し、その抵抗値を調整すること等によって行うことができる。
【0031】
次に、上記構成を有する異常検知装置1を用いた異常検知方法について、図5及び図6を参照しながら説明する。ここでは、異常検知装置1の動作理解を容易にするため、個々の動作説明に先立ち、全体を概略的に説明する。
【0032】
異常検知装置1を用いた異常検知処理では、大別して、ドア3の開閉の検知に基づく利用者5の在室時間の異常判定と、入室後の利用者5の頂部の位置に基づく異常判定処理との二種類の検知処理を行う。
【0033】
前者の「ドア3の開閉の検知に基づく利用者5の在室時間の異常判定」においては、図5に示すように、先ず、異常検知装置1の感知エリア(超音波センサ12、13の感知エリア)内で、ドア3の高さH1に合致する高さの物体が通過したのを感知したときに、ドア3が開閉されたとして検知する。その際、超音波センサ12、13の感知の順序から通過した物体の移動方向を判定し、ドア3が開扉されたのか、それとも、ドア3が閉扉されたのかも併せて検知する。
【0034】
そして、1度目の開閉(利用者5の入室に相当)の検知から2度目の開閉(退室に相当)の検知までの間の時間(在室時間に相当)を測定し、その測定時間が許容時間を超える場合に異常事態が発生したと判別する。
【0035】
一方、後者の「入室後の利用者5の頂部の位置に基づく異常判定」では、図6に示すように、先ず、異常領域A3の高さH3を設定するとともに、超音波センサ12、13の受信信号に基づいて利用者5の身長H2を測定する。このうち、異常領域A3の高さH3は、利用者5が床面2b上に倒れた状態や、便器4に座った状態で極端な前屈みになった状態のときに、利用者5の頂部が存在する領域の高さに対応するものである。
【0036】
ここで、「利用者5の頂部」とは、必ずしも利用者5の頭部を意味するものではなく、利用者5が採っている姿勢の下で頂部となるものを意味する。従って、例えば、利用者5が前屈姿勢を採っており、頭部よりも背中が上方に位置する場合には、背中が上記「利用者5の頂部」に該当する。
【0037】
また、図中の高さH4は、利用者5が便器4に通常の姿勢で座っている状態での高さに対応するものである。このため、利用者5の頂部の存在領域が、領域A2(身長H2の領域から高さH4の領域を除いた領域)と、領域A4(高さH4の領域から異常領域A3を除いた領域)とのいずれであるかを判別することにより、在室中の利用者5が立っているのか、それとも、座っているのかを認識することができる。
【0038】
そして、利用者5の在室期間中に、超音波センサ12、13の受信信号から利用者5の頂部が異常領域A3内に存在することが検知され、それが所定時間に亘って持続された場合に、異常事態が発生したと判別する。
【0039】
次に、上記異常検知処理に際しての個々の動作について説明する。ここでは、先ず、図2、図7及び図8を中心に参照しながら、初期設定処理について説明する。
【0040】
初期設定処理は、異常検知装置1の設置時やトイレ2を改装した後等に行うものである。同処理にあたっては、図7及び図8に示すように、先ず、超音波センサ12、13から床面2bに向けて超音波を発信し、距離算出部15により天井部2aから床面2bまでの距離を算出してトイレ2の高さH5を測定する(ステップS1)。
【0041】
次いで、出力調整部19において、トイレ2の高さH5と異常領域A3の高さH3との関係に合わせて、超音波センサ12、13の出力を調整する(ステップS2)。具体的には、超音波センサ12、13からの超音波の発信強度を増減し、天井部2aから距離D(トイレ2の高さH5から異常領域A3の高さH3を減算したもの)の領域AD内でのみ、人体や衣服の存在を感知し得るように設定する。例えば、超音波センサ12、13の初期出力が高く、トイレ2内の全域で人体や衣服の存在を感知する場合には、それらの存在を異常領域A3内で感知し得なくなるまで、超音波センサ12、13の出力を低減する。
【0042】
尚、人体や衣服と他の物体(トイレ2の床面2b等)とでは超音波の反射率が異なるため、上記の調整処理は、その反射率の違いを利用して行う。このため、超音波センサ12、13の出力の調整後は、異常領域A3内に利用者5の頂部が存在しても、超音波センサ12、13の受信信号からはそれを直接感知できない状態となる。
【0043】
次に、距離算出部15において、超音波センサ12、13の受信信号からドア3の高さH1を測定し、記憶部16に記憶する(ステップS3)。ドア3の高さH1の測定は、ドア3が超音波センサ12、13の感知エリア内に存在する状態で行う必要があるため、ドア3を開閉しながら実行する。
【0044】
次いで、利用者5の在室時間T1の異常を検知する際のしきい値(第1許容時間)TS1を設定する(ステップS5)。この第1許容時間TS1は、利用者5が長時間に亘ってトイレ2から出てこないか否かを判定するためのものであるため、例えば、20〜30分程度に設定することが好ましい。
【0045】
尚、第1許容時間TS1は、初期設定時に設定する場合に限らず、異常検知装置1の製造段階でデフォルト値として設定することもできる。また、第1許容時間TS1を固定値とするのではなく、利用者5が使用中に変更可能とすることもできる。
【0046】
次に、利用者5の頂部の位置の異常を検知する際のしきい値(第2許容時間)TS2を設定する(ステップS6)。この第2許容時間TS2は、利用者5の頂部が異常領域A3内に存在する場合の許容時間を定めるものであるが、身体的な異常が生じていなくても、床面2bに落下した物を拾う等の動作を行えば、利用者5の頂部が異常領域A3内に存在することになる。その一方で、身体的な異常の発生に起因して利用者5の頂部が異常領域A3内に存在する場合には、一刻も早く異常として識別する必要がある。
【0047】
このため、第2許容時間TS2は、例えば、30秒〜3分程度の時間に設定することが好ましく、これにより、一時的な動作に基づく誤検出を回避しつつ、迅速に異常を察知することが可能になる。尚、第2許容時間TS2においても、第1許容時間TS1と同様、製造段階で設定してもよいし、また、事後的に変更可能とすることもできる。
【0048】
続いて、異常検知処理について、図2及び図9を中心に参照しながら説明する。
【0049】
利用者5がドア3を開けてトイレ2内に入室すると(図1を参照)、図9に示すように、先ず、開閉検知部21において、ドア3の開扉を検知する(ステップS11)。次いで、距離算出部15において、超音波センサ12、13の受信信号から利用者5の身長H2を算出し、記憶部16に記憶する(ステップS12)。
【0050】
その後、利用者5がドア3を閉じるのに応じて、開閉検知部21によりドア3の閉扉を検知する(ステップS13)。この際、ドア3が完全に閉まっていなくても、ドア3が閉扉方向に移動するのみで、超音波センサ12、13の受信信号に変化が生じるため、利用者5の閉扉動作を精度良く検知することができる。
【0051】
ドア3の閉扉を検知すると、タイマ22を作動させ、在室時間T1の測定を開始する(ステップS14)。尚、利用者5がトイレ2を利用し始めると、「入室後の利用者5の頂部の位置に基づく異常判定」を開始するが(ステップS15)、説明の便宜上、これについては後に詳述する。また、以下のステップS16〜S20の説明に際しては、ステップS15の処理において何らの異常も検出されなかったものとする。
【0052】
次いで、異常判定部23において、タイマ22の計時時間と第1許容時間TS1とを対比し、在室時間T1が第1許容時間TS1を超えるか否かを判定する(ステップS16)。その後、第1許容時間TS1を超えてもドア3の開扉を検知できない場合には、トイレ2内の利用者5に何らかの異常が発生したと判定し(ステップS17)、出力部18を介して異常検知信号を出力する(ステップS18)。
【0053】
これに対し、在室時間T1が第1許容時間TS1を超えない時点で、ドア3の開扉を検知した場合には(ステップS16:No、ステップS19)、正常状態であると判定し(ステップS20)、異常検知信号の出力を行うことなく、タイマ22のカウント値をリセットする(ステップS21)。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、超音波センサ12、13を用いて測定したドア3の高さH1のデータを予め記憶部16に記憶しておき、その高さH1のデータと実使用時の超音波センサ12、13の受信信号とに基づいてドア3の開閉を検知するため、ドア3が超音波センサ12、13の感知エリア内を通過するだけで、ドア3の開閉を検知することができる。このため、利用者5が完全にドア3を閉めなくともドア3を動かしたことを検知することができ、高い精度で利用者5の入退室を検知することが可能になる。これにより、トイレ2内での人の在室時間を正確に測定できるようになり、確実な異常検知を行うことが可能になる。
【0055】
尚、上記の実施形態においては、利用者5の入室を判定するに際し、ドア3の開扉と閉扉の双方を検知するが、例えば、公衆トイレ等のように、非利用時に開扉された状態が維持されるものを対象とする場合には、ドア3の閉扉のみを検知し、それを利用者5の入室に対応付ければよい。
【0056】
続いて、入室後の利用者5の頂部の位置に基づく異常判定(図9のステップS15)について、図2、図6及び図10を中心に参照しながら説明する。
【0057】
かかる異常判定にあたっては、図10に示すように、先ず、距離算出部15において、超音波センサ12、13の受信信号に基づき利用者5の頂部の位置を検出する(ステップS31)。尚、頂部の位置の検出に際しては、超音波センサ12、13のいずれか一方の受信信号を基にしてもよいし、双方の受信信号を基にしてもよい。
【0058】
次いで、異常判定部23において、頂部の位置の識別が可能であるか否かを判定し(ステップS32)、識別できる場合には、その識別した位置が図6に示す領域A2内に属するか否かを判定する(ステップS33)。
【0059】
判定の結果、領域A2内に属する場合には、利用者5は起立している(図6の5aを参照)と識別する(ステップS34)。一方、領域A2内に属さない場合には、利用者5の位置は図6に示す領域A4内に属することになるため、利用者5は通常の姿勢で便器4に座っている(図6の5bを参照)と識別する(ステップS35)。これらの場合、利用者5の姿勢に異常があると認められないため、正常状態であると判定し(ステップS36)、ドア3の開扉が検知されるまで、頂部の位置の検出を継続する(ステップS37:No)。
【0060】
これに対し、頂部の位置を識別できなかった場合(頂部の存在を認識できなかった場合も含む)には(ステップS32:No)、頂部の位置が図6に示す異常領域A3内に属することを意味するため、異常事態が発生した可能性があると判定する(ステップS38)。それと同時に、タイマ22を作動させ、異常領域A3内での存在時間T2の測定を開始する(ステップS39)。
【0061】
次いで、異常判定部23において、タイマ22の計時時間と第2許容時間TS2とを対比し、存在時間T2が第2許容時間TS2を超えるか否かを判定する(ステップS40)。
【0062】
その後、頂部の位置を識別できない状態が持続されたまま、存在時間T2が第2許容時間TS2を超えた場合には(ステップS40:Yes)、利用者5がトイレ2内で倒れていたり(図6の5cを参照)、極端な前屈みの姿勢を継続している虞があるため、異常が発生したと判定し(ステップS41)、出力部18を介して異常検知信号を出力する(ステップS42)。
【0063】
一方、存在時間T2が第2許容時間TS2を超える前に、頂部の位置が領域A2又はA4内に属することを識別し得た場合には(ステップS40:No、ステップS43)、特に異常は発生しなかったと判定し(ステップS44)、タイマ22のカウント値をリセットする(ステップS45)。その後は、上記ステップS26と同様に、ドア3の開扉が検知されるまで、継続的に頂部の位置を検出する(ステップS37:No)。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、超音波センサ12、13の受信信号から利用者5の頂部の位置を識別するとともに、識別した位置が異常領域A3内に属するか否かを判断して異常を判定するため、利用者5がトイレ2内で倒れる等の異常姿勢をとれば、在室時間T1が異常時間(第1許容時間TS1)に達する前であっても、利用者5に何らかの異常が発生したと検知することができる。これにより、監視対象室内で発生した利用者5の身体的な異常を迅速に察知できるようになり、速やかに対処することが可能になる。
【0065】
また、上記の際、利用者5の姿勢全体を識別するのではなく、頂部が位置する高さを基準に異常を判定するため、超音波センサをトイレ2内に数多く設置する必要がなく、簡単な構成で異常検知を行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明にかかる異常検知装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の異常検知装置を示す外観図である。
【図3】図1の異常検知装置の設置例を示す模式図である。
【図4】図1の異常検知装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】異常検知方法の概略を説明する図である。
【図6】異常検知方法の概略を説明する図である。
【図7】初期設定処理の動作を説明するフローチャートである。
【図8】初期設定処理の動作を説明する模式図である。
【図9】異常検知処理の動作を説明するフローチャートである。
【図10】図9のステップS15の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 異常検知装置
2 トイレ
2a 天井部
2b 床面
3 ドア
3a 先端部
4 便器
5(5a〜5c) 利用者
11 装置本体
12、13 超音波センサ
12a、13a 発信用センサ
12b、13b 受信用センサ
12c、13c 感知エリア
14 LED
15 距離算出部
16 記憶部
17 異常検知部
18 出力部
19 出力調整部
20 制御部
21 開閉検知部
22 タイマ
23 異常判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象室内での人の異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視対象室の上方から下方に向けて超音波を発信し、該超音波の反射波を受信する超音波センサと、
前記監視対象室のドアの高さを記憶する記憶部と、
前記超音波センサの反射波に応じた受信信号と前記記憶部内のドアの高さとに基づいてドアの状態変化を検知する変化検知部と、
該変化検知部の検知結果を利用して前記監視対象室内での人の在室時間を測定し、該在室時間が所定の許容時間を超える場合に異常と判定する異常判定部とを備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記超音波センサが複数設けられ、該複数の超音波センサが前記ドアの開閉方向に沿って配列されることを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記超音波センサの受信信号に基づいて前記監視対象室内の人の身長を検知する身長検知部を備え、
前記記憶部は、前記身長検知部で検知した人の身長を記憶し、
前記異常判定部は、前記超音波センサの受信信号と前記記憶部内の人の身長とに基づいて前記監視対象室内での人の姿勢を識別し、該識別した人の姿勢が所定の正常姿勢と異なる場合に異常と判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記監視対象室の床面から所定の高さを有する領域を異常領域として設定し、該異常領域内に人の頂部が位置する場合に異常と判定することを特徴とする請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記異常領域内で人の頂部を感知し得ないように前記超音波センサの出力を調整する出力調整部を備え、
前記異常判定部は、人が入室後の前記監視対象室内において、前記超音波センサの受信信号から人の頂部の位置を識別できなかったときに、人の頂部が前記異常領域内に属すると判定することを特徴とする請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記出力調整部は、前記監視対象室の高さと前記異常領域の高さとに基づいて前記超音波センサの出力を自動調整することを特徴とする請求項5に記載の異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−211240(P2009−211240A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51541(P2008−51541)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(500096972)
【Fターム(参考)】