説明

異常検知装置

【課題】各磁気検知素子の位置ずれや感度のバラつきを抑え、各磁気検知素子の異常を検知することができ、各磁気検知素子の故障を起因とする磁気エンコーダの異常の誤検知を防止すること。
【解決手段】異常検知装置1は、回転方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁された回転磁石9と、回転磁石9の外周部に対向して設けられた2つの磁気検知素子10a,10bと、2つの磁気検知素子10a,10bの出力信号に基づいて磁気検知素子10a,10bの異常を検知する異常検知手段4と、を備え、2つの磁気検知素子10a,10bは、同一の感度特性を有し、同一の基板上に近接して配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気エンコーダ用の磁気検知素子の異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の磁気エンコーダの異常を検知するものとして、2つの磁気検知素子を用いた異常検出回路が知られている(特許文献1参照)。この異常検出回路は、N極とS極とが交互に着磁された回転体からなる回転磁石と、回転磁石の周方向に設けられた2つの磁気検知素子と、2つの磁気検知素子の出力信号が入力されるEXOR(Exclusive−OR)ゲート(回路)と、を備えている。2つの磁気検知素子は、EXOR回路に入力される各出力信号が逆相信号となる位置に配置されている。EXOR回路の出力信号は、磁気エンコーダが正常であれば各出力信号の位相が完全に逆相関係を保つため「H」レベル信号となるが、磁石の欠落等により磁気エンコーダに異常が発生した場合には各出力信号の位相関係がずれるため「L」レベル信号となる。このように、特許文献1に記載の異常検出回路は、各磁気検知素子の出力信号の排他的論理和をとることで磁気エンコーダの異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−201364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の異常検出回路では、逆相信号となる各磁気検知素子の出力信号を基準に磁気エンコーダの異常を検知している。しかしながら、従来の異常検出回路では、各磁気検知素子の位置ずれや感度のバラつき等により各磁気検知素子の出力信号の位相ずれが生じた場合には、磁気エンコーダの異常と判定するので、磁気検知素子自体の異常を検知することができず、磁気エンコーダの異常を誤検知してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、磁気検知素子の位置ずれや感度のバラつきを抑え、磁気検知素子の異常を検知することができると共に、磁気検知素子の故障を起因とする磁気エンコーダ異常の誤検知を防止することができる異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常検知装置は、回転方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁された回転磁石と、前記回転磁石の外周部に対向して設けられた2つの磁気検知素子と、前記2つの磁気検知素子の出力信号に基づいて前記磁気検知素子の異常を検知する異常検知手段と、を備え、前記2つの磁気検知素子は、同一の感度特性を有し、同一の基板上に近接して配置されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、同一の感度特性を有する2つの磁気検知素子が同一の基板上に近接して配置されるので、磁気検知素子の感度のバラつきや位置ずれが生じないため、磁気検知素子からは同一の信号が出力される。従って、磁気検知素子の異常を検知することができ、磁気検知素子の故障を起因とする磁気エンコーダ異常の誤検知を防止することができる。
【0008】
上記異常検知装置において、前記2つの磁気検知素子は、単一のパッケージ内に収容されることが好ましい。
【0009】
上記異常検知装置において、前記2つの磁気検知素子は、上下に積層されて形成されることが好ましい。
【0010】
上記異常検知装置において、前記2つの磁気検知素子は、磁気抵抗効果素子であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、各磁気検知素子を同一プロセスで作製することができるので、より感度特性のバラつきの無い素子を作製することができる。また、2つの磁気抵抗効果素子を隣接配置することができるので、センサパッケージを小型化することができる。
【0012】
上記異常検知装置において、前記異常検知手段は、前記2つの磁気検知素子の出力信号の排他的論理和をとる論理回路で構成されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、簡単な回路構成で磁気検知素子の異常を検知することができる。
【0014】
上記異常検知装置において、前記異常検知手段は、一方の磁気検知素子の出力信号がゲート入力となる第1のCMOS回路と、他方の磁気検知素子の出力信号がゲート入力となる第2のCMOS回路とを有し、第1及び第2のCMOS回路の各ゲート出力は共通接続されていることを特徴とする。
【0015】
この場合には、第1の及び第2のCMOS回路のゲート入力がいずれか一方の磁気検知素子の故障によって位相が揃わない信号になると、ゲート出力が短絡して大電流が流れるので、磁気検知素子のいずれか一方に異常があると判断することができる。一方、第1の及び第2のCMOS回路の各ゲート入力が同一位相の信号である場合には、ゲート出力が短絡しない(大電流が流れない)ので、各磁気検知素子はいずれも正常であると判断することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各磁気検知素子の位置ずれや感度のバラつきを抑え、各磁気検知素子の異常を検知することができ、各磁気検知素子の故障を起因とする磁気エンコーダの異常の誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置を模式的に示す図である。
【図2】本実施の形態に係る異常検知装置の異常検知手段を示す図である。
【図3】比較例及び本発明に係る異常検知装置の作用を説明するための図である。
【図4】本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の積層構造の一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置の異常検出手段を示す回路図である。
【図6】変形例に係る異常検知装置の異常検出手段を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る異常検知装置は、複数の磁気検知素子のセンサ出力に基づいて磁気検知素子の異常を検知するものである。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る異常検知装置を模式的に示した図であり、図1(a)は異常検知装置の全体を示し、図1(b)は異常検知装置の一部を拡大して示している。図1(a)に示すように、異常検知装置1は、磁気エンコーダ2と、磁気エンコーダ2の磁場をセンスする磁気センサ3と、磁気センサ3の異常を検知する異常検知手段4と、を備えている。
【0020】
磁気エンコーダ2は、基台5と、基台5上に設けられた回転体6とから構成され、回転体6の回転軸7が、基台5上に固定された軸受(図示省略)により回転自在に支持されている。基台5、軸受及び回転軸7は、合成樹脂材料等の非磁性材料で形成されている。回転体6は、薄型の円盤状に形成され、回転軸7に固定されると共に非磁性材料で形成される内周部8と、内周部8の外周に設けられた回転磁石9とから構成されている。回転磁石9は、回転方向にN極とS極とが交互に着磁されている。すなわち、回転磁石9は、周方向に隣接する磁極が異なる極性で着磁されている。
【0021】
基台5上には、回転磁石9の外周面に対向する位置に、磁気センサ3が近接して配設されている。磁気センサ3は、図1(b)に示すように、複数(例えば、2つ)の磁気検知素子10a,10bが同一の基板12上に近接した状態で実装されており、これらが単一のセンサパッケージ11内に収容されている。各磁気検知素子10a,10bは、同一の感度特性を有する磁気検知素子で構成され、感度軸が基板12の面内方向と水平に形成されている。ここで、磁気検知素子10として、例えば、GMR(Giant Magneto Resistive)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子等の磁気抵抗効果素子を用いること可能であり、高出力及び高感度の点でGMR素子を用いることが好ましい。このように各磁気検知素子10a,10bを同一の感度特性を持つ磁気抵抗効果素子で構成することで、各磁気検知素子10a,10bを同一条件で(同一プロセスで)作製することができ、感度特性のバラつきの無い磁気検知素子を作製することができる。
【0022】
また、これら各磁気検知素子10a,10bは、素子間の距離Lを極力短く(例えば、1mm)した状態で基板12に実装することが可能である。そのため、2つの磁気検知素子10a,10bを隣接配置した2系統センサを小型のセンサパッケージ11内に収容することができるので、磁気センサ3全体の小型化を図ることが可能である。なお、以下では、磁気検知素子10としてGMR素子を用いた場合を例に挙げて、GMR素子10aからの出力信号をセンサ出力1とし、GMR素子10bからの出力信号をセンサ出力2として説明する。
【0023】
ここで、GMR素子について簡単に説明する。GMR素子は、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を利用した磁気抵抗効果素子であり、基板上に下から絶縁層、下地層、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、フリー磁性層及び保護層の順に、薄膜プロセスを用いて形成されている。反強磁性層と固定磁性層とが接して形成されているため、磁場中熱処理を施すことにより両磁性層の界面に交換結合磁界が生じ、固定磁性層の磁化方向は一方向に固定される。一方、フリー磁性層の磁化方向は、固定磁性層と違って磁化方向が固定されておらず、外部磁界の侵入方向の変化によって磁化変動するように構成されている。したがって、各GMR素子10a,10bが、回転する回転磁石9のN極からS極へ流れる磁場の影響を受けると、固定磁性層の磁化方向に対するフリー磁性層の磁化方向の角度(磁場角度)が変化し、この磁場角度の変化に基づいて電気抵抗値が変化する。この磁場角度の変化に応じた電気抵抗値に基づく出力信号は、回転磁石9の回転検知に供されると共に、異常検知手段4でのGMR素子10a,10bの異常検知に供される。なお、GMR素子10a,10bの固定磁性層の磁化方向は、同一方向に揃えられることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、異常検知手段4は、EXOR(Exclusive−OR)回路4で構成されている。EXOR回路4は、2つのGMR素子10a,10bから出力される出力信号の排他的論理和をとることで、GMR素子10a,10bの異常(故障)を検知する。すなわち、EXOR回路4は、GMR素子10aの出力信号とGMR素子10bの出力信号とが一致する場合には「L」レベルの信号を出力して、各GMR素子10a,10bがいずれも正常であると判断する。一方、EXOR回路4は、GMR素子10aの出力信号とGMR素子10bの出力信号とが一致しない場合には「H」レベルの信号を出力して、GMR素子10a,10bの一方に異常(故障)があると判断する。これにより、簡易な回路構成で、GMR素子10a,10bの故障を検知することができる。
【0025】
次に、図3を用いて、比較例と比較しながら、本実施の形態に係る異常検知装置1の作用について説明する。図3は、比較例及び本実施の形態に係る異常検知装置の作用を説明するための模式図であり、(a)は、比較例に係る異常検知装置を示し、(b)は、本実施の形態に係る異常検知装置1を示している。比較例として、回転体6の外周部に対向する位置に、磁気検知素子として1系統のホール素子を有する磁気センサX,Yを2つ近接配置した異常検知装置を例に挙げて説明する。
【0026】
比較例に係る異常検知装置では、単一のホール素子をパッケージした磁気センサX,Yは別々のプロセスで作製され、これら別々のプロセスで作製された磁気センサX,Yを近接配置させているため、各磁気センサX,Yのホール素子間の位置ずれや感度特性にバラつきが生じやすい。ホール素子間に位置ずれや感度特性にバラつきがある場合、各ホール素子からの出力信号(センサ出力X,Y)にずれが生じることとなる(図3(a)で示す点線部分)。従って、この出力信号に基づいて異常検知を行った場合には、磁気エンコーダ自体が正常であっても、各ホール素子からの出力信号は同一ではないので異常を示す異常検知信号が出力され、磁気エンコーダの異常を誤検知する。そのため、異常検知信号の発生要因が、磁気エンコーダの異常によるものなのか、ホール素子の故障に起因するものかを検知するために、CPU等でさらに判別する必要がある。
【0027】
一方、本実施の形態に係る異常検知装置1では、同一の感度特性を持つ2つのGMR素子10a,10bを同一プロセスで同一基板12上に作製するので感度特性のバラつきや位置ずれが生じず、各GMR素子10a,10bからの出力信号は略同一の信号となる(図3(b)で示す点線部分)。従って、磁気センサ3の感度特性のバラつきや位置ずれは生じないので、簡易な回路構成によりGMR素子10a,10bの位置ずれや感度特性のバラつきを検知することができる。
【0028】
なお、GMR素子10a,10bは同一基板12上に並べて形成してもよいし、図4に示すように同一基板12上に上下に積層して形成してもよい。図4は、GMR素子10a,10bの積層構造を示す図であり、GMR素子10aの上にGMR素子10bを積層した場合を示している。図4に示すように、少なくとも固定磁性層(Pin層)41と、固定磁性層41上に設けられた非磁性層42と、非磁性層42上に設けられたフリー磁性層43とを積層してGMR素子10aを形成し、層間絶縁層44を介して、GMR素子10aと同一層(固定磁性層41、非磁性層42、フリー磁性層43)を積層してGMR素子10bを形成する。固定磁性層41及びフリー磁性層43はCoFe合金、NiFe合金、CoFeNi合金などの磁性材料で形成される。また非磁性層42はCuなどで形成される。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、磁気センサ3を構成する複数の磁気検知素子10a,10bが同一の感度特性を有する素子で構成されると共に単一のセンサパッケージ11内に近接して配置されるので、各磁気検知素子10a,10bの感度特性のバラつきや位置ずれが生じず、各磁気検知素子10a,10bからは同一の信号が出力される。そして、EXOR回路4は、この各磁気検知素子10a,10bから出力される出力信号の排他的論理和を求めることで、磁気検知素子10a,10bの異常を検知する。すなわち、本実施の形態に係る異常検知装置1は、磁気検知素子10a,10bのセンサ出力から回転体6の回転を検知すると共に、2つの磁気検知素子10a,10bのセンサ出力の一致・不一致により磁気センサ3(磁気検知素子10a、10b)の異常を検知する。これにより、各磁気検知素子10a,10bの異常(故障)を起因とする磁気エンコーダの異常の誤検知を防止することができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置20は、上述した第1の実施の形態に係る異常検知装置1と比べて、異常検知手段の構成のみ相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用いて、繰り返しの説明を省略する。
【0031】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る異常検知装置20の異常検知手段21を示す回路図である。図5に示す異常検知手段21は、第1のCMOS回路(トランジスタ)22及び第2のCMOS回路(トランジスタ)23から構成されている。第1のCMOS回路22のゲート入力(端子)T1は、GMR素子10aの出力(端子)に接続され、第2のCMOS回路23のゲート入力(端子)T2は、GMR素子10bの出力(端子)に接続されている。第1のCMOS回路22及び第2のCMOS回路23の各ゲート出力(各トーテムポール出力)T3及びT4は、接続点P1で共通接続されている。接続点P1で共通接続されたゲート出力T3及びT4の出力ライン(異常検出用ラインL2)には、電流計24が設けられている。また、第1及び第2のCMOS回路22及び23のPMOSのソース側は検出用抵抗Rを介して電源Vddに接続され、NMOSのソース側はグラウンドGNDに接続されている。PMOSのソース側と検出用抵抗Rとの接続点には異常検出用ラインL1が接続されている。異常検出用ラインL1は、バイパス用のコンデンサCを介してグラウンドGNDに高周波的に接続されている。
【0032】
この異常検知手段21では、第1及び第2のCMOS回路22,23の各ゲート入力T1,T2に、GMR素子10a,10bから同一の「L」レベルの信号が入力されると、PMOS側が電源Vddに導通され、各ゲート出力T3,T4から同位相の「H」レベルの信号が出力され、接続点P1で各ゲート出力T3,T4からの出力信号が結合される。この場合には、異常検出用ラインL1及びL2上には大電流が流れないため、GMR素子10a,10bは正常であると判断される。また、第1及び第2のCMOS回路22,23の各ゲート入力T1,T2に、GMR素子10a,10bから同一の「H」レベルの信号が入力されると、NMOS側がグラウンドGNDに導通され、同位相の「H」レベルの信号が各ゲート出力T3,T4からグラウンドGNDに落ちる。この場合にも、異常検出用ラインL2上には大電流が流れないため、GMR素子10a,10bは正常であると判断される。
【0033】
一方、第1のCMOS回路22のゲート入力T1にGMR素子10aからの「L」レベルの信号が入力され、第2のCMOS回路23のゲート入力T2にGMR素子10bからの「H」レベルの信号が入力されると、第1のCMOS回路22のPMOS側が電源Vddに導通され、第2のCMOS回路23のNMOS側がグラウンドGNDに導通される。このとき、第1及び第2のCMOS回路22,23のゲート出力は短絡して、第1のCMOS回路22のPMOS側から接続点P1を経由して第2のCMOS回路23のNMOS側に向かうパスに大電流が流れるので、この大電流を異常検出用ラインL2上の電流計24でモニタすることにより、GMR素子10a,10bのいずれかに異常があると判断することできる。
【0034】
また、第1のCMOS回路22のゲート入力T1にGMR素子10aからの「H」レベルの信号が入力され、第2のCMOS回路23のゲート入力T2にGMR素子10bからの「L」レベルの信号が入力されると、第1のCMOS回路22のNMOS側がグラウンドGNDに導通され、第2のCMOS回路23のPMOS側が電源Vddに導通される。このとき、第1及び第2のCMOS回路22,23のゲート出力は短絡して、第2のCMOS回路23のPMOS側から接続点P1を経由して第1のCMOS回路22のNMOS側に向かうパスに大電流が流れるので、この大電流を異常検出用ラインL2上の電流計24でモニタすることにより、GMR素子10a,10bのいずれかに異常があると判断することできる。
【0035】
このように、第1の及び第2のCMOS回路22,23のゲート入力T1,T2が、いずれか一方の磁気検知素子10a,10bの故障によって位相が揃わない信号になると、ゲート出力が短絡して大電流が流れるので、磁気検知素子10a,10bのいずれか一方に異常があると判断することができる。一方、第1の及び第2のCMOS回路22,23の各ゲート入力T1,T2が同一位相の信号である場合には、ゲート出力が短絡しない(同電位で大電流が流れない)ので、磁気検知素子10a,10bはいずれも正常であると判断することができる。これにより、磁気検知素子10a,10bの異常を検知することができ、磁気検知素子10a,10bの異常(故障)を起因とする磁気エンコーダ異常の誤検知を防止することができる。
【0036】
次に、変形例に係る異常検知装置について説明する。図6は、変形例に係る異常検知装置30の異常検知手段31を示す回路図である。図6に示す異常検知装置30の異常検知手段31は、上記第2の実施の形態に係る異常検知手段21から、検出用抵抗R、異常検出用ラインL1及びバイパスコンデンサCが削除されている。
【0037】
この異常検知手段31では、第1のCMOS回路22のゲート入力T1にGMR素子10aからの「L」レベルの信号が入力され、第2のCMOS回路23のゲート入力T2にGMR素子10bからの「H」レベルの信号が入力されると、第1のCMOS回路22のPMOS側が電源Vddに導通され、第2のCMOS回路23のNMOS側がグラウンドGNDに導通される。このとき、第1及び第2のCMOS回路22,23のゲート出力は短絡して、第1のCMOS回路22のPMOS側から接続点P1を経由して第2のCMOS回路23のNMOS側に向かうパスに大電流が流れるので、この大電流を異常検知用ラインL2上の電流計24でモニタすることにより、GMR素子10a,10bのいずれかに異常があると判断することできる。
【0038】
一方、第1のCMOS回路22のゲート入力T1にGMR素子10aからの「H」レベルの信号が入力され、第2のCMOS回路23のゲート入力T2にGMR素子10bからの「L」レベルの信号が入力されると、第1のCMOS回路22のNMOS側がグラウンドGNDに導通され、第2のCMOS回路23のPMOS側が電源Vddに導通される。このとき、第1及び第2のCMOS回路22,23のゲート出力は短絡して、第2のCMOS回路23のPMOS側から接続点P1を経由して第1のCMOS回路22のNMOS側に向かうパスに大電流が流れるので、この大電流を異常検知用ラインL2上の電流計24でモニタすることにより、GMR素子10a,10bのいずれかに異常があると判断することできる。
【0039】
このように、変形例に係る異常検知装置30では、第1の及び第2のCMOS回路22,23のゲート入力T1,T2が、いずれか一方の磁気検知素子10a,10bの故障によって位相が揃わない信号になると、ゲート出力が短絡して大電流が異常検出用ラインL2に流れるので、この大電流を電流計24で検知することにより、磁気検知素子10a,10bのいずれか一方に異常があると判断することができる。これにより、磁気検知素子10a,10bの異常を検知することができ、磁気検知素子10a,10bの異常(故障)を起因とする磁気エンコーダ異常の誤検知を防止することができる。
【0040】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、磁気エンコーダ用の磁気センサの異常を検知する異常検知装置として有用である。
【符号の説明】
【0042】
1、20、30 異常検知装置
2 磁気エンコーダ
3 磁気センサ
4、21、31 異常検知手段
5 基台
6 回転体
7 回転軸
8 内周部
9 回転磁石(外周部)
10(10a,10b) 磁気検知素子
11 センサパッケージ(パッケージ)
12 基板
22 第1のCMOS回路
23 第2のCMOS回路
24 電流計
T1、T2 ゲート入力(端子)
T3、T4 ゲート出力(端子)
P1 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁された回転磁石と、
前記回転磁石の外周部に対向して設けられた2つの磁気検知素子と、
前記2つの磁気検知素子の出力信号に基づいて前記検知素子の異常を検知する異常検知手段と、を備え、
前記2つの磁気検知素子は、同一の感度特性を有し、同一の基板上に近接して配置されることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記2つの磁気検知素子は、単一のパッケージ内に収容されることを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記2つの磁気検知素子は、上下に積層されて形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記2つの磁気検知素子は、磁気抵抗効果素子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記異常検知手段は、前記2つの磁気検知素子の出力信号の排他的論理和をとる論理回路で構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記異常検知手段は、一方の磁気検知素子の出力信号がゲート入力となる第1のCMOS回路と、他方の磁気検知素子の出力信号がゲート入力となる第2のCMOS回路とを有し、第1及び第2のCMOS回路の各ゲート出力は共通接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の異常検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185747(P2011−185747A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51329(P2010−51329)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】