説明

異形樹脂粒子の製造方法、異形樹脂粒子及び光拡散性材料

【課題】優れた吸油性及び光拡散性を有する異形樹脂粒子の簡便な製造方法、前記製造方法により得られる異形樹脂粒子、並びに前記異形樹脂粒子を含む光拡散性材料を提供することを課題とする。
【解決手段】単官能ビニルモノマー100重量部、多官能ビニルモノマー1〜40重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー1〜100重量部を、水性媒体中で、疎水性液体の非存在下に重合させることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸油性及び光拡散性を有する異形樹脂粒子の簡便な製造方法、前記製造方法により得られる異形樹脂粒子、並びに前記異形樹脂粒子を含む光拡散性材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来異形樹脂粒子を製造する際に必要であった疎水性液体及びその除去工程を要することなく、異形樹脂粒子を極めて容易に得ることができる異形樹脂粒子の製造方法、前記製造方法により得られる異形樹脂粒子、並びに前記異形樹脂粒子を含む光拡散性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル系樹脂粒子は、塗料添加剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、粘着剤、光拡散剤、液晶スペーサー、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として様々な分野で広く用いられている。特に、これらの樹脂粒子は、その優れた吸油性、光拡散性のために、光拡散性材料、化粧品材料、塗料用有機顔料、紙塗布用有機顔料、診断薬用担体等として用いられている。また、これらの樹脂粒子は通常水性媒体中での懸濁重合により得られるため、その形状は真球状であるものが一般的である。
【0003】
しかしながら、近年、塗料等の白色度、光沢を高めたり、診断薬の高機能化を図るために、ビニル系樹脂粒子が有する吸油性、光拡散性のさらなる向上が求められている。そこで、これらの要求を満たすビニル系樹脂粒子として、真球状とは異なった形状の、以下の異形樹脂粒子が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−317688号公報
【特許文献2】特開平07−157672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの異形樹脂粒子は、真球状の樹脂粒子と比べてその比表面積が大きいため、吸油性、光拡散性に優れることが知られている。
【0006】
特許文献1においては、異形樹脂粒子として中央に1つの大きな凹部を有するおわん型の異形樹脂粒子が提案され、該異形樹脂粒子は優れた吸油性を有する旨記載されている。しかしながら、前記異形樹脂粒子は、単官能ビニルモノマー及び多官能ビニルモノマーを、水性媒体中、流動パラフィン等の疎水性液体の存在下に懸濁重合することにより得られるため、得られる異形樹脂粒子は、製品等に悪影響を及ぼすおそれのある疎水性液体を含むこととなる。
【0007】
そのため、前記疎水性液体を除去するために、疎水性液体のみを溶解させ得る低級アルコール等の溶剤で異形樹脂粒子から疎水性液体を除去する、複雑な洗浄工程を製造工程に組込む必要がある。また、前記工程を行うためには、比較的高価な溶剤を使用しなければならず、さらに大規模な洗浄設備、乾燥設備等も必要である。よって、前記工程は製造コスト等の点で好ましいものではない。
【0008】
特許文献2においては、異形樹脂粒子内に中空部を有し、さらに凹凸のある外殻に多数の通気孔を有する中空非球状異形樹脂粒子が提案され、特許文献1に記載の異形樹脂粒子と同様に、該異形樹脂粒子も優れた吸油性を有する旨記載されている。しかしながら特許文献1の場合と同様に、前記異形樹脂粒子を製造する際にもノルマルへキサン、ノルマルヘプタン等の疎水性液体を使用する必要があり、特許文献2に記載の発明についても同様の問題点が指摘される。
【0009】
従って、従来異形樹脂粒子を製造する際に必要であった疎水性液体及びその除去工程を要さない、優れた吸油性、光拡散性を有する異形樹脂粒子の簡便な製造方法、及びその製造方法により得られる異形樹脂粒子の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして本発明によれば、単官能ビニルモノマー100重量部、多官能ビニルモノマー1〜40重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー1〜100重量部を、水性媒体中で、疎水性液体の非存在下に重合させることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0011】
また本発明によれば、前記製造方法により得られる異形樹脂粒子も提供される。
さらに本発明によれば、前記異形樹脂粒子を含む光拡散性材料も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法により、従来異形樹脂粒子を製造する際に必要であった疎水性液体及びその除去工程を要さず、極めて容易に異形樹脂粒子を得ることができる。
本発明においては、特定のメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーを用いることにより、異形樹脂粒子をより容易に製造することができる。
他方、単官能ビニルモノマーとして(メタ)アクリル系単官能ビニルモノマー及びスチレン系単官能ビニルモノマーのいずれか1つを用い、多官能ビニルモノマーとして、(メタ)アクリル系多官能ビニルモノマー及びスチレン系多官能ビニルモノマーのいずれか1つを用いることにより、さらに安定に異形樹脂粒子を製造することができる。
【0013】
本発明においては、重合を懸濁重合とすることにより、重合時の過度な発熱、圧力上昇を抑制しつつ、容易かつ安全に異形樹脂粒子を製造することができる。
また、単官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマー及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーの使用量を調整することにより、異形樹脂粒子表面に2以上の凹部を有する異形樹脂粒子又は中央に1つの凹部を有するおわん型の異形樹脂粒子を容易に作り分けることができる。
【0014】
本発明の製造方法により、異形樹脂粒子を適宜得ることができる。
また本発明の製造方法により、優れた吸油量を有する異形樹脂粒子を得ることができる。
他方、本発明の製造方法により、凹部の平均直径が極めて大きなおわん型の異形樹脂粒子を容易に得ることもできる。
また本発明によれば、優れた光拡散性を有する光拡散性材料も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例3の凹凸型異形樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1のおわん型異形樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例3の真球状の樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】おわん型異形樹脂粒子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、単官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマー及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーを水性媒体中で、疎水性液体の非存在下に重合させることにより異形樹脂粒子を製造する。
以下に本発明の異形樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0017】
本発明において、水性媒体とは、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、低級アルコール等の水溶性有機媒体を適宜含んでいてもよい水媒体を意味する。
【0018】
また、単官能ビニルモノマーとは、ビニル基を1つ有する重合性モノマーを意味し、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、1種又は2種以上の単官能ビニルモノマーを使用することができる。
【0019】
単官能ビニルモノマーとして、具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリル系単官能ビニルモノマー;
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単官能ビニルモノマー;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリルアルコール、ビニルピリジン、安息香酸ビニル、安息香酸アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
本発明においては、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0020】
また、異形樹脂粒子を安定に重合させ得ることがあるため、単官能ビニルモノマーとして(メタ)アクリル系単官能ビニルモノマー及びスチレン系単官能ビニルモノマーのいずれか1つが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル及びスチレンのいずれか1つがより好ましい。
【0021】
本発明においては、得られる重合体の異形化をより容易に図り得るため、多官能ビニルモノマーを用いる。ここで、多官能ビニルモノマーとは、ビニル基を2以上有する重合性モノマーを意味し、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、1種又は2種以上の多官能ビニルモノマーを使用することができる。
【0022】
多官能ビニルモノマーとして、具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート系多官能ビニルモノマー;
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート系多官能ビニルモノマー;
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート系多官能ビニルモノマー;
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート系多官能ビニルモノマー;
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート系多官能ビニルモノマー;
ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のスチレン系多官能ビニルモノマー;
メチレンビスアクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、クロトン酸ビニル等が挙げられる。
【0023】
得られる重合体の分子量を調整しつつ、異形樹脂粒子を容易に製造し得ることがあるため、多官能ビニルモノマーとして、(メタ)アクリレート系多官能ビニルモノマー及びスチレン系多官能ビニルモノマーのいずれか1つが好ましく、エチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼンのいずれか1つがより好ましい。
【0024】
また、本発明においては、異形樹脂粒子を得るために、多官能ビニルモノマーは、単官能ビニルモノマー100重量部に対して1〜40重量部、好ましくは1.5〜35重量部、より好ましくは2〜30重量部用いられる。多官能ビニルモノマー量が単官能ビニルモノマー100重量部に対して、1重量部より少ない場合、異形樹脂粒子が得られないことがあり、一方、40重量部より多くても、同様に異形樹脂粒子が得られないことがある。
【0025】
なお、単官能ビニルモノマー及び多官能ビニルモノマーの好ましい組合せとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル及びスチレンのいずれか1つとエチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼンのいずれか1つとの組合せが挙げられる。
【0026】
本発明においては、異形樹脂粒子を得るためにメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーを用いる。メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーとは、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等の汎用のシリコーンオイルに1以上のメタクリル基をポリシロキサン骨格の末端部分もしくは側鎖部分に結合させたビニルモノマーを意味する。また、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、1種又は2種以上の他のシリコーンオイル系ビニルモノマーを使用することができる。
【0027】
他のシリコーンオイル系ビニルモノマーとして、具体的には、アルコール変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、アミノ変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、メルカプト変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、メチル基及び反応性官能基にフェニル基、ポリエーテル基等を結合させた異種官能基変性シリコーンオイル系ビニルモノマー等の1以上のビニル基を有するシリコーンオイル系ビニルモノマーが挙げられる。
【0028】
本発明においては、異形樹脂粒子を容易に製造し得ることがあるため、以下の一般式(I):

(式中、Rはアルキレン基であり、R’はアルキル基であり、nは5〜350である)
のメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーがより好ましい。
【0029】
前記Rは、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等の官能基を含んでいてもよい。また、原料種等の使用量、重合条件にもよるが、異形樹脂粒子を得ることができるため、前記Rは、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましい。前記Rの炭素数が、10より大きい場合、異形樹脂粒子を得ることができないことがある。前記Rは直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。さらに、異形樹脂粒子を得ることができる限り、前記Rは一般式(I)に含まれなくてもよい。
【0030】
同様に、前記R’も、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等の官能基を含んでいてもよい。また、原料種等の使用量、重合条件にもよるが、異形樹脂粒子を得ることができるため、前記R’は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。前記R’の炭素数が、10より大きい場合、異形樹脂粒子を得ることができないことがある。前記R’は直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。
他方、前記nの値が、5より小さい場合又は350より大きい場合、異形樹脂粒子を得ることができないことがある。
【0031】
また、本発明においては、異形樹脂粒子を得るために、メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーは、単官能ビニルモノマー100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは3〜90重量部、より好ましくは5〜80重量部用いられる。メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー量が単官能ビニルモノマー100重量部に対して、1重量部より少ない場合、異形樹脂粒子が得られないことがあり、一方、100重量部より多くても、異形樹脂粒子が得られないことがある。
【0032】
本発明においては、単官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマー及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーを、重合性開始剤で重合させることにより異形樹脂粒子を製造する。また、重合性開始剤として公知の重合性開始剤を適宜使用することができる。
【0033】
重合性開始剤として、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、重合系、製品へ悪影響を与えない限り、1種又は2種以上の重合性開始剤を使用することができる。
【0034】
また、異形樹脂粒子を得ることができる限り、ビニルモノマー混合物は、その他のビニルモノマーや添加剤を含んでいてもよく、添加剤として、具体的には、連鎖移動剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
他方、水性媒体は、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム等の水系重合禁止剤、食塩、硫酸アンモニウム等の塩析剤、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸マグネシウム等の凝集禁止剤、無機酸、有機酸、塩基性化合物等のpH調整剤、シリコン系消泡剤、鉱物油系泡消剤等の消泡剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0035】
本発明においては、疎水性液体の非存在下に、水性媒体中で重合を行うことにより、異形樹脂粒子を得ることができる。よって、従来これらの異形樹脂粒子を得るために製造工程に組込まれていた、疎水性液体を除去するための、疎水性液体のみを溶解させ得る低級アルコール等の溶剤での、異形樹脂粒子から疎水性液体を除去する複雑な洗浄工程を要しない。また、前記工程を行うための大規模な洗浄設備、乾燥設備等も要さない。
本発明において、疎水性液体とは、水性媒体への溶解性をほとんど示さない液体を意味し、具体的には、従来異形樹脂粒子を製造するのに必要であった流動パラフィン、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン等の炭化水素、エステル類、エーテル類、シリコーン油、動物油、植物油等を意味する。
また、本発明において、非存在下とは、得られる異形樹脂粒子の形状、吸油性、光拡散性等の物性及び製造方法等に影響を与えない程度に存在しないことを意味する。よって、前記物性及び製造方法に影響を与えないような極少量の疎水性液体は、本発明の製造方法に含まれていてもよい。
【0036】
従って、本発明の製造方法は製造コスト等の点で極めて好ましいものである。さらに、本発明の製造方法は異形樹脂粒子の品質、物性等の点でも極めて好ましい。
【0037】
異形樹脂粒子の重合には、水性媒体中での重合法として公知の重合法、即ち、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、シード重合法等を適宜使用することができる。本発明においては、重合時の過度な発熱、圧力上昇を抑制しつつ、容易かつ安全に異形樹脂粒子を製造し得ることがあるため、重合法として懸濁重合法を用いることが好ましい。
また、単官能ビニルモノマー100重量部に対して、水性媒体が、好ましくは100〜
2000重量部、より好ましくは150〜1000重量部使用される。2000重量部より多い場合、製造コスト面で問題となることがあり、一方100重量部より少ない場合、重合時に過度な発熱、圧力上昇等を起こすことがある。
【0038】
懸濁重合時のビニルモノマー混合物の水性媒体への分散方法として、例えば、水相中にビニルモノマー混合物を直接添加し、前記混合物を、反応器のプロペラ翼等で分散させる方法、高せん断力を有するホモミキサーで分散させる方法、超音波分散機で分散させる方法等が挙げられる。
【0039】
懸濁重合時に用いる分散剤として、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等のいずれかの界面活性剤を用いることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分けん化物等のポリビニルアルコール系分散剤、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系分散剤、ポリビニルピロリドン、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物等の高分子系分散剤、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニウムゾル等の無機系分散剤等も適宜使用することができる。また、得られる異形樹脂粒子の物性、製造工程等に影響を与えない限り、1種又は2種以上の分散剤を使用することができる。
【0040】
ここで、分散剤の使用量は、少なすぎると重合安定性が著しく低下することがある。一方、多すぎると水相での重合が起こり易く、微小な粒子が大量に発生し、目的とする異形樹脂粒子の収率が低下することがある。よって、前記使用量は、重合性モノマー100重量部に対して0.005〜15重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。
【0041】
次いで、ビニルモノマー混合物を分散した懸濁液を、加熱することにより重合を実施する。重合中は、懸濁液を攪拌することが好ましく、その攪拌は例えば、液滴の浮上や重合後の異形樹脂粒子の沈降を防止できる程度に緩く行うことが好ましい。
【0042】
本発明においては、製造時の安全性の観点から重合温度を30〜120℃程度とすることが好ましく、40〜110℃程度とすることがより好ましい。また、この重合温度の保持時間は0.1〜20時間程度とすることが好ましい。さらに、窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で重合を行うことが好ましい。
【0043】
水性媒体からの異形樹脂粒子の単離は、公知の単離方法を用いて行うことができる。具体的には、脱液工程後のウェットケーキをバッチ式の温風乾燥機又はオーブン中に放置して乾燥する方法、得られた反応スラリーをスプレードライヤー等で噴霧乾燥する方法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法、気流乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法等により行うことができる。また、乾燥後の異形樹脂粒子は凝集物を含むこともあるため、粉砕機、解砕機等で凝集物を解すことが好ましい。さらに、得られた異形樹脂粒子を気流分級機、振動篩機等を用いることにより、異形樹脂粒子の物性に悪影響を与えるおそれがある粗大樹脂粒子、微小樹脂粒子等を除くことが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法により、異形樹脂粒子を容易に製造することができる。ここで、異形樹脂粒子とは実質的に非球状の形状の樹脂粒子を意味する。本発明においては、特に、異形樹脂粒子表面に2以上の凹部を有する異形樹脂粒子(本発明においては、凹凸型異形樹脂粒子とも称する)又は中央に1つの凹部を有するおわん型の異形樹脂粒子(本発明においては、おわん型異形樹脂粒子とも称する)を得ることができ、それらは、単官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマー及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーの使用量を調整することにより作り分けることができる。また、本発明の凹凸型異形樹脂粒子又はおわん型異形樹脂粒子は、それぞれ所望の吸油性、光拡散性を有する限り、その他の形状の異形樹脂粒子及び真球状の樹脂粒子のいずれか1つを少量含んでいてもよい。さらに、より高い吸油性を期待し得る場合があるため、本発明の異形樹脂粒子は、その内部に1以上の中空部を有していることが好ましい。
【0045】
ここで、単官能ビニルモノマー100重量部に対して、メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーを、20重量部以上〜100重量部を使用した場合、凹凸型異形樹脂粒子が得られやすい。一方、1重量部〜20重量部未満を使用した場合、おわん型異形樹脂粒子が得られやすい。
【0046】
本発明において、凹凸型異形樹脂粒子とは、図1に示されるような異形樹脂粒子表面に2以上の凹部を有する、前記表面が凹凸状の異形樹脂粒子を意味する。
【0047】
本発明において、おわん型異形樹脂粒子とは、図2に示される異形樹脂粒子の中央に1つの凹部を有する、半球あるいは半楕円球に近い形状の、おわん型の異形樹脂粒子を意味する。また本発明の製造方法により、図4の概略図に示すように、表面が凸状で、裏面(底部)が凹状であり、好ましくは、底部の直径(D)が0.8〜170μmであり、この直径(D)と底部から凸状表面の先端までの厚み(H)との比(D/H)が1.4〜4であり、凸状表面に対応した内径(d)が0.3μm以上であるおわん型異形樹脂粒子を得ることができる。なお、内径(d)の最大値は底部の直径(D)未満である。
【0048】
ここで、直径Dが0.8〜170μmの範囲外であるか、比D/Hが1.4〜4の範囲外であるか、又は内径dが0.3μm以上の範囲外である場合、おわん型異形樹脂粒子は、十分な吸油性、光拡散性を有さないことがある。なお、直径D、比D/H及び内径dの算出方法については、実施例において詳説する。
【0049】
本発明で得られる異形樹脂粒子は真球状の樹脂粒子等と比べてその比表面積が大きいため、好ましくは吸油量が80ml/100g以上、より好ましくは90ml/100g以上の、優れた吸油性を有する異形樹脂粒子を得ることができる。吸油量が80ml/100gより小さい場合、十分な吸油性を得ることができないことがある。
【0050】
また、本発明の製造方法により、平均粒子径が好ましくは0.6〜150μm、より好ましくは1〜50μmである異形樹脂粒子を得ることができる。平均粒子径が0.6μmより小さい場合、得られる異形樹脂粒子は極めて小さいものとなり、異形の樹脂粒子を得ることができないことがある。一方、平均粒子径が150μmより大きい場合、得られる異形樹脂粒子は極めて大きいものとなり、十分な比表面積を得ることができないことがある。
【0051】
本発明の異形樹脂粒子を用いることにより、光拡散性に優れる光拡散性材料を得ることができる。光拡散性材料として、基材シートの表面に異形樹脂粒子を分散させた光拡散層が基材シート表面に形成されたものが挙げられる。基材シートの基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカルボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、シクロポリオレフィンポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド等の樹脂基材、透明なガラスシート等の無機基材から、適宜選択して使用できる。また、その厚さは特に限定されるものではないが、加工のしやすさ、ハンドリング性及び用途を考慮して数μm〜500μm程度が好ましく、10〜200μm程度がより好ましい。
【0052】
本発明においては、異形樹脂粒子をアクリル系樹脂等のバインダー中に分散させて使用する。バインダーに対する異形樹脂粒子の割合は特に限定されるものではないが、光拡散性能を考慮すればバインダー100重量部に対して15〜500重量部が好ましく、20〜200重量部がより好ましい。
【0053】
前記光拡散性材料の光拡散層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば異形樹脂粒子を、バインダーを溶解又は分散させた溶液に加えて、光拡散層形成用塗料とし、この塗料を基体上に塗布する方法が挙げられる。
【0054】
本発明で得られる異形樹脂粒子は十分な吸油性、光拡散性を有するため、塗料添加剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、粘着剤、光拡散剤、液晶スペーサー、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として様々な分野で広く用いることができる。特に、これらの異形樹脂粒子は、光拡散性材料、化粧品材料、塗料用有機顔料、紙塗布用有機顔料、診断薬用担体等として用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下実施例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。各種製造条件及び測定方法について以下に説明する。
<異形樹脂粒子の吸油性>
JIS K 5101の方法で異形樹脂粒子の吸油量の測定を行う。詳細は以下の通りである。
・装置及び器具
測定板 300×400×5mmより大きい平滑なガラス板。
ヘラ 鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの。
計量器 10mgオーダーまで計れるもの。
ビュレット JIS R 3505に規定するもので、10mlまでのもの。
・材料
アマニ油(JIS K 5421に規定するもの;今回は特級アマニ油(和光純薬社製)を用いる)
【0056】
・測定方法
(1)以下の操作を行う前に、予備試験により予め吸油量の概略値を確認する。
(2)異形樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に異形樹脂粒子の中央に滴下し、その都度全体をヘラで充分練り合わせる。
(3)滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴で、ヘラを用いてらせん状に巻くことのできる状態になったときを終点とする。但し、らせん状に巻くことができない場合は、アマニ油の1滴で急激に軟らかくなる直前を終点とする。
(4)終点までの操作時間が7〜15分間になるように(1)及び(2)の操作を調節する。
(5)終点に達したときの、ビュレットのアマニ油の滴下量を読み取る。
【0057】
・計算方法
吸油量は下式により算出する。
O=(V/m)×100
O : 吸油量(ml/100g)
m : 異形樹脂粒子の質量(g)
V : 滴下したアマニ油の容量(ml)
本発明においては、吸油量の値が80ml/100g以上の場合、合格(○)と判定する。
【0058】
<異形樹脂粒子の平均粒子径>
本発明の異形樹脂粒子の平均粒子径は、電気抵抗法によって測定されるものであり、具体的には、以下のようにして測定する。
まず、アパチャー(細孔)の両側に電極が配設されたアパチャー・チューブを、測定対象となる異形樹脂粒子が電解液中に懸濁されてなる懸濁液中に浸漬した状態とする。次いで、前記アパチャー・チューブの電極間に前記懸濁液を介して電流を流し、電極間の電気抵抗を測定する。懸濁液中の異形樹脂粒子が吸引されてアパチャーを通過するときに粒子体積に相当する電解液が置換されて、電極間の電気抵抗に変化が生じる。この電気抵抗の変化量は粒子の大きさに比例することから、前記電気抵抗の変化量を電圧パルスに変換して増幅、検出することによって粒子体積を算出することができ、この算出された粒子体積に相当する真球の直径を異形樹脂粒子の粒子径とする。
【0059】
さらに、異形樹脂粒子の平均粒子径は、前記の如く測定される異形樹脂粒子の粒子径の平均をとることにより算出する。即ち、本発明の異形樹脂粒子の平均粒子径は体積平均粒子径を意味する。なお、異形樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、べックマンコールター株式会社から製品名「コールターマルチサイザーII」として市販されている測定装置を用いて測定することができる。
【0060】
<おわん型異形樹脂粒子の直径D、比D/H及び内径d>
おわん型異形樹脂粒子の底部の直径D、底部から凸状表面の先端までの厚みH、凸状表面に対応する内径dは以下のようにして測定する(図4参照)。
走査型電子顕微鏡JSM−6360LV(日本電子社製)を用い5,000〜10,000倍で任意の40個のおわん型異形樹脂粒子を観察し、各部位を測定してその平均値を直径D、厚みH、内径dとする。
1)粒子平面形状の径を測定し、その最長径を底部の直径Dとする。
2)直径Dを中心にもつ面を底部としその面からの法線の最長径を厚みHとする。
3)直径D上の2つの頂点間距離を内径dとする。
【0061】
<光拡散性材料の光拡散性>
異形樹脂粒子を含む光拡散性材料の光拡散性等の光学特性は、全光線透過率及びヘイズの値により評価する。全光線透過率はJIS K 7361により測定する。具体的には日本電色工業株式会社製、NDH−2000を使用する。ヘイズはJIS K 7136により測定し、具体的には日本電色工業株式会社製のNDH−2000を使用する。
全光線透過率及びヘイズの値は、それぞれ91%以上、93%以上が好ましい。
【0062】
実施例1
脱イオン水1000重量部に対してピロリン酸マグネシウム15重量部を分散させた水性媒体を、攪拌機、温度計を備えた2L重合器に加え、さらにラウリル硫酸ナトリウム0.02重量部を加えた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル260重量部(単官能ビニルモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート40重量部(多官能ビニルモノマー)、メタクリル変性シリコーンオイル40重量部(メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、信越化学工業社製、製品名X−22−174DX)及びアゾビスイソブチロニトリル0.9重量部(重合性開始剤)からなる混合液を重合器中に加えた。次いで、混合液を、T.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)で水性媒体中に分散することにより、10μm程度の液滴径の懸濁液を調製した。攪拌機で攪拌しながら、懸濁液を65℃に加熱し6時間重合を行った後、100℃に昇温し、2時間加熱し、室温(約20℃)まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、洗浄、乾燥して異形樹脂粒子を得た。
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は10μmであった。
また、異形樹脂粒子はおわん型異形樹脂粒子であり、その直径Dは13μmであり、比D/Hは1.7であり、内径dは7.5μmであった。
【0063】
得られた異形樹脂粒子100重量部に対してアクリル系バインダー(三菱レイヨン社製、製品名LR−102)140重量部を混ぜた。そこに溶剤としてトルエンとメチルエチルケトンを1:1で混合した溶液を260重量部添加し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌した。この溶液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌を行った。異形樹脂粒子を溶液中に均一に分散させた後、この溶液を厚さ125μmPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製)上に100μmコーターを用いて塗工した。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥を行うことで、光拡散性材料(光拡散シート)を得た。
【0064】
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0065】
実施例2
メタクリル酸メチル165重量部、エチレングリコールジメタクリレート5重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル150重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0066】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は11μmであった。
また、異形樹脂粒子は凹凸型異形樹脂粒子であった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0067】
実施例3
メタクリル酸メチル250重量部、エチレングリコールジメタクリレート50重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル65重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0068】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は11μmであった。
また、異形樹脂粒子は凹凸型異形樹脂粒子であった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0069】
実施例4
メタクリル酸メチル260重量部、エチレングリコールジメタクリレート40重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル9重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0070】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は9μmであった。
また、異形樹脂粒子はおわん型異形樹脂粒子であり、その直径Dは11μmであり、比D/Hは1.6であり、内径dは7.2μmであった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0071】
実施例5
メタクリル酸メチル260重量部、スチレン10重量部(単官能ビニルモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート30重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル50重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0072】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は11μmであった。
また、異形樹脂粒子はおわん型異形樹脂粒子であり、その直径Dは14μmであり、比D/Hは1.9であり、内径dは7.8μmであった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0073】
実施例6
メタクリル酸ブチル150重量部(単官能ビニルモノマー)、アクリル酸ブチル60重量部(単官能ビニルモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート65重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル35重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0074】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は10μmであった。
また、異形樹脂粒子はおわん型異形樹脂粒子であり、その直径Dは13μmであり、比D/Hは1.8であり、内径dは8.1μmであった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0075】
実施例7
メタクリル酸メチル260重量部、ジビニルベンゼン40重量部(多官能ビニルモノマー)及びメタクリル変性シリコーンオイル50重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0076】
得られた異形樹脂粒子の平均粒子径は11μmであった。
また、異形樹脂粒子はおわん型異形樹脂粒子であり、その直径Dは15μmであり、比D/Hは1.7であり、内径dは7.7μmであった。
異形樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0077】
比較例1
メタクリル酸メチル120重量部、エチレングリコールジメタクリレート20重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル150重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0078】
得られた樹脂粒子の平均粒子径は11μmであった。
また、樹脂粒子は真球状の樹脂粒子であった。
樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0079】
比較例2
メタクリル酸メチル300重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル20重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−2426)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0080】
得られた樹脂粒子の平均粒子径は10μmであった。
また、樹脂粒子は真球状の樹脂粒子であった。
樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0081】
比較例3
メタクリル酸メチル270重量部、エチレングリコールジメタクリレート30重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル0.3重量部(信越化学工業社製、製品名X−22−174DX)とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0082】
得られた樹脂粒子の平均粒子径は10μmであった。
また、樹脂粒子は真球状の樹脂粒子であった。
樹脂粒子の吸油量並びに光拡散性材料の全光線透過率及びヘイズの測定結果は表1に示している。
【0083】
表1に、実施例及び比較例の原料種等を示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より、実施例1〜7で得られた樹脂粒子は、優れた吸油性を有する異形樹脂粒子であることを示している。
同様に実施例1〜7で得られた異形樹脂粒子を用いて得られる光拡散性材料は、優れた全光線透過率及びヘイズ等の光拡散性を有することを示している。
また、実施例1〜7の製造方法により、疎水性液体の非存在下に異形樹脂粒子を製造することができることを示している。
【0086】
よって、本発明の製造方法により、従来異形樹脂粒子を製造する場合に必要であった疎水性液体及びその除去工程を要することなく、優れた吸油性及び光拡散性を有する異形樹脂粒子を極めて容易に得ることができることを示している。
【0087】
従って、本発明で得られる異形樹脂粒子は十分な吸油性、光拡散性を有するため、塗料添加剤、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサー、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として様々な分野で広く用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
D 底部の直径
H 底部から凸状表面の先端までの厚み
d 凸状表面に対応した内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能ビニルモノマー100重量部、多官能ビニルモノマー1〜40重量部及びメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー1〜100重量部を、水性媒体中で、疎水性液体の非存在下に重合させることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーが、一般式(I):

(式中、Rはアルキレン基であり、R’はアルキル基であり、nは5〜350である)
のメタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーである請求項1に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記単官能ビニルモノマーが、(メタ)アクリル系単官能ビニルモノマー及びスチレン系単官能ビニルモノマーのいずれか1つであり、前記多官能ビニルモノマーが、(メタ)アクリル系多官能ビニルモノマー及びスチレン系多官能ビニルモノマーのいずれか1つである請求項1又は2に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記重合が、懸濁重合である請求項1〜3のいずれか1つに記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記異形樹脂粒子が、前記異形樹脂粒子表面に2以上の凹部を有する異形樹脂粒子又は中央に1つの凹部を有するおわん型の異形樹脂粒子であり、前記異形樹脂粒子が、前記単官能ビニルモノマー、前記多官能ビニルモノマー及び前記メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマーの使用量を調整することにより作り分けられる請求項1〜4のいずれか1つに記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の製造方法により得られる異形樹脂粒子。
【請求項7】
前記異形樹脂粒子が、80ml/100g以上の吸油量を有する請求項6に記載の異形樹脂粒子。
【請求項8】
前記異形樹脂粒子が、前記異形樹脂粒子の中央に1つの凹部を有するおわん型の異形樹脂粒子であり、前記異形樹脂粒子の底部の直径(D)が0.8〜170μmであり、前記直径(D)と底部から前記異形樹脂粒子の凸状表面の先端までの厚み(H)との比(D/H)が1.4〜4であり、前記異形樹脂粒子の凸状表面に対応した内径(d)が0.3μm以上である請求項6又は7に記載の異形樹脂粒子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1つに記載の異形樹脂粒子を含む光拡散性材料。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105909(P2011−105909A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264961(P2009−264961)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】