説明

異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布およびその製造方法

【課題】異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】それぞれ異なる異成分素材から構成された2層以上の不織布を積層してカレンダーロールにおいて熱融着する過程とニードルパンチングによる交絡過程を経て形成される複合ニードルパンチング不織布。上記のような構成を有する本発明の異成分素材を用いた複合ニードルパンチング不織布は耐化学性、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性に優れているだけではなく、機械的物性に優れていることから、湿っぽい環境や海岸の土木材料として使用する上で有利となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、土木材料用または建築資材用不織布の生産に当たって、ポリプロピレン不織布の生産過程に一部適用されるスパンボンド方式と、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンの複合化不織布を生産する過程に適用されるニードルパンチング方式といった2段階を経て前記不織布を生産することから、優れた機械的特性を有すると共に、耐酸性や耐アルカリ性などの化学的特性を改善して土木材料用または建築資材用不織布として有効に使用可能な異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より土木材料用または建築資材用不織布は、機械的物性と共に一定の化学的な特性が求められているが、より具体的には、土木用に適した機械的物性特性を有していながらも、耐酸性および耐アルカリ性を有することから、土木または建築材料用に好適に使用可能な不織布製品が求められており、さらに、土木技術の発展とあいまって、これらの不織布製品の品質と機能が発展し続けることが求められているのが現状である。
【0003】
このため、かような実状に応えるために、いくつかの方法が提示されているが、例えば、下記の特許文献1は、既存のポリエステル短繊維を用いて土木工事用に適するようにニードルパンチング不織布を構成する繊維のデニール調節を通じて最適化された条件を定立する方法を開示しており、例えば、下記の特許文献2は、5〜50gsmの目付を有するニードルパンチングウェブの製作技術を開示しているが、この特許文献2に記載の技術は、ポリエチレンテレフタレートを素材とする。
【0004】
先ず、前記製品の生産工程を調べてみると、一般的にポリエステル系原料を押出機により溶融押出して口金を通すことにより糸の形状にする。このときに使用される口金は、通常の場合、円形の形状を維持し、多数の孔が形成されるが、溶融紡糸されたポリマーは焼き入れ条件と高圧の空気を用いて延伸して数千本のフィラメントに製造される。この後、上記のフィラメントをコンベヤベルトに集積してウェブを形成し、形成されたウェブに対してニードルが差し込まれているニードルパンチングマシンによりパンチングを行う場合、フィラメント間の交絡がなされて一定の強度を維持することになり、この後、完製品の形でワインダーに巻き取られる。このようにして製造された不織布は、一般的に、土木材料用に求められる製品の物性を満たす場合に汎用的に使用されてきた。
【0005】
しかしながら、従来、前記土木材料として使用されていたポリエステル系素材からなるニードルパンチング不織布は、一般的に、原料素材の特性から短所も有しているが、すなわち、これらの従来のポリエステル系ニードルパンチング不織布の場合、アルカリに弱いだけではなく、耐薬品性が弱くて土木および建築用途に展開時に経時的に強度低下率が高いという欠点がある。
【0006】
このため、本発明者らは、上述した従来の問題点を解消するために鋭意努力した結果、1次段階においてスパンボンド方式を適用し、2次段階においてニードルパンチング方式を適用し、且つ、これにより生産される複合ニードルパンチング不織布は2種類以上の素材から構成することから、特定の目付比によって機械的強度と時間経過による物性維持率の側面から優れた効果を持たせることにより、前記従来の問題点を解消することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許出願第2000−0012644号公報
【特許文献2】日本国特許出願第2002−144185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述したように、従来の土木または建築用不織布の機械的特性および耐薬品性などの化学的な物性の両条件を満足しないといった欠点を解消して、優れた機械的特性を有すると共に、耐酸性や耐アルカリ性などの化学的特性にも優れていることから、土木材料用または建築資材用不織布として有効に使用可能な異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布を提供するところにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上述した優れた機械的および化学的物性を有する異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布の簡単な製造方法を提供するところにある。
【0010】
上述した本発明の目的は、土木および建築資材として用いられる不織布の耐酸性または耐アルカリ性などの化学的特性を高めるために、従来の100%ポリエステル系素材ではないポリエステル系素材にポリプロピレン素材を複合化して2段階の工程を経て生産することから、一般雨水による酸性環境や海水などのアルカリ性環境においても優れた耐久性を持つ複合素材のニードルパンチング不織布を提供することにより達成された。特に、本発明は、従来のポリエステル系素材の不織布に長繊維ポリプロピレン素材をニードルパンチング方式により複合化して両素材の長所を併せ持たせた複合素材のニードルパンチング不織布およびその製造方法を提供することにより前記本発明の目的が達成された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布は、それぞれ異なる異成分素材から構成された2層以上の不織布を積層してカレンダーロールにおける熱融着過程とニードルパンチングによる交絡過程を経て形成されるものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の構成によれば、前記それぞれ異なる異成分素材は、下記の構造式(I)のポリプロピレンおよび下記の構造式(II)のポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする。
【化1】

【化2】

【0013】
本発明のさらに他の構成によれば、前記異成分素材の一つであるポリプロピレンは、50〜1000g/m2の目付を有するように熱融着により不織布を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の構成によれば、前記異成分素材の一つであるポリプロピレン製の不織布は、10〜30ミクロンのポリプロピレン長繊維または0.1〜10ミクロンの短繊維の一つまたはこれらの複合体であることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の構成によれば、前記異成分素材の一つであるポリエチレンテレフタレートは、50〜1000g/m2の目付を有するように熱融着により不織布を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに他の構成によれば、前記異成分素材の一つであるポリエチレンテレフタレートは、10〜40ミクロンのポリエチレンテレフタレート長繊維または0.1〜40ミクロンのポリエチレンテレフタレート短繊維の一つまたはこれらの複合体であることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の構成によれば、前記異成分素材としてのポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの目付比は、6〜14対26〜34であることを特徴とする。
【0018】
前記他の目的を達成するために、本発明の異成分素材を用いた複合ニードルパンチング不織布の製造方法は、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートをそれぞれコンベヤベルトの上にランダムに積層してカレンダーを通過しながら熱融着してスパンボンド不織布を製造する第1段階と、前記第1段階において製作されたポリプロピレンスパンボンド不織布とポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布をニードルパンチングして未結合繊維を交絡することにより最終的なニードルパンチング不織布を製作する第2段階と、を含むことを特徴とする。
【0019】
上述したように、本発明の構成に従い製作されたポリプロピレン−ポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布は、2種以上の原料素材を用いて2層もしくは多層のそれぞれ異なる形態のファイバーを構成している。例えば、ポリオレフィン系とポリエステル系の素材の組み合わせにより長繊維のみからなる多層構造のものを製造することができ、長繊維だけではなく、短繊維との組合層に構成して製造することもできる。なお、複合ニードルパンチング不織布を構成している各素材の層はニードルを通じた繊維間の交絡がなされた形態に構成され、ポリプロピレン素材の柔らかな面とポリエチレンテレフタレート素材の機械的剛性を持った面とに大別することができる。
【0020】
さらに、上述したように、本発明の不織布は、メルトブロー層の構成が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。これは、撥水効果、断熱効果、吸音効果、強度などの複合不織布の種々の物性と関連して適用される用途に応じて選択的に製造することが可能であることを意味する。ポリプロピレン素材から構成されている柔らかな面は、ポリプロピレン素材の特性から、耐アルカリ性、耐酸性、耐化学性に優れていて、建築資材や土木資材の用途に長期間使用時に他の素材に比べて物性低下の現象が比較的に低いという長所を有しており、さらに、ポリエチレンテレフタレート素材から構成されている層が不織布全体の機械的強度を維持することにより、初期の機械的強度が弱いというポリプロピレン層の短所を補完する役割を果たす。
【発明の効果】
【0021】
上述したような構成を有する本発明の異成分素材を用いた複合ニードルパンチング不織布およびその製造方法は、異成分素材によりポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートを適正な割合にて構成して複合ニードルパンチング不織布を提供することから、耐化学性、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性に優れているだけではなく、機械的物性に優れていて、前記従来技術の諸問題点を解消して土木、建築および産業用材料として用いられる不織布、特に、湿っぽい環境や海岸の土木材料として使用する上で有利な特性を有する不織布を提供することができる。なお、本発明の不織布は前記特性の他にも両面性を有する触感、優れたバルキー性、様々な色相などの長所を有していることから、車両内蔵材、吸音および断熱材など種々の用途に適用可能である。
【0022】
さらに、上述したような構成を有する本発明による異成分素材を用いた複合ニードルパンチング不織布は、その製造方式が容易であり、しかも、製造コストが安いだけではなく、リサイクル性と環境への優しさに優れていて、適用範囲が限定的ではないという優れた長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好適な実施形態によるある段階において使用されるスパンボンド工程の概略図。
【図2】本発明の好適な実施形態による他の段階において使用されるニードルパンチング工程の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき本発明を好適な実施形態によって詳述する。
【0025】
図1は、本発明の好適な実施形態によるある段階において使用されるスパンボンド工程の概略図であり、図2は、本発明の好適な実施形態による他の段階において使用されるニードルパンチング工程の概略図である。
【0026】
本発明によるそれぞれ異なる異成分、好ましくは、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布は、一部熱溶融結合方式である図1のスパンボンド工法を適用すると共に、繊維同士を機械的に絡合する図2のニードルパンチング工法も一緒に適用した複合方式により製造される。このとき、両方とも長繊維から構成されてもよく、長繊維と短繊維との混合構成を有してもよく、これは、製品を適用しようとする用途や適用分野に応じて調節可能である。
【0027】
上述したように、スパンボンド工法とニードルパンチング工法を使用する本発明は、具体的には、下記の第1段階および第2段階の工程により本発明の不織布を製造することができる。
【0028】
第1段階:ポリプロピレン長繊維をコンベヤベルトの上にランダムに積層する。積層されたポリプロピレン繊維はカレンダーを通過しながらスパンボンドのように形態安定性を維持し、且つ、巻取作業を経てロール状に形成され、1段階において形成されたロールは次の2段階のニードルパンチングラインに適用される。なお、これと同じ方式によりポリエチレンテレフタレート長繊維もまた紡糸、積層、カレンダーリング過程を経てロール状に巻き取られた後、上記のポリプロピレンロール製品と一緒に次の2段階のニードルパンチング過程を経ることになる。
【0029】
第2段階:前記第1段階において製作された2種類のロール製品(具体的には、ポリプロピレンロール製品、ポリエチレンテレフタレートロール製品)を数多くのニードルによりニードルパンチングして未結合繊維の交絡を行うことにより最終的なニードルパンチング不織布を製作する。
【0030】
前記各段階別の工程による本発明のポリプロピレン−ポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
(1)1段階工程:
ポリプロピレン長繊維を所定の間隔をあけて設けられたノズル孔を通じて紡糸しながら、急冷および延伸してコンベヤベルトの上にランダムに積層する。積層された繊維はウェブ層をなしているが、相互間の結合力が弱くて形態維持力が弱い。この積層体をカレンダーロールに通しながら一定の圧力および温度の調節を通じて長繊維スパンボンド層を最小限に熱融着して、ウェブの形状を維持するように製造する工程である。
【0032】
このとき、カレンダーロールの温度および圧力条件が最終的なニードルパンチング不織布の物性と品質に多くの影響を与えてしまう。例えば、1段階におけるカレンダーリング温度と圧力が高過ぎる場合にはほとんどの繊維が熱融着されて交絡作用がなされるべき繊維が存在しなくなるため、ニードルパンチングの効果を発現することができなくなると共に、他の素材から構成された他の層との結合もまたなされなくなって好適ではない。これとは逆に、1段階におけるカレンダーリングが温度と圧力が極めて低い条件下において行われた場合にはニードルパンチング工程においてなされるべき繊維間の交絡作用および層間結合力は期待することができるものの、1段階を経て得られたロール状態の製品を管理することが決して容易ではなく、形態維持性が低くて各部位別の繊維密度が不均一になる。このようなロール製品状態においてニードルパンチング工程を経ると、全体的に機械的物性が低下するだけではなく、各部位別の物性のばらつきも大きくなって最終的なポリプロピレン−ポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布製品としての品質を落としてしまって好適ではない。このため、本発明によれば、前記ポリプロピレン長繊維を用いたロール製品の生産時に適切なカレンダーの温度と圧力条件下で行われる必要がある。
【0033】
さらに、ポリエチレンテレフタレート素材の不織布層を生産する方法は、前記ポリプロピレン素材の不織布層の生産方式とほとんど同じ原理により熱と圧力を加えるカレンダーリング方式により行われる。
【0034】
また、ポリプロピレン不織布層は100%の長繊維だけから構成されてもよく、一部の短繊維(メルトブロー)を含んで構成されてもよい。長繊維と短繊維との目付構成比は0〜90%の範囲まで調整可能であり、製品の用途や適用分野に応じて自由に目付比を変更することができる。長繊維は平均直径が10〜30ミクロンに形成されており、短繊維は平均直径が0.1〜10ミクロンのベルトブロー超極細糸の形態をなしている。ポリプロピレン不織布とほとんど同じ方式により製造されたポリエチレンテレフタレート不織布層は、上記の不織布構造のように長繊維と短繊維が混合された形態に構成されてもよく、長繊維もしくは短繊維の単一形態に構成されてもよい。一般的に、10〜40ミクロンの平均直径を示しており、概ね20〜30ミクロンの平均直径を示す。
【0035】
(2)2段階工程
前記1段階工程において製作されたポリプロピレン素材の不織布ロール製品とポリエチレンテレフタレートロール製品を積層してニードルパンチング工程のコンベヤベルトの上に繰り出しながらウェブを進行させる。上下運動が起きる数多くのニードルによって各層を構成している繊維の中で熱融着がなされていない繊維同士の機械的な交絡作用がなされる。これと同時に、それぞれ異なる素材から構成された不織布層間の交絡作用も一緒に行われて複合不織布全体の機械的な結束力を有することになり、最終的にポリプロピレン−ポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布の形態に整えられる。
【0036】
前記1段階工程において製造されたプレボンディングスパンボンド不織布をニードルパンチング工程により2次適用するとき、ニードルの密度は概ね30〜200パンチ/cm2のものを使用し、好ましくは、50〜100パンチ/cm2のものを使用する。繊維間の交絡のためのニードル移動深さは概ね5〜30mmであり、好ましくは、10〜15mmである。そして、ニードルの移動速度は概ね300〜1000ストローク/分であり、好ましくは、400〜700ストローク/分である。
【0037】
ニードルパンチング不織布の場合、概ね50〜1000g/m2の目付を有し、好適には100〜500g/m2、さらに好適には150〜400g/m2の目付に製作することができ、目付が50g/m2未満と低い場合や1000g/m2を超える場合には商業的な生産が容易ではないため好ましくない。
【0038】
このとき、本発明の好適な実施形態によれば、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの目付比を調整することにより、初期の機械的強度と長期間利用後の物性低下に対する最適化を両方とも達成することが可能になるが、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの目付比は6〜14対26〜34になることが最も好ましい。もし、前記ポリプロピレン素材製の不織布層の構成比が高い場合には物性維持率には優れているとはいえ、初期の機械的強度物性が低下する恐れがあり、これとは逆に、ポリエチレンテレフタレート素材製の不織布層の構成比が高い場合には初期の機械的強度には優れているとはいえ、長期間利用による物性低下の幅が相対的に増加するといった欠点があるため好ましくない。このため、本発明によれば、前記両素材間の目付比が前記範囲内に適切に収まっている必要がある。
【0039】
上述したように、本発明の好適な実施形態によりポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートの素材から構成されたニードルパンチング複合不織布は、既存の100%ポリエステル系素材に比べて耐化学性、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性に優れていることから、経時的な物性維持率に優れている。このため、水分率が高い大気状態や海岸などでの使用に向いている。さらに、低い目付を有するポリプロピレンの特性によって最終的なニードルパンチング不織布は100%ポリエステル系素材から構成されたニードルパンチング不織布に比べて軽量であり、柔らかいだけではなく、バルキー特性にも優れている。
【0040】
以下、実施例と比較例によって本発明を一層詳細に説明する。下記の実施例および比較例においては、400g/m2の製品に対して比較を行った。下記の実施例は本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0041】
実施例1
1.約20μmのポリプロピレン長繊維を紡糸してカレンダーリング熱接着が一部なされている不織布を形成し、中間層に約5μmのポリプロピレンのメルトブロー短繊維を含めて製造した。
【0042】
2.前記ポリプロピレン長繊維とメルトブロー短繊維を積層して3層構造をなす密度100g/m2の不織布積層体を形成した。このとき、含まれているメルトブロー層の密度は4g/m2とした。
【0043】
3.加えて、約25μmのポリエチレンテレフタレート長繊維を紡糸して前記ポリプロピレン長繊維のカレンダーリングとほとんど同じ方式により一部熱圧着工程を行う。ポリエチレンテレフタレートの場合、短繊維を含めることなく、長繊維のみから構成されるように製造した。
【0044】
4.前記ポリエチレンテレフタレート長繊維をなす密度は300g/m2にして積層体を形成した。
【0045】
5.前記それぞれの両工程を経て製作されたポリプロピレン長繊維ウェブとポリエチレンテレフタレートウェブをニードルパンチング工程に移行する。移行された両製品をコンベヤベルトの上に積層し、繰り出しながらウェブを進行させる。数多くのニードルの上下運動により熱融着がなされていない繊維と素材が異なる層の機械的な交絡作用が起こり、不織布の全体の結束力を有するように製造した。このとき、最終的に完成された不織布全体の密度は400g/m2である。
【0046】
比較例1
ポリプロピレンウェブ層全体の密度を50g/m2、ポリエチレンテレフタレート長繊維ウェブ層の密度を350g/m2とした以外は、前記実施例1の方法と同様にした。
【0047】
比較例2
ポリプロピレンウェブ層全体の密度を150g/m2、ポリエチレンテレフタレート長繊維ウェブ層の密度を250g/m2とした以外は、前記実施例1の方法と同様にした。
【0048】
比較例3
ポリプロピレンウェブ層全体の密度を200g/m2、ポリエチレンテレフタレート長繊維ウェブ層の密度を200g/m2とした以外は、前記実施例1の方法と同様にした。
【0049】
実験例
前記実施例および比較例によってそれぞれ製造したポリプロピレン−ポリエチレンテレフタレートの複合ニードルパンチング不織布を対象として下記のように物性テストを行った。
【0050】
1.初期機械的な強度物性:前記実施例および比較例によって製造された複合ニードルパンチング不織布から試料を採取し、適当なサイズに切断して試料の強度を測定した。試料のサイズは50mm×150mmであり、インストロン機を用いて試料毎に16回ずつ平均値を比較した。具体的な測定方法は、Edana20.2−89を参照されない。
【0051】
2.物性維持率(耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性):物性比較の基準は上記の機械的強度と同じであり、測定方法もまた同じである。但し、初期の機械的強度と特定の環境(酸性、アルカリ性)において長時間露出された後の機械的強度の物性を比較して低下の度合いを確認した。ISO4628−2とKSMISO2812−1試験法を参照して行い、具体的な方法は、下記の通りである。
【0052】
測定HSO(硫酸)が5%希釈された溶液に168時間浸漬した後、前記1の方法と同様にして強度を測定し、もう一つはNaOH(水酸化ナトリウム)5%溶液に168時間浸漬後に強度を測定した。そして、NaCl(塩化ナトリウム)3%希釈溶液に96時間浸漬後に強度を測定した。
【0053】
物性維持率(%)=(初期強度−浸漬後の強度)×100/(初期強度)
上記の方法に従い行った複合ニードルパンチング不織布の物性テスト結果を下記表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
前記表1から明らかなように、本発明による実施例1の不織布は、酸性、耐アルカリ性、耐塩水性の環境下において所定の期間が経過した後に比較したとき、比較例の不織布に比べて強度が高く維持されていることを確認することができる。
【0056】
一方、比較例1は実施例1よりも初期強度は5kg/5cmと高かったにも拘わらず、酸性、アルカリ性などの環境における耐久性が弱くて所定時間が経過後の最終強度はむしろ低下したことが分かり、さらに、比較例2および比較例3の場合には物性維持率は実施例1に比べて良好であったものの、初期強度が顕著に低いだけではなく、極性を帯びた環境下において所定時間が経過した後の強度もまた実施例1の物性には遥かに及ばないレベルであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる異成分素材よりなる2層以上の不織布を積層してカレンダーロールにおける熱融着過程およびニードルパンチングによる交絡過程を経て形成されるものであることを特徴とする異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項2】
前記それぞれ異なる異成分素材は、下記の構造式(I)のポリプロピレンおよび下記の構造式(II)のポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【化1】

【化2】

【請求項3】
前記異成分素材の一つであるポリプロピレンは、50g/m2以上1000g/m2以下の目付を有するように熱融着により不織布を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項4】
前記異成分素材の一つであるポリプロピレン製の不織布は、10ミクロン以上30ミクロン以下のポリプロピレン長繊維または0.1ミクロン以上10ミクロン以下の短繊維の一つまたはこれらの複合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項5】
前記異成分素材の一つであるポリエチレンテレフタレートは、50g/m2以上1000g/m2以下の目付を有するように熱融着により不織布を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項6】
前記異成分素材の一つであるポリエチレンテレフタレートは、10ミクロン以上40ミクロン以下のポリエチレンテレフタレート長繊維または0.1ミクロン以上40ミクロン以下のポリエチレンテレフタレート短繊維の一つまたはこれらの複合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項7】
前記異成分素材としてのポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの目付比は、6以上14以下対26以上34以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の異成分の素材を用いた複合ニードルパンチング不織布。
【請求項8】
ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートをそれぞれコンベヤベルトの上にランダムに積層してカレンダーを通過しながら熱融着してスパンボンド不織布を製造する第1段階と、
前記第1段階において製作されたポリプロピレンスパンボンド不織布とポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布をニードルパンチングして未結合繊維を交絡することにより最終的なニードルパンチング不織布を製作する第2段階と、
を含むことを特徴とする異成分素材を用いた複合ニードルパンチング不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−111708(P2011−111708A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99264(P2010−99264)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(510113472)東レセハン インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】Toray Saehan Inc.
【Fターム(参考)】