異方性ドレープおよびシステム
患者の創傷を治療するための異方性創傷用ドレープ(116)は、組織部位の上に配置される柔軟シート(123)を具える。この柔軟シートは、第1の等方性領域(124)と、第2の等方性領域(126)とを具える。第1の等方性領域および前記第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。異方性ドレープ(116)は、減圧創傷治療システムの一部として用いることができる。他のシステムおよび方法も示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,807号「Reduced-pressure Surgical Wound Treatment System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,798号「Dressing Assembly For Subcutaneous Wound treatment Using Reduce Pressure」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,808号「See-Through, Reduced-Pressure Dressing」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,802号「Reduced-Pressure Dressing Assembly For Use in Applying a Closing Force」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,803号「Reduced-Pressure, Linear-Wound Treatment System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,800号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Curved Body Part」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,797号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on Breast Tissue」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,805号「Super-Absorbent, Reduced-Pressure Wound Dressing and System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,810号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Joint」、2008年12月10日提出の米国仮特許出願第61/121,362号「Reduced-Pressure Wound treatment System Employing an Anisotropic Drape」、および2009年1月12日提出の米国仮特許出願第61/144,067号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Joint」の35USC119条(e)の利益を主張するものである。これらの仮出願はいずれもすべての目的において参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本願は、一般に医療システムに関し、より具体的には、異方性ドレープ、減圧創傷治療システムおよび異方性ドレープの使用方法に関するものである。
【0003】
蒸気および酸素透過性の等方性フィルムのドレッシングは、一般にドレープと呼ばれ、創傷、または組織の損傷部を覆い、回復を促進して感染を防ぐために用いることができる。これらの等方性ドレープの弾性はほぼ一様である。しかしながら、一方向に特定の速度で、および多方向に別の速度で真皮組織または皮下組織といった組織の移動または近置を調整したい場合、これは問題となりうる。組織移動を不適切に調整すると、限定はしないが、水ぶくれ、色素増加症、ならびに多くの他の皮膚合併症や皮膚炎を含む否定的な副作用が起きる場合がある。他の欠点もまた存在しうる。
【発明の概要】
【0004】
創傷治療システムおよび方法における欠点は、図示および記載するような実施例によって対処される。一実施例によると、患者の組織部位を治療するための減圧創傷治療システムは、第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有する柔軟シートを有する創傷用ドレープを具える。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。このシステムはさらに、創傷用ドレープと組織部位との間に位置するマニホルドと、減圧をマニホルドに送達する減圧サブシステムとを具える。
【0005】
他の実施例によると、創傷用ドレープは組織部位の上に配置するための柔軟シートを具える。この柔軟シートは、第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有する。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。
【0006】
他の実施例によると、創傷用ドレープは、柔軟シートと当該柔軟シートに結合された異方性部材とを具える。柔軟シートおよび異方性部材は柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成され、これにより柔軟シートは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。
【0007】
他の実施例によると、創傷用ドレープは、柔軟シートと当該柔軟シートに結合された流体膨脹性ブラダとを具える。柔軟シートおよび流体膨脹性ブラダは柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成されており、これにより柔軟シートは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。膨脹性ブラダは多くの形状をしていてもよい。創傷用ドレープは閉鎖力を提供してもよい。
【0008】
他の実施例によると、患者の組織部位を減圧で治療する方法は、組織部位の近傍にマニホルドを配置するステップと、マニホルドの上に異方性創傷用ドレープを配置するステップと、異方性ドレープを患者の真皮に密閉するステップと、減圧源をマニホルドに流体連通可能に連結するステップとを含む。異方性ドレープは、少なくとも第1の等方性領域および第2の等方性領域を具えており、これにより異方性ドレープは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。
【0009】
他の実施例によると、創傷用ドレープを製造する方法は、第1の等方性領域および第2の等方性領域で組織部位を覆って配置するための柔軟シートを形成するステップを含む。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。
【0010】
実施例の他の特徴および利点が、図面や付随する詳細な説明を参照することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のより完全な理解は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明を参照することにより得ることができる。
【図1】図1は、減圧創傷治療システムの実施例の一部の断面図を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の減圧創傷治療システムの一部の概略断面図である。
【図3A】図3Aは、創傷用ドレープの実施例の第1の等方性領域および第2の等方性領域の概略断面図である。
【図3B】図3Bは、創傷用ドレープの他の実施例の第1の等方性領域の概略断面図である。
【図4A】図4Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aにおける線4B−4Bに沿って取られた図4Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図5A】図5Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aにおける線5B−5Bに沿って取られた図5Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図6A】図6Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aにおける線6B−6Bに沿って取られた図6Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図7A】図7Aは、減圧創傷治療システムの実施例の概略上面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aにおける線7B−7Bに沿って取られた図7Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明においては、その一部を構成する添付図面に対して参照がなされ、その図面においては、本発明が実施される具体的な実施形態が例示を目的に示されている。それらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、また、その他の実施形態が利用可能であるとともに、本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更が可能であることを理解されたい。本発明を当業者が実施可能とするのに必要のない細部説明を避けるために、当業者に既知の一部の情報を説明から省略する場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で捉えるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0013】
図1乃至図3Bをここで参照すると、例えば切創102といった組織部位を治療するための減圧治療システム100が示されている。減圧治療システム100は切創102および損傷した皮下組織部位110を含む一般の組織部位との関連で示されるが、減圧治療システム100は開放創または他の組織部位を含む多くの異なる種類の創傷を治療するために使用されうることを理解されたい。組織部位は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱、靱帯、または任意の他の組織を含む人間、動物、または他の生物の肉体組織であってもよい。
【0014】
減圧治療システム100は、切創102の周りの切り口周囲の領域に図示されており、それは、表皮104または皮膚、および真皮106を通って、下皮または皮下組織108に達している。皮下組織108には、脂肪組織や筋肉など多種の組織が含まれる。損傷した皮下組織部位110は、切創102から延びるように示されており、本例では、皮下の欠損、または空隙112を含む。この損傷した皮下組織110は、しばしば脂肪吸引などの外科的処置によって引き起こされる。損傷した皮下組織110は、浮腫の原因となりうる体液の蓄積など、多くの理由により厄介な空隙112のような空隙、開空間、および多種の不具合を含みうる。本書で使用する用語「流体(fluid)」は一般に、気体または液体を指すが、限定はしないがゲル、コロイド、発泡体を含む任意の他の流動性材料を含んでもよい。
【0015】
切創102は、ステープル、縫合糸、または接着剤など任意の機械的な閉鎖手段を用いて閉じることができるが、本例では縫合糸114が示されている。実施例では、切創周囲の領域に用いる減圧治療システム100を示している。減圧治療システム100は、対応する切創がない損傷した皮下組織110、または任意の他の種類の組織部位を治療すべく使用できることを理解されたい。
【0016】
減圧治療システム100は通常、ドレープまたは創傷用ドレープ116と、マニホルド120と、減圧サブシステム122とを具える。減圧治療システム100はさらに、把持部材118を具える。創傷用ドレープ116は通常、シートまたは柔軟シート123から形成されており、1またはそれ以上の第1の等方性領域124および1またはそれ以上の第2の等方性領域126を具えている。各領域は通常、創傷用ドレープ116の少なくとも50%を占める領域または範囲である。第1および第2の等方性領域124、126は、柔軟シート123に異方性特性を提供するように構成される。このように、柔軟シート123は、所与の方向に創傷用ドレープ116が主に伸縮するのに役立つ場合がある。換言すると、柔軟シート123は別の異なる方向よりも、ある方向に沿ってより伸縮できる。本書に示すように、伸縮は弾性変形および非弾性変形を含んでもよい。このような異方性特性は様々な方法で実現することができ、異なる厚さを利用するいくつかの実施例をさらに以下に述べる。
【0017】
図1乃至図3Bの実施例では、第1の等方性領域124はドレープ材料の第1の厚さ(t1)を有し、第2の等方性領域126はドレープ材料の第2の厚さ(t2)の厚さを有しており、各第1の等方性領域124の厚さは、各第2の等方性領域126の厚さよりも大きい(t1>t2)。各第1の等方性領域124の厚さ(t1)が各第2の等方性領域126の厚さ(t2)よりも大きいため、柔軟シート123には異方性特性が提供され、それにより柔軟シート123は、各軸方向に均等の力を受けた状態で、第2の(y)軸の方向130よりも第1の(x)軸の方向128により伸縮する。一実施例では、第1の厚さ(t1)は、第2の厚さ(t2)の105パーセント(105%)よりも大きいか等しく、すなわちt1≧105%t2である。別の実施例では、第1の厚さ(t1)は第2の厚さ(t2)の110パーセント(110%)よりも大きいか等しく、すなわちt1≧110%t2である。第1の厚さ(t1)と第2の厚さ(t2)との間における他の関係も可能である。
【0018】
実際、適切な厚さを選択することにより、利用者は、柔軟シート123が伸縮されて患者に接着された後に本来のサイズに戻ろうとする速度または力を選択的に制御することができる。従って、組織の移動および/または近置する速度を調整することができる。組織の移動および/または近置を調整すると、例えば水ぶくれ、色素増加症等の皮膚合併症を最小限に抑え、さらには切創102の閉鎖を補助するように作用しうる。さらに、厚い第1の等方性領域124は皮下組織108にまで達する圧縮力を提供することができ、損傷した皮下組織110を治療し、空隙112またはその種のものを取り除くために有用となりうる。図2に示すように、第1の等方性領域124は、皮膚対向面132から内側に突出していてもよい。図3Aに示すように、第1の等方性領域124は、柔軟シート123の第1の面134から外側に突出していてもよい。図3Bに示すように、第1の等方性領域124は、皮膚対向面132と第1の面134の双方から突出していてもよい。柔軟シート123の一部として、任意の数の等方性領域を用いてもよいことを理解されたい。さらに、等方性領域124、126は互いにほぼ平行に示されているが、領域124、126を互いに異なる向きに配置してもよいということを理解されたい。2つの領域124、126に対して2つの厚さ(t1およびt2)が示されているが、異方性特性を実現するために異なる厚さを有する多くの領域を用いてもよいことを理解されたい。
【0019】
創傷用ドレープ116は、ドレープ伸展部136が切創102および/または損傷した皮下組織110の外縁を越えて延在するような方法で、切創102および/または損傷した皮下組織110と重なるように寸法形成されてもよい。創傷用ドレープ116は、不透過性または半透過性エラストマ材料といった任意の適切な材料で形成されてもよい。「エラストマの(Elastomeric)」は、エラストマの性質を有することを意味し、一般にゴムのような性質を有するポリマ材料のことをいう。より具体的には、ほとんどのエラストマは100%より高い伸び率と、非常に高い弾力を有する。材料の弾性とは、弾性変形から回復する材料の能力のことをいう。エラストマの例には、限定しないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマ、クロロスルホンポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン、EVAフィルム、コポリエステル、およびシリコーンが含まれる。密閉ドレープ材料は、シリコーン材料、3M Tegaderm(商標)ドレープ材料、カリフォルニア州パサデナのAvery Dennison社から入手可能なアクリルドレープ材料、または切創ドレープ材料を含んでもよい。しかしながら、創傷用ドレープ116は任意の適切な材料で形成されてもよいことを理解されたい。さらに、第1および第2の等方性領域124、126は、同一のドレープ材料または異なるドレープ材料から形成されてもよい。等方性領域124、126は、共押出法、成型法、または任意の他の適切な成形処理によって形成することができる。同一の広がりを持たない2またはそれ以上のドレープ材料の部分を結合することにより、異なる厚さを実現することができる。必要に応じて、ドレープ材料は、限定はしないが、抗菌性化合物または任意の適切な生物活性要素を含む1またはそれ以上の適切な生物活性要素を含んでもよい。
【0020】
把持部材118は創傷用ドレープ116に結合されてもよい。把持部材118は、創傷用ドレープ116が患者の表皮104と結合するように機能しうる。さらに、把持部材118は、ドレープ116が伸縮されて患者に接着された後に本来のサイズに戻ろうとするにつれて、ドレープ116によって生成された閉鎖力を伝達するようにも機能しうる(伝達される力は、図2の力ベクトル138に示す)。さらに、創傷用ドレープ116および把持部材118は、患者の表皮104の上に流体シールを形成するよう相互に機能する。「流体シール」または「シール」は、特定の減圧サブシステムが与えられる所望の部位で減圧を維持するのに適した封を意味する。把持部材118は、ドレープ116を患者の表皮104に結合する、患者の表皮104に閉鎖力を伝達する、および/または患者の表皮104の上に流体シールを形成するのを補助するために適した任意の材料であってもよい。例えば、把持部材118は、感圧接着剤、熱活性型接着剤、密閉テープ、両面密閉テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、フック、縫合糸等であってもよい。
【0021】
実施例では、把持部材118はドレープ伸展部136の皮膚対向面と結合した接着層であるが、把持部材118はドレープ116の幅全体に広がっていてもよいことを理解されたい。代替的には、この把持部材118は、第1または第2の等方性領域124、126といった創傷用ドレープ116の選択された部分にのみ適用されてもよい。把持部材118は、創傷用ドレープ116上に分布した層またはパターンとして形成されてもよい。代替的には、密閉テープの場合、把持部材118は、創傷用ドレープ116の第1の面134全体またはドレープ伸展部136の第1の面にわたって適用されてもよい。
【0022】
マニホルド120は、創傷用ドレープ116の皮膚対向面132と、例えば切創102、創傷床の内側、または表皮104の無傷な部分の上といった組織部位との間に配置することができる。本書における用語「マニホルド(manifold)」は一般に、切創102のような組織部位に減圧を加え、流体を供給し、あるいはそこから流体を除去するのを補助すべく設けられた物体または構造をいう。マニホルド120は、多くの異なる材料で作ることができる。
【0023】
一実施例では、マニホルド120は多孔性かつ透過性の泡状材料から形成され、より具体的には、減圧下で優れた創傷液の透過が可能な網状の開放セルポリウレタンまたはポリエーテル発泡体により作られる。使用されているこのような発泡材料の1つが、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社(KCI)から入手可能なV.A.C.(商標)GranuFoam(商標)材料である。マニホルド材料には任意の材料または材料の組み合わせを用いることができ、マニホルド材料が減圧を分配するように機能しうる。マニホルド120は通常、マニホルド120周囲の組織領域へ流体を分配し、そこから流体を除去する複数のフローチャネルまたは流路を具える。このフローチャネルは相互接続されてもよい。マニホルドの例には、限定はしないが、フローチャネル、開放セル発泡体のようなセル状発泡体、繊維、多孔質組織の堆積、およびフローチャネルを含むか含むように硬化する液体、ゲル、および発泡体を形成するように配置された構造要素を有する装置である。マニホルド材料は、材料の組み合わせまたは層状にしたものであってもよい。例えば、親水性発泡体の第1のマニホルド層を親水性発泡体の第2のマニホルド層の近くに配置して、マニホルド材料を形成してもよい。
【0024】
GranuFoam(商標)材料の網状の細孔は約400乃至600ミクロンであり、マニホルド機能を実施するには有用であるが、他の材料を用いてもよい。マニホルド材料は、マニホルド材料の本来の厚さの約1/3の厚さまで後にフェルト状とされる網状の発泡体であってもよい。多くの可能性のある材料の中で、以下のGranuFoam(商標)材料またはFoamex(商標)技術発泡体(www.foamex.com)を使用することができる。場合によっては、マイクロボンド処理においてイオン性銀を発泡体に添加するか、抗菌剤のような他の物質をマニホルド材料に添加することが望ましい場合もある。マニホルド材料は等方性であっても異方性であってもよい。さらに、マニホルド材料は、生体吸収性材料または生体を包有可能な材料であってもよい。
【0025】
マニホルド120は創傷用ドレープ116と結合していてもよい。本書における用語「結合(coupled)」は、別個の物体を介する結合および直接的な結合を含む。用語「結合」には、材料の同一部分から形成されたそれぞれの要素によって、互いに連続している2またはそれ以上の要素も含まれる。また、用語「結合」は、化学結合を介するような化学的、機械的、熱的、または電気的結合を含むことができる。流体連結は、指定された部分または位置間が流体連通していることを意味する。
【0026】
創傷用ドレープ116とマニホルド120は、例えばアクリル性接着剤、シリコーン接着剤、ヒドロゲル、親水コロイド等の接着剤を用いて結合させることができる。代替的には、創傷用ドレープ116とマニホルド120は、熱接合、超音波接合、無線周波数接合等により接合させることができる。この結合はパターンであってもよい。さらに、創傷用ドレープ116が所望の方向にさらに異方性を呈すべく、構造を接着剤に添加してもよい。
【0027】
減圧サブシステム122は減圧源140を具えており、これは多くの異なる形状を取ることができる。減圧源140は減圧治療システム100の一部として減圧を提供する。本書に用いる「減圧(reduced pressure)」とは、概して、治療を受ける組織部位の周囲圧力より低い圧力のことをいう。多くの場合、この減圧は、患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。若しくは、減圧は、組織部位における組織に付随する静水圧より低くてもよい。減圧は最初に、マニホルド120、減圧導管、または導管148、および切創102といった組織部位の近傍に流体の流れを発生させる。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に近づくにつれて、この流れが弱まり、減圧を維持することができる。特に記載がなければ、本書で述べる圧力の値はゲージ圧である。送達される減圧は静的であっても動的であってもよく(パターン化またはランダム)、連続的あるいは間欠的に与えられてもよい。減圧の機能しうる範囲は必要に応じて広く変化しうるが、一般に−5mmHg乃至−500mmHgである。例えばテキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なV.A.C.(商標)医療用ユニットや、壁面吸引ユニットなど様々な減圧源を用いることができる。また、減圧源140は、創傷用ドレープ123と表皮104との間の気密性にどれだけ多くの漏れが生じるかに応じて、チューブ内のピストンのような携帯用機械デバイスによって供給することもできる。
【0028】
実施例では、減圧源140は、バッテリ区画142と、キャニスタ144内の流体高さの視覚的表示を提供する窓146を有するキャニスタ領域144とを有するように示されている。疎水性あるいは疎油性フィルタなどの中間膜フィルタが、減圧導管148と減圧源140との間に挿入されている。
【0029】
減圧源140によって生成された減圧は、減圧導管148を通って減圧接続部150、またはL字ポート152などの接続部150に送達される。一実施例では、L字ポート152は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なTRAC(商標)技術ポートである。この減圧接続部150により、減圧を創傷用ドレープ116に送達し、創傷用ドレープ116の内側部分およびマニホルド120内まで到達させることが可能となる。この実施例では、L字ポート152は柔軟シート123を通ってマニホルド120に延びているが、多くの構成が可能である。
【0030】
運用時、マニホルド120は、例えば切創102および/または損傷した皮下組織110といった組織部位の近位に配置することができる。創傷用ドレープ116のドレープ伸展部136が切創102および/または損傷した皮下組織110を超えて延在するように、創傷用ドレープ116がマニホルド120を覆って配置されてもよい。このドレープ116は、所望の長さに伸縮することができる。前述のように、ドレープ116は伸縮するが、第1の等方性領域124よりも第2の等方性領域126に伸縮できる。ドレープ116と患者の表皮104との間に流体シールを作るべく、ドレープ伸展部136をその後把持部材118によって患者の表皮104に固定することができる。場合によって、把持部材118は、患者の表皮104と結合したドレープ116が収縮しようとするにつれてドレープ116によって生成される閉鎖力を患者の表皮104に伝達するようにも機能しうる。減圧接続部150がまだ取り付けられていない場合は次いで適用され、減圧導管148は減圧接続部150と流体連通する。この減圧導管148はさらに、減圧源140とも流体連通する。この減圧源140はその後、減圧が創傷用ドレープ116の内部およびマニホルド120に送達されるように動作することができる。
【0031】
減圧が送達されると、マニホルド120は外側から圧縮されて収縮し、半硬質の基質を形成することができ、多くの有益な力および動作が生じうる。減圧はさらにマニホルド120を通って伝達され、その結果、患者の表皮104および切創102に減圧がかかる。少なくとも治癒プロセスの初期段階で、減圧は更に切創102を通って皮下組織108まで達しうる。減圧は皮下空隙112といった欠損部を閉じ、一般にその領域に安定性をもたらす。また、ドレープ116に送達される減圧は、矢印154に示す圧縮力を生成し、再び安定性および治療をもたらす。矢印154に示す圧縮力は、表皮104の地点よりも大きく、この圧縮力はさらに深く下方に拡がって、皮下組織108のレベルにまで達することができる。
【0032】
さらに、減圧の影響下で創傷用ドレープ116およびマニホルド120が横方向に収縮すると、矢印156に示す内向きの力が生じて、切創102で更なる閉鎖力を保持するのを助けるとともに、創傷に更なる安定性を一般に与えることができる。従って、減圧による矢印156に示す内向きの力およびドレープ116の収縮によって生じる矢印138に示す閉鎖力は、切創102を閉じるのを助ける、および/または切創102を実質的に閉鎖した位置に維持するのを補助するように機能しうる。同時に、マニホルド120に送達されそれを通る減圧は、切創102から滲出液や他の流体を除去するのに役立つ。これらの動作は総て、例えば切創102といった組織部位の回復を改善することができる。
【0033】
手術室で減圧治療システム100を利用し、適切な治療が実施されるまで患者に対してシステム100をそのままの状態とするのを許容することが望ましい。この点に関して、医療供給者が、ドレープ116を取り除く必要なしに、切創102といった組織部位の回復に関する視覚的な指示を得ることを可能とするために、創傷用ドレープ116、マニホルド120、および任意の他の層を透明な材料で形成することが望ましい。さらに、減圧治療システム100は主に創傷を塞ぐ治療または創傷を塞ぐ治療プロトコルの中間ステップとして用いることができることを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ116はマニホルド120および/または減圧サブシステム122なしで用いてもよいということを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ116は、閉鎖力および/または圧縮力を切創102および/または損傷した皮下組織110に伝達可能な独立型の医療品としても有用であるということを理解されたい。
【0034】
図4Aおよび図4Bを参照すると、切創、損傷した皮下組織、または他の創傷といった組織部位を治療するための減圧治療システム200の一部の第2の実施例が示されている。この減圧治療システム200は図1乃至図3Bの減圧治療システム100と多くの点で類似しており、この実施例においては、対応する部分は一般に符号に100を加えて図1乃至図3Bに示されている。減圧サブシステム(図示せず)と連結するために減圧接続部250および導管248が示されているが、ドレープ216は独立型の医療品としても利用できることを理解されたい。
【0035】
創傷用ドレープ216は、第1の等方性領域224と、第2の等方性領域226と、第3の等方性領域227とを具える。第1の等方性領域224は第2の等方性領域226よりも厚く、第2の等方性領域226は第3の等方性領域227よりも厚い。この実施例では、等方性領域はドレープ216にわたって均等に力が加わるように作られており、第1の等方性領域224によって規定された領域は第2の等方性領域226によって規定された領域ほど伸縮しない。等方性領域224、226、227は、互いに任意の適切な厚さであってもよい(例えば、第3の領域227が最も厚くてもよい等)ということを理解されたい。さらに、本実施例は3つの等方性領域を示しているが、任意の数の等方性領域を用いてもよいということを理解されたい。この等方性領域224、226、227は互いに同心であり、平面図で見ると環状の正方形状である。しかしながら、等方性領域224、226、227は、必ずしも互いに同心である必要はないことを理解されたい。さらに、各等方性領域224、226、227は、平面図で見ると、限定はしないが、円形、長円形、三角形、矩形、八角形等を含む任意の適切な形状を有していてもよいということを理解されたい。
【0036】
他の実施例では、創傷用ドレープ216は規定された等方性領域224、226、227を有するが、領域間の移行は段階的であってもよい。他の実施例では、創傷用ドレープ216の厚さが内側部分270から創傷用ドレープ216の縁272へ徐々に増加するか徐々に減少するように、創傷用ドレープ216は先細である。従って、創傷用ドレープ216の長さにわたって、創傷用ドレープ216の弾性係数は均等かつ徐々に変化する。図4Aおよび図4Bでは、内側部分270は創傷用ドレープ216のほぼ中心部であるが、内側部分270は創傷用ドレープ216の縁272の内側のどこに位置していてもよい。
【0037】
一実施例では、創傷用ドレープ272は縁部272において最も厚く、中心部270が創傷用ドレープ272の最も薄い部分となるように内側部分270に向かって徐々に薄くなってもよい。得られる空洞部の形状は、円錐台形状を含む円錐に近似した形状であってもよい。逆に、創傷用ドレープ272は縁部272において最も薄く、中心部270が創傷用ドレープ272の最も厚い部分となるように中心部270に向かって徐々に厚くなってもよい。本書に記載の創傷用ドレープの任意の実施例は、ほぼ平行な等方性領域を有するドレープを含み、明確に規定された等方性領域を有する代わりに、厚さまたは弾性係数が均等に、および徐々にあるいは先細して変化してもよい。等方性領域が互いにほぼ平行である実施例では、内側部分270が創傷用ドレープ216の一端から対向する端部まで延在していてもよい。創傷用ドレープ216が先細していると、創傷用ドレープ216を当てる組織部位における負担を和らげる効果があり、皮膚炎(例えば、水ぶくれ)を軽減することができる。このような先細はさらに、所望の伸縮特性を提供することができ、創傷治療を促進する。
【0038】
図5Aおよび図5Bをここで参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム300の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム300は通常、図1乃至図3Bの減圧治療システム100と多くの点で類似しており、この実施例においては、対応する部分は一般に符号に200を加えて図1乃至図3Bに示されている。減圧サブシステム(図示せず)と結合するために減圧接続部350および導管348が示されているが、創傷用ドレープ316が独立型の医療品としても利用できることを理解されたい。
【0039】
創傷用ドレープ316は、第1の等方性領域324と第2の等方性領域326とを具える。第1の等方性領域324は第1の弾性係数(λ1)を有する材料から形成され、第2の等方性領域326は第2の弾性係数(λ2)を有する材料から形成される。実施例では、第1の弾性係数は第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2)、これにより第2の等方性領域326は、創傷用ドレープ316が伸縮する場合に第1の等方性領域324よりも伸縮する。創傷用ドレープ316は、他の方向に対して一方向に主に伸縮する。例えば、一実施例では、創傷用ドレープ316は主に、1またはそれ以上の細長い等方性領域324、326に対してほぼ垂直の方向に伸縮できる。
【0040】
各等方性領域324、326毎に適切な弾性係数を選択することにより、利用者は、創傷用ドレープ316を伸縮させて患者に接着した後にドレープ316の本来のサイズに戻ろうとする速度または力を選択的に制御することができる。従って、組織の移動および/または近置の速度またはそれに関する力を調整することができる。実施例は2つの各等方性領域324、326を示しているが、任意の適切な数の等方性領域を用いてもよいということを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ316は様々な弾性係数の任意の数の等方性領域を具えていてもよく、あるいは、創傷用ドレープ面の少なくとも1つにわたって連続的に変化した弾性を構成してもよいことを理解されたい。一実施例では、創傷用ドレープ316の縁に最も近い等方性領域は、創傷用ドレープ316の他の等方性領域と比較して低い弾性係数を有する。
【0041】
他の実施例では、1またはそれ以上の等方性領域は、この領域が取り付けられる組織部位、またはその近くにおける組織と等しいかほぼ同等の弾性係数を有していてもよい。いくつかの非限定的な実施例では、等方性領域の弾性係数は、患者の表皮の弾性係数の20%以下、または患者の皮膚の弾性係数の10%以下、または患者の皮膚の弾性係数の5%以下であってもよい。等方性領域の弾性係数を組織部位における組織の弾性係数に調整すると、組織にかかる応力か応力遮蔽を最小限にして治療を促進し、瘢痕を最小限にすることができる。さらに、等方性領域324、326は平面図で見た場合に環状形状であるように構成されてもよく、等方性領域324、326は等方性領域324、326が互いに同心となるように配置されても、されなくてもよいということを理解されたい。さらに、等方性領域324、326はほぼ同等の厚さを有するように示されているが、等方性領域324、326は異なる厚さでもよいことを理解されたい。従って、創傷用ドレープ316の異方性は、異なる弾性係数ならびに異なる厚さを有する異なる領域を組み合わせることによって実現することができる。また、創傷用ドレープ316の厚さおよび弾性係数は、創傷用ドレープ316またはその一部の1またはそれ以上の方向に沿って、均等かつ徐々に先細であってもよい。さらに、等方性領域324、326は互いにほぼ平行に示されているが、等方性領域324、326は互いに適切に配置されてもよいということを理解されたい。
【0042】
図6Aおよび図6Bを参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム400の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム400は通常、創傷用ドレープ416と、1またはそれ以上の把持部材418とを具えている。減圧を組織部位に送達できるように減圧源(図示せず)と連結するため、減圧接続部450および導管448が創傷用ドレープ416に連結されてもよい。しかしながら、創傷用ドレープ416は独立型の医療品としても使用できることを理解されたい。
【0043】
創傷用ドレープ416は一般に、そこに結合された1またはそれ以上の異方性部材457を有する柔軟シート423で形成される。異方性部材457は創傷用ドレープ416に異方性特性を提供するように構成される。この例示的、非制限的な実施例では、創傷用ドレープ416は異方性部材457間の領域を伸縮するように機能しうるが、異方性部材457の縦軸方向には最小限、または全く伸縮しない。実施例では、異方性部材457は複数の微細線維458を含む。微細線維458は、限定はしないが、ポリマ、布地、金属、組成、エラストマ等を含む任意の適切な材料で作られてもよい。さらに、微細線維458は、互いにほぼ平行であるように配置されてもよい。しかしながら、微細線維458はドレープ416に異方性特性を提供できるような任意の適切な配置であってもよく、例えば、微細線維は、「わらぶきの(thatched)」ような配置、ほぼランダムな配置等であってもよいということを理解すべきである。この微細線維458はさらに、いくつかの実施例における更なるドレープ材料で形成することができる。
【0044】
微細線維458は、限定はしないが、接着剤、機械的ファスナ、接合、音波接合等を含む任意の適切な手段によって柔軟シート423に結合される。微細線維458は、柔軟シート423の皮膚対向面432または第1の面434の何れかに結合されてもよい。さらに、微細線維458は共押出法のような処理によって柔軟シート423と共に形成されてもよく、これにより、微細線維458は柔軟シート423とほぼ同一平面となる。また、実施例は2つの異方性部材457を示しているが、任意の数の異方性部材457を用いることができることを理解されたい。さらに、異方性部材457は互いにほぼ平行に示されているが、異方性部材457は互いに任意の適切な配置であってもよいことを理解されたい。さらに、平面図で見た場合に異方性部材457は環状となるように配置されてもよく、互いに同心となるように配置されても、されなくてもよいということを理解されたい。
【0045】
異方性部材457は、この実施例において複数の微細線維458を具えるように示されているが、異方性部材457は任意の適切な構成および配置であってもよいということを理解されたい。例えば、異方性部材は柔軟シート423に結合された接着層を含んでもよい。接着層はパターンであっても、パターンでなくてもよい。異方性部材の他の可能な構成および配置も可能である。さらに、把持部材418は、図1乃至図3Bの減圧治療システム100の把持部材118と同一または類似している。実施例では、把持部材418は、柔軟シート423の皮膚対向面432に結合されてもよい。把持部材418は柔軟シート423の幅全体にわたり、微細線維458を覆っていてもよく、図6Bに示すように柔軟シート423の端部の近くに位置していてもよい。
【0046】
図7Aおよび図7Bをここで参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム500の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム500は一般に、創傷用ドレープ516と、1またはそれ以上の把持部材518とを具える。減圧接続部550および導管548は、減圧を組織部位に送達できるように減圧源(図示せず)と流体連結するため、創傷用ドレープ516と結合されてもよい。しかしながら、創傷用ドレープ516は独立型の医療品としても利用できるということを理解されたい。
【0047】
創傷用ドレープ516は通常、1またはそれ以上の流体膨張性ブラダ560を有する柔軟シート523で形成される。各流体膨張性ブラダ560は、流体膨張性ブラダ560を膨張させるために流体を受ける内部チャンバ562を具える。流体は、対応する流体供給管または導管564によって各内部チャンバ562に供給されるが、単一の流体供給管が流体膨張性ブラダ560を相互接続する通路(図示せず)を介して各ブラダに流体を送達するように構成されてもよいということを理解されたい。流体は、流体制御手段(図示せず)から内部チャンバ562に送達される。流体制御手段は、流体を貯蔵し、管564を介して内部チャンバ562に流体を選択的に送達することができる任意の適切な装置であってもよい。例示的な流体制御手段は、限定はしないがバルブ、クランプ、調整器等を含む制御機構に対応する、限定はしないがポンプ、シリンダ、リザーバ等を含む。流体膨張性ブラダ560は、限定はしないが、空気、水、生理食塩水、ゲル、発泡体等を含む任意の適切な材料によって膨張しうる。
【0048】
流体膨張性ブラダ560は、創傷用ドレープ516に異方性特性を提供するように構成される。実施例では、創傷用ドレープ516が図1乃至図3Bのドレープと同様に機能するよう硬質を与えることにより、流体膨張性ブラダ560は創傷用ドレープ516に異方性特性を提供し、これにより、伸縮力が加えられたときに柔軟シート523は、ブラダ560間の領域により伸縮する。さらに、流体供給管564を介して送達される流量を制御することにより、創傷用ドレープ516の異方性特性を制御することもできるということを理解されたい。例えば、流体が流体膨張性ブラダ560に送達されると、ドレープ516の異方性が増加する場合がある。管564を介して送達される流体は、動的な異方性シートを提供するために変化してもよい。創傷部位の状態に応じて流体制御手段を制御するコントローラが設けられてもよい。さらに、創傷用ドレープ516を伸縮させて適用する前に流体膨張性ブラダ560を膨脹させると、異方性特性が更に高まる場合があることを理解されたい。さらに、一旦流体膨張性ブラダ560が膨脹すると、皮下組織にまで達し、損傷した皮下組織を治療して、空隙またはその種のものを取り除くのに有用となりうる圧縮力を提供するよう機能する。
【0049】
流体膨張性ブラダ560は、限定はしないが、接着剤、機械的ファスナ、接合、音波接合等を含む任意の適切な手段によって柔軟シート523に結合されてもよい。流体膨張性ブラダ560は、柔軟シート523の皮膚対向面532または第1の面534の何れかと結合してもよい。さらに、流体膨張性ブラダ560は、膨張する前に柔軟シート523とほぼ同一平面となるように形成されてもよい。実施例は4つの流体膨張性ブラダ560を示しているが、任意の数のブラダ560を用いることができることを理解されたい。さらに、流体膨張性ブラダ560は互いにほぼ平行に示されているが、流体膨張性ブラダ560は互いに任意の適切な配置であってもよいことを理解されたい。さらに、流体膨張性ブラダ560は、平面図で見た場合に流体膨張性ブラダ560が環状形状となるように配置されてもよく、流体膨張性ブラダ560は当該流体膨張性ブラダ560が互いに同心となるように配置されても、されないでもよいということを理解されたい。
【0050】
さらに、把持部材518は、図1乃至図3Bの減圧治療システム100の把持部材118と同一または類似している。実施例では、把持部材518は柔軟シート523の皮膚対向面532に結合されてもよい。把持部材518は柔軟シート523の幅全体にわたり、微細線維558を覆ってもよく、あるいは柔軟シート523の端部の近くに位置してもよい。
【0051】
一実施例では、流体膨張性ブラダ560は流体供給管564を通る正圧で膨張され、減圧が減圧接続部550に供給されるにつれて、膨脹性ブラダ560は圧縮力で患者の表皮を押圧する。減圧が増加するにつれて、膨脹性ブラダ560は減圧接続部550に向かって引き込まれ、これにより閉鎖力が生じる。閉鎖力が表皮に達し、例えば真皮のようにさら深い位置に達する場合もある。
【0052】
本発明およびその利点を特定の非限定的な実施例の説明として開示したが、添付のクレームで規定された本発明の範囲を逸脱することなく様々な変化、置換、交換、変更を施すことができると解されるべきである。いずれかの実施例に関して記載されたいずれの特徴も、他の様々な実施例に適用してもよいことを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,807号「Reduced-pressure Surgical Wound Treatment System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,798号「Dressing Assembly For Subcutaneous Wound treatment Using Reduce Pressure」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,808号「See-Through, Reduced-Pressure Dressing」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,802号「Reduced-Pressure Dressing Assembly For Use in Applying a Closing Force」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,803号「Reduced-Pressure, Linear-Wound Treatment System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,800号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Curved Body Part」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,797号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on Breast Tissue」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,805号「Super-Absorbent, Reduced-Pressure Wound Dressing and System」、2008年5月30日提出の米国仮特許出願第61/057,810号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Joint」、2008年12月10日提出の米国仮特許出願第61/121,362号「Reduced-Pressure Wound treatment System Employing an Anisotropic Drape」、および2009年1月12日提出の米国仮特許出願第61/144,067号「Reduced-Pressure, Compression System and Apparatus for use on a Joint」の35USC119条(e)の利益を主張するものである。これらの仮出願はいずれもすべての目的において参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本願は、一般に医療システムに関し、より具体的には、異方性ドレープ、減圧創傷治療システムおよび異方性ドレープの使用方法に関するものである。
【0003】
蒸気および酸素透過性の等方性フィルムのドレッシングは、一般にドレープと呼ばれ、創傷、または組織の損傷部を覆い、回復を促進して感染を防ぐために用いることができる。これらの等方性ドレープの弾性はほぼ一様である。しかしながら、一方向に特定の速度で、および多方向に別の速度で真皮組織または皮下組織といった組織の移動または近置を調整したい場合、これは問題となりうる。組織移動を不適切に調整すると、限定はしないが、水ぶくれ、色素増加症、ならびに多くの他の皮膚合併症や皮膚炎を含む否定的な副作用が起きる場合がある。他の欠点もまた存在しうる。
【発明の概要】
【0004】
創傷治療システムおよび方法における欠点は、図示および記載するような実施例によって対処される。一実施例によると、患者の組織部位を治療するための減圧創傷治療システムは、第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有する柔軟シートを有する創傷用ドレープを具える。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。このシステムはさらに、創傷用ドレープと組織部位との間に位置するマニホルドと、減圧をマニホルドに送達する減圧サブシステムとを具える。
【0005】
他の実施例によると、創傷用ドレープは組織部位の上に配置するための柔軟シートを具える。この柔軟シートは、第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有する。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。
【0006】
他の実施例によると、創傷用ドレープは、柔軟シートと当該柔軟シートに結合された異方性部材とを具える。柔軟シートおよび異方性部材は柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成され、これにより柔軟シートは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。
【0007】
他の実施例によると、創傷用ドレープは、柔軟シートと当該柔軟シートに結合された流体膨脹性ブラダとを具える。柔軟シートおよび流体膨脹性ブラダは柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成されており、これにより柔軟シートは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。膨脹性ブラダは多くの形状をしていてもよい。創傷用ドレープは閉鎖力を提供してもよい。
【0008】
他の実施例によると、患者の組織部位を減圧で治療する方法は、組織部位の近傍にマニホルドを配置するステップと、マニホルドの上に異方性創傷用ドレープを配置するステップと、異方性ドレープを患者の真皮に密閉するステップと、減圧源をマニホルドに流体連通可能に連結するステップとを含む。異方性ドレープは、少なくとも第1の等方性領域および第2の等方性領域を具えており、これにより異方性ドレープは第2の方向よりも第1の方向に伸縮する。
【0009】
他の実施例によると、創傷用ドレープを製造する方法は、第1の等方性領域および第2の等方性領域で組織部位を覆って配置するための柔軟シートを形成するステップを含む。第1の等方性領域および第2の等方性領域は、柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成される。
【0010】
実施例の他の特徴および利点が、図面や付随する詳細な説明を参照することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のより完全な理解は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明を参照することにより得ることができる。
【図1】図1は、減圧創傷治療システムの実施例の一部の断面図を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の減圧創傷治療システムの一部の概略断面図である。
【図3A】図3Aは、創傷用ドレープの実施例の第1の等方性領域および第2の等方性領域の概略断面図である。
【図3B】図3Bは、創傷用ドレープの他の実施例の第1の等方性領域の概略断面図である。
【図4A】図4Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aにおける線4B−4Bに沿って取られた図4Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図5A】図5Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aにおける線5B−5Bに沿って取られた図5Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図6A】図6Aは、減圧創傷治療システムの一部の実施例の概略上面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aにおける線6B−6Bに沿って取られた図6Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【図7A】図7Aは、減圧創傷治療システムの実施例の概略上面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aにおける線7B−7Bに沿って取られた図7Aの減圧創傷治療システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明においては、その一部を構成する添付図面に対して参照がなされ、その図面においては、本発明が実施される具体的な実施形態が例示を目的に示されている。それらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、また、その他の実施形態が利用可能であるとともに、本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更が可能であることを理解されたい。本発明を当業者が実施可能とするのに必要のない細部説明を避けるために、当業者に既知の一部の情報を説明から省略する場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で捉えるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0013】
図1乃至図3Bをここで参照すると、例えば切創102といった組織部位を治療するための減圧治療システム100が示されている。減圧治療システム100は切創102および損傷した皮下組織部位110を含む一般の組織部位との関連で示されるが、減圧治療システム100は開放創または他の組織部位を含む多くの異なる種類の創傷を治療するために使用されうることを理解されたい。組織部位は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱、靱帯、または任意の他の組織を含む人間、動物、または他の生物の肉体組織であってもよい。
【0014】
減圧治療システム100は、切創102の周りの切り口周囲の領域に図示されており、それは、表皮104または皮膚、および真皮106を通って、下皮または皮下組織108に達している。皮下組織108には、脂肪組織や筋肉など多種の組織が含まれる。損傷した皮下組織部位110は、切創102から延びるように示されており、本例では、皮下の欠損、または空隙112を含む。この損傷した皮下組織110は、しばしば脂肪吸引などの外科的処置によって引き起こされる。損傷した皮下組織110は、浮腫の原因となりうる体液の蓄積など、多くの理由により厄介な空隙112のような空隙、開空間、および多種の不具合を含みうる。本書で使用する用語「流体(fluid)」は一般に、気体または液体を指すが、限定はしないがゲル、コロイド、発泡体を含む任意の他の流動性材料を含んでもよい。
【0015】
切創102は、ステープル、縫合糸、または接着剤など任意の機械的な閉鎖手段を用いて閉じることができるが、本例では縫合糸114が示されている。実施例では、切創周囲の領域に用いる減圧治療システム100を示している。減圧治療システム100は、対応する切創がない損傷した皮下組織110、または任意の他の種類の組織部位を治療すべく使用できることを理解されたい。
【0016】
減圧治療システム100は通常、ドレープまたは創傷用ドレープ116と、マニホルド120と、減圧サブシステム122とを具える。減圧治療システム100はさらに、把持部材118を具える。創傷用ドレープ116は通常、シートまたは柔軟シート123から形成されており、1またはそれ以上の第1の等方性領域124および1またはそれ以上の第2の等方性領域126を具えている。各領域は通常、創傷用ドレープ116の少なくとも50%を占める領域または範囲である。第1および第2の等方性領域124、126は、柔軟シート123に異方性特性を提供するように構成される。このように、柔軟シート123は、所与の方向に創傷用ドレープ116が主に伸縮するのに役立つ場合がある。換言すると、柔軟シート123は別の異なる方向よりも、ある方向に沿ってより伸縮できる。本書に示すように、伸縮は弾性変形および非弾性変形を含んでもよい。このような異方性特性は様々な方法で実現することができ、異なる厚さを利用するいくつかの実施例をさらに以下に述べる。
【0017】
図1乃至図3Bの実施例では、第1の等方性領域124はドレープ材料の第1の厚さ(t1)を有し、第2の等方性領域126はドレープ材料の第2の厚さ(t2)の厚さを有しており、各第1の等方性領域124の厚さは、各第2の等方性領域126の厚さよりも大きい(t1>t2)。各第1の等方性領域124の厚さ(t1)が各第2の等方性領域126の厚さ(t2)よりも大きいため、柔軟シート123には異方性特性が提供され、それにより柔軟シート123は、各軸方向に均等の力を受けた状態で、第2の(y)軸の方向130よりも第1の(x)軸の方向128により伸縮する。一実施例では、第1の厚さ(t1)は、第2の厚さ(t2)の105パーセント(105%)よりも大きいか等しく、すなわちt1≧105%t2である。別の実施例では、第1の厚さ(t1)は第2の厚さ(t2)の110パーセント(110%)よりも大きいか等しく、すなわちt1≧110%t2である。第1の厚さ(t1)と第2の厚さ(t2)との間における他の関係も可能である。
【0018】
実際、適切な厚さを選択することにより、利用者は、柔軟シート123が伸縮されて患者に接着された後に本来のサイズに戻ろうとする速度または力を選択的に制御することができる。従って、組織の移動および/または近置する速度を調整することができる。組織の移動および/または近置を調整すると、例えば水ぶくれ、色素増加症等の皮膚合併症を最小限に抑え、さらには切創102の閉鎖を補助するように作用しうる。さらに、厚い第1の等方性領域124は皮下組織108にまで達する圧縮力を提供することができ、損傷した皮下組織110を治療し、空隙112またはその種のものを取り除くために有用となりうる。図2に示すように、第1の等方性領域124は、皮膚対向面132から内側に突出していてもよい。図3Aに示すように、第1の等方性領域124は、柔軟シート123の第1の面134から外側に突出していてもよい。図3Bに示すように、第1の等方性領域124は、皮膚対向面132と第1の面134の双方から突出していてもよい。柔軟シート123の一部として、任意の数の等方性領域を用いてもよいことを理解されたい。さらに、等方性領域124、126は互いにほぼ平行に示されているが、領域124、126を互いに異なる向きに配置してもよいということを理解されたい。2つの領域124、126に対して2つの厚さ(t1およびt2)が示されているが、異方性特性を実現するために異なる厚さを有する多くの領域を用いてもよいことを理解されたい。
【0019】
創傷用ドレープ116は、ドレープ伸展部136が切創102および/または損傷した皮下組織110の外縁を越えて延在するような方法で、切創102および/または損傷した皮下組織110と重なるように寸法形成されてもよい。創傷用ドレープ116は、不透過性または半透過性エラストマ材料といった任意の適切な材料で形成されてもよい。「エラストマの(Elastomeric)」は、エラストマの性質を有することを意味し、一般にゴムのような性質を有するポリマ材料のことをいう。より具体的には、ほとんどのエラストマは100%より高い伸び率と、非常に高い弾力を有する。材料の弾性とは、弾性変形から回復する材料の能力のことをいう。エラストマの例には、限定しないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマ、クロロスルホンポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン、EVAフィルム、コポリエステル、およびシリコーンが含まれる。密閉ドレープ材料は、シリコーン材料、3M Tegaderm(商標)ドレープ材料、カリフォルニア州パサデナのAvery Dennison社から入手可能なアクリルドレープ材料、または切創ドレープ材料を含んでもよい。しかしながら、創傷用ドレープ116は任意の適切な材料で形成されてもよいことを理解されたい。さらに、第1および第2の等方性領域124、126は、同一のドレープ材料または異なるドレープ材料から形成されてもよい。等方性領域124、126は、共押出法、成型法、または任意の他の適切な成形処理によって形成することができる。同一の広がりを持たない2またはそれ以上のドレープ材料の部分を結合することにより、異なる厚さを実現することができる。必要に応じて、ドレープ材料は、限定はしないが、抗菌性化合物または任意の適切な生物活性要素を含む1またはそれ以上の適切な生物活性要素を含んでもよい。
【0020】
把持部材118は創傷用ドレープ116に結合されてもよい。把持部材118は、創傷用ドレープ116が患者の表皮104と結合するように機能しうる。さらに、把持部材118は、ドレープ116が伸縮されて患者に接着された後に本来のサイズに戻ろうとするにつれて、ドレープ116によって生成された閉鎖力を伝達するようにも機能しうる(伝達される力は、図2の力ベクトル138に示す)。さらに、創傷用ドレープ116および把持部材118は、患者の表皮104の上に流体シールを形成するよう相互に機能する。「流体シール」または「シール」は、特定の減圧サブシステムが与えられる所望の部位で減圧を維持するのに適した封を意味する。把持部材118は、ドレープ116を患者の表皮104に結合する、患者の表皮104に閉鎖力を伝達する、および/または患者の表皮104の上に流体シールを形成するのを補助するために適した任意の材料であってもよい。例えば、把持部材118は、感圧接着剤、熱活性型接着剤、密閉テープ、両面密閉テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、フック、縫合糸等であってもよい。
【0021】
実施例では、把持部材118はドレープ伸展部136の皮膚対向面と結合した接着層であるが、把持部材118はドレープ116の幅全体に広がっていてもよいことを理解されたい。代替的には、この把持部材118は、第1または第2の等方性領域124、126といった創傷用ドレープ116の選択された部分にのみ適用されてもよい。把持部材118は、創傷用ドレープ116上に分布した層またはパターンとして形成されてもよい。代替的には、密閉テープの場合、把持部材118は、創傷用ドレープ116の第1の面134全体またはドレープ伸展部136の第1の面にわたって適用されてもよい。
【0022】
マニホルド120は、創傷用ドレープ116の皮膚対向面132と、例えば切創102、創傷床の内側、または表皮104の無傷な部分の上といった組織部位との間に配置することができる。本書における用語「マニホルド(manifold)」は一般に、切創102のような組織部位に減圧を加え、流体を供給し、あるいはそこから流体を除去するのを補助すべく設けられた物体または構造をいう。マニホルド120は、多くの異なる材料で作ることができる。
【0023】
一実施例では、マニホルド120は多孔性かつ透過性の泡状材料から形成され、より具体的には、減圧下で優れた創傷液の透過が可能な網状の開放セルポリウレタンまたはポリエーテル発泡体により作られる。使用されているこのような発泡材料の1つが、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社(KCI)から入手可能なV.A.C.(商標)GranuFoam(商標)材料である。マニホルド材料には任意の材料または材料の組み合わせを用いることができ、マニホルド材料が減圧を分配するように機能しうる。マニホルド120は通常、マニホルド120周囲の組織領域へ流体を分配し、そこから流体を除去する複数のフローチャネルまたは流路を具える。このフローチャネルは相互接続されてもよい。マニホルドの例には、限定はしないが、フローチャネル、開放セル発泡体のようなセル状発泡体、繊維、多孔質組織の堆積、およびフローチャネルを含むか含むように硬化する液体、ゲル、および発泡体を形成するように配置された構造要素を有する装置である。マニホルド材料は、材料の組み合わせまたは層状にしたものであってもよい。例えば、親水性発泡体の第1のマニホルド層を親水性発泡体の第2のマニホルド層の近くに配置して、マニホルド材料を形成してもよい。
【0024】
GranuFoam(商標)材料の網状の細孔は約400乃至600ミクロンであり、マニホルド機能を実施するには有用であるが、他の材料を用いてもよい。マニホルド材料は、マニホルド材料の本来の厚さの約1/3の厚さまで後にフェルト状とされる網状の発泡体であってもよい。多くの可能性のある材料の中で、以下のGranuFoam(商標)材料またはFoamex(商標)技術発泡体(www.foamex.com)を使用することができる。場合によっては、マイクロボンド処理においてイオン性銀を発泡体に添加するか、抗菌剤のような他の物質をマニホルド材料に添加することが望ましい場合もある。マニホルド材料は等方性であっても異方性であってもよい。さらに、マニホルド材料は、生体吸収性材料または生体を包有可能な材料であってもよい。
【0025】
マニホルド120は創傷用ドレープ116と結合していてもよい。本書における用語「結合(coupled)」は、別個の物体を介する結合および直接的な結合を含む。用語「結合」には、材料の同一部分から形成されたそれぞれの要素によって、互いに連続している2またはそれ以上の要素も含まれる。また、用語「結合」は、化学結合を介するような化学的、機械的、熱的、または電気的結合を含むことができる。流体連結は、指定された部分または位置間が流体連通していることを意味する。
【0026】
創傷用ドレープ116とマニホルド120は、例えばアクリル性接着剤、シリコーン接着剤、ヒドロゲル、親水コロイド等の接着剤を用いて結合させることができる。代替的には、創傷用ドレープ116とマニホルド120は、熱接合、超音波接合、無線周波数接合等により接合させることができる。この結合はパターンであってもよい。さらに、創傷用ドレープ116が所望の方向にさらに異方性を呈すべく、構造を接着剤に添加してもよい。
【0027】
減圧サブシステム122は減圧源140を具えており、これは多くの異なる形状を取ることができる。減圧源140は減圧治療システム100の一部として減圧を提供する。本書に用いる「減圧(reduced pressure)」とは、概して、治療を受ける組織部位の周囲圧力より低い圧力のことをいう。多くの場合、この減圧は、患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。若しくは、減圧は、組織部位における組織に付随する静水圧より低くてもよい。減圧は最初に、マニホルド120、減圧導管、または導管148、および切創102といった組織部位の近傍に流体の流れを発生させる。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に近づくにつれて、この流れが弱まり、減圧を維持することができる。特に記載がなければ、本書で述べる圧力の値はゲージ圧である。送達される減圧は静的であっても動的であってもよく(パターン化またはランダム)、連続的あるいは間欠的に与えられてもよい。減圧の機能しうる範囲は必要に応じて広く変化しうるが、一般に−5mmHg乃至−500mmHgである。例えばテキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なV.A.C.(商標)医療用ユニットや、壁面吸引ユニットなど様々な減圧源を用いることができる。また、減圧源140は、創傷用ドレープ123と表皮104との間の気密性にどれだけ多くの漏れが生じるかに応じて、チューブ内のピストンのような携帯用機械デバイスによって供給することもできる。
【0028】
実施例では、減圧源140は、バッテリ区画142と、キャニスタ144内の流体高さの視覚的表示を提供する窓146を有するキャニスタ領域144とを有するように示されている。疎水性あるいは疎油性フィルタなどの中間膜フィルタが、減圧導管148と減圧源140との間に挿入されている。
【0029】
減圧源140によって生成された減圧は、減圧導管148を通って減圧接続部150、またはL字ポート152などの接続部150に送達される。一実施例では、L字ポート152は、テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なTRAC(商標)技術ポートである。この減圧接続部150により、減圧を創傷用ドレープ116に送達し、創傷用ドレープ116の内側部分およびマニホルド120内まで到達させることが可能となる。この実施例では、L字ポート152は柔軟シート123を通ってマニホルド120に延びているが、多くの構成が可能である。
【0030】
運用時、マニホルド120は、例えば切創102および/または損傷した皮下組織110といった組織部位の近位に配置することができる。創傷用ドレープ116のドレープ伸展部136が切創102および/または損傷した皮下組織110を超えて延在するように、創傷用ドレープ116がマニホルド120を覆って配置されてもよい。このドレープ116は、所望の長さに伸縮することができる。前述のように、ドレープ116は伸縮するが、第1の等方性領域124よりも第2の等方性領域126に伸縮できる。ドレープ116と患者の表皮104との間に流体シールを作るべく、ドレープ伸展部136をその後把持部材118によって患者の表皮104に固定することができる。場合によって、把持部材118は、患者の表皮104と結合したドレープ116が収縮しようとするにつれてドレープ116によって生成される閉鎖力を患者の表皮104に伝達するようにも機能しうる。減圧接続部150がまだ取り付けられていない場合は次いで適用され、減圧導管148は減圧接続部150と流体連通する。この減圧導管148はさらに、減圧源140とも流体連通する。この減圧源140はその後、減圧が創傷用ドレープ116の内部およびマニホルド120に送達されるように動作することができる。
【0031】
減圧が送達されると、マニホルド120は外側から圧縮されて収縮し、半硬質の基質を形成することができ、多くの有益な力および動作が生じうる。減圧はさらにマニホルド120を通って伝達され、その結果、患者の表皮104および切創102に減圧がかかる。少なくとも治癒プロセスの初期段階で、減圧は更に切創102を通って皮下組織108まで達しうる。減圧は皮下空隙112といった欠損部を閉じ、一般にその領域に安定性をもたらす。また、ドレープ116に送達される減圧は、矢印154に示す圧縮力を生成し、再び安定性および治療をもたらす。矢印154に示す圧縮力は、表皮104の地点よりも大きく、この圧縮力はさらに深く下方に拡がって、皮下組織108のレベルにまで達することができる。
【0032】
さらに、減圧の影響下で創傷用ドレープ116およびマニホルド120が横方向に収縮すると、矢印156に示す内向きの力が生じて、切創102で更なる閉鎖力を保持するのを助けるとともに、創傷に更なる安定性を一般に与えることができる。従って、減圧による矢印156に示す内向きの力およびドレープ116の収縮によって生じる矢印138に示す閉鎖力は、切創102を閉じるのを助ける、および/または切創102を実質的に閉鎖した位置に維持するのを補助するように機能しうる。同時に、マニホルド120に送達されそれを通る減圧は、切創102から滲出液や他の流体を除去するのに役立つ。これらの動作は総て、例えば切創102といった組織部位の回復を改善することができる。
【0033】
手術室で減圧治療システム100を利用し、適切な治療が実施されるまで患者に対してシステム100をそのままの状態とするのを許容することが望ましい。この点に関して、医療供給者が、ドレープ116を取り除く必要なしに、切創102といった組織部位の回復に関する視覚的な指示を得ることを可能とするために、創傷用ドレープ116、マニホルド120、および任意の他の層を透明な材料で形成することが望ましい。さらに、減圧治療システム100は主に創傷を塞ぐ治療または創傷を塞ぐ治療プロトコルの中間ステップとして用いることができることを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ116はマニホルド120および/または減圧サブシステム122なしで用いてもよいということを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ116は、閉鎖力および/または圧縮力を切創102および/または損傷した皮下組織110に伝達可能な独立型の医療品としても有用であるということを理解されたい。
【0034】
図4Aおよび図4Bを参照すると、切創、損傷した皮下組織、または他の創傷といった組織部位を治療するための減圧治療システム200の一部の第2の実施例が示されている。この減圧治療システム200は図1乃至図3Bの減圧治療システム100と多くの点で類似しており、この実施例においては、対応する部分は一般に符号に100を加えて図1乃至図3Bに示されている。減圧サブシステム(図示せず)と連結するために減圧接続部250および導管248が示されているが、ドレープ216は独立型の医療品としても利用できることを理解されたい。
【0035】
創傷用ドレープ216は、第1の等方性領域224と、第2の等方性領域226と、第3の等方性領域227とを具える。第1の等方性領域224は第2の等方性領域226よりも厚く、第2の等方性領域226は第3の等方性領域227よりも厚い。この実施例では、等方性領域はドレープ216にわたって均等に力が加わるように作られており、第1の等方性領域224によって規定された領域は第2の等方性領域226によって規定された領域ほど伸縮しない。等方性領域224、226、227は、互いに任意の適切な厚さであってもよい(例えば、第3の領域227が最も厚くてもよい等)ということを理解されたい。さらに、本実施例は3つの等方性領域を示しているが、任意の数の等方性領域を用いてもよいということを理解されたい。この等方性領域224、226、227は互いに同心であり、平面図で見ると環状の正方形状である。しかしながら、等方性領域224、226、227は、必ずしも互いに同心である必要はないことを理解されたい。さらに、各等方性領域224、226、227は、平面図で見ると、限定はしないが、円形、長円形、三角形、矩形、八角形等を含む任意の適切な形状を有していてもよいということを理解されたい。
【0036】
他の実施例では、創傷用ドレープ216は規定された等方性領域224、226、227を有するが、領域間の移行は段階的であってもよい。他の実施例では、創傷用ドレープ216の厚さが内側部分270から創傷用ドレープ216の縁272へ徐々に増加するか徐々に減少するように、創傷用ドレープ216は先細である。従って、創傷用ドレープ216の長さにわたって、創傷用ドレープ216の弾性係数は均等かつ徐々に変化する。図4Aおよび図4Bでは、内側部分270は創傷用ドレープ216のほぼ中心部であるが、内側部分270は創傷用ドレープ216の縁272の内側のどこに位置していてもよい。
【0037】
一実施例では、創傷用ドレープ272は縁部272において最も厚く、中心部270が創傷用ドレープ272の最も薄い部分となるように内側部分270に向かって徐々に薄くなってもよい。得られる空洞部の形状は、円錐台形状を含む円錐に近似した形状であってもよい。逆に、創傷用ドレープ272は縁部272において最も薄く、中心部270が創傷用ドレープ272の最も厚い部分となるように中心部270に向かって徐々に厚くなってもよい。本書に記載の創傷用ドレープの任意の実施例は、ほぼ平行な等方性領域を有するドレープを含み、明確に規定された等方性領域を有する代わりに、厚さまたは弾性係数が均等に、および徐々にあるいは先細して変化してもよい。等方性領域が互いにほぼ平行である実施例では、内側部分270が創傷用ドレープ216の一端から対向する端部まで延在していてもよい。創傷用ドレープ216が先細していると、創傷用ドレープ216を当てる組織部位における負担を和らげる効果があり、皮膚炎(例えば、水ぶくれ)を軽減することができる。このような先細はさらに、所望の伸縮特性を提供することができ、創傷治療を促進する。
【0038】
図5Aおよび図5Bをここで参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム300の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム300は通常、図1乃至図3Bの減圧治療システム100と多くの点で類似しており、この実施例においては、対応する部分は一般に符号に200を加えて図1乃至図3Bに示されている。減圧サブシステム(図示せず)と結合するために減圧接続部350および導管348が示されているが、創傷用ドレープ316が独立型の医療品としても利用できることを理解されたい。
【0039】
創傷用ドレープ316は、第1の等方性領域324と第2の等方性領域326とを具える。第1の等方性領域324は第1の弾性係数(λ1)を有する材料から形成され、第2の等方性領域326は第2の弾性係数(λ2)を有する材料から形成される。実施例では、第1の弾性係数は第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2)、これにより第2の等方性領域326は、創傷用ドレープ316が伸縮する場合に第1の等方性領域324よりも伸縮する。創傷用ドレープ316は、他の方向に対して一方向に主に伸縮する。例えば、一実施例では、創傷用ドレープ316は主に、1またはそれ以上の細長い等方性領域324、326に対してほぼ垂直の方向に伸縮できる。
【0040】
各等方性領域324、326毎に適切な弾性係数を選択することにより、利用者は、創傷用ドレープ316を伸縮させて患者に接着した後にドレープ316の本来のサイズに戻ろうとする速度または力を選択的に制御することができる。従って、組織の移動および/または近置の速度またはそれに関する力を調整することができる。実施例は2つの各等方性領域324、326を示しているが、任意の適切な数の等方性領域を用いてもよいということを理解されたい。さらに、創傷用ドレープ316は様々な弾性係数の任意の数の等方性領域を具えていてもよく、あるいは、創傷用ドレープ面の少なくとも1つにわたって連続的に変化した弾性を構成してもよいことを理解されたい。一実施例では、創傷用ドレープ316の縁に最も近い等方性領域は、創傷用ドレープ316の他の等方性領域と比較して低い弾性係数を有する。
【0041】
他の実施例では、1またはそれ以上の等方性領域は、この領域が取り付けられる組織部位、またはその近くにおける組織と等しいかほぼ同等の弾性係数を有していてもよい。いくつかの非限定的な実施例では、等方性領域の弾性係数は、患者の表皮の弾性係数の20%以下、または患者の皮膚の弾性係数の10%以下、または患者の皮膚の弾性係数の5%以下であってもよい。等方性領域の弾性係数を組織部位における組織の弾性係数に調整すると、組織にかかる応力か応力遮蔽を最小限にして治療を促進し、瘢痕を最小限にすることができる。さらに、等方性領域324、326は平面図で見た場合に環状形状であるように構成されてもよく、等方性領域324、326は等方性領域324、326が互いに同心となるように配置されても、されなくてもよいということを理解されたい。さらに、等方性領域324、326はほぼ同等の厚さを有するように示されているが、等方性領域324、326は異なる厚さでもよいことを理解されたい。従って、創傷用ドレープ316の異方性は、異なる弾性係数ならびに異なる厚さを有する異なる領域を組み合わせることによって実現することができる。また、創傷用ドレープ316の厚さおよび弾性係数は、創傷用ドレープ316またはその一部の1またはそれ以上の方向に沿って、均等かつ徐々に先細であってもよい。さらに、等方性領域324、326は互いにほぼ平行に示されているが、等方性領域324、326は互いに適切に配置されてもよいということを理解されたい。
【0042】
図6Aおよび図6Bを参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム400の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム400は通常、創傷用ドレープ416と、1またはそれ以上の把持部材418とを具えている。減圧を組織部位に送達できるように減圧源(図示せず)と連結するため、減圧接続部450および導管448が創傷用ドレープ416に連結されてもよい。しかしながら、創傷用ドレープ416は独立型の医療品としても使用できることを理解されたい。
【0043】
創傷用ドレープ416は一般に、そこに結合された1またはそれ以上の異方性部材457を有する柔軟シート423で形成される。異方性部材457は創傷用ドレープ416に異方性特性を提供するように構成される。この例示的、非制限的な実施例では、創傷用ドレープ416は異方性部材457間の領域を伸縮するように機能しうるが、異方性部材457の縦軸方向には最小限、または全く伸縮しない。実施例では、異方性部材457は複数の微細線維458を含む。微細線維458は、限定はしないが、ポリマ、布地、金属、組成、エラストマ等を含む任意の適切な材料で作られてもよい。さらに、微細線維458は、互いにほぼ平行であるように配置されてもよい。しかしながら、微細線維458はドレープ416に異方性特性を提供できるような任意の適切な配置であってもよく、例えば、微細線維は、「わらぶきの(thatched)」ような配置、ほぼランダムな配置等であってもよいということを理解すべきである。この微細線維458はさらに、いくつかの実施例における更なるドレープ材料で形成することができる。
【0044】
微細線維458は、限定はしないが、接着剤、機械的ファスナ、接合、音波接合等を含む任意の適切な手段によって柔軟シート423に結合される。微細線維458は、柔軟シート423の皮膚対向面432または第1の面434の何れかに結合されてもよい。さらに、微細線維458は共押出法のような処理によって柔軟シート423と共に形成されてもよく、これにより、微細線維458は柔軟シート423とほぼ同一平面となる。また、実施例は2つの異方性部材457を示しているが、任意の数の異方性部材457を用いることができることを理解されたい。さらに、異方性部材457は互いにほぼ平行に示されているが、異方性部材457は互いに任意の適切な配置であってもよいことを理解されたい。さらに、平面図で見た場合に異方性部材457は環状となるように配置されてもよく、互いに同心となるように配置されても、されなくてもよいということを理解されたい。
【0045】
異方性部材457は、この実施例において複数の微細線維458を具えるように示されているが、異方性部材457は任意の適切な構成および配置であってもよいということを理解されたい。例えば、異方性部材は柔軟シート423に結合された接着層を含んでもよい。接着層はパターンであっても、パターンでなくてもよい。異方性部材の他の可能な構成および配置も可能である。さらに、把持部材418は、図1乃至図3Bの減圧治療システム100の把持部材118と同一または類似している。実施例では、把持部材418は、柔軟シート423の皮膚対向面432に結合されてもよい。把持部材418は柔軟シート423の幅全体にわたり、微細線維458を覆っていてもよく、図6Bに示すように柔軟シート423の端部の近くに位置していてもよい。
【0046】
図7Aおよび図7Bをここで参照すると、患者の組織部位を治療するための減圧治療システム500の一部の他の実施例が示されている。この減圧治療システム500は一般に、創傷用ドレープ516と、1またはそれ以上の把持部材518とを具える。減圧接続部550および導管548は、減圧を組織部位に送達できるように減圧源(図示せず)と流体連結するため、創傷用ドレープ516と結合されてもよい。しかしながら、創傷用ドレープ516は独立型の医療品としても利用できるということを理解されたい。
【0047】
創傷用ドレープ516は通常、1またはそれ以上の流体膨張性ブラダ560を有する柔軟シート523で形成される。各流体膨張性ブラダ560は、流体膨張性ブラダ560を膨張させるために流体を受ける内部チャンバ562を具える。流体は、対応する流体供給管または導管564によって各内部チャンバ562に供給されるが、単一の流体供給管が流体膨張性ブラダ560を相互接続する通路(図示せず)を介して各ブラダに流体を送達するように構成されてもよいということを理解されたい。流体は、流体制御手段(図示せず)から内部チャンバ562に送達される。流体制御手段は、流体を貯蔵し、管564を介して内部チャンバ562に流体を選択的に送達することができる任意の適切な装置であってもよい。例示的な流体制御手段は、限定はしないがバルブ、クランプ、調整器等を含む制御機構に対応する、限定はしないがポンプ、シリンダ、リザーバ等を含む。流体膨張性ブラダ560は、限定はしないが、空気、水、生理食塩水、ゲル、発泡体等を含む任意の適切な材料によって膨張しうる。
【0048】
流体膨張性ブラダ560は、創傷用ドレープ516に異方性特性を提供するように構成される。実施例では、創傷用ドレープ516が図1乃至図3Bのドレープと同様に機能するよう硬質を与えることにより、流体膨張性ブラダ560は創傷用ドレープ516に異方性特性を提供し、これにより、伸縮力が加えられたときに柔軟シート523は、ブラダ560間の領域により伸縮する。さらに、流体供給管564を介して送達される流量を制御することにより、創傷用ドレープ516の異方性特性を制御することもできるということを理解されたい。例えば、流体が流体膨張性ブラダ560に送達されると、ドレープ516の異方性が増加する場合がある。管564を介して送達される流体は、動的な異方性シートを提供するために変化してもよい。創傷部位の状態に応じて流体制御手段を制御するコントローラが設けられてもよい。さらに、創傷用ドレープ516を伸縮させて適用する前に流体膨張性ブラダ560を膨脹させると、異方性特性が更に高まる場合があることを理解されたい。さらに、一旦流体膨張性ブラダ560が膨脹すると、皮下組織にまで達し、損傷した皮下組織を治療して、空隙またはその種のものを取り除くのに有用となりうる圧縮力を提供するよう機能する。
【0049】
流体膨張性ブラダ560は、限定はしないが、接着剤、機械的ファスナ、接合、音波接合等を含む任意の適切な手段によって柔軟シート523に結合されてもよい。流体膨張性ブラダ560は、柔軟シート523の皮膚対向面532または第1の面534の何れかと結合してもよい。さらに、流体膨張性ブラダ560は、膨張する前に柔軟シート523とほぼ同一平面となるように形成されてもよい。実施例は4つの流体膨張性ブラダ560を示しているが、任意の数のブラダ560を用いることができることを理解されたい。さらに、流体膨張性ブラダ560は互いにほぼ平行に示されているが、流体膨張性ブラダ560は互いに任意の適切な配置であってもよいことを理解されたい。さらに、流体膨張性ブラダ560は、平面図で見た場合に流体膨張性ブラダ560が環状形状となるように配置されてもよく、流体膨張性ブラダ560は当該流体膨張性ブラダ560が互いに同心となるように配置されても、されないでもよいということを理解されたい。
【0050】
さらに、把持部材518は、図1乃至図3Bの減圧治療システム100の把持部材118と同一または類似している。実施例では、把持部材518は柔軟シート523の皮膚対向面532に結合されてもよい。把持部材518は柔軟シート523の幅全体にわたり、微細線維558を覆ってもよく、あるいは柔軟シート523の端部の近くに位置してもよい。
【0051】
一実施例では、流体膨張性ブラダ560は流体供給管564を通る正圧で膨張され、減圧が減圧接続部550に供給されるにつれて、膨脹性ブラダ560は圧縮力で患者の表皮を押圧する。減圧が増加するにつれて、膨脹性ブラダ560は減圧接続部550に向かって引き込まれ、これにより閉鎖力が生じる。閉鎖力が表皮に達し、例えば真皮のようにさら深い位置に達する場合もある。
【0052】
本発明およびその利点を特定の非限定的な実施例の説明として開示したが、添付のクレームで規定された本発明の範囲を逸脱することなく様々な変化、置換、交換、変更を施すことができると解されるべきである。いずれかの実施例に関して記載されたいずれの特徴も、他の様々な実施例に適用してもよいことを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織部位を治療するための減圧創傷治療システムにおいて、当該システムが:
第1の等方性領域と、
第2の等方性領域とを具える柔軟シートであって、
異方性伸縮特性を提供するように前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が構成された柔軟シートを具える創傷用ドレープと;
当該創傷用ドレープと前記組織部位との間に配置するためのマニホルドと;
減圧を前記マニホルドに送達するための減圧サブシステムとを具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムがさらに、前記創傷用ドレープに結合された把持部材を具えており、前記創傷用ドレープおよび前記把持部材が前記組織部位の上に流体シールを形成するように機能しうることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムがさらに、前記創傷用ドレープに結合された把持部材を具えており、当該把持部材は閉鎖力を前記患者の皮膚に伝達するように機能し、前記創傷用ドレープおよび前記把持部材が前記組織部位の上に流体シールを形成するように機能しうることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項4】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセント(105%)よりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項6】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの110パーセント(110%)よりも大きい(t1>110%t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項7】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きく(t1>t2)、前記第1の等方性領域がドレープ材料の少なくとも2つが結合した部分を具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項8】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項9】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数と概ね同等であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項10】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数の10%以下であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項11】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数の5%以下であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項12】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね平行であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項13】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね同心であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項14】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項15】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域は前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状の正方形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項16】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、流体膨脹性ブラダを具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項17】
組織部位の上に配置される柔軟シートであって、当該柔軟シートが:
第1の等方性領域と、
第2の等方性領域とを具え、
異方性伸縮特性を提供するように前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が構成された柔軟シートを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項18】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項19】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセント(105%)よりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項20】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの110パーセント(110%)よりも大きい(t1>110%t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項21】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きく(t1>t2)、前記第1の等方性領域がドレープ材料の少なくとも2つの部分を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項22】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項23】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね平行であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項24】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね同心であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項25】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項26】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状の正方形状であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項27】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、流体膨張性ブラダを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項28】
請求項17に記載の創傷用ドレープがさらに、前記柔軟シートに結合された把持部材を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項29】
請求項17に記載の創傷用ドレープがさらに、前記柔軟シートに結合された把持部材を具えており、当該把持部材は閉鎖力を患者の皮膚に伝達することが可能であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項30】
柔軟シートと;
当該柔軟シートに結合され、当該柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するよう構成された異方性部材とを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項31】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が、複数の微細線維を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項32】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が複数の微細線維を具えており、当該複数の微細線維が互いに概ね平行であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項33】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が、接着層であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項34】
柔軟シートと;
当該柔軟シートに結合され、当該柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するよう構成された流体膨張性ブラダとを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項35】
請求項34に記載の創傷用ドレープにおいて、前記流体膨張性ブラダが、膨張していないときに前記柔軟シートと概ね同一平面上にあることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項36】
請求項34に記載の創傷用ドレープがさらに:
第1の端部において前記ブラダと流体連結される流体供給管と;
当該流体供給管の第2の端部と流体連結される流体制御手段であって、流体を前記ブラダに選択的に加える流体制御手段とを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項37】
請求項34に記載の創傷用ドレープにおいて、前記ブラダが、圧縮力を患者の組織に提供することができることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項38】
内側部分と縁部とを有する柔軟シートを具える創傷用ドレープであって、前記柔軟シートの厚さが前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に変化し、前記柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項39】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記内側部分が、前記創傷用ドレープのほぼ中心であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項40】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの弾性係数が、前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に変化することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項41】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの厚さが、前記縁部が前記内側部分よりも厚くなるように前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に増加することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項42】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの厚さが、前記縁部が前記内側部分よりも薄くなるように前記内側部分から前記縁部にかけて除々に減少することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項43】
患者の創傷を減圧で治療する方法において、当該方法が:
前記創傷の近くにマニホルドを配置するステップと;
前記マニホルドの上に異方性創傷用ドレープを配置するステップと;
前記異方性ドレープを前記患者の表皮に密閉するステップと;
減圧源を前記マニホルドに流体連結するステップと;を具えており、
前記異方性ドレープが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記異方性ドレープが第1の等方性領域と第2の等方性領域とを具えることを特徴とする方法。
【請求項44】
創傷用ドレープを製造する方法において、当該方法が:
組織部位の上に配置するための柔軟シートを形成するステップであって、当該柔軟シートは第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有するステップを具えており;
前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成されることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセントよりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする方法。
【請求項1】
患者の組織部位を治療するための減圧創傷治療システムにおいて、当該システムが:
第1の等方性領域と、
第2の等方性領域とを具える柔軟シートであって、
異方性伸縮特性を提供するように前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が構成された柔軟シートを具える創傷用ドレープと;
当該創傷用ドレープと前記組織部位との間に配置するためのマニホルドと;
減圧を前記マニホルドに送達するための減圧サブシステムとを具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムがさらに、前記創傷用ドレープに結合された把持部材を具えており、前記創傷用ドレープおよび前記把持部材が前記組織部位の上に流体シールを形成するように機能しうることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムがさらに、前記創傷用ドレープに結合された把持部材を具えており、当該把持部材は閉鎖力を前記患者の皮膚に伝達するように機能し、前記創傷用ドレープおよび前記把持部材が前記組織部位の上に流体シールを形成するように機能しうることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項4】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセント(105%)よりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項6】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの110パーセント(110%)よりも大きい(t1>110%t2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項7】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きく(t1>t2)、前記第1の等方性領域がドレープ材料の少なくとも2つが結合した部分を具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項8】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項9】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数と概ね同等であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項10】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数の10%以下であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項11】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きく(λ1>λ2);前記第2の弾性係数(λ2)が前記患者の皮膚の弾性係数の5%以下であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項12】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね平行であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項13】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね同心であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項14】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項15】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域は前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状の正方形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項16】
請求項1に記載の減圧創傷治療システムにおいて、前記第1の等方性領域が、流体膨脹性ブラダを具えることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項17】
組織部位の上に配置される柔軟シートであって、当該柔軟シートが:
第1の等方性領域と、
第2の等方性領域とを具え、
異方性伸縮特性を提供するように前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が構成された柔軟シートを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項18】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項19】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセント(105%)よりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項20】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの110パーセント(110%)よりも大きい(t1>110%t2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項21】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きく(t1>t2)、前記第1の等方性領域がドレープ材料の少なくとも2つの部分を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項22】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項23】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね平行であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項24】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、前記第2の等方性領域と概ね同心であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項25】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状形状であることを特徴とする減圧創傷治療システム。
【請求項26】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が前記第2の等方性領域と概ね同心であって、前記第1の等方性領域が平面図では概ね環状の正方形状であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項27】
請求項17に記載の創傷用ドレープにおいて、前記第1の等方性領域が、流体膨張性ブラダを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項28】
請求項17に記載の創傷用ドレープがさらに、前記柔軟シートに結合された把持部材を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項29】
請求項17に記載の創傷用ドレープがさらに、前記柔軟シートに結合された把持部材を具えており、当該把持部材は閉鎖力を患者の皮膚に伝達することが可能であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項30】
柔軟シートと;
当該柔軟シートに結合され、当該柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するよう構成された異方性部材とを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項31】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が、複数の微細線維を具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項32】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が複数の微細線維を具えており、当該複数の微細線維が互いに概ね平行であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項33】
請求項30に記載の創傷用ドレープにおいて、前記異方性部材が、接着層であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項34】
柔軟シートと;
当該柔軟シートに結合され、当該柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するよう構成された流体膨張性ブラダとを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項35】
請求項34に記載の創傷用ドレープにおいて、前記流体膨張性ブラダが、膨張していないときに前記柔軟シートと概ね同一平面上にあることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項36】
請求項34に記載の創傷用ドレープがさらに:
第1の端部において前記ブラダと流体連結される流体供給管と;
当該流体供給管の第2の端部と流体連結される流体制御手段であって、流体を前記ブラダに選択的に加える流体制御手段とを具えることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項37】
請求項34に記載の創傷用ドレープにおいて、前記ブラダが、圧縮力を患者の組織に提供することができることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項38】
内側部分と縁部とを有する柔軟シートを具える創傷用ドレープであって、前記柔軟シートの厚さが前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に変化し、前記柔軟シートが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項39】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記内側部分が、前記創傷用ドレープのほぼ中心であることを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項40】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの弾性係数が、前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に変化することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項41】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの厚さが、前記縁部が前記内側部分よりも厚くなるように前記内側部分から前記縁部にかけて徐々に増加することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項42】
請求項38に記載の創傷用ドレープにおいて、前記柔軟シートの厚さが、前記縁部が前記内側部分よりも薄くなるように前記内側部分から前記縁部にかけて除々に減少することを特徴とする創傷用ドレープ。
【請求項43】
患者の創傷を減圧で治療する方法において、当該方法が:
前記創傷の近くにマニホルドを配置するステップと;
前記マニホルドの上に異方性創傷用ドレープを配置するステップと;
前記異方性ドレープを前記患者の表皮に密閉するステップと;
減圧源を前記マニホルドに流体連結するステップと;を具えており、
前記異方性ドレープが第2の方向よりも第1の方向に伸縮するように、前記異方性ドレープが第1の等方性領域と第2の等方性領域とを具えることを特徴とする方法。
【請求項44】
創傷用ドレープを製造する方法において、当該方法が:
組織部位の上に配置するための柔軟シートを形成するステップであって、当該柔軟シートは第1の等方性領域と第2の等方性領域とを有するステップを具えており;
前記第1の等方性領域および前記第2の等方性領域が、前記柔軟シートに異方性伸縮特性を提供するように構成されることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも大きい(t1>t2)ことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の厚さ(t1)を有し、前記第2の等方性領域が第2の厚さ(t2)を有しており、前記第1の厚さが前記第2の厚さの105パーセントよりも大きい(t1>105%t2)ことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記第1の等方性領域が第1の弾性係数(λ1)を有する第1の材料を含んでおり;前記第2の等方性領域が第2の弾性係数(λ2)を有する第2の材料を含んでおり;前記第1の弾性係数が前記第2の弾性係数よりも大きい(λ1>λ2)ことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2011−526798(P2011−526798A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511882(P2011−511882)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045749
【国際公開番号】WO2009/158127
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045749
【国際公開番号】WO2009/158127
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
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