説明

異方性導電膜剥離液

【課題】端子周囲に残る硬化した異方性導電膜の残存膜の剥離性に優れ、金属の端子および周辺の正常な部分を侵さない異方性導電膜剥離液を提供する。
【解決手段】(a)γブチロラクトンを40質量%以上、(b)水または有機溶媒、例えばエチレングリコールを0〜60質量%、(c)カルボキシ基を有するポリマー、例えばカルボキシビニルポリマーを0〜1質量%、および(d)中和剤、例えばトリエタノールアミンをカルボキシ基を有するポリマーが増粘効果を発揮するPHとなる分量含有する異方性導電膜剥離液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルやプラズマ表示パネル等のパネル外周部にある異方性導電膜による接合部の剥離除去に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大型化、画素の微細化した液晶表示パネルやプラズマ表示パネル等においてパネル外周部に多数の駆動用素子の載ったTABテープなどが異方性導電膜にて接着されている。この駆動用素子の載ったTABテープなどを修理のため交換する場合、不良部分のTABテープなどを引き剥がした後、パネル外周部の端子およびプリント基板に残る既に硬化した異方性導電膜の残膜を除去する必要がある。残膜を除去すれば、端子に再び接合可能な金属表面が得られ、新しい異方性導電膜中の樹脂が流れ込む端子間スペースも確保でき、新しいTABテープの異方性導電膜による熱圧着が可能となる。現在は硬化した異方性導電膜の残膜を除去には有機系の剥離液が用いられていた。(例えば特許第2970237号)
【0003】
しかしながら、従来の剥離液では、近年の微細パターン化した端子について端子間の間隙に残る異方性導電膜の残膜を室温で短時間で除去するのは難しい。また異方性導電膜の熱圧着工程も進歩、材料の硬化性能も近年向上し、その残膜を室温で短時間で除去するのは困難となった。また表示パネル画素数の増大に伴い、駆動用素子の載ったTABテープなどの接着位置の間隔も狭まり、隣接する正常なTABテープなどを侵さず不良部位の異方性導電膜の残膜を除去するには高い粘度が必要となった。従来のものでは、固形分(樹脂およびフィラー)を高い濃度で含むことによりその粘度を保つため、放置などにより固化し、高い粘度で安定させることは難しい。また固形分濃度が高いため、異方性導電膜の除去後、アルコールなどで洗浄すると固形分が析出し電極に付着する。(例えば特許第2970237号)。
【0004】
【特許文献1】特許第2970237号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、最近の工程および材料を用いた除去の難しい硬化した異方性導電膜を室温、短時間で除去できる高い浸透性をもつ異方性導電膜剥離液を提供すること、さらに低い固形分濃度で最適な粘度を有し不良部位に留まって隣接する正常なTABテープなどを侵さない異方性導電膜剥離液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
係る目的を達成するために本発明は、(a)γブチロラクトンを40質量%以上、(b)水または有機溶媒を15〜60質量%、(c)カルボキシ基を有するポリマーを0〜1質量%、および(d)アルカリ性の中和剤をカルボキシ基を有するポリマーがその増粘効果を発揮するPHとなる分量含有する異方性導電膜剥離液を提供する。
【0006】
また本発明は、少なくとも表示パネル外周部、プリント基板等の接続用端子周辺に存在する硬化した異方性導電膜を剥離、除去のため用いる異方性導電膜剥離液を提供する。
【実施例】
【0007】
以下本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0008】
実施例1〜4
まず、異方性導電膜剥離液を、表1に示した配合に従って調整した。
【0009】
これとは別にTAB側端子とガラス基板上のITO電極端子(ピッチ50μm)とを熱硬化型の異方性導電性フィルムで接合した。このフィルムの厚さは15〜20μmで、熱圧着の条件は170℃、30Kg/cmで20秒圧着である。
【0010】
得られた接合物について、まずTABをガラス基板上のITO電極から引き剥がし、次に、表1の配合に従って得た剥離液をガラス基板上のITO電極に残る異方性導電膜を覆うように塗布し、10分経過後、竹のヘラを用いてこの剥離液と異方性導電膜を剥離除去した。
【0011】
その結果、実施例1〜4の剥離液はいずれも良好に異方性導電膜を剥離除去した。
【0012】
比較例1
異方性導電膜剥離液の配合を表1に示したように代える以外は実施例1〜4と同様にして剥離液を調製し、TABとITO電極との接合物を形成後、TABを引き剥がし、ITO電極周辺に残る異方性導電膜の除去に使用した。その結果、異方性導電膜の剥離性が劣っていた。
【0013】
比較例2
異方性導電膜剥離液の配合を表1に示したように代える以外は実施例1〜4と同様にして剥離液を調製し、TABとITO電極との接合物を形成後、TABを引き剥がし、ITO電極周辺に残る異方性導電膜の除去に使用した。その結果、異方性導電膜の剥離性が劣っていた。
【0014】
比較例3
異方性導電膜剥離液の配合を表1に示したように代える以外は実施例1〜4と同様にして剥離液を調製し、TABとITO電極との接合物を形成後、TABを引き剥がし、ITO電極周辺に残る異方性導電膜の除去に使用した。その結果、この異方性導電膜剥離液は粘度が不安定で、常温で放置すると固まり、塗布することが難しかった。また塗布できた場合でも、異方性導電膜の除去後、アルコールなどで洗浄するとフィラー粉末が析出し電極に付着した。
【0015】
比較例4
異方性導電膜剥離液の配合を表1に示したように代える以外は実施例1〜4と同様にして剥離液を調製し、TABとITO電極との接合物を形成後、TABを引き剥がし、ITO電極周辺に残る異方性導電膜の除去に使用した。その結果、異方性導電膜の剥離性が劣っていた。また、この異方性導電膜剥離液は粘度が不安定で、常温で放置すると固まり、塗布することが難しく、塗布できた場合でも異方性導電膜の除去後、アルコールなどで洗浄するとフィラー粉末が析出し電極に付着した。
【0016】
【表1】

【発明の効果】
【0017】
本発明に係る異方性導電膜剥離液は浸透性に優れ、室温、短時間で硬化した異方性導電膜を除去できる。高い粘度で流動せず隣接する正常部を侵食しない。異方性導電膜剥離液は長時間放置しても固化することなく一定の粘度を保つ。異方性導電膜を除去後、電極表面をアルコールで拭き洗浄したとき、電極表面には粉末など固形物発生はみられない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)γブチロラクトンを40質量%以上、(b)水または有機溶媒を15〜60質量%、(c)カルボキシ基を有するポリマーを0〜1質量%、および(d)アルカリ性の中和剤をカルボキシ基を有するポリマーがその増粘効果を発揮するPHとなる分量含有する異方性導電膜剥離液
【請求項2】
(b)成分として、水、アルコール類、グリコールエーテル類の中から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項1に記載の異方性導電膜剥離液。
【請求項3】
(b)成分として、エチレングリコールを用いる、請求項1に記載の異方性導電膜剥離液。
【請求項4】
(c)成分として、カルボキシビニルポリマーを用いる、請求項1に記載の異方性導電膜剥離液。
【請求項5】
(d)成分として、アミン類、アンモニア水、アルカリ金属の水酸化物溶液の中から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項1に記載の異方性導電膜剥離液。
【請求項6】
(d)成分として、トリエタノールアミンを用いる、請求項1に記載の異方性導電膜剥離液。
【請求項7】
少なくとも表示パネル外周部、プリント基板等の接続用端子周辺に存在する硬化した異方性導電膜を剥離、除去のため用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方性導電膜剥離液。

【公開番号】特開2009−74015(P2009−74015A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274419(P2007−274419)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【出願人】(506212684)クロマエンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】