説明

異材接合継手および異材接合方法

【課題】スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成自体を無くして、高い接合強度とできる、鋼板とアルミニウム合金板との異材接合継手および異材接合方法を提供することにある。
【解決手段】鋼板とアルミニウム合金板とを重ね合わせてスポット溶接により接合した異材接合継手であって、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層がAlとCuとの金属間化合物と金属Alとが互いに重なりあった層状の組織からなり、この界面反応層にFeとAlとの金属間化合物を有さずに、高い接合強度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合強度に優れた異材接合継手および異材接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。また、この軽量化をできるだけ阻害せずに、自動車の車体衝突時の安全性を高めることも追求されている。このため、特に、自動車の車体構造に対し、従来から使用されている鋼板などの鋼材に代わって、より軽量で、エネルギー吸収性にも優れたアルミニウム合金板などのアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。ここで言う、アルミニウム合金板とは、アルミニウム合金の熱延板、冷延板(圧延上がりだけでなく、調質された板を含む)などの圧延板の総称である。
【0003】
例えば、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル(内板) 等のパネルには、Al−Mg−Si系のAA乃至JIS6000系 (以下、単に6000系と言う) やAl−Mg系のAA乃至JIS5000系 (以下、単に5000系と言う) などのアルミニウム合金板の使用が検討されている。
【0004】
これらのアルミニウム合金板は、オールアルミニウムの自動車車体で無い限り、通常の自動車の車体では、元々汎用されている鋼板や型鋼などの鋼材(鋼部材)と接合して用いられる。したがって、自動車の車体にアルミニウム合金材を使用する場合(鋼材とアルミニウム合金材とを組み合わせた部材)には、これも必然的に、Fe−Alの異材接合(鉄ーアルミの異種金属部材同士の接合)の必要性がある。
【0005】
しかし、このFe−Al異材接合を溶接により行う際の問題点として、周知の通り、互いの接合界面(以下、単に界面とも言う)における高硬度で非常に脆いFeとAlとの金属間化合物層(反応層)の生成がある。このため、見かけ上では、互いに異材接合されてはいても、この金属間化合物層の界面での生成が原因となって、溶接によるFe−Al異材接合では、異材接合継手や異材溶接接合体に、十分な接合強度が得られないことが多い。
【0006】
これを反映して、従来から、これら異材接合体(異種金属部材同士の接合体)の接合には、溶接だけでなく、ボルトやリベット等、あるいは接着剤を併用した接合がなされているが、接合作業の煩雑さや接合コスト上昇等の問題がある。
【0007】
そこで、従来より、Fe−Al異材接合の溶接法につき、通常の自動車の車体の鋼板同士の接合に汎用されている、効率的なスポット溶接を用いることが検討されている。
【0008】
このようなスポット溶接として、前記した脆いFeとAlとの金属間化合物層の界面での生成を抑制するために、例えば、アルミニウム材と鋼材の間に、アルミニウム−鋼クラッド材をインサートする方法が提案されている。また、鋼材側に融点の低い金属をめっきしたり、インサートしたりする方法が提案されている。更に、アルミニウム材と鋼材の間に絶縁体粒子を挟む方法や、部材に予め凹凸を付ける方法なども提案されている。更に、アルミニウム材の不均一な酸化膜を除去した後、大気中で加熱して均一な酸化膜を形成し、アルミニウム表面の接触抵抗が高められた状態で、アルミニウム−鋼の2層の複層鋼板をインサート材に用いてスポット溶接する方法も提案されている。
【0009】
一方、鋼材側でも、鋼板の高強度化のために、Si、Mn、Alなどの酸化物を形成しやすい元素を添加すると、母材表面には、これらSi、Mn、Alなどを含む酸化物が生成することが公知である。そして、これらSi、Mn、Alなどを含む酸化物が、亜鉛めっきなどの表面被覆と鋼板との密着性を阻害することも知られている。更に一方では、鋼板を酸洗などして、これらSi、Mn、Alなどを含む酸化物層の厚みを0.05〜1μm の範囲とすれば、亜鉛めっきなどの表面被覆と鋼板との密着性および鋼板同士のスポット溶接性が向上されることも知られている(特許文献1参照)。
【0010】
しかし、これらの従来技術では、通常の自動車の車体の接合に汎用されている、効率的なスポット溶接による接合条件では、溶接接合されたFe−Alの異材溶接接合体に、十分な接合強度が得られない。言い換えると、接合強度を得るためのスポット溶接条件が煩雑にならざるを得ず、現実的では無い。
【0011】
これに対して、特に、自動車車体用として汎用される、6000系アルミニウム合金材などと、引張強度が450MPa以上の高強度鋼板(ハイテン材)との、異材溶接接合体のスポット溶接を意図した技術も種々提案されている。
【0012】
例えば、特許文献2、3では、板厚を3mm以下に制限した鋼材とアルミニウム合金材とを、鋼材を2枚以上重ね合わせるか、鋼材をアルミニウム合金材間に挟み込んだ形でスポット溶接することが提案されている。特許文献4では、スポット溶接部におけるナゲット面積や界面反応層の厚さを規定して接合強度を向上させることが提案されている。また、特許文献5、6では、溶接界面における、鋼材側とアルミニウム合金材側の、各生成化合物の組成や厚み、面積などを各々細かく規定して、接合強度を向上させることが提案されている。
【0013】
更に、特許文献7では、特定組成の高強度鋼板において、鋼板表面上の既存の酸化物層を一旦除去した上で新たに生成させた外部酸化物層と、鋼生地表面直下の内部酸化物層を規定して、適切なスポット溶接条件下において、異材接合体の高い接合強度を得ることが提案されている。この特許文献7は、前記外部酸化物層と内部酸化物層とによって、スポット溶接時のFe、Alの拡散を抑えて、接合界面における、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の過剰生成を抑制するものである。
【0014】
また、特許文献8では、鉄系材料側の被接合面に、厚さ0.1〜1μmでコーティングするか、厚さ0.01〜1mmの箔として、Cu合金層を配置し、このCu合金層をスポット溶接におけるろう材として活用し、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の過剰生成を抑制しようとしている。そして、このCu合金層の効果を保証するために、スポット溶接により接合するに際して、アルミニウム系材料側の被接合面にフッ化物系フラックスを塗布し、アルミニウム系材料側の酸化皮膜を除去して接合することを必須としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−294487号公報
【特許文献2】特開2007−144473号公報
【特許文献3】特開2007−283313号公報
【特許文献4】特開2006−167801号公報
【特許文献5】特開2006−289452号公報
【特許文献6】特開2007−260777号公報
【特許文献7】特開2006−336070号公報
【特許文献8】特開2004−351507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これら特許文献2〜7は、共通して、アルミニウム合金材と高強度鋼板との異材溶接接合体のスポット溶接を意図し、適用条件などの制約が少なく汎用性に優れ、接合部での脆弱な金属間化合物生成を抑制して、接合強度を向上させることを目的としている。
【0017】
しかし、これら特許文献2〜8でも、アルミニウム合金材と高強度鋼板との異材溶接接合体のスポット溶接に関しては、未だ接合強度が2kN未満程度で決して高くなく、不十分で、改良の余地がある。これらの従来技術では、共通して、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の過剰生成を抑制しているものの、実質量の生成が不可避である。すなわち、これらの従来技術は、共通して、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の生成自体を無くせてはいない。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成自体を無くして、高い接合強度とできる、鋼板とアルミニウム合金板との異材接合継手および異材接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するための、本発明の異材接合継手の要旨は、アルミニウム合金板と被接合面に予めCuめっきが施された鋼板とを重ね合わせてスポット溶接により接合した異材接合継手であって、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層がAlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織からなり、この共晶組織における前記各相の割合として、前記界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で、前記AlとCuとの金属間化合物相が70〜90%であるとともに、前記金属Al相が10〜30%であることとする。
【0020】
また、上記目的を達成するための、本発明の異材接合方法の要旨は、鋼板とアルミニウム合金板とを重ね合わせてスポット溶接により接合する異材接合方法であって、前記鋼板の被接合面に予め厚さ3〜10μmのCuめっきを施した上で、加圧力:3kNを超え、6kN以下、溶接電流:18kAを超え、30kA以下、溶接時間40〜500msecの各条件を満足するように、かつフラックスを用いずにスポット溶接し、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織とし、この共晶組織における前記各相の割合として、前記界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で、前記AlとCuとの金属間化合物相を70〜90%とするとともに、前記金属Al相を10〜30%としたことである。
【0021】
ここで、本発明の前記界面反応層は、前記AlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織のみからなるだけではなく、この共晶組織の残部に、あるいは、この共晶組織以外に、他の金属間化合物相や金属相を含んでも良い。ただ、本発明の前記界面反応層あるいは共晶組織は、前記AlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との前記面積率の規定からして、他の金属間化合物相や金属相とともに、特に、前記有害なFeとAlとの金属間化合物を規制した組織である。すなわち、本発明の前記界面反応層は、前記共晶組織の残部として、前記有害なFeとAlとの金属間化合物を、僅かな量含むか、または全く含まない。
【発明の効果】
【0022】
本発明者は、鉄系材料側の被接合面にCu合金層を配置した前記特許文献8において、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を依然として抑制できない理由につき、改めて調査した。この結果、前記Al−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制することができ、接合強度に優れた異材接合継手を得られる、新規な界面反応層組織(組成)があり、この界面反応層組成が得られるスポット溶接条件が、今までのスポット溶接条件の外に別途あることを知見した。
【0023】
すなわち、鉄系材料側の被接合面に純Cuめっきを配置した場合、前記特別なスポット溶接条件で溶接すれば、スポット溶接によって形成された異材同士の界面反応層において、通常とは全く異なる、前記本発明で規定する新規な界面反応層組織が得られることを知見した。このような新規な界面反応層組織では、前記Al−Fe系の脆い金属間化合物層の生成が抑制されており、接合強度に優れた異材接合継手を得られる。言い換えると、鉄系材料側の被接合面にCu合金層を配置しても、あるいは純Cuめっきを配置しても、前記特許文献8に記載されたスポット溶接条件の範囲で溶接した場合には、前記本発明で規定する新規な界面反応層組織とはならず、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制することができない。
【0024】
本発明によれば、鋼板側の被接合面に予めCuめっきを施した上で、加圧力や溶接電流を高くし、溶接時間を短くした特別な条件を満足するように、かつ、フラックスを用いずにスポット溶接することで、形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とする。これによって、この界面反応層の残りがFeとAlとの金属間化合物であるか、または、この界面反応層にFeとAlとの金属間化合物を有さないものとすることができ、接合強度に優れた異材接合継手を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明異材接合継手の界面組織を示す図面代用写真である。
【図2】図1における界面組織の各部位における組成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(界面組織)
図1は、後述する実施例において、ハイテン鋼板と高強度6000系アルミニウム合金板とのスポット溶接による重ね合わせ継手のナゲットの板厚方向断面を、後述する実施例の通り、SEMの反射電子像にて組織観察したもので、表4の発明例1(溶接条件は表3のg)である。
【0027】
この図1において、図の上側の平坦部と不定形の凹み(クレータ)とが混在する白っぽい密な部分がハイテン鋼板の領域である。そして、図の下側の根っこ状に下方に向かって枝分かれしている白っぽい粗な部分が6000系アルミニウム合金板の領域である。
【0028】
一方、これらの領域の中間の(図1の中間部分の)領域においては、白っぽい畝状(峰状)の部分と、これら白っぽい畝状の部分に挟まれた黒く細長い谷状(溝状)の部分とが、層状(地層状)あるいは縞模様状に折り重なっている(重なり合っている)。
【0029】
この中間の領域の組織が本発明で規定する界面反応層の組織であって、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された、AlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織からなる界面反応層である。すなわち、この界面反応層は、スポット溶接による溶融後の冷却の過程で晶出(凝固)した二つの固相(AlとCuとの金属間化合物相と金属Al相)が前記図1のように規則的に(層状に)混在(混合)する、材料用語で言う所謂「共晶」組織となっている。
【0030】
ここで、本発明では、前記共晶組織における二つの固相「相」であるAlとCuとの金属間化合物相と金属Al相とを「相」(phase)なる用語を用いて、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の「層」とは区別して用いている。これは、Al−Fe系の脆い金属間化合物層は、界面反応層として、比較的大きな厚みと面積とを有して存在する「層」であるので、従前の言い方通り「層」(layer)なる用語を用い、前記「相」とは、技術的に別のものとして、使い分けて表現しているからである。
【0031】
本発明における、この共晶組織では、前記各相の割合として、前記界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で、前記AlとCuとの金属間化合物相が70〜90%であるとともに、前記金属Al相が10〜30%である。すなわち、この共晶組織の残部に、僅かなFeとAlとの金属間化合物を含むか、またはFeとAlとの金属間化合物を分析(定量)可能な量としては含まず、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制した組織となっていることが特徴である。
【0032】
図2は、図1の前記層状に折り重なっている界面反応層の4−1、4−2、4−3の番号の各部位におけるEDX分析による、O、Al、Fe、Cuの各原子濃度(原子濃度%)での組成を示している。図1の前記界面反応層において、前記各番号が付けられている白っぽい畝状の部分は、図2の通り、4−1、4−2、4−3の各部位とも共通して、Al、Cuが多くを占め、Feが著しく少ない。この事実が、前記白っぽい畝状の部分はAlとCuとの金属間化合物相からなるとともに、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制した組織となっていることを裏付けている。なお、図2において、4−1部位におけるFeの量が、4−2、4−3の各部位におけるFeの量よりも多いのは、4−1部位が鋼板組織に近く、鋼板のFeを検出したためであると考えられる。
【0033】
また、前記層状に折り重なっている界面反応層において、白っぽい畝状の部分に挟まれた黒く細長い谷状の部分は、同じく前記EDX分析によると、やはり、Feが著しく少なく、また、Cuも著しく少ない一方で、Alが多くを占めていた。この事実が、前記黒く細長い谷状の部分は金属Alのみからなるとともに、Al−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制した組織となっていることを裏付けている。
【0034】
これらのことから、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層は、白っぽい畝状の部分がAlとCuとの金属間化合物からなり、白っぽい畝状の部分に挟まれた黒く細長い部分が金属Alのみからなっていることが分かる。そして、これらスポット溶接によって形成された界面反応層が、AlとCuとの金属間化合物相と金属Al相とが互いに重なりあった(折り重なった)層状の組織となっていることが分かる。
【0035】
そして、スポット溶接条件を変えた種々の例における、図1の界面組織の前記AlとCuとの金属間化合物相(白っぽい畝状の部分)と、前記金属Al相(白っぽい畝状の部分に挟まれた黒く細長い部分)との占める面積率を各々測定した。その結果、図1の界面組織の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率として、前記AlとCuとの金属間化合物相が70〜90%であり、前記金属Al相が10〜30%からなる組成となる場合に、異材接合継手の接合強度が向上することを知見した。
【0036】
すなわち、これら規定の平均面積率の範囲では、前記図1の共晶組織(界面反応組織)は、殆ど、前記AlとCuとの金属間化合物相と前記金属Al相とから構成されており、この平均面積率の残りだけ、前記共晶組織にFeとAlとの金属間化合物(層)を含むか、または、前記共晶組織に(界面反応層に)FeとAlとの金属間化合物(層)を分析(定量)可能な量としては含まないことを意味する。
【0037】
これに対して、前記共晶組織(界面反応組織)において、前記AlとCuとの金属間化合物が70%未満で、前記金属Alが10%未満となる場合には、この残りがFeとAlとの金属間化合物(層)となって、FeとAlとの脆い金属間化合物の割合が増して、従来の界面反応組織と同様となり、継手の接合強度が低下する。言い換えると、これら規定の平均面積率未満に前記共晶組織がある場合には、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制できない。
【0038】
一方、前記AlとCuとの金属間化合物が90%を超えたり、前記金属Alが30%を超えたりするような界面反応組織をつくることは、後述するCuめっき層の厚さやスポット溶接条件の適正化によっても中々困難であり、また、これ以上、前記AlとCuとの金属間化合物や前記金属Alの割合を増す必要も無い。したがって、界面反応組織の組成は前記した範囲とする。
【0039】
(鋼板のCuめっき)
本発明では、前記鋼板の被接合面に、スポット溶接される前に、予めCuめっきを施す。鋼板の被接合面に予めCuめっきを施すことで、加圧力や溶接電流を高くし、溶接時間を短くした特別な条件のスポット溶接との組み合わせで、形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とできる。すなわち、この界面反応層の残りがFeとAlとの金属間化合物であるか、または、この界面反応層にFeとAlとの金属間化合物を有さないものとすることができ、接合強度に優れた異材接合継手を得られる。
【0040】
スポット溶接は通電加熱であるが、鋼板とアルミニウム合金板とを接触させると複数での点接触になるため、一般的に、接合部(界面部)の均一な加熱が難しい。ここで、鋼板側の被接合面(表面)にCuめっきを施すことで、アルミニウム合金板とCuめっきとは、やはり点接触になるものの、Cuの導電性が良いために、鋼板側が均一に発熱し、より均一な前記組成の界面反応層が得られる。
【0041】
Cuめっきの厚み:
このためのCuめっきの平均厚みは3〜10μmの範囲とする。このCuめっきの平均厚みが3μm未満では、アルミニウム合金板と点接触するCuの量が少なすぎて、前記Cuの良導電性による効果が発揮されずに、鋼板側が均一に発熱せず、前記図1のような、組成が均一で薄いあるいは層状な界面反応層(スポット溶接後の界面層)が得られない。すなわち、前記特別な条件のスポット溶接との組み合わせでも、界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とできなくなり、FeとAlとの金属間化合物が増した組成で、しかも、この金属間化合物のみの部分が現れるなど、不均一な層状界面反応層となって、接合強度が不足する。
【0042】
一方、このCuめっきの平均厚みが10μmを超えると、箔などのように厚みが厚くなり、却って、前記Cuの良導電性による効果が得られない。すなわち、前記特別な条件のスポット溶接との組み合わせでも、界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とできず、前記図1のような、組成が均一で薄いあるいは層状な界面反応層が得られない。すなわち、FeとAlとの金属間化合物が増して、しかも、この金属間化合物のみの部分が現れるなど、不均一な層状界面反応層となって、接合強度が不足する。
【0043】
Cuめっきの組成:
本発明におけるCuめっきは、界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とするための原材料でもあり、前記Cuの良導電性による効果を発揮させるためにも、Cuめっきの組成は好ましくは純Cu(純銅)めっきとする。すなわち、前記特許文献8に記載されたような、第三の元素を多く含むCu合金とした場合には、却って、アルミニウム合金板と点接触するCu合金めっきの導電性が低下して、界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とできにくくなる。
【0044】
前記特許文献8に記載されたスポット溶接では、記載されているように、鉄系材料の被接合面にコーティングされたCu合金自体が、ろう材となって界面反応層を形成し、脆いFeとAlとの金属間化合物層の形成を抑制する。このために、前記特許文献8では、界面反応層の組成と継ぎ手の接合強度とが、このコーティングされたCu合金層によって大きく支配される。
【0045】
それゆえ、前記特許文献8で鉄系材料の被接合面にコーティングするのは、強度が低い純Cuではなく、Cuを主成分とし、Si、Mn、Zn、Cr、Mg、Ni、Al、Sn、Fe、TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有する、強度が高いCu合金としている。例えば、AlおよびFeの合計添加量は30質量%以下の多量である。また、Si、Mn、Zn、Cr、Mg、Sn、Ti、Zr、NiなどのCu合金層への合計添加量も30質量%以下の多量である。
【0046】
しかし、本発明におけるCuめっきでは、前記した通り、純Cuのめっきが好ましく、これらの合金元素は全て不要であり、合金元素の含有量は少ないほど好ましく、Cuめっきにおけるこれらの元素全ての合計含有量で5質量%以下(0%を含む)とする。因みに、本発明におけるCuめっきは、常法による浸漬あるいは電気メッキ、または真空蒸着などの公知の、常法によるめっき方法によって鋼板の被接合面に形成することができる。
【0047】
Cuめっきは、アルミニウム合金板との接合面となる、鋼板の被接合面(一面あるいは片面)に施されていることが必要であるが、もう一方の面(両面)に施されている必要は必ずしもない。ただ、鋼板をめっき液に浸漬してめっきするなど、鋼板の片面だけにめっきするのが困難であれば、両面にめっきしても良く、また、必要であれば、もう一方の面(両面)に亜鉛めっきなどの他のめっきや塗装を適宜施しても良い。
【0048】
(スポット溶接条件)
本発明におけるスポット溶接条件も、前記鋼板の接合面に予め施すCuめっき層との組み合わせで、形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とするために重要である。すなわち、この界面反応層の残りがFeとAlとの金属間化合物であるか、または、この界面反応層にFeとAlとの金属間化合物を有さないものとすることができ、接合強度に優れた異材接合継手を得るために重要である。
【0049】
本発明におけるスポット溶接条件は、常法や特許文献8のスポット溶接条件とは異なり、加圧力や溶接電流を高くし、溶接時間を短くした特別な条件とする。具体的には、加圧力:3kNを超え、6kN以下、溶接電流:18kAを超え、30kA以下、溶接時間40〜500msecの各条件を全て満足するとともに、フラックスを用いないものとする。このような条件のスポット溶接には汎用のスポット溶接装置が使用できる。
【0050】
前記範囲を外れて、加圧力が低すぎると、鋼板(Cuめっき)とアルミニウム合金板との接触点が少ないため、スポット溶接時の界面反応が不均一になり、界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とできず、前記図1のような、組成が均一で薄いあるいは層状な界面反応層が得られない。すなわち、FeとAlとの金属間化合物が増して、しかも、この金属間化合物のみの部分が現れるなど、不均一な層状界面反応層となって、接合強度が不足する。一方、加圧力が高すぎると、スポット溶接時に溶解部がナゲットから飛散するため、接合強度が不足する。
【0051】
前記範囲を外れて、溶接電流が低すぎたり、溶接時間が短すぎたり、あるいは逆に長すぎたりしても、スポット溶接時の界面反応が不足して、ナゲットが十分に形成されたとしても、界面反応層を、前記したAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなり、前記FeとAlとの金属間化合物を含まないような組成とはできないため、やはり接合強度が不足する。
【0052】
一方、溶接電流を前記範囲を外れて高くしたり、溶接時間を前記範囲を外れて長くする、大電流あるいは長時間のスポット溶接では、界面反応が進みすぎて、却って形成された界面反応層を前記FeとAlとの金属間化合物を含まない組成とはできずに、接合強度が不足する。
【0053】
因みに、前記特許文献8では、好ましいスポット溶接条件として、溶接電流が8〜18kA、加圧力が1.5〜3kN、溶接時間は1s以下としている。そして、加圧力が3kNを超えると、元素の拡散が助長されて、Cu−Al系金属間化合物が大量に形成されるため、良好な継手が得られないとしている。また、溶接時間が1sを超えると、Cu−Al系金属間化合物の成長が助長されて良好な継手が得られないとしている。したがって、本発明のように形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物と金属Alとからなる組成とすることの有用性については認識しておらず、また、本発明から外れた前記スポット溶接条件を採用しているがゆえに、本発明のような組成とはならない。
【0054】
このように、前記特許文献8では、スポット溶接条件によって、Cu−Al系金属間化合物の生成や成長が助長されることを認識している。しかし、このCu−Al系金属間化合物の有用性については全く認識してはおらず、それどころか、逆に、有害な金属間化合物として、積極的に排除しようとしている。
【0055】
本発明におけるスポット溶接接合方法では、特許文献8のようなフラックスの使用は不要であり、却って有害でもある。本発明における前記スポット溶接条件によれば、前記フッ化物系などのフラックスをアルミニウム合金板の被接合面に塗布せずとも、アルミニウム合金板の被接合面からの酸化皮膜の除去は可能である。また、前記鋼板のCuめっきからの溶融Cuとアルミニウム合金板表面との濡れ性の改善も不要である。前記フッ化物系などのフラックスを使用すると、本発明における前記スポット溶接条件では、形成された界面反応層を本発明における前記FeとAlとの金属間化合物を含まない前記組成と却ってできにくくなる。
【0056】
(素材鋼板)
本発明異材接合継手に使用する素材鋼板について、本発明では通常の軟鋼板が使用できる。ただ、自動車部材などの軽量化と高強度が要求される用途からして、引張強度が450MPa以上の高強度鋼板(ハイテン)を使用することが好ましい。
【0057】
また、通常の軟鋼板では、高強度鋼板に比して、スポット溶接の際に、脆いFeとAlとの金属間化合物層(反応層)が形成しやすいという傾向もある。例えば、軟鋼板は、一般には低合金鋼が多く、酸化皮膜がほぼ鉄酸化物であるため、FeとAlの拡散が容易となり、高強度鋼板に比して、脆いFeとAlとの金属間化合物層(反応層)が形成しやすい。また、軟鋼板は、高強度鋼板に比して、母材のFeとAlの拡散を抑制する効果があるSi、Mnの含有量が少ないために、やはりFeとAlの拡散が容易となり、脆いFeとAlとの金属間化合物層が形成しやすい。更に、軟鋼板は、高強度鋼板に比して、鋼板の強度が低いために、板厚にもよるが、スポット溶接時の電極チップによる加圧によって、鋼板の変形が大きくなりやすく、この加圧力を大きくできずに(限界があるので)、脆いFeとAlとの金属間化合物層が形成しやすいという傾向もある。
【0058】
鋼板の成分組成:
前記高強度鋼板の成分組成としては、Si、Mnなどを所定量含む鋼板組成が好ましく、例えば、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.1〜3.00%、Mn:0.1〜3.00%を各々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。これに加えて、更に、Al:0.002〜0.1%を含有しても良い。また、更に、このAlに加えて、あるいはAlの代わりに、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.10%、Zr:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜3.00%、Mo:0.01〜3.00%、Cu:0.01〜3.00%、Ni:0.01〜3.00%、の1種または2種以上を含有しても良い。なお、本発明における化学成分の単位(各元素の含有量)は、アルミニウム合金を含めて、すべて質量%である。
【0059】
鋼板の板厚:
接合する鋼板の板厚t1 は0.5〜5.0mmの範囲から、アルミニウム材側の板厚t2 に応じて選択することが好ましい。鋼板の板厚t1 が0.5mm未満と薄過ぎる場合、前記自動車部材などとして必要な強度や剛性を確保できない。また、スポット溶接時の鋼材の熱変形が大きくなって、これが著しい場合には、鋼材の材料が抜け落ち、健全な溶接継ぎ手が得られなくなる。一方、鋼材の板厚t1 が5.0mmを越えて厚過ぎると、入熱量の制御が難しくなり、スポット溶接が困難となり、継手の異材化の利点の一つである軽量化も犠牲になる。
【0060】
(アルミニウム合金板)
本発明異材接合継手に使用する素材アルミニウム合金板は、その合金の種類を特に限定するものではないが、上記鋼板の場合と同様に、自動車部材などの軽量化と高強度が要求される用途からして、強度が高い方が望ましい。この点、アルミニウム合金の中でも、強度が高く、この種構造用材として汎用されている、AA(あるいはJIS)6000系、7000系、あるいは5000系などのアルミニウム合金板の使用が最適である。
【0061】
使用するアルミニウム合金板の板厚t2 は好ましくは0.5〜4.0mmの範囲とする。アルミニウム合金板の板厚t2 が0.5mm未満と薄過ぎる場合、構造材料としての強度が不足して不適切である。また、溶融溶接時のアルミニウム材の熱変形が大きくなって、これが著しい場合には、アルミニウム材の材料が抜け落ち、健全な溶接継ぎ手が得られなくなる。一方、アルミニウム材の板厚t2 が4.0mmを越えて厚過ぎる場合は、異材継手の利点の一つである軽量化が犠牲になる。その上、適正な厚みの界面反応層の生成に要する入熱量の制御が難しくなる。
【0062】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0063】
板厚が1.2mmである980MPa級ハイテン鋼板と、板厚が1.0mmで0.2%耐力が250MPa以上の6000系アルミニウム合金板とを重ね合わせ、フラックスを用いずにスポット溶接して、異材接合継手を製作し、組織や性能を調査、評価した。
【0064】
より具体的には、表1に示す成分組成の鋼板と、表2に示す成分組成のアルミニウム合金板とを、JIS A 3137記載の十字引張試験片形状に加工して重ね合わせ、表3に示すa〜nの各条件でスポット溶接を行い、異材接合した。ここで、後述する表4に示す剥離強度から評価される通り、表3に示すa〜f、l〜nは、加圧力、溶接電流、溶接時間のいずれかが適切な範囲から外れる不適切なスポット溶接条件、g〜kは適切なスポット溶接条件である。
【0065】
鋼板とアルミニウム合金板とは、共に前記十字引張試験片形状(50mm幅×150mm長さの大きさ)に加工し、互いに重ね合わせた上で、重ね合わせた中央部を幅方向にスポット溶接した。スポット溶接は、共通して、単層整流式抵抗スポット溶接機(容量90KVA)を用い、表3に示す加圧力、溶接電流、溶接時間の各1点当たりの条件にて、10点のスポット溶接を行った。この際、共通して、Cu−Cr合金からなるドーム型の電極を用い、正極をアルミニウム材、負極を鋼材とした。
【0066】
前記鋼板の被接合面には、スポット溶接される前に、予め純Cuめっきを共通して5μm施した。なお、被接合面に純Cuめっきを施していない鋼板も比較のために試験した。
【0067】
(界面反応層の厚さと形成範囲)
このようにして製作した各異材接合継手の、界面反応層の厚さと形成範囲とを測定した。これらの結果も表4に示す。界面反応層の板厚方向の厚さ測定は、各スポット溶接部の中央にて板厚方向に切断し、樹脂に埋め込んで研磨をし、スポット溶接部全体に渡り0.5mm間隔でのSEM(反射電子像)による観察を行った。界面反応層の厚さが1μm以上の場合は3000倍の視野にて、1μm未満の場合は10000倍の視野にて測定し、各スポット溶接部ごとに平均値を求め、これらを前記10箇所のスポット溶接部で平均化した値を界面反応層の平均厚みとした。この結果を表4に示す。
【0068】
更に、このSEM観察の際に、界面反応層をEDXにて、前記図2のように元素分析して、図1に示される各層状の組織が何であるかを判別し、界面反応層における、これらAlとCuとの金属間化合物と金属Alとの存在状態と、板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率とを求めた。すなわち、前記3000倍のSEM(反射電子像)写真から、鋼板と界面反応層との境界に対して、界面反応層の板厚方向(図1の上下垂直方向)に幅1μmの領域を取り、この領域における界面反応層中のAlとCuとの金属間化合物と金属Alとの各々の面積を求めた。そして、この各々の面積を前記各間隔での各観察結果で平均化し、界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率(%)を求めた。この結果を表4に示すが、これらの残りが、脆いFeとAlとの金属間化合物と見なして、表4には、これらの平均面積率も記載する。
【0069】
これら製作した各継手を引張り試験機で十字引張試験を行い、剥離強度(最大荷重)を求めた。これらの結果も表5に示す。剥離強度は、A6022アルミニウム材同士のスポット溶接接合強度=1.0kNを参考にして、2.0kN以上であれば○、2.0kN未満であれば×とした。
【0070】
表4から明らかな通り、発明例の異材接合継手は、鋼板の被接合面に予め適切な純Cuめっきが施されており、前記適切な条件でスポット溶接されている。この結果、形成された界面反応層が、この界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で70〜90%のAlとCuとの金属間化合物と、前記平均面積率で10〜30%の金属Alとの均一な層状組織からなる。そして、この界面反応層の残りがFeとAlとの金属間化合物であるか、または、この界面反応層にFeとAlとの金属間化合物を有さない。この結果、前記発明例の異材接合継手は優れた接合強度(剥離強度)を有する。
【0071】
一方、表4から明らかな通り、比較例の異材接合継手は、鋼板の被接合面の純Cuめっきが無いか、前記スポット溶接条件が適切でない。この結果、形成された界面反応層が、前記所定面積範囲からなる、AlとCuとの金属間化合物と金属Alとの均一な層状組織ではない。また、この界面反応層の残りのFeとAlとの金属間化合物の量も比較的多い。この結果、前記比較例の異材接合継手は接合強度(剥離強度)が発明例に比して著しく劣っている。
【0072】
言い換えると、鋼板側の被接合面に純Cuめっきを予め配置しても(施しても)、表3にg〜kで示す適切なスポット溶接条件でなければ、前記本発明で規定する新規な共晶組織からなる界面反応層とはならない。この結果、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成を抑制することができず、異材接合継手の接合強度が低下することが分かる。
【0073】
したがって、これらの事実から、異材接合継手の接合強度に対する、本発明の鋼板の被接合面の純Cuめっきや、高加圧力、高電流、溶接短時間である、前記スポット溶接条件の臨界的な意義が裏付けられる。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、スポット溶接の接合界面におけるAl−Fe系の脆い金属間化合物層の生成自体を無くして、高い接合強度とできる、鋼板とアルミニウム合金板との異材接合継手および異材接合方法を提供できる。このような異材接合継手および異材接合方法は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等における各種構造部材およびその溶接方法として有用に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金板と被接合面に予めCuめっきが施された鋼板とを重ね合わせてスポット溶接により接合した異材接合継手であって、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層がAlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織からなり、この共晶組織における前記各相の割合として、前記界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で、前記AlとCuとの金属間化合物相が70〜90%であるとともに、前記金属Al相が10〜30%であることを特徴とする接合強度に優れた異材接合継手。
【請求項2】
前記鋼板の接合面に予め施すCuめっき層の平均厚みが3〜10μmであり、前記スポット溶接が、加圧力:3kNを超え、6kN以下、溶接電流:18kAを超え、30kA以下、溶接時間40〜500msecの各条件を満足するとともに、フラックスを用いないものである、請求項1に記載の接合強度に優れた異材接合継手。
【請求項3】
鋼板とアルミニウム合金板とを重ね合わせてスポット溶接により接合する異材接合方法であって、前記鋼板の被接合面に予め厚さ3〜10μmのCuめっきを施した上で、加圧力:3kNを超え、6kN以下、溶接電流:18kAを超え、30kA以下、溶接時間40〜500msecの各条件を満足するように、かつフラックスを用いずにスポット溶接し、前記鋼板とアルミニウム合金板との界面に前記スポット溶接によって形成された界面反応層をAlとCuとの金属間化合物相と金属Al相との共晶組織とし、この共晶組織における前記各相の割合として、前記界面反応層の板厚方向断面の単位面積当たりの平均面積率で、前記AlとCuとの金属間化合物相を70〜90%とするとともに、前記金属Al相を10〜30%としたことを特徴とする、接合強度に優れた異材接合方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−125889(P2011−125889A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285505(P2009−285505)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】