説明

異物分離装置

【課題】異物の除去作業が簡単になるとともに異物の除去効率に優れた異物分離装置を提供する。
【解決手段】異物分離装置Sは、被膜化成槽1に接続される循環配管6a、6bと、循環配管6a、6bに介設されるサイクロン装置30と、循環配管6aに介設される第1ポンプ7および第1開閉バルブ8と、第2開閉バルブ36が介設され、サイクロン装置30の沈澱部34に接続してこの沈澱部34から処理液および異物を自重落下により排出可能な第1排出配管37と、第1排出配管37の下流端に接続される排出タンク35と、第3開閉バルブ38が介設され、排出タンク35に接続してこの排出タンク35から処理液および異物を自重落下により排出可能な第2排出配管39と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液中の異物を分離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液中の異物を除去する遠心分離装置の従来例として特許文献1に記載のものが挙げられる。同文献には、処理液中の異物を遠心分離装置の遠心分離部によって分離したうえで、(1)遠心分離部の下端に接続された沈澱部に沈澱した異物を除去するに際し、遠心分離部と沈澱部との間に介設され常時は開状態を保持する排出バルブを閉止し、沈澱部を遠心分離部から分離して異物を除去する方法、(2)沈澱部の下方に常時は閉状態を保持する排出バルブを配設し、定期的に手動でまたはタイマーを用いて自動で排出バルブを開放し、異物を沈澱部から除去する方法、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記(1)の方法によると、沈澱部をその都度着脱する必要があるため煩雑な作業となりやすい。また、前記(2)の方法によると、排出バルブを開放して異物を処理液とともに沈澱部から外部に排出する必要があるため、排出バルブを開閉する間に多量の処理液が外部に排出されることになり、折角処理液から分離濃縮された異物が再び希釈されることとなる。外部に排出された異物は最終的にコンベア式フィルタにより異物と処理液とに分離処理されるものの、濃縮された異物が希釈されると、前記コンベア式フィルタを大型化する必要が生じてコスト高となり、また、処理液を含んだ多量のフィルタを処理する必要があるため廃棄時などには環境問題となりやすい。さらに処理液を外部に排出することから排出した分については補給する必要があり、この点からも前記(2)の方法はコスト高となりやすい。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、異物の除去作業が簡単になるとともに異物の除去効率に優れた異物分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、処理槽に沈澱した異物を除去する異物分離装置であって、前記処理槽の底部に接続され、処理槽から排出される処理液を再度この処理槽に還流する循環配管と、前記循環配管に、上流側を供給口、下流側を濾過液排出口として介設される遠心分離装置と、前記遠心分離装置よりも上流側において前記循環配管に介設される第1ポンプおよび第1開閉バルブと、第2開閉バルブが介設され、前記遠心分離装置の沈澱部に接続してこの沈澱部から処理液および異物を自重落下により排出可能な第1排出配管と、前記第1排出配管の下流端に接続される排出タンクと、第3開閉バルブが介設され、前記排出タンクに接続してこの排出タンクから処理液および異物を自重落下により排出可能な第2排出配管と、を備え、前記遠心分離装置の沈澱部から処理液および異物を排出するにあたり、前記第2開閉バルブが開状態、前記第3開閉バルブが閉状態となって処理液および異物が前記排出タンクに流下し、次いで前記第2開閉バルブが閉状態、前記第3開閉バルブが開状態となって処理液および異物が前記排出タンクから前記第2排出配管を介して排出される構成としたことを特徴とする。
【0007】
当該構成によれば、遠心分離装置によって異物が除去された処理液は、遠心分離装置の濾過液排出口から循環配管を経由して被膜化成槽に還流される。
沈澱部に沈澱した異物(若干の処理液も含む)は、第3開閉バルブが閉状態、第2開閉バルブが開状態となることにより、濃縮度が維持されたまま自重により排出タンクに流下する。そして、第2開閉バルブを閉状態、第3開閉バルブが開状態となって、異物が排出タンクから第2排出配管を介して外部に排出される。
【0008】
排出タンクからの異物の排出が完了すると、第2開閉バルブが開状態、第3開閉バルブが閉状態となる。
本発明によれば、異物の除去作業が簡単になるとともに、遠心分離装置により分離された異物をその濃縮度を維持しつつ除去できるため、異物の除去効率が向上する。
【0009】
また、本発明は、第2ポンプおよび第4開閉バルブが介設され、上流端が前記処理槽に接続し、下流端が前記第1排出配管における前記第2開閉バルブと前記排出タンクとの間に接続する供給配管と、第5開閉バルブが介設され、上流端が前記第2排出配管における前記排出タンクと前記第3開閉バルブとの間に接続し、下流端が前記循環配管における前記遠心分離装置の下流側に接続するエア放出管と、をさらに備え、前記排出タンクからの処理液および異物の排出完了後、前記第2開閉バルブおよび前記第3開閉バルブが閉状態、前記第4開閉バルブおよび前記第5開閉バルブが開状態で、前記第2ポンプが作動して前記処理槽の処理液が前記供給配管を介して前記排出タンクに供給されることにより、この排出タンク内のエアが前記エア放出管を経由して前記循環配管の下流端から大気放出される構成としたことを特徴とする。
【0010】
処理液および異物の排出が完了している排出タンクの内部にはエアが存在しているが、本発明によれば、排出タンクからの処理液および異物の排出完了後、第2開閉バルブおよび第3開閉バルブが閉状態、第4開閉バルブおよび第5開閉バルブが開状態で、第2ポンプが作動して処理槽の処理液が供給配管を介して排出タンクに供給されることにより、エアが、供給配管から供給されてきた処理液により押しやられる態様でエア放出管を経由して循環配管に流入する。そして、エアは、循環配管の下流端から大気中に放出される。
【0011】
本発明によれば、簡単な構成で、排出タンク内のエアを大気放出して、排出タンク内のエアを処理液に置換することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異物分離装置によれば、異物の除去作業が簡単になるとともに、異物の除去効率が向上する。
また、簡単な構成で、排出タンク内のエアを大気放出して、排出タンク内のエアを処理液に置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る異物分離装置の構成ブロック図である。
【図2】サイクロン装置の内部構造例を示す図であり、(a)は第2開閉バルブが閉じた状態を示し、(b)は第2開閉バルブが開いてエアが排出タンクからサイクロン装置に上昇する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、処理槽である被膜化成槽1には処理液が満たされており、被膜化成槽1に沿ってその上方に搬送コンベア2が敷設されている。この搬送コンベア2により搬送されるハンガー3にワークWを載置して被膜化成槽1に投入することにより、ワークWの表面に被膜化成処理が施される。ワークWは、例えば自動車の車体である。この被膜化成処理では、ワークWの表面にリン酸塩被膜を形成する過程でスラッジ(異物)が生成され、生成されたスラッジは被膜化成槽1内の処理液中に浮遊し、さらには被膜化成槽1の底部に形成されたホッパ4に沈澱する。この状態で以降のワークWの被膜化成処理を行うと、ワークWの表面にスラッジが付着して後工程の電着塗装工程等において塗装不良となりやすい。
【0015】
本発明の異物分離装置Sは、前記スラッジ等を除去するための装置であり、被膜化成槽1の底部のホッパ4に接続され、被膜化成槽1から排出される処理液を再度この被膜化成槽1に還流する循環配管6a、6bと、前記循環配管6a、6bに、上流側を供給口31、下流側を濾過液排出口32として介設されるサイクロン装置30(遠心分離装置)と、サイクロン装置30よりも上流側の循環配管6aに介設される第1ポンプ7および第1開閉バルブ8と、第2開閉バルブ36が介設され、サイクロン装置30の沈澱部34に接続してこの沈澱部34から異物(処理液も含む)を自重落下により排出可能な第1排出配管37と、第1排出配管37の下流端に接続される排出タンク35と、第3開閉バルブ38が介設され、排出タンク35に接続してこの排出タンク35から処理液を含んだ異物を自重落下により排出可能な第2排出配管39と、を主な構成要素として構成される。
【0016】
また、本実施形態の異物分離装置Sは、第2ポンプ40および第4開閉バルブ41が介設され、上流端が被膜化成槽1に接続し、下流端が第1排出配管37における第2開閉バルブ36と排出タンク35との間に接続する供給配管42と、第5開閉バルブ43が介設され、上流端が第2排出配管39における排出タンク35と第3開閉バルブ38との間に接続し、下流端が循環配管6a、6bにおけるサイクロン装置30の下流側(すなわち、循環配管6b)に接続するエア放出管44と、を備える。
【0017】
以下、異物分離装置Sについて詳細に説明する。ホッパ4の下部と被膜化成槽1の出槽側に設けられる洗浄スプレー装置5とは循環配管6a、6bにより接続されており、循環配管6aと循環配管6bの間に市販のサイクロン装置30が介設される。循環配管6aには第1ポンプ7および第1開閉バルブ8が介設されている。循環配管6aの下流端はサイクロン装置30の供給口31に接続し、循環配管6bの上流端はサイクロン装置30の濾過液排出口32に接続される。
【0018】
サイクロン装置30としては公知のものが適用される。図2にサイクロン装置30の概念的な構造を示す。図2において、サイクロン装置30は、例えば、上部側方に供給口31が形成され、上端に濾過液排出口32が形成されている。サイクロン装置30の中央部には、供給されたスラッジを旋回流させる遠心分離部33が形成され、下部には異物を貯留する沈澱部34が形成されている。
【0019】
図1において、循環配管6aから供給口31に供給されたスラッジおよび処理液はサイクロン装置30の遠心分離部33により分離処理される。分離された処理液は濾過液排出口32に接続した循環配管6bを経由して前記洗浄スプレー装置5に供給され、被膜化成槽1に向けてスプレーされることにより、被膜化成槽1から搬出されたワークWを洗浄しつつ被膜化成槽1に還流される。
【0020】
サイクロン装置30の下部に形成された沈澱部34は、その下方に位置する排出タンク35に対し、途中に第2開閉バルブ36を有する第1排出配管37により接続されている。排出タンク35の下部には、途中に第3開閉バルブ38を有する第2排出配管39が接続される。第1排出配管37における第2開閉バルブ36と排出タンク35との間には、被膜化成槽1の入槽側側面から延設され、途中に第2ポンプ40と第4開閉バルブ41とを有する供給配管42が接続される。また、第2排出配管39における排出タンク35と第3開閉バルブ38との間と、前記循環配管6bとは、途中に第5開閉バルブ43を有するエア放出管44により接続している。
【0021】
第2排出配管39の下流端の下方には、コンベア式のフィルタ50と、このフィルタ50により分離された処理液を貯留する貯留タンク51と、フィルタ50により分離されたスラッジを貯留するスラッジタンク52とが配設されている。貯留タンク51は、途中に第3ポンプ53および第6開閉バルブ54を有する枝管55を介して前記循環配管6bに接続している。
【0022】
「作用」
以上の構成からなる異物分離装置Sの作用を説明する。処理液およびスラッジはホッパ4から被膜化成槽1の外部に排出され、第2開閉バルブ36が閉状態、第1開閉バルブ8が開状態で第1ポンプ7が作動することにより、処理液およびスラッジは循環配管6aから供給口31を通ってサイクロン装置30の遠心分離部33に導入される。遠心分離部33で分離された異物と若干の処理液とは沈澱部34に沈澱する。異物が除去された処理液は、前記したように、サイクロン装置30の濾過液排出口32から循環配管6bを経由してスプレー装置5に供給され、このスプレー装置5からスプレーされることにより被膜化成槽1に還流される。
【0023】
そして、沈澱部34に沈澱した異物および処理液を外部に排出するには、第4開閉バルブ41、第3開閉バルブ38、第5開閉バルブ43をそれぞれ閉状態、第2開閉バルブ36を開状態として、比重の重い異物をその自重により排出タンク35に流下させる。次いで、第2開閉バルブ36を閉状態とし、第3開閉バルブ38を開状態とすることにより、濃縮された異物が第2排出配管39からフィルタ50上に排出される。異物中には未だ処理液が含有されており、このフィルタ50によってさらに処理液と異物とに分離される。分離された異物はフィルタ50上に残留し、スラッジタンク52に廃棄される。一方、フィルタ50により分離された処理液は、第6開閉バルブ54を開状態として第3ポンプ53を作動させることにより枝管55を経由して循環配管6bに供給される。
【0024】
排出タンク35からの異物の排出が完了すると、第2開閉バルブ36、第3開閉バルブ38を閉状態とし、第4開閉バルブ41、第5開閉バルブ43を開状態として第2ポンプ40を作動させることにより、被膜化成槽1内の処理液が供給配管42を介して排出タンク35に供給される。このとき、異物の排出が完了している排出タンク35の内部にはエアが存在しており、このエアは、供給配管42から供給されてきた処理液により押しやられてエア放出管44を経由して循環配管6bに流入し、循環配管6bの下流端に設けられたスプレー装置5から大気中に放出される。
【0025】
排出タンク35内のエアが処理液に置換されると、第2ポンプ40の作動を停止し、閉状態の第3開閉バルブ38に加え、第4開閉バルブ41、第5開閉バルブ43も閉状態にする。そして、以降の沈澱部34に沈澱した異物を排出タンク35に流下するために第2開閉バルブ36を開状態とする。これらの操作を繰り返すことにより、濃縮された異物のみを外部に排出することが可能となり、従来の不具合が解消される。
【0026】
また、本発明によれば、図2において、サイクロン装置30の沈澱部34に沈澱、堆積した異物を排出タンク35に流下させるべく第2開閉バルブ36を開状態にしたとき、図2(b)に示すように、排出タンク35内の異物が排出されることにより置換されたエアが第1排出配管37を通ってサイクロン装置30の遠心分離部33まで浮上し、遠心分離部33で形成される遠心力により前記エアがバブリングされて微粒化する。この微粒化されたエア粒は図1に示す循環配管6bを移動する過程で循環配管6bの内壁に衝突する。循環配管6bの内壁には長期の使用により処理液成分やその他微細な異物が析出、固化する場合があるが、前記エア粒から受ける衝撃により循環配管6bの内壁に析出し、成長した異物が剥離して被膜化成槽1に流れるという問題も生じない。
【符号の説明】
【0027】
1 被膜化成槽(処理槽)
6a、6b 循環配管
7 第1ポンプ
8 第1開閉バルブ
30 サイクロン装置(遠心分離装置)
31 供給口
32 濾過液排出口
34 沈澱部
35 排出タンク
36 第2開閉バルブ
37 第1排出配管
38 第3開閉バルブ
39 第2排出配管
40 第2ポンプ
41 第4開閉バルブ
42 供給配管
43 第5開閉バルブ
44 エア放出管
S 異物分離装置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に沈澱した異物を除去する異物分離装置であって、
前記処理槽の底部に接続され、処理槽から排出される処理液を再度この処理槽に還流する循環配管と、
前記循環配管に、上流側を供給口、下流側を濾過液排出口として介設される遠心分離装置と、
前記遠心分離装置よりも上流側において前記循環配管に介設される第1ポンプおよび第1開閉バルブと、
第2開閉バルブが介設され、前記遠心分離装置の沈澱部に接続してこの沈澱部から処理液および異物を自重落下により排出可能な第1排出配管と、
前記第1排出配管の下流端に接続される排出タンクと、
第3開閉バルブが介設され、前記排出タンクに接続してこの排出タンクから処理液および異物を自重落下により排出可能な第2排出配管と、
を備え、
前記遠心分離装置の沈澱部から処理液および異物を排出するにあたり、前記第2開閉バルブが開状態、前記第3開閉バルブが閉状態となって処理液および異物が前記排出タンクに流下し、次いで前記第2開閉バルブが閉状態、前記第3開閉バルブが開状態となって処理液および異物が前記排出タンクから前記第2排出配管を介して排出される構成としたことを特徴とする異物分離装置。
【請求項2】
第2ポンプおよび第4開閉バルブが介設され、上流端が前記処理槽に接続し、下流端が前記第1排出配管における前記第2開閉バルブと前記排出タンクとの間に接続する供給配管と、
第5開閉バルブが介設され、上流端が前記第2排出配管における前記排出タンクと前記第3開閉バルブとの間に接続し、下流端が前記循環配管における前記遠心分離装置の下流側に接続するエア放出管と、
をさらに備え、
前記排出タンクからの処理液および異物の排出完了後、前記第2開閉バルブおよび前記第3開閉バルブが閉状態、前記第4開閉バルブおよび前記第5開閉バルブが開状態で、前記第2ポンプが作動して前記処理槽の処理液が前記供給配管を介して前記排出タンクに供給されることにより、この排出タンク内のエアが前記エア放出管を経由して前記循環配管の下流端から大気放出される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の異物分離装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−110525(P2011−110525A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271490(P2009−271490)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(501141769)株式会社industria (29)
【Fターム(参考)】