異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法
【課題】接合部材における接合部の形状を単純な形状とし、接合部材の形状や寸法などが限定されることなく、異種材料を接合または異種材料の接合部を摩擦攪拌処理することができる異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法では、端面が平面の摩擦攪拌用ツール40、および摩擦攪拌用ツール40の端面に設けられ、この端面と、異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台で構成されたテーパピン50を備える摩擦攪拌用部材を用いる。そして摩擦攪拌用部材を回転させ、異種材料の接合界面30の少なくとも一方の接合端縁に沿って摩擦攪拌処理を行う。
【解決手段】異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法では、端面が平面の摩擦攪拌用ツール40、および摩擦攪拌用ツール40の端面に設けられ、この端面と、異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台で構成されたテーパピン50を備える摩擦攪拌用部材を用いる。そして摩擦攪拌用部材を回転させ、異種材料の接合界面30の少なくとも一方の接合端縁に沿って摩擦攪拌処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種材料接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法、および異種材料を摩擦攪拌接合によって連結する異種材料の摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種材料の接合は、ろう付、拡散接合、摩擦圧接などにより広範囲に行われている。異種材料の接合部は、材料特性が不連続であるため、接合体の接合強度が低下することが多い。
【0003】
この接合強度の低下を改善するために、摩擦圧接法において、部材の熱膨張係数の相違に対応して部材の直径を変えて接合界面に発生する残留応力を緩和させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、アルミニウム材に凸状の銅材を熱間圧接して引張強度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、異種材接合縁の角度を適当な範囲に限定することで接合部の衝撃強度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、スカーフ継手の接合縁での応力特異性解析と最適化解析により、接合縁部の応力集中を緩和する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平6−47570号公報
【特許文献2】特開平4−143085号公報
【特許文献3】特開2003−53557号公報
【特許文献4】特開2004−255388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の接合方法において、異種材料の接合部の接合強度を向上させるために、接合部材の接合部を、種々の屈曲や湾曲した形状としているが、これらの複雑な形状の接合部材を接合するには次のような問題点があった。
【0005】
まず、複雑な形状の接合部材を加工するための加工工程が必要となる。また、複雑な形状の接合部材どうしを隙間やずれを生じることなく組み合わせるためには、高い加工精度が必要となる。そのため、接合部材の材質、形状、寸法などが限定されたり、加工費が高くなり、製造コストが増加する。
【0006】
また、複雑な形状の接合部材を接合する場合、例えばろう付では、ボイド欠陥の閉じ込めや、隙間が不均一となるために生じるろう回り不良などの欠陥が発生しやすい。拡散接合の場合には、接合部材の密着不良や、加圧軸方向に対する接合面角度が大きいために生じる加圧力不足による未接合部の発生などを生じる。ここで、熱間等方圧加圧処理(HIP処理)を採用することで拡散接合時のこれらの問題を解決することができるが、このHIP処理を採用した場合には、HIP処理のためのキャニングとその除去が必要となり、さらに処理する部材の大きさがHIP炉の容量に制限されるなどの欠点を有している。
【0007】
摩擦圧接法においては、一方の接合部材のみを所望の形状とし、これを他方の接合部材に食い込ませて接合することで、目的とする継手形状を得ることができる。しかしながらこの方法では、回転摩擦接合およびリニアフリクション接合ともに、接合部材の形状、寸法が限定されるといった欠点を有している。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接合部材における接合部の形状を単純な形状とし、接合部材の形状や寸法などが限定されることなく、異種材料を接合または異種材料の接合部を摩擦攪拌処理することができる異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、軟化温度が異なる異種材料の接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法であって、端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部を備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料の接合部の少なくとも一方の接合端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、接合部の接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、軟化温度が異なる異種材料を摩擦攪拌により接合する異種材料の摩擦攪拌接合方法であって、端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部とを備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料どうしを接触させた接合すべく少なくとも一方の界面端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、前記攪拌部を移動させ、前記異種材料を接合させるとともに、接合された接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料の摩擦攪拌接合方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法によれば、接合部材における接合部の形状を単純な形状とし、接合部材の形状や寸法などが限定されることなく、異種材料を接合または異種材料の接合部を摩擦攪拌処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1A〜図1Gは、本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0014】
ここでは、第1の接合材料10をチタン合金で形成し、第2の接合材料20を第1の接合材料10とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0015】
図1Aに示すように、第1の接合材料10の接合面11は、第1の接合材料10の表面12、13と垂直に交わるように形成されている。また、第2の接合材料20の接合面21も、第1の接合材料10の接合面11と同様に、第2の接合材料20の表面22、23と垂直に交わるように形成されている。
【0016】
まず、図1Bに示すように、第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを突き合わせ、これらの第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを拡散接合する。拡散接合は、第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを接触させる方向に所定の圧力を負荷し、この状態で、所定の温度の真空雰囲気中に所定の時間保持することで行う。なお、所定の温度は、第1の接合材料10および第2の接合材料20を構成する材料の融点以下の温度に設定される。ここで、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1は、90度である。なお、第1の接合材料10と第2の接合材料20の接合方法は、拡散接合に限られるものではなく、例えば、ろう付、HIP接合、摩擦攪拌接合など他の方法であってもよい。
【0017】
図1Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う摩擦攪拌用ツール40の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン50が設けられている。また、テーパピン50が形成された摩擦攪拌用ツール40の端面は、その端面に接触するテーパピン50の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22と接触するショルダ部41を構成している。なお、ショルダ部41は、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22と基本的には平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部41は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。また、テーパピン50の高さ、すなわち円錐台の高さは、使用する用途によって適宜に設定され、好ましくは、接合部材の厚さの5%以上とすることが好ましい。テーパピン50の高さを上記した範囲とすることが好ましいのは、異種材の接合界面30に発生する引張応力が大きくなるのは表層であるが、これ以下の極表層のみの処理では強度向上への寄与が小さいからである。
【0018】
また、図1Cに示すように、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置するようにテーパピン50を配置する。なお、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置するようにテーパピン50を配置してもよい。すなわち、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置すればよい。
【0019】
ここで、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置するようにテーパピン50を配置する場合には、テーパピン50の付け根部の第1の接合材料10側となる一方の端縁50aが、接合界面30のよりも第1の接合材料10側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン50を配置することが好ましい。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部60に相当する部分)へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン50の消耗を抑制することができる。
【0020】
一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置するようにテーパピン50を配置する場合には、テーパピン50の付け根部の第2の接合材料20側となる他方の端縁50bが、接合界面30のよりも第2の接合材料20側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン50を配置することが好ましい。
【0021】
上記したように、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置するのは、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部60に相当する部分)において、第1の接合材料10および第2の接合材料20のいずれか一方の接合材料が50体積%より多くなるようにするためである。
【0022】
なお、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置する際、摩擦拡散処理がなされる部分における、第1の接合材料10と第2の接合材料20との混合割合や接合された異種材料の使用環境などに基づいて、テーパピン50を配置する位置は適宜設定される。また、テーパピン50は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌する場合には、ねじ無しピンを使用することができる。
【0023】
また、図1Cおよび図1Dに示すように、テーパピン50の中心軸がアルミニウム合金からなる第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2は、120〜178度とすることが好ましい。一方、テーパピン50の中心軸がチタン合金からなる第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2は、92〜135度とすることが好ましい。なお、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2が、上記した範囲が好ましい理由は、後述する。
【0024】
そして、摩擦攪拌用ツール40を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させる。続いて、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール40を下方に移動し、テーパピン50を、接合界面30の一端側の端縁31を含む第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図1Dに示すように、接合界面30の一端側の端縁31に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール40を移動する。なお、テーパピン50は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール40、すなわちテーパピン50を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール40を上昇させ、テーパピン50を引き抜く。また、図1Dに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール40のショルダ部41は、所定の圧力で、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0025】
上記したようにテーパピン50が移動した部分には、図1Eに示すように、摩擦拡散処理部60が形成される。テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60は、第2の接合材料20を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料10を構成するチタン合金を含む合金で構成される。一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60は、第1の接合材料10を構成するチタン合金を主とした、第2の接合材料20を構成するアルミニウム合金を含む合金で構成される。
【0026】
また、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3は、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2とほぼ同じである。一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)は、180度からテーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を減じた値とほぼ同じである。
【0027】
ここで、上記したように、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3、および摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)は、テーパピン50の側面51とショルダ部41とのなす角度θ2によって決まる。
【0028】
ここで、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を前述した120〜178度にすることが好ましいのは、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を120〜178度にすることが好ましいからである。また、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を前述した92〜135度にすることが好ましいのは、摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましいからである。
【0029】
次に、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を92〜135度に、または摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましい理由について説明する。
【0030】
二次元異種材料の接合界面端部における平面問題に関しては応力特異性を決める特性方程式が既に導かれている(例えば、特開2004−255388、特開2003−53557参照)。この特性方程式を用いて図1Bに示す、第1の接合材料10のチタン合金と第2の接合材料20のアルミニウム合金との組合せによる接合部材の接合界面30の端部の応力特異性を解析したところ、接合界面30の両端縁31、32における自由縁の応力特異性は平板のこれらの両端縁31、32の2個所で生じていることが分かった。すなわち、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1が、0〜180度まで変化した場合の平板の両端縁31、32における応力特異性を解析した。ここでは、2個所の接合界面30の端部における応力特異性を示す指数を摂動法により計算し、応力特異性を求めた。
【0031】
上記解析の結果、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1が、45〜88度、120〜178度の範囲において、接合界面30の端部における自由縁の応力特異性の消失が認められた。そこで、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を92〜135度に、または摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましいとした。
【0032】
また、上記した角度θ3に基づいて、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を120〜178度または92〜135度にすることが好ましいとした。
【0033】
続いて、図1Fに示すように、上記した摩擦攪拌処理を、裏面側(第1の接合材料10の表面13側および第2の接合材料20の表面23側)となる接合界面30の端縁32側に対しても行う。なお、すでに摩擦攪拌処理を施した表面側のみ引張力が掛かるような環境で使用する場合には、図1Fに示す裏面側の摩擦攪拌処理を省略してもよい。
【0034】
そして、図1Gに示すように、両面に摩擦拡散処理部60を形成し、第1の接合材料10と第2の接合材料20との接合部に対して摩擦攪拌処理が完了する。
【0035】
なお、図1Gに示すように、接合界面30の中央部に、摩擦攪拌処理がなされていない部分があるが、この部分は事前に拡散接合等で接合されているので、機械的強度上の問題を生じることはない。
【0036】
ここでは、第1の接合材料10としてチタン合金を、第2の接合材料20としてアルミニウム合金を使用した一例を示した。チタン合金として、例えば、純チタン、α型合金のTi−2.5Cu合金、α+β型合金のTi−6Al−4V合金、β型合金のTi−15Mo−5Zr合金などが挙げられる。また、アルミニウム合金として、例えば、純アルミニウム、Al−Mg合金、Al−Si合金、Al−Cu合金、Al−Mg−Si合金、Al−Zn−Mg合金の展伸材、および鋳造材などが挙げられる。また、異種材料の組み合わせは、上記したチタン合金とアルミニウム合金に限られるものではなく、摩擦攪拌処理が可能な材料の組み合わせであればよい。例えば、組み合わせの一例として銅−タングステン、銅−モリブデン、銅−アルミニウム、銅−鉄鋼材料、チタン−鉄鋼材料などが挙げられる。なお、組み合わせる材料によって、前述した接合界面端部における応力特異性は異なるため、組み合わせる材料ごとに前述した応力特異性の解析を行い、応力特異性の消失範囲を算出し、それに基づいて、テーパピン50の形状等を決定する。
【0037】
上記したように、本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すでに接合された異種材料の接合部に対して、接合界面30の端縁31、32における自由縁を応力特異性が消失する角度に摩擦攪拌処理することで、接合部における欠陥等の発生を抑制し、接合強度の向上を図ることができる。これによって、接合端縁の強度の低下が抑制された接合部を有する異種材料の接合材料を得ることができる。また、接合材料の接合面の形状を平面等の簡単な形状とすることができるので、接合材料の加工が容易となり、さらには加工時間を短縮することができるので、製造コストを抑えることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、事前の接合を摩擦攪拌接合によって行い、その後接合界面30の自由縁を摩擦攪拌接合する方法について説明する。
【0039】
図2A〜図2Hは、本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。図3は、摩擦攪拌用ツールの他の形態の断面を模式的に示す図である。
【0040】
ここでは、接合材料として、図2Aに示すように、凸状の両縁に接合材料の厚さ方向に傾斜する傾斜部81を有する第1の接合材料80と、凹状の両縁に接合材料の厚さ方向に傾斜する傾斜部91を有する第2の接合材料90を用いた。第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1は、110〜125度である。なお、この第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1は、第1の実施の形態で説明した応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度としている。また、第1の接合材料80の接合面82の直線部84の長さは、第1の接合材料80の厚さの0.05〜0.5倍になっている。第1の接合材料80の厚さの0.05倍以上のときは、前述したテーパピン50の高さが接合部材の厚さの5%以上に相当し、0.5倍のときは、直線部84がなく上下の傾斜部81、91のみとなる。また、第2の接合材料90の接合面92の形状は、第1の接合材料80の接合面82の形状に対応して構成されている。
【0041】
また、ここでは、第1の接合材料80を銅で形成し、第2の接合材料90を第1の接合材料10とは軟化温度が異なるアルミニウムで形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0042】
まず、第1の接合材料80の接合面82と第2の接合材料90の接合面92とを突き合わせる。そして、攪拌部として機能する円柱状のストレートピン100およびショルダ部101を有する摩擦攪拌用ツール110を用い、摩擦攪拌接合の際、ストレートピン100の第1の接合材料80側の側面が、第1の接合材料80の接合面82の直線部84よりも0.1〜1.5mm程度、第1の接合材料80側に位置する位置に摩擦攪拌用ツール110を配置する。
【0043】
続いて、摩擦攪拌用ツール40を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール110を下方に移動し、ストレートピン100を、第2の接合材料90の表面93に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図2Bに示すように、接合界面120に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール110を移動する。なお、ストレートピン100は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール110、すなわちストレートピン100を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール110を上昇させ、ストレートピン100を引き抜く。また、図2Bに示すように、摩擦攪拌接合を行う際、摩擦攪拌用ツール110のショルダ部101は、所定の圧力で、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0044】
上記したようにストレートピン100が移動した部分は、図2Cに示すように、摩擦拡散処理部130が形成される。この摩擦拡散処理部130は、第2の接合材料90を構成するアルミニウムを主とした、第1の接合材料80を構成する銅を含む合金で構成される。このようにして、第1の接合材料80の接合面82の直線部84と、それに対応する第2の接合材料90の接合面92の直線部94は、摩擦攪拌接合される。なお、この状態では、両縁の傾斜部81、91はほとんど接合されていない。
【0045】
続いて、両縁の傾斜部81、91を摩擦攪拌接合する。図2Dに示すように、この両縁の傾斜部81、91の摩擦攪拌接合に使用される摩擦攪拌用ツール140の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン150が設けられている。また、摩擦攪拌用ツール140のテーパピン150が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン150の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌接合を行う際、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93と接触するショルダ部141を構成している。なお、ショルダ部141は、基本的には第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93と平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部141は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。
【0046】
また、図2Dに示すように、テーパピン150の側面151とショルダ部141とがなす角度θ2は、第1の接合材料80における傾斜部81と第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1と同じ110〜125度とすることが好ましい。また、テーパピン150の高さ、すなわち円錐台の高さは、使用する用途によって適宜に設定される。好ましくは、接合部材の厚さの5%以上とすることが好ましい。テーパピン150の高さを上記した範囲とすることが好ましいのは、異種材の接合界面120に発生する引張応力が大きくなるのは表層であるが、これ以下の極表層のみの処理では強度向上への寄与が小さいからである。
【0047】
また、テーパピン150の付け根部の第1の接合材料80側となる一方の端縁150aが、傾斜部81、91の接合界面120の端縁121よりも第1の接合材料80側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン150を配置することが好ましい。この範囲にテーパピン150を配置することが好ましいのは、0.1未満の場合(例えば、端縁150aが接合界面に位置する場合(0mmの場合))、接合不良が発生する可能性が高く、1.5mm程度までの配置で接合不良の発生はなくなり、1.5mmを超えると第2の接合材料90への第1の接合材料80の混合割合が大きくなるからである。
【0048】
続いて、摩擦攪拌用ツール110を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール110を下方に移動し、テーパピン150を、接合界面120の端縁121を含む第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図2Eに示すように、接合界面120の一端側の端縁121に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール110を移動する。なお、テーパピン150は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール110、すなわちテーパピン150を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール110を上昇させ、テーパピン150を引き抜く。また、図2Eに示すように、摩擦攪拌接合を行う際、摩擦攪拌用ツール110のショルダ部141は、所定の圧力で、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0049】
上記したようにテーパピン150が移動した部分は、図2Fに示すように、摩擦拡散処理部160が形成される。この摩擦拡散処理部160は、第2の接合材料90を構成するアルミニウムを主とした、第1の接合材料10を構成する銅を含む合金で構成される。このようにして、一端縁側の、第1の接合材料80の傾斜部81と、それに対応する第2の接合材料90の傾斜部91は、摩擦攪拌接合される。
【0050】
また、摩擦拡散処理部160における第1の接合材料80側の側面161と、接合材料の表面とによる第1の接合材料80側のなす角度θ3は、テーパピン150の側面151とショルダ部141とがなす角度θ2とほぼ同じである。
【0051】
続いて、図2Gに示すように、上記した摩擦攪拌用ツール140を用いて、上記した方法と同じ方法で、裏面側となる他端縁側の傾斜部81、91を摩擦攪拌接合する。
【0052】
そして、図2Hに示すように、両面に摩擦拡散処理部160を形成し、第1の接合材料10と第2の接合材料20とが摩擦攪拌接合される。
【0053】
ここでは、第1の接合材料80として銅を、第2の接合材料90としてアルミニウムを使用した一例を示した。また、異種材料の組み合わせは、この銅とアルミニウムに限られるものではなく、摩擦攪拌処理が可能な材料の組み合わせであればよい。例えば、組み合わせの一例として、銅−チタン、銅−タングステン、銅−モリブデン、銅−鉄鋼材料、チタン−鉄鋼材料などが挙げられる。なお、組み合わせる材料によって、前述した接合界面端部における応力特異性は異なるため、組み合わせる材料ごとに前述した応力特異性の解析を行い、応力特異性の消失範囲を算出し、その算出結果に基づいて、第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1が決定される。また、この第1の接合材料80の接合面82の形状に対応して第2の接合材料90の接合面92の形状が決定される。また、第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1に対応させてテーパピン150の形状等を決定する。
【0054】
ここで、上記した摩擦攪拌用ツール110のピンにおいて、先端部を円柱状のストレート形状とし、摩擦攪拌用ツール110側、すなわちピンの根元部側を図2Dに示す円錐台状のテーパ形状としてもよい。この複合形状にすることで、図2B〜図2Eに示した摩擦攪拌処理を同時に行うことができる。すなわち摩擦拡散処理部130および摩擦拡散処理部160を同時に形成することができる。
【0055】
また、他端縁側の傾斜部をなくす場合は、突き合わせ部の傾斜を上部のみとし、直線部を下部まで伸ばすとともに、摩擦攪拌用ツール110のピンのストレート形状部を、接合材料の裏面側となる他端縁まで延長して構成してもよい。また、このように他端縁側に傾斜部を設けない場合は、両接合材料の厚さが異なっていてもよい。この場合、摩擦攪拌用ツールを挿入する表面側を同一の高さとし、薄い材料の裏側には厚さの差分のスペーサ等を挿入すればよい。
【0056】
さらに、図3に示すように、接合材料の両面側に、摩擦攪拌用ツール110を設け、それぞれの摩擦攪拌用ツール110の平面からなる端部に、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン150を設け、さらに、テーパピン150間に円柱状のストレートピン100を設けてそれぞれを一体的に構成してもよい。また、摩擦攪拌用ツール110のテーパピン150が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン150の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料80の表面および第2の接合材料90の表面と接触するショルダ部141を構成している。なお、ショルダ部141は、第1の接合材料80の表面および第2の接合材料90の表面と平行な面となるように構成されている。このように、摩擦攪拌用ツールおよびピンを、いわゆるボビンツール形状とすることで、接合材料の両面を同時に摩擦攪拌処理することができる。また、ボビンツール形状とすることで、接合材料の片側から摩擦攪拌処理した場合に発生しやすい欠陥の発生を抑えることができる。
【0057】
上記したように、本発明の第2の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すべての接合界面を摩擦攪拌接合によって接合しているので、容易にかつ信頼性のある接合を行うことができる。また、傾斜部81、91等の接合界面の形状に対応したピンを使用して摩擦攪拌接合しているので、摩擦拡散処理部に混合する異種材料を最小限とすることができる。これによって、接合部に金属間化合物が生成されるのを防止することができ、接合強度の向上を図ることができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、接合処理と接合端縁の傾斜付与処理を同時に行う場合について説明する。
【0059】
図4A〜図4Dは、本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0060】
ここでは、第1の接合材料180をチタン合金で形成し、第2の接合材料190を第1の接合材料180とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、ここでは双方の接合材料の厚さは同じであるとしたが、厚さが異なっていてもよい。厚さが異なる場合は、摩擦攪拌用ツールを挿入する表面側を同一面とし、厚さの薄い材料の裏側には厚さの相違分に当たるスペーサ等を挿入し、薄い材料側の厚さに合わせた摩擦攪拌用ツールを用いればよい。また、チタン合金およびアルミニウム合金の具体例としては、第1の実施の形態で例示したものが挙げられる。
【0061】
図4Aに示すように、第1の接合材料180の接合面181は、第1の接合材料180の表面182、183と垂直に交わるように形成されている。また、第2の接合材料190の接合面191も、第1の接合材料180の接合面181と同様に、第2の接合材料190の表面192、193と垂直に交わるように形成されている。
【0062】
まず、図4Bに示すように、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを突き合わせる。なお、この際、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを接触させる方向に所定の圧力が負荷される。
【0063】
また、図4Bに示すように、摩擦攪拌処理を行う摩擦攪拌用ツール200の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン210が設けられている。また、摩擦攪拌用ツール200のテーパピン210が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン210の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192と接触するショルダ部201を構成している。なお、ショルダ部201は、基本的には第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192と平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部201は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。また、テーパピン210の高さ、すなわち円錐台の高さは、接合部材の厚さとほぼ同じに構成されている。
【0064】
また、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2は、前述したように、応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度に基づいて設定されている。ここでは、前述したように、応力特異性の解析結果に基づいて、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2を120〜135度の範囲で設定する。
【0065】
また、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置するようにテーパピン210を配置する。なお、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置するようにテーパピン210を配置してもよい。すなわち、接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が、第1の接合材料180側および第2の接合材料190側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン210を配置すればよい。
【0066】
例えば、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置するようにテーパピン210を配置する場合には、図4Bに示すように、テーパピン210の先端部の第1の接合材料180側となる一方の端縁210aが、接合界面220上または接合界面220よりも第1の接合材料180側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部230に相当する部分)へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン210の消耗を抑制することができる。また、テーパピン210は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するため、ねじ無しピンを使用することができる。
【0067】
一方、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置するようにテーパピン210を配置する場合には、テーパピン210の先端部の第2の接合材料190側となる他方の端縁210bが、接合界面220上または接合界面220よりも第2の接合材料190側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。
【0068】
上記したように、接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が、第1の接合材料180側および第2の接合材料190側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置するのは、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部230に相当する部分)において、第1の接合材料180および第2の接合材料190のいずれか一方の接合材料が50体積%より多くなるようにするためである。
【0069】
そして、摩擦攪拌用ツール200を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させる。続いて、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール200を下方に移動し、テーパピン210を、接合界面220の一端側の端縁221を含む第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図4Cに示すように、接合界面220の一端側の端縁221に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール200を移動する。なお、テーパピン210は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール200、すなわちテーパピン210を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール200を上昇させ、テーパピン210を引き抜く。また、図4Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール200のショルダ部201は、所定の圧力で、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0070】
上記したようにテーパピン210が移動した部分は、図4Dに示すように、摩擦拡散処理部230が形成される。この摩擦拡散処理部230は、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置する状態でテーパピン210を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料180を構成するチタン合金を含む合金で構成される。一方、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置する状態でテーパピン210を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部230は、第1の接合材料180を構成するチタン合金を主とした、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を含む合金で構成される。
【0071】
このように、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、接合処理と接合端縁の傾斜付与処理を同時に行うことができる。
【0072】
ここでは、第1の接合材料180の接合面181と第1の接合材料180の表面182、183とが垂直に交わり、かつ第2の接合材料190の接合面191と第2の接合材料190の表面192、193とが垂直に交わる、接合材料を使用した一例を示したが、上記した摩擦拡散処理は、これらの構成以外の接合材料の接合にも適用することができる。
【0073】
図5A〜図5Dは、他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0074】
図5Aに示すように、第1の接合材料180の接合面181は、第1の接合材料180の表面182となす角度θ1を有して構成されている。このなす角度θ1は、第1の実施の形態で説明した応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度としている。また、第2の接合材料190の接合面191は、第1の接合材料180の接合面181に対応する傾斜面で構成されている。なお、ここでは、上述した異種材料の組み合わせと同様に、第1の接合材料180をチタン合金で形成し、第2の接合材料190を第1の接合材料180とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0075】
まず、図5Bに示すように、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを突き合わせる。なお、この際、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを接触させる方向に所定の圧力が負荷される。
【0076】
摩擦攪拌接合に使用される摩擦攪拌用ツールおよびピンは、上記した摩擦攪拌用ツール200およびテーパピン210と同様の構成を備え、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2は、上記した、第1の接合材料180の接合面181と第1の接合材料180の表面182とのなす角度θ1と同じ角度で構成されている。
【0077】
また、図5Bに示すように、テーパピン210の付け根部の第1の接合材料180側となる一方の端縁210cが、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220の端縁221よりも第1の接合材料180側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。この範囲に配置することが好ましいのは、0.1未満の場合(例えば、端縁210cが接合界面に位置する場合(0mmの場合))、接合不良が発生する可能性が高く、1.5mm程度までの配置で接合不良の発生はなくなり、1.5mmを超えると第2の接合材料190への第1の接合材料180の混合割合が大きくなるからである。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理部230へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン210の消耗を抑制することができる。また、テーパピン210は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するため、ねじ無しピンを使用することができる。
【0078】
続いて、摩擦攪拌用ツール200を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール200を下方に移動し、テーパピン210を、接合界面220の一端側の端縁221を含む第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図5Cに示すように、接合界面220の一端側の端縁221に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール200を移動する。なお、テーパピン210は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール200、すなわちテーパピン210を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール200を上昇させ、テーパピン210を引き抜く。また、図5Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール200のショルダ部201は、所定の圧力で、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0079】
上記したようにテーパピン210が移動した部分は、図5Dに示すように、摩擦拡散処理部230が形成される。この摩擦拡散処理部230は、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料180を構成するチタン合金を含む合金で構成される。
【0080】
このように、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、厚さ方向に亘って接合処理を同時に行うことができる。
【0081】
上記したように、本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すべての接合界面を摩擦攪拌接合によって接合しているので、容易にかつ信頼性のある接合を行うことができる。また、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、接合処理や接合端縁の傾斜付与処理を同時に行うことができる。
【0082】
また、接合材料の接合部を、ストレートの突合せ構成などの単純な構成とすることができるので、接合材料の接合を容易に行うことができ、接合材料の製作時間や製作コストを削減することができる。
【0083】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、摩擦攪拌用ツールを移動させて異種材料を接合する一例を示したが、摩擦攪拌用ツールを移動せずに、異種材料を移動してもよい。この場合においても上記した摩擦攪拌用ツールを移動させる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1B】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1C】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1D】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1E】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1F】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1G】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2A】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2B】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2C】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2D】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2E】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2F】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2G】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2H】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図3】摩擦攪拌用ツールの他の形態の断面を模式的に示す図。
【図4A】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4B】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4C】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4D】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5A】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5B】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5C】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5D】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0085】
10…第1の接合材料、11、21…接合面、12、13、22、23…表面、20…第2の接合材料、30…接合界面、31、32、50a、50b…端縁、40…摩擦攪拌用ツール、41…ショルダ部、50…テーパピン、51、61、62…側面、60…摩擦拡散処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種材料接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法、および異種材料を摩擦攪拌接合によって連結する異種材料の摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種材料の接合は、ろう付、拡散接合、摩擦圧接などにより広範囲に行われている。異種材料の接合部は、材料特性が不連続であるため、接合体の接合強度が低下することが多い。
【0003】
この接合強度の低下を改善するために、摩擦圧接法において、部材の熱膨張係数の相違に対応して部材の直径を変えて接合界面に発生する残留応力を緩和させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、アルミニウム材に凸状の銅材を熱間圧接して引張強度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、異種材接合縁の角度を適当な範囲に限定することで接合部の衝撃強度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、スカーフ継手の接合縁での応力特異性解析と最適化解析により、接合縁部の応力集中を緩和する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平6−47570号公報
【特許文献2】特開平4−143085号公報
【特許文献3】特開2003−53557号公報
【特許文献4】特開2004−255388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の接合方法において、異種材料の接合部の接合強度を向上させるために、接合部材の接合部を、種々の屈曲や湾曲した形状としているが、これらの複雑な形状の接合部材を接合するには次のような問題点があった。
【0005】
まず、複雑な形状の接合部材を加工するための加工工程が必要となる。また、複雑な形状の接合部材どうしを隙間やずれを生じることなく組み合わせるためには、高い加工精度が必要となる。そのため、接合部材の材質、形状、寸法などが限定されたり、加工費が高くなり、製造コストが増加する。
【0006】
また、複雑な形状の接合部材を接合する場合、例えばろう付では、ボイド欠陥の閉じ込めや、隙間が不均一となるために生じるろう回り不良などの欠陥が発生しやすい。拡散接合の場合には、接合部材の密着不良や、加圧軸方向に対する接合面角度が大きいために生じる加圧力不足による未接合部の発生などを生じる。ここで、熱間等方圧加圧処理(HIP処理)を採用することで拡散接合時のこれらの問題を解決することができるが、このHIP処理を採用した場合には、HIP処理のためのキャニングとその除去が必要となり、さらに処理する部材の大きさがHIP炉の容量に制限されるなどの欠点を有している。
【0007】
摩擦圧接法においては、一方の接合部材のみを所望の形状とし、これを他方の接合部材に食い込ませて接合することで、目的とする継手形状を得ることができる。しかしながらこの方法では、回転摩擦接合およびリニアフリクション接合ともに、接合部材の形状、寸法が限定されるといった欠点を有している。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接合部材における接合部の形状を単純な形状とし、接合部材の形状や寸法などが限定されることなく、異種材料を接合または異種材料の接合部を摩擦攪拌処理することができる異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、軟化温度が異なる異種材料の接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法であって、端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部を備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料の接合部の少なくとも一方の接合端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、接合部の接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、軟化温度が異なる異種材料を摩擦攪拌により接合する異種材料の摩擦攪拌接合方法であって、端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部とを備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料どうしを接触させた接合すべく少なくとも一方の界面端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、前記攪拌部を移動させ、前記異種材料を接合させるとともに、接合された接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料の摩擦攪拌接合方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法および異種材料の摩擦攪拌接合方法によれば、接合部材における接合部の形状を単純な形状とし、接合部材の形状や寸法などが限定されることなく、異種材料を接合または異種材料の接合部を摩擦攪拌処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1A〜図1Gは、本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0014】
ここでは、第1の接合材料10をチタン合金で形成し、第2の接合材料20を第1の接合材料10とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0015】
図1Aに示すように、第1の接合材料10の接合面11は、第1の接合材料10の表面12、13と垂直に交わるように形成されている。また、第2の接合材料20の接合面21も、第1の接合材料10の接合面11と同様に、第2の接合材料20の表面22、23と垂直に交わるように形成されている。
【0016】
まず、図1Bに示すように、第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを突き合わせ、これらの第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを拡散接合する。拡散接合は、第1の接合材料10の接合面11と第2の接合材料20の接合面21とを接触させる方向に所定の圧力を負荷し、この状態で、所定の温度の真空雰囲気中に所定の時間保持することで行う。なお、所定の温度は、第1の接合材料10および第2の接合材料20を構成する材料の融点以下の温度に設定される。ここで、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1は、90度である。なお、第1の接合材料10と第2の接合材料20の接合方法は、拡散接合に限られるものではなく、例えば、ろう付、HIP接合、摩擦攪拌接合など他の方法であってもよい。
【0017】
図1Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う摩擦攪拌用ツール40の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン50が設けられている。また、テーパピン50が形成された摩擦攪拌用ツール40の端面は、その端面に接触するテーパピン50の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22と接触するショルダ部41を構成している。なお、ショルダ部41は、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22と基本的には平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部41は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。また、テーパピン50の高さ、すなわち円錐台の高さは、使用する用途によって適宜に設定され、好ましくは、接合部材の厚さの5%以上とすることが好ましい。テーパピン50の高さを上記した範囲とすることが好ましいのは、異種材の接合界面30に発生する引張応力が大きくなるのは表層であるが、これ以下の極表層のみの処理では強度向上への寄与が小さいからである。
【0018】
また、図1Cに示すように、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置するようにテーパピン50を配置する。なお、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置するようにテーパピン50を配置してもよい。すなわち、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置すればよい。
【0019】
ここで、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置するようにテーパピン50を配置する場合には、テーパピン50の付け根部の第1の接合材料10側となる一方の端縁50aが、接合界面30のよりも第1の接合材料10側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン50を配置することが好ましい。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部60に相当する部分)へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン50の消耗を抑制することができる。
【0020】
一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置するようにテーパピン50を配置する場合には、テーパピン50の付け根部の第2の接合材料20側となる他方の端縁50bが、接合界面30のよりも第2の接合材料20側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン50を配置することが好ましい。
【0021】
上記したように、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置するのは、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部60に相当する部分)において、第1の接合材料10および第2の接合材料20のいずれか一方の接合材料が50体積%より多くなるようにするためである。
【0022】
なお、接合界面30のよりも、テーパピン50の中心軸が、第1の接合材料10側および第2の接合材料20側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置する際、摩擦拡散処理がなされる部分における、第1の接合材料10と第2の接合材料20との混合割合や接合された異種材料の使用環境などに基づいて、テーパピン50を配置する位置は適宜設定される。また、テーパピン50は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌する場合には、ねじ無しピンを使用することができる。
【0023】
また、図1Cおよび図1Dに示すように、テーパピン50の中心軸がアルミニウム合金からなる第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2は、120〜178度とすることが好ましい。一方、テーパピン50の中心軸がチタン合金からなる第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2は、92〜135度とすることが好ましい。なお、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2が、上記した範囲が好ましい理由は、後述する。
【0024】
そして、摩擦攪拌用ツール40を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させる。続いて、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール40を下方に移動し、テーパピン50を、接合界面30の一端側の端縁31を含む第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図1Dに示すように、接合界面30の一端側の端縁31に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール40を移動する。なお、テーパピン50は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール40、すなわちテーパピン50を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール40を上昇させ、テーパピン50を引き抜く。また、図1Dに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール40のショルダ部41は、所定の圧力で、第1の接合材料10の表面12および第2の接合材料20の表面22に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0025】
上記したようにテーパピン50が移動した部分には、図1Eに示すように、摩擦拡散処理部60が形成される。テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60は、第2の接合材料20を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料10を構成するチタン合金を含む合金で構成される。一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60は、第1の接合材料10を構成するチタン合金を主とした、第2の接合材料20を構成するアルミニウム合金を含む合金で構成される。
【0026】
また、テーパピン50の中心軸が第2の接合材料20側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3は、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2とほぼ同じである。一方、テーパピン50の中心軸が第1の接合材料10側に位置する状態でテーパピン50を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)は、180度からテーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を減じた値とほぼ同じである。
【0027】
ここで、上記したように、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3、および摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)は、テーパピン50の側面51とショルダ部41とのなす角度θ2によって決まる。
【0028】
ここで、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を前述した120〜178度にすることが好ましいのは、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を120〜178度にすることが好ましいからである。また、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を前述した92〜135度にすることが好ましいのは、摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましいからである。
【0029】
次に、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を92〜135度に、または摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましい理由について説明する。
【0030】
二次元異種材料の接合界面端部における平面問題に関しては応力特異性を決める特性方程式が既に導かれている(例えば、特開2004−255388、特開2003−53557参照)。この特性方程式を用いて図1Bに示す、第1の接合材料10のチタン合金と第2の接合材料20のアルミニウム合金との組合せによる接合部材の接合界面30の端部の応力特異性を解析したところ、接合界面30の両端縁31、32における自由縁の応力特異性は平板のこれらの両端縁31、32の2個所で生じていることが分かった。すなわち、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1が、0〜180度まで変化した場合の平板の両端縁31、32における応力特異性を解析した。ここでは、2個所の接合界面30の端部における応力特異性を示す指数を摂動法により計算し、応力特異性を求めた。
【0031】
上記解析の結果、接合界面30と、第1の接合材料10の表面12とのなす角度θ1が、45〜88度、120〜178度の範囲において、接合界面30の端部における自由縁の応力特異性の消失が認められた。そこで、摩擦拡散処理部60における第1の接合材料10側の側面61と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度θ3を92〜135度に、または摩擦拡散処理部60における第2の接合材料20側の側面62と、接合材料の表面とによる第1の接合材料10側のなす角度(図示しない)を45〜88度にすることが好ましいとした。
【0032】
また、上記した角度θ3に基づいて、テーパピン50の側面51とショルダ部41とがなす角度θ2を120〜178度または92〜135度にすることが好ましいとした。
【0033】
続いて、図1Fに示すように、上記した摩擦攪拌処理を、裏面側(第1の接合材料10の表面13側および第2の接合材料20の表面23側)となる接合界面30の端縁32側に対しても行う。なお、すでに摩擦攪拌処理を施した表面側のみ引張力が掛かるような環境で使用する場合には、図1Fに示す裏面側の摩擦攪拌処理を省略してもよい。
【0034】
そして、図1Gに示すように、両面に摩擦拡散処理部60を形成し、第1の接合材料10と第2の接合材料20との接合部に対して摩擦攪拌処理が完了する。
【0035】
なお、図1Gに示すように、接合界面30の中央部に、摩擦攪拌処理がなされていない部分があるが、この部分は事前に拡散接合等で接合されているので、機械的強度上の問題を生じることはない。
【0036】
ここでは、第1の接合材料10としてチタン合金を、第2の接合材料20としてアルミニウム合金を使用した一例を示した。チタン合金として、例えば、純チタン、α型合金のTi−2.5Cu合金、α+β型合金のTi−6Al−4V合金、β型合金のTi−15Mo−5Zr合金などが挙げられる。また、アルミニウム合金として、例えば、純アルミニウム、Al−Mg合金、Al−Si合金、Al−Cu合金、Al−Mg−Si合金、Al−Zn−Mg合金の展伸材、および鋳造材などが挙げられる。また、異種材料の組み合わせは、上記したチタン合金とアルミニウム合金に限られるものではなく、摩擦攪拌処理が可能な材料の組み合わせであればよい。例えば、組み合わせの一例として銅−タングステン、銅−モリブデン、銅−アルミニウム、銅−鉄鋼材料、チタン−鉄鋼材料などが挙げられる。なお、組み合わせる材料によって、前述した接合界面端部における応力特異性は異なるため、組み合わせる材料ごとに前述した応力特異性の解析を行い、応力特異性の消失範囲を算出し、それに基づいて、テーパピン50の形状等を決定する。
【0037】
上記したように、本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すでに接合された異種材料の接合部に対して、接合界面30の端縁31、32における自由縁を応力特異性が消失する角度に摩擦攪拌処理することで、接合部における欠陥等の発生を抑制し、接合強度の向上を図ることができる。これによって、接合端縁の強度の低下が抑制された接合部を有する異種材料の接合材料を得ることができる。また、接合材料の接合面の形状を平面等の簡単な形状とすることができるので、接合材料の加工が容易となり、さらには加工時間を短縮することができるので、製造コストを抑えることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、事前の接合を摩擦攪拌接合によって行い、その後接合界面30の自由縁を摩擦攪拌接合する方法について説明する。
【0039】
図2A〜図2Hは、本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。図3は、摩擦攪拌用ツールの他の形態の断面を模式的に示す図である。
【0040】
ここでは、接合材料として、図2Aに示すように、凸状の両縁に接合材料の厚さ方向に傾斜する傾斜部81を有する第1の接合材料80と、凹状の両縁に接合材料の厚さ方向に傾斜する傾斜部91を有する第2の接合材料90を用いた。第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1は、110〜125度である。なお、この第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1は、第1の実施の形態で説明した応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度としている。また、第1の接合材料80の接合面82の直線部84の長さは、第1の接合材料80の厚さの0.05〜0.5倍になっている。第1の接合材料80の厚さの0.05倍以上のときは、前述したテーパピン50の高さが接合部材の厚さの5%以上に相当し、0.5倍のときは、直線部84がなく上下の傾斜部81、91のみとなる。また、第2の接合材料90の接合面92の形状は、第1の接合材料80の接合面82の形状に対応して構成されている。
【0041】
また、ここでは、第1の接合材料80を銅で形成し、第2の接合材料90を第1の接合材料10とは軟化温度が異なるアルミニウムで形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0042】
まず、第1の接合材料80の接合面82と第2の接合材料90の接合面92とを突き合わせる。そして、攪拌部として機能する円柱状のストレートピン100およびショルダ部101を有する摩擦攪拌用ツール110を用い、摩擦攪拌接合の際、ストレートピン100の第1の接合材料80側の側面が、第1の接合材料80の接合面82の直線部84よりも0.1〜1.5mm程度、第1の接合材料80側に位置する位置に摩擦攪拌用ツール110を配置する。
【0043】
続いて、摩擦攪拌用ツール40を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール110を下方に移動し、ストレートピン100を、第2の接合材料90の表面93に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図2Bに示すように、接合界面120に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール110を移動する。なお、ストレートピン100は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール110、すなわちストレートピン100を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール110を上昇させ、ストレートピン100を引き抜く。また、図2Bに示すように、摩擦攪拌接合を行う際、摩擦攪拌用ツール110のショルダ部101は、所定の圧力で、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0044】
上記したようにストレートピン100が移動した部分は、図2Cに示すように、摩擦拡散処理部130が形成される。この摩擦拡散処理部130は、第2の接合材料90を構成するアルミニウムを主とした、第1の接合材料80を構成する銅を含む合金で構成される。このようにして、第1の接合材料80の接合面82の直線部84と、それに対応する第2の接合材料90の接合面92の直線部94は、摩擦攪拌接合される。なお、この状態では、両縁の傾斜部81、91はほとんど接合されていない。
【0045】
続いて、両縁の傾斜部81、91を摩擦攪拌接合する。図2Dに示すように、この両縁の傾斜部81、91の摩擦攪拌接合に使用される摩擦攪拌用ツール140の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン150が設けられている。また、摩擦攪拌用ツール140のテーパピン150が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン150の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌接合を行う際、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93と接触するショルダ部141を構成している。なお、ショルダ部141は、基本的には第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93と平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部141は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。
【0046】
また、図2Dに示すように、テーパピン150の側面151とショルダ部141とがなす角度θ2は、第1の接合材料80における傾斜部81と第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1と同じ110〜125度とすることが好ましい。また、テーパピン150の高さ、すなわち円錐台の高さは、使用する用途によって適宜に設定される。好ましくは、接合部材の厚さの5%以上とすることが好ましい。テーパピン150の高さを上記した範囲とすることが好ましいのは、異種材の接合界面120に発生する引張応力が大きくなるのは表層であるが、これ以下の極表層のみの処理では強度向上への寄与が小さいからである。
【0047】
また、テーパピン150の付け根部の第1の接合材料80側となる一方の端縁150aが、傾斜部81、91の接合界面120の端縁121よりも第1の接合材料80側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン150を配置することが好ましい。この範囲にテーパピン150を配置することが好ましいのは、0.1未満の場合(例えば、端縁150aが接合界面に位置する場合(0mmの場合))、接合不良が発生する可能性が高く、1.5mm程度までの配置で接合不良の発生はなくなり、1.5mmを超えると第2の接合材料90への第1の接合材料80の混合割合が大きくなるからである。
【0048】
続いて、摩擦攪拌用ツール110を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール110を下方に移動し、テーパピン150を、接合界面120の端縁121を含む第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図2Eに示すように、接合界面120の一端側の端縁121に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール110を移動する。なお、テーパピン150は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール110、すなわちテーパピン150を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール110を上昇させ、テーパピン150を引き抜く。また、図2Eに示すように、摩擦攪拌接合を行う際、摩擦攪拌用ツール110のショルダ部141は、所定の圧力で、第1の接合材料80の表面83および第2の接合材料90の表面93に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0049】
上記したようにテーパピン150が移動した部分は、図2Fに示すように、摩擦拡散処理部160が形成される。この摩擦拡散処理部160は、第2の接合材料90を構成するアルミニウムを主とした、第1の接合材料10を構成する銅を含む合金で構成される。このようにして、一端縁側の、第1の接合材料80の傾斜部81と、それに対応する第2の接合材料90の傾斜部91は、摩擦攪拌接合される。
【0050】
また、摩擦拡散処理部160における第1の接合材料80側の側面161と、接合材料の表面とによる第1の接合材料80側のなす角度θ3は、テーパピン150の側面151とショルダ部141とがなす角度θ2とほぼ同じである。
【0051】
続いて、図2Gに示すように、上記した摩擦攪拌用ツール140を用いて、上記した方法と同じ方法で、裏面側となる他端縁側の傾斜部81、91を摩擦攪拌接合する。
【0052】
そして、図2Hに示すように、両面に摩擦拡散処理部160を形成し、第1の接合材料10と第2の接合材料20とが摩擦攪拌接合される。
【0053】
ここでは、第1の接合材料80として銅を、第2の接合材料90としてアルミニウムを使用した一例を示した。また、異種材料の組み合わせは、この銅とアルミニウムに限られるものではなく、摩擦攪拌処理が可能な材料の組み合わせであればよい。例えば、組み合わせの一例として、銅−チタン、銅−タングステン、銅−モリブデン、銅−鉄鋼材料、チタン−鉄鋼材料などが挙げられる。なお、組み合わせる材料によって、前述した接合界面端部における応力特異性は異なるため、組み合わせる材料ごとに前述した応力特異性の解析を行い、応力特異性の消失範囲を算出し、その算出結果に基づいて、第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1が決定される。また、この第1の接合材料80の接合面82の形状に対応して第2の接合材料90の接合面92の形状が決定される。また、第1の接合材料80における傾斜部81と、第1の接合材料80の表面83とのなす角度θ1に対応させてテーパピン150の形状等を決定する。
【0054】
ここで、上記した摩擦攪拌用ツール110のピンにおいて、先端部を円柱状のストレート形状とし、摩擦攪拌用ツール110側、すなわちピンの根元部側を図2Dに示す円錐台状のテーパ形状としてもよい。この複合形状にすることで、図2B〜図2Eに示した摩擦攪拌処理を同時に行うことができる。すなわち摩擦拡散処理部130および摩擦拡散処理部160を同時に形成することができる。
【0055】
また、他端縁側の傾斜部をなくす場合は、突き合わせ部の傾斜を上部のみとし、直線部を下部まで伸ばすとともに、摩擦攪拌用ツール110のピンのストレート形状部を、接合材料の裏面側となる他端縁まで延長して構成してもよい。また、このように他端縁側に傾斜部を設けない場合は、両接合材料の厚さが異なっていてもよい。この場合、摩擦攪拌用ツールを挿入する表面側を同一の高さとし、薄い材料の裏側には厚さの差分のスペーサ等を挿入すればよい。
【0056】
さらに、図3に示すように、接合材料の両面側に、摩擦攪拌用ツール110を設け、それぞれの摩擦攪拌用ツール110の平面からなる端部に、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン150を設け、さらに、テーパピン150間に円柱状のストレートピン100を設けてそれぞれを一体的に構成してもよい。また、摩擦攪拌用ツール110のテーパピン150が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン150の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料80の表面および第2の接合材料90の表面と接触するショルダ部141を構成している。なお、ショルダ部141は、第1の接合材料80の表面および第2の接合材料90の表面と平行な面となるように構成されている。このように、摩擦攪拌用ツールおよびピンを、いわゆるボビンツール形状とすることで、接合材料の両面を同時に摩擦攪拌処理することができる。また、ボビンツール形状とすることで、接合材料の片側から摩擦攪拌処理した場合に発生しやすい欠陥の発生を抑えることができる。
【0057】
上記したように、本発明の第2の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すべての接合界面を摩擦攪拌接合によって接合しているので、容易にかつ信頼性のある接合を行うことができる。また、傾斜部81、91等の接合界面の形状に対応したピンを使用して摩擦攪拌接合しているので、摩擦拡散処理部に混合する異種材料を最小限とすることができる。これによって、接合部に金属間化合物が生成されるのを防止することができ、接合強度の向上を図ることができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、接合処理と接合端縁の傾斜付与処理を同時に行う場合について説明する。
【0059】
図4A〜図4Dは、本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0060】
ここでは、第1の接合材料180をチタン合金で形成し、第2の接合材料190を第1の接合材料180とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、ここでは双方の接合材料の厚さは同じであるとしたが、厚さが異なっていてもよい。厚さが異なる場合は、摩擦攪拌用ツールを挿入する表面側を同一面とし、厚さの薄い材料の裏側には厚さの相違分に当たるスペーサ等を挿入し、薄い材料側の厚さに合わせた摩擦攪拌用ツールを用いればよい。また、チタン合金およびアルミニウム合金の具体例としては、第1の実施の形態で例示したものが挙げられる。
【0061】
図4Aに示すように、第1の接合材料180の接合面181は、第1の接合材料180の表面182、183と垂直に交わるように形成されている。また、第2の接合材料190の接合面191も、第1の接合材料180の接合面181と同様に、第2の接合材料190の表面192、193と垂直に交わるように形成されている。
【0062】
まず、図4Bに示すように、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを突き合わせる。なお、この際、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを接触させる方向に所定の圧力が負荷される。
【0063】
また、図4Bに示すように、摩擦攪拌処理を行う摩擦攪拌用ツール200の平面からなる端部には、攪拌部として機能する、先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状のテーパピン210が設けられている。また、摩擦攪拌用ツール200のテーパピン210が形成された側の端面は、その端面に接触するテーパピン210の端面よりも面積が大きく構成され、摩擦攪拌処理を行う際、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192と接触するショルダ部201を構成している。なお、ショルダ部201は、基本的には第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192と平行な面となるように構成されているが、これに限られるものではない。ショルダ部201は、例えば、通常の摩擦攪拌接合用ツールと同様に周縁からツール中心部に向かって凹部を形成するように傾斜する形状であっても、周縁からツール中心部に向かって渦巻き状の突起部を複数備える渦巻き状の凹凸構造であってもよい。また、テーパピン210の高さ、すなわち円錐台の高さは、接合部材の厚さとほぼ同じに構成されている。
【0064】
また、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2は、前述したように、応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度に基づいて設定されている。ここでは、前述したように、応力特異性の解析結果に基づいて、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2を120〜135度の範囲で設定する。
【0065】
また、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置するようにテーパピン210を配置する。なお、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置するようにテーパピン210を配置してもよい。すなわち、接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が、第1の接合材料180側および第2の接合材料190側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン210を配置すればよい。
【0066】
例えば、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置するようにテーパピン210を配置する場合には、図4Bに示すように、テーパピン210の先端部の第1の接合材料180側となる一方の端縁210aが、接合界面220上または接合界面220よりも第1の接合材料180側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部230に相当する部分)へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン210の消耗を抑制することができる。また、テーパピン210は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するため、ねじ無しピンを使用することができる。
【0067】
一方、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置するようにテーパピン210を配置する場合には、テーパピン210の先端部の第2の接合材料190側となる他方の端縁210bが、接合界面220上または接合界面220よりも第2の接合材料190側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。
【0068】
上記したように、接合界面220のよりも、テーパピン210の中心軸が、第1の接合材料180側および第2の接合材料190側のいずれか一方の側に位置するようにテーパピン50を配置するのは、摩擦拡散処理がなされる部分(後述する摩擦拡散処理部230に相当する部分)において、第1の接合材料180および第2の接合材料190のいずれか一方の接合材料が50体積%より多くなるようにするためである。
【0069】
そして、摩擦攪拌用ツール200を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させる。続いて、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール200を下方に移動し、テーパピン210を、接合界面220の一端側の端縁221を含む第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図4Cに示すように、接合界面220の一端側の端縁221に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール200を移動する。なお、テーパピン210は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール200、すなわちテーパピン210を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール200を上昇させ、テーパピン210を引き抜く。また、図4Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール200のショルダ部201は、所定の圧力で、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0070】
上記したようにテーパピン210が移動した部分は、図4Dに示すように、摩擦拡散処理部230が形成される。この摩擦拡散処理部230は、テーパピン210の中心軸が第2の接合材料190側に位置する状態でテーパピン210を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料180を構成するチタン合金を含む合金で構成される。一方、テーパピン210の中心軸が第1の接合材料180側に位置する状態でテーパピン210を接合部材に接触させて摩擦攪拌処理を行う場合、摩擦拡散処理部230は、第1の接合材料180を構成するチタン合金を主とした、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を含む合金で構成される。
【0071】
このように、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、接合処理と接合端縁の傾斜付与処理を同時に行うことができる。
【0072】
ここでは、第1の接合材料180の接合面181と第1の接合材料180の表面182、183とが垂直に交わり、かつ第2の接合材料190の接合面191と第2の接合材料190の表面192、193とが垂直に交わる、接合材料を使用した一例を示したが、上記した摩擦拡散処理は、これらの構成以外の接合材料の接合にも適用することができる。
【0073】
図5A〜図5Dは、他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図である。
【0074】
図5Aに示すように、第1の接合材料180の接合面181は、第1の接合材料180の表面182となす角度θ1を有して構成されている。このなす角度θ1は、第1の実施の形態で説明した応力特異性の解析による、接合界面の端部における自由縁を応力特異性が消失する角度としている。また、第2の接合材料190の接合面191は、第1の接合材料180の接合面181に対応する傾斜面で構成されている。なお、ここでは、上述した異種材料の組み合わせと同様に、第1の接合材料180をチタン合金で形成し、第2の接合材料190を第1の接合材料180とは軟化温度が異なるアルミニウム合金で形成した一例を示す。なお、双方の接合材料の厚さは同じである。
【0075】
まず、図5Bに示すように、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを突き合わせる。なお、この際、第1の接合材料180の接合面181と第2の接合材料190の接合面191とを接触させる方向に所定の圧力が負荷される。
【0076】
摩擦攪拌接合に使用される摩擦攪拌用ツールおよびピンは、上記した摩擦攪拌用ツール200およびテーパピン210と同様の構成を備え、テーパピン210の側面211とショルダ部201とがなす角度θ2は、上記した、第1の接合材料180の接合面181と第1の接合材料180の表面182とのなす角度θ1と同じ角度で構成されている。
【0077】
また、図5Bに示すように、テーパピン210の付け根部の第1の接合材料180側となる一方の端縁210cが、第1の接合材料180と第2の接合材料190の接合界面220の端縁221よりも第1の接合材料180側に0.1〜1.5mm程度に位置するようにテーパピン210を配置することが好ましい。この範囲に配置することが好ましいのは、0.1未満の場合(例えば、端縁210cが接合界面に位置する場合(0mmの場合))、接合不良が発生する可能性が高く、1.5mm程度までの配置で接合不良の発生はなくなり、1.5mmを超えると第2の接合材料190への第1の接合材料180の混合割合が大きくなるからである。この場合には、主としてアルミニウム合金を摩擦攪拌するので、摩擦拡散処理部230へのチタン合金の混合を最小量に抑えることができ、接合部の機械的特性が向上する。また、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するので、摩擦攪拌が容易で、テーパピン210の消耗を抑制することができる。また、テーパピン210は、摩擦攪拌接合に一般的に用いられるねじ付のものでもよいが、軟質のアルミニウム合金を主に摩擦攪拌するため、ねじ無しピンを使用することができる。
【0078】
続いて、摩擦攪拌用ツール200を所定の回転速度(例えば、1000〜5000rpm)で回転させ、上記配置された位置から摩擦攪拌用ツール200を下方に移動し、テーパピン210を、接合界面220の一端側の端縁221を含む第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に接触させる。この状態で摩擦攪拌が良好に行われる温度に達するまで数秒から数十秒間保持した後、図5Cに示すように、接合界面220の一端側の端縁221に沿って所定の移動速度(例えば、300〜2000mm/min)で摩擦攪拌用ツール200を移動する。なお、テーパピン210は、所定の圧力で接合材料側へ押し付けられている。摩擦攪拌用ツール200、すなわちテーパピン210を処理を行う終端まで移動させた後、摩擦攪拌用ツール200を上昇させ、テーパピン210を引き抜く。また、図5Cに示すように、摩擦攪拌処理を行う際、摩擦攪拌用ツール200のショルダ部201は、所定の圧力で、第1の接合材料180の表面182および第2の接合材料190の表面192に押し付けられているため、塑性流動した材料が外部に流出することはない。
【0079】
上記したようにテーパピン210が移動した部分は、図5Dに示すように、摩擦拡散処理部230が形成される。この摩擦拡散処理部230は、第2の接合材料190を構成するアルミニウム合金を主とした、第1の接合材料180を構成するチタン合金を含む合金で構成される。
【0080】
このように、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、厚さ方向に亘って接合処理を同時に行うことができる。
【0081】
上記したように、本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法によれば、すべての接合界面を摩擦攪拌接合によって接合しているので、容易にかつ信頼性のある接合を行うことができる。また、接合部材の厚さ方向に亘って接合界面220を含むように摩擦拡散処理を行うことができるので、接合処理や接合端縁の傾斜付与処理を同時に行うことができる。
【0082】
また、接合材料の接合部を、ストレートの突合せ構成などの単純な構成とすることができるので、接合材料の接合を容易に行うことができ、接合材料の製作時間や製作コストを削減することができる。
【0083】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、摩擦攪拌用ツールを移動させて異種材料を接合する一例を示したが、摩擦攪拌用ツールを移動せずに、異種材料を移動してもよい。この場合においても上記した摩擦攪拌用ツールを移動させる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1B】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1C】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1D】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1E】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1F】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図1G】本発明の第1の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2A】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2B】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2C】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2D】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2E】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2F】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2G】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図2H】本発明の第2の実施の形態の異種材料の摩擦攪拌接合方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図3】摩擦攪拌用ツールの他の形態の断面を模式的に示す図。
【図4A】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4B】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4C】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図4D】本発明の第3の実施の形態の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5A】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5B】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5C】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【図5D】他の構成の異種材料の接合部の摩擦攪拌処理方法を説明するための、異種材料の接合部の断面を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0085】
10…第1の接合材料、11、21…接合面、12、13、22、23…表面、20…第2の接合材料、30…接合界面、31、32、50a、50b…端縁、40…摩擦攪拌用ツール、41…ショルダ部、50…テーパピン、51、61、62…側面、60…摩擦拡散処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化温度が異なる異種材料の接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法であって、
端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部を備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料の接合部の少なくとも一方の接合端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、接合部の接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法。
【請求項2】
前記攪拌部を相対的に移動する際、前記攪拌部の中心軸が、前記接合端縁よりも、いずれか一方の異種材料側に位置することを特徴とする請求項1記載の異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法。
【請求項3】
軟化温度が異なる異種材料を摩擦攪拌により接合する異種材料の摩擦攪拌接合方法であって、
端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部とを備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料どうしを接触させた接合すべく少なくとも一方の界面端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、前記攪拌部を移動させ、前記異種材料を接合させるとともに、接合された接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
前記攪拌部を相対的に移動する際、前記攪拌部の中心軸が、前記界面端縁よりも、いずれか一方の異種材料側に位置することを特徴とする請求項3記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
前記異種材料の接触面が、ストレートの突合わせ形状であることを特徴とする請求項3または4記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
前記異種材料の接触面の端縁が、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度に応じて前記異種材料の厚さ方向に傾斜する傾斜面で構成された突合わせ形状であることを特徴とする請求項3または4記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項1】
軟化温度が異なる異種材料の接合部を摩擦攪拌により処理する異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法であって、
端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部を備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料の接合部の少なくとも一方の接合端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、接合部の接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法。
【請求項2】
前記攪拌部を相対的に移動する際、前記攪拌部の中心軸が、前記接合端縁よりも、いずれか一方の異種材料側に位置することを特徴とする請求項1記載の異種材料接合部の摩擦攪拌処理方法。
【請求項3】
軟化温度が異なる異種材料を摩擦攪拌により接合する異種材料の摩擦攪拌接合方法であって、
端面が平面の摩擦攪拌用ツール、および前記摩擦攪拌用ツールの端面に設けられ、前記端面と、前記異種材料の接合界面端部の応力特異性解析から得られる応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度を有して先端に向かって徐々に断面積が減少する円錐台状に構成された攪拌部とを備える摩擦攪拌用部材を回転させ、前記異種材料どうしを接触させた接合すべく少なくとも一方の界面端縁に沿って前記異種材料を塑性流動させながら前記異種材料に対して前記攪拌部を相対的に移動させ、前記攪拌部を移動させ、前記異種材料を接合させるとともに、接合された接合端縁における接合面と、前記異種材料の表面とのなす角度を、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度とすることを特徴とする異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
前記攪拌部を相対的に移動する際、前記攪拌部の中心軸が、前記界面端縁よりも、いずれか一方の異種材料側に位置することを特徴とする請求項3記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
前記異種材料の接触面が、ストレートの突合わせ形状であることを特徴とする請求項3または4記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
前記異種材料の接触面の端縁が、前記応力特異性消失範囲に基づいて定められた所定のなす角度に応じて前記異種材料の厚さ方向に傾斜する傾斜面で構成された突合わせ形状であることを特徴とする請求項3または4記載の異種材料の摩擦攪拌接合方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公開番号】特開2010−36230(P2010−36230A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203470(P2008−203470)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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