説明

疎水層を配した炭酸ガスインジケーター、及びこれを備えた包装体

【課題】 pH指示薬を含有するインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す指示部を有する炭酸ガスインジケーターを得る。
【解決手段】 炭酸ガスインジケーターに、少なくとも2層以上の炭酸ガス検知層、及び少なくとも該炭酸ガス検知層間に介在し、水に対する溶解度が0ないし10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%である樹脂を含有する疎水層を含む多層指示部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、及び薬品等を長期間保存するためのガス置換包装中の置換されたガス雰囲気が保持されていることを検出するためのインキ組成物を用いた炭酸ガスインジケーター、及びこれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガスを含む置換ガスを封入したガス置換包装のピンホール、及びシール不良の発生によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る種々の炭酸ガスインジケーターが上市されている。
【0003】
この炭酸ガスインジケーターは、pH指示薬を含み、周囲雰囲気中の炭酸ガスが十分に存在すると、炭酸ガスインジケーター中の水に炭酸ガスが溶けて弱い酸性を示し、pH値が低くなり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。
【0004】
例えば外装体内に、内容物と共に、炭酸ガスインジケーター及び炭酸ガスを封入した包装体の場合、外装体にピンホール等が発生して炭酸ガスが漏れると、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気中の炭酸ガス濃度が低下して、pH値が上がり、これに伴ってpH指示薬の色調が変化する。このように、炭酸ガスインジケーターを用いると、このpH指示薬の色調の変化を利用して、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の炭酸ガス濃度の変化を視覚的に検知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような炭酸ガスインジケーターとして、バインダー樹脂とpH指示薬を含む炭酸ガスインジケーター用インキを用い、支持体上にpH指示部を印刷したものがある。このようなpH指示部は、包装体に用いられる種々の外装体などにも印刷できるので、見やすく、便利である。pH指示部の鮮明な色調変化を保持するには水分の存在が不可欠であるので、バインダー樹脂としては、水に溶解または分散するものが使用されている。
【0006】
しかしながら、これらのインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーターは、その周囲雰囲気の相対湿度が高くなると、pH指示部に過剰の水分が供給されて炭酸ガスインジケーター用インキが再溶解し、その外観が損なわれるという問題があった。
【0007】
外装体内の相対湿度は、内容物や外部の温湿度、内部空間容積によって変わってくる。特に内容物によるところが大きい。食品や、飲料、医薬品は、それぞれ下記式で表されるような固有の水分活性を持っている。
【0008】
相対湿度(%RH)=水分活性×100
この水分活性が、外装体内の相対湿度が大きく変わる原因となっている。例えばコーヒー、のり、お茶、米菓、ビスケット、チョコレートは0.1ないし0.5、米、キャラメル、煮干し、医療用アンプルは0.5ないし0.7、みそ、生菓子、団子、パン粉、チーズ、ちくわ、餅、医療用薬液バッグ等は0.7ないし1を示す。水分量が高いものほど、相対湿度が高くなり、炭酸ガスインジケーターの外観を損なう原因となっていた。
【0009】
また、水分量が高い内容物例えば医療用薬液バッグの場合、この医療用薬液バッグのフィルムすなわち一次容器の厚さを薄くしただけで、医療用薬液バッグと外装体間の空間の相対湿度が上昇し、炭酸ガスインジケーターに過剰の水分が取り込まれて、指示部の炭酸ガスインジケーター用インキが再溶解し、外観を損なうという問題があった。
【特許文献1】国際公開第01/044385号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、pH指示薬を含有するインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す指示部を有する炭酸ガスインジケーターを提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、pH指示薬を含有するインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す指示部を有する炭酸ガスインジケーターを備えた包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の炭酸ガスインジケータは、
支持体と、
支持体上に設けられ、pH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された少なくとも2層以上の炭酸ガス検知層、及び少なくとも該炭酸ガス検知層間に介在し、水に対する溶解度が0ないし10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%である樹脂を含有する疎水層を含む多層指示部とを具備する炭酸ガス検知用インジケーターであって、
該炭酸ガス検知層の合計の厚さは、0.8μm以上であり、かつ疎水層の厚さは、隣接する炭酸ガス検知層の合計の厚さより小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明の包装体は、
支持体と、
支持体上に設けられ、pH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された少なくとも2層以上の炭酸ガス検知層、及び少なくとも該炭酸ガス検知層間に介在し、水に対する溶解度が0ないし10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%である樹脂を含有する疎水層を含む多層指示部とを具備する炭酸ガスインジケーターを、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配したことを特徴とする包装体であって、
該炭酸ガス検知層の合計の厚さは、0.8μm以上であり、かつ疎水層の厚さは、隣接する炭酸ガス検知層の合計の厚さより小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明を用いると、pH指示薬を含有するインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーターの指示部が、周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の炭酸ガス検知用インジケーターは、支持体と、支持体の上に設けられた多層指示部とを有する。
【0016】
多層指示部は、少なくとも2層以上の炭酸ガス検知層が疎水層を介して積層された多層構成を含む。
【0017】
炭酸ガス検知層は、pH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成され、その合計の厚さは、0.8μm以上であり、好ましくは0.8μm以上ないし3μmの厚さである。
【0018】
この厚さが0.8μm未満であると、指示部の色が薄く、色調の変化を目視で識別しにくい。一方、炭酸ガス検知層の合計の厚さの上限は、実用的に約3μm程度であることが好ましい。これ以上の厚さの炭酸ガス検知層を形成するには、炭酸ガス検知用インキによる印刷層を少なくとも4層重ねることが必要となり、コスト高を招く傾向がある。
【0019】
また、疎水層は、水に対する溶解度が0ないし10重量%であり、保水率が1ないし15重量%である樹脂を含有し、その厚さは、各炭酸ガス検知層の合計の厚さよりも小さい。
【0020】
周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合に、炭酸ガス検知用インジケーターの指示部に外観不良が生じる原因の1つは、指示部に取り込まれた水分が、核となる部分の周囲に凝集してできる水滴である。炭酸ガス検知層が連続した単層構成であると、指示部に取り込まれ、炭酸ガス検知層に吸収された水分は、炭酸ガス検知層内を容易に移動してこのような水滴を生じ、この水滴が指示部に含まれる炭酸ガスインジケーター用インキ成分を再溶解することにより、指示部の外観不良が起こる。
【0021】
通常、炭酸ガス検知層は、指示部の色調の変化を容易に視認し得る厚さに形成され得る。本発明に用いられる多層指示部では、炭酸ガス検知層を2以上に分けて積層しているので、炭酸ガス検知層1層当たりの厚さを通常よりも薄くすることができる。これにより、炭酸ガス検知層1層当たりに吸収される水分の量が少なくなり、水滴を生ずるには、その量が不足する。さらに、各炭酸ガス検知層は、疎水層によって分割されているので、1層の炭酸ガス検知層中の水分は、隣接する炭酸ガス検知層へ移動することができない。このように、指示部の周囲雰囲気の相対湿度が上昇しても、炭酸ガス検知層における水滴の発生を妨げることにより、炭酸ガス検知層を形成している炭酸ガス検知用インキの再溶解を防止することができる。従って、本発明を用いると、指示部の周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、多層指示部は、外観不良を発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す。
【0022】
pH指示薬としては、炭酸ガスの影響で色調変化を伴うもの、またはアルカリ性物質の濃度変化に応じたpHの変動に対して色調変化を伴うものであればどのようなものでも使用できる。
【0023】
下記表1に好ましいpH指示薬及びその呈色範囲を示す。
【表1】

【0024】
特に好ましいpH指示薬としては、安全性及び呈色反応の変化がわかりやすいことなどからメタクレゾールパープルがあげられる。
【0025】
本発明のインキ組成物には、好ましくは、0より大きく5重量%以下のアルカリ性物質を添加することができる。5重量%を超えるアルカリ性物質を添加しても、その効果は同等である。
【0026】
本発明に用いられるアルカリ性物質は、例えばトリエタノールアミン、ポリエチレンイミンなどの有機アルカリ、及び水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ及びアンモニア等から選択することができる。
【0027】
溶媒としては、本発明のインキ組成物の各成分を均一にかつ安定に溶解または分散することのできるものが選択され、エーテル類、芳香族炭化水素、エステル類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。特に、アルコール類が好ましい。また、色素、アルカリ性物質等を溶解させてインキ組成物とし、且つインジケーターとしての良好な発色を得るためには、水が含まれることが好ましい。アルコール類等の溶剤と水の割合としては、水1重量部に対して、溶剤が2重量部であることが好ましい。水の添加量が1重量部未満であると、十分な発色が得られず色調の変化が判別不可となる傾向がある。また、水が1重量部を超えると、高湿度条件下で外観不良が発生する傾向がある。
【0028】
バインダー樹脂は、pH指示薬等の構成成分を支持体上に固着する結合剤として使用するもので、印刷層形成後に水を吸って膨潤したり、水に溶解したりするような樹脂は不適であり、水を保持するような樹脂を用いる。このような結合剤としては、例えばポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニル部分ケン化物等があげられる。
【0029】
本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物は、さらに多価アルコールを含むことが好ましい。多価アルコールは保湿剤として作用し、多層指示部となるインキ層中に水等の溶媒を保持して炭酸ガスの吸収を容易にせしめ、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。
【0030】
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。より好ましくはグリセリンを使用することができる。
【0031】
多価アルコールの添加量は、インキ組成物に1重量%ないし10重量%が好ましい。多価アルコールの割合が1重量%未満であると、多層指示部の発色スピードが不十分となる傾向がある。一方で、多価アルコールの割合が10重量%を超えても、多層指示部の発色スピードは変わらない。
【0032】
本発明に使用される疎水層は、水に対する溶解度が10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%である。保水率が15重量%を超えると、高湿度条件下において外観不良が発生する。また、保水率が1重量%を下回ると、十分な発色が得られなくなる。
【0033】
また、疎水層は、この疎水層を通して、炭酸ガス検知層の色調の変化を視認し得る程度の透明性を有することが好ましい。
【0034】
さらに、疎水層の厚さは、0.5μmないし5μmであることが好ましい。
【0035】
本発明において、水に対する溶解度は、一定量の水に対して樹脂を溶かしていき、溶けなくなったときの水溶液中に含有する樹脂の重量%とする。
【0036】
また、保水率は、樹脂製の支持体単体と、樹脂製支持体に炭酸ガス検査用インキを用いた多層指示部を印刷したものとを試料とし、室温25℃、相対湿度65%の環境下に1日保存した後、示差熱熱重量同時測定装置(TG/GTA)により、各試料に含まれる水分の重量を測定し、両者の差をとった後、支持体重量と水分重量差の合計重量に対する水分重量差とする。
【0037】
疎水層に使用される樹脂としては、例えばポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルケタール、部分ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、及びポリエステル等の疎水性を有する樹脂が挙げられる。
【0038】
また、ポリビニルアルコールとしては、吸湿による皮膜強度の低下が少ないけん化度の高いものが好適である。
【0039】
疎水性樹脂には、必要に応じて吸湿性顔料を添加することができる。
【0040】
吸湿性顔料としては、硫酸バリウム、酸化チタン等の通常の色顔料の他、硫酸マグネシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、焼明礬、酸化アルミニウム、及びシリカゲル等が挙げられる。
【0041】
上記表1に示すpH指示薬は、指示薬そのものの色調の変化で判断するだけでなく、他の色の色素との混色による色調の変化で判断することができる。
このような目的で、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物には、着色剤を添加することができる。
【0042】
着色剤を添加して、炭酸ガス検知用インキ組成物の色と混色させることにより、例えば指示薬そのものの色調の変化が視覚的に判断しにくいものであるとき、あるいはデザイン上所望の色調でないとき、視覚的に判断しやすい色調、あるいはデザイン上所望の色調に変化させることができる。
【0043】
また、同様の目的で、白以外の着色された支持体を適用し、その上に、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いた多層指示部を設けることができる。
【0044】
さらに、同様の目的で、疎水層に、透明性を損なわない程度の着色を行うことができる。
【0045】
着色剤としては、例えば食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、及び天然系コチニール色素等の赤色着色剤、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、及び天然系紅花黄色素等の黄色着色剤、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、及び食用青色2号(インジゴカルミン)等の青色着色剤があげられる。
【0046】
インキ組成物に着色剤を添加する以外に、支持体として着色されたものを用いることにより、同様の色調の変化が得られる。
【0047】
また、この他インキの塗工性向上のため、炭酸ガス検知用インキの発色に影響を与えない範囲で各種薬剤例えば界面活性剤、ニス、コンパウンド、乾燥抑制剤、及びドライヤー等を添加することも可能である。
【0048】
支持体へのインキの塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
本発明に用いられる多層指示部は、インキ組成物の塗布量が比較的多く、一定であることが望まれることから、印刷法を用いることが好ましい。
【0049】
本発明に用いられる多層指示部を外装体に印刷し、本発明のインジケーターを有する包装体を作成することができる。
【0050】
例えば支持体に多層指示部を連続して印刷し、ヒートシール及び切断することにより包装袋を加工する場合には、支持体が巻き取り供給され得ることから、グラビア印刷やフレキソ印刷が適している。
【0051】
支持体としては、本発明のインキ組成物と反応せず、しかも試薬の呈色を阻害しないものが選択され得る。このような支持体として、例えば紙、合成紙、不繊布または合成樹脂フィルムを用いることができる。
【0052】
合成樹脂フィルムとしては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セロハン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のフィルム、及びこれらフィルムにシリカ、あるいはアルミナ蒸着層を設けた透明蒸着フィルム等を、目的、使用形態に合わせて用いることができる。
【0053】
また、多層指示部は、文字、絵柄等のパターンを有するインキ層からなることが好ましい。
【0054】
特に多層指示部として文字を選択した場合、商品名等を印刷したラベルと兼用することもできる。
【0055】
本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターの使用形態としては、(1)食品、飲料、薬品等の内容物を収納するガスバリアー性材料からなる容器内を炭酸ガス雰囲気とし、容器内に炭酸ガスインジケーターを配置する方法、(2)内容物を収容するガス透過性材料からなる容器をガスバリアー性材料からなる外装体で包装し、該外装体内を炭酸ガス雰囲気にすると共に外装体内に炭酸ガスインジケーターを配置する方法を例示することができる。
【0056】
より具体的には、上記(1)の場合、炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、例えば紙、合成紙、不織紙、合成樹脂フィルム、または前記材料の少なくとも2種を組み合わせた積層体からなる支持体に印刷した炭酸ガスインジケーターを単に容器内に入れる方法、容器内面に炭酸ガスインジケーターを接着する方法、または容器を構成する材料を支持体とすることによって容器内面に上述のインキ組成物を直接印刷する方法がある。
【0057】
一方、上記(2)の場合、前述の炭酸ガスインジケーターの配置は、容器の外面、容器と外装体の間の空間部、及び外装体の内面とすることができる。容器の外面または外装体の内面に炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、該インジケーターをこれらの面に接着する方法、あるいは本発明に用いられるインキ組成物を直接これらの面に印刷する方法がある。
【0058】
なお、上記(1)におけるガスバリアー性材料からなる容器の内面、上記(2)におけるガス透過性容器の外面又はガスバリアー性材料からなる外装体の内面にインキ組成物を直接印刷する場合は、フィルムにインキ組成物を印刷後、印刷面をガス透過性フィルムで被うことも可能であり、被覆した場合は内容物又は容器との接触がなく、衛生的であり且つ多層指示部の摩耗も防ぐことができるので好適である。
【0059】
本発明の炭酸ガスインジケーターが適用され得る食品、飲料、及び薬品としては、酸素と接触して変質するおそれのあるもの、あるいは炭酸ガスの放出によって、品質の劣化や薬効が失われるおそれのものなどがある。
【0060】
食品、飲料としては、例えばお茶、コーヒー、チーズ、ハム、味噌、及び生肉などをあげることができる。
【0061】
薬品の例としては、例えば重炭酸塩含有薬液、アミノ酸輸液剤、脂肪乳剤、抗生物質製剤等をあげることができる。特に、重炭酸塩含有薬液は、炭酸ガスを放出して薬効を失う性質を有する薬品である。このため、重炭酸塩含有薬液を収納した容器を外装体内に炭酸ガスと共に包装することにより、炭酸ガスの放出を防止しながら保存することができる。
【0062】
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0063】
図1は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図、図2はその断面図、図3は、図2の一部を拡大した図である。
【0064】
図1及び図2に示すように、このインジケーター10は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体1の両面に形成された多層指示部2、その周囲を炭酸ガス透過性を有する例えば多孔性のフィルム3で包囲した構成を有する。図3は、図2の多層指示部2の部分を拡大した図である。図示するように、多層指示部2は、図3に示すように、例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた第1の炭酸ガス検知層35、第1の炭酸ガス検知層35上に、水に対する溶解度が10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%であるポリビニルアセタール樹脂を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた疎水層36、更に疎水層36に同様の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いてスクリーン印刷により塗布して形成された第2の炭酸ガス検知層37で構成される。
【0065】
このインジケーターの多層指示部2は、通常の空気中では、紫色を呈している。なお、図1及び図2では、支持体1の両面に多層指示部2を設けたが、片面のみに多層指示部を設けた構成も適用し得る。また、このインジケーターは、通気性フィルム3で包囲されているが、通気性フィルム3を用いないで、そのまま使用することができる。
【0066】
図4は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図を示す。
【0067】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター70は、片面のみに多層指示部を設けた例であって、支持体として例えばポリエステル樹脂にシリカを蒸着したフィルムからなる炭酸ガス不透過性を有する層71と、この炭酸ガス不透過性を有する層71上に例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物と水に対する溶解度が10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%であるポリビニルアセタール樹脂による疎水層を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた多層指示部2と、炭酸ガス不透過性を有する層71上に設けられた多層指示部2を封止するように形成された、例えばポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性を有する層73とから構成される。
【0068】
ここで、炭酸ガス不透過性とは、室温約23℃、相対湿度約40%で、50(ml/m・24時間)以下の炭酸ガス透過率を有することをいう。
【0069】
また、炭酸ガス透過性とは、室温約23℃、相対湿度約40%RHで、500(ml/m・24時間)以上の炭酸ガス透過率を有することをいう。
【0070】
この炭酸ガスインジケーター70は、炭酸ガス透過性を有する層73側からのみ炭酸ガスを透過して検知し、支持体側からは炭酸ガスを透過しない構成を有する。例えば支持体として包装体の外装体等を使用し、炭酸ガス不透過性を有する層71を外側に、炭酸ガス透過性を有する層73が内側になるように包装体を作成し、この炭酸ガスインジケーター70が包装体内部で機能するように、包装体を構成することができる。このようにして得られた包装体は、雰囲気の変化に対する応答性に優れ、かつ炭酸ガスの保持性が良好であるため内容物の保存性に優れる。
【0071】
炭酸ガスを透過すべき層の炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)より低いと、炭酸ガス雰囲気変化へ対する応答が遅くなり、判定を誤るおそれがある。
【0072】
また、例えば包装体を構成する場合、炭酸ガスを不透過にすべき層の炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)より高いと、包装体内の炭酸ガス雰囲気を保持することができない。
【0073】
本発明に使用可能な炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)以下の樹脂フィルムとしては、ポリエステル(PET)フィルムやナイロン(Ny)フィルム等の合成樹脂からなる基材フィルム上にシリカやアルミナ等を蒸着した透明蒸着フィルム、及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)フィルム等があげられる。
【0074】
これらのフィルムは単独であるいは積層して使用することができる。また、使用目的に応じた強度や耐熱性等を得るために他の樹脂フィルムを積層することができる。例えば、突き刺し強度を得るために、ナイロンフィルム等を積層することができる。
【0075】
本発明に用いる炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)以上であるフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン類があげられる。なお、低密度ポリエチレンや未延伸ポリプロピレンはヒートシール性を有しており、包装袋内層として最適である。
【0076】
多層指示部が印刷された支持体と、炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)以下のフィルムと、炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)以上のフィルム、及びその他のフィルムを貼り合わせる方法としては、公知の方式が利用可能であり、例えば接着剤を用いたドライラミネーションが利用可能である。
【0077】
図5は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例の構成を表す断面図を示す。
【0078】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター50は、例えばアルミナ蒸着層(図示せず)を有するナイロンフィルム55と、これに接着剤層56を介して積層された、アルミナ蒸着層(図示せず)を有するポリエステルフィルム57とからなる支持体1と、支持体1上に形成されたアンカーコート層51と、多層指示部2が印刷されたアンカーコート層51上に、この多層指示部2を封止するように形成されたオーバーコート層52とから構成される。このインジケーターの多層指示部2は、通常の空気中では、紫色を呈している。
【0079】
指示部中のpH指示薬は、溶媒例えば水やアルコール化合物などの親水性溶媒を介して反応する。このため指示部は、このような溶媒を含み得る。このため、指示部は、水がたまりやすく、外観不良を起こしやすい。また、指示部は、外的衝撃に弱く、この指示部及びその周辺で剥離、破断し易い。
【0080】
本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例では、多層指示部2をアンカーコート層51とオーバーコート層52で挟み込むことにより、多層指示部2を構成する炭酸ガス検知用インキ組成物を保護し、外観不良、剥離、及び破断を防止することができる。さらに、耐水性、耐光性、耐熱性を含めた炭酸ガスインジケーターの長期安定性が良好となる。
【0081】
このアンカーコート層51としては、非水溶性であり、支持体1とその上に形成される指示部2との密着性が良好な材料を、また、オーバーコート層52としては、炭酸ガス透過性、指示部2との密着性、及び任意に多層指示部2上にさらに設けられ得る例えば接着剤層または他の樹脂層との密着性が良好な材料を好ましく使用することができる。
【0082】
このような材料として、例えばウレタン系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0083】
なお、ここでは、支持体1の片面のみに多層指示部を設けたが、支持体1の両面に多層指示部2を設けた構成も適用し得る。また、支持体1の片面のみに多層指示部を設ける場合には、必要に応じて、支持体として前述の炭酸ガス不透過性を有する層を、また、オーバーコート層上に炭酸ガス透過性を有する層を各々適用することができる。
【0084】
また、図6は、炭酸ガスインジケーターの第4の例の構成を表す断面図である。
【0085】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター60は、上述の炭酸ガスインジケーター50の改良例であって、アンカーコート層51の代わりに、支持体1上に第1のアンカーコート層53と第2のアンカーコート層54の積層構造が使用されていること以外は、図5に示す炭酸ガスインジケーターと同様の構造を有する。好ましくは第1のアンカーコート層53の周縁部とオーバーコート層52とが密着されることにより多層指示部2及び第2のアンカーコート層54が2つの層52,53内に封入されている。
【0086】
第1のアンカーコート層としては、支持体1と密着性の良い非水溶性材料例えばウレタン系樹脂等が好ましく使用される。また、第2のアンカーコート層としては、第1のアンカーコート層及び多層指示部2との密着性が良好であり、さらに好ましくは親水基を有し、水を含む多層指示部2に対し保水効果を有する材料例えばブチラール系樹脂等が好ましく使用される。
【0087】
オーバーコート層としては例えばウレタン系樹脂等を用いることができる。
【0088】
アンカーコート層及びオーバーコート層の塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0089】
この炭酸ガスインジケーター60では、アンカーコート層を2層に分けて形成しているので、第1のアンカーコート層53により、支持体1と多層指示部2との密着性を強固にする作用、第2のアンカーコート層54により、少なくとも多層指示部2中のpH指示薬が機能するために十分な量の水分を確保する作用が得られる。従って、炭酸ガスインジケーター60は、図5に示す炭酸ガスインジケーター50のように、アンカーコート層を1層だけ形成するよりも、より強固な密着性と、多層指示部に対するより効果的な保水性とが実現できる。さらに、耐光性、耐熱性を含めた炭酸ガスインジケーターの長期安定性がさらに良好となる。
【0090】
なお、ここでは、支持体1の片面のみに多層指示部を設けたが、支持体1の両面に多層指示部2を設けた構成も適用し得る。また、支持体1の片面のみに多層指示部を設ける場合には、必要に応じて、支持体として前述の炭酸ガス不透過性を有する層を、また、オーバーコート層上に炭酸ガス透過性を有する層を各々適用することができる。
【0091】
図7に、本発明にかかるガス置換包装体の第1の例を表す図を示す。図示するように、このガス置換包装体20は、例えば薬液、飲料等の内容物を収納したポリエチレン製の容器11と、炭酸ガスインジケーター10とを、置換ガスとして窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13を用いて、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12に封入した構成を有する。
【0092】
この包装体中のインジケーターの多層指示部2は、封入時には黄色を呈している。しかしながら、包装体にピンホールあるいはシール不良等が発生し、置換ガスが漏れ出して代わりに周囲の大気が混入すると、包装体内の炭酸ガス濃度が低下する。このため、インジケーター10周囲のガス雰囲気が変化して、多層指示部2の色調が黄色からうす茶色、さらには紫色へとpHに応じて変化する。この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含む雰囲気が保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0093】
なお、炭酸ガスインジケーター10の代わりに、上述の炭酸ガスインジケーターの第3の例及び第4の例を適用することができる。
【0094】
図8には、本発明にかかるガス置換包装体の第2の例を示す。
【0095】
図示するように、包装体30は、例えばブロック生肉等の内容物を真空包装したポリエチレンフィルム製の容器14の表面に、容器14の外装部を支持体とし、本発明のインキ組成物を用いてスクリーン印刷により形成された多層指示部2と、この多層指示部2上に被覆された通気性材料からなる被覆層8とを有する炭酸ガスインジケーター18を設け、置換ガスとして窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13を用いて、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12で封入した構成を有する。また、被覆層8を設けない以外は、図8の包装体30と同様の構成を有する包装体とすることもできる。
【0096】
この包装体30でも、図7に示す包装体と同様に、この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含むガス雰囲気が保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0097】
なお、炭酸ガスインジケーター18の代わりに、上述の炭酸ガスインジケーターの第2の例、第3の例及び第4の例を適用することができる。
【0098】
図9には、本発明にかかるガス置換包装体の第3の例を示す。
【0099】
図7、図8に示した包装体以外に、図9に示すように多層指示部2を外装体12上に印刷、又は多層指示部2を設けた支持体1からなるインジケーター10を外装体12に接着する等の方法で、包装体と一体化して使用しても良い。
【0100】
この包装体40は、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12と、外装体12内面に、外装体12を支持体として本発明のインキ組成物を用いて例えばスクリーン印刷により設けられた多層指示部2とを有する炭酸ガスインジケーターとから構成される。この包装体40は、例えば2枚の積層フィルムを多層指示部2を内側にして配し、その間に内容物16を配置した後、窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13で置換しながら、外装体12周辺をヒートシールにより気密に封止することにより形成され得る。
【0101】
図10には、本発明にかかるガス置換包装体の第3の例に使用し得る炭酸ガスインジケーターの構造の一例を表す図を示す。
【0102】
外装体12を支持体として、本発明のインキ組成物を用いて多層指示部2を印刷したインジケーターの場合、図10に示すように、外装体12を構成するガスバリアー層を含む積層体31のガスバリアー層32の内面に多層指示部2を設け、多層指示部2の内面側を炭酸ガス透過性の保護フィルム33で覆うことも可能である。
【0103】
このように多層指示部2が露出しない構成とすることにより、多層指示部2が直接、容器又は内容物と接触することがなく、また製造工程中や輸送中に多層指示部2が摩耗することを防ぐことができる。
【0104】
なお、炭酸ガスインジケーターの代わりに、上述の炭酸ガスインジケーターの第2の例、第3の例及び第4の例を適用することができる。
【0105】
図11には、本発明に係る炭酸ガスインジケーターの第4の例を包装体の外装体に適用した例を表す断面図を示す。
【0106】
図示するように、支持体となる外装体として、例えばアルミナ蒸着層(図示せず)を有するナイロンフィルム81とアルミナ蒸着層(図示せず)を有するポリエステルフィルム83とを接着剤層82を介して積層して得られた積層フィルムを使用する。この積層フィルムと、その上に図6に示す炭酸ガスインジケーターの第4の例と同様に、第1のアンカーコート層53と第2のアンカーコート層54の積層構造、多層指示部2、及びオーバーコート層52を順に設けることにより、炭酸ガスインジケーターが構成されている。また、この外装体上のその他の領域には、任意に、例えば商品名等の文字、あるいは画像等のパターンを有するインキ層17を炭酸ガスインジケーター80の作製と平行して設けることができる。さらに、このオーバーコート層52及びインキ層17上には、例えば接着層74を介して低密度ポリエチレンからなるシーラント層75が設けられている。
【0107】
このような炭酸ガスインジケーターが設けられた外装体を使用して例えば窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13を置換ガスとして内容物を封止することにより炭酸ガスインジケーター付き包装体が得られる。
【0108】
得られた包装体では、多層指示部の強固な密着性と、多層指示部に対する効果的な保水性とが実現できる。さらに、耐水性、耐光性、耐熱性を含めた炭酸ガスインジケーター付き包装体の長期安定性が良好となる。
【0109】
実施例
以下実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0110】
実施例1
炭酸ガス検知層組成:
メタクレゾールパープル1重量部、水酸化ナトリウム4重量部、バインダー樹脂7重量部、グリセリン5重量部、n−プロパノール84重量部、水28重量部
疎水層組成:
水に対する溶解度が3重量%であり保水率が10重量%のウレタン樹脂8重量部、イソプロピルアルコール 5重量部、酢酸エチル10重量部、メチルエチルケトン5重量部、トルエン10重量部
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
ウレタン樹脂 8重量部、イソプロピルアルコール 5重量部、酢酸エチル 10重量部、メチルエチルケトン 5重量部、トルエン 10重量部
12μm厚のポリエステルフィルム支持体の片側にアンカーコート層0.5μm、第1の炭酸ガス検知層1μm、疎水層1μm、第2の炭酸ガス検知層1μm、及びオーバーコート層1μmをグラビア印刷法により順次積層させて多層指示部を形成し、その上に例えばポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性層を形成して、図5と同様の構成を有する炭酸ガスインジケーターを得た。
【0111】
得られた炭酸ガスインジケーターをガスバリアー性基材からなる透明な外装体に入れて、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し内部の相対湿度が70%の包装体を得た。得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、外観及び発色の劣化は見られなかった。
【0112】
得られた結果を下記表2に示す。
【0113】
実施例2
疎水層組成を以下のように変更すること以外は、実施例1と同様にして包装体を得た。
【0114】
疎水層組成:
水に対する溶解度が6重量%以下であり、保水率が10重量%のポリビニルアセタール樹脂6重量部、イソプロピルアルコール 4重量部、酢酸エチル 8重量部、メチルエチルケトン5重量部、トルエン12重量部
得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、外観及び発色の劣化は見られなかった。
【0115】
得られた結果を下記表2に示す。
【0116】
実施例3
炭酸ガスインジケーターを構成する各層の厚さを、アンカーコート層0.5μm、第1の炭酸ガス検知層0.4μm、疎水層0.5μm、第2の炭酸ガス検知層0.4μm、オーバーコート層1μmに変更すること以外は、実施例1と同様にして、図5と同様の構成を有する炭酸ガスインジケーターを得た。
【0117】
得られた炭酸ガスインジケーターをガスバリアー性基材からなる透明な外装体に入れて、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し、内部の相対湿度が70%の包装体を得た。
【0118】
得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、外観及び発色の劣化は見られなかった。
【0119】
得られた結果を下記表2に示す。
【0120】
実施例4
疎水層組成を実施例2と同様にすること以外は、実施例3と同様にして包装体を得た。
【0121】
得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、外観及び発色の劣化は確認されなかった。
【0122】
得られた結果を下記表2に示す。
【0123】
実施例5
疎水層組成を実施例2と同様とし、指示体を変更して、12μm厚のポリエステルフィルム1の片側に、アンカーコート層 0.5μm、第1の炭酸ガス検知層0.4μm、第1の疎水層0.5μm、第2の炭酸ガス検知層0.4μm、第2の疎水層0.5μm、第3の炭酸ガス検知層0.4μm、オーバーコート層1μmとすること以外は実施例1と同様にして、炭酸ガスインジケーターを得た。
【0124】
図12に、実施例5に用いられる多層指示部の構成を表す断面図を示す。
【0125】
図示するように、得られた多層指示部80は、図示しないアンカーコート層上に、第1の炭酸ガス検知層41,第1の疎水層42,第2の炭酸ガス検知層43,第2の疎水層44、及び第3の炭酸ガス検知層45が順に積層された構成を有する。
【0126】
実施例5にかかる炭酸ガスインジケーターは、指示体2の代わりに、上記指示体80が設けられていること以外は、図6と同様の構成を有する。
【0127】
得られた炭酸ガスインジケーターをガスバリアー性基材からなる透明な外装体に入れて、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し内部の相対湿度が70%の包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、外観及び発色の劣化は見られなかった。
【0128】
得られた結果を下記表2に示す。
【0129】
比較例1
疎水層組成を下記のように変更すること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0130】
疎水層組成:
水に対する溶解度が15重量%であり、保水率が20重量%のポリビニルアセタール樹脂6重量部、イソプロピルアルコール 4重量部、酢酸エチル8重量部、メチルエチルケトン 5重量部、トルエン 12重量部
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、インジケーター部に水がたまり、発色が悪くなった。
【0131】
このことから、水に対する溶解度が10重量%より大きく保水率が15重量%より大きい疎水性を有する樹脂を用いて疎水層を形成すると、水滴が発生し、外観不良を起こすことがわかった。
【0132】
得られた結果を下記表2に示す。
【0133】
比較例2
疎水層組成を比較例1と同様にすること以外は、実施例3と同様にして、包装体を得た。
【0134】
得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、インジケーター部に薄く水がたまり発色が悪くなった。
【0135】
得られた結果を下記表2に示す。
【0136】
比較例3
疎水層組成を比較例1と同様にし、炭酸ガスインジケーターを構成する各層の厚さを変更して、アンカーコート層0.5μm、炭酸ガス検知層0.3μm、疎水層1μm、炭酸ガス検知層0.3μm、及びオーバーコート層1μmとする以外は、実施例1と同様にして、図6と同様の構成を有する炭酸ガスインジケーターを得た。
【0137】
得られた炭酸ガスインジケーターをガスバリアー性基材からなる透明な外装体に入れて、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し内部の相対湿度が70%の包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、薄く水がたまりインジケーターの色調が薄く認識し難かった。
【0138】
これにより、炭酸ガス検知層の厚さが合計で0.8μm未満であると指示部の色調が薄く、色調の変化を認識し難く、また水に対する溶解度が10重量%より大きく、保水率が15重量%よりも大きい樹脂を含有する疎水層を用いると、水滴が発生することがわかった。
【0139】
得られた結果を下記表2に示す。
【0140】
比較例4
炭酸ガスインジケーターを構成する各層の厚さを変更して、アンカーコート層0.5μm、炭酸ガス検知層0.3μm、疎水層1μm、炭酸ガス検知層0.3μm、及びオーバーコート層1μmとする以外は、実施例1と同様にして、図6と同様の構成を有する炭酸ガスインジケーターを得た。
【0141】
得られた炭酸ガスインジケーターを用いて、実施例1と同様にして包装体を得た。
【0142】
得られた包装体を室温60℃、相対湿度75%の高温高湿条件下に2週間放置後、外観、発色を観察したところ、水がたまることはなかったがインジケーターの色調が薄く認識し難かった。
【0143】
このことから、炭酸ガス検知層の合計の厚さが0.8μm未満であると、インジケーターの色調が薄く認識し難くなることが分かった。
【0144】
得られた結果を下記表2に示す。
【表2】

【0145】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図
【図2】図1の断面図
【図3】図2の指示部の拡大図
【図4】本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図
【図5】本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例の構成を表す断面図
【図6】炭酸ガスインジケーターの第4の例の構成を表す断面図
【図7】本発明にかかるガス置換包装体の第1の例を表す図
【図8】本発明にかかるガス置換包装体の第2の例を表す図
【図9】本発明にかかるガス置換包装体の第3の例を表す図
【図10】本発明にかかるガス置換包装体の第3の例に使用し得る炭酸ガスインジケーターの構造の一例を表す図
【図11】本発明にかかる炭酸ガスインジケーターの第4の例を包装体の外装体に適用した例を表す断面図
【図12】本発明に用いられる指示部の一例を表す断面図
【符号の説明】
【0147】
1…支持体、2,90…指示部、3…炭酸ガスインジケーター、5,73…炭酸ガス透過性フィルム、8…被覆層、10、18、50、60、70、80…炭酸ガスインジケーター、11,14,16…容器、12…外装体、13…炭酸ガス含有ガス、17…インキ層、20、30、40…包装体、31…積層体、32…ガスバリアー層、33…保護フィルム、35,41…第1の炭酸ガス検知層、36,42,44…疎水層、37,43…第2の炭酸ガス検知層、45…第3の炭酸ガス検知層、51…アンカーコート層、52…オーバーコート層、53…第1のアンカーコート層、54…第2のアンカーコート層、55、81…ナイロンフィルム、56、74、82…接着剤層、57、83…アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、71…炭酸ガス不透過性フィルム、75…シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
支持体上に設けられ、pH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された少なくとも2層以上の炭酸ガス検知層、及び少なくとも該炭酸ガス検知層間に介在し、水に対する溶解度が0ないし10重量%以下であり、保水率が1ないし15重量%である樹脂を含有する疎水層を含む多層指示部とを具備する炭酸ガス検知用インジケーターであって、
該炭酸ガス検知層の合計の厚さは、0.8μm以上であり、かつ疎水層の厚さは、隣接する炭酸ガス検知層の合計の厚さより小さいことを特徴とする炭酸ガス検知用インジケーター。
【請求項2】
前記疎水層の厚さは、0.5μmないし5μmであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス検知用インジケーター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭酸ガスインジケーターを、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配したことを特徴とする包装体。
【請求項4】
室温25℃相対湿度50%の保存環境において、前記外装体内の空間部分の相対湿度が、50%ないし100%であることを特徴とする請求項3に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−224391(P2008−224391A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62377(P2007−62377)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】