説明

疎水性アルコール誘導体により置換されたカルボキシル官能基を含有する多糖類

【課題】疎水性アルコール誘導体により置換されたカルボキシル官能基を含有する多糖類を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つが疎水性アルコール誘導体により置換された複数のカルボキシル官能基を含有する多糖類に関する。本発明はまた、本発明の多糖類の1種及び少なくとも1種の活性成分を含有する医薬組成物にも関する。本発明はさらに、前記活性成分が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド及び非ペプチド治療用分子からなる群より選択されることを特徴とする医薬組成物にも関する。本発明はまた、上記医薬組成物を製造するための、本発明の官能化された多糖類の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、治療及び/又は予防目的のための、ヒト又は動物に対する活性成分(群)(AP(s))の投与のために使用し得る、カルボキシル官能基を含有する多糖類をベースとした新規な生体適合性のポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性アルコールは、特にその生体適合性、及びそれがグラフトされるポリマーの疎水性を調節できるその疎水性のため、医薬成分の製剤において有利である。
【0003】
それらの生体適合性は、多数の生化学的過程において役立ち、そして大部分の組織においてエステル化形態で存在する限り、優れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Pelletier,S.他,Carbohydr.Polym.,2000,43,343−349
【非特許文献2】Dellacherie,Edith他,Langmuir,2001,17,1384−1391
【非特許文献3】Nichifor,Marieta他,Eur.Polym.J.,1999,35,2125−2129
【非特許文献4】Biomacromolecules,2007,8,2366−2373
【非特許文献5】Heinze,Thomas他,Adv.Polym.Sci.,2006,205,199−291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多糖類のヒドロキシル官能基と疎水性アルコールのヒドロキシル官能基との間を選択性とすることは困難であるため、カルボキシル官能基を含有する多糖類にアルコールをグラフトすることは困難であることが当業者に既知である。ポリマーのアルコールの保護/脱保護のための技術に頼らなければ、グラフト中にポリマーのアルコールがグラフトのアルコールと競合してしまい、そしてこの副反応がポリマー鎖の架橋を起こすだろう。従って、今まで、コレステロールのような有利な疎水性アルコールは、カルボキシル官能基を含有する多糖類にグラフトされ得なかった。
【0006】
Dellacherie他は、アルキルα−ハライド、ブロモドデカン及びブロモオクタデカンを用いた合成法によって、多糖類の、即ち、アルギネートの、ヒアルロネートの(非特許文献1)又はガラクツロナンの(非特許文献2)エステルを開発した。それらエステルの合成は、テトラブチルアンモニウムカルボキシレートによってハライドを置換することから成る。かかる方法は、疎水性アルコールのエステルを得ることを可能にするが、求核置換を受け得るハロゲン化アルキル誘導体に限定される。従ってこの方法は、コレステロールのような疎水性アルコールをグラフトするのに使用され得ない。さらには、これらハロゲン化誘導体は毒性の危険性を示し、そしてそのため、医薬製品の開発において使用するには安全ではない。
【0007】
他の研究者は、疎水性アルコールの代わりに疎水性酸をグラフトすることによって、この困難を克服した。Nichifor他は、例えば、デキストランアルコールに対して直接にグラフトするために、ステロイド誘導体であるコール酸を用いた(非特許文献3)。この方法は、多糖類のアルコールと反応し得るカルボン酸誘導体を用いることによって、コレステロールの問題を克服するものである。しかしながら、コール酸は、コレステロールとは対照的に、注射についてFDAによって承認されておらず、かかる方策は、カルボキシル官能基を含有する多糖類について使用され得ない。
【0008】
他の研究者は、疎水性アルコールをグラフトすることを可能とするために、非アニオン性多糖類を使用した。例えば、秋吉他は、求核性であるコレステロールを、求電子性誘導体へと転換した(非特許文献4)。このコレステロールの求電子性誘導体は、中性多糖類であるプルラン又はマンナンのアルコール官能基にグラフトし得る。かかる方策もまた、カルボキシル官能基を含有する多糖類について使用され得ない。
【0009】
官能性デキストランをベースとしたポリマーの最近の研究(非特許文献5)が、疎水性酸による変性を報告しているが、とりわけ、疎水性アルコールにより官能化されたデキストランについて報告していない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも1つの疎水性アルコール誘導体により部分的に置換されたカルボキシル官能基を含有する新規な両親媒性多糖類の誘導体に関する。カルボキシル官能基を含有するこの新規な多糖類誘導体は、良好な生体適合性を有しており、そしてその疎水性は、生体適合性に悪影響することなくたやすく調節され得る。
【0011】
本発明はまた、上記合成上の課題を解決し得る合成法にも関する。本方法によって、例えばコレステロールを含む疎水性アルコールにより部分的に置換されたカルボキシル官能基を包含する多糖類を得ることが可能となる。
【0012】
本発明は従って、少なくとも1つが疎水性アルコール(HAと記す)誘導体により置換された複数のカルボキシル官能基を含有する多糖類であって、
前記アルコール(HA)は、カップリングアームRを介してアニオン性多糖類にグラフトするか又は結合しており、前記カップリングームは、官能基Fを介して前記アニオン性多糖類に結合しており、前記官能基Fは、前記結合アームRのアミン官能基と前記アニオン性多糖類のカルボキシル官能基との間のカップリング由来のものであり、そして前記カップリングアームは、そのカルボキシル官能基、イソシアネート官能基、チオ酸官能基又はアルコール官能基と、前記疎水性アルコールの官能基との間のカップリング由来の官能基Gを介して前記疎水性アルコールに結合しており、前記アニオン性多糖類の未置換のカルボキシル官能基は、カルボン酸カチオン塩の形態にあり、前記カチオンは、好ましくはNa又はKのようなアルカリ金属であり、
Fは、アミド官能基であり、
Gは、エステル官能基、チオエステル官能基、カーボネート官能基又はカルバメート官能基であり、
Rは、枝分れ状であっても、及び/又は不飽和であっても、O、N及び/又はSのような1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよく、そして少なくとも1つの酸官能基を有する1ないし18個の炭素原子を含有する鎖を表し、
HAは、疎水性アルコールの残基であって、該疎水性アルコールのヒドロキシル官能基と、基Rにより保有される少なくとも1つの求電子性官能基との間のカップリングの生成物であり、
前記多糖類は、中性pHにおいて両親媒性であるカルボキシル官能基を含有するものである、多糖類に関する。
【0013】
一の態様において、Gはエステル官能基である。
【0014】
本発明に従うと、疎水性アルコールにより部分的に置換されたカルボキシル官能基を含有する前記多糖類は、一般式I:

[式中、
nは、F−R−G−HAにより置換された多糖類のカルボキシル官能基のモル分率を表すものであって、0.01ないし0.7であり、
F、R、G及びHAは、上記定義に対応しており、且つ、前記多糖類のカルボキシル官能基がF−R−G−HAにより置換されていない場合、前記多糖類のカルボキシル官能基(群)は、カルボン酸カチオンであって、前記カチオンは、好ましくは、Na又はKのようなアルカリ金属である]
で表される、カルボキシル官能基を含有する多糖類より選択される。
【0015】
一の態様において、カルボキシル官能基を含有する前記多糖類は、カルボキシル官能基を天然に保有する多糖類であって、アルギネート、ヒアルロナン及びガラクツロナンから成る群より選択される。
【0016】
一の態様において、カルボキシル官能基を含有する前記多糖類は、一般式II:

[式中、
天然多糖類は、大部分が(1,6)型及び/又は(1,4)型及び/又は(1,3)型及び/又は(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類群より選択され、
Lは、結合アームQと、前記多糖類の−OH官能基との間のカップリング由来のものであって、エステル官能基、チオエステル官能基、カーボネート官能基、カルバメート官能基又はエーテル官能基であり、
iは、前記多糖類の糖単位当りのL−Q置換基のモル分率を表し、
Qは、枝分れ状であっても、及び/又は不飽和であっても、O、N及び/又はSのような1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよく、そして少なくとも1つのカルボキシル官能基−COHを有する1ないし18個の炭素原子を含有する鎖を表す]
で表される、100の糖単位当り少なくとも15のカルボキシル官能基がグラフトされた、カルボキシル官能基を天然に含有する多糖類から得られるか、又は中性多糖類から得られる合成多糖類である。
【0017】
一の態様において、nは、0.05ないし0.5である。
【0018】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,6)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0019】
一の態様において、前記大部分が(1,6)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、デキストランである。
【0020】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,4)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0021】
一の態様において、前記大部分が(1,4)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、キシラン、ガラクツロナン及び水溶性セルロースから成る群より選択される。
【0022】
一の態様において、多糖類は、プルランである。
【0023】
一の態様において、多糖類は、アルギネートである。
【0024】
一の態様において、多糖類は、ヒアルロナンである。
【0025】
一の態様において、多糖類は、キシランである。
【0026】
一の態様において、多糖類は、ガラクツロナンである。
【0027】
一の態様において、多糖類は、水溶性セルロースである。
【0028】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0029】
一の態様において、前記大部分が(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、カードランである。
【0030】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0031】
一の態様において、前記大部分が(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、イヌリンである。
【0032】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,4)型及び(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0033】
一の態様において、前記大部分が(1,4)型及び(1,3)のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、グルカンである。
【0034】
一の態様において、多糖類は、大部分が(1,4)型及び(1,3)型及び(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成るものである。
【0035】
一の態様において、前記大部分が(1,4)型及び(1,3)及び(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、マンナンである。
【0036】
一の態様において、本発明に従う多糖類の基Qは、下記基:

より選択される。
【0037】
一の態様において、iは、0.1ないし2である。
【0038】
一の態様において、iは、0.2ないし1.5である。
【0039】
一の態様において、本発明に従う基Rは、アミノ酸より選択されることを特徴とする。
【0040】
一の態様において、前記アミノ酸は、α−アミノ酸より選択される。
【0041】
一の態様において、前記α−アミノ酸は、天然のα−アミノ酸より選択される。
【0042】
一の態様において、前記天然のα−アミノ酸は、ロイシン、アラニン、イソロイシン、グリシン、フェニルアラニン、トリプトファン又はバリンより選択される。
【0043】
一の態様において、疎水性アルコールは、脂肪アルコールより選択される。
【0044】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、飽和の又は不飽和の、及び枝分れ状の又は枝分れしていない4ないし18個の炭素原子を含有するアルキル鎖から成るアルコールより選択される。
【0045】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、飽和の又は不飽和の、及び枝分れ状の又は枝分れしていない6ないし18個の炭素原子を含有するアルキル鎖から成るアルコールより選択される。
【0046】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、飽和の又は不飽和の、及び枝分れ状の又は枝分れしていない8ないし16個の炭素原子を含有するアルキル鎖から成るアルコールより選択される。
【0047】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、オクタノールである。
【0048】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、2−エチルブタノールである。
【0049】
一の態様において、前記脂肪アルコールは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ブチルアルコール、オレイルアルコール又はラノリンより選択される。
【0050】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、コレステロール誘導体より選択される。
【0051】
一の態様において、前記コレステロール誘導体は、コレステロールである。
【0052】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、メントール誘導体より選択される。
【0053】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、ラセミ体形態にあるメントールである。
【0054】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、メントールのD異性体である。
【0055】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、メントールのL異性体である。
【0056】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、トコフェロールより選択される。
【0057】
一の態様において、前記トコフェロールは、α−トコフェロールである。
【0058】
一の態様において、前記α−トコフェロールは、α−トコフェロールのラセミ化合物である。
【0059】
一の態様において、前記トコフェロールは、α−トコフェロールのD異性体である。
【0060】
一の態様において、前記トコフェロールは、α−トコフェロールのL異性体である。
【0061】
一の態様において、前記疎水性アルコールは、アリール基を保有するアルコールより選択される。
【0062】
一の態様において、前記アリール基を保有するアルコールは、ベンジルアルコール又はフェネチルアルコールより選択される。
【0063】
多糖類は、10ないし10000の重合度mを有し得る。
【0064】
一の態様において、多糖類は、10ないし1000の重合度mを有し得る。
【0065】
別の態様において、多糖類は、10ないし500の重合度mを有し得る。
【0066】
本発明はまた、本発明に従い部分的に置換されたカルボキシル官能基を含有する多糖類の合成に関する。
【0067】
前記合成は、アミノ中間体HA−G−R−NH又はアンモニウム塩HA−G−R−NHであって、その対イオンが、ハロゲン化物塩、硫酸塩、スルホン酸塩又はカルボン酸塩より選択されるアニオンであるものを得る段階、及びかかるアミノ中間体を、多糖類のカルボキシル官能基にグラフトする段階を含み、ここで、R、G及びHAは上記定義に対応する。
【0068】
一の態様において、100の糖単位当り少なくとも15のカルボキシル官能基によって多糖類を官能化する段階は、式Q−L’(L’は無水物官能基、ハライド官能基、カルボン酸官能基、チオ酸官能基又はイソシアネート官能基を表す)で表される化合物を、多糖類の100の糖単位当り少なくとも15のアルコール官能基にグラフトすることにより行われ、ここで、Q及びLは、上記定義に対応する。
【0069】
一の態様において、式HA−G−R−NH又はHA−G−R−NHで表されるアミノ中間体は、G’−R−NH(G’は、カルボン酸、イソシアネート、チオ酸又はアルコール官能基を表す)で表される化合物と、疎水性アルコールのアルコール官能基との反応により得られ、ここで、R、G及びHAは、上記定義に対応する。
【0070】
必要であれば、前記アミノ中間体を得るための段階において、ペプチド合成の当業者に既知である保護/脱保護技術が使用される。
【0071】
好ましくは、前記アミノ中間体を多糖類の酸官能基にグラフトする段階は、有機媒体中で行われる。
【0072】
本発明はまた、上記の医薬組成物の製造における本発明に従う官能化された多糖類の使用にも関する。
【0073】
本発明はまた、上記の本発明に従う多糖類の1種及び少なくとも1種の活性成分を含有する医薬組成物にも関する。
【0074】
本発明はまた、活性成分が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド及び非ペプチド治療用分子から成る群より選択される、上記の発明に従う医薬組成物にも関する。
【0075】
活性成分は、単一の化学的成分の形態にあるか、又は生理活性を有する組み合わせの形態にある生成物を意味するものと理解される。前記活性成分は、外因性であり得、即ち、本発明に従う組成物によって導入されるものである。それはまた、例えば、治療の初期段階中に創傷中に分泌され、そして本発明に従う組成物によって前記創傷上で保持され得る内因性の成長因子であり得る。
【0076】
標的とされる病状に応じて、それは、局所的又は全身的治療が意図される。
【0077】
局所的又は全身的放出の場合、予測される投与法は、静脈内、皮下、皮内、経皮、筋肉内、経口、鼻腔、膣内、眼球、口腔又は肺経由等による。
【0078】
本発明に従う医薬組成物は、液体形態、水溶液、又は粉末、インプラント又はフィルム形態にある。それらはさらに、当業者に既知の慣用の医薬用賦形剤を含有する。
【0079】
病状及び投与法に応じて、医薬組成物は、ゲル、スポンジ、注射液、飲用液、凍結乾燥されたタブレット等の形態でそれらを処方することを可能にさせる賦形剤を、さらに有利に含有し得る。
【0080】
本発明はまた、ステント、フィルム又は移植可能な生体材料のコーティング、又はインプラントの形態で投与され得る、上記の本発明に従う医薬組成物にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0081】
実施例1:ロイシン酸コレステロールにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、ロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0082】
およそ40kg/molの質量平均分子量を有するデキストラン(フルカ(Fluka))の8g(即ち、ヒドロキシル官能基148mmol)を水中に溶解して、42g/Lとした。10N NaOHの15mL(148mmolのNaOH)を、かかる溶液に添加した。該混合物を35℃に上げ、そしてその後、クロロ酢酸ナトリウムの23g(198mmol)を添加した。反応媒体の温度を、0.5℃/分にて60℃まで上げ、そしてその後、60℃にて100分間維持した。該反応媒体を200mLの水で希釈し、酢酸で中和し、そして6倍量の水に対する5kD PESメンブランによる限外濾過によって精製した。乾燥抽出物により最終溶液を定量的に測定して、ポリマー濃度を決定し、そしてその後、50/50(V/V)の水/アセトン中の酸/塩基滴定によって定量的に測定して、メチルカルボキシレートによる置換度を決定した。
【0083】
乾燥抽出物に従うと:[ポリマー]=31.5mg/gであった。
【0084】
酸/塩基滴定に従うと:メチルカルボキシレート官能基によるヒドロキシル官能基の置換度は、糖単位当り1.04であった。
【0085】
ナトリウムデキストランメチルカルボキシレート溶液を、プロライト(Purolite)樹脂(アニオン性)に通して、デキストランメチルカルボン酸を得、それをその後、18時間凍結乾燥した。
【0086】
デキストランメチルカルボン酸の8g(即ち、メチルカルボン酸官能基の37mmol)をDMF中に溶解して、45g/Lとし、そしてその後、0℃に冷却した。ロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸塩の0.73g(1mmol)をDMF中に懸濁して、100g/Lとした。トリエチルアミンの0.11g(1mmol)をその後、かかる懸濁液に添加した。一旦、ポリマー溶液を0℃とし、NMMの0.109g(1mmol)及びEtOCOClの0.117g(1mmol)をその後添加した。10分間の反応後、ロイシン酸コレステロール懸濁液を添加した。該媒体をその後、4℃にて15分間維持した。該媒体をその後、30℃に加熱した。該媒体をその後、一旦30℃にて、激しく攪拌しながら、NMMの3.76g(37mmol)の5g/L溶液に入れた。該溶液を、0.9%NaCl溶液の10倍容量、そしてその後の5倍容量の水に対する10kDのPESメンブランに通して限外濾過した。ポリマー溶液の濃度を、乾燥抽出物にて決定した。溶液のフラクションを凍結乾燥し、そしてDOでのHNMRにより解析して、ロイシン酸コレステロールアミドに転換した酸官能基の度合いを決定した。
【0087】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=12.9mg/gであった。
【0088】
HNMRに従うと:糖単位当りのロイシン酸コレステロールにより変性された酸のモル分率は、0.03であった。
【0089】
実施例2:ロイシン酸コレステロールにより変性されたナトリウムデキストランスクシネートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、ロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0090】
Sanchez−Chaves他による論文(Sanchez−Cheves,Manuel他,Polymer,1998,39(13),2751−2757)に記載の方法に従い、ナトリウムデキストランスクシネートをデキストラン40から得た。DO/NaODでのHNMRに従うと、糖単位当りの酸官能基の度合い(i)は1.46であった。
【0091】
ナトリウムデキストランスクシネート溶液を、プロライト樹脂(アニオン性)に通して、デキストランコハク酸を得、それをその後、18時間凍結乾燥した。
【0092】
デキストランコハク酸の7.1g(23mmol)をDMF中に溶解して、44g/Lとした。該溶液を0℃に冷却した。ロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸塩の0.77g(1mmol)をDMF中に懸濁して、100g/Lとした。トリエチルアミン(TEA)の0.12g(1mmol)をその後、かかる懸濁液に添加した。一旦、ポリマー溶液を0℃とし、NMMの0.116g(1mmol)及びEtOCOClの0.124g(1mmol)をその後添加した。10分間の反応後、ロイシン酸コレステロール懸濁液を添加した。該媒体をその後、4℃にて15分間維持した。該媒体をその後、30℃に加熱した。該媒体をその後、一旦30℃にて、激しく攪拌しながら、NMMの3.39g(33mmol)の5g/L溶液に入れた。該溶液を、0.9%NaCl溶液の10倍容量、そしてその後の5倍容量の水に対する10kDのPESメンブランに通して限外濾過した。ポリマー溶液の濃度を、乾燥抽出物にて決定した。溶液のフラクションを凍結乾燥し、そしてDOでのHNMRにより解析して、ロイシン酸コレステロールアミドに転換した酸官能基の度合いを決定した。
【0093】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=17.5mg/gであった。
【0094】
HNMRに従うと:糖単位当りのロイシン酸コレステロールにより変性された酸のモル分率は、0.05であった。
【0095】
実施例3:ロイシン酸コレステロールにより変性されたナトリウムプルランスクシネートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、ロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0096】
およそ100kg/molの質量平均分子量を有するプルラン(フルカ)の10gをDMSO中に60℃にて溶解して、400mg/gの濃度とした。かかる溶液を、40℃にて平衡化し、そしてその後、9.27gの無水コハク酸を含有するDMF溶液(371g/L)と、9.37gのNMMを含有するDMF溶液(375g/L)の2種の溶液を、該プルラン溶液に添加した。反応時間を、NMM溶液の添加から240分とした。こうして得られた溶液を、1Lの水中に希釈し、そして0.9%塩化ナトリウム溶液、そしてその後の2倍の蒸留水に対する10kDのPESメンブランに通して限外濾過した。乾燥抽出物により最終溶液中のナトリウムプルランスクシネートの濃度を決定し、そして乾燥生成物を、DO/NaODでのHNMRにより解析して、糖単位当りのコハク酸エステルに転換したヒドロキシル官能基の度合いを決定した。
【0097】
乾燥抽出物に従うと:[プルランスクシネート]=15.8mg/gであった。
【0098】
HNMRに従うと:糖単位当りのコハク酸ナトリウムを保有するアルコールのモル分率は、1.35であった。
【0099】
ナトリウムプルランスクシネート溶液を、プロライト樹脂(アニオン性)により酸性化し、そしてその後、18時間凍結乾燥した。
【0100】
プルランコハク酸の5gをDMF中に溶解して、51g/Lとした。該溶液を0℃に冷却した。NMMの0.08g及びEtOCOClの0.08gをその後添加した。10分間の反応後、5.1mLのDMF中のロイシン酸コレステロール・パラ−トルエンスルホン酸(PTSA)塩の0.51g、及びTEAの0.08gを含有する懸濁液を添加した。コレステロール誘導体の導入後にグラフト時間を20分とした。該媒体をその後、30℃に加熱し、そしてその後、NMMの水溶液(2.09gを5mg/mL)に入れた。得られた溶液を、100mLの水を添加することにより希釈し、そしてその後、0.9%NaCl溶液、そしてその後の2倍の蒸留水に対する10kDのPESメンブランに通してダイアフィルター濾過(diafilter)した。最終溶液中のコレステロールにより変性されたナトリウムプルランスクシネートの濃度を乾燥抽出物により決定し、そして乾燥生成物を、DO/NaODでのHNMRにより解析して、ロイシン酸コレステロ−ルアミドに転換した酸官能基の度合いを決定した。
【0101】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=2.9mg/gであった。
【0102】
HNMRに従うと:糖単位当りのロイシン酸コレステロールにより変性された酸のモル分率は、0.04であった。
【0103】
実施例4:セチルアルコールアラニネートにより変性されたナトリウムプルランスクシネートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、セチルアルコールアラニネートを得た。
【0104】
実施例3に記載のとおりに得られたナトリウムプルランスクシネート溶液を、プロライト樹脂(アニオン性)により酸性化し、そしてその後、18時間凍結乾燥した。
【0105】
プルランコハク酸の5gをDMF中に溶解して、51g/Lとした。該溶液を0℃に冷却した。NMMの0.32g(3.2mmol)及びEtOCOClの0.32g(3.2mmol)をその後添加した。10分間の反応後、20.4mLのDMF中のセチルアルコールアラニネート・パラ−トルエンスルホン酸塩の1.55g(3.2mmol)及びTEAの0.32g(3.2mmol)を含有する懸濁液を添加した。セチルアルコール誘導体の導入後にグラフト時間を20分とした。該媒体をその後、30℃に加熱し、そしてその後、NMMの水溶液(8.36gを5mg/mL)に入れた。得られた溶液を、100mLの水を添加することにより希釈し、そしてその後、0.9%塩化ナトリウム溶液、そしてその後の2倍の蒸留水に対する10kDのPESメンブランに通してダイアフィルター濾過した。乾燥抽出物により、最終溶液中のセチルアルコールアラニネートにより変性されたナトリウムプルランスクシネートの濃度を決定し、そして乾燥生成物を、DO/NaODでのHNMRにより解析して、セチルアルコールアラニネートアミドに転換した酸官能基の度合いを決定した。
【0106】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=5.2mg/gであった。
【0107】
HNMRに従うと:糖単位当りのセチルアルコールアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.18であった。
【0108】
実施例5:ドデカノールアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、ドデカノールアラニネート・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0109】
実施例1に記載のとおりに得られたナトリウムデキストランメチルカルボキシレート溶液を、プロライト樹脂(アニオン性)に通してデキストランメチルカルボン酸を得、それをその後、18時間凍結乾燥した。
【0110】
デキストランメチルカルボン酸の5g(メチルカルボン酸官能基の23.2mmol)をDMF中に溶解して、45g/Lとし、そしてその後、0℃に冷却した。ドデカノールアラニネート・パラ−トルエンスルホン酸塩の1.99g(4.6mmol)をDMF中に懸濁して、100g/Lとした。トリエチルアミンの0.47g(4.6mmol)をその後、かかる懸濁液に添加した。一旦、ポリマー溶液を0℃とし、NMMの2.35g(23.2mmol)及びEtOCOClの2.52g(23.2mmol)をその後添加した。10分間の反応後、ドデカノールアラニネート懸濁液を添加した。該媒体をその後、4℃にて15分間維持した。該媒体をその後、30℃に加熱した。一旦30℃にて、反応媒体にイミダゾール溶液(9.3mLの水中の3.2g)を添加した。ポリマー溶液を、0.9%NaCl溶液の10倍容量、そしてその後の5倍容量の水に対する10kDのPESメンブランに通して限外濾過した。ポリマー溶液の濃度を、乾燥抽出物にて決定した。溶液のフラクションを凍結乾燥し、そしてDOでのHNMRにより解析して、ドデカノールアラニネートにより変性された酸官能基の度合いを決定した。
【0111】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=22mg/gであった。
【0112】
HNMRに従うと:糖単位当りのドデカノールアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.19であった。
【0113】
実施例6:L−メントールグリシネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、L-メントールグリシネート・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0114】
得られたオイルは不純物を含んでいるため、水酸化ナトリウムの化学量論的添加によってアミン塩を中和し、そしてジイソプロピルエーテルによって抽出した。有機層をその後、エチルエーテル中のHCl溶液を用いて酸性化し、そしてメントール誘導体のHCl塩を水により抽出した。凍結乾燥後、L−メントールグリシネート・塩酸塩が得られた。
【0115】
実施例1に記載のとおりに得られたナトリウムデキストランメチルカルボキシレート溶液を、プロライト樹脂(アニオン性)に通してデキストランメチルカルボン酸を得、それをその後、18時間凍結乾燥した。
【0116】
デキストランメチルカルボン酸の12g(メチルカルボン酸官能基の59.22mmol)をDMF中に溶解して、60g/Lとし、そしてその後、0℃に冷却した。L−メントールグリシネート・塩酸塩の1.32g(5.29mmol)をDMF中に懸濁して、100g/Lとした。トリエチルアミンの0.54g(5.29mmol)をその後、かかる懸濁液に添加した。一旦、ポリマー溶液を0℃とし、DMF中のNMM(6.59g,65.1mmol)の溶液(530g/L)及びEtOCOClの7.07g(65.1mmol)をその後添加した。10分間の反応後、L−メントールグリシネート懸濁液を添加した。該媒体をその後、10℃にて45分間維持した。該媒体をその後、50℃に加熱した。イミダゾール溶液(22mLの水中の14.7g)及び水の65mLを反応媒体に添加した。ポリマー溶液を、0.9%NaCl溶液の6倍容量、0.01N水酸化ナトリウム溶液の4倍容量、0.9%NaCl溶液の7倍容量、そしてその後の3倍容量の水に対する10kDのPESメンブランに通して限外濾過した。ポリマー溶液の濃度を、乾燥抽出物にて決定した。溶液のフラクションを凍結乾燥し、そしてDOでのHNMRにより解析して、L−メントールグリシネートアミドに転換した酸官能基の度合いを決定した。
【0117】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=25.7mg/gであった。
【0118】
HNMRに従うと:糖単位当りのL−メントールグリシネートにより変性された酸のモル分率は、0.09であった。
【0119】
実施例7:(±)−α−トコフェロールアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
J.Pharm.Sci.,1995,84(1),96−100に記載の方法に従い、(±)−α−トコフェロールアラニネート・塩酸塩を得た。
【0120】
実施例6に記載された方法と同様の方法により、(±)−α−トコフェロールアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを得た。
【0121】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=28.1mg/gであった。
【0122】
HNMRに従うと:糖単位当りの(±)−α−トコフェロールアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.04であった。
【0123】
実施例8:オクタノールグリシネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、オクタノールグリシネート・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0124】
実施例6に記載の方法と同様の方法により、オクタノールグリシネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを得た。
【0125】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=34.1mg/gであった。
【0126】
HNMRに従うと:糖単位当りのオクタノールグリシネートにより変性された酸のモル分率は、0.27であった。
【0127】
実施例9:オクタノールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、オクタノールフェニルアラニネート・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0128】
実施例6に記載の方法と同様の方法により、オクタノールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを得た。
【0129】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=30.2mg/gであった。
【0130】
HNMRに従うと:糖単位当りのオクタノールフェニルアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.09であった。
【0131】
実施例10:ベンジルアルコールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
ベンジルアルコールフェニルアラニネート・塩酸塩(バケム(Bachem))を用いて、実施例6に記載の方法と同様の方法によって、ベンジルアルコールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを得た。
【0132】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=47.7mg/gであった。
【0133】
HNMRに従うと:糖単位当りのベンジルアルコールフェニルアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.41であった。
【0134】
実施例11:イソヘキサノールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートの合成
特許明細書中(森憲治他,米国特許第4826818号明細書)に記載の方法に従い、イソヘキサノールフェニルアラニネート・パラ−トルエンスルホン酸塩を得た。
【0135】
実施例6に記載の方法と同様の方法によって、イソヘキサノールフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを得た。
【0136】
乾燥抽出物に従うと:[変性されたポリマー]=29.8mg/gであった。
【0137】
HNMRに従うと:糖単位当りのイソヘキサノールフェニルアラニネートにより変性された酸のモル分率は、0.18であった。
【0138】
実施例12:BMP−2凍結乾燥物の溶解
生理学的pHにある種々のポリマーの溶解力を示すために、骨形成タンパク質2(BMP−2)凍結乾燥物の溶解試験を開発した。BMP−2を、ショ糖(シグマ(Sigma))、グリシン(シグマ)、グルタミン酸(シグマ)、塩化ナトリウム(リーデル デ エン(Riedel−de−Haen))及びポリソルベート80(フルカ)を含有する緩衝液中に溶解した。かかる溶液のpHを、水酸化ナトリウムの添加によってpH4.5に調節し、そしてその後、該溶液を凍結乾燥した。283.2mgの凍結乾燥物は、およそ12mgのBMP−2を含有していた。
【0139】
本発明に従ったポリマーを該試験に用いた。対照として、仏国特許FR0702316号明細書に記載のポリマーである、エチルフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートを該試験において使用した。
【0140】
該試験は、BMP−2の0.168mgを含有する凍結乾燥物のおよそ4mgを正確に導入することから成る。凍結乾燥物をその後、BMP−2の最終濃度を生理学的pHにある0.8mg/mLとするために210μLの水溶液とし、ポリマーの最終濃度は5mg/mLであった。
【0141】
ロール上で低速にて5分間の攪拌後、溶液の外観を記録した。
【0142】
種々の溶液についての結果を下記表にまとめた。

【0143】
水の添加は清澄なBMP−2溶液を生じるが、酸性pHである。
【0144】
該試験によって、本発明に従うポリマーによる生理学的pHでのBMP−2の溶解における改善が示され得た。他方、エチルフェニルアラニネートにより変性されたナトリウムデキストランメチルカルボキシレートによっては、清澄なBMP−2溶液を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つが疎水性アルコール(HAと記す)誘導体により置換された複数のカルボキシル官能基を含有する多糖類であって、
前記アルコール(HA)は、カップリングアームRを介してアニオン性多糖類にグラフトするか又は結合しており、前記カップリングームは、官能基Fを介して前記アニオン性多糖類に結合しており、前記官能基Fは、前記結合アームRのアミン官能基と前記アニオン性多糖類のカルボキシル官能基との間のカップリング由来のものであり、そして前記カップリングアームは、そのカルボキシル官能基、イソシアネート官能基、チオ酸官能基又はアルコール官能基と、前記疎水性アルコールの官能基との間のカップリング由来の官能基Gを介して前記疎水性アルコールに結合しており、前記アニオン性多糖類の未置換のカルボキシル官能基は、カルボン酸カチオン塩の形態にあり、前記カチオンは、好ましくはNa又はKのようなアルカリ金属カチオンであり、
Fは、アミド官能基であり、
Gは、エステル官能基、チオエステル官能基、カーボネート官能基又はカルバメート官能基であり、
Rは、枝分れ状であっても、及び/又は不飽和であっても、O、N及び/又はSのような1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよく、そして少なくとも1つの酸官能基を有する1ないし18個の炭素原子を含有する鎖を表し、
HAは、疎水性アルコールの残基であって、該疎水性アルコールのヒドロキシル官能基と、基Rにより保有される少なくとも1つの求電子性官能基との間のカップリングの生成物であり、
前記多糖類は、中性pHにおいて両親媒性であるカルボキシル官能基を含有するものである、多糖類。
【請求項2】
一般式I:

[式中、
nは、F−R−G−HAにより置換された多糖類のカルボキシル官能基のモル分率を表すものであって、0.01ないし0.7であり、
F、R、G及びHAは、上記請求項1の定義に対応しており、且つ、前記多糖類の1つ以上のカルボキシル官能基がF−R−G−HAにより置換されていない場合、前記多糖類のカルボキシル官能基(群)は、カルボン酸カチオンであって、前記カチオンは、好ましくは、Na又はKのようなアルカリ金属カチオンである]
で表される、少なくとも1つが疎水性アルコール誘導体により置換された複数のカルボキシル官能基を含有する多糖類より選択される、請求項1に記載の多糖類。
【請求項3】
前記アニオン性多糖類は、天然に酸官能基を保有しており、且つ、アルギネート、ヒアルロナン及びガラクツロナンから成る群より選択される、請求項1又は2に記載の多糖類。
【請求項4】
前記アニオン性多糖類は、一般式II:

[式中、
天然多糖類は、大部分が(1,6)型及び/又は(1,4)型及び/又は(1,3)型及び/又は(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類群より選択され、
Lは、結合アームQと、中性又はアニオン性多糖類の−OH官能基との間のカップリング由来のものであって、エステル官能基、チオエステル官能基、カーボネート官能基、カルバメート官能基又はエーテル官能基であり、
Qは、枝分れ状であっても、及び/又は不飽和であっても、O、N及び/又はSのような1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよく、そして少なくとも1つの酸官能基COHを有する1ないし18個の炭素原子を含有する鎖を表す]
で表される、少なくとも1つの酸官能基がグラフトされた、アニオン性又はノニオン性の(中性の)天然多糖類から得られた合成のアニオン性多糖類である、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項5】
前記多糖類は、大部分が(1,6)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項6】
前記大部分が(1,6)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、デキストランである、請求項5に記載の多糖類。
【請求項7】
前記多糖類は、大部分が(1,4)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項8】
前記大部分が(1,4)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、キシラン、ガラクツロナン及び水溶性セルロースから成る群より選択される、請求項7に記載の多糖類。
【請求項9】
前記多糖類は、大部分が(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項10】
前記大部分が(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、カードランである、請求項9に記載の多糖類。
【請求項11】
前記多糖類は、大部分が(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項12】
前記大部分が(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、イヌリンである、請求項11に記載の多糖類。
【請求項13】
前記多糖類は、大部分が(1,4)型及び(1,3)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項14】
前記大部分が(1,4)型及び(1,3)のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、グルカンである、請求項13に記載の多糖類。
【請求項15】
前記多糖類は、大部分が(1,4)型及び(1,3)型及び(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る、請求項4に記載の多糖類。
【請求項16】
前記大部分が(1,4)型及び(1,3)及び(1,2)型のグリコシド結合を介して結合したグリコシドモノマーから成る多糖類は、マンナンである、請求項15に記載の多糖類。
【請求項17】
式中の基Qは、下記基:

より選択される、請求項4ないし16のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項18】
前記基Rは、アミノ酸より選択される、請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項19】
前記基Rは、α−アミノ酸より選択される、請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項20】
前記α−アミノ酸は、ロイシン、アラニン、イソロイシン、グリシン、フェニルアラニン、トリプトファン又はバリンを含む天然のα−アミノ酸より選択される、請求項19に記載の多糖類。
【請求項21】
前記疎水性アルコールは、脂肪アルコールより選択される、請求項1ないし20のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項22】
前記疎水性アルコールは、飽和の又は不飽和の、及び枝分れ状の又は枝分れしていない4ないし18個の炭素原子を含有するアルキル鎖から成るアルコールより選択される、請求項21に記載の多糖類。
【請求項23】
前記脂肪アルコールは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ブチルアルコール、オレイルアルコール又はラノリンより選択される、請求項1ないし21のうちいずれか1項に記載の多糖類。
【請求項24】
前記疎水性アルコールは、コレステロールである、請求項21に記載の多糖類。
【請求項25】
前記疎水性アルコールは、メントールである、請求項21に記載の多糖類。
【請求項26】
前記疎水性アルコールは、トコフェロールより選択されるものであって、好ましくはα−トコフェロールである、請求項21に記載の多糖類。
【請求項27】
前記疎水性アルコールは、アリール基を保有するアルコールより選択される、請求項21に記載の多糖類。
【請求項28】
前記アリール基を保有するアルコールは、ベンジルアルコール又はフェネチルアルコールより選択される、請求項27に記載の多糖類。
【請求項29】
医薬組成物の製造における、請求項1ないし28のうちいずれか1項に記載の官能化された多糖類の使用。
【請求項30】
請求項1ないし29のうちいずれか1項に記載の多糖類及び少なくとも1種の活性成分を含有する、医薬組成物。
【請求項31】
経口、鼻腔、膣内又は口腔経路により投与され得る、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記活性成分は、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド及び非ペプチド治療用分子から成る群より選択される、請求項30又は31に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2012−504697(P2012−504697A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530586(P2011−530586)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007054
【国際公開番号】WO2010/041119
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(508090088)
【Fターム(参考)】