説明

疎水性メラミン樹脂発泡体

6−C20−アルキル基、特にステアリル基を含む化合物、例えばステアリン酸アルミニウムまたはステアリルイソシアネートで疎水化されたメラミン−ホルムアルデヒド縮合物系連続気泡発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物の疎水性連続気泡発泡体、その製造方法、およびその利用に関する。
【0002】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の連続気泡弾性発泡体、また発泡性(発泡剤を含む)のメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の溶液または分散液を熱風、水蒸気またはマイクロ波照射での加熱により発泡させて架橋させる製造方法は公知であり、例えば、EP−A17672やEP−A37470に記載されている。
【0003】
これらは、建物や車両のいろいろな被覆用途や吸音用途に、また絶縁性緩衝性包装材として有用である。未処理のメラミン−ホルムアルデヒド発泡体は、親水性液体・疎水性液体ともに、非常に速やかに吸収する。水の吸収は、発泡体の性質に悪影響をもたらし、例えば密度を上げたり、断熱性を低下させる。
【0004】
EP−A633283は、発泡体に疎水化剤、特にシリコーン樹脂の水性エマルジョンを塗布して、メラミン−ホルムアルデヒド発泡体の水吸収性を低下させることを開示している。この実施例では、密度が11kg/m3である発泡体を使用しているが、これを疎水化剤で処理すると、疎水化後には密度が72kg/m3〜120kg/m3に上昇している。いくつかの用途においては、例えば航空機などの輸送分野では、この密度上昇が、未修飾のメラミン−ホルムアルデヒド発泡体と較べて不利となりうる。また、熱安定性や難燃性などのメラミン−ホルムアルデヒド発泡体の優れた性質が、この処理により大幅に低下する可能性がある。疎水化材料で例示されている水吸収率の約20体積%は比較的大きく、この材料の性質を逆に低下させる可能性がある。よく使用される疎水化剤、例えばシリコーンまたはクロロプレンは、多くの有機溶媒にほとんど可溶で、膨潤性である。したがって、有機溶媒と接触すると疎水化層の分離や溶媒吸収による膨潤が起こることがあり、これを除くにはコストも時間もかかる。
【0005】
DE−A10011388は、その気孔表面をフルオロアルキルエステル疎水化・嫌油化剤で塗布した連続気泡メラミン樹脂発泡体を開示している。メラミン樹脂発泡体部分の油の吸収性が低下し、水の吸収性も低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、疎水性と親油性の両方を示し、製造が容易なメラミン−ホルムアルデヒド縮合物系の連続気泡発泡体を提供することである。修飾後の連続気泡発泡体は、特に液液分離や油タンクの漏洩防止に有用であることを要す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物系の連続気泡発泡体で、C6−C20−アルキル基を含む化合物で疎水化されたものにより、この目的が達成されることを見出した。
【0008】
本連続気泡発泡体は、好ましくはステアリル基を含む化合物により疎水化される。
【0009】
発泡体の密度上昇が最小限で疎水化効果が得られることが有利である。表面に共有結合あるいは例えば架橋反応により固定され、有機溶媒と接触しても発泡体から外れない疎水化剤が特に好ましい。さらに好ましい疎水化剤は、反応混合物の発泡の前に添加しても発泡体の構造や発泡体の機械性能にほとんど影響を与えない物質である。
【0010】
連続気泡発泡体:
連続気泡発泡体のエンベロープ密度は、通常3〜100g/lの範囲、好ましくは5〜20g/lの範囲である。気孔数は、通常50〜300気孔/25mmの範囲である。引張強度は、好ましくは100〜150kPaの範囲であり、破断伸度は8〜20%の範囲である。
【0011】
メラミン−ホルムアルデヒド(MF)樹脂の、好ましくはアミノ樹脂の連続気泡発泡体を製造するには、EP−A071672またはEP−A037470に記載のように、発泡剤を含む高濃度のメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物溶液または分散液を熱風、水蒸気またはマイクロ波照射により発泡させ、硬化させる。
【0012】
本発明の疎水化を行うには、このようにして得られた連続気泡発泡体に、液体反応混合物、即ちC6−C20−アルキルイソシアネート、好ましくはステアリルイソシアネートの溶液または水分散液を気相堆積により散布または塗布し、次いで、40〜200℃の範囲の温度で疎水化させる。このイソシアネートは、メラミン−ホルムアルデヒド連続気泡発泡体の気孔支柱の表面に残留しているメチロール基とアミノ基と反応し、ウレタン基または尿素基を生成する。好ましくは触媒を添加してこの反応を加速させる。
【0013】
あるいは、発泡体の疎水化を、非反応性のC6−C20−アルキル基含有化合物類で、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛などのステアリン酸塩類で行ってもよい。メラミン−ホルムアルデヒド(MF)初期縮合物と硬化剤と発泡剤とからなる混合物を、混合物中の固体に対して0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量のステアリン酸塩と混合し、この混合物を次いで加熱発泡させ、架橋してもよい。この方法は、分散液への浸漬や発泡体からの液体の搾出、高温での乾燥などの新たな加工工程を必要としないという利点がある。添加することで非疎水化発泡体と同等の密度をもつ疎水化発泡体を得ることが可能となる。
【0014】
使用する疎水化剤は、好ましくはステアリン酸アルミニウムであり、より好ましくはモノステアリン酸アルミニウムである。これは、これらを使用すると、発泡体構造や発泡体の機械的性能に大きな変化がなく、得られる発泡体が弾性を示すためである。
【0015】
この方法は、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物より出発する。メラミン−ホルムアルデヒド縮合物は、メラミン以外に最大50%の、好ましくは最大20質量%の他の熱硬化成分を含んでもよく、また、ホルムアルデヒド以外に、最大50%の、好ましくは最大20質量%の他のアルデヒド類を共縮合の形で含んでいてもよい。未修飾のメラミン−ホルムアルデヒド縮合物が特に好ましい。好ましい熱硬化成分としては、例えば、アルキル置換およびアリールアルキル置換されたメラミン、尿素、ウレタン、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン、グリコール類、フェノールおよびその誘導体があげられる。好ましいアルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒドや、トリメチロール−アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドがあげられる。アルデヒド樹脂のエーテル化初期縮合物もまた有用である。上記以外のメラミン−ホルムアルデヒド縮合物に関する詳細は、
Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie, Vol.14/2, 1963, p.319〜402に記載されている。
【0016】
メラミンとホルムアルデヒドのモル比は、通常1:1.0未満であり、好ましくは1:1〜1:5、特に好ましくは1:1.3〜1:1.8である。EP−B37470によれば、メラミン樹脂が、共縮合の形でサルファイト基を含むことが好ましく、これは、例えば樹脂の縮合の際に1〜20質量%の亜硫酸水素ナトリウムを添加することで達成される。メラミンとホルムアルデヒドとの比率が一定でサルファイト基含量が比較的高い場合、発泡体からのホルムアルデヒドの発生が多くなることが明らかとなった。このため、使用する初期縮合物は、実質的にサルファイト基を含まない、すなわちサルファイト基含量は、1%未満、好ましくは0.1%未満、特に好ましくは0%である。
【0017】
発泡剤を乳化させて発泡体を安定化させるために、乳化剤または乳化剤混合物を添加する必要がある。使用する乳化剤は、アニオン性、カチオン性、およびノニオン界面活性剤のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0018】
有用なアニオン界面活性剤は、ジフェニレンオキシドスルホネート類、アルカン−およびアルキルベンゼン−スルホネート類、アルキルナフタレンスルホネート類、オレフィンスルホネート類、アルキルエーテルスルホネート類、脂肪アルコールスルフェート類、エーテルスルフェート類、α−スルホ脂肪酸エステル類、アシルアミノアルカンスルホネート類、アシルイセチオネート類、アルキルエーテルカルボキシレート類、N−アシルザルコシネート類、アルキル−およびアルキルエーテルホスフェート類である。有用なノニオン界面活性剤としては、アルキルフェノールポリグリコールエーテル類、脂肪アルコールポリグリコールエーテル類、脂肪酸ポリグリコールエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド類、EO−POブロックコポリマー類、アミンオキシド類、グリセリル脂肪酸エステル類、ソルビタンエステル類およびアルキルポリグルコシド類があげられる。有用なカチオン性乳化剤としては、アルキルトリアンモニウム塩類、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類、およびアルキルピリジニウム塩類があげられる。乳化剤の添加量は、樹脂に対して好ましくは0.2〜5質量%である。
【0019】
メラミン樹脂溶液から発泡体を形成するためには、この溶液が発泡剤を含む必要がある。ただし、その量は所望の発泡体密度により変動する。原理的には、本発明の方法において、物理発泡剤だけでなく化学発泡剤も使用可能である。有用な物理発泡剤としては、例えば、液体では、炭化水素類、ハロゲン化物、特にフッ素化物、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類などがあげられ、気体では、空気やCO2があげられる。有用な化学発泡剤としては、例えば、イソシアネートと水(CO2を有効発泡剤として放出)、カーボネート類やビカーボネート類(bicarbonates)と酸(同様にCO2を発生)、アゾジカルボンアミドなどのアゾ化合物があげられる。本発明のある好ましい実施様態においては、この水溶液または分散液が樹脂に対して1%〜40質量%の沸点が0から80℃である物理発泡剤を含む。ペンタンの場合、5〜15質量%の範囲で含まれる。
【0020】
用いる硬化剤は、メラミン樹脂の縮合をさらに進めるアジド系化合物類である。投与量は、樹脂当たり0.01%〜20%、好ましくは0.05%〜5質量%である。有用な硬化剤としては、無機酸および有機酸があげられ、その例としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸、アミドスルホン酸や、酸無水物があげられる。
【0021】
目的によっては、樹脂に対して、最大20質量%、好ましくは10質量%未満の量の通常の添加物、例えば染料、難燃剤、UV安定剤、または繊維状充填材、燃焼ガスの毒性を低下させる薬剤、または炭化促進剤を加えることも有益である。
【0022】
本発明の疎水化剤に加えて、他の疎水化剤を0.2〜5質量%の量で添加してもよい。有用な疎水化剤としては、例えば、シリコーン類、パラフィン類、シリコーン界面活性剤類、フッ素系界面活性剤類、疎水性炭化水素界面活性剤類、シリコーンおよびフルオロカーボンエマルジョン類があげられる。
【0023】
初期縮合物と溶媒との混合物中のメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の濃度は、55%〜85%の範囲で、好ましくは63%〜80質量%の範囲で大きく変動する。初期縮合物と溶媒との混合物の粘度は、好ましくは1〜3000dPas、より好ましくは5〜2000dPasである。
【0024】
本発明の疎水化剤と添加物は、メラミン樹脂の水溶液または分散液と均一に混合してもよく、また、必要なら、発泡剤を加圧下で投入してもよい。しかしながら、固体状の、例えば噴霧乾燥したメラミン樹脂から出発し、乳化剤の水溶液と混合し、硬化剤と混合し、さらに発泡剤と混合してもよい。これらの成分の混合は、例えばエクストルーダーで行われる。混合後、この溶液または分散液をダイを通して排出し、その後直ちに加熱して発泡させてもよい。
【0025】
EP−B17671に記載のように、発泡性溶液または分散液の加熱は、原則的に、
高温ガスの吹きつけまたは高周波照射により行われる。しかし、EP−B37470に記載のように、必要な加熱を超高周波照射で行うことが好ましい。このような誘電放射は、原理的には周波数が0.2GHz〜100GHzの範囲のマイクロ波を用いて行われる。工業運転では、0.915、2.45、および5.8GHzの周波数が用いられ、中でも、2.45GHzの周波数が特に好ましい。誘電放射源はマグネトロンであり、複数のマグネトロンを同時に照射に使用してもよい。照射位置が非常に均一に分布するように注意すべきである。
【0026】
溶液または分散液に加わる電力が、溶液中または分散液中の水1kgに対して、5〜200KW、好ましくは9〜120KWとなるように照射することが有利である。加わる電力が低いと、発泡が起こらず、混合物は硬化するのみである。好ましい範囲では、電力の増加にともなって混合物の発泡率が上昇する。水1kg当たり約200KWとなると、発泡比率はもはや大きく増加しなくなる。
【0027】
発泡成形用ダイから吐出される発泡用混合物は、直ちに照射にかけられる。温度上昇と発泡剤の気化により発泡を続ける混合物は、発泡体成形用の長方形の流路をもつ循環ベルトに押し当てられる。
【0028】
WO01/94436に記載のように、ホルムアルデヒド発生量の少ないメラミン−ホルムアルデヒド縮合物の発泡体は、メラミンとホルムアルデヒドのモル比が1:2より大きなMF初期縮合物を用いて製造される。ホルムアルデヒド発生量をごくわずかに抑えるために、乾燥後の発泡体を220℃で30分間熱処理してもよい。熱処理後には発泡体はすでに硬化状態にあり、もはや熱成形は不可能である。
【0029】
例えばEP−B37470に記載のように、性能を改善するために、発泡体を次いで熱処理しプレスしてもよい。所望の形状や厚みに発泡体をカットし、片面または両面にカバー層を張り合わせてもよい。例えば高分子フィルムや金属箔がカバー層として張り合わされる。
【0030】
この発泡体は、高さが最高2mのシートあるいはウェブとして、あるいは厚みが数mmのフィルムとして製造できる。好ましい発泡体の高さ(発泡体の盛り上がり方向)は、2.45GHzのマイクロ波では50cm〜150cmである。このような発泡体ウェブから、すべての所望のシート厚またはフィルム厚のものが切り出される。発泡体の片面または両面を、カバー層を、例えば紙、板、ガラスオーバーレイ、木材、石膏ボード、金属シートまたは金属箔、プラスチックフィルムを張り合わせることができ、その場合、この材料も発泡状態であってもよい。
【0031】
本発明により製造される発泡体の用途としては、建物および建物の一部の断熱および防音、例えば特に間仕切り材、屋根材、外装材、ドアや床材、陸海空の乗り物の断熱や防音、また保冷、例えば低温倉庫、油タンクや液化ガス容器の保冷などがあげられる。
【0032】
他の用途としては、壁面の絶縁被覆や絶縁性緩衝性包装材があげられる。架橋後のメラミン樹脂は硬度が高いため、この発泡体を、部分研磨洗浄用スポンジや研削用スポンジ、あるいは研磨用スポンジとして用いることもできる。
【0033】
発泡体の連続気泡構造のため、洗浄材、研削材、研磨材が発泡体内部に取り込まれ、そこに保存されやすくなる。
【0034】
低ホルムアルデヒド初期縮合物から出発すると、本発明の発泡体を、衛生分野で、例えば薄いフリースを創傷被覆材としてまた乳児のおむつや失禁製品の一部として使用できる。
【0035】
連続気泡発泡体は弾性があるため、前もって組み立てた容器部品に、絶縁材として簡単に挿入できる。この発泡体は、低温でも、例えば−80℃未満の低温でも弾性を保持する。脆化による損傷はない。したがって、柔軟な配管、例えば液体窒素供給ホースなどの柔軟絶縁材として特に有用である。
【0036】
本発明の疎水性連続気泡発泡体は疎水性であり、漏洩や流出の保護効果が高いため、
発電用燃料タンク、油タンク、あるいはタンカー車やタンカートレーラ、タンカー船のタンク容器用の液溜めとして使用することが特に好ましい。この連続気泡発泡体を、タンク容器の内部に入れてもよいし、タンク容器の周囲を覆って流出保護材として使用してもよい。本発明の疎水性連続気泡発泡体と疎水性の液体とを充填した液体タンクでは、親水的な環境において、未修飾の発泡体よりこの液体が漏れにくいようであった。例えば、漏れの発生した油タンカーでは、海への油漏出量が、未修飾の発泡体を充填したタンカーより、はるかに少ない。
【0037】
本発明の疎水性連続気泡発泡体はまた、濾過材または液液分離用分離材として用いられる。その際、例えば親水性の異なる液体の二相混合物の場合、ほぼ発泡体の親水性に応じて、一成分が選択的に吸収される。例えば、水不溶性の有害材料が漏出しても、選択的に吸収することができる。未修飾発泡体と疎水性発泡体とを併用すると、液液分離が可能となる。この種の複数の部材を併用してその効果を増幅することが有利である。
【実施例】
【0038】
実施例1、ステアリルイソシアネートの疎水化
ガラスフラスコ中で、密度が9kg/m3であるメラミン−ホルムアルデヒド連続気泡発泡体のサイコロ状試料(10×10×10mm)10個(バソテクト(R)、BASF AG)を、17.5gのステアリルイソシアネートを332.5gのトルエンに溶解した溶液に浸漬させ、そこに5適の触媒(ルプラゲンN201、BASF社、トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール33%溶液)を添加した。サイコロ状発泡体を含む溶液を、80℃で8時間還流した。次いで、フラスコを傾けてトルエン溶液を除いた。このサイコロ状発泡体を絞って大部分の吸収液体を除き、一定の質量となるまで乾燥させた。この修飾発泡体試料の密度は、18.5kg/m3である。この修飾発泡体は水に浮き、ほとんど水で濡れず、水吸収率は5体積%未満であった。
【0039】
ステアリルイソシアネートの共有結合によりウレタン基または尿素基ができていることが、赤外吸光光度法(IR)で明らかとなった。未変換のステアリルイソシアネートを示す典型的なイソシアネートの吸収バンドは認められなかった。修飾により、走査型電子顕微鏡(SEM)下での発泡体の構造やその機械的性能に変化はなかった。
比較のために、修飾発泡体および未修飾発泡体のサイコロ状試料を棒に取り付け、着色したトルエンに浸した。いずれの発泡体試料も、直ちにトルエンを完全に吸収した。このトルエンは、トルエンに易溶性ので水に不溶性の染料(サーモプラストブルー684、アントラキノン染料、BASF社)で着色したものである。次いで、浸した試料を、水で満たされた容器に入れ、棒をかき動かせて機械的に水中で攪拌した。未修飾発泡体中の大部分のトルエンは水で置換されたが、この疎水性発泡体は内部のトルエンを保持した。
【0040】
実施例2および実施例3:ステアリン酸アルミニウムによる疎水化
同時に疎水化と発泡を行って修飾メラミン樹脂発泡体を製造するために、WO0194436に例示の方法を繰り返した。発泡性メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の発泡の前に、固形分当たり2質量%のトリステアリン酸アルミニウム(実施例2)または2質量%のモノステアリン酸アルミニウム(ステアリン酸ジヒドロキシアルミニウム)(実施例3)を添加した。得られた発泡体をまず100℃で乾燥し、熱処理の疎水化に及ぼす影響を調べるために、この乾燥試料の一部を続いて180℃で5時間熱処理した。
【0041】
実施例4〜実施例6および比較試験V1と比較試験V2:
ステアリン酸アルミニウムに代えて、添加を使用せず(V1)、または2質量%のステアリン酸ナトリウムを添加し(実施例4)、ジステアリン酸カルシウムを添加し(実施例5)、ジステアリン酸亜鉛を添加し(実施例6)、または二酢酸アルミニウムを添加して(V2)、実施例2を繰り返した。ステアリン酸アルミニウムの添加は、得られる発泡体の密度に対して効果を示さなかった。
【0042】
いくつかの例では、得られた発泡体試料を、なんども圧縮して(屈曲させて)、内部の気孔膜を破壊して水の吸収能を低下させようとした。
【0043】
疎水性は、発泡体のサイコロ状試料(3cm×3cm×3cm)を水面にのせて測定した。浮遊性と水吸収性は、30分後に質量的に求めた。実験結果および手分析により求めた材料の弾性を、表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1と実施例2の連続気泡発泡体は、比較試験V1とほぼ同じ弾性を示した。モノステアリン酸アルミニウムやトリステアリン酸アルミニウムを添加して製造した発泡体は浮き、添加物を含まないメラミン−ホルムアルデヒド発泡体は沈んだ。材料の熱処理を行うと水吸収性はさらに低下した。
【0046】
モノステアリン酸アルミニウムを用いて製造した材料の水吸収性は、屈曲により大きな影響を受けず、発泡体中に望ましくない膜が形成していないことを示している。
【0047】
ステアリン酸の他のカチオンとの塩を用いて製造した発泡体(実施例4〜実施例6)も同様に浮くが、弾性は実施例2および実施例3より小さい。
【0048】
比較試験V2は、ステアリル基よりずっと短いアルキル基をもつカルボン酸のアルミニウム塩の添加は、柔軟性のよい発泡体を与えるが、その疎水性がよくないことを示している。
【0049】
実施例7:液液分離への利用
着色トルエンを一滴、水に垂らした。使用した染料は、トルエン易溶性で水不溶性のものである(サーモプラストブルー684、アントラキノン染料、BASF社)。実施例1に記載の疎水化後のメラミン−ホルムアルデヒド連続気泡発泡体は、着色トルエン相を選択的に吸収し、水相により濡れることはなかった。未修飾のサイコロ状バソテクト(R)を添加すると、着色トルエンばかりか水もこの発泡体に吸収された。
【0050】
実施例8.液液分離への利用
実施例1で疎水化されたメラミン−ホルムアルデヒド連続気泡発泡体の切断片を、ガラスフィルター漏斗の濾板にのせ、識別のために水相のみが着色された(バサントールブルー762、液体銅フタロシアニン錯体、BASF社)クロロホルムと水の混合物を投入した。クロロホルム相(高密度)は、水相から分離されて濾板を通過したが、水相は濾板上に滞留した。
【0051】
未修飾のバソテクト(R)切断物を用いて相当する比較試験を行ったところ、このクロロホルムと水の混合物は濾板を通過した。
【0052】
実施例9:
直径が約1cmのY型のガラス管を、開口部の二つが下向きに、開口部の一つが上向きとなるように取り付けた。チューブの下向きの開口部の一つに未修飾のメラミン−ホルムアルデヒド発泡体を充填した。実施例1に記載の疎水化後の発泡体をチューブの他方の開口部に充填した。両方の発泡体充填物は、Y型チューブの三成分が交叉するところまで延びている。
【0053】
上の開口部からまず水を少し供給した。水は未修飾の発泡体により吸収された。次に、ガラス管上端よりトルエンを少量供給した。トルエンは疎水性発泡体により吸収された。
【0054】
選択的に着色した水(バサントーリブルー762、液体銅フタロシアニン錯体染料、BASF社)とおよそ同量のトルエンとをガラスビーカーに入れた。この混合物の少しずつクロロホルムを添加して、無色の油相の密度と着色した水相の密度がほぼ同じとなり、攪拌後少なくとも5秒間たたなければこの混合物が二相に完全に分離しなくなるようにした。混合液を再度混合し、直ちに上記の充填ガラス管に供給した。混合液はガラス管中で分離されているようであった。着色水相は未修飾の発泡体が充填されたところから、無色の油相は疎水性発泡体の入ったチューブより出てきた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン−ホルムアルデヒド縮合物を主原料とし、C6−C20アルキル基を含む化合物により疎水化されていることを特徴とする連続気泡発泡体。
【請求項2】
ステアリル基を含む化合物で疎水化された請求項1に記載の連続気泡発泡体。
【請求項3】
3〜100g/lの範囲の比エンベロープ密度を有する請求項1または2に記載の連続気泡発泡体。
【請求項4】
メラミン/ホルムアルデヒドのモル比が1:1〜1:5の範囲にあるメラミン−ホルムアルデヒド縮合物から製造された請求項1〜3のいずれか一項に記載の連続気泡発泡体。
【請求項5】
上記連続気泡発泡体に、C6−C20−アルキルイソシアネートの溶液をスプレーあるいは浸漬させて、これを40〜200℃の範囲の温度で疎水化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項6】
メラミン−ホルムアルデヒド(MF)初期縮合物と硬化剤と発泡剤とを含む混合物を、該混合物の固体含量に対して0.1〜10質量%のステアリン酸アルミニウムと混合し、次いでこの混合物を加熱して発泡および架橋させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記初期縮合物のメラミン/ホルムアルデヒドモル比が1:1〜1:5の範囲にある請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続気泡発泡体の発電用燃料タンク用の液体貯蔵器、油タンク、又はタンカー、タンカートレイラーもしくはタンカー船のタンク容器としての使用法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続気泡発泡体の濾過材、液液分離の分離媒体、または流出有機液体の補集材としての使用法。

【公表番号】特表2009−531492(P2009−531492A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502030(P2009−502030)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052727
【国際公開番号】WO2007/110361
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】