説明

疎水性親和性クロマトグラフィに基づく塩素化スクロースの生成方法

【課題】操作が容易でスケーラブルであり、且つ不純物の除去及び所望の塩素化スクロース生成物の単離を達成するのに効果的である、疎水性親和性クロマトグラフィを含むカラムクロマトグラフィに基づく新規方法を提供する。
【解決手段】吸着剤を用いたカラムクロマトグラフィによって、1つ又は複数の塩素化スクロースに対して特異的且つ選択的な親和性をもたらす条件下で、トリクロロガラクトスクロース(TGS)を含む塩素化スクロース、それらの前駆体及び誘導体を含む、塩素化スクロース化合物を、塩素化反応混合物から直接、選択的に捕捉、単離、及び精製するための方法が提供される。当該方法はまた、並行して、吸着剤に吸着された塩素化スクロースエステルの脱着処理と並行して、それらの塩素化スクロースエステルの脱エステル化を行う。当該プロセスはまた、TGSの濃縮及び結晶化のために新規手法を提供する。したがって、単離されるTGSを含む塩素化スクロース誘導体は、不純物、塩及び有機溶媒の大部分を実質的に含有しない。当該プロセスの、TGSを含む所望の塩素化スクロース誘導体に対する回収率は、95%よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親和性及び/又は疎水性吸着クロマトグラフィに基づいて、TGSを含む塩素化スクロース化合物、その中間体又は誘導体を含有する反応混合物又は溶液から、生成物1−6−ジクロロ−1−6−ジデオキシ−β−フルクトフラノシル−4−クロロ−4−デオキシ−ガラクトピラノシド(TGS)又はその中間体若しくは誘導体を精製するための新規方法及び新規方針に関する。
【背景技術】
【0002】
4,1’,6’トリクロロガラクトスクロース(TGS)の従来の生成方法の方針は、主に、スクロース−6−エステルを塩素化して6アセチル4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースを生成するための種々の塩素化剤、例えばオキシ塩化リン、塩化オキサリル、五塩化リン等、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルアセトアミド等の第3級アミド等由来のビルスマイヤー・ハック試薬を用いて、スクロース−6−エステルを塩素化することに関するものである。前記塩素化反応の後、反応マスは、適切なカルシウム、ナトリウム等のアルカリ性水酸化物を用いてpH7.0〜pH7.5に中和され、6アセチル4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースが脱エステル化/脱アセチル化されて、4,1’,6’トリクロロガラクトスクロース(TGS)が生成される。
【0003】
塩素化プロセスに基づくTGS生成の上記方法に加えて、TGS生成のためのいくつかの代替的な方法がある。各方法は、用いられるプロセスに応じて、TGS、その中間体、誘導体、未反応原料、塩、触媒、及び反応に関連するいくつかの他の反応物のうちの1つ又は複数を含有する様々な構成成分から成るプロセスストリームを生成する。そして、これらの方法すべてに共通する問題は、ジメチルホルムアミド(DMF)等の除去しにくい構成成分を除去するため、並びに、TGS、TGS前駆体、TGS誘導体等の反応混合物の構成成分のうちの1つ又は複数を、非常に類似した有機不純物及び無機不純物から個々に若しくは集団で単離するための、より便利且つスケーラブルな工業的方法が必要であることである。
【0004】
水蒸気蒸留、カラムクロマトグラフィ、逆浸透、攪拌薄膜乾燥等を含む、第3級アミド除去のための種々の従来の方法が記述されてきた。塩素化スクロース誘導体のさらなる単離は、抽出精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、結晶化等の操作によって達成される。
【0005】
本発明は、操作が容易でスケーラブルであり、且つ不純物の除去及び所望の塩素化スクロース生成物の単離を達成するのに効果的である、疎水性親和性クロマトグラフィを含むカラムクロマトグラフィに基づく新規方法を提供する。
【0006】
また、TGS生成プロセスの種々の段階において、水も反応混合物から除去される必要があるが、既知の従来の水除去プロセスで水を除去するのは煩雑である。水除去及び塩素化スクロース誘導体(複数可)の濃縮の代替的方法を開発する必要性も実感されており、本発明において扱われる。
【0007】
[従来技術]
第3級アミドの除去、並びにTGS前駆体、及び保護又は部分的に保護されたTGS前駆体の精製のための種々の従来技術のプロセスが記述されてきた。これらのプロセスは、水蒸気蒸留、カラムクロマトグラフィ、逆浸透、攪拌薄膜乾燥等の方法を用いる。このようにして得られた部分的に精製された混合物は、抽出精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、結晶化等の操作を用いてさらに精製される。
【0008】
従来技術の方法は、シリカゲルを吸着材として用い、極性増加した溶離液を脱着材として用いるカラムクロマトグラフィにより、脱アシル化反応混合物からTGS生成物及び他の塩素化糖類を精製するために利用可能である。シリカゲルによる薄膜クロマトグラフィは、TGS又はその誘導体を検出するための公知の方法である。このような反応混合物からの分離のためにカラムクロマトグラフィを用いること、特に、脱アシル化された反応混合物からTGSを精製するためにシリカゲルを吸着材として、極性増加した溶剤を脱着材として用いることもまた、長い間公知である。いくつかの期限切れの特許及び有効な特許がこれらの方法を記述している。
【0009】
Mufti他(1983)は、特許文献1で、説明において以下のように述べている。「或いは、本発明に係る方法全体の成功は、得られた塩素化スクロース誘導体の脱アセチル化混合物から、TGS自体を過度の困難なく分離することができるということに一部依存している。我々は、クロマトグラフィ、例えばシリカゲルによるクロマトグラフィは比較的簡単にTGSを単離するということを発見した。例えば、極性増加した一連の溶離液による脱アセチル化混合物の溶離により、まず極性の低い副生成物が除去され、次にTGSが溶離され、より極性の高い化合物は結合したままである。クロロホルムとアセトンとの混合物が特に適しており、1:1の溶離液でTGSを単離する際には、2:1の混合物が適しており、次いで1:1の混合物が適している。脱アシル化後のクロマトグラフが好ましいが、TGS6−アシレートを分離することも可能である。」この例は、この特許の実施例1〜実施例3に記述されている。
【0010】
Khan他(1992)は、特許文献2の実施例3において以下のように述べている。「スクロース6,4’−ジアセテートのピリジン溶液を、塩化チオニルの1,1,2−トリクロロエタン溶液で、まず0℃で30分処理し、次に95℃で4時間処理した。反応混合物を塩化メチレンで希釈し、冷却炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで水で洗浄した。有機層を(Na2SO4で)乾燥させ、トルエンによる共蒸留によって濃縮し、その後、ナトリウムメトキシド(1M)のメタノール溶液(pH10.0)で、室温において4時間処理した。T.I.C(エチルアセテート:アセトン:水、8:6:1)は、スクラロースを主生成物として示した。このスクラロースをシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、1H−NMR分光法により特定した。」
【0011】
Dordick他(1992)は、特許文献3で、説明において、「6−モノ−アシレートと6,4’−ジアシレートとの混合物が得られた。2つのアシレートは、必要であれば、例えばシリカゲルカラムによるクロマトグラフィによって分離することができる」と述べている。彼らは実施例6において、スクロース6,4’−ジアセテートをスクラロースに転換するプロセスを記述しており、そのプロセスにおいて、脱アシル化された反応混合物から、スクラロースが主生成物としてシリカゲルクロマトグラフィにより精製され、1H−NMR分光法により特定された。
【0012】
Walkup他(1990)は、特許文献4において、「典型的には、スクロース又はその誘導体の塩素化により得られる塩素化された生成物は、クロマトグラフィ技法により、又は誘導体化して高度に結晶化された固体を生成する(例えば、ペルアセチル化)ことにより、精製及び単離される」と述べている。しかしこの特許は、クロマトグラフィの種類及びそれに使用される吸着材媒体の種類については言及していない。
【0013】
特許文献5は、固体TGSに対するシリカゲルクロマトグラフィによる水溶液からのTGSの結晶化、及びその後の、イオン交換樹脂であるAmberlite IRA35とIRC72との組み合わせを用いた反応混合物の脱イオン化に関する。その後、残った母液の加熱、濃縮、種結晶の添加、及び冷却が2サイクル繰り返される。その後、結晶化を3サイクル繰り返すことで、スクロースペンタアセテートを脱アシル化することにより得られたシロップからのTGSの全体回収率は76.6%となった。この特許において用いられたイオン交換吸着樹脂は、TGSに不要な可溶性イオンを特異的に吸着することによる反応混合物の脱イオン化を意図していることに留意することが重要である。
【0014】
Jenner他(1982)は、特許文献6において、トリクロロ化エステルを分離するためのカラムクロマトグラフィを記述している。ここで彼らは、反応混合物を水に注ぎ、ジクロロメタン等の有機溶媒で抽出することにより反応混合物を首尾よく処理することができると報告している。抽出物を酸で洗浄し、塩基で洗浄し、乾燥及び濃縮させて得られた生成物を、例えばシリカゲルによるクロマトグラフィによってさらに精製することができる。精製により、2,3,6,3’,4’−ペンタ−アセチルスクロースの出発量に対し、80%近い収率のトリクロロ化エステルが得られる。この特許の実施例9におけるTGSペンタアセテートの分離に関しても、クロマトグラフィが記述されている。この特許は、「このシロップは、シリカゲルカラムでクロマトグラフされ、ジエチルエーテル/40℃〜60℃の石油エーテル(4:1)で溶離されて、TGSペンタアセテート(1.2g、78%)をもたらし、このTGSペンタアセテートはエタノールから結晶化され、基準試料と全く同じであると見なされた」と述べている。
【0015】
特許文献7は、種々のハロスクロース誘導体を合成するための合成経路を開示している。化合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより単離される。この特許は、中和及び脱イオン化のためのイオン樹脂の使用も開示している。
【0016】
Rathbone他(1989)は、「シュクラロースの製造方法(Tetrachlororaffinose and its use in the preparation of sucralose)」と題する特許文献8において、クロマトグラフィ法の使用について、「シュクラロース生成物の分別は任意の便法、例えば蒸発および有機溶媒に抽出して、クロマトグラフ技術により、あるいは水性系や非水性系から選択的に結晶化して行なうことができる」と言及している。彼らは、実施例4において、「生成物をクロマトグラフィにより分離し、スクラロース以外に、6−クロロガラクトースとTCRの存在を検出した」と述べている。しかし当該特許は、クロマトグラフィの種類及びそれに用いられる吸着媒体の種類については言及していない。
【0017】
特許文献9は、抽出、結晶化、その後の再結晶化を含む、TGS−6−ベンゾエートの精製プロセスを開示している。このエステルはその後、アルカリ加水分解され、イオン交換樹脂であるAmberlite IRC−50、H+formを用いて中和される。抽出と1度目の結晶化を組み合わせて1つのステップにしたものである抽出結晶化も開示されている。
【0018】
反応混合物からのTGS−6−アセテートの分離及び精製についても、従来技術が利用可能である。これら従来技術はすべて、イオン交換樹脂又はシリカゲルのいずれかをクロマトグラフィに用いていた。したがって、Mufti他(1983)の特許文献1における請求項1、8、9、10及び14は、この明細書の詳細な説明において言及された「脱アセチル化後のクロマトグラフが好ましいが、TGS6−アシレートを分離することも可能である。」という記述と合わせて解釈され、これは、いくつかの非常に類似した塩素化スクロースを精製する、塩素化プロセスに基づく反応混合物/プロセスストリームからのTGS−アセテートの単離及び精製は、カラムクロマトグラフィの使用による従来技術において予期されており、この目的で用いられた吸着材は、シリカゲル又はイオン交換樹脂のいずれか又は両方であり、用いられた原理は、クロマトグラフにかけられる溶液中に存在する分子の親水性特性及び疎水性特性の違いに応じた非特異的な吸着/脱着であったということを明らかにしている。
【0019】
特許文献10は、中間体の単離及びTGSの精製のためのシリカゲルの使用を記述している。
【0020】
特許文献11は、TGSを含有する反応混合物からDMFを除去するための水蒸気蒸留プロセスを開示している。
【0021】
特許文献12は、DMF除去の前又は後にTGS−アセテートが脱アセチル化され、TGSが抽出によって回復され、結晶化により精製されるプロセスを開示している。
【0022】
特許文献13は、TGS−アセテートを含有する液体混合物からの水蒸気蒸留、その後のTGS−アセテートの抽出、及び純粋なTGSアセテートを得るための結晶化の繰り返しによる、ジメチルホルムアミド(DMF)の除去を記述している。こうして得られた生成物はその後、再結晶化され、加水分解され、Amberlite IRC−50イオン交換樹脂に通され、次いで濃縮され、抽出され、最後に純粋なTGSを得るために結晶化される。
【0023】
Catani他(1999)は、「塩素化スクロースのクロマトグラフィ精製(Chromatographic purification of chlorinated sucrose)」と題する特許文献14において、吸着材として4%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンベースのスルホン酸ナトリウム樹脂を、脱着材として水を記述している。溶離順:塩>Di’s(二塩素化スクロース)>6,6’>スクラロース>6,1’,6,>4,6,6’>Tet’s(四塩素化スクロース)が示されている。この特許における分離プロセスでは、多孔性ゲルタイプのスルホン酸ナトリウムベースの陽イオン交換樹脂、並びに脱着材として水及び有機溶媒を伴うシリカゲルの使用がそれぞれ記述されている。さらに、この特許は、放射状流又は環状クロマトグラフィ、すなわち、連続環状クロマトグラフィ(Continuous Annular Chromatography:CAC)、擬似移動床式(Simulated Moving Bed:SMB)クロマトグラフィの固定床を記述している。この特許はまた、スクラロース−6−アセテートのための、加水分解の前の放射状処理及び逆相クロマトグラフィによる、エステル化された反応混合物の精製の可能性を開示している。多孔性ゲルタイプの陽イオン交換樹脂の場合、この特許は、2%〜6%のジビニルベンゼン(DVB)を吸着材として用いることを開示している。
【0024】
Catani他(2006)は、特許文献15において、プロセスストリームからのTGSの抽出精製のためのプロセスを記述している。液体抽出プロセスによる塩素化スクロース誘導体(複数可)の精製には、水及び有機溶媒を用いる繰り返し抽出ステップ及び逆抽出ステップが必要とされる。TGS等の塩素化スクロース誘導体(複数可)の水溶性には限りがあるため、複数回の抽出操作及び逆抽出操作は、プロセス全体の収率を低下させる。また、この抽出プロセスにおいて用いられる溶媒はかなりの水分を有しており、これも結晶化ステップにおいて収率を低下させる。
【特許文献1】米国特許第4,380,476号
【特許文献2】米国特許第5,136,031号
【特許文献3】米国特許第5,128,248号
【特許文献4】米国特許第4,980,463号
【特許文献5】米国特許第4,343,934号
【特許文献6】米国特許第4,362,869号
【特許文献7】米国特許第4,405,654号
【特許文献8】米国特許第4,826,962号
【特許文献9】米国特許第4,980,463号
【特許文献10】米国特許第5,128,248号
【特許文献11】米国特許第5,298,611号
【特許文献12】米国特許第5,498,709号
【特許文献13】米国特許第5,539,106号
【特許文献14】米国特許第5,977,349号
【特許文献15】米国特許第7,049,435号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
クロマトグラフィプロセス又は任意の他の精製方法によって得られた塩素化スクロース誘導体(複数可)の水溶液は、結晶化ステップのために水を除去する必要がある。通常、この水除去は、TGSを含む塩素化スクロース誘導体の有機溶媒への液体−液体抽出を用いるか、又は蒸留により行われる。生成物から水を除去するための蒸留は、時間及びエネルギーの両方を多量に消費する操作であり、また、高温に長時間晒すため、生成物の品質に悪影響を与えてしまう。
【0026】
代替案として、ヒドロキシル基が保護されたTGS等の塩素化スクロースを、抽出により、ヒドロキシル基が保護された低水溶性のTGSとして、良好な収率で精製することができる。このヒドロキシル基が保護されたTGSを、化学的に又は酵素的に加水分解してTGSを得ることができる。典型的な化学的プロセスでは、塩及び副生成物が生成されるため、抽出又はクロマトグラフィによってTGSを含む塩素化スクロース誘導体(複数可)をさらに精製する必要がある。一方、酵素的プロセスでは、加水分解のために水が存在する必要がある。これらの加水分解方法の両方において水除去が必要であり、したがって、上述したような問題が依然として存在する。
【0027】
分離方法としてクロマトグラフィを用いる特許のうちのいずれも、非イオン性ポリマー樹脂を用いていなかったことに留意されたい。
【0028】
したがって、カラムクロマトグラフィによる従来技術のプロセスすべてにおいて、従来のシリカゲル、及びポリスチレン又はジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン等に基づくもの等のイオン交換樹脂が、吸着材として用いられている。これらの方法はすべて、イオン吸着材及び/又は極性吸着材と溶離液との疎水性−親水性相互作用に関する、分子の相対的な違いの原理に基づいている。構造的に非常に近い分子種同士の場合、これらの違いは非常に小さいことが多いため、それらの溶離曲線において領域が重なり合う。最終的な結論は、2つの非常に類似した分子を、十分に高い収率ではっきりと分離することは困難であることが多く、大部分が溶離液中の混合物として取り出されるということである。2つの溶媒の部分混和性のために分子種が適切に分離されないという問題に加えて、溶媒抽出法においても、密接に関連した分子同士が適切に分離されないという同じ問題が生じる。これらの問題により、抽出を繰り返さなければならないため、溶媒の量が増加し、これらの溶媒は高いエネルギー入力によって回収される必要がある。
【0029】
水蒸気蒸留によるDMF除去は、大容量用途の場合、エネルギーを多量に消費する。これは、DMFは比較的沸点の高い溶媒であるためである。さらに、水蒸気蒸留は生成物を劣化させることがあるため、TGSの精製はより困難になり、収率及び純度が低下する。
【0030】
さらに、従来技術のプロセスすべてにおいて、通常は塩素化プロセスを含むプロセスにおいて、TGSを生成するために、TGS−アセテートを含有する反応マスをDMFの存在下でアルカリを用いて加水分解した場合は必ず、アルカリが、高価な溶媒であるDMFを急速に劣化させる。これにより、生成されるTGSの単位重量当たりのコストがかなり高くなる。
【0031】
従来技術のプロセスは、プロセスの効率並びに回収される生成物の品質及び収率において大きな改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の実施形態は、同一の又は異なるカラム及び同一の又は異なる吸着材による一連のステップにおいて、TGSの生成プロセスにおいて得られたプロセスストリームから、DMF及び無機不純物を除去すること、TGS−アセテート、TGS−アリレートを含むTGS−エステルを単離すること、カラム自体に一体化された前記TGS−エステルを脱エステル化すること、TGSを単離すること、TGSを濃縮すること、並びに、TGSを脱水することを実現するための、疎水性親和性カラムクロマトグラフィに基づいた驚くほど簡単な新規のカラムクロマトグラフィによる方法を具現する。本発明の方法のさらなる実施形態は、希釈溶液から、水分が5%以下の組成になるまで、目標生成物分子を濃縮するプロセスを含む。
【0033】
方法のさらに別の実施形態はまた、吸着材を複数回再生することによりプロセス効率及び費用効率を向上させることを含む。
【0034】
親和性クロマトグラフィは、或る程度の相対的な相互作用能力、例えば、混合物中のいくつかの他の構成成分に対してよりも、目標分子に対して高い親和性を有する能力等を示すことができる吸着面を用いることを含む。本発明の実施形態において用いられる吸着材は、典型的には、天然起源、合成起源又は半合成起源の有機ポリマーで作られた硬質又はゲルタイプの多孔性吸着材である。吸着材樹脂はまた、吸着材表面に堆積又は結合した、分子又は芳香族疎水性分子を含有するC2〜C18の直鎖又は分岐鎖から成ることもある。
【0035】
例示される実施形態は、TGSの生成プロセスにより生じるプロセスストリームに適用される方法に関するものであるが、本発明の実施形態の方法は、適当に改質又は付加されたハロゲン化スクロースすべてに適用される。
【0036】
本発明の方法の一実施形態は、塩素化スクロース誘導体と選択された吸着材との間の所望の相互作用のために適切な操作条件下で、所望の塩素化スクロース誘導体に対して或る程度の選択性を示す多孔性ポリマー吸着充填材での吸着クロマトグラフィによって、TGSを含む塩素化スクロース誘導体を捕捉、単離及び精製することに関する。
【0037】
この実施形態は、塩素化され中和された反応マスから、TGS及び/又は保護されたTGS若しくは部分的に脱保護されたTGSを捕捉及び精製するための方法を提供する。当該方法は、
(a)塩素化されpH調整された反応マスを、平衡化された硬質多孔性吸着材充填材と接触させることにより、前記塩素化された誘導体を充填材に吸着させること、
(b)DMF及び塩を含む、反応マスの吸着されなかった成分を充填材から除去するために、吸着充填材を洗浄すること、
(c)適切な溶離移動相を用いて、漸進的に及び/又は選択的に、塩素化誘導体を充填材から溶離すること、
(d)吸着充填材を再利用のために再生すること
を含む。
【0038】
こうして、方法は、DMF及び塩の除去と並行して、塩素化スクロース(TGSを含む)又はその誘導体(TGS−アセテート、TGS−ベンゾエート等を含む)の捕捉及び精製を実行し、DMF及び塩を含有しない生成物を生成する。溶離された塩素化スクロース又はその誘導体はその後、大部分の他の不純物の痕跡を除去するために、同じ吸着材又は第2のカラム中の別の吸着材を用いて最終精製され、実質的にすべての不純物を含有しないTGS、TGS−アセテート、又はTGS−ベンゾエート等の生成物をもたらす。本方法は、結晶化ステップ中に、高い収率及び高純度の生成物をもたらす。さらに、いくつかの従来技術において言及されている、通常の結晶化プロセスにおいて行われるような母液の再利用は必要ない。したがって、プロセス全体が簡潔、経済的、スケーラブルになり、前記塩素化スクロース又はその誘導体(複数可)の精製のための別途のステップは必要とされない。
【0039】
本発明の実施形態は、クロマトグラフィカラムによるin situのTGS−アセテートの脱アシル化又はTGS−ベンゾエートの脱ベンゾイル化に関連する。本発明の実施形態は、第3級アミド溶媒並びにすべての有機塩及び無機塩を除去するための改良され一体化された吸着クロマトグラフィプロセスを提供する。プロセスは、部分的に精製された形態での、スクロース又はその誘導体の塩素化反応物(以下、塩素化反応混合物という)からの、ヒドロキシル基が保護された塩素化スクロース誘導体の捕捉及び加水分解、並びにpH調整した反応混合物からのそれらのさらなる回収を伴い、これらは任意のすなわち既知のプロセスによってさらに精製することができる。本発明の実施形態は、単一の吸着クロマトグラフィステップの使用に関し、このステップは
(e)塩素化されpH調整された反応マスを、予め平衡化された吸着充填材と接触させることにより、6−O位のヒドロキシル基を保護した塩素化スクロース誘導体及び他の塩素化スクロース誘導体を吸着材に吸着させること、
(f)DMF及びすべての塩を含む、吸着されなかった化合物を除去するために、吸着充填材を洗浄すること
(g)TGSを含む脱保護された塩素化スクロース誘導体を回収するために、適切に作製された再生/溶離移動相を用いて、塩素化スクロース誘導体の加水分解と、漸進的及び/又は選択的な脱着とを並行して行うこと
(h)再利用のために、吸着充填材を洗浄及び平衡化すること
を含む。
【0040】
本発明の実施形態の方法は、バッチ接触器(攪拌槽等)、充填床クロマトグラフィカラム、又は膨張床カラム、流動床カラム、液固循環流動床(Liquid Solid Circulating Fluidized Bed:LSCFB)、移動床、又は膜クロマトグラフィシステム(中空繊維、螺旋状物又はシート等)若しくは遠心クロマトグラフィシステム、又はこれらの任意の組み合わせであり得る1つの装置で、複数のステップを実行する新規の方法である。これらの装置の組み合わせは、膨張床と充填床との組み合わせ、流動床と充填床との組み合わせ等であることができ、この組み合わせにより、本発明の実施形態の方法の性能が向上する。
【0041】
本方法は、塩素化又は非塩素化スクロース誘導体の、6−O−被保護基以外のヒドロキシル基の脱保護にも有用である。このようなヒドロキシル基の保護は、1つ又は複数のヒドロキシル部分、例えばジエステル、トリエステル、テトラエステル、又はペンタエステルにおいて行われ得る。
【0042】
本発明の方法の一実施形態は、精製された又は部分的に精製された塩素化スクロース誘導体(複数可)の水溶液又は水・有機溶液から水を除去して、水分レベルを5%(容量パーセント:v/v)未満にする。さらに、本方法はまた、TGS等の塩素化スクロース誘導体(複数可)の希釈溶液から、5%(重量パーセント:w/v)よりも高い濃度にまで生成物を濃縮し、有機溶媒(複数可)の溶液を得る。本方法において用いられる溶媒又は溶媒の組み合わせは主に、蒸留又は蒸発中に水との共沸混合物を形成することで残留する水の完全な除去を補助する溶媒であるが、これは必須ではない。用いられる溶媒は、その溶媒と水との共沸混合物の沸点が低く、素早く蒸発することができるようなものである。
【0043】
次に、濃縮された塩素化スクロース誘導体(複数可)の結晶化が実行されて、HPLC(High-Performance Liquid Chromatography)純度が99%よりも高い生成物の90%より多くを単離する。結晶化は、1つの溶媒又は溶媒の組み合わせを用いて実行される。この結晶化において、塩素化スクロース誘導体(複数可)は低溶解性又は部分溶解性である。
【0044】
本発明の実施形態の方法は、多孔性吸着充填材を用いたクロマトグラフィによる、精製された又は部分的に精製された塩素化スクロース誘導体(複数可)の水溶液又は水・有機溶液の捕捉、水除去、及び濃縮を含む。当該方法では、
(i)精製された又は部分的に精製された塩素化スクロース誘導体(複数可)を含有する溶液を、予め平衡化された非イオン吸着充填材、イオン吸着充填材、又は混合相の吸着充填材と接触させることで、前記塩素化スクロース誘導体(複数可)を吸着充填材に吸着させ、
(j)空気又は非反応性ガスを用いて、吸着した充填材を脱水及び/又はパージし、設置された吸着床において保持された遊離水又は溶媒を含有する水を除去し、
(k)実質的に水を含有しない溶媒、又はそのような溶媒の組み合わせを用いて、前記塩素化スクロース誘導体を充填材から溶離し、
(l)次のサイクルにおいて再利用するために、吸着充填材を再生及び再平衡化する。
【0045】
TGSを含む塩素化スクロース誘導体の吸着後、充填カラムにおいて用いられることが好ましい吸着充填材を設置し、この設置された吸着床の空隙において保持された遊離水又は溶媒を含有する水を除去するように、空気、窒素等の非反応性ガスで脱水及びパージする。その後、吸着されたマスは、適切な1つの溶媒又は溶媒の混合物により、カール・フィッシャー法で分析したときに水分含有量が5%(v/v)未満の濃縮されたマスとして、吸着充填材から溶離される。したがって、本発明の本実施形態の方法は、水除去及び濃縮を1つのステップで実行する。濃縮され、溶離又は脱着された溶液を、その後、30℃〜60℃の真空下で蒸留するか又は蒸発させ、溶媒から結晶化させる。この開発された方法は、濃縮及び水の完全な除去により、結晶化による収率を向上させる。
【0046】
従来技術のいずれも、任意の種類の吸着クロマトグラフィによる捕捉、水除去及び濃縮を開示していない。また、従来技術のいずれも、本発明の実施形態の方法により得られる所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)の収率よりも高い結晶化の収率を得ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
TGSを生成するための典型的な反応混合物は、保護された及び/若しくは脱保護されたTGS又は関連する部分に加えて、スクロースのモノ、ジ、トリ、及びテトラクロロ誘導体、二量体不純物若しくは多量体不純物、高沸点溶媒、及び、塩素化ステップ後の中和及び加水分解中に精製される塩素化物、リン酸塩、アセテート、ベンゾエート等の塩も含有する。特に、これら不純物のすべては、後処理プロセスが複雑であるという問題を呈し、TGS製造プロセスの経済性に深刻な影響を与える可能性がある。本発明の実施形態のカラムクロマトグラフィプロセスを受ける反応混合物は、スクロースの酵素的アシル化の結果(これはさらに酵素的に脱アシル化される)又は中和された塩素化反応混合物(酵素的に脱アシル化される)の結果でもあり得る。両方の場合において、TGS−6−アセテートの単離及び濃縮を含む任意のプロセスステップは、結果的に冗長であり、本発明の実施形態の方法では、TGS−6−アセテート又はTGS−6−ベンゾエートの単離ステップ並びにその精製及び脱アシル化は省略されると考えられる。種々のモノ、ジ−、トリ−、及びテトラクロロスクロース誘導体が存在する場合、それらは純粋なTGSの形成を妨げ、したがってTGSの収率及び純度を低下させる。これらは従来の精製プロセスでは部分的にしか除去されず、食品及び飲料のフレーバーシステムと好ましくない相互作用を起こし、甘味度を変化させ、最終生成物の味及び品質に深刻な悪影響を与える。逆に、不純物をすべて除去することは、味、甘味度及び美味しさに良好な影響を与える。合成経路において用いられる溶媒、例えば第3級アミドも、生成物の結晶化に影響を与えることが多く、除去する必要がある。溶媒は、蒸留又は水蒸気蒸留等の既知の従来のプロセスでは除去しにくいことがわかっている。このように、TGSを含有する反応混合物の後処理には複数の問題がある。
【0048】
これらの複雑な問題は、本発明の実施形態によって解決される。本発明の実施形態は、操作条件下で除去されることが意図される所望の化学的分子のうちの1つ又は複数に対してかなり特異的な或る程度の親和性を有する吸着材を、カラムクロマトグラフィにおいて用いることを含む。上記所望の化学的分子は、DMF、塩素化スクロース誘導体、又は塩素化スクロースを含むがこれらに限定されない。この相対的な親和性は、イオン交換吸着材又はシリカゲル吸着材との疎水性:親水性相互作用を含む従来技術のカラムクロマトグラフィプロセスにおいて行われた分子の吸着−脱着よりも選択的であり、吸着材と、分離されるべき分子種と、溶離液との間に生成される選択的なクロマトグラフィ保持挙動をもたらす。
【0049】
本明細書の目的のために、親和性クロマトグラフィは、混合物中の他の成分のうちのいくつか又はすべてに対する親和性を上回る或る程度の相対的な親和性を、目標分子に対して示すことができる吸着面を用いることを含む。
【0050】
本発明の実施形態の方法では、TGS、TGS前駆体及びTGS誘導体のクロマトグラフィ分離の分野において最初に、塩素化スクロースを製造するプロセス中で遭遇する、非常に近い構造を有する複数の分子のそれぞれに対し、大幅に異なる親和特性を有し、カラムクロマトグラフィにおいて、重複することなくそれらを分離することが可能な吸着材を用いた。
【0051】
本発明の実施形態の特徴は、カラムクロマトグラフィのプロセスを非常に効率的にしただけでなく、アルカリ水性溶離液による、in situでの吸着されたTGS−アセテートの脱アシル化又はTGS−アリレートの脱アリール化の一体化(TGS−6−アセテート又はTGS−6−ベンゾエートの脱アシル化、それはまた、吸着材と接触した状態、又は吸着材から脱着された状態でカラム内にある)の可能性を初めて開拓した。この一体化は、脱着のプロセス中に行われ、本発明の実施形態の1つである。in situでの脱アシル化の非常に重要な利点は、この脱アシル化がDMFの非存在下で進められることであり、これによりDMFがアルカリ性条件に晒されることが回避され、DMFが破壊されることなく、実用的に完全に回収される。この利点は、DMFの存在下での液体反応混合物中のTGS−アセテートの脱アシル化又はTGS−6−アリレートの脱アリール化を含む初期の従来技術のプロセスに比べて、重要な経済的利点を有する。さらに、混合物中のすべての不純物からのTGS−アセテート及びTGS−ベンゾエートの同時単離、並びに非常に純粋な形での溶離があり、これらはすべて、親和性カラムクロマトグラフィの1つの同じプロセスステップに一体化される。こうして、本方法は、いくつかの複数の機能を1つのステップで実行する。回収された脱保護された塩素化スクロース誘導体は、クロマトグラフィ及び/又は抽出及びその後の結晶化のような任意の又は既知のプロセスによりさらに精製され得る。この脱アシル化の方法は、従来技術のいずれにおいても予期されず、非常に単純且つ経済的な製造方法、具体的にはTGS、一般的にはハロゲン化糖の製造方法の発展につながる。
【0052】
本方法は、脱保護された塩素化スクロース誘導体を、本発明の実施形態の方法において投入された反応混合物中の化合物の濃度よりも高い濃度で回収することができる。
【0053】
本発明のさらなる実施形態は、濃縮のための非常に効率的なプロセスとしての機能を果たし、大量の希釈溶液の処理を可能にする。これらの希釈溶液は、DMFを含むすべての他の不純物を含有しない、高純度の、所望の塩素化スクロース生成物の濃度5%(w/v)以上の溶液に転換される。また、一体化された1つのプロセスにより、希釈された複合反応混合物から出発して、単一経路で、約95%以上の所望の生成物の回収率で、すべての不純物を実質的に含有しない、最大で5%(v/v)の最終含有量が達成される。さらに、単離された所望の生成物を、同じ又は異なる吸着材を有する別のカラムにもう一度通過させるだけで、不純物の痕跡をなくすことができる。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、吸着材を何度も繰り返し再生することができる。回収された生成物は、さらなる精製のためにいかなる他の方法も必要としない。したがって、プロセス全体は単純であり、経済的且つスケーラブルである。本明細書を通して、文脈において変更の許可又は指示がない限り、単数形は、その複数形も包含する。例えば、「親和性クロマトグラフィプロセス(an affinity chromatographic process)」は、親和性クロマトグラフィに基づく1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを包含する。同様に、「溶媒(a solvent)」は、1つ又は複数の溶媒を包含する。TGS、TGS前駆体、及びTGS誘導体の製造、精製及び単離のための「プロセスストリーム(a process stream)」は、TGS、TGS前駆体、及びTGS誘導体の製造、精製及び単離のためのすべての既知のプロセスのプロセスステップ中の「プロセスストリーム(process streams)」のうちの1つ又は複数又はすべてを包含する。
【0055】
本発明の実施形態を適用可能な反応混合物/プロセスストリーム/プロセス溶液は、それぞれの溶質が回収されることが意図される、TGSアセテート又はTGSの単純な水溶液から、TGS、TGS前駆体及びTGS誘導体のうちの1つ又は複数を含むがそれらに限定されないTGSアセテート又はTGSの生成の酵素的なプロセス及び非酵素的なプロセスに由来する任意のプロセスストリームまで、すべてを包含する。
【0056】
本発明の実施形態では、全く新規の手法が採用される。6−O−位が保護化、あるいは脱保護された塩素化スクロース誘導体の混合物又はそれらの混合物から成る中和された反応マスを、混合物中に存在する目標生成物に対して特異的な親和性を有する適切なリガンド(吸着材)と接触させて分離させる。このリガンドは、適切な架橋されたポリスチレン−ジビニルベンゼン若しくはポリメタクリレートベースの充填材、又は適切な表面改質によってそれらから作られる誘導体に由来し、塩素化スクロース誘導体を選択的に吸着する吸着材から成っていてもよい。次に、無機塩、溶媒、水が液体として前記リガンドから分離される。吸着は、1つのスクロース誘導体に対して選択的であってもよく、又は複数のスクロース誘導体がカラム充填材に吸着されて、その後適切な溶離液によって選択的に溶離されてもよい。
【0057】
吸着材と塩素化スクロース誘導体との間の相互作用は、前記吸着材とスクロース誘導体との一時的結合の形成に基づいたものであり得る。
【0058】
本発明の実施形態は、糖誘導体との分離のための1つ又は複数の適切なリガンドを特定して、リガンドと糖誘導体との一時的結合の形成を達成することを含むが、本発明はそれに限定されない。これは、他のあらゆる従来技術のプロセスに対する改善である。このような場合における分離は、極性相互作用ではなく、純粋な疎水性親和性に基づいている。
【0059】
記述されるリガンドは、塩素化スクロース誘導体を吸着し、中和された反応マスのすべての他の成分を分離して洗い流すのに役立つ。塩素化スクロース誘導体はその後、必要に応じて、第1の塩素化スクロース、次に第2の塩素化スクロース…といった段階的な方法で吸着材から抽出される。
【0060】
選択的な脱着によるフラクションのそれぞれは、別々に収集される。その後、フラクションは、周知の方法により濃縮され、脱保護され、結晶化される。
【0061】
本発明の実施形態の方法によって精製することができる反応混合物/プロセスストリーム/溶液を例示的により具体的に列挙すると、TGS生成の1つ又は複数のプロセスのプロセスストリーム由来の1つ又は複数の塩素化スクロースを含有する溶液を含むが、これらに限定されず、これらの列挙はより具体的な例示のためである。TGSの生成方法は、以下のうち1つ又は複数を含む。
(a)DMF及び/又は無機不純物、及び/又は分解生成物を含む他の有機不純物を含有しない有機スクロース誘導体を、酵素反応混合物及び塩素化反応混合物を含む非酵素反応混合物から、並びに、TGS及び/又はTGS−アセテート及び/又はTGSベンゾエート等のTGSアリレートを水系又は非水系の溶媒に溶解した単純溶液から、単離及び濃縮すること、
(b)水系又は非水系の溶媒に希釈した後、ATFD(Ratnam他の国際公開WO2005/090374号及びRatnam他の国際公開WO2005/090376号に記載の攪拌薄膜乾燥機(Agitated Thin Film Dryer))を含む種々の乾燥方法で反応混合物を乾燥させることによって得られた固体から、無機不純物及び有機不純物を除去すること、
(c)カラムクロマトグラフィ又は他の精製方法による精製により得られた生成物のフラクションを濃縮すること、
(d)酵素的転換プロセスで、スクロース−6−アセテートからグルコース−6−アセテートを分離すること
【0062】
したがって、本発明の実施形態の方法を適用することができる、精製のためのさらに多くのプロセスストリームの実施形態は、いくつかの従来技術のTGS生成、TGSの前駆体生成、及びTGSの誘導体生成の酵素的及び非酵素的なプロセスからのものであり得る。このようなプロセスは、限定はしないが、Fairclough, Hough and Richardson著のCarbohydrate Research 40 (1975) 285-298、Mufti他(1983)の米国特許第4,380,476号、O'Brien他(1988)の米国特許第4,783,526号、Tully他(1989)の米国特許第4,801,700号、Rathbone他(1989)の米国特許第4,826,962号、Simpson(1989)の米国特許第4,889,928号、Navia(1990)の米国特許第4,950,746号、Homer他(1990)の米国特許第4,977,254号、Walkup他(1990)の米国特許第4,980,463号、Neiditch他(1991)の米国特許第5,023,329号、Vernon他(1991)の米国特許第5,034,551号、Walkup他(1992)の米国特許第5,089,608号、Dordick他(1992)の米国特許第5,128,248号、Khan他(1992)の米国特許第5,136,031号、Bornemann他(1992)の米国特許第5,141,860号、Dordick他(1993)の米国特許第5,270,460号、Navia他(1994)の米国特許第5,298,611号、Khan他(1995)の米国特許第5,440,026号、Palmer他(1995)の米国特許第5,445,951号、Sankey(1995)の米国特許第5,449,772号、Sankey他(1995)の米国特許第5,470,969号、Navia他(1996)の米国特許第5,498,709号、Navia他(1996)の米国特許第5,530,106号、Catani他(2003)の米国特許出願第20030171574号、Ratnam他(2005)の国際公開WO2005/090374号、Ratnam他(2005)の国際公開WO2005/090376号等を含む。これは例示的な列挙に過ぎず、網羅的であることも完全であることも主張しない。
【0063】
本発明の一実施形態では、本発明は、TGSを含む塩素化スクロース誘導体を含有する反応混合物/プロセスストリーム/溶液の単離及び精製のための吸着クロマトグラフィプロセスに関し、また、疎水性不純物及び親水性不純物、無機塩及び有機塩、溶媒及び有色の残留物のほとんどを実質的に含有しないTGSを作製することに関する。より具体的には、本発明は、高収率及び高純度でTGSを反応混合物から単離することができる方法に関する。具体的には、TGSを純粋な形で分離する方法に関する。この方法により、反応混合物中に存在する構造的に類似した又は類似していない不純物を含有しない、実質的に純粋なTGSを高収率且つ高回収率で分離及び回収することができる。回収率は例えば95%よりも高く、100%程度になることもある。この方法は、或る装置を用いることによって、並びに吸着、洗浄及び溶離又は脱着動作を含むプロセスを用いることによって、十分な回収率及び吸着材の良好な耐久性を保ちながら、いかなる付加的な予備精製も必要なく達成され、95%よりも高い回収率で、純度99%のTGSを提供する。
【0064】
従来技術の特許は、ポリスチレンジビニルベンゼン(PS−DVB)、ポリメタクリレートをベースとする硬質多孔性充填材、セルロース系充填材、アガロース、キトサン、デキストラン、ポリアクリルアミドをベースとする多孔性ゲルタイプの充填材、及びヒドロキシアパタイト、多孔性ガラス、ステンレス鋼、石英、磁気ビーズをベースとする充填材を用いることを対象としていない。また、従来技術の特許は、上記タイプの充填材のための膨張床、流動床、固液循環流動床、膜クロマトグラフィ、充填床、二連カラムクロマトグラフィ、及び擬似移動床クロマトグラフィを用いることを開示していない。さらに、従来技術の特許は、粒子サイズ、孔サイズ、所望の精製に必要とされる充填材の表面積、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、シアノ基、脂肪族基、芳香族基、ハロゲン基、及び固定化金属キレート親和性クロマトグラフィのためのイミノジアセティック酸(IDA)のような金属キレート基等の、スルホン酸基以外の基の種類を開示していない。最後に、従来技術の特許は、脂肪族の炭化水素基及び/又は芳香族の炭化水素基(炭素数C1〜C8)、シアノ基又はアミノ基によって修飾したシリカ等の修飾シリカの使用を開示していない。また、示唆されたパルス動作を有するクロマトグラフィプロセスの使用は、大量のフィード材料を取り扱うには適していない可能性がある。
【0065】
従来技術の特許は、上述のような種々の方式でのカラムクロマトグラフィにおける天然又は合成ポリマー充填材の使用を開示していない。
【0066】
さらに、TGSからハロゲン化糖不純物を除去するための他の手法には比較的注意が払われていない。
【0067】
上記の議論によれば、特許された又は報告されたプロセスのいずれも、本発明の背景において指摘した問題に対処していないことが留意される。したがって、脱保護されたTGS、保護されたTGS及び部分的に保護されたTGSを含む塩素化スクロース誘導体を精製し、溶媒DMFを重大な損失及び劣化なしに除去するためのスケーラブルで経済的且つ商業的に実現可能な方法を発明する必要があると考えられる。同じ方法を、TGS又はTGS−アセテートをそれらの溶液から単独で単離するためにも用いることができる。高純度のTGSを生成し、最終結晶化プロセスにおけるTGSの高収率を保証する方法も必要であると考えられる。他の塩素化された糖誘導体とDMFとを含有しないTGSが得られた場合、結晶化におけるTGSの損失を最小限にすることができる。特許されたプロセスのいずれも、中間体又はTGSの抽出、結晶化の複数のプロセスステップを必要とするため、すべての塩素化された糖誘導体及びDMFを含有しないTGSを容易且つ経済的な方法で提供している特許はない。
【0068】
本発明の実施形態の方法は、吸着クロマトグラフィプロセスにおいて、硬質多孔性吸着充填材を用いて、塩素化され中和された反応マスから得られた他の塩素化スクロース誘導体から、TGS及び/又は保護されたTGS又は部分的に脱保護されたTGSを捕捉及び精製することにより、すべてのプロセスの上述した欠点を克服した。本発明の実施形態の方法は、上記成分の捕捉中に、DMF等の第3級アミド溶媒も除去し、塩及び着色された残留物の大部分も並行して除去される。したがって、本発明の実施形態の方法は、保護されたTGS及び/又は脱保護されたTGSを捕捉、精製し、塩及びDMFを反応マスから直接除去するための一体化された方法である。さらに、上述した問題の解決策が以下に詳細に説明される。
【0069】
まず、スクロースの6位に存在する最も反応性の高いヒドロキシル基を、保護し、次に、その6−O−被保護スクロースを「ビルスマイヤー・ハック試薬」を用いて塩素化させることにより、スクロースからTGSが生成される。次に、塩素化された反応マスは、適切な塩基で中和される。中和されたマスの構成成分は以下の通りである。
(a)塩素化スクロース誘導体(6−O−保護体、脱保護体及び/又はこれらの混合物)、及び/又は
(b)無機塩(リン酸塩、塩素化合物等)、及び/又は
(c)有機塩(アセテート、ベンゾエート等)、及び/又は
(d)溶媒としての第3級アミド、アルコール、ピリジン等、及び/又は
(e)カラメル化糖等の有色の糖誘導体、及び/又は
(f)水
【0070】
この塩素化後の中和されたマスは、TGS及び/又は保護された若しくは部分的に脱保護されたTGSを他の塩素化誘導体から精製するために処理される。
【0071】
本発明の実施形態では、塩素化スクロース誘導体の6−O−保護体、(化学的又は酵素的に脱保護された)脱保護体のいずれか又はそれらの混合物から成る中和された反応マスを、適切な硬質多孔性ポリマー充填材と接触させる。充填材表面のリガンド又は化学基は、塩素化スクロース誘導体に対する親和性及び/又は強い相互作用能を有し、そのため、適切な条件下で、塩素化スクロース誘導体を選択的に吸着することができる。次に、塩、溶媒及び有色の残留物の大部分は、吸着されなかった部分として前記充填材から分離される。吸着は1つ又は複数のスクロース誘導体に対して行うことができる。吸着の度合いは、種々の塩素化糖によって異なる。吸着の度合い又は結合強度又は親和性を、最も吸着される塩素化糖から最も吸着されない塩素化糖の順で示すと、プロセス条件に応じて、テトラクロロ>トリクロロ>ジクロロ>モノクロロ誘導体の順、又はテトラクロロ<トリクロロ<ジクロロ<モノクロロ誘導体の順である。
【0072】
多孔性吸着充填材と塩素化及び/又は非塩素化スクロース誘導体との間の相互作用は、配位相互作用、水素結合、イオン相互作用、双極間相互作用、誘起双極子相互作用、疎水性相互作用等の2種類以上の相互作用を含む、可逆性のある多重相互作用若しくは多点相互作用及び/又はこれらの混合に基づく。これらの相互作用は、最終的に塩素化スクロース誘導体と相互作用基との選択的な相互作用をもたらす。
【0073】
前記塩素化スクロース誘導体を純粋な形で単離及び精製するための、非イオン又は陽イオン交換多孔性充填材を用いた本発明の実施形態の方法は、(A)スチレン及びジビニルベンゼン(PSDVB)コポリマー、或いは(B)スチレン、ジビニルベンゼン、又は炭素数C1〜C18の飽和若しくは不飽和の脂肪族部分若しくは芳香族部分、又はフッ素、臭素、塩素等のハロゲンのコポリマー、或いは(C)アガロース、デキストラン、キトサン又はセルロース等をベースとする天然ポリマー、或いは(D)架橋してビーズ状の充填材を形成することにより作製された連結された粒状の構造を形成するために架橋されたポリメタクリレート又はポリアクリルアミドのコポリマー、或いは(E)これらの組み合わせ、或いは(F)上記ポリマー材料のうちの1つ又は複数から作製された磁気ビーズ、或いは(G)脂肪族の炭化水素基及び/又は芳香族部分、アミノ部分又はシアノ部分を有する修飾シリカ等の充填材を有する。
【0074】
本発明の実施形態において、用語「多孔性充填材」は、微小孔性、マクロ多孔性、メソ多孔性、超マクロ多孔性、ギガ多孔性の充填材を包含する。
【0075】
本発明の文脈では、用語「親和性」は、吸着の選択性をもたらし、用いられる吸着材及び移動相の種類によって異なる相互作用の力を有する、分子種と吸着材又は吸着材表面の1つ又は複数の相互作用基との間の相対的に特異的な相互作用の強度を意味する。
【0076】
吸着充填材の相互作用基及び/又はリガンドは、ベースの充填材の一部であってもよく、又は既知の活性化化学によって充填材に付加されて、充填材の疎水性又は親水性、基の密度、空間的な向き並びにスクロース誘導体に対する選択的及び特異的な親和性等の所望の特性を与えてもよい。充填材の他の重要な特性は、表面積、多孔率、粒子サイズ、孔半径、及び孔構造である。
【0077】
本発明の実施形態では、吸着材として膜を用いてもよい。この場合、相互作用基及び/又はリガンドが膜の表面に分散され、こうしたシステムは膜クロマトグラフィとして用いられる。用いられる膜は多孔性又は無孔性であり、限定はしないが、中空繊維、フラットシート、ポリエーテルスルホンベースの螺旋状の膜、セルロースアセテート、再生セルロース、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びセルロースアセテートフタレート等のモジュールの形態である。本発明の好適な実施形態では、濃度局在効果を避けるために、直交流タイプの膜が用いられる。
【0078】
本発明の別の実施形態では、充填材のリガンドは、本発明の文脈での使用に適したハロゲンであり、臭素、塩素、フッ素及びヨウ素を含む。当業者は、吸着材の修飾分野において通常の技術を有する者にとって既知の方法で、同一のハロゲン又は異なるハロゲンの組み合わせ若しくは化合体を配置することができる。
【0079】
本発明の実施形態の方法は、市販のクロマトグラフィ吸着媒体を用いて実行されることが好ましいが、それに限定されない。市販の又はその他の吸着充填材は、以下の群から選択されるが、それらに限定されない。
(a)炭素数C2〜C18の飽和若しくは不飽和の芳香族部分若しくは脂肪族部分又はシアノ等の置換基を有する又は有さないスチレンジビニルベンゼンのコポリマー、例えばDIAION HP−20、HP−21、HP20SS、DCA 11、又はSEPABEADS SP825、SP700、SP850、SP20SS、SP70、FP−OD(三菱化学株式会社、日本)、Biobeads SM(Biorad Laboratories、米国)、Amberchrom CG71、CG161、CG300、CG1000 SMC吸着材(トーソー・バイオサイエンス)、Amberlite XADシリーズ(Rohm and Haas、米国)、ADS600(Thermax、インド)、並びに/又は
(b)ハロゲン原子、例えばフッ素、臭素、塩素及びヨウ素等の置換基を有する又は有さないスチレンジビニルベンゼンのコポリマー、例えばSEPABEADS SP207、SP207SS(三菱化学株式会社、日本)、並びに/又は
(c)連結された粒状の構造を形成するために架橋され、作製された、置換基を有する又は有しないポリメタクリレートコポリマー及び/又はポリアクリルアミドコポリマー、例えば、DIAION HP−2MG(三菱化学株式会社、日本)、Macro−Prepメチル、ブチル、フェニル(Biorad Laboratories、米国)、並びに/又は
(d)天然ポリマー、例えばアガロース、デキストラン又はセルロースをベースとする充填材、例えば、SOURCE 5RPC、15RPC、Phenyl Sepharose6FF、HP(高置換)、Butyl and Octyl Sepharose4FF(GE healthcare)、CELBEADS(現地で開発された、インド特許出願第356/mum/2003号)、並びに/又は
(e)炭素数C2〜C18の置換基として芳香族部分及び/若しくは脂肪族部分又はシアノ基有する修飾された修飾シリカ、及び/又は
(f)上記ポリマーのうちの1つ又は複数をベースとし、アミノ(第1級、第2級又は第3級)部分又はイミノ部分を有する混合充填材又は陽イオン交換充填材、例えばSEPABEADS FP−NH、EB−QA、EB−DA、FP−HA、EB−HA(Resindion srl, Mitsubishi Chemical Corporation、イタリア)、Sepharose−DEAE、Streamline−DEAE(GE healthcare)、CELBEADS−DEAE(現地で開発された、インド特許出願第356/mum/2003号)、並びに/又は
(g)ヒドロキシル基又はジオール基を有するPSDVB、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、天然ポリマー及びこれらの組み合わせをベースとする充填材、例えばSEPABEADS FP−HG(Resindion srl, Mitsubishi Chemical Corporation、イタリア)
【0080】
本発明の実施形態の方法において用いられる充填材の他の特性は、表面積(少なくとも100m/g)、孔直径(少なくとも50Å)、粒子サイズ(少なくとも5μm)、及び溶解度指数又は疎水性(少なくとも0.5)である。
【0081】
2つの吸着ステップにおいて用いられる樹脂は、同じであっても異なっていてもよい。樹脂の選択は非常に重要であり、多くの実験が必要である。選択は、樹脂の特性(孔サイズ、粒子サイズ、表面積、ベースマトリクス及び表面疎水性、及び溶解度指数)、精製すべき材料の種類、存在する不純物又は関連派生不純物のレベル及び性質、反応のために用いられる媒質の種類、並びに用いられる移動相の種類によって決まる。選択において影響を与える他の要因は、温度、流量、グラディエント法かアイソクラティック法か、グラディエント波形及びグラディエント量等のクロマトグラフィ条件である。
【0082】
本発明の実施形態において、用語「関連(派生)不純物」は、クロマトグラフィステップ前の、合成中又は処理中に生成される不純物を意味し、前記塩素化スクロース誘導体と構造的に関連している。
【0083】
本発明の実施形態において、用語「グラディエント溶出」は、TGS及び他の塩素化スクロース誘導体の選択的な脱着/溶離のために用いられる移動相の組成/特性によって得られる段階的な勾配、直線的な勾配、凸型の勾配及び凹型の勾配を含む。用語「グラディエント量」は、移動相の溶離力が最高になるときの移動相の量を意味する。
【0084】
中和された反応マスとの接触時の吸着充填材の吸着能は、脱保護されたTGS、保護されたTGS、及び部分的に脱保護されたTGS(すなわち、保護されたTGSと脱保護されたTGSの混合)の場合、個々に又は組み合わせて、5〜100グラム/リットルである。プロセスは、バッチ式又は連続式で実行され得る。一実施形態によれば、吸着は、適切な吸着材で充填された充填床クロマトグラフィカラムで、反応マスを樹脂カラムに通過させて実行されることが好ましい。
【0085】
連続式操作の場合、充填床吸着又は膨張床吸着(Expanded Bed Adsorption:EBA)又は流動床吸着(Fluidized Bed Adsorption:FBA)又は液固循環流動床(Liquid Solid Circulating Fluidized Bed:LSCFB)又は膜吸着(Membrane Adsorption:MBA)又は改良型擬似移動床(Improved Simulated Moving Bed:ISMB)又は移動床又はそれらの任意の組み合わせを用いることができる。バッチシステムの場合、攪拌槽を用いることができる。
【0086】
本発明の実施形態の方法において、膨張床又は流動床が精製に用いられる場合、ロード段階及び洗浄段階の後に、膨張床式、流動床式又は充填床式で溶離を実行することができる。溶離は充填床式で実行されることが好ましい。
【0087】
好適な実施形態によれば、前記塩素化スクロース誘導体は充填材又は膜に吸着され、これらの充填材又は膜はその後、塩及びDMFを除去するために洗浄され、その後、選択的な溶離が行われて、純粋な保護されたTGS、脱保護されたTGS又は部分的に脱保護されたTGSが得られる。前記TGSは、段階的勾配又は直線的勾配の移動相によって精製されるだけではなく、適切な移動相を用いるアイソクラティック溶出によっても精製される。
【0088】
本発明の好適な実施形態では、充填材又は膜のリガンド又は相互作用化学基は、ベンジル基又はフェニル基であり、トリクロロ又はテトラクロロスクロース誘導体が保持され、一方、ジクロロ及びモノクロロ誘導体は、洗浄移動相において単離される。トリクロロ及びテトラクロロ誘導体はその後、選択的な溶離によって純粋なフラクションで単離される。
【0089】
本発明の別の好適な実施形態では、充填材又は膜のリガンド又は相互作用基が臭素等の芳香族ハロゲンである場合、テトラクロロ、トリクロロ、ジクロロ及びモノクロロ誘導体のすべてが吸着される。これらの結合強度は、アルカリ条件下でテトラクロロ>トリクロロ>ジクロロ>モノクロロ誘導体、又は酸性条件下でテトラクロロ<トリクロロ<ジクロロ<モノクロロ誘導体の順であり得る。所望の塩素化スクロース誘導体、例えばTGSはその後、洗浄により前者の場合にはジクロロ又はモノクロロ、後者の場合にはテトラクロロを選択的に溶離される。同様に、トリクロロ、ジクロロ及びモノクロロスクロース誘導体から成る混合物を、アミノ、イミノ等の別の種類のリガンドに接触させ、トリクロロスクロース誘導体を強力に吸着させ、一方ジクロロ及びモノクロロ誘導体を選択的に溶離することができる。これにより、トリクロロ誘導体は純粋なフラクションとして溶離され得る。このように、本発明の実施形態によって、モノクロロ、ジクロロ、トリクロロ及びテトラクロロ誘導体及び/又はそれらの混合を含有する反応混合物を、いくつかの異なる経路及び組み合わせで分離して純粋なフラクションにすることができる。DMF及び塩は上記のいずれの経路においても吸着されないままであり、吸着された塩素化スクロース誘導体を損失することなく、吸着材から単純に洗い流すことができる。
【0090】
本発明の実施形態の方法では、脱保護されたTGSを含有する反応マスがフィードとして用いられる場合、溶離後に、95%よりも多い純粋な形の脱保護されたTGSが得られる。
【0091】
本発明の実施形態の方法では、保護された及び/又は部分的に脱保護されたTGSを含有する反応マスがフィードとして用いられる場合、選択的な溶離により、95%よりも多い純粋な形の保護された及び/又は部分的に脱保護されたTGSが得られる。この保護された及び/又は部分的に脱保護されたTGSはその後、既知の化学的方法又は酵素的方法によって精製後に完全に脱保護される。
【0092】
本発明の方法の一実施形態では、精製された脱保護TGSは最後に、溶離移動相において用いられた有機溶媒を単純な蒸発又は蒸留により完全に又は部分的に除去した後、第2のクロマトグラフィカラムにおいて、同様の又は別の種類の吸着材で最終精製される。この最終精製ステップにおいて用いられる吸着材は、上述した吸着材のグループ全体の中から選択することができる。最終精製ステップにおいて用いられる吸着材の吸着能は、生成物5グラム/吸着材1リットルよりも高い。この最終精製ステップは充填床、擬似移動床、又は任意の改良型擬似移動床において動作することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、イオン排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、膜クロマトグラフィ、遠心クロマトグラフィ、及び混合相互作用クロマトグラフィ又はそれらの組み合わせを用いることができる。1つのカラムから溶離された選択したフラクションを第2のカラムに直接送ることができる二連カラムクロマトグラフィも、このようなプロセスに用いることができる。99%よりも高い純度のTGSを得るために、アイソクラティック溶出又はグラディエント溶出を用いて、不純物の痕跡を除去することができる。本発明の実施形態の別のケースでは、保護された及び/又は部分的に脱保護されたTGSも、こうしたプロセスによって最終精製して、98%よりも多い純粋な形の保護された及び/又は部分的に脱保護されたTGSを得ることができ、このTGSを既知の化学的又は酵素的方法によって加水分解して純粋なTGSを得てもよい。精製及び最終精製後の前記クロマトグラフィプロセスにより、フィード反応マスへの入力フィードに対する、純粋なTGS−6−アセテート、TGS−6−ベンゾエート又はTGSの回収率が90%よりも高くなり、場合によっては100%にもなる。不純物の痕跡を示す、最終精製カラムからのフラクションは、総回収率を95%よりも高くするために、次のサイクルにおいて再利用される。
【0093】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、脱保護されたTGS又は保護された及び/若しくは部分的に脱保護された塩素化スクロース誘導体を含有する中和された塩素化反応マスは、攪拌薄膜乾燥機等の既知の方法により乾燥させることができ、それにより溶媒部分が除去される。この乾燥された反応マスは、水系又は水系有機媒質に希釈することができ、本発明の実施形態の方法に従って純粋なTGSを回収することができる。
【0094】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、脱保護されたTGS又は保護された及び/若しくは部分的に脱保護された塩素化スクロース誘導体を含有する、溶媒を含有しないか又は水性の塩素化反応マス、並びに任意の種類のクロマトグラフィステップを用いて得られたプロセスフィードをフィードとして用いることができる。さらに、本発明の実施形態の方法に従って、純粋なTGS又は塩素化スクロースを回収することができる。
【0095】
精製と最終精製の両方における平衡化、洗浄、溶離及び再生の移動相は、有機調整剤、例えば、限定はしないが、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)、アセトニトリル、塩素化有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン)、トルエン、エステル(ブチルアセテート、エチルアセテート)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、及びそれらのうち1つ又は複数の任意の適切な組み合わせを含有する。モノ、ジ、トリ及びテトラ塩素化化合物と吸着材との所望の親和性及び/又は相互作用能を調整及び操作するために、必要に応じてこれらの溶媒に水を組み合わせてもよい。水はまた、吸着材上に注がれる反応マスの種類、及び必要とされる洗浄、溶離、再生及び平衡化条件に応じて、0%〜100%の比率で用いることができる。例えば、平衡化の場合、100%の水が用いられたが、再生の場合、用いられた水の濃度は0%程度であった。
【0096】
用いられる移動相は、適切なイオンペアリング剤(複数可)並びに/又は親和性調整剤及び/若しくは結合強度調整剤、例えば、限定はしないが、リン酸、酢酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリエチルアミン及びそれらのうちの1つ又は複数の任意の適切な組み合わせも含有し得る。移動相におけるイオンペアリング剤の濃度は、選択されたイオンペアリング剤の種類に応じて0.001%(v/v)〜2.5%(v/v)の範囲である。前記塩素化スクロース誘導体と充填材との相互作用又は結合強度の差を作るために、限定はしないが、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、リン酸塩−クエン酸塩緩衝剤(macllav緩衝剤)、クエン酸塩−酢酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤等の緩衝剤を用いることができる。
【0097】
本発明の好適な実施形態では、食用グレードの塩、緩衝剤、酢酸及びアルカリが用いられる。
【0098】
平衡化、洗浄、溶離及び再生のために用いられる移動相は、「アイソクラティック溶離」として不変方式で吸着材に通液されるか、又は「段階的勾配」若しくは任意の適切な「連続的勾配」溶離として段階的な方式で、すなわち任意の適切な時間期間にわたって且つ任意の液体量にわたって変化する方式で通液されるか、又は任意のそれらの組み合わせで通液される。
【0099】
本発明の実施形態のクロマトグラフィ精製方法の過程では、吸着材からの選択的な脱着により得られた脱着されたフラクションのそれぞれは、別々に収集されて、既知の手順によって、TGS成分についてはHPLCにより分析され、溶媒成分についてはGCにより分析され、その他の塩素化誘導体についてはTLCにより分析される。その後、純粋なフラクションは組み合わせられ、濃縮される。本発明の実施形態の方法により得られたTGSは、その後既知のプロセスにより結晶化され、重量パーセント基準で純度が99%よりも高い固体のTGSが得られる。
【0100】
本発明の実施形態に係る方法の利点は以下のように要約できる:
(1)中和された元の反応混合物又は乾燥された反応マスに対して実行される吸着ステップにおいて、前記TGS及び/又は保護された若しくは部分的に脱保護されたTGSの精製に並行してすべての塩及び溶媒(複数可)が除去される。
(2)当該方法は、吸着材を再生により再利用可能であるため、経済的である。
(3)当該方法は、前記塩素化スクロース誘導体の最終結晶化の収率及び純度において改善された効果を有する。
(4)当該方法により、99%よりも高い純度及び95%よりも高い収率で前記塩素化スクロース誘導体、TGSが得られる。
(5)当該方法は、研究室規模から工業規模にわたって実行することができる。最も有利な点は、充填床、膨張床、流動床、液固循環流動床、改良型擬似移動床又は膜クロマトグラフィのいずれの方式においても実行できるということであり、これにより連続的な操作が可能になる。
【0101】
吸着及びクロマトグラフィの原理は、塩素化スクロース誘導体の単離のためのプロセスの種々の段階に適用できる。変形形態に置き換えられるか又は組み込まれることができるいくつかの段階は以下の通りである。
(a)親和性吸着クロマトグラフィを、中和された塩素化スクロース誘導体の脱保護の前又は後に適用することができる。
(b)第3級アミド除去の前又は後に適用することができる
(c)第3級アミド及び塩を除去して、前記塩素化スクロース誘導体を残すために適用することができる
(d)塩(有機及び/又は無機)の部分的又は完全な除去の前又は後に適用することができる
(e)抽出、クロマトグラフィ、結晶化、蒸留等の任意の他の操作による塩素化スクロース誘導体の部分的な精製後の任意の段階で適用することができる
(f)従来のカラムクロマトグラフィの代替として用いることができる
(g)前記塩素化スクロース誘導体の生成に用いられる任意のスクロース中間体化合物を精製及び単離するために適用することができる。
(h)溶液を本発明の実施形態のカラムクロマトグラフィにかけることにより、単離されたTGS又はその前駆体又は誘導体をさらに精製する目的で適用することができる
(i)フィード溶液中の塩素化スクロース誘導体の吸着強度又は結合強度を増減させるためのpH条件の変更
【0102】
保護された塩素化スクロースの前記in situ脱アシル化に関連する実施形態の詳細は、それ自体が上記の複数の実施形態を含む。
【0103】
in situ脱アシル化の実施形態に関する本発明の方法の一実施形態では、方法は、モノクロロ、ジクロロ、トリクロロ及びテトラクロロ塩素化スクロース誘導体のすべてを含有し得るフィード混合物を採用してもよい。
【0104】
in situ脱アシル化の実施形態に関する本発明の方法の別の実施形態では、TGS化合物は、塩素化スクロースの6−O−アセチル又は6−O−ベンゾイル誘導体であってもよい。このフィード混合物中に存在するハロゲン化化合物の種類は、用いられる合成経路及び合成の特定の条件によって変化し得る。本発明の実施形態の文脈で用いるのに適したハロゲンは、臭素、塩素、フッ素及びヨウ素を含む。当業者は、当業者にとって既知の方法により、種々の位置を同じハロゲン又は異なるハロゲンの任意の組み合わせ若しくは化合体で容易に埋めることができる。
【0105】
また、in situ脱アシル化の実施形態に関する本発明の方法のさらに別の実施形態では、ヒドロキシル基の保護は、1つ又は複数の位置において行われ、ジエステル、トリエステル、テトラエステル又はペンタエステルをもたらすことができ、アセチル又はベンゾイル又は他の適切な基を含むことができる。このフィード混合物中に存在するこれらのエステル化合物の種類は、用いられる合成経路及び合成の特定の条件によって変わり得る。当業者は、当業者にとって既知の方法により、種々の位置を同じ基又は異なる基の任意の化合体及び組み合わせで容易に埋めることができる。
【0106】
in situ脱アシル化の実施形態に関する本発明の方法のいくつかの実施形態では、TGS以外の化合物が含有される。任意の数のTGS合成プロセスによって生成された、TGS以外の化合物もまた加水分解される。これらの化合物は、非エステル形態で存在しようとエステル形態で存在しようと、任意のモノクロロ−、ジクロロ−、テトラクロロ−、及びペンタクロロ−スクロース誘導体、並びに任意の他のスクロース由来の二糖類、並びにTGS自体以外の任意のトリクロロ−誘導体を含む。
【0107】
本発明の実施形態は、反応マスが、混合物中の化合物と吸着充填材とを接触させるために、上記発明の概要において上述したリストのうちの適切な装置に注入され、それにより化合物、すなわち保護された塩素化スクロース誘導体が、吸着された状態で完全に又は部分的に脱保護され、脱保護された塩素化スクロース誘導体が生成され、そして脱着によって回収される方法を提供する。したがって、TGSを含む脱保護された誘導体は、クロマトグラフィ手順によって回収される。当該方法において、DMFのような反応混合物の溶媒、及びフィード反応混合物中に存在するすべての塩も、方法の吸着及び洗浄サイクル中に除去される。
【0108】
方法は、バッチ式又は連続式で実行することができる。一実施形態によれば、吸着は主に充填床クロマトグラフィカラム又は膨張床クロマトグラフィカラムで行われ、これらはカラムに適切な吸着材を充填して、反応マスをカラムに通過させることを含む。中和された塩素化反応マスのロード中に床が不安定になることを避けるために、段階型又は連続型のロードが採用される。
【0109】
吸着材の結合能は、一例の実施形態において、6−O−保護された塩素化スクロースの場合、10グラム/リットルよりも高く、実施形態の別の例においては50グラム/リットルよりも高い。本発明の好適な実施形態では、50グラム/リットルよりも高い結合能を有する充填材が好ましい。所望の塩素化スクロース誘導体に対する総結合能は、フィード材料の表面積及び性質、条件及び組成に基づく。
【0110】
本発明の実施形態の方法において、用語「フィード材料の性質」は、保護された及び/又は部分的に脱保護された塩素化スクロースの総量、中和された反応マス中の塩素化スクロースの種類及び組成、例えばモノクロロ、ジクロロ、トリクロロ、及びテトラクロロ誘導体等を意味する。
【0111】
本発明の実施形態の方法において、用語「フィード材料の状態及び組成」は、無機塩及び有機塩の存在並びに種類に関連する、pH、導電率、温度及び組成を意味する。
【0112】
本発明の実施形態の方法において、吸着充填材は、6−O−保護された塩素化スクロース誘導体の加水分解のための「触媒樹脂」として機能し得る。6−O−保護された塩素化スクロース誘導体は、脱着されながら加水分解され、6−O−脱保護された塩素化糖を形成する。用いられる溶離移動相は、水ベース又は水・有機ベースであり、吸着充填材の存在下で加水分解率を増加させる触媒イオンを有する。触媒イオンは概して、ナトリウム、カリウム、カルシウム及び/又はアンモニウムイオンのような対イオンを伴う水酸化物イオン(OH)であるが、これは必須ではない。移動相のpHは、水酸化物イオンの濃度及び対イオンの種類に基づいて、7.5pH〜12pHの範囲である。
【0113】
本発明の実施形態の方法では、6−O−保護された塩素化又は非塩素化スクロース誘導体の加水分解を達成するために、吸着充填材自体がこれらのイオンを保持するか、又はこれらのイオンが移動相の一部として外部から付加される。完全に又は部分的に加水分解された混合物は、その後、TGS及び他の脱保護された塩素化糖等の6−O−脱保護された形態で、充填材から脱着又は溶離される。
【0114】
本発明の実施形態の方法では、吸着充填材をアルカリ溶液で洗浄して、6−O−保護された形態の塩素化スクロース誘導体を6−O−脱保護された形態に転換することができる。その後、脱着剤の水溶液及び水・有機溶液のうちの1つ又はそれらの混合物を用いて、TGSを含む6−O−脱保護された塩素化スクロース誘導体が回収される。部分的に又は完全に脱保護された誘導体を含有する、溶離又は脱着された溶液マスのpHは、適切な酸(複数可)及び塩(複数可)で調整される。
【0115】
本発明の実施形態の別の手法では、吸着された6−O−保護された塩素化スクロースは、水性の又は水・有機を組み合わせた溶離相を用いて脱着される。これらの誘導体を含む回収された溶出液は、必要であればpHを調整した後、化学的方法又は酵素的方法等の既知の方法により加水分解される。
【0116】
概して、以下のpH調整化合物を用いてもよい。水酸化、炭酸、重炭酸、酢酸、リン酸、ソルベート、酒石酸、及びそれらの混合のナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は他の許容可能な塩。好適なpH調整化合物は、水酸化ナトリウム又はカリウム、アンモニアナトリウム又はカリウム、及びリン酸ナトリウム又はカリウムである。
【0117】
本発明の実施形態では、pH調整された塩素化反応マス、洗浄溶液、及び加水分解溶離液がカラムの一端に通され、DMF、すべての塩、及び塩素化スクロース誘導体を含有するフラクション等の反応混合物の溶液がカラムの他端において収集される。本発明の別の実施形態では、フィードが上昇方向に通され、DMF、塩はカラムの上から収集される。加水分解溶離相は下降方向に通され、加水分解され濃縮されたマスがカラムの下部で収集される。本発明の実施形態の方法では、所望の6−O−保護された塩素化スクロース誘導体の加水分解は、フィード材料に基づいて、加水分解移動相の組成及びカラム中での流量に応じて0%〜100%であり得る。
【0118】
本方法における加水分解ステップ及び/又は脱着ステップ、及び洗浄ステップにおいて、移動相は、塩素化スクロース誘導体の加水分解又は脱着を支援する触媒を含有することができ、この触媒は、限定はしないが、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の形態の水酸化物イオンであり得る。本発明の前記実施形態において、他の加水分解剤を用いてもよい。
【0119】
本発明の実施形態の方法では、加水分解溶離移動相は、所望の塩素化スクロースを、6−O−脱保護された形態、すなわちTGSの形態で脱着する。吸着充填材からの溶離中、所望の塩素化スクロース誘導体は、2床容積未満の加水分解溶離移動相の濃縮されたフラクション中で溶離される。本明細書中で、床容積という用語は、プロセスにおいて用いられる吸着材の容積を表すために用いられる。収集された溶出フラクションは、2%よりも多いTGSを示す。この溶出マスはその後、溶離移動相を含む溶媒(複数可)を除去するために真空下の低温で蒸留され、塩素化された反応混合物よりも高い濃度のTGS溶液をもたらす。このようなプロセスにより回収されたTGSはその後、99%よりも高い純度のTGSを単離するために、クロマトグラフィによって精製されることが好ましい。
【0120】
本発明の実施形態の方法では、再生のための別途ステップを必要とすることなく、加水分解溶離移動相それ自体が、吸着充填材の再生又は定置洗浄(Cleaning-In-Place:CIP)を実行することができる。これは、プロセス全体の時間サイクルを短縮するのに役立ち、時間当たり、吸着材容積単位当たりのプロセス生産性を増加させる。
【0121】
本発明の実施形態に係る方法の利点は以下のように要約される。
(1)塩素化反応槽から直接得られたか、又は乾燥塩素化反応混合物を溶解することによって得られた溶液から生成された、pH調整された塩素化反応混合物で実行される吸着ステップにおいて、1つのカラムで、所望の保護されたTGS及び/又は保護された若しくは部分的に脱保護されたTGSが捕捉、加水分解され、脱保護されたTGSとして回収され、並行して、すべての塩及び第3級アミド溶媒等の溶媒が除去される。
(2)当該一体化された方法は、多孔性吸着充填材を再利用可能であるため経済的である。
(3)当該方法により、完全に加水分解された塩素化スクロース誘導体、すなわちTGSが、95%よりも高い収率で得られる。
(4)当該方法はスケーラブルであり、工業規模で実行される。最も有利な点は、当該方法は、充填床、膨張床、流動床、液固循環流動床、改良型擬似移動床のうちの1つ又は複数のユニットか、又は膜クロマトグラフィを用いて実行することができることであり、これにより連続した動作が可能になる。
【0122】
この吸着及び/又は親和性クロマトグラフィによる分離プロセスの原理を、塩素化スクロース誘導体を脱保護して、その脱保護された塩素化スクロース誘導体を単離するためのプロセスにおける種々の段階において適用することができる。変形形態に置き換えられるか、又は変形形態を組み込むことができるいくつかの段階は以下の通りである。
(a)中和された塩素化スクロース誘導体の脱保護の前に適用することができる
(b)第3級アミド除去の前又は後に適用することができる
(c)第3級アミド及び塩を除去して、前記保護された塩素化誘導体を残すために適用することができる
(d)塩の部分的な及び完全な除去(有機塩及び/又は無機塩)の前又は後に適用することができる
(e)抽出、クロマトグラフィ、結晶化、蒸留等の他の操作のうちの任意のものによる、保護された塩素化スクロース誘導体の部分的な精製後の任意の段階で適用することができる
(f)既知の加水分解方法の代替として用いることができる
(g)1つ又は複数のヒドロキシル基位置を保護された塩素化又は非塩素化スクロース誘導体の加水分解のために用いることができる
【0123】
希釈水溶液又は水・有機溶液からのハロゲン化スクロースの捕捉、濃縮及び結晶化を含む、本発明の別の実施形態の詳細が以下に示される。
【0124】
精製された又は部分的に精製された塩素化スクロース誘導体(複数可)水溶液又は有機・水溶液は、抽出又はクロマトグラフィ等の既知のプロセスによって得られ、この水溶液又は水・有機溶液は以下を含有する。
(a)ヒドロキシル基が保護された及び/又は脱保護された及び/又は部分的に脱保護された塩素化スクロース誘導体等のハロゲン化化合物、並びに
(b)水、並びに/又は
(c)アルコール(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノール等)等の有機溶媒
【0125】
本発明の一実施形態では、フィード混合物中に存在するハロゲン化された化合物(複数可)は、用いられる合成経路及び合成の特定の条件によって変わり得る。本発明の文脈において用いるのに適したハロゲンは、臭素、塩素、フッ素及びヨウ素を含む。当業者は、当業者によって既知の方法により、種々の位置を同じハロゲン又は異なるハロゲンの任意の組み合わせ若しくは化合体で容易に埋めることができる。本発明の実施形態はこのタイプのフィード材料も扱うことができる。
【0126】
本発明の別の実施形態では、ヒドロキシル基を脱保護された又は保護されたハロゲン化スクロース誘導体(複数可)は、スクロースのモノクロロ、ジクロロ、トリクロロ若しくはテトラクロロ誘導体又はそれらの混合であり、フィード媒体中に存在する。
【0127】
本発明の実施形態の方法の典型的な用途では、充填床とも呼ばれる、吸着材で充填されたシリンダーカラム等の単純なカラムクロマトグラフィ装置を用いて、吸着充填材に、塩化スクロース30グラム/リットルよりも高い吸着能の吸着材をロードした。本方法をバッチ攪拌リアクタ方式で動作させることも可能であるが、充填床の動作は、典型的な平衡制限バッチプロセスに比べ、より高い濃度の塩素化スクロース誘導体の溶出溶液をもたらすことが分かった。本方法はまた、膨張床、流動床、液固循環流動床(LSCFB)、移動床、擬似移動床(SMB)、改良型擬似移動床(ISMB)、遠心クロマトグラフィ及び環状クロマトグラフィ等の他の吸着材床方式で動作することもできる。
【0128】
したがって、典型的なプロセスでは、塩素化スクロース誘導体(複数可)を含有する水溶液又は水・有機溶液が、吸着充填材で充填されたカラムに注入され、これにより前記塩素化スクロースが充填材に吸着した。ロード段階に続いて、重力下で、又はポンプ若しくは加圧ガス等の適切な駆動機構を用いてカラムが排水され、次に気体によるパージが行われ、充填材床内に保持されたほとんどすべての自由水若しくは水・溶媒混合物が除去された。パージに用いられた気体は窒素又は空気、又はその混合であった。
【0129】
TGSを含む吸着されたスクロース誘導体の脱着が、溶媒又は溶媒の混合物を用いて実行された。用いられた溶媒は、限定はしないが、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)、アセトニトリル、塩素化有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン)、トルエン、エステル(ブチルアセテート、エチルアセテート)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、及びそれらのうちの1つ又は複数の任意の適切な組み合わせ等の溶媒から成る群から選択された。
【0130】
本発明の実施形態の方法において、限定はしないが、酸(例えば、リン酸、酢酸、塩酸、硫酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酪酸)及び/又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム)及びそれらのうちの1つ又は複数の任意の適切な組み合わせ等の移動相調整剤を用いることができる。
【0131】
本発明の好適な実施形態では、食用グレードの塩、酸、アルカリが用いられることが好ましい。
【0132】
本発明の実施形態の方法は、0℃〜80℃の範囲で実行され、好ましくは、費用面を考慮して常温で実行される。
【0133】
吸着された塩素化スクロース誘導体(複数可)は、2.0床容積未満の、又は好ましくは1.5床容積未満の溶媒ベースの溶離移動相中で溶離される。用語「床容積」は、ここでは、カラム又は容器内に設置された吸着充填材の容積を表すために用いられる。溶出フラクションは、HPLCで分析した場合、TGS等の所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)を5%(w/v)よりも高い濃度で有し、カール・フィッシャー法で分析した場合、5%(v/v)未満の水分を含有する。前記塩素化誘導体のフィード含有量に基づく回収率は90%よりも高く、場合によっては100%程度にもなる。
【0134】
さらに、濃縮されたマスの結晶化が、溶離移動相の溶媒(複数可)の蒸留/蒸発の後か、又は蒸留/蒸発と組み合わせられて実行され、所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)の90%よりも多くを回収することができる。方法の一実施形態では、前記塩素化スクロース誘導体(複数可)を溶解可能又は部分的に溶解可能な溶媒を、蒸留/蒸発された生成物マスに添加することができる。別の実施形態では、純粋な塩素化スクロース誘導体(複数可)を回収するために、溶媒(複数可)の組み合わせ又は混合物が、適切な比率で用いられる。本発明の実施形態の方法では、溶媒(複数可)の混合物又は組み合わせを結晶化に用いることができ、この溶媒のうちの1つには、TGS等の所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)を完全に又は部分的に溶解することができ、別の溶媒は、所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)に対して低い又は非常に低い溶解度を有する。こうした溶媒は、塩素化溶媒(例えば、二塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等)、エステル(例えば、エチルアセテート、及びブチルアセテート)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等)から選択することができるが、これらに限定されるとは限らない。
【0135】
さらに、吸着クロマトグラフィプロセスから得られた濃縮されたマスを蒸留/蒸発することができ、最後に、既知の手順(複数可)によって溶媒から塩素化スクロース誘導体(複数可)を結晶化することができる。
【0136】
本発明の実施形態に係る方法の利点は以下のように要約される。
(a)当該方法は、温度の影響を受ける生成物の水除去及び濃縮に非常に適している。
(b)本発明の実施形態の方法は、大量の水の蒸留を必要とせず、したがってエネルギー効率が良い。
(c)当該方法は、再生により吸着材を再利用可能であるため経済的である。
(d)方法は、このような材料の結晶化により得られた前記塩素化スクロース誘導体(複数可)の収率及び純度において改善された効果を有する。
(e)当該方法により、TGSを含む前記塩素化スクロース誘導体(複数可)が、90%よりも高い収率及び99%の純度で得られる。
(f)当該方法に、クロマトグラフィによる分離プロセスを実施している間のカラム内の脱アシル化を含むがこれらに限定されない、意図する化学変化に適した溶離液の使用に応じて、塩素化スクロース又はそれらの化合物を含む1つ又は複数の化学的改質を一体化することができる。
(g)方法はスケーラブルであり、単純な充填床クロマトグラフィカラム、又は他のカラムタイプの接触器で、工業規模に容易に適合させることができる。
【0137】
このタイプの水除去及び濃縮動作もまた、前記塩素化スクロース誘導体(複数可)又はそれらの中間体の単離及び精製中の任意の中間段階において適用することができる。変形形態に置き換えられるか又は変形形態を組み込むことができるいくつかの段階は以下の通りである。
(a)塩素化スクロース誘導体(複数可)の脱保護の前又は後に適用することができる。
(b)精製された又は部分的に精製された塩素化スクロース誘導体(複数可)の酵素的又は化学的な脱保護の後に適用することができる。
(c)第3級アミド溶媒除去の前又は後に適用することができる。
(d)抽出、クロマトグラフィ等の任意の他の操作による塩素化スクロース誘導体(複数可)の部分的な精製後の任意の段階において適用することができる。
(e)水除去のための従来の抽出及び蒸留の代替として用いることができる。
(f)所望の塩素化スクロース誘導体(複数可)の生成に用いられる任意の塩素化スクロース中間体化合物の精製又は単離後に適用することができる。
[実施例]
【0138】
本発明の主要な実施形態が、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。提供された実施例は主に説明を目的としており、決して本発明の範囲を、実施例に用いた反応物、反応条件、吸着材、化学物質に限定するものではない。開示された発明の、当業者にとって明らかである任意の変形又は適合は、本発明の範囲内に入る。また、作業において、市販の吸着材が用いられたが、本発明は言及されたブランド名に限定されるのではなく、言及されたその特定のブランドの特性を包含し、さらに本発明は、当該ブランド(複数可)と同様の又は類似の特性を示すように機能する、吸着材の任意の妥当な変形も包含するということもここで述べておかなくてはならない。
【0139】
文脈において明記しない限り、単数形の言及は、その複数形も含むと解釈される。したがって、「プロセス(a process)」と言及することは、「プロセス(processes)」も包含する。すなわち、その言葉が指している主題に関連するすべてのプロセスを包含する。単数形での言及はまた、その種の事物に関連するすべての均等物を包含するように解釈される。したがって、「溶媒(a solvent)」は、特許請求の範囲又は明細書に明記された機能を達成するために用いることができるすべての溶媒を包含する。
【実施例1】
【0140】
[捕捉、精製及び第3級アミド除去]
20gのTGS、他の塩素化スクロース誘導体、無機塩及び有機塩、並びに0.480kgの第3級アミドを含有する2.0リットルの中和された反応マスが、精製及び第3級アミド除去の実験のために用いられた。このフィードを、ステンレス鋼の補助器具及び予め平衡化された0.40リットルのSEPABEADS SP825(三菱化学株式会社、日本)を装着されたホウケイ酸ガラス吸着カラムに通した。ポンプを用いて、1.50リットル/時間のレートでフィードを注入し、次に脱イオン水で洗浄した。次に、吸着されたTGSを、イソプロピルアルコールの5.0%水溶液1.0リットルを用いて、吸着充填材から選択的に溶離した。吸着されなかった洗浄フラクション及び溶出フラクションのすべてを、TGSについてはHPLCで、第3級アミドについてはGCで分析した。結合されなかった洗浄フラクションにおいて、HPLCではTGSは全く見られず、反応マスからのTGSに対する100%の吸着効率を示した。GCの結果は、吸着されなかったフラクション中に全部で0.478kgの第3級アミドを示した。0.63リットルの溶出フラクションは、HPLCで、全部で19.72グラムの純度95.30%のTGSを示した。GCの結果は、溶出フラクション中に第3級アミドが存在しないことを示した。出発反応マス中のTGS含有量に対する収率は、溶出フラクションにおいて98.60%であり、出発反応マス中の第3級アミド含有量に対する収率は、吸着されなかったフラクションにおいて99.58%であった。
【実施例2】
【0141】
[捕捉、精製及びDMF除去]
5.40kgのTGS、他の塩素化スクロース誘導体、無機塩及び有機塩、並びに110kgのDMFを含有する910リットルの中和された反応マスを、ステンレス鋼のカラムに充填して床高さが2.4メートルにした180リットルのSEPABEADS SP700(三菱化学株式会社、日本)に供給した。このフィードを、定量ポンプを用いて8.3リットル/分のレートで注入し、次に脱イオン化水で洗浄した。次に、吸着されたTGSを、25.0%のメタノール水溶液900リットルを用いて、吸着充填材から選択的に溶離した。TLCによる分析でTGSを示す、全部で650リットルの溶出フラクションを収集した。結合されなかった洗浄フラクションをHPLCによって分析すると、0.080kgのTGSが見られ、反応マスからのTGSに対する、98.5%の吸着材の吸着効率が示された。結合されなかったフラクションをTLC分析すると、モノクロロ、ジクロロ、トリクロロ、及びテトラクロロ誘導体の存在は示されなかった。一方、洗浄フラクションをTLC分析すると、スクロースのモノクロロ及びジクロロ誘導体の存在が示された。これは、この充填材のモノクロロ及びジクロロ誘導体に対する親和性が、トリクロロ及びテトラクロロ誘導体に対する親和性よりも低いことを示している。GCの結果、吸着されなかったフラクション中に全部で109.2kgのDMFが見られた。650リットルの溶出フラクションは、HPLCで、全部で5.30kgの純度96.80%のTGSを示した。GCの結果、溶出フラクション中に第3級アミドが存在しないことが分かった。出発反応マス中のTGS含有量に対する収率は、溶出フラクションにおいて98.15%であり、出発反応マス中のDMF含有量に対する収率は、吸着されていないフラクションにおいて99.27%であった。
【実施例3】
【0142】
[TGSストリームの最終精製]
実施例2のような実験から得られた溶出フラクションは、スクロースのジクロロ及びモノクロロ誘導体の存在の痕跡を示し、この痕跡は最終精製ステップにおいて取り除かれる。ここで、実施例2で説明したような実験における、蒸留によりメタノールを除去した後の13.32kgの単離されたTGSが、3.98メートルの床高さを有する500リットルのSEPABEADS SP207(三菱化学株式会社、日本)樹脂カラムに、6.5リットル/分のレートで注入された。すべてのTGS及び残ったモノクロロ及びジクロロ誘導体は、充填材に吸着された。吸着された塩素化スクロース誘導体はその後、35%のメタノール水溶液を用いてアイソクラティックで溶離された。210リットルの溶出フラクションは、TLC分析で、濃縮されたモノクロロ及びジクロロ誘導体を示し、TGSは示さなかった。さらに、1600リットルの溶出フラクションは、TLC分析で、いかなる他の塩素化誘導体も示すことなく、12.97kgのTGSを示した。HPLC分析では、99.39%の純度を有する全部で97.52%のTGSが回収された。
【実施例4】
【0143】
[捕捉、精製及び反応マスからのDMF除去のための膨張床及び流動床クロマトグラフィ]
膨張床及び流動床方式において、1.0リットルのSEPABEADS SP700又はSEPABEADS SP207(いずれも三菱化学株式会社、日本)又はXAD16(Rhom and Haas、米国)又はADS600(Thermax、インド)を用いて、直径5.0cmのガラスカラムにおいてプロセスが実行された。それぞれの場合の吸着材において、60グラムのTGS−6−アセテート、他の塩素化スクロース誘導体、無機塩及び有機塩、並びに1.2kgの第3級アミド溶媒を含有する5.0リットルの中和された反応マスを吸着材に注入した。膨張床の場合に用いられた膨張度は1.4であり、流動床の場合は、充填された床高さの2倍であった。洗浄は上昇流方式で実行された。吸着された塩素化スクロース誘導体はその後、下降流方式でアイソクラティック溶離された。この結果が以下の表1に要約されている(TGS−6−アセテートは加水分解後にTGSとして分析された)。
【0144】
【表1】

【実施例5】
【0145】
[捕捉、精製及び反応マスからのDMF除去のための移動床クロマトグラフィ]
(脱保護された、保護された又は部分的に脱保護された)TGS等の前記塩素化スクロース誘導体が、1.0リットルのSEPABEADS SP70又はSEPABEADS SP700(三菱化学株式会社、日本)を用いた液固移動床で精製された。移動床クロマトグラフィシステムは、フィードストリームとしてカラムを通って下降する樹脂と、逆流として上昇方向に移動する樹脂とにより動作する。吸着された溶質を有する樹脂は、別の平行カラムに入れられ、生成物は、並流又は逆流で連続的に溶離された。本実施例では、前記塩素化スクロース誘導体及び第3級アミド溶媒をDMFとして含有する反応混合物が、直径5.0cmのメイン吸着カラムに連続的に供給された。生成物は、メインカラムの下部で洗浄された後、直径1.5cmの第2の平行並流カラムで連続的に溶離された。溶離された吸着材は、固液分離機を介してメインカラムの上部へ再循環される。DMF及び塩は、メインカラムの上部出口から連続的に取り出される。システムは、第1のメインカラムにおける逆流吸着のために、吸着効率が高く、吸着ゾーンの高さが低い。
【実施例6】
【0146】
[トリクロロスクロース誘導体の精製及び最終精製]
60gのTGS、及び他の塩素化スクロース誘導体、及び無機塩、及び2.0kgの第3級アミドを含有する6.0リットルの中和された反応マスを、1.5リットル/分のレートで1.5リットルのDIAION HP2MG(三菱化学株式会社、日本)に通した。すべての塩素化スクロース誘導体が充填材のリガンドに吸着され、一方、吸着されなかったフラクションはDMF及び無機塩を含有していた。全部で1.98KgのDMFがこれらのフラクションにおいて収集された。次に、付着したDMF及び無機物を洗い流すために、吸着充填材を2床容積の脱塩水で洗浄した。その後、スクロースのジクロロ及びトリクロロ誘導体を、5.6床容積の30%メタノール水溶液を用いて溶離した。テトラクロロスクロース誘導体はリガンドに結合したままであった。溶出フラクションは、蒸留のために取り出され、40℃〜60℃の真空下でメタノールを除去された。その後、ジクロロ及びトリクロロ誘導体を含有するフラクションが、さらなる精製のために、2.0リットルのSEPABEADSP207SS(三菱化学株式会社、日本)を有する最終精製カラムに通された。ここで、ジクロロ誘導体は、40%のメタノール水溶液で溶離したとき、第1のフラクションに分離された。第1の床容積は、別々に収集されたジクロロ不純物から成っていた。次の3つの床容積は、純粋なトリクロロ誘導体から成っていた。HPLCの結果は、純度99.6%を有する98%のトリクロロ誘導体が回収されたことを示した。このフラクションはその後、蒸留によるメタノール除去のために取り出され、さらに結晶化された。
【実施例7】
【0147】
[TGSの最終精製]
実施例2のように得られた溶出フラクションは、TGS中にスクロースのジクロロ及びモノクロロ誘導体の存在の痕跡を示し、この痕跡は、最終精製ステップにおいて、DIAION HP20SS、又はSEPABEADS SP207SS又はSEPABEADS SP20SSカラムを用いて除去された。各充填材を別々のカラムに200ml充填して、2メートルの床高さを得た。4.5gのTGSが各カラムに注入され、その後、1床容積のpH9.8のアルカリ水及び1床容積のpH7.0の中性水で洗浄された。その後、生成物は、一方法では、0%〜50%の勾配のメタノール水溶液を用いたグラディエント法により溶離され、他の方法では、35%のアイソクラティックのメタノール溶液を用いて溶離された。両方の場合において、不純物を含有するフラクション及びTGSを含有する純粋なフラクションとして、2つのフラクションが収集された。これらの充填材を用いることにより得られた回収率及び純度が、以下の表2に要約された。
【0148】
【表2】

【実施例8】
【0149】
[TGS水溶液からのTGSの単離及び結晶化]
抽出により得られた10gの純粋TGSを含有する1000mlの水溶液を、ステンレス鋼の補助器具を装着され、予め平衡化された120mlのSEPABEADS700(三菱化学株式会社、日本)を充填されたホウケイ酸ガラスの吸着カラムに通した。このフィードは、ポンプを用いて、25ml/分のレートで注入され、その後重力下で排水された。カラムはその後、充填床の空隙から水を除去するために15分間空気でパージされた。その後、吸着されたTGSは、メタノール:ブタノールの1:1混合液200mlを用いて吸着充填材から脱着された。溶離中、最初の0.3床容積の水が、別個のフラクションとして収集され、次に、99.2%のTGSを含有する70mlのフラクションが収集された。これはHPLCによって分析され、濃度14.2%のTGSを示した。カール・フィッシャー法で分析した結果、水分は2.8%であった。溶出フラクションはその後、残った水及びブタノールを除去するために蒸留され、二塩化メチレンとエチルアセテートとの混合物から結晶化された。結晶化した生成物の純度は、HPLCで99.5%であった。
【実施例9】
【0150】
[キログラム単位でのTGS水溶液からのTGSの単離及び結晶化]
225リットルのSEPABEADS SP700(三菱化学株式会社、日本)が、直径310mmのステンレス鋼カラムに充填された。この充填材はpH7.5の水で洗浄及び平衡化された。カラムクロマトグラフィにより得られた、13キログラムの精製されたTGSをメタノール2%及び水98%を含有する水溶液に溶解したものが、6リットル/分のレートでカラムに注入された。ロード後、重力下で、6.0リットル/分のレートでカラムを排水し、その後、クロマトグラフィ床に保持された水を除去するために、カラムを空気でパージした。55:45の組成のメタノール:ブタノール混合液350リットルを用いて脱着が実行された。脱着中、80リットルの水が別個に収集され、次に生成物フラクションが収集された。全部で12.9kgのTGSが、180リットルの溶離相において、7.2%(w/v)溶液として回収された。回収率は99.2%であり、水分含有量は、カール・フィッシャー法によれば1.8%であった。この溶液はその後、ブタノール及びメタノールを除去するために、真空下で50℃の温度で蒸留され、1.8%の水分が、ブタノール・水の共沸混合物として除去された。その後、二塩化メチレンから最終マスを結晶化し、フィードに基づいて96%のTGSを得た。結晶化された精製物の純度は、HPLCで99.3%であった。残った母液は、すべてのTGSを回収できるように、溶媒の除去後、次のサイクルにおいて再利用された。
【実施例10】
【0151】
[TGS−アセテート水溶液からのTGS−アセテートの単離及び結晶化]
直径310mmのステンレス鋼のカラムを、225リットルのSEPABEADS207(三菱化学株式会社、日本)で充填した。充填材は、pH6.5の水で洗浄及び平衡化された。充填材は、抽出により得られた15kgの部分的に精製されたTGS−ACを、95%の水を含有する水・有機溶液に溶解したものをロードされた。排水後に残った水を除去するために、カラムを窒素でパージし、その後、55:45の組成のブタノール:メチノール混合液350リットルを用いて脱着を行った。脱着中、90リットルの水が別個に収集され、次に200リットルの生成物フラクションが収集された。全部で14.2kgのTGS−ACが、200リットルの溶離相において、7.5%(w/v)の溶液として回収された。このTGS−ACの回収率は94.7%で、水分含有量は、カール・フィッシャー法によれば3.2%であった。この溶液は、実施例2で説明したようにさらに処理され、13.7kgのTGS−ACが得られた。
【実施例11】
【0152】
[6−O−保護されたTGSの捕捉、第3級アミド除去、及び加水分解、並びにTGSの回収]
21グラムの6−O−保護されたTGS、他の塩素化スクロース誘導体、無機塩及び有機塩、並びに0.5kgの第3級アミドを含有する2.0リットルの中和された反応マスを、両端にステンレス鋼の流れ補助器具を装着され、予め平衡化された0.40LのSEPABEADS SP700(三菱化学株式会社、日本)で満たされた直径25mmのホウケイ酸ガラスカラムに通した。このフィードを、ポンプを用いて、1.2リットル/時間のレートで注入し、その後、吸着されなかったマスを除去するために脱イオン化水で洗浄した。吸着された6−O−保護されたTGS及び他の塩素化スクロース誘導体は、70%のメチルアルコール、2.5%のアンモニア、及び残りの部分として水を含有する1.0リットルの加水分解溶離移動相を用いて、吸着充填材から溶離された。結合されなかったフラクション、洗浄フラクション及び加水分解された溶出フラクションのすべてにおいて、6−O−保護されたTGSは、TGSについてはHPLCにより分析され、第3級アミドについてはGCにより分析された。6−O−保護された塩素化スクロースもTLCにより分析された。結合されなかった洗浄フラクションは、HPLC及びTLCでTGSを示さず、反応マスからの6−O−保護されたTGSに対する100%の吸着効率を示した。GCの結果、吸着されなかったフラクション中に全部で0.496Kgの第3級アミドが見られた。0.5リットルの溶出フラクションは、TLCにおいて、6−O−保護されたTGSを示すことなく、全部で20.08グラムのTGSを示した。GCの結果は、溶出フラクション中に第3級アミドが存在しないことを示した。出発反応マスでの量に対するTGS含有量の収率は、溶出フラクションにおいて99.04%であった。出発反応マスでの量に対する第3級アミド含有量の収率は、吸着されなかったフラクションにおいて99.2%であった。
【実施例12】
【0153】
[6−O−保護されたTGSの捕捉、第3級アミド除去、及び加水分解、並びにTGSの回収の規模拡大]
12.0Kgの6−O−保護されたTGS及び350kgのDMFを含有する1400リットルの中和された反応マスを、直径300mmのステンレス鋼カラムに充填されて3.0メートルの床高さとなった230リットルのSEPABEADS SP700(三菱化学株式会社、日本)に注いだ。このフィードを、定量ポンプを用いて、6.0リットル/分のレートで注入し、その後、脱イオン化水で洗浄した。結合されなかった洗浄フラクションは、HPLC及びTLCにおいて、6−O−保護されたTGSが存在しないことを示した。したがって、前記TGS前駆体に対する吸着効率は100%であった。吸着された6−O−保護されたTGSはその後、6−O−脱保護されたTGSを得るために、850リットルの加水分解溶離移動相で溶離された。加水分解溶離移動相の組成は80:2.5:17.5のメタノール:アンモニア:水であった。加水分解された6−O−保護されたTGSは、450リットルの溶出フラクションにおいて、濃縮されたマスとして回収された。溶離におけるTGSの濃度は2.64%であり、11.89kgのTGSを示した。溶出フラクションのGC分析は、DMFが存在しないことを示した。GC分析において、吸着されなかった洗浄フラクションは、347.8kgのDMFを示した。TGS及びDMFの回収率は99.1%及び99.37%であった。
【実施例13】
【0154】
[6−O−脱保護されたTGSの捕捉、第3級アミド除去、及び加水分解、並びにTGSの回収のための本発明の実施形態の方法に対する膨張床クロマトグラフィの使用]
1.0リットルのSEPABEADS SP207(三菱化学株式会社、日本)を、ステンレス鋼の補助器具が両端に装着された直径5.0cmのガラスカラムに入れた膨張床において、プロセスが実行された。吸着材に、5.0リットルの中和された反応マスを上昇流方向でロードした。ロードされた中和塩素化反応マスは、60グラムの6−O−保護されたTGS、他の塩素化スクロース誘導体、無機塩及び有機塩、並びに1.2kgの第3級アミド溶媒を含有していた。ロード中、膨張度は1.5に保たれた。さらに、吸着充填材を、2床容積の0.1Mの水酸化ナトリウム溶液で洗浄した(膨張床において1床容積、及び充填床方式において1床容積)。その後、加水分解溶離移動相により溶離を行った。イソプロピルアルコールを80%、アンモニアを3.75%含有する3.6床容積の加水分解移動相をカラムに通し、6−O−脱保護されたTGSを含有する1.2床容積の濃縮されたフラクションが収集された。残りの移動相は、再生移動相として働き、別個に収集された。溶離は、充填床方式で下向き方向に実行された。溶離液の4.83%溶液1.2床容積分において、全部で58グラムのTGSが回収され、残った6−O−保護されたTGS及びDMFは示されなかった。カラムの上部から収集された、吸着されなかった洗浄フラクションは、1.18kgの第3級アミドをDMFとして示した。TGSの回収率は96.67%であり、一方DMFの回収率は98.3%であった。
【実施例14】
【0155】
[充填材の再利用可能性及び性能]
本発明の実施形態の生成物の、純度及び回収率についての再利用可能性及び性能が図1に示されている。図1では、50試行について、SEPABEADS SP700(三菱化学株式会社)を用いた、実施例6のような本発明の実施形態の方法の、充填材の吸着能 (グラム/リットル)、TGS回収率(%)、及びDMF回収率(%)についての精製試行の性能比較を示す。比較は、再生移動相を用いた吸着充填材の定置洗浄(CIP)が効果的であることを示す。ここで、95:1:5のメタノール:アンモニア:水の組成を移動相として用いた再生の後に、同じ充填材が用いられた。充填材は、50試行において一定の性能を示し、したがって、再利用可能性がプロセスの経済性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】SEPABEADS SP700(三菱化学株式会社)を用いた、本発明の実施例6でのプロセスにおける、充填材の吸着能(グラム/リットル)、TGS回収率(%)、及びDMF回収率(%)についての精製試行の性能比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスストリームから、塩素化スクロース化合物の前駆体及び誘導体を含む1つ又は複数の塩素化スクロース化合物を分離するステップと、前記塩素化スクロース化合物の単離と精製と濃縮と脱水と脱エステル化を含む1つ又は複数の化学的改質とを含む、さらなる1つ又は複数のステップとから成る方法であって、
(a)前記プロセスストリームを、シリカゲル、又は多孔性陽イオン交換樹脂、若しくはゲル状の陽イオン交換樹脂以外の吸着材に接触させることにより、1つ又は複数の塩素化スクロース化合物を選択的に前記吸着材に捕捉して前記プロセスストリームの他の成分を排除するステップと、
(b)吸着された塩素化スクロース化合物のうちの1つ又は複数を、変更されていない化学形態、又は脱エステル化形態を含む変更された化学形態で、個別に又は類似の塩素化合物により集団的に、前記シリカゲル又は多孔性陽イオン交換樹脂、若しくはゲル状陽イオン交換樹脂以外の吸着材から選択的に溶離するステップと、
(c)ステップ(b)の溶離剤を、塩素化スクロース化合物の単離及び精製を含む、生成物を生成するための1つ又は複数の次のプロセスステップに用いるステップと
のうちの少なくとも1つ又は複数を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
(d)前記プロセスストリーム又は反応混合物は、塩素化スクロース若しくはその前駆体若しくはその誘導体の合成又は精製プロセスステップの過程で生成された組成を有し、当該組成は、水を含有するか又は含有しない反応物又は生成物の溶液を含み、当該反応物又は生成物は、(i)グルコース−6−アセテート及びグルコース−6−ベンゾエートを含むグルコース−6−エステル、(ii)スクロース−6−アセテート及びスクロース−6−ベンゾエートを含むスクロース−6−エステル、(iii)1−6−ジクロロ−1−6−ジデオキシ−β−フルクトフラノシル−4−クロロ−4−デオキシ−ガラクトピラノシド、略してTGS、(iv)TGS−6−アセテート及びTGS−6−ベンゾエートを含むTGS−6−エステル、(v)テトラクロロ−6−アセテート及びテトラクロロ−6−ベンゾエートを含むテトラクロロスクロースエステル、(vi)テトラクロロスクロース、(vii)ジクロロ−6−アセテート及びジクロロ−6−ベンゾエートを含むジクロロスクロースエステル、(viii)ジクロロスクロース、(ix)無機塩、(x)有機塩、(xi)懸濁物、(xii)第3級アミド、(xiii)可溶性酵素、(xiv)固定化酵素、(xv)ペンタアセチルスクロース、(xvi)スクロースアルキル4,6−オルトアシレート、(xvii)スクロース2,3,6,3’4’−ペンタエステル、(xviii)スクロース6,4’−ジエステル、(xix)4’6−ジ−O−アセチルスクロース、(xx)6−O−アセチルスクロース、(xxi)2,3,6,3’−スクローステトラアセテート、(xxii)スクロースアルキル4、(xxiii)6−オルトエステル、(xxiv)スクロースオクタアシレート、(xxv)スクロースヘプタアシレート、及びスクロースヘキサアシレート、(xxvi)スクロースアルキル4,6−オルトエステル、(xxvii)スクロース4−エステル、(xviii)TGSペンタアセテート、ペンタプロピオネート、ペンタブチレート、ペンタグルタラート、ペンタラウラートを含むTGSペンタアシレート、(xix)カラメル化生成物のうちの少なくとも1つ又は複数を含み、
(e)前記塩素化スクロースの前駆体は、(i)グルコース、(ii)スクロース、(iii)スクロース−6−アセテート及びスクロース−6−ベンゾエートを含むスクロース−6−エステル、(iv)TGS−6−アセテート及びTGS−6−ベンゾエートを含むTGS−6−エステル、(v)テトラクロロラフィノース、(vi)ペンタアセチルスクロース、(vii)スクロースアルキル4,6−オルトアシレート、(viii)スクロース2,3,6,3’4’−ペンタエステル、(ix)スクロース6,4’−ジエステル、(x)4’6−ジ−O−アセチルスクロース、(xi)6−O−アセチルスクロース、2,3,6,3’−スクローステトラアセテート、(xii)スクロースアルキル4,6−オルトエステル、(xiii)スクロースオクタアシレート、(xiv)スクロースヘプタアシレート、及びスクロースヘキサアシレート、(xv)スクロースアルキル4,6−オルトエステル、(xvi)スクロース4−エステルのうちの1つ又は複数を含み、
(f)前記塩素化スクロースの誘導体は、ペンタアシレートを含み、当該ペンタアシレートはTGSペンタアシレートをさらに含み、当該TGSペンタアシレートはTGSペンタアセテート、TGSペンタプロピオネート、TGSペンタブチレート、TGSペンタグルタラート、TGSペンタラウラートをさらに含み、
(g)前記吸着充填材は、塩素化スクロース化合物と相互作用可能であり、以下の(i)非スルホン樹脂、(ii)非イオン性樹脂、(iii)陰イオン交換樹脂、(iv)塩素化スクロースとの相互作用能を有する表面及び/又は表面官能基を有する吸着材、(v)硬質且つ多孔性である吸着材、(vi)膜の形状である吸着材、(vii)合成又は天然のポリマーベースの吸着充填材、(viii)ポリスチレン、ジビニルベンゼン(PSDVB)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミドの合成ポリマーベース吸着充填材、(ix)アガロース、セルロース、キトサン、デキストランの天然ポリマーベースの吸着充填材、(x)架橋された吸着材、(xi)C2〜C18の炭素分子を有する置換基としての芳香族部分及び/又は脂肪族部分を有する被修飾シリカ、(xii)ベース充填材の一部であるか又は既知の活性化化学によりベース充填材に移植された相互作用基を有する吸着材、(xiii)前記相互作用基は、C1〜C18の炭素分子の不飽和又は飽和芳香族部分及び/又は脂肪族部分である吸着材、(xiv)前記相互作用基はハロゲン原子である吸着材、(xv)前記相互作用基はシアノ基、ジオール基又はアミノ基である吸着材、(xvi)種々の塩素化スクロースに対して異なる相互作用能又は親和性又は結合強度を有する相互作用基を有する吸着材、(xvii)微小孔性、マクロ多孔性、メソ多孔性、ギガ多孔性、超マクロ多孔性、又は貫通多孔性の吸着材、(xviii)合成又は天然のポリマー充填材のうちの1つ若しくは複数をベースとし、アミノ(第1級、第2級又は第3級)部分若しくはイミノ部分を有する混合モード又は陰イオン交換充填材、(xix)ヒドロキシル基又はジオール基を有するPSDVB、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、天然ポリマー及びそれらの組み合わせを含むポリマーのうちの1つ又は複数をベースとする充填材、(xx)疎水性基を有する吸着材、のうちの1つ又は複数を含み、
(h)精製並びに最終精製の両方において平衡化、洗浄、溶離及び再生に用いられる移動相は、以下の(i)pH7の中性水、(ii)pH7未満の酸性水、(iii)pHが7よりも高いアルカリ性水、及び(iv)メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールを含む1つ又は複数のアルコール、(v)アセトニトリル、(vi)クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンを含む塩素化有機溶媒、(vii)トルエン、(viii)ブチルアセテート、エチルアセテートを含む1つ又は複数のエステル、(ix)アセトン、メチルイソブチルケトンを含む1つ又は複数のケトン、(x)リン酸、酢酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフェニルアミン及びそれらの組み合わせを含む1つ又は複数のイオンペアリング剤、及び、1つ又は複数の親和性及び/若しくは結合強度調整剤、(xi)クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、リン酸塩−クエン酸塩緩衝剤、クエン酸塩−酢酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤を含む1つ又は複数の緩衝剤、(xii)塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムであるがこれらに限定されない1つ又は複数の有機塩又は無機塩、(xiii)酢酸、クエン酸、酒石酸、塩酸、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ポリエチレンイミンであるがこれらに限定されない1つ又は複数の有機酸若しくは無機酸又は有機塩基若しくは無機塩基、(xiv)並びに、一塩素化、二塩素化、三塩素化、四塩素化化合物の、前記吸着材との所望の親和性及び/又は相互作用能を達成するように選択された上記(i)〜(xiii)のうちの1つ又は複数の任意の適切な組み合わせのうちの1つ又は複数を含み、
(i)平衡化、洗浄、溶離及び再生のために用いられる前記移動相はさらに、前記(h)において述べたもののうち1つ又は複数を含み、アイソクラティック溶離として溶離剤にいかなる変化もない不変方式で前記吸着材に通液されるか、又は段階的勾配、若しくは任意の適切な「連続的勾配」溶離として段階的な方式で、すなわち任意の適切な時間期間にわたって且つ任意の液体量にわたって変化する方式で通液されるか、又は任意のそれらの組み合わせで通液される
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
(j)スクロースのトリクロロ及びテトラクロロ誘導体を前記吸着材に吸着させるために、スクロースのトリクロロ又はテトラクロロ誘導体に対して選択的であり、ベンジル基若しくはフェニル基をさらに含む1つ又は複数の相互作用基又はリガンドを有する吸着重点材を用いるステップと、
(k)DMF、無機塩、有機塩、有機溶媒、カラメル化生成物のうちの1つ又は複数を含む、フィード中の吸着されなかった成分が存在する場合、以下の:(i)pH7の中性水、(ii)pH7未満の酸性水、(iii)pHが7よりも高いアルカリ性水、及び(iv)メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールを含む1つ又は複数のアルコール、(v)アセトニトリル、(vi)クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンを含む塩素化有機溶媒、(vii)トルエン、(viii)ブチルアセテート、エチルアセテートを含む1つ又は複数のエステル、(ix)アセトン、メチルイソブチルケトンを含む1つ又は複数のケトン、(x)リン酸、酢酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフェニルアミン及びそれらの組み合わせを含む1つ又は複数のイオンペアリング剤、及び、1つ又は複数の親和性及び/若しくは結合強度調整剤、(xi)クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、リン酸塩−クエン酸塩緩衝剤、クエン酸塩−酢酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤を含む1つ又は複数の緩衝剤、(xii)塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムを含むがこれらに限定されない1つ又は複数の有機塩又は無機塩、(xiii)酢酸、クエン酸、酒石酸、塩酸、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ポリエチレンイミンであるがこれらに限定されない1つ又は複数の有機酸若しくは無機酸又は有機塩基若しくは無機塩基、(xiv)並びに、一塩素化、二塩素化、三塩素化、四塩素化化合物の、前記吸着材との所望の親和性及び/又は相互作用能を達成するように必要に応じて選択された、上記(i)〜(xii)のうちの1つ又は複数の任意の適切な組み合わせのうちの1つ又は複数を含有し、フィード中の吸着されなかった成分を洗浄するのに適した方法で構成され、精製のために用いられる吸着材充填材に基づいて選択された移動相によって、前記吸着されなかった成分を洗浄するステップと、
(l)前記(h)において言及された群から選択された、別の適切に構成された移動相で洗浄又は溶離し、任意選択で、前記(i)において言及された方式で通液された前記移動相において、ジクロロ及びモノクロロ誘導体を単離するステップと、
(m)前記(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された1つ又は複数の適切に構成された移動相を用いた選択的な溶離により、トリクロロ及びテトラクロロ誘導体を純粋なフラクションで単離するステップと
のうちの1つ又は複数を含む方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、
(j)スクロースのテトラクロロ、トリクロロ、ジクロロ及びモノクロロ誘導体のうちの1つ又は複数を含む塩素化スクロース誘導体のすべてに対して選択的である1つ又は複数の相互作用基又はリガンドを有する吸着充填材を用いるステップであって、当該リガンドは、スクロースのテトラクロロ、トリクロロ、ジクロロ及びモノクロロ誘導体のうちの1つ又は複数を吸着するために、非イオン性又は陽イオン性脂肪族若しくは陽イオン性芳香族の化合物を含み、ハロゲンをさらに含み、臭素をさらに含むステップと、
(k)前記(j)の後、DMF、無機塩、有機塩、有機溶媒、カラメル化生成物のうちの1つ又は複数を含む、フィード中の吸着されなかった成分が存在する場合、請求項2の(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された、適切に構成された移動相である溶離剤での連続的溶離により、前記吸着されなかった成分を洗浄するステップと、
(l)前記(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された1つ又は複数の適切に構成された移動相である溶離剤により、1つ又は複数の塩素化スクロースを、互いに別々の純粋なフラクションで選択的に溶離するステップと
をさらに含む方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、
(j)スクロースのトリクロロ誘導体を吸着するために、スクロースのトリクロロ誘導体に対して選択的であり、アミノ基若しくはイミノ基のうちの1つ又は複数を含む相互作用基又はリガンド(配位子)を有する吸着充填材を用いるステップと、
(k)DMF、無機塩、有機塩、有機溶媒、カラメル化生成物のうちの1つ又は複数を含む、フィード中の吸着されなかった成分が存在する場合、前記(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された1つ又は複数の適切に構成された移動相である溶離剤で溶離を続けることにより、前記吸着されなかった成分を洗浄するステップと、
(l)前記(h)において言及された群から選択された、適切に構成された移動相である洗浄溶液により、スクロースのジクロロ及びモノクロロ誘導体をカラムから洗い流し、任意選択でそれらを別々に収集し、任意選択で、前記(i)において言及された方式で通液された前記移動相においてジクロロ及びモノクロロ誘導体を単離するステップと、
(m)前記(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された1つ又は複数の適切に構成された移動相である溶離剤により、スクロースのトリクロロ誘導体を純粋なフラクションとして溶離するステップと
のうちの1つ又は複数を含む方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法であって、
1つ又は複数の塩素化スクロース化合物を、5%以上の濃度で含有することが好ましいプロセスストリームが濃縮及び脱水され、当該濃縮及び脱水は、
(j)カラムを重力下で排水するか、又はポンプ若しくは加圧ガスの適切な駆動機構を用いて、過剰な液相を排出することによってカラムにロードすることにより、塩素化スクロース化合物を吸着材に吸着させるステップと、
(k)その後、充填床に存在する遊離水又は水−溶媒混合物の大部分を除去するために気体でパージするステップと、
(l)吸着された分子を、非水系有機溶媒、又は、(i)メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールを含む1つ又は複数のアルコール、(ii)アセトニトリル、(iii)クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンの塩素化有機溶媒、(iv)トルエン、(v)ブチルアセテート、エチルアセテートを含む1つ又は複数のエステル、(vi)アセトン、メチルイソブチルケトンを含む1つ又は複数のケトン、から成る群から選択されるがそれらに限定されない溶媒の混合物を含む溶媒で溶離するステップと
のうちの1つ又は複数をさらに含む方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法であって、
脱エステル化が、塩素化スクロースエステルを含有する溶液又はプロセスストリームのクロマトグラフィプロセスに一体化され、当該方法は、
(j)塩素化スクロースエステルが吸着された吸着材を有する単独のカラムにおいて、当該塩素化スクロースエステルをそれぞれの塩素化スクロースに溶離し、且つ脱エステル化することが可能であり、前記(h)において言及された群から選択され、前記(i)において言及された方式で通液された1つ又は複数の適切に構成された移動相である溶離剤で溶離を行うステップと、
(k)前記塩素化スクロースを前記溶出された溶液から単離及び精製するステップと
を含む方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記プロセスストリームは、
(n)中和された塩素化スクロース誘導体の脱保護の前又は後に通液される塩素化反応混合物と、
(o)第3級アミド除去の前又は後に通液される塩素化反応混合物と、
(p)第3級アミド及び塩を除去され、前記塩素化スクロース誘導体を含む反応混合物と、
(q)塩(有機及び/又は無機)の部分的又は完全な除去の前又は後に、第3級アミド及び塩を除去され、前記塩素化スクロース誘導体を含む反応混合物と、
(r)抽出、クロマトグラフィ、結晶化、蒸留を含む任意の他の操作による塩素化スクロース誘導体の部分的な精製後の任意の段階における反応混合物と、
(s)従来のカラムクロマトグラフィの代替物と、
(t)前記塩素化スクロース誘導体の生成に用いられる、精製及び単離された任意のスクロース中間体化合物と、
(u)溶液をカラムクロマトグラフィにかけることによりさらに精製された、単離されたTGS又はその前駆体又は誘導体と
のうちの1つ又は複数を含む方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法は、単一バッチ式若しくは複数バッチ式若しくはそれらの組み合わせ、連続方式、膨張床、流動床、液固循環流動床(Liquid Solid Circulating Fluidized Bed:LSCFB)、擬似移動床(Simulated Moving Bed:SMB)、移動床、改良型擬似移動床(Improved Simulated Moving Bed:ISMB)、遠心クロマトグラフィ、環状クロマトグラフィを含む1つ又は複数のモードで実行され、
吸着は、好ましくは、反応マス及び1つ又は複数の移動相を、適切な吸着材で充填された充填床クロマトグラフィカラム又は膨張床クロマトグラフィカラムに通過させることにより実行される
方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
請求項7に記載の方法が1つ又は複数のプロセスストリームに適用されるとき、
(l)前記1つ又は複数の塩素化スクロース誘導体の脱保護の前又は後における適用と、
(m)精製された又は部分的に精製された前記1つ又は複数の塩素化スクロース誘導体の酵素的又は化学的な脱保護の後における適用と、
(n)第3級アミド溶媒除去の前又は後における適用と、
(o)抽出、クロマトグラフィを含む任意の他の操作による、1つ又は複数の塩素化スクロース誘導体の部分的な精製後の任意の段階における適用と、
(p)水除去のための従来の抽出及び蒸留の代替としての適用と、
(q)1つ又は複数の所望の塩素化スクロース誘導体の生成に用いられる任意の塩素化スクロース中間体化合物の精製又は単離後における適用と
のうち少なくとも1つ又は複数の適用がなされる方法。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の方法であって、
前記方法は、0℃〜80℃の範囲で実行され、好ましくは常温で実行される
方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−509925(P2009−509925A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528660(P2008−528660)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000327
【国際公開番号】WO2007/052303
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508061985)ファームド メディケア プライヴェート リミテッド (1)
【Fターム(参考)】