説明

疎油性無機膜およびその製造方法

本発明は疎油性無機膜およびその製造方法を開示する。この膜は燃料設備の換気装置の燃料吸着装置の手前で使用することができ、液体燃料と燃料蒸気相の分離を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎油性無機膜、特にセラミック及び金属膜、その製造方法並びに疎油性無機膜を含むタンク換気設備、特に燃料吸着装置に関する。
【0002】
自動車、飛行機、船舶及びその他の移動及び固定機械、例えば芝刈り機、電動のこ、発電機等のための燃焼機関、例えば内燃機関、燃料電池、タービン、ジェットエンジン等はその運転のために通常、燃料タンクを必要とする。使用される燃料、例えば特にエタノール、メタノール、オットー燃料、モーターベンゾール、タービン燃料(JP4)、さらにはディーゼル燃料、灯油、エンジン用気化油及び高沸点タービン燃料(JP5)が標準条件下で高い蒸気圧と約30℃からの範囲の沸点範囲を有するのは当然である。従ってタンク設備では燃料蒸気が生じ、特に移動式設備では液体燃料の機械的混合で生じる表面積の増大又は燃料の温度上昇によって燃料蒸気が増す。燃料蒸気は正常運転ですでにタンク設備及び燃料系統に大きな圧力をかける。そこで漏れ又は破裂を回避するために、タンク設備及び燃料系統で適当な圧力補正を講じなければならない。
【0003】
周知のように圧力補正は費用のかかる換気装置によって達成されるが、換気装置ではまず第一に液体燃料が流出することを防止するために、特に種々のフロート及びサイホンに基づいて液体を有害な蒸気から分離しなければならない。特に自動車内燃機関用の燃料では法的放出防止策がタンク設備から環境への燃料蒸気の流出を禁じている。従って換気装置はたいてい密閉系として形成される。タンク設備の換気装置に吸着部が接続することが好ましい。このような吸着部は、流出する蒸気を結合する燃料吸着装置を含む。必要に応じて吸着材を例えば新鮮な空気でフラッシングすることによって、結合された燃料蒸気を燃焼に送ることが保証される。
【0004】
燃料吸着装置と液体燃料の接触により燃料吸着装置の不都合な急速なオーバロードを防止するために、液体燃料と燃料吸着装置の接触を回避する措置を講じなければならない。
【0005】
移動及び固定内燃機関の燃料タンク設備のほかに、高揮発性媒質を使用するその他のタンク設備又は反応装置、例えば有機溶剤の製造と貯蔵又は燃料精製設備でもこの問題が起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の根底にある技術的課題は、本質的に有機溶剤、特に内燃機関用燃料の液相と蒸気相の改善された、より簡単な分離を可能にする手段及び方法を提供することである。その場合特に簡単な圧力補正を可能にし、又は液相と蒸気相吸着装置、特に燃料吸着装置との不都合な接触を回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
根底をなす技術的課題は、疎油性無機膜の製造方法を提供することによって解決される。この方法は本発明に基づき無機膜を少なくとも1種のペルフルオロアルキル化合物で表面変性させ、こうして疎油性無機膜を得ることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明者は意外なことに、本発明方法で得られる疎油性無機膜が液体燃料によって非常に濡れにくいことを発見した。本発明に基づき得られる疎油性無機膜をとりわけ多孔質に形成しても、液体燃料は極めて大きな圧力のもとでしか膜を通過することができない。他方では燃料蒸気は膜の細孔を通って拡散することができる。こうして液体燃料と蒸気相の簡単な分離が可能になり、タンク設備の圧力補正が簡単に得られる利点がある。なお本発明の疎油性無機膜は、特にタンク換気装置の構成部分として蒸気と液体を分離するのに適している。タンク換気はまず第一に圧力補正(破裂の危険)のために必要である。膜は蒸気又は溶剤吸着装置の手前で蒸気と液体を分離して、吸着装置の急速なオーバロードを防止するためにも適している。従って液体燃料の流出又は液体燃料による燃料吸着装置の有害な濡れを防止するには、先行技術で知られているような複雑なサイホンシステムはもはや必要でない。好ましい実施形態では無機膜は多孔膜として形成され、好ましくは1nm〜100μmの孔径を有する。
【0009】
使用される無機膜、例えばセラミック又は金属膜はたいていの燃料及び有機溶剤に対して不活性であることが特に好ましい。有機ポリマー膜と対照的に、本発明に基づき得られる無機膜は燃料又は有機溶剤の作用に対して持続的に安定である。本発明に基づき無機膜はセラミック膜である。別の好ましい変法では無機膜は金属膜である。
【0010】
別の好ましい実施形態では無機膜は表面マトリックスにさらに親水性成分を有する。
【0011】
本発明方法でペルフルオロアルキル化合物によるシラン化処理で無機膜を表面変性させて、疎油性無機膜を得ることが好ましい。
【0012】
別の好ましい実施形態ではペルフルオロアルキル化合物によるプラズマコーティングで無機膜を表面変性させる。
【0013】
最後に、別の実施形態ではペルフルオロアルキル化合物による塗装処理で無機膜を表面変性させる。
【0014】
また本発明の別の主題は、とりわけ本発明方法で得られる、ペルフルオロアルキル化合物で表面変性した疎油性無機膜である。前述のように、発見された技術的効果を得るために、得られた疎油性無機膜を燃料タンク設備、換気装置、燃料吸着部の内部及び在来の燃料吸着装置の手前で使用することが好ましい。
【0015】
また本発明の別の主題は例えば燃料設備の換気装置、特に在来の燃料吸着装置の手前での疎油性無機膜の使用、又は改善された燃料吸着装置における膜の使用であり、よって燃料吸着装置自体は既知であるが、本発明の疎油性無機膜をさらに備えている。
【0016】
また本発明の別の主題は、少なくとも1つの本発明に基づく疎油性無機膜を含む改善された燃料吸着装置である。
【0017】
また本発明の別の主題は、本発明に基づく疎油性無機膜及び/又は本発明に基づく改善された燃料吸着装置を含む燃料吸着部である。
【0018】
最後に、本発明の別の主題は、本発明に基づく疎油性無機膜及び/又は本発明に基づく改善された燃料吸着装置及び/又は本発明に基づく燃料吸着部を含む燃料設備の換気装置である。
【0019】
本発明の教示によれば、ペルフルオロアルキル化合物で表面変性させた疎油性無機膜によって、タンク設備の圧力補正が技術的にはるかに簡単に得られる。従ってこうして実現される圧力補正はコストがかからず、故障が発生しにくい。さらに本発明はタンク設備の重量の減少を可能にし、こうして新規な改善されたタンク設備を設計することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機膜及び少なくとも1種のペルフルオロアルキル化合物から疎油性無機膜を製造する方法であって、無機膜をペルフルオロアルキル化合物で表面変性させて、疎油性無機膜を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
無機膜がセラミック膜である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機膜が金属膜である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ペルフルオロアルキル化合物でシラン化することにより無機膜を表面変性させる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペルフルオロアルキル化合物でプラズマコーティングすることにより無機膜を表面変性させる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペルフルオロアルキル化合物で塗装することにより無機膜を表面変性させる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
無機膜が1nm〜100μmの孔径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
膜が表面マトリックスにさらに親水性成分を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ペルフルオロアルキル化合物で表面変性させた疎油性無機膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法によって得られる請求項9に記載の膜。
【請求項11】
例えば燃料設備の、及び/又は燃料吸着装置の手前の換気装置での請求項9又は10に記載の疎油性無機膜の使用。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の少なくとも1つの疎油性無機膜を含む燃料吸着装置。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料吸着装置を含む燃料吸着部。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の膜及び/又は請求項12に記載の燃料吸着装置及び/又は請求項13に記載の燃料吸着部を含む換気装置。

【公表番号】特表2007−529302(P2007−529302A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503272(P2007−503272)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002747
【国際公開番号】WO2005/089916
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】