説明

疑似移動床吸着と結晶化からなる高純度のメタ−キシレンの製造方法

【課題】少なくとも99.5%の純度の高純度のメタ−キシレンを製造する疑似移動床吸着工程と結晶化工程を連結することによりメタ−キシレンを分離する製法を構築する。
【解決手段】疑似移動床吸着工程(LM3)は厳しくない条件で操作され、吸着装置から流出するメタ−キシレンの純度は低く、一般的に75%から99%の間にある。該装置は生産性を高め(吸着剤の単位体積当たり、単位時間当たりに製造されるメタ−キシレンの生産量)、オルト−キシレンに富んだ(例えば10%以上)供給原料で、供給原料に対する溶媒比が減少する。結晶化(CD6,CD12)工程は入って来る供給原料の前の濃縮により改善された収率になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソフタル酸の合成に使用される非常に高純度のメタ−キシレンの製造のために芳香族C8異性体の混合物から出発する改良された生産性と低いランニングコストの新規なメタ−キシレンの分離方法に関する。イソフタル酸はテレフタル酸との共重合体として使用される。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、パラ−キシレン、オルト−キシレン、エチルベンゼンのような一つ以上の生成物を伴うメタ−キシレンの製造方法を開示している。
【0003】
特許文献1米国特許US−4,326,092号は少なくとも99.5%の純度でメタ−キシレンを生成する疑似移動床で実施される吸着による分離の実施例を開示している。しかし、その実施例はオルト−キシレンを減少する処理された供給原料にのみ言及している。その実施例は、パラフィン6.0%、エチルベンゼン27.0%、パラ−キシレン17.8%、メタ−キシレン45.1%、オルト−キシレン4.1%の組成の処理された供給原料に関してA/F(供給原料の体積流速に対する選択的細孔内の体積流速) は1.5であることを開示している。本明細書では以降、該実施例で定義された供給原料の体積流速に対する選択的細孔内の流速のこの概念を使用する。
【0004】
特許文献2米国特許US−4,306,107号は、メタ−キシレンが抽出物の形で除かれる疑似移動床の液相工程を開示している。パラ−キシレン、オルト−キシレンとエチルベンゼンのフラクションは中間体のラフィネートとして除かれる。最終的にエチルベンゼンはラフィネートとして除かれる。メタ−キシレンは少なくとも99.5%の純度で製造される。この分離に使用される吸着剤は水を2重量%から7重量%含むナトリウムYゼオライトである。
【0005】
特許文献3米国特許US−4,313,015号は、3つの抜出口からなる液相の疑似移動床で炭化水素の供給原料から出発するパラ−キシレンとメタ−キシレンの連続的に両方を生成する方法を開示している。抽出物は、最近の規制(最近の規制では最低99.7%である)では販売するには不純過ぎ(99.44%)のパラ−キシレンから成る。収率は97.5%である。中間体のラフィネートは、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレンと少量のパラ−キシレンからなり、最終的にラフィネートは主としてオルト−キシレン、とメタ−キシレンの混合物からなる。そして高純度のメタ−キシレンはラフィネートを蒸留することで得られる。
【0006】
3つの抜出口からなる液相の疑似移動床で炭化水素の供給原料からパラ−キシレンとメタ−キシレンの両方を生成する方法はまた、特許文献4仏国特許FR−2,782,714でも開示されている。開示されたクロマトグラフィーのカラムは、5ゾーンに配置される少なくとも25個の床からなる。少なくとも5個の床は、メタ−キシレン、オルト−キシレン、エチルベンゼン、溶媒とパラ−キシレンを含む中間体のラフィネートの抜出口とメタ−キシレン、オルト−キシレンと溶媒の抜出口の間に含まれるゾーンに配置される必要がある。
【0007】
99%以上の純度のメタ−キシレンはラフィネートの蒸留から得られる。この製法を実施するために必要な多数の床(例えば30)に加えて、炭化水素の供給原料には5%以下のエチルベンゼンを含まなくてはならない。これはかなりの制限となる。
【0008】
本発明者が申請した特許文献5米国特許US−6,696,616号は、エチルベンゼンに関しては制限がない供給原料から出発する3つの抜出口からなるクロマトグラフィーのカラムによってパラ−キシレンとメタ−キシレンを両方製造する疑似移動床の製法を開示している。この製法においてパラ−キシレンを含む抽出物は連続的に抜出される。第一のラフィネートは連続的、または不連続的に抜出される。そしてオルト−キシレンとメタ−キシレンからなる第二のラフィネートは不連続的に抜出される時、この製法は第二のラフィネートがオルト−キシレンと少なくとも99%の純度のメタ−キシレンを回収するために蒸留されることで特徴づけられる。
【0009】
特許文献6米国特許US−5,510,562号はまたオルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンとエチルベンゼンの混合物が最初にパラ−キシレンとエチルベンゼン、そしてメタ−キシレンとオルソ−キシレンをそれぞれ含む二つの流れ分けられるC8芳香族化合物を分離する方法を開示している。そしてパラ−キシレンは後で結晶化を伴う蒸留によりエチルベンゼンから分離され、そしてメタ−キシレンはオルト−キシレンから蒸留によって分離される。
【0010】
特許文献3米国特許US−4,313,015号、特許文献4仏国特許FR−2,782,714号、特許文献6米国特許US−5,510,562号と、特許文献5米国特許US−6,696,616号に開示されている製法の全てにおいて高純度のメタ−キシレン(>99%)が蒸留により得られる。しかし、これらの二つの化合物の沸点は非常に近い(即ち、それぞれ139.12℃と144.41℃)ので、蒸留による高純度のメタ−キシレンの製造を困難にし、少なくとも150から200段の大きなカラムと一般的に5から1の非常に高い還流比を必要にする。
【0011】
さらに分離されるメタ−キシレンとオルト−キシレンの混合物の流れがパラ−キシレンとエチルベンゼンの形で不純物を含むと、これらの不純物はメタ−キシレンの中に濃縮され99%以上の純度の達成を困難にする。
【0012】
特許文献7米国特許US−3,773,846号と関連特許は、パラ−キシレン製造装置と吸着または結晶化によるメタ−キシレンの精製、任意に異性化装置を連結することを以下に開示している。
【0013】
特許文献8米国特許US−3,798,282号と特許文献9US−3,825,614号はパラ−キシレンの結晶化装置の下流にメタ−キシレンを結晶化する方法を提示している。適用される結晶化技術はメタ−キシレン結晶の粗い分離をする。その結晶はパラ−キシレンの結晶より大きい。この第一の分離の後、濃縮されたメタ−キシレンは融解され、高純度メタ−キシレンを製造するために第二の工程で再結晶される。
【0014】
特許文献7米国特許US−3,773,846号は、メタ−キシレン結晶化装置のパラ−キシレンの濃度を減少する結晶化工程の前の吸着工程の有利性を示している。それはC8芳香族炭化水素の新しい供給原料から出発する高純度のメタ−キシレンと高純度のパラ−キシレンの同時に製造する方法を請求している。第一のゾーンは、高純度のパラ−キシレンの流れと二成分系のメタ−キシレン−パラ−キシレンの共晶以下にパラ−キシレンの濃度を減少させた流れの選択的な吸着ゾーンである。この減少された流れの分別の工程はオーバーヘッドでメタ−キシレンと共晶混合物の割合よりも少ないオルト−キシレンを生成する。混合物は高純度のメタ−キシレン(>99%)と母液の流れを生成する結晶化装置に導入される。
【0015】
特許文献10米国特許US−6,376,736B1(WO−A−00/64381)はまたメタ−キシレン分離技術として結晶化が採用されている。C8芳香族化合物の供給原料から出発するパラ−キシレンとメタ−キシレンの分離の第一の工程は、オルト−キシレンに富むボトムの流れとエチルベンゼン、パラ−キシレンとメタ−キシレンを主に含む蒸留物を製造するために供給原料を蒸留塔に通した後に疑似移動床吸着により実施される。この理由は、混合物の組成、特にパラ−キシレンの含有量、が吸着工程で改質されるからである。吸着工程は結晶化に影響を及ぼし、結晶化装置の設計を異なったものにすることを要求する。結晶化工程は、結晶化ドラムがあるかまたなしで、共晶の融点以下の連続的な結晶化で決まる多くのバリエーションがある。該結晶化工程は少なくとも99%の純度のメタ−キシレン(MX)を生成する。
【0016】
上に述べた特許のどれも吸着工程と結晶化工程を連結する方法よるメタ−キシレンの製造を提案していない。さらに特許文献11米国特許US−5,382,747号と特許文献12US−A−5,900,523号は、特にオルト−キシレンに富む(例えば>10%)供給原料の流量に対する固体の流量との比がかなり高いことを必要とする吸着分離方法を開示している。
【特許文献1】米国特許US−4,326,092号明細書
【特許文献2】米国特許US−4,306,107号明細書
【特許文献3】米国特許US−4,313,015号明細書
【特許文献4】仏国特許FR−2,782,714号明細書
【特許文献5】米国特許US−6,696,616号明細書
【特許文献6】米国特許US−5,510,562号明細書
【特許文献7】米国特許US−3,773,846号明細書
【特許文献8】米国特許US−3,798,282号明細書
【特許文献9】米国特許US−3,825,614号明細書
【特許文献10】米国特許US−6,376,736B1(WO−A−00/64381)明細書
【特許文献11】米国特許US−5,382,747号明細書
【特許文献12】US−A−5,900,523号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、少なくとも99.5%の純度、好ましくは99.7%、さらに好ましくは99.9%の非常に高純度のメタ−キシレンを製造する疑似移動床吸着工程と結晶化工程を連結することによりメタ−キシレンを分離する製法を構築することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の製法は、少なくとも99.5%の純度の非常に高純度のメタ−キシレンの製造のより経済的の条件を作り出すオリジナルな簡単な方法で二つの工程(疑似移動床分離と結晶化工程)を連結することで非常に高純度メタ−キシレンの分離を可能にする。
【0019】
この連結において
・疑似移動床吸着工程は厳しくない条件で操作され、吸着装置から流出するメタ−キシレンの純度は低く、一般的に75%から99%の間にあることを特徴とする。しかし、該装置は生産性を高め(吸着剤の単位体積当たり、単位時間当たりに製造されるメタ−キシレンの生産量)、オルト−キシレンに富んだ(例えば10%以上)供給原料で、供給原料に対する溶媒比が減少する。
【0020】
・結晶化工程は入って来る供給原料の前の濃縮により改善された収率になる。
【0021】
引用した従来技術のメタ−キシレンの結晶化方法の例は、Chemical Engineering(May 2000)に述べられたSulzer Chemtec製法とWO−99/64381号と米国特許US−3,773,846号に開示されている製法である。
【0022】
図1は疑似移動床カラム(LM3)、二つの蒸留塔(CD6)と(CD7)、結晶化装置(CR12)からなる本発明の製法のフローチャートである。
【0023】
[発明の要約]
本発明は芳香族C8炭化水素から本質的になる炭化水素の供給原料から出発する99.5%以上の純度のメタ−キシレンの製造の製法からなる。該製法は以下の第一から第四の工程からなる。
【0024】
1)吸着のための第一の工程は、供給原料を疑似移動床吸着装置(LM3)で固相ゼオライト吸着剤と接触させことからなる。該吸着ゾーンは少なくとも二つのフラクションを生成し、第一のフラクションは純度が75%から99%のメタ−キシレンに富む抽出物と呼び、第二のフラクションはメタ−キシレンを減少させたラフィネートと呼ぶ。
【0025】
2)蒸留のための第二の工程は、一方では脱着剤と他方ではオルト−キシレン、パラ−キシレンとエチルベンゼンを不純物として含む純度が75%から99%であるメタ−キシレンを分離するために第一のフラクションを蒸留する少なくとも一つの第一のカラム(CD6)と、一方で脱着剤と他方ではメタ−キシレンを減少させた混合物を分離するための第二のフラクションを蒸留する少なくとも一つの第二のカラム(CD7)からなる。
【0026】
3)結晶化装置(CR12)での結晶化のための第三の工程は、一方で母液で浸漬されたメタ−キシレンの結晶を得るために−50℃から−95℃の範囲の温度で工程2)から生成したメタ−キシレンを結晶化させることからなる。そして母液の一部または全部は疑似移動床吸着装置に導入される新しい供給原料と混合されリサイクルされる。
【0027】
4)工程3)から得られた結晶を洗浄する第四の工程で、純度が少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、さらに好ましくは少なくとも99.9%のメタ−キシレンが回収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は本発明の製法が図で描写された図1の考察から良く理解できる。
【0029】
新しい供給原料はライン(1)を通じて疑似移動床吸着分離装置(LM3)に導入される。この新しい供給原料は主に芳香族C8化合物、キシレンとエチルベンゼンからなり、留分の由来により割合は変わる。
【0030】
任意にこの新しい供給原料は、結晶化装置(CR12)からリサイクルされる流れ(14)の一部(16)で補われる。
【0031】
疑似移動床吸着装置(LM3)は閉鎖回路に連結し、メタ−キシレン、オルト−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼンに対して異なった選択性を有する多数の床を含む少なくとも一つの吸着カラムからなる。
【0032】
該カラム(LM3)は以下に定義する少なくとも四つのゾーンからなる。
【0033】
・脱着剤の注入ライン(2)と抽出物の抜出ライン(4)の間にあるメタ−キシレン脱着のためのゾーン1
・抽出物の抜出ライン(4)と吸着供給原料の注入ライン(1)の間にあるオルト−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼンの脱着のためのゾーン2
・供給原料の注入ライン(1)とラフィネートの抽出ライン(5)の間にあるゾーン3
・ラフィネート抽出ライン(5)と脱着剤の注入ライン(2)の間にあるゾーン4。
【0034】
それぞれの床は、供給原料または脱着剤を導入したり、抽出物またはラフィネートを抜出す一連のバルブを備えている。
【0035】
ゾーンの位置は、床の長さの相当する増分による時間に沿って一般的に変えられる。ゾーンの相対的位置とそれらの長さは連続的な変換の間保持される。ゾーンの長さは床の数として表わされる。二つの連続的な変換を分離する時間の期間は、バルブ変換時間または期間と呼ばれる。
【0036】
疑似移動床の完全な説明は、例えば仏国特許FR−2,721,527号に見られる。
【0037】
抽出物(4)とラフィネート(5)の流れを分離する工程は、それぞれ抜出ライン(4)と(5)で供給される二つの蒸留塔カラム(CD6)と(CD7)を使用して実施され、そして該カラムの上部からそれぞれ流れライン(8)と(9)を通して脱着剤を実質的に全て除去する。
【0038】
メタ−キシレン(10)はカラム(CD6)の底部から抜出され、そして蒸留されたラフィネート(11)はカラム(CD7)の底部から抜出される。そのラフィネートはオルト−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼンと少量のメタ−キシレンを含む。ライン(8)と(9)から回収された脱着剤はライン(2)を通して吸着カラム(LM3)に送られる。
【0039】
メタ−キシレン(10)の流れはメタ−キシレンの結晶と母液(14)を産出するために少なくとも一つの結晶化ゾーン(CR12)に送られる。結晶は母液から分離され、任意にサスペンジョンにして、洗浄そして純度が少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、さらに好ましくは少なくとも99.9%であるメタ−キシレン(13)の流れを産出するため回収される。
【0040】
メタ−キシレンの結晶は一般的に高純度の液状メタ−キシレン、即ち純度が少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、さらに好ましくは少なくとも99.9%であるメタ−キシレンの流れを用いて洗浄される。好ましくはこの洗浄は該結晶の部分的融解により得られる利点のためメタ−キシレンの結晶の融点に等しいか少し高い温度で実施される。部分融解は洗浄のために必要な液状メタ−キシレンの流れを供給することに貢献する。
【0041】
母液(14)は吸着カラム(LM3)に流れ(16)を通って少なくとも一部リサイクルされ、および/または、一般的に異性化装置に送られる流れ(15)を産出するように、蒸留されたラフィネート(11)と混合される。
【0042】
好ましくは母液は吸着カラム(LM3)に100%リサイクルされるか、それの100%が流れ(15)を産出するように、蒸留されたラフィネートと混合される。
【0043】
新しい供給原料は、本質的にパラフィンとナフテン化合物である供給原料の由来により不純物を、変化する量で任意に含む。
【0044】
ナフテンとパラフィンの不純物の量は、好適に1重量%以下である。好ましくはこの量は0.3重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0045】
供給原料は芳香族化装置(即ち芳香族化合物を産出するための装置)から、またはトルエン不均化装置から、またはトルエンとC9芳香族化合物のトランスアルキレーションの装置、または二つのラフィネートの抽出(ラフィネート1とラフィネート2と呼ぶ)からなる疑似移動床パラ−キシレン分離装置からのラフィネートから、または疑似移動床パラ−キシレン分離装置からのラフィネート2から得られる。
【0046】
本製法の一つの特色に従えば、疑似移動床分離装置(LM3)は、疑似向流方式で作動し、多くても24床、好ましくは多くて15床を含む。
【0047】
実際の疑似移動床分離装置(通常24床を含む)のボトルネックの除去が該装置と全メタ−キシレンの生産能力を増加させるために本発明で述べられた結晶化装置と連結することにより望まれる時は、24床が使用される。
【0048】
本製法の一つの特色に従えば、吸着分離装置(LM3)の吸着剤は、カルシウムで交換かれたXゼオライト、セシウムで交換されたXゼオライト、ナトリウムで交換されたYゼオライト、およびナトリウムとリチウムで交換されたYゼオライトからなるグループから選ばれた少なくとも一つのゼオライトからなる。
【0049】
好ましくは、実質的にナトリウムのみで交換されたYゼオライトが推薦される。ナトリウムを含むメタ選択性(即ちメタ−キシレンに選択的)ゼオライトの例は以下の特許に述べられている。米国特許US−4,326,092号、US−5,382,747号、US−5,900,523号、欧州特許EP−A−0712821号。
【0050】
吸着カラム(LM3)で実施される第一の分離工程の好ましい脱着剤はトルエンである。しかし、インデン、1,2,4−トリメチルベンゼン、パラメチルエチルベンゼンまたはクメンの様な他の脱着剤も、純粋または混合物として使用され、適している。
【0051】
本発明のさらなる特色に従えば、第一の疑似移動床分離工程は、20℃から250℃の間、好ましくは90℃から210℃の間、さらに好ましくは150℃から170℃の間の温度で、選ばれた操作温度でのキシレンの泡圧から20bars(1bar=10Pa)の範囲の圧力で実施される。
【0052】
本発明のさらなる特色に従えば、カラム(LM3)で実施される第一の疑似移動床分離工程の供給原料に対する脱着剤の体積比が、1.0から4.0の間である。好ましくは1.5から3.0の間である。
【0053】
本発明のさらなる特色に従えば、カラム(LM3)で実施される第一の疑似移動床分離工程の供給原料の流速に対する吸着剤の選択的細孔内の流速の体積比が1.0から4.0の間、好ましくは1.0から2.0の間である。
【0054】
本発明の好ましい特色に従えば、結晶化工程に送られる供給原料のモル組成は以下の8ポイントで定義される範囲にある。
【0055】
・純粋なメタ−キシレン
・パラ−キシレン/メタ−キシレン(パラ−キシレン 12.2%、メタ−キシレン
87.8%)2成分系共晶
・メタ−キシレン/オルト−キシレン(メタ−キシレン 67.5%、オルト−キシレン 32.5%)2成分系共晶
・メタ−キシレン/エチルベンゼン(メタ−キシレン 15.8%、エチルベンゼン
84.2%)2成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/オルト−キシレン(パラ−キシレン 7.5%、メタ−キシレン 62.7%、オルト−キシレン 29.8%)3成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/エチルベンゼン(パラ−キシレン 1.0%、メタ−キシレン 15.6%、エチルベンゼン 83.4%)3成分系共晶
・メタ−キシレン/オルト−キシレン/エチルベンゼン(メタ−キシレン 14.8%、オルト−キシレン 5.4%、エチルベンゼン79.8%)3成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/オルト−キシレン/エチルベンゼン(パラ−キシレン 1.0%、メタ−キシレン 14.6%、オルト−キシレン 5.3%、エチルベンゼン79.1%)4成分系共晶
本発明の好ましい特色に応じて、結晶化ゾーンは一つ以上の結晶化装置からなる。例えば冷却相と加熱相を交互に作動する静的な結晶化装置である。
【0056】
冷却装置は−50℃から−95℃の間の温度で作動するために使用される。
【0057】
固体のメタ−キシレンフラクションを得た後、残りの母液は結晶化装置から抜出される。最も純粋な結晶層は静的な結晶化装置の板に付着して残っている。これらの結晶は結晶化温度より少し上の温度に加熱することにより精製される。この部分的融解は結晶を洗浄し、純度が少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、さらに好ましくは少なくとも99.9%であるメタ−キシレンを生成する。
【0058】
分離された母液(14)は流れ(15)を産出するため蒸留されたラフィネート(11)と混合され、および/または吸着カラム(LM3)にリサイクルされる。
【0059】
好ましくは、母液(14)は複雑な全体を調和する役割として、吸着カラム(LM3)に100%か、または流れ(15)を産出するために蒸留されたラフィネート(11)と100%混合されリサイクルされる。
【実施例】
【0060】
本発明は以下の実施例で説明されるがこれに限定されるものでない。
【0061】
実施例1(従来技術)
従来技術の製法は99.1%の純度のメタ−キシレンを製造する疑似移動床分離装置を含んでいる。
【0062】
この発明は純度が99.1%のメタ−キシレンを製造する方法が説明している。メタ−キシレンは疑似移動床向流吸着により分離される。第一の原料供給はオルト−キシレンに富み、以下の組成(重量%)を有する。
【0063】
PX:パラ−キシレン3.57%
MX:メタ−キシレン55.84%
OX:オルト−キシレン28.36%
EB:エチルベンゼン11.79%
TOL:トルエン0.44%
使用されるパイロット装置は、長さ1.1m、直径0.021mの24個のカラムから成る。各々のカラムは900℃の燃焼のロスで表わさられる水分が0.1%以下で、ナトリウムで置換されたYゼオライトが240.6g充填されている。
【0064】
操作温度は160℃、リサイクルポンプの取り入れの圧力は10barsに保持される。
【0065】
流れの全ては、制御された流速で連続的に注入または抜出される。例外的にラフィネートは圧力制御下で連続的に抜出される。注入と抜出しの流速は製法の条件を用いて表わされる。
【0066】
床の全ての数は24個である。
【0067】
4個の床は脱着剤の注入と抽出物の抜出しの間に配置される。抽出物の抜出しと原料供給の注入の間に10個の床がある。原料供給の注入とラフィネートの抜出しの間に7個の床がある。ラフィネートの抜出しと脱着剤の注入の間に3個の床がある。
【0068】
操作条件は以下の通りである。
【0069】
溶媒: 脱着剤(100%トルエン)の67.71cm/min
抽出物: 48.79cm/min
原料供給: 18.72cm/min
ラフィネート:37.64cm/min
リサイクルの流速(ゾーン1):237.3cm/min
バルブ変換時間(または期間):90.0秒
原料供給の流速に対する脱着剤の流速の比:3.62
原料供給の流速に対する吸着剤の選択的細孔内の流速の体積比が2.20.
トルエンを蒸留後、連続的に得られる抽出物は純度が99.4%のメタ−キシレンの9.47cm/minの流れを産出する。
【0070】
メタ−キシレンの収率は90.1%で、生産性は0.053T MX/m/hである。
【0071】
実施例2(本発明に相当)
この実施例は、純度99.7%のメタ−キシレンを製造する結晶化ゾーンを連結した吸着剤の15個の床を有する吸着装置からなる本発明に相当する装置の場合を説明する。
【0072】
使用されるパイロット装置は、長さ1.1m、直径0.021mの15個のカラムから成る。各々のカラムは900℃の燃焼のロスで表わさられる水分が0.1%以下で、ナトリウムで置換されたYゼオライトが240.6g充填されている。操作温度は160℃、リサイクルポンプの取り入れの圧力は10barsに保持される。
【0073】
流れの全ては、制御された流速で連続的に注入または抜出される。例外的にラフィネートは圧力制御下で連続的に抜出される。注入と抜出しの流速は製法の条件を用いて表わされる。
【0074】
床の全ての数が15個であり、以下にように配置される。
【0075】
・ 脱着剤の注入と抽出物の抜出しの間に3個の床
・ 抽出物の抜出しと原料供給の注入の間に6個の床
・ 原料供給の注入とラフィネートの抜出しの間に4個の床
・ ラフィネートの抜出しと脱着剤の注入の間に2個の床
操作条件は以下の通りである。
【0076】
溶媒: 脱着剤(100%トルエン)の62.71cm/min
抽出物: 49.79cm/min
原料供給: 21.72cm/min
ラフィネート:34.64cm/min
リサイクルの流速(ゾーン1):237.3cm/min
バルブ変換時間(または期間):90.0秒
原料供給の流速に対する脱着剤の流速の比:2.89
原料供給の流速に対する吸着剤の選択的細孔内の流速の体積比が1.90.
トルエンを蒸留後、連続的に得られる抽出物は純度が98.4%のメタ−キシレンの10.98cm/minの流れを産出する。
【0077】
メタ−キシレンの収率は89.1%で、生産性は0.098T MX/m/hである。
【0078】
結晶化ゾーンは、結晶が生成される時に冷却相と加熱相の間を交互にするような方法で操作される二つの静的な結晶化装置からなる。冷却装置は−60℃でメタ−キシレンの結晶を生成するために使用される。
【0079】
結晶後、母液は抜出される。メタ−キシレンの結晶は非常の高純度の熔融メタ−キシレンで洗浄され、そして同時に−45℃で部分的に融解されることにより精製される。
【0080】
結晶化によるメタ−キシレンの収率は96.7%である。
【0081】
本製法により製造されるメタ−キシレンの量は、10.48cm/minであり、その純度は99.7%である。
【0082】
製造されるメタ−キシレンの量は、従来技術に比べ11%以上大きく、その純度は0.6ポイント改善されている。
【0083】
疑似移動床吸着分離装置は少ない床で操作され、原料供給の流速に対する脱着剤の流速の体積比が20%少なく、原料供給の流速に対する吸着剤の選択的細孔内の体積流速が14%減少する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は疑似移動床カラム(LM3)、二つの蒸留塔(CD6)と(CD7)、結晶化装置(CR12)からなる本発明の製法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ−キシレン、オルト−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼンと任意にナフテン類とC8パラフィン類を含む炭化水素の原料供給から出発する非常に高純度のメタ−キシレンを製造する製法であって、該製法は下記の4つの工程の連結からなる:
1)供給原料(1)を疑似移動床吸着装置(LM3)で固相ゼオライト吸着剤と接触させことからなる吸着のための第一工程であって、該吸着装置は少なくとも二つのフラクションを生成し、第一のフラクションは抽出物(4)と呼ばれ、純度が75%から99%のメタ−キシレンに富む抽出分で、第二のフラクションはラフィネート(5)と呼ばれ、メタ−キシレンが減少されている、
2)一方で脱着剤(8)と、他方でオルト−キシレン、パラ−キシレンとエチルベンゼンを不純物として含む純度が75%から99%であるメタ−キシレンとを分離するために第一のフラクションを蒸留する少なくとも一つの第一のカラム(CD6)と、
一方で脱着剤(9)と、他方でメタ−キシレンを減少させた混合物(11)とを分離するために第二のフラクションを蒸留する少なくとも一つの第二のカラム(CD7)と
からなる蒸留のための第二の工程、
3)一方で母液で浸漬されたメタ−キシレンの結晶を得るために−50℃から−95℃の範囲の温度で工程2)から生成したメタ−キシレンを結晶化させる少なくとも一つの結晶化装置(CR12)からなる結晶化のための第三の工程であって、そして他方で母液(14)の一部は供給原料(1)との混合物として疑似移動床吸着装置(LM3)の入口へリサイクルされる工程、
4)工程3)から由来する結晶を洗浄する第四の工程で、最終的に純度が少なくとも99.5%、のメタ−キシレンが回収される。
【請求項2】
疑似移動床装置が向流方式で作動する請求項1に記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項3】
結晶化装置(CR12)からの母液(14)が、全体的に、供給原料(1)との混合物として疑似移動床吸着装置(LM3)の入口へリサイクルされる請求項1または請求項2に記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項4】
結晶化装置(CR12)から由来する母液(14)が、全体的に、蒸留カラム(CD7)から由来する蒸留されたラフィネート(11)と混合される請求項1または請求項2に記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項5】
原料供給が10重量%以上のオルト−キシレン含有量を有する請求項1から4のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項6】
疑似移動床吸着工程が、1重量%以下の水分含有量を有するナトリウム置換Yゼオライト上で140℃から180℃の温度で実施される請求項1から5のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項7】
疑似移動床吸着装置で使用される脱着剤がトルエンである請求項1から6のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項8】
原料供給の体積流速に対する脱着剤の体積流速の比が1.0から3.0の間、好ましくは1.5から2.5である請求項1から7のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項9】
原料供給の流速に対する吸着剤の選択的細孔内の流速の体積比が1.0から4.0、好ましくは1.0から2.0である請求項1から8のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項10】
吸着装置が多くても24個の床、好ましくは多くても15個の床からなる請求項1から9のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
【請求項11】
結晶化工程(4)に送られる原料供給のモル組成が以下の8ポイントで定義される範囲にある請求項1から10のいずれかに記載の高純度のメタ−キシレンの製造方法。
・純粋なメタ−キシレン
・パラ−キシレン/メタ−キシレン(パラ−キシレン 12.2%、メタ−キシレン
87.8%)2成分系共晶
・メタ−キシレン/オルト−キシレン(メタ−キシレン 67.5%、オルト−キシレン 32.5%)2成分系共晶
・メタ−キシレン/エチルベンゼン(メタ−キシレン 15.8%、エチルベンゼン
84.2%)2成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/オルト−キシレン(パラ−キシレン 7.5%、メタ−キシレン 62.7%、オルト−キシレン 29.8%)3成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/エチルベンゼン(パラ−キシレン 1.0%、メタ−キシレン 15.6%、エチルベンゼン 83.4%)3成分系共晶
・メタ−キシレン/オルト−キシレン/エチルベンゼン(メタ−キシレン 14.8%、オルト−キシレン 5.4%、エチルベンゼン79.8%)3成分系共晶
・パラ−キシレン/メタ−キシレン/オルト−キシレン/エチルベンゼン(パラ−キシレン 1.0%、メタ−キシレン 14.6%、オルト−キシレン 5.3%、エチルベンゼン79.1%)4成分系共晶

【図1】
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【公開番号】特開2008−273968(P2008−273968A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114698(P2008−114698)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】