説明

疲労予防装置

【課題】ディスプレイ装置を注視しているユーザに、瞬目を自発的に行わせるための技術を提供する。
【解決手段】疲労予防装置1は、デジタルカメラ2、瞬目判定装置3、光照射装置4、及び入力装置5から構成される。瞬目判定装置3は、デジタルカメラ2から受付けた顔画像データに対して画像処理を行うことにより、ユーザの瞬目を検出する。瞬目判定装置3は、ユーザの瞬目が入力装置5で指定した所定の基準回数よりも少なくなったと判定した場合には、光照射装置4に光照射実行信号を送る。光照射装置4は、ユーザが疎ましく感じるようにディスプレイ装置に光を照射する。疲労予防装置1は、ユーザが次に瞬目を行うまでディスプレイ装置に光を照射し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに瞬目を自発的に行わせるための疲労予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
瞬目は、意識せずに毎日繰り返し行っている。瞬目を行うことで、涙液が、角膜や結膜全体を潤し、目に十分な酸素や栄養分を与え、また目の汚れを洗い流している。
パソコンやテレビ、テレビゲーム等の表示画面を見ているときや、意識が緊張しているときには、瞬目の回数は減少する。瞬目の回数が減少すると、涙液の減少により眼の表面に障害を生じることが知られている。これがいわゆるドライアイである。ドライアイは、目の痛み、頭痛、肩こりを起こすと言われている。
また、瞬目の回数の減少は、眼瞼の運動不足を招き、次第に眼の筋肉の運動不足となり、眼の疲労を起こす。眼の疲れを取り、眼を疲労させないための予防として、意識的に瞬目をすることが効果的である。また、疲労防止効果とともに、視力を回復させる効果もあると言われている。
【0003】
瞬目の回数が減った場合の対処療法は、目薬を指す、目の周りのマッサージを行う等、様々なものが提案されている。
しかしながら、瞬目の回数を減らさないようにするための実用的な技術は提案されていない。
【0004】
そのような技術が存在すれば、デスクワークを行う労働者をはじめ、様々な者が恩恵を被ることができる。
例えば、家庭や教育現場においては、テレビの視聴やパソコン(PC)の使用等、ディスプレイ装置に表示された画像や映像を長時間注視し、瞬目の回数が減少する傾向にある行為は多く存在する。そのような行為をする際に、瞬目を減らさないようにするための技術があれば、様々な者に大きな利益を与えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、パソコンやテレビ等を使用しディスプレイ装置を長時間注視するユーザに、瞬目を自発的に行わせるための技術を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上述の課題を解決するために、以下のような疲労予防装置を提案する。
【0007】
本発明の疲労予防装置は、ユーザが注視するディスプレイ装置と組合わせて用いられる疲労予防装置であって、前記ユーザの瞬目を検出する瞬目検出手段と、前記瞬目検出手段によって検出された前記ユーザの瞬目の状態に基づいて前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっているかを判定する瞬目判定手段と、前記瞬目判定手段が、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする妨害処理を実行する視界妨害手段と、前記視界妨害手段により前記ディスプレイ装置が見づらくなっているときに、前記瞬目検出手段が前記ユーザの瞬目を検出した場合に、前記妨害処理を中止する視界回復手段と、を備えるものである。
このような疲労予防装置を使用すると、ユーザの瞬目の回数が少なくなった場合に、ユーザが注視しているディスプレイ装置が見づらくなるため、それを疎ましく感じるユーザに、自発的に瞬目を行うための動機付けを与えられるようになる。つまり、ディスプレイ装置が見づらくなったときには、瞬目をしなければその状態が維持されるということをユーザに認識させておけば、ディスプレイ装置を見づらくすることは、ユーザに瞬目を行わせることの動機付けになる。これにより、ユーザの瞬目の回数をある程度の数以上に保てるようになる。
【0008】
瞬目判定手段は、瞬目検出手段が検出した瞬目の状態によってユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなったという判定を行うようになっていれば、判定の仕方の詳細は不問である。
【0009】
例えば、前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が、所定の時間前記ユーザの瞬目を検出しなかった場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっていてもよい。この所定の時間は、例えば、ユーザの性別、年齢等を考慮して可変に設定できるようにすることも可能である。
【0010】
或いは、前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が、予め定められた基準時間前記ユーザの瞬目を検出しなかった場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっていてもよい。この場合の『基準時間』は、必ずしも一定である必要はない。例えば、初期設定では瞬目が5秒以上生じない場合にユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると瞬目判定手段が判定するようになっていた場合であって、瞬目が5秒生じないことが頻発した場合には、それよりも短い時間、例えば瞬目が3秒生じない場合にユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっているという判定を行うようにして、ユーザに瞬目をより積極的に促せるようにすることも可能である。
【0011】
或いは、前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が検出した前記ユーザの瞬目の回数が、予め決められた単位時間あたりの基準瞬目回数を下回った場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっていてもよい。例えば、1分に20回を基準瞬目回数とし、ユーザの瞬目の回数がこれを下回った場合に、ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようにすることができる。
【0012】
視界妨害手段は、ディスプレイ装置を通常時より見づらくする。ディスプレイ装置を通常時より見づらくする処理は、その目的が達成されるのであれば、どのようなものであってもよい。
【0013】
例えば、前記視界妨害手段は、前記妨害処理を、前記ディスプレイ装置のユーザに対向する面上若しくは当該面とユーザの間に、前記ディスプレイ装置を見づらくする光を照射することによって行うものであってもよい。例えば、強い光をディスプレイ装置の表示画面に照射して、光が照射されている部分が見づらくなるようにすることも可能である。他にも、赤色や緑色のレーザー光線を照射して、ユーザが煩わしく感じるようにしてもよい。また、光やレーザー光線の照射は、ディスプレイ装置の表示画面全体に対して行うようにしてもよいし、表示画面の一部に対して行うようにしてもよい。
【0014】
また、前記視界妨害手段は、前記妨害処理を、前記ディスプレイ装置のユーザに対向する面上若しくは当該面とユーザの間に、前記ユーザの視界を遮断する遮断物を配置することによって行うものであってもよい。妨害処理は、例えば、棒状や板状、網状、幕状の遮断物をディスプレイ装置の表示画面の前に出現させるようにすることが可能である。
【0015】
また、前記瞬目検出手段と、前記瞬目判定手段と、前記視界妨害手段と、前記視界回復手段とが一体とされていてもよい。これらの手段を一体とすることで、疲労予防装置の利用が便利となる。
【0016】
また、前記瞬目検出手段は、ユーザの瞬目により生じる物理的な変化を検知する検知手段を備え、少なくとも前記検知手段は、眼鏡に対する着脱自在な取付けを可能とする取付手段を介して眼鏡に取り付けられるようになっていてもよい。眼鏡を使用する人は多いため、ユーザの瞬目の検知手段を眼鏡に取付けることができると、余計な取付場所を確保する必要がなく便利である。少なくとも検知手段が眼鏡に取付けられるようになっていればよく、瞬目検出手段をはじめ、前記瞬目判定手段や前記視界妨害手段、前記視界回復手段も眼鏡に取付けられるようになっていてもよい。これらを一体型とすると、眼鏡を着けた人にそれのみで瞬目を促すことができる。
【0017】
本発明の疲労予防装置によるのと同様の作用効果を、例えば、以下の如き方法によっても得ることができる。
その方法は、ユーザが注視するディスプレイ装置と組合わせて用いられる疲労予防装置で実行される方法であって、前記ユーザの瞬目を検出する過程と、前記ユーザの瞬目を検出する前記過程によって検出された前記ユーザの瞬目の状態に基づいて前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする妨害処理を実行する過程と、妨害処理を実行する前記過程により前記ディスプレイ装置が見づらくなっているときに、前記ユーザの瞬目を検出した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする前記妨害処理を中止する過程と、を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1〜第4実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明では、共通するものには共通の符号を用いることとし、重複する説明は場合により省略するものとする。
【0019】
≪第1実施形態≫
図1における1が疲労予防装置である。疲労予防装置1は、ディスプレイ装置Aと共に用いられる。ディスプレイ装置Aは、テレビやPCのモニタ等、その用途は特に限られない。ディスプレイ装置Aは、この実施形態では、液晶ディスプレイ装置であるが、これに限られず、CRT、有機EL、プラズマ等、どのようなものでも対象となる。疲労予防装置1は、ユーザの瞬目を検知し、その頻度によって、ユーザが注視しているディスプレイ装置Aの画面に光を照射する。この実施形態では、疲労予防装置1は、ディスプレイ装置Aの上に配置されているが、ユーザの瞬目の検知が可能であり、ディスプレイ装置Aに光を照射することが可能な適当な位置であれば、これに限られない。
【0020】
図2は、疲労予防装置1の構成を示す図である。疲労予防装置1は、デジタルカメラ2、瞬目判定装置3、光照射装置4、及び入力装置5から構成される。
この実施形態では、疲労予防装置1の電源は、疲労予防装置1に内蔵されているが、電源は疲労予防装置1の外部に備えるようにしてもよい。
【0021】
デジタルカメラ2は、ユーザの顔の動画像である顔画像を撮像して顔画像のデータである顔画像データを生成する。デジタルカメラ2は、例えば、CCD、MOS等の撮像素子(図示を省略する。)によりユーザの顔を撮像することにより顔画像データを生成するようになっている。
デジタルカメラ2からの出力は、ケーブル36を介して瞬目判定装置3に入力されるようになっている。この実施形態では、デジタルカメラ2は、疲労予防装置1と一体とされているが、デジタルカメラ2及びケーブル36は、疲労予防装置1の外部に配置されるようになっていても構わない。
【0022】
瞬目判定装置3は、デジタルカメラ2から送られてきた顔画像データに基づいて、一定の期間ユーザの瞬目がなかった場合にディスプレイ装置Aを見づらくする処理を実行することについての判定や、デジタルカメラ2から送られてきた顔画像データに基づいてユーザの瞬目を検出した際にディスプレイ装置Aを見づらくする処理を中止することについての判定をする。瞬目判定装置3は、光照射装置4に対して、判定により光照射装置4がディスプレイ装置Aを見づらくする処理を実行したり、見づらくする処理を中止したりする視界変更に関する光照射信号を送る。
【0023】
瞬目判定装置3は、図3で示したようなハードウェアを備えている。瞬目判定装置3は、この実施形態では、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、インタフェース34、及びこれらを接続するバス35を備えている。
CPU31は、瞬目判定装置3全体の制御を行う。CPU31は、コンピュータプログラムを実行することで、以下に説明するような種々の処理を実行する。
ROM32は、CPU31を動作させるためのコンピュータプログラム、瞬目判定装置3を制御する際に必要なデータなどを記憶している。
RAM33は、CPU31がデータ処理を行うためのワーク領域を提供する。
インタフェース34は、CPU31、ROM32、RAM33と外部とを繋ぐ窓口となるものであり、CPU31、ROM32、RAM33は、インタフェース34を介して外部とデータ交換を行えるようになっている。例えば、インタフェース34は、デジタルカメラ2とケーブル36を介して接続されている。インタフェース34は、デジタルカメラ2から顔画像データを受付ける。インタフェース34は、また、光照射装置4とケーブル37を介して接続されている。インタフェース34は、後述するように、視界の変更に関する光照射データから光照射信号を生成し、光照射装置4に対して出力するようになっている。インタフェース34は、また、入力装置5とケーブル38を介して接続されている。インタフェース34は、入力装置5からユーザの瞬目の基準時間の設定値を示す信号を受付け、その値を瞬目の基準時間として設定する。
【0024】
コンピュータプログラムをCPU31が実行することにより、瞬目判定装置3の内部には図4に示した如き機能ブロックが生成される。
瞬目判定装置3の内部には、入力部301、瞬目検出部302、瞬目判定部303、出力部304が生成される。入力部301、瞬目検出部302、瞬目判定部303、出力部304の機能の一部又は全部は外部にあってもよい。その場合には、外部にその機能を実行するハードウェアが必要となる。
【0025】
入力部301は、外部からの入力を受付けるものである。この実施形態では、入力部301は、デジタルカメラ2から顔画像データを受付ける。入力部301は、デジタルカメラ2から受付けた顔画像データを瞬目検出部302に送るようになっている。また、入力部301は、入力装置5で入力されたユーザの瞬目の基準時間に関する基準時間データを受付け、そのデータの設定値をユーザの瞬目の基準時間として設定する。
【0026】
瞬目検出部302は、入力部301を介してデジタルカメラ2から受付けた顔画像データに基づいて、必ずしもこの限りではないが、この実施形態では略リアルタイムで、ユーザの瞬目を検出するものである。
瞬目検出部302は、顔画像データに対して画像処理を行うことにより、ユーザの瞬目を検出する。画像処理の内容には特に制限がないが、この実施形態では、顔画像データによって特定される顔画像を明度についての所定の閾値に基づいて2値化して顔画像に映っている眼球の中の黒目を検出することにより瞬目の検出を行う。閾値は、眼球の黒目の色、ユーザの肌の色等に基づいて、適当に決定することができ、例えば、入力装置5からの入力により、可変とすることができる。
この場合、瞬目検出部302は、黒目を顔画像の中から検出することができているときにはユーザは瞬目をしていないと、黒目を顔画像の中から検出することができていないときにはユーザは瞬目していると、それぞれ判定することによりユーザの瞬目を検出する。黒目を顔画像の中から検出できているか否かの判定は、例えば、顔画像中の黒目に相当する部分の画素数がある所定の値よりも大きいか小さいかということにより行うことができる。この場合には、所定の値よりも黒目に相当する部分の画素数が大きいときには、黒目を顔画像の中から検出できていると、所定の値よりも黒目に相当する部分の画素数が小さいときには、黒目を顔画像の中から検出できていないと判定することができる。
【0027】
瞬目検出部302は、ユーザの瞬目を検出する度に、瞬目を検出したことを示す瞬目検出データを生成し、それを瞬目判定部303に送るようになっている。
【0028】
瞬目判定部303は、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっているか否かの判定を行うものとされている。瞬目判定部303は、瞬目検出部302から瞬目検出データを受取り、その瞬目検出データに基づいて上述の判定を行うようになっている。必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、瞬目判定部303は、瞬目検出部302から受付けた瞬目検出データが、前回のユーザの瞬目から現時点までに予め定めた固定の時間を経過したことを示した場合(即ち、前回瞬目検出データを受付けてから現時点までに予め定めた固定の時間が経過した場合)に、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定する。この場合の固定の時間は、ユーザの性別、年齢、体調等に基づいて適当に決定することが可能であるが、例えば、1〜10秒の間の適当な時間とすることができる。瞬目判定部303は、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定した場合、光照射データとして光照射実行データを生成するようになっている。
瞬目判定部303は、また、上述の光照射実行データが生成された後初めて瞬目検出部302から瞬目検出データを受付けた場合、光照射データとして光照射中止データを生成するようになっている。
瞬目判定部303は、光照射データとして光照射実行データ又は光照射中止データを生成した場合、それを、出力部304に送るようになっている。
【0029】
出力部304は、光照射装置4に、光照射データを送るものである。光照射データは、瞬目判定部303が生成した光照射実行データ又は光照射中止データに応じて、インタフェース34を介して光照射信号に変換され、光照射装置4に送られる。
【0030】
光照射装置4は、瞬目判定装置3から受付けた光照射信号により、ディスプレイ装置Aを見づらくする処理を実行するものである。ディスプレイ装置Aを、通常時より見づらくする処理は、その目的が達成されるのであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ディスプレイ装置Aの画面上の所定の範囲に対して強い光を照射し、その範囲に表示されている画像が見づらくなるようなものでもよく、この実施形態ではそのようになっている。光照射装置4は、照射する光の制御を行う。また、光照射装置4は、所定の範囲に光を照射するのではなく、赤色や緑色等のレーザー光線をディスプレイ装置Aの画面の1点に照射し、ユーザが疎ましく感じるようになっていてもよい。その場合、光照射装置4は、レーザー光線の制御を行う。特定の範囲への強い光やレーザー光線は、ディスプレイ装置Aの画面上の照射位置が変わるように、移動するようになっていてもよい。
上述のいずれについても、光照射装置4がディスプレイ装置Aを見づらくする処理を行う場合、見づらくする変化の程度は光照射信号によってその大きさを動的に変更することができる。例えば、漸増的に、或いは段階的に大きくなるようにすることができる。
【0031】
入力装置5は、ユーザが疲労予防装置1に対して入力を行うものである。これには限られないが、この実施形態における入力装置5は、電源用スイッチとダイアルである。電源用スイッチにより、疲労予防装置1の起動と停止を実行することができる。また、ダイアルにより、ユーザの瞬目の基準時間を設定することができるようになっている。このユーザの瞬目の基準時間は、インタフェース34を介して、基準時間を示す基準時間信号として瞬目判定装置3に送られる。基準時間信号を受付けたインタフェース34は、基準時間の設定値を示す基準時間データを生成する。この基準時間データは、入力部301に送られ、ユーザの瞬目の基準時間として設定される。
【0032】
次いで、この疲労予防装置1で実行される処理の流れについて図5を参照しつつ説明する。疲労予防装置1が用いられるときは、基本的に、ディスプレイ装置Aの前にユーザが居る状態となっている。
この実施形態では、必ずしもこの限りではないが、電源を入れ疲労予防装置1を起動することにより、本発明のプログラムが実行され以下の処理に続く開始処理が自動的に始まる(S001)。
次に(もっとも、プログラムの開始処理(S001)との先後は問わないが)、入力装置5により瞬目の基準時間等が決定される(S002)。
【0033】
その後、疲労予防装置1は、デジタルカメラ2によりユーザの瞬目の検出を行う(S003)。瞬目の検出は、デジタルカメラ2から入力部301を介して顔画像データを受付けた瞬目検出部302が、上述のように顔画像データに対して画像処理を行うことによって行う。
瞬目検出部302がユーザの瞬目を検出する度に、瞬目検出部302は瞬目検出データを生成し、それを瞬目判定部303に送る。
【0034】
瞬目判定部303は、前回瞬目検出データを受取ってから予め定められた固定の時間が経過したか否かをモニタし、ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっているか否か継続的に判定する(S004)。
固定の時間が経過していない場合(S004:No)には、瞬目判定部303は、前回瞬目検出データを受取ってから予め定められた固定の時間が経過したか否かを検出するS004の処理を継続する。
固定の時間が経過した場合(S004:Yes)には、瞬目判定部303は、上述した光照射実行データを生成する(S005)。瞬目判定部303は、光照射実行データを出力部304に送る。光照射実行データを受取った出力部304は、光照射信号として光照射実行信号を生成し、光照射装置4に送る。
【0035】
光照射信号として光照射実行信号を受け取った光照射装置4は、ディスプレイ装置Aを見づらくする処理を実行する(S006)。この実施形態では、ディスプレイ装置Aの画面上の所定の範囲に対して強い光を照射し、その範囲に表示されている画像が見づらくなるようにする。
この状態でも、瞬目検出部302はユーザの瞬目を検出し続けている。また、瞬目判定部303は、新たなユーザの瞬目があったか否かを、瞬目検出部302からの瞬目検出データの受付けがあったか否かによりモニタしている(S007)。
ユーザは、視界が見づらくなっているので、視界を通常の状態に回復するために積極的に瞬目を行うようになる。視界が見づらくなっている状態から回復するためには瞬目が必要であるということをユーザに認識させておけば、ユーザに瞬目を行うことの動機付けを与えるのは容易である。
ユーザの新たな瞬目がない場合(S007:No)、光照射装置4は何もせず、ディスプレイ装置Aが見づらい状態を維持する。この場合、ディスプレイ装置Aは相変わらず見づらいままであるから、ユーザの瞬目を誘発し易い状態は継続される。しかも、この実施形態では、見づらさの程度が時間経過とともに大きくなっていくので、ユーザに与えられる瞬目を行うことに対する動機付けは益々大きくなっていく。
ユーザの新たな瞬目があった場合(S007:Yes)、つまり、瞬目判定部303が瞬目検出部302から瞬目検出データを受付けた場合、瞬目判定部303は光照射データとして光照射中止データを生成する(S008)。瞬目判定部303は、光照射中止データを生成すると、これを出力部304に送る。光照射中止データを受取った出力部304は、光照射信号として光照射中止信号を光照射装置4に送る。
【0036】
光照射中止信号を受付けた光照射装置4は、見づらくなっているディスプレイ装置Aに対する光の照射を中止する(S009)。
光照射中止データが生成された後、或いは光照射中止データが生成されるのと同時に、S004の処理でモニタされていた瞬目検出データの生成から経過した時間はリセットされ、光照射中止データが生成された時間が、固定時間が経過したか否かモニタするための新たな始点として設定される(S010)。
本発明のプログラムを終了させる操作、例えば、疲労予防装置1の電源を落とす操作が入力装置5により行われたか否かの判定は常に行われているが(S011)、このような操作が特に行われていない場合(S011:No)には、上述のS010が行われた後、S003以下の処理が再度繰り返される。
本発明のプログラムを終了させる操作が行われた場合(S011:Yes)には、すべての処理が終了する。
【0037】
<変形例1>
変形例1における疲労予防装置1は、基本的に第1実施形態のものと同一である。
変形例1における疲労予防装置1が第1実施形態の疲労予防装置1と唯一異なるのは、瞬目判定装置3が、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっているか否かの判定を行う場合における、その判定方法である。
変形例1における疲労予防装置1における瞬目判定部303は、第1実施形態の疲労予防装置1における瞬目判定部303の場合と同様、瞬目検出部302から瞬目検出データを受取り、その瞬目検出データに基づいて上述の判定を行うようになっている。
しかしながら、変形例1における瞬目判定部303は、第1実施形態の場合と異なり、前回瞬目検出データを生成してから現時点までに予め定めた固定の時間が経過した場合に、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定するのではなく、以下のような基準でかかる判定を行う。即ち、変形例1では、瞬目検出データを生成してから5秒以内に次の瞬目検出データを生成しなかった場合にユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定するということを基本とするとともに、例えば、過去3分間に光照射実行データが3回以上発生されている場合には、瞬目検出データを受付けてから4秒以内に次の瞬目検出データを生成しなかった場合にユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定し、例えば、過去3分間に光照射実行データが6回以上発生されている場合には、瞬目検出データを生成してから3秒以内に次の瞬目検出データを生成しなかった場合にユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定する場合における瞬目検出データを生成してから次の瞬目検出データを生成するまでの基準となる時間を変化させる。ちなみに、上述のような基準となる時間の変化は、直近の単位時間当たりのユーザの瞬目の回数が少ない程、瞬目の間隔が短くとも光照射実行データが生成されることになるため、直近の単位時間当たりのユーザの瞬目の回数が少なくなればなるほど、ディスプレイ装置Aを見づらくする時間が増える。これは、直近の単位時間当たりのユーザの瞬目の回数が少ない場合、それに応じてユーザにより強く瞬目を行うための動機付けを与えられることを意味する。
【0038】
<変形例2>
変形例2における疲労予防装置1も、変形例1の場合と同様、瞬目判定部303が、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっているか否かの判定を行う場合におけるその判定方法のみが、第1実施形態の場合と異なる。
変形例2における疲労予防装置1における瞬目判定部303は、第1実施形態の疲労予防装置1における瞬目判定部303の場合と同様、瞬目検出部302から瞬目検出データを受取り、その瞬目検出データに基づいて上述の判定を行う。
ここで、変形例2における瞬目判定部303は、ユーザの瞬目から瞬目までの時間間隔ではなく、直近の過去の単位時間あたりの瞬目の回数に基づいて、上述の判定を行う。変形例2における瞬目判定部303は、どのタイミングで瞬目検出部302から瞬目検出データを受付けたかということについての直近の過去の単位時間分のデータを記録している。そして、瞬目判定部303は、常に、直近の過去の単位時間あたりの瞬目の回数が予め定めた基準となる瞬目の回数を下回ったかをモニタする。瞬目判定部303は、直近の過去の単位時間あたりの瞬目の回数が予め定めた基準となる瞬目の回数を下回った場合、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっていると判定する。例えば、瞬目判定部303は、直近の過去の1分当たりの瞬目の回数が20回を下回った場合、ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっている。
なお、瞬目判定部303は、必ずしも常に、直近の過去の単位時間当たりの瞬目の回数が予め定めた基準となる瞬目の回数を下回ったかをモニタする必要はない。瞬目判定部303は、単位時間毎に、その単位時間あたりの瞬目の回数が予め定めた基準となる瞬目の回数を下回ったかを判定するようにすることができる。例えば、瞬目判定部303は、1分毎に、その直前の1分間に生じたユーザの瞬目の回数が20回を下回ったか判定するようにすることができ、そう判定された場合に、ユーザの瞬目の回数が予め定めた基準となる瞬目の回数を下回ったと判定するようなものにすることができる。
【0039】
≪第2実施形態≫
第2実施形態の疲労予防装置の構成は、第1実施形態の構成とほぼ同じである。第2実施形態における疲労予防装置1も、デジタルカメラ2や瞬目判定装置3については、第1実施形態のいずれの場合のものとも同じものとすることができ、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなっている場合に、ディスプレイ装置Aの画面に対して光を照射して画面を見づらくするのではなく、ディスプレイ装置Aの画面上又はディスプレイ装置Aとユーザの間に、ユーザの視界を遮断する遮断物を使用するという点のみが、第1実施形態の場合と異なる。
第2実施形態では、図6に示すように、第1実施形態における光照射装置4の代わりに、視界遮断装置6が備えられている。視界遮断装置6は、これに限られないが、棒状の遮断物61を備えている。ユーザの瞬目回数が所定の基準を下回っていない場合には、遮断物61は、視界遮断装置6の内部に格納された状態にある。ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなった場合には、視界遮断装置6に格納されていた遮断物61は、ディスプレイ装置Aの画面上若しくは画面とユーザの間に配置され、ユーザはディスプレイ装置Aが見づらくなる。遮断物61は所定の範囲を移動するようにしてもよく、その場合にはユーザにとってディスプレイ装置Aがより見づらくなるため、ユーザに瞬目を促すより強い動機付けを与えられる。
瞬目判定部303は、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少ないと判定した場合には、第1実施形態における光照射実行データの代わりに、光照射実行データと同様の視界遮断実行データを生成し、これを出力部304に送る。視界遮断実行データを受付けた出力部304は、視界遮断実行信号を視界遮断装置6に送る。視界遮断実行信号を受付けた視界遮断装置6は、遮断物61をディスプレイ装置Aの画面上若しくは画面とユーザの間に配置し、移動させる。
ユーザの新たな瞬目があった場合、瞬目判定部303は、第1実施形態における光照射中止データの代わりに、光照射中止データと同様の視界遮断中止データを生成し、これを出力部304に送る。視界遮断中止データを受付けた出力部304は、視界遮断中止信号を視界遮断装置6に送る。視界遮断中止信号を受付けた視界遮断装置6は、遮断物61を視界遮断装置6の内部に格納する。
【0040】
≪第3実施形態≫
以下、第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、本願発明をヘッドマウントディスプレイに応用したものである。
この実施形態のヘッドマウントディスプレイは、図7に示したような眼鏡フレームの形状をした眼鏡600に取付けて用いる取付けタイプのものである。この実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ装置500が眼鏡600の後方に取付けられる。なお、この実施形態における前後方向は、眼鏡600及びヘッドマウントディスプレイ装置500がユーザの顔に装着された場合におけるユーザの顔の前後方向に一致するものとする。使用時には、ヘッドマウントディスプレイ装置500は、ユーザの顔と眼鏡600との間の空間に位置する。そのために、ユーザ以外からはヘッドマウントディスプレイ装置500の存在がわかりづらくなっている。
【0041】
眼鏡600は、眼鏡フレーム601に眼鏡レンズ602がはめ込まれた、通常の眼鏡と同様の構成とされている。眼鏡600は市販のものでもよい。眼鏡レンズ602は、度が入っていても入っていなくてもよく、また、無色透明でも有色透明でもよい。眼鏡フレーム601は、左右のつる603と、左右のリム604と、左右のリム604をつなぐブリッジ605と、を備えている。左右のつる603はそれぞれ左右のリム604にヒンジ接続されており、つる603をリム604に対して平行になるような向きで折畳めるようになっている。つる603の先端をユーザの両耳にそれぞれ係止するか、或いは2本のつる603によりユーザの頭部を挟み込むことで、ユーザの頭部に眼鏡600が固定される。
【0042】
この実施形態では、眼鏡600にヘッドマウントディスプレイ装置500を取付けたとき、取付けられたヘッドマウントディスプレイ装置500が眼鏡600の後方に位置することになり、そのときユーザの顔から眼鏡600が前方に移動せざるを得なくなるため、その状態でもつる603をユーザの耳にかけられるように、つる603の長さが通常の眼鏡フレームよりも幾らか長めになっている。
なお、図7に示した例では、つる603の先端がユーザの耳に係止し易いように下方向に曲折されているが、つる603の先端は直線状であってもよい。つまり、つる603はストレートテンプルであってもよい。つる603をストレートテンプルとした方が、ヘッドマウントディスプレイ装置500を眼鏡600に取付けているか否かによらず、ユーザのつる603に対する感覚を一定に維持できる。ストレートテンプルとした変形例によるつる603の例を、図7中に、603Sとして示す。
【0043】
ヘッドマウントディスプレイ装置500は、ディスプレイを内部に有するケース510と、ケース510に可動部516を介して接続される左右の自由曲面プリズム520と、ケース510に接続されるノーズパッド530と、を備えている。
ケース510は、必ずしもその限りではないがこの実施形態では眼鏡600のブリッジ605に取付けられるようになっている。ケース510は、それが眼鏡600に取付けられたときに、眼鏡600の後方に位置するようになっている。自由曲面プリズム520は、ユーザが眼鏡600を装着したときにユーザから見てケース510の横方向に並ぶように、ケース510に接続される。ノーズパッド530は、ケース510のさらに後方に位置するように取付けられる。ノーズパッド530は、ヘッドマウントディスプレイ装置500が取付けられた眼鏡600をユーザが頭部に装着したときに、ユーザの鼻に当接して眼鏡600のずれを防止する。ディスプレイ(後述する。)に表示される画像は、自由曲面プリズム520により所定の倍率で拡大されて、自由曲面プリズム520から後方に出力される。後方に出力された画像は、眼鏡600を装着したユーザの眼に入ることになる。画像は、この実施形態では、自由曲面プリズム520の点線で囲まれた領域(図16参照のこと。)から出力される。
【0044】
2つの自由曲面プリズム520の一方の上面には検出センサ320が設けられている。検出センサ320は、ユーザの瞬目を検出するものであればどのようなものでもよい。
検出センサ320は、例えば、図8に示した如き2つの電極311を備えるものとすることができる。この場合2つの電極311には、適当な電位差が与えられる。2つの電極311は、ユーザが瞬目した場合にユーザの瞼が、2つの電極311の間に形成された電気力線Dを横切るような位置に設けられている。ユーザが瞬目をした場合、2つの電極311間の電気力線D上に瞼が存在することにより、2つの電極311間の静電容量が大きくなる。後述する制御基板515で形成される瞬目検出部302は、2つの電極311間の静電容量をモニタしており、2つの電極311間の静電容量が、ある閾値を超えた場合にユーザが瞬目をしたと判定し瞬目検出データを生成するようになっている。
検出センサ320は、或いは、赤外線センサと赤外線光源の組合わせとすることができる。この場合、赤外線光源は、ユーザの眼の周に赤外線を照射する。赤外線センサはユーザの眼の周辺で反射された赤外線の量或いは強さを測定する。赤外線は不可視であるから、ユーザがそれを感じることはない。赤外線は虹彩(黒目)の黒色によく吸収される。したがって、ユーザが瞬目していない場合には、赤外線センサが捉える赤外線量は小さくなる。他方、ユーザが瞬目を行った場合、ユーザの眼を覆った瞼によって反射される赤外線光源からの赤外線の量は多くなるので、赤外線センサが捉える赤外線の量は増える。この場合の瞬目検出部302は、赤外線センサが捉える赤外線の量をモニタしており、赤外線センサが捉えた赤外線の量が、ある閾値を超えた場合にユーザが瞬目したと判定し瞬目検出データを生成するようになっている。
検出センサ320は後述するインタフェースに接続されている。検出センサ320は、瞬目によって生じる物理量の変化を検出した場合にデータを生成し、インタフェースに送るようになっている。
【0045】
ヘッドマウントディスプレイ装置500は、図9に示すようにして、眼鏡600に取付けられる。
それを可能とするため、この実施形態の眼鏡600のブリッジ605には、第1取付部材640が形成されている。この実施形態の第1取付部材640は、その基端がブリッジ605に接続される第1軸部640a、及び第1軸部640aの先端に設けられる第1ボール部640bにより構成される。第1取付部材640は、眼鏡600と一体に形成されていてもよい。眼鏡600に汎用の眼鏡フレームを使用する場合には、第1取付部材640は当然に眼鏡600とは別部材となり、眼鏡600に後から取付けられることになる。この場合、第1取付部材640は、例えば接着剤で眼鏡600に取付けられる。
【0046】
ヘッドマウントディスプレイ装置500のケース510には、より詳細には、眼鏡600に取付けられたときに眼鏡600に対向する側の面には、第1嵌合孔510aが形成されている。ヘッドマウントディスプレイ装置500を眼鏡600へ取付けるときには、第1嵌合孔510aに第1取付部材640の第1ボール部640bが嵌合される。これらはいわゆるボールジョイントを構成する。
【0047】
またケース510の第1嵌合孔510aが設けられる面とは反対側の面には、第1取付部材640と同じ構成、大きさの第2取付部材550が形成されている。この実施形態の第2取付部材550は、ケース510にその基端が接続される第2軸部550a、及び第2軸部550aの先端に設けられる第2ボール部550bにより構成される。第2取付部材550は、ケース510と一体に形成されていてもよいが、接着剤等でケース510に取付けるようにしてもよい。
【0048】
ノーズパッド530のケース510に接続される側には、第2嵌合孔530aが形成されている。第2嵌合孔530aは、第1嵌合孔510aと同じ大きさである。ノーズパッド530のケース510への取付け時には、第2嵌合孔530aに第2取付部材550の第2ボール部550bが嵌合される。これらはいわゆるボールジョイントを構成する。
【0049】
第1取付部材640と第2取付部材550、第1嵌合孔510aと第2嵌合孔530aは、それぞれ同じ形状、大きさで形成される。そのために、第1取付部材640の第1ボール部640bを第2嵌合孔530aに嵌合することも可能である。これにより、ケース510、可動部516、及び自由曲面プリズム520を取り除いて、ノーズパッド530のみを眼鏡600に直接取付けることが可能である。眼鏡600とノーズパッド530を組合わせたものは、通常の眼鏡と同様に用いることができる。
【0050】
次いで、ヘッドマウントディスプレイ装置500について、詳細に説明する。
【0051】
図10は、ヘッドマウントディスプレイ装置500を図9中の上側から見た図である。
ケース510は、略矩形の中空である。ケース510は、必ずしもそうである必要はないが、本実施形態では樹脂製である。ケース510の上面には、視度を調整するための視度調整つまみ512と、自由曲面プリズム520の位置を調整するためのプリズム位置調整つまみ513とが設けられている。
【0052】
視度調整つまみ512は、これを操作することで、ケース510内部のディスプレイを画像の光軸方向に進退動させるものである。本実施形態では、左右の眼のそれぞれの視度を個別に調整できるように、視度調整つまみ512は2つ設けられている。
プリズム位置調整つまみ513は、これを操作することで、ケース510に対する自由曲面プリズム520の位置を所定の範囲で移動させるものである。プリズム位置調整つまみ513の近傍には目盛りが設けてあり、プリズム位置調整つまみ513の操作量に対する自由曲面プリズム520の移動量が直感的にわかるようになっている。
【0053】
図11は、ケース510の内部を示す、ケース510を上面からみた一部断面図である。
ケース510の内部には、視度調整つまみ512と、視度調整板511と、ディスプレイ514と、制御基板515と、LEDライト521と、視度調整つまみ512、視度調整板511、ディスプレイ514、制御基板515及びLEDライト521を内包し自由曲面プリズム520に連結される可動部516と、ピニオン部517とが設けられている。
本実施形態においては、可動部516及び自由曲面プリズム520は2つずつ設けられているものとして説明するが、必ずしもそうである必要はなく、これらは1つずつであってもよい。つまりヘッドマウントディスプレイ装置500は、必ずしも両眼用である必要はなく、右眼用或いは左眼用の可動部516及び自由曲面プリズム520のみを備える、右眼用或いは左眼用のものであってもよい。
【0054】
ディスプレイ514は、画像を表示するものであり、必ずしもその限りではないが、この実施形態では、矩形の液晶ディスプレイとされている。ディスプレイ514は、ユーザが眼鏡600を装着した場合に、その短辺方向がユーザから見て縦方向になり、眼鏡レンズ602の幅方向に対して斜めとなるようにして、且つ自由曲面プリズム520の一面に所定の角度で画像を入射するようにして、可動部516に取付けられている。
制御基板515は、ディスプレイ514に表示される画像の制御、及びLEDライト521の制御を行うものである。
制御基板515は、画像を表示するためのデータをディスプレイ514に送り、ディスプレイ514に適切な画像を表示させる。制御基板515は、図示しない外部装置から画像についてのデータを受けてそれをディスプレイ514に表示させる。制御基板515は、図示しない外部装置から有線または無線により画像についてのデータを受け取るようになっている。制御基板515が有するインタフェースは、画像についてのデータを受付けられるように、外部装置から有線で画像についてのデータが受付けられる場合にはそれに用いられるケーブルと、外部装置から無線で画像についてのデータが受付けられる場合には制御基板515内外に設けられたアンテナと、接続されている。
外部装置には、例えば、ハードディスクプレイヤ、DVDプレイヤ、テレビジョン放送用のチューナ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、コンピュータゲームを実行するためのゲーム装置、画像処理機能を有したMP3プレイヤなどを用いることができる。
【0055】
また、制御基板515は、第1実施形態における瞬目判定装置3に相当するものでもあり、図示を省略するが、第1実施形態で説明したのと同様のCPU、ROM、RAM、インタフェース及びこれらを接続するバスを備えている。これらは、ROMに記録されていたプログラムにより、第1実施形態の場合と同様の機能ブロックを形成する。
第3実施形態の場合と第1実施形態の場合で異なるのは、第3実施形態における瞬目検出部302は、検出センサ320から入力部301を介して受付けたデータに基づいて瞬目検出データを生成する点である。
【0056】
可動部516には、ディスプレイ514と自由曲面プリズム520が、ディスプレイ514に表示される画像からの像光が自由曲面プリズム520の一面に一定の角度で画像を入射するような状態で取付けられている。
可動部516には、ピニオン部517と接触するようにラック部516aが形成されている。各ラック部516aは、ピニオン部517に対向している面に歯が形成されている。
ピニオン部517は、プリズム位置調整つまみ513と連結されており、プリズム位置調整つまみ513を回転させるとピニオン部517がそれに伴って回転するようになっている。ピニオン部517は、円柱形であり、側面に円柱の軸方向に平行な歯が形成されている。ピニオン部517の歯とラック部516aの歯は噛み合うようになっている。ピニオン部517が回転すると、その回転の量と向きに対応して、ラック部516aがラック部516aの長さ方向に沿って移動するようになっている。
【0057】
図12に示すように、プリズム位置調整つまみ513を左向きに回転させると、ラック部516aの基端がピニオン部517から離れる方向に移動して、2つの可動部516が離れる方向にスライドする。逆に、プリズム位置調整つまみ513を右向きに回転させると、ラック部516aの基端がピニオン部517に近づく方向に移動して、2つの可動部516が近づく方向にスライドする。可動部516と自由曲面プリズム520は連結されているので、このような可動部516のスライドに伴って、自由曲面プリズム520も同様にスライドする。このように、プリズム位置調整つまみ513を回転させることで、ケース510を眼鏡600に取付けた後においても、可動部516に取付けられた自由曲面プリズム520をブリッジ605と眼鏡600の智との間でスライドさせることができるようになっている。自由曲面プリズム520がスライドすることで、自由曲面プリズム520から出力される画像の位置も左右方向で平行移動する。これにより、ユーザの眼の位置に、画像が出力される位置を合わせることができる。この実施形態では、上述の機構により、一つのプリズム位置調整つまみ513の動作により、2つの自由曲面プリズム520の移動を、左右対称で、同時に行えるようになっている。目幅に合わせて導光手段を左右対称で同時に移動させられるのは、上述の機構によらないでも実現できるが、いずれにせよ便利である。
なお、ピニオン部517は、プリズム位置調整つまみ513と一体的に構成されていてもよい。
【0058】
可動部516に内包される視度調整つまみ512及び視度調整板511は、ディスプレイ514から自由曲面プリズム520までの距離を変動させてユーザの視力に合わせた画像を提供するための調整機構を構成する。図13は、可動部516を拡大して調整機構を詳細に説明するための図である。図14は、調整機構の動作を説明するための図である。
【0059】
視度調整つまみ512は、ケース510の外部に突出する頭部に溝が形成されており、中程がクランク状に折れ曲がったクランク部512aを有する構成になっている。頭部の溝に平板を差し込んで回転させると、クランク部512aが回転中心の周りを回転する。
視度調整板511は、一辺が制御基板515に接続されており、該一辺に対向する辺の近傍に、該一辺の延びる方向に長辺が設けられた、面取りされた矩形状の調整穴511aが設けられる。調整穴511aには、視度調整つまみ512のクランク部512aが貫通して設けられる。調整穴511aの短辺は、このクランク部512aの大きさに応じた長さで形成される。
【0060】
図14の状態で視度調整つまみ512を回転させると、クランク部512aが回転中心の周りを回転する。調整穴511aは、クランク部512aが貫通しているので、クランク部512aが回転すると、調整穴511aはその動きに応じて制御基板515の方向へ付勢される。それにより、視度調整板511は制御基板515を付勢する方向に移動する。制御基板515が移動すると、ディスプレイ514が自由曲面プリズム520に近づく方向に移動する。ディスプレイ514と自由曲面プリズム520との間の距離を変化させることで、ユーザの視力に合わせて画像の視度を調整することができる。
視度調整つまみ512は回転するので、視度調整板511の動きはピストン状になる。そのために、ディスプレイ514が動きすぎて自由曲面プリズム520に衝突し、お互いが破損することはない。ユーザは、使用時に視度調整つまみ512を回転させてディスプレイ514の位置を自身の眼の視度に最適な位置に調整することができる。
【0061】
図15は、自由曲面プリズム520による導光路を説明する図である。自由曲面プリズム520は、ディスプレイ514からの光をユーザの少なくとも一方の眼に導くと共に、ディスプレイ514に表示された画像を拡大するものである。
自由曲面プリズム520は、それぞれ自由曲面である第1面S1、第2面S2、第3面S3という3つの面を備えた断面略三角形状に構成される。
第1面S1は、ディスプレイ514に臨まされており、ディスプレイ514に表示された画像についてのディスプレイ514からの光を通過させて自由曲面プリズム520の内部に導く。ディスプレイ514からの光は、第1面S1を通過するときに屈折しディスプレイ514に表示された画像が拡大されるように変化する。
第2面S2は、第1面S1を通過した光を反射(通常は全反射である。)するようにされている。第1面S1を通過した光は、第2面S2で反射されることによりその方向を大きく変え、また、ディスプレイ514に表示された画像が拡大されるように変化する。第2面S2は、また、第3面S3で反射された光を通過させる。これについては、後述する。
第3面S3は、第2面S2で反射された光を反射させるようになっている。第2面S2で反射された光は、第3面S3で反射されることによりその方向を大きく変え、また、ディスプレイ514に表示された画像が拡大されるように変化する。なお、第3面S3で行われる反射は、全反射であっても、金属による反射であっても構わない。第3面S3で行われる反射が全反射である場合には、第2面S2で反射された光が第3面S3に至る場合の入射角が全反射角以下となるように第3面S3の曲面が設計される。第3面S3で行われる反射が金属による反射である場合には、第3面S3の外側に、金属が、例えば蒸着によって付着されている。なお第3面S3の外側に、金属を付着させる代わりに、誘電体多層膜を形成することができる。この場合の反射は、誘電体多層膜によりなされる。
上述したように第3面S3で反射された光は、第2面S2に再び向い、第2面S2を通過する。第2面S2を通過する光は、第2面S2を通過するときに屈折しディスプレイ514に表示された画像が拡大されるように変化する。ディスプレイ514に表示された画像は、図16に示すように、自由曲面プリズム520の点線部分に表示されることとなる。
以上のような自由曲面プリズム520は、ケース510を眼鏡600に取付けた際、少なくともその一部がヘッドマウントディスプレイ装置500の使用時にユーザの少なくとも一方の眼の前に位置するものとされ、ディスプレイ514からの光をユーザの眼に射出するように、ケース510に接続されている。
自由曲面プリズム520は、眼鏡600を装着したユーザから見てケース510に縦方向に接続されるのではなく、横方向に接続されて配置される。すなわち、ヘッドマウントディスプレイ装置500全体の形状は、横方向に伸びた形状となっている。
【0062】
図17a、図17bは、それぞれヘッドマウントディスプレイ装置500を取付けた眼鏡600を前方から見た状態を示す図である。図17bの眼鏡600は、これまでに説明したものとは異なり、左右の眼鏡レンズ602が一連となったタイプのものである。
これらの図に示すように、ヘッドマウントディスプレイ装置500を取付けた状態の眼鏡600を前方から見た場合、ヘッドマウントディスプレイ装置500は、眼鏡レンズ602の後方にほぼ隠れるようになる。
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ装置500は、ケース本体510と自由曲面プリズム520が横方向に並ぶように接続されるために、ケース510を眼鏡600の後方に取付けると、ヘッドマウントディスプレイ装置500の大部分が眼鏡600の前方から見えないようにすることができる。すなわち、ヘッドマウントディスプレイ装置500の眼鏡600からのはみ出し量を極力少なくすることができ、デザイン性を損なうことがない。
また、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ装置500は、ユーザの上下方向の視野を遮るものではないので、自由曲面プリズム520に表示された画像を見ている状態であっても、自由曲面プリズム520の周囲は、多少ぼやけることはあるが見える状態にある。よって、視線を自由曲面プリズム520に向けている状態でも簡単な作業を行うことができ、便利である。また、視線を自由曲面プリズム520に向けている状態でも足元を見ることができ、歩くことも可能である。さらに、視線を自由曲面プリズム520から外せば、周囲をより良く見ることができるようになる。
【0063】
LEDライト521は、可動部516上に設けられ、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなった場合に、自由曲面プリズム520方向に光を照射し、映像を見づらくするものである。この実施形態では、LEDライト521は、ディスプレイ514と自由曲面プリズム520の間に配置されているが、LEDライト521はディスプレイ514からの光がユーザの眼に届くまでの経路上に配置されていればよい。例えば、自由曲面プリズム520とユーザの眼の間に配置されていてもよい。
瞬目判定部303は、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少ないと判定した場合には、光照射実行データを生成し、これを出力部304に送る。光照射実行データを受付けた出力部304は、光照射実行信号をLEDライト521に送る。光照射実行信号を受付けたLEDライト521は点灯し、自由曲面プリズム520方向に光を照射する。この光は、ディスプレイ514に表示された画像の光と重なり、ユーザが画像を見るのに適した光量を超えるため、ユーザは画像が見づらくなる。
ユーザの新たな瞬目があった場合、瞬目判定部303は、光照射中止データを生成し、これを出力部304に送る。光照射中止データを受付けた出力部304は、光照射中止信号をLEDライト521に送る。光照射中止信号を受付けたLEDライト521は消灯し、適当な光量で画像を見ることができる。
【0064】
次に、このヘッドマウントディスプレイ装置500の使用方法について説明する。
このヘッドマウントディスプレイ装置500を使用するには、ヘッドマウントディスプレイ装置500を取付けた状態の眼鏡600をユーザの頭部へ固定する。ヘッドマウントディスプレイ装置500の眼鏡600への取付けは、ヘッドマウントディスプレイ装置500のケース510に設けられた第1嵌合孔510aに、眼鏡600に取付けられた第1取付部材640が有する第1ボール部640bを嵌合させることにより行う。また、ヘッドマウントディスプレイ装置500を取付けた状態の眼鏡600のユーザの頭部への固定は、上述したように、眼鏡600のつる603を、ユーザの耳へ係止するか、眼鏡600のつる603でユーザの頭部を挟み込むことで行う。
なお、眼鏡600をユーザの頭部へ固定する前に、ヘッドマウントディスプレイ装置500にノーズパッド530を取付けておく。ノーズパッド530のヘッドマウントディスプレイ装置500への取付けは、ノーズパッド530に設けられた第2嵌合孔530aに、ヘッドマウントディスプレイ装置500のケース510が有する第2ボール部550bを嵌合させることで行う。
【0065】
この状態でユーザは、上記の外部装置を操作して、ヘッドマウントディスプレイ装置500で表示すべき画像についてのデータを、ヘッドマウントディスプレイ装置500に入力する。制御基板515は、画像についてのデータによりディスプレイ514に画像を表示する。
ディスプレイ514に表示された画像の光は、ディスプレイ514から出て、自由曲面プリズム520の第1面S1に入力される。自由曲面プリズム520内では、光が図15に示すようにして第2面S2から射出される。射出された光により、ユーザは、両眼で、適当な大きさになった画像を見ることになる。
必要であれば、ユーザは、視度調整つまみ512を操作することで、ディスプレイ514からの光の自由曲面プリズム520に対する入射角を変化させないようにしながら、自由曲面プリズム520に対してディスプレイ514を近づけたり遠ざけたりすることができる。すなわち、ディスプレイ514を、ディスプレイ514からの光の出射方向(光軸方向)で進退動させることができる。これにより、ユーザの視力に合った画像を表示することができるように調整することができる。
また、ユーザは、プリズム位置調整つまみ513を操作することで、自由曲面プリズム520の位置をユーザの目幅に応じた適当な位置に動かして、自由曲面プリズム520の位置をユーザが画像を見やすい位置に調整することができる。
また、ユーザは、図示しないイヤホンを耳に着用することにより、画像に合わせた音を聴くことができる。
【0066】
ヘッドマウントディスプレイ装置500が使用されている間、瞬目検出部302は、検出センサ320からのデータに基づいて、ユーザが瞬目を行う度に瞬目検出データを生成する。瞬目判定部303は、瞬目検出部302が生成した瞬目検出データを瞬目検出部302から受取り、ユーザの瞬目の状態をモニタする。そして、瞬目判定部303は、第1実施形態の場合と同様の基準で光照射実行データ及び光照射中止データを生成しそれを出力部304に送る。光照射実行データ及び光照射中止データを受取った出力部304は、それぞれに対応した光照射実行信号及び光照射中止信号を、LEDライト521に送る。光照射実行信号を受取ったLEDライト521は点灯し、自由曲面プリズム520方向に光を照射する。この光は、ディスプレイ514に表示された画像の光と重なり、ユーザは画像が見づらくなる。一方、光照射中止信号を受取ったLEDライト521は消灯し、ユーザは適当な光量で画像を見ることができる。
【0067】
ユーザは、ヘッドマウントディスプレイ装置500を使用しなくなった場合には、眼鏡600からヘッドマウントディスプレイ装置500を取外す。また、眼鏡600から取り外したヘッドマウントディスプレイ装置500から取外したノーズパッド530を、眼鏡600に取付ける。これにより、ユーザは、眼鏡600を通常の眼鏡として用いることができる。
なお、ノーズパッド530の眼鏡600への取付けは、眼鏡600に取付けられた第1取付部材640が有する第1ボール部640bを、ノーズパッド530に設けられた第2嵌合孔530aに嵌合させることで行う。
【0068】
以上で説明したヘッドマウントディスプレイ装置500は、眼鏡600に対して着脱自在とされていた。ヘッドマウントディスプレイ装置500は、眼鏡600の如きヘッドマウント装置に取外しできないように固定されていてもよい。
【0069】
<変形例3>
変形例3における疲労予防装置は、基本的に第3実施形態のものと同一である。
変形例3における疲労予防装置が第3実施形態の疲労予防装置と唯一異なるのは、図18に示すように、ケース510の内部に、LEDライト521の代わりに可動部516上に備えられた視界遮断装置522と、通常時は視界遮断装置522の内部に格納されている遮断物523とが設けられていることである。図18において、左部にある視界遮断装置522では遮断部523が格納された状態を、右部にある視界遮断装置522では遮断部523が設置された状態を示している。もっとも、基本的に、左部及び右部の視界遮断装置522及び遮断物523は同じ挙動を示すようになっている。この実施形態では、視界遮断装置522は、ディスプレイ514と自由曲面プリズム520の間に配置されているが、視界遮断装置522はディスプレイ514からの光がユーザの眼に届くまでの経路上に配置されていればよい。例えば、自由曲面プリズム520とユーザの眼の間に配置されていてもよい。
【0070】
視界遮断装置522は、可動部516上に設けられ、ディスプレイ514と自由曲面プリズム520の間に遮断物523を挿入し、映像を見づらくするものである。遮断物523は、これに限られないが、板状若しくは棒状である。ユーザの瞬目回数が所定の基準を下回っていない場合には、遮断物523は視界遮断装置522の内部に格納された状態にある。ユーザの瞬目回数が所定の基準より少なくなった場合には、視界遮断装置522に格納されていた遮断物523は、ディスプレイ514と自由曲面プリズム520の間に挿入され、ユーザは映像が見づらくなる。
瞬目判定部303は、ユーザの瞬目回数が所定の基準より少ないと判定した場合には、第3実施形態における光照射実行データの代わりに、光照射実行データと同様の視界遮断実行データを生成し、これを出力部304に送る。視界遮断実行データを受付けた出力部304は、視界遮断実行信号を視界遮断装置522に送る。視界遮断実行信号を受付けた視界遮断装置522は、遮断物523をディスプレイ514と自由曲面プリズム520の間に配置する。ユーザは、遮断物523によって、ディスプレイ514に表示された画像の一部若しくは全部を、自由曲面プリズム520を介して見ることができなくなる。
ユーザの新たな瞬目があった場合、瞬目判定部303は、第3実施形態における光照射中止データの代わりに、光照射中止データと同様の視界遮断中止データを生成し、これを出力部304に送る。視界遮断中止データを受付けた出力部304は、視界遮断中止信号を視界遮断装置522に送る。視界遮断中止信号を受付けた視界遮断装置522は、遮断物523を視界遮断装置522の内部に格納し、ユーザは再び映像を見ることができるようになる。
【0071】
≪第4実施形態≫
以下、第4実施形態について説明する。
第4実施形態は、本発明の疲労予防装置の一部を眼鏡に取付けたものである。第4実施形態の疲労予防装置1は、図19に示すように、例えば眼鏡Bを着けているユーザがディスプレイ装置Aを見ている際に使用されるようなものであり、第1実施形態の疲労予防装置1の一部に相当する検知装置7を眼鏡Bに装着して用いるようになっている点が、第1実施形態の場合と異なる。
【0072】
図20は、検知装置7を眼鏡Bに装着した場合を示す図である。検知装置7は、ユーザが瞬目をしたことを検出するものであり、検出センサ71及び送信装置72を備える。検出センサ71は、第3実施形態の検出センサ320と同じものとすることができ、ユーザの瞬目を検出する度に瞬目を検出したことを信号としてケーブル73を介して送信装置72に送るようになっている。瞬目を検出する処理は、その目的が達成されるのであれば、どのようなものであってもよく、第3実施形態の検出センサ320と同様に、2つの電極を備えたものであってもいいし、赤外線センサと赤外線光源を組合わせたものであってもよい。検出センサ71は、瞬目によって生じる物理量の変化を検出した場合に瞬目検出信号を生成し、送信装置72に送る。瞬目検出信号を受取った送信装置72は、これを疲労予防装置1本体の受信装置8に送るようになっている。
【0073】
この実施形態では、検知装置7は瞬目によって生じる物理量の変化を検出する処理のみを行うが、第1実施形態における瞬目判定部303が行っていたのと同様の、例えば瞬目の検出、あるいはそれに加えて瞬目が減ったか否かの判定等の情報処理を行うようになっていてもよい。その場合、検知装置7は、その内部に、疲労予防装置1本体の瞬目判定装置3が備えるのと同様のハードウェア(CPU、ROM、RAM、インタフェース、バス)を備える。
【0074】
第4実施形態の疲労予防装置1本体は、図21に示すように、第1実施形態のデジタルカメラ2の代わりに受信装置8を備えており、受信装置8はケーブル36を介して瞬目判定装置3と接続されている。送信装置72から瞬目検出信号を受取った受信装置8は、この瞬目検出信号を瞬目判定装置3のインタフェース34に送る。送信装置72と受信装置8の接続は、この実施形態では電波による無線接続であるが、これに限られず、赤外線等による無線接続であってもよいし、有線でもよい。また、検知装置7の電源は、検知装置7に内蔵されていてもよいし、送信装置72と受信装置8の接続によって、疲労予防装置1本体から供給されるようになっていてもよい。
【0075】
第4実施形態の瞬目判定装置3は、第1実施形態の構成とほぼ同じハードウェアを備えているが、インタフェース34は、受信装置8とケーブル36を介して接続されており、受信装置8を介して検知装置7からユーザの瞬目を検出したことを示す瞬目検出信号を受付けるという点で異なる。インタフェース34は、後述するように、瞬目検出信号から瞬目検出データを生成する。
【0076】
コンピュータプログラムをCPU31が実行することにより、瞬目判定装置3の内部には図22に示した如き機能ブロックが生成される。第4実施形態の瞬目判定装置3における機能ブロックは、第1実施形態の瞬目判定装置3における機能ブロックとほぼ同じであるが、瞬目の検出は検知装置7で行われるため、第1実施形態における瞬目検出部302が存在しない点で異なる。
【0077】
入力部301は、検知装置7から送られた瞬目検出データを、受信装置8を介して受付ける。入力部301は、検知装置7から受付けた瞬目検出データを瞬目判定部303に送るようになっている。
瞬目判定部303及び出力部304については、第1実施形態のものと同じである。
【0078】
次いで、第4実施形態の疲労予防装置1で実行される処理の流れについて第1実施形態と同様に図5を参照しつつ説明する。
この実施形態では、必ずしもこの限りではないが、電源を入れ疲労予防装置1を起動することにより、本発明のプログラムが実行され以下の処理に続く開始処理が自動的に始まる(S001)。
次に(もっとも、プログラムの開始処理(S001)との先後は問わないが)、入力装置5により瞬目の基準時間等が決定される(S002)。
【0079】
その後、疲労予防装置1は、検知装置7の検出センサ71によりユーザの瞬目の検出を行う(S003)。瞬目の検出は、上述のように検出センサ71が、電極間の電気力線上にユーザの瞼が存在することよる電荷の変化や、赤外線の反射量の変化を検出することによって行う。
検知装置7は、検出センサ71がユーザの瞬目を検出する度に、送信装置72を介して瞬目検出信号を瞬目判定装置3に送る。
【0080】
瞬目判定装置3は、受信装置8を介して受付けた瞬目検出信号から瞬目検出データを生成する。
瞬目判定装置3は、前回瞬目検出データを受取ってから予め定められた固定の時間が経過したか否かをモニタし、ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっているか否か継続的に判定する(S004)。
固定の時間が経過していない場合(S004:No)には、瞬目判定装置3は、前回瞬目検出データを受取ってから予め定められた固定の時間が経過したか否かを検出するS004の処理を継続する。
固定の時間が経過した場合(S004:Yes)には、瞬目判定装置3は、上述した光照射実行データを生成する(S005)。瞬目判定装置3は、光照射実行データから光照射信号を生成し、光照射装置4に送る。
【0081】
光照射信号として光照射実行信号を受け取った光照射装置4は、ディスプレイ装置Aを見づらくする処理を実行する(S006)。この実施形態では、ディスプレイ装置Aの画面上の所定の範囲に対して強い光を照射し、その範囲に表示されている画像が見づらくなるようにする。
この状態でも、検出センサ71はユーザの瞬目を検出し続けている。また、瞬目判定装置3は、新たなユーザの瞬目があったか否かを、検出センサ71からの瞬目検出信号の受付けがあったか否かによりモニタしている(S007)。
ユーザは、瞬目が減少していることを認識することができるため、ユーザに自発的に瞬目を行うための動機付けを与えられるようになる。
ユーザの新たな瞬目がない場合(S007:No)、光照射装置4は何もせず、ディスプレイ装置Aが見づらい状態を維持する。この場合、ディスプレイ装置Aは相変わらず見づらいままであるから、ユーザの瞬目を誘発し易い状態は継続される。
ユーザの新たな瞬目があった場合(S007:Yes)、つまり、瞬目判定装置3が検知装置7から瞬目検出信号を受付け、瞬目検出データを生成した場合、瞬目判定装置3は光照射データとして光照射中止データを生成する(S008)。瞬目判定装置3は、光照射中止データを生成すると、光照射信号として光照射中止信号を光照射装置4に送る。
【0082】
光照射中止信号を受付けた光照射装置4は、見づらくなっているディスプレイ装置Aに対する光りの照射を中止する(S009)。
光照射中止データが生成された後、或いは光照射中止データが生成されるのと同時に、S004の処理でモニタされていた瞬目検出データの生成から経過した時間はリセットされ、光照射中止データが生成された時間が、固定時間が経過したか否かモニタするための新たな始点として設定される(S010)。
本発明のプログラムを終了させる操作、例えば、疲労予防装置1の電源を落とす操作が入力装置5により行われたか否かの判定は常に行われているが(S011)、このような操作が特に行われていない場合(S011:No)には、上述のS010が行われた後、S003以下の処理が再度繰り返される。
本発明のプログラムを終了させる操作が行われた場合(S011:Yes)には、すべての処理が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る疲労予防装置の使用時の構成を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る疲労予防装置の全体構成を示す斜視図。
【図3】図2に示した瞬目判定装置のハードウェア構成図。
【図4】図2に示した瞬目判定装置内に生成される機能ブロックを示すブロック図。
【図5】図1に示した疲労予防装置で実行される処理の流れを示す流れ図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る疲労予防装置の全体構成を示す斜視図。
【図7】第3実施形態のヘッドマウントディスプレイ装置を眼鏡に取付けた状態を示す図。
【図8】図7に示した検出センサの一例の構成を概略的に示す図。
【図9】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置の眼鏡への取付け方法の説明図。
【図10】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置のケースの上面図。
【図11】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置のケースの内部構成を示す一部断面図。
【図12】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置の移動機構の動作説明図。
【図13】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置の調整機構の詳細な構成図。
【図14】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置の調整機構の動作説明図。
【図15】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置の自由曲面プリズム内の導光路の説明図。
【図16】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置を後方から見た図。
【図17a】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置を取付けた状態の眼鏡を前方から見た図。
【図17b】図7に示したヘッドマウントディスプレイ装置を取付けた状態の眼鏡を前方から見た図。
【図18】変形例3のヘッドマウントディスプレイ装置のケースの内部構成を示す一部断面図。
【図19】本発明の第4実施形態に係る疲労予防装置の使用時の構成を示す図。
【図20】図19に示した検知装置の全体構成を示す斜視図。
【図21】本発明の第4実施形態に係る疲労予防装置本体の全体構成を示す斜視図。
【図22】図21に示した瞬目判定装置内に生成される機能ブロックを示すブロック図。
【符号の説明】
【0084】
A ディスプレイ装置
1 疲労予防装置
2 デジタルカメラ
3 瞬目判定装置
4 光照射装置
5 入力装置
6、522 視界遮断装置
7 検知装置
8 受信装置
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 インタフェース
35 バス
36、37、38、73 ケーブル
71、320 検出センサ
72 送信装置
500 ヘッドマウントディスプレイ装置
600 眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが注視するディスプレイ装置と組合わせて用いられる疲労予防装置であって、
前記ユーザの瞬目を検出する瞬目検出手段と、
前記瞬目検出手段によって検出された前記ユーザの瞬目の状態に基づいて前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっているかを判定する瞬目判定手段と、
前記瞬目判定手段が、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする妨害処理を実行する視界妨害手段と、
前記視界妨害手段により前記ディスプレイ装置が見づらくなっているときに、前記瞬目検出手段が前記ユーザの瞬目を検出した場合に、前記妨害処理を中止する視界回復手段と、
を備える、疲労予防装置。
【請求項2】
前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が、所定の時間前記ユーザの瞬目を検出しなかった場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっている、
請求項1記載の疲労予防装置。
【請求項3】
前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が、予め定められた基準時間前記ユーザの瞬目を検出しなかった場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっている、
請求項1記載の疲労予防装置。
【請求項4】
前記瞬目判定手段は、前記瞬目検出手段が検出した前記ユーザの瞬目の回数が、予め定められた単位時間あたりの基準瞬目回数を下回った場合に、前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定するようになっている、
請求項1記載の疲労予防装置。
【請求項5】
前記視界妨害手段は、前記妨害処理を、前記ディスプレイ装置の前記ユーザに対向する面上若しくは当該面と前記ユーザの間に、前記ディスプレイ装置を見づらくする光を照射することによって行う、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労予防装置。
【請求項6】
前記視界妨害手段は、前記妨害処理を、前記ディスプレイ装置の前記ユーザに対向する面上若しくは当該面と前記ユーザの間に、前記ユーザの視界を遮断する遮断物を配置することによって行う、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労予防装置。
【請求項7】
前記瞬目検出手段と、前記瞬目判定手段と、前記視界妨害手段と、前記視界回復手段とが一体とされている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労予防装置。
【請求項8】
前記瞬目検出手段は、ユーザの瞬目により生じる物理的な変化を検知する検知手段を備え、少なくとも前記検知手段は、眼鏡に対する着脱自在な取付けを可能とする取付手段を介して眼鏡に取り付けられるようになっている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労予防装置。
【請求項9】
ユーザが注視するディスプレイ装置と組合わせて用いられる疲労予防装置で実行される方法であって、
前記ユーザの瞬目を検出する過程と、
前記ユーザの瞬目を検出する前記過程によって検出された前記ユーザの瞬目の状態に基づいて前記ユーザの瞬目の回数が所定の基準より少なくなっていると判定した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする妨害処理を実行する過程と、
妨害処理を実行する前記過程により前記ディスプレイ装置が見づらくなっているときに、前記ユーザの瞬目を検出した場合に、前記ディスプレイ装置を通常より見づらくする前記妨害処理を中止する過程と、
を含む、方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−26103(P2010−26103A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185338(P2008−185338)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(300053553)スカラ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】