説明

疾患状態を処置するための移植可能な装置およびこの装置の使用方法

患者の血管系内において薬物、遺伝子ベクター、天然に存在するかまたは合成のホルモンもしくはタンパク質、または他の生物活性因子を送達するための方法および装置が提供される。一つの好適な実施態様においては、本装置は、生物活性因子を溶出または分泌し、アンカーによって患者の血管内の適当な場所に保持される材料を含む。この材料は、生体適合性を有し、場合によっては吸収可能なマトリックス、または幹細胞、脾臓細胞もしくは膵島細胞、または他の有益な細胞を維持し、それらの細胞に栄養を与える培地を含んでいてよい。これらのアンカーおよび材料は、送達用シース内でアンカーおよび材料を患者の血管系内に送達することができる送達用の形状から、アンカーが患者の血管の内壁に係合する展開された形状にサイズ調整が為され及び/又は折り畳み可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の送達、遺伝子治療、または細胞および細胞成分を含む生物活性物質の凝集体を提供することにより、様々な疾患状態を治療するための装置に関係する。より詳細には、本発明は、これらに限定するものではないが、局所療法または全身療法のために薬物、遺伝子治療または他の生物活性物質を患者の血管系内に送達することを含む、治療的介入の方法およびそのような治療的介入を行うための埋め込み可能な装置を提供する。また、この埋め込み可能な装置は、血行力学的なデータまたは他の生理学的なデータを身体の外部に設けられた受信機へ送信する目的で血管内に診断用センサーをセンタリングするためのプラットフォームも提供する。
【背景技術】
【0002】
National Cancer Instituteによれば、約4,000種類の特定の状態が遺伝的欠陥により引き起こされることが知られている。GeneMed Networkは、それぞれの人間がおおよそ6つの欠陥遺伝子を持っており、約10人に1人が生まれつきの遺伝的障害を有しているか、将来的に遺伝的障害を発症すると述べている。
【0003】
約150,000個の個々の遺伝子からなる複合物が人間を構成している。これらの遺伝子の構造上の変異は疾患をもたらし得る。多くの疾患は単一の遺伝子により受け継がれ、一方、多くの他の疾患は遺伝子の集まりによって左右される。
【0004】
数年前、Human Genome Projectは全てのヒト遺伝子のマッピングを始めた。このプロジェクトは、人間の疾患の根本的な基礎の理解を深め、疾患の新たな治療法および疾患の発症の予測を可能にしている。一つのこのような治療法は遺伝子治療であり、この治療法は、遺伝子操作した遺伝物質を送達することにより、遺伝子の発現を直接的かつ有益に改変しようとするものである。細胞のDNA内に直接的に非統合配列または統合配列のいずれかの発現をもたらすべく、DNAまたはRNAのうちのいずれかの外来ヌクレオチド配列が患者の細胞内へ挿入される。
【0005】
適切な細胞へヌクレオチド配列を安全且つ効率的に送達することが遺伝子治療にとっての一つの重大な課題となっている。それらの配列を送達するため、治療遺伝子を封入するベクターが開発されている。これらのベクターは、ウイルスベクターまたは合成ベクターのどちらであってもよい。ウイルスから誘導されるウイルスベクターは、今日、実験用に使用されている主要なベクターである。ウイルスは、効率的に細胞を標的とし、通常は疾患をもたらすゲノムを送達する。しかし、遺伝子治療用のウイルスベクターは疾患を引き起こし得ないように改変されている。寧ろ、治療用の組換え遺伝子がそれらのベクターに挿入され、標的細胞へ送達される。最適には、それらの改変されたウイルスは、複製することはできないものの、遺伝物質を効率的に送達する能力を保持している。
【0006】
遺伝子治療の分野における研究はまだ初期段階にある。ヒトを対象とした臨床試験はエクスビボ法を用いて1990年に始まったばかりであり、そこでは、患者の細胞が収集されて検査室で培養され、それらの遺伝子を改変すべくベクターと共にインキュベートされた。この後、細胞が収集され、筋肉内に移植することにより患者に戻された。臨床試験は、ウイルスベクターが同じく筋肉内経路で患者に直接的に投与されるインビボ法へと急速にシフトした。現在、様々な疾患が遺伝子治療の対象として検討されており、また、この技術分野には、改善されたベクター送達技術に対するニーズが存在する。
【0007】
かなりの進展が達成されているものの、現在の遺伝子治療による送達技術は多くの欠点を有している。ウイルスベクターは、疾患を感染させるウイルスの生得的な能力のため、本質的に危険性を有している。その上、ウイルスを送達用のビヒクルとして使用することに関する長期的な影響は分かっていない。ウイルスをベクターに改変する際のエラーの確率は重大であり、その結果は、潜在的なヒト遺伝子プールの不可逆的な変化を含め、多大である。また、罹患した細胞の有効な部分へのベクターの送達は難しく且つ高価であることが判明している。
【0008】
合成ベクターは、ウイルスベクターの使用に関わる潜在的な疾患の感染の問題を解決するために開発された。これらのベクターは、遺伝子を効率的に転移することができる微粒子の形態に形成されたDNA、タンパク質または脂質の複合体である。しかし、合成ベクターは、これまでのところ、ウイルスベクターよりも有効性に劣っていることが実証されており、認可が遅々としている。
【0009】
ベクターの制限よりも恐らくは更に一層解決するのが難しい問題は、ベクターが患者の筋肉組織内へ送達される筋肉内インビボ法が、臨床使用において幾分有効性に劣ることが実証されていることである。挿入された配列の全身性の発現は、療法が局所化されているため、現実的ではない。
【0010】
遺伝子治療を施すためのこれまでに知られている方法に関わる欠点を考慮すれば、そのような欠点を克服した方法および装置を提供することが望ましいであろう。
【0011】
遺伝子治療の技術に加え、研究は、疾患の状態を緩和することを目的として、組織の再生を引き起こすことを目的として、または臓器の機能を改善することを目的として、細胞または特定のタンパク質の選択的な埋め込みまたは注入にも焦点を当てている。例えば、研究者らは、心外膜、心内膜または冠状静脈洞アクセス経路を介して心筋に細胞を注入することにより心臓機能を改善する技術について調べている。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0012】
他の研究者らは、糖尿病患者におけるインスリン産生を改善するため、膵臓または肝臓に細胞を注入する技術について調べている。非特許文献2は、脾臓細胞により分泌されたタンパク質複合体が糖尿病の原因となる自己免疫疾患を緩和することができるように、非糖尿病マウスから得たドナー脾臓細胞を糖尿病マウスに注入する技術について記載している。非特許文献3は、I型糖尿病を緩和するため、単離されたランゲルハンス島細胞を患者に注入する技術について記載している。非特許文献4は、摘出された肝臓に膵島細胞を移植し、摘出された肝臓と同様に機能させるように、部分的な膵臓の切除後、単離された膵島細胞をカテーテルを通じて患者の肝臓の静脈に注入する技術について記載している。
【0013】
更に別の研究者らは、非特許文献5で報告されているように、特定のタンパク質、例えばアポリポタンパク質A−I Milanoなどは、高コレステロールの食餌を与えたラットに導入したときに、動脈血栓形成の発症を阻害することを発見している。Chiesa,G.およびSirtori,C.R.は、非特許文献6において、リン脂質を伴う合成HDLとして調製された組換えアポリポタンパク質A−I(Milano)は、種々の異なる用量で被検者に注入されたときに、動脈コレステロールに対して直接的な除去効果を及ぼすようであると報告している。
【非特許文献1】Thompson,C.A.ら、Percutaneous Transvenous Cellular Cardiomyoplasty,A Novel Nonsurgical Approach for Myocardial Cell Transplantation,J.Am.Coll.Card.,2003年、41(11):pp.1964−71
【非特許文献2】Kodamaら、Islet Regeneration During the Reversal of Autoimmune Diabetes in NOD Mice,Science,2003年、302(5648):pp.1223−1227
【非特許文献3】Hering,B.J.ら、Transplantation of cultured islets from two−layer preserved pancreases in type 1 diabetes with anti−CD3 antibody,Am.J.Transplant.2003年、4(3):pp.390−401
【非特許文献4】Panaro,F.ら、Auto−islet transplantaion after pancreatectomy,Expert Opin.Biol.Ther.,2003年、3(2):pp.207−14
【非特許文献5】Li,D.ら、Inhibition of arterial thrombus formation by ApoA1 Milano,Arterioscler.Thromb.Vasc.Bio.,1999年、19:378−83
【非特許文献6】Chiesa,G.およびSirtori,C.R.、Apolipoprotein A−I(Milano):current perspectives,Curr.Opin.Lipidol.2003年、14:pp.159−63
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述の説明を考慮すれば、更に、治療目標を達成するため、患者の血管系に細胞、細胞成分、または天然に存在するかもしくは合成のタンパク質を送達するための方法および装置を提供することが望ましいであろう。
【0015】
尚も更に、全身性または局所化された血管内注入によって得ることができる在留期間を超える予め定められた在留期間を有する、遺伝子、細胞または生物活性因子を患者の血管系内へ局所的に送達するための方法および装置を提供することが望ましいであろう。
【0016】
また、インビボにおける治療物質の産生および分泌を助長および維持する様式でウイルスベクター、合成ベクター、薬物、細胞、または天然に存在するタンパク質もしくは合成タンパク質、または他の治療物質を送達するための方法および装置を提供することも望ましいであろう。
【0017】
更に、有効な物質が分散した後には送達システムが再構成して患者に生じる合併症のリスクを軽減するような様式で生物活性因子を血管内に送達するための方法および装置を提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の開示)
前述の説明を考慮し、本発明の一つの目的は、局所的または全身性の治療目標を達成するため、細胞、細胞成分、または天然に存在するタンパク質もしくは合成のタンパク質を患者の血管系に送達するための方法および装置を提供することである。
【0019】
また、本発明の一つの目的は、全身性または局所化された血管内注入によって得ることができる在留期間(residency)を超える、予め定められた在留期間を有する、遺伝子、細胞または生物活性因子を患者の血管系内へ局所的に送達するための方法および装置を提供することである。
【0020】
別の目的は、インビボにおける治療物質の産生および分泌を助長および維持する様式でウイルスベクター、合成ベクター、薬物、細胞、または天然に存在するタンパク質もしくは合成のタンパク質、または他の治療物質を送達するための、比較的高価でない方法および装置を提供することである。
【0021】
更に別の目的は、有効物質が分散した後には送達システムが再構成して患者に生じる合併症のリスクを軽減するような様式で生物活性因子を血管内に送達するための方法および装置を提供することである。
【0022】
本発明のこれらの目的および他の目的は、罹患した組織器官に影響を及ぼす患者の血管系の一部における患者の血流に一つまたはそれ以上の生物活性因子を直接的に晒す方法および装置を提供することにより達成される。一つの好適な実施態様においては、本装置は、天然に存在するかもしくは合成の望ましい生物活性因子、例えば薬物、遺伝子ベクター、タンパク質またはホルモンなどを溶出または分泌することができる埋め込み可能な装置を含む。本発明の原理によれば、本装置と接触することとなる血液は、そのような生物活性因子を吸収し、その生物活性因子を組織、器官、血管または全身に運ぶことが期待されている。
【0023】
数週間から数ヶ月までの期間にわたって埋め込まれることが意図されている一つの実施態様では、本発明の装置は、アンカーによって患者の血管内の適所に保持される溶出用材料または分泌用材料を含む。前述のアンカーおよび溶出用材料は、送達用シース内で患者の血管系に経管的に送達するのに適した送達用の形状から、本装置が患者の血管の内壁と係合する展開された形状に、サイズ調整が為され及び/又は拡張可能である。
【0024】
血管内における圧力または他の生理学的な変数を検知するため、ナノテクノロジーまたはMEMSを利用して設計された装置を使用することができる。本発明は、そのような装置を血管の内部の中央に位置合せする方法を提供する。これは、装置が移動して遠位側に位置する血管に嵌り込むのを防止する上で望ましく、また、その一方で、そのような装置の展開および回収を容易に行うこともできる。そのようなセンタリングシステムがない場合には、センサーは最終的には遠位側に位置する血管に移り、そこでは、血栓および炎症反応がセンサーを包み込んで役に立たなくしてしまうか、または標的とする循環回路からセンサーを隔ててしまう可能性がある。
【0025】
本発明の原理によれば、溶出用材料または分泌用材料は、ある定められた期間にわたって組換え遺伝子、薬物、または他の生物活性因子もしくは治療物質を溶出または分泌することができ、その後、その材料は分散する。この場合、アンカーは、患者に生じる合併症を最小化すべく自身を再構成することができる。
【0026】
代替的に、埋め込み可能な本装置内に配置される溶出用材料または分泌用材料は、患者の血流によってもたらされる栄養物を用いて生物活性因子に栄養を与え、且つ、その生物活性因子を維持する培養材料を含んでいてよい。例えば、埋め込み可能な本装置内に配置される材料は、ランゲルハンス島細胞または他の内分泌細胞を維持する培養材料を含んでいてよく、これにより、これらの細胞は、糖尿病を治癒または緩和させるのに必要なタンパク質またはホルモンを分泌することができる。一つの更なる例として、埋め込み可能な本装置は、アテローム性動脈硬化の影響を逆転させるために使用され得る有益なタンパク質の分泌、例えばアポリポタンパク質A−I(Milano)などの分泌を支持する培養材料を含んでいてもよい。
【0027】
また、本発明の装置を用いる方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、天然に存在する生物活性因子または合成の生物活性因子、例えば薬物、遺伝子ベクター、タンパク質またはホルモンなどを送達するための方法および装置を提供する。図1を参照すると、血管内に生物活性物質を送達するための従来技術による装置が示されている。図1Aに示されているように、溶出用ステント10は、直線状部材12および拡張可能な半径方向部材14を含んでいる。ステント10は、生物活性物質の被膜Cでコーティングされている。ステント10は、図1Bに示されているように、血管V内で拡張され、血管の内壁と係合する。被膜Cの生物活性物質は、血管Vを通過する血液中に溶出される。
【0029】
図2は、血管Vの断面を通じる血流の速度プロフィールをグラフで示している。血流速度Velは、血管V内における位置Pの関数として表される。血管Vの左側壁L、中心Cおよび右側壁Rにおけるそれぞれの位置が縦座標軸に沿って表記されている。同様に、最小速度Vminおよび最大速度Vmaxが横座標軸に沿って表記されている。最小速度Vminは血管壁において生じていることに留意する必要がある。速度は、血管Vから位置が離れるに従って増大し、血管の中心Cで最大速度Vmaxに達する。従って、血液は、中心線CLの回りで図2のグラフを回転させることにより描かれる如く、円柱状の三次元的なポアズイユの流れを構築する。
【0030】
図1Bのステント10は血管Vの内壁に寄り掛かっており、そこでの血流速度Velは最小値Vminに接近する。従って、このステントは、ステント10が血管Vの壁に隣接して流れる血液の小さな略停滞した部分にのみ晒されるため、被膜Cの生物活性物質を血流に送達する上で効果がない。
【0031】
次に、図3Aおよび3Bを参照すると、本発明の原理により構築された装置が示されている。装置20は、血液がもっと速い速度で流れている血管壁から離れた領域で生物活性物質を血流に晒すことにより、生物活性物質を血流にこれまでよりもずっと効率よく送達するように構成されている。装置20は、アンカー24内に配置された溶出用または分泌用材料22を含んでいる。
【0032】
アンカー24は、患者の血管内に半恒久的または恒久的に埋め込むように適合された折り畳み式のケージを含んでいる。このケージは、複数の予め成形されたセグメントから形成されており、ここで、各セグメントは、縦方向に延びる部分26および半径方向に延びる部分28を有している。半径方向に延びる部分28は、接合部30における近位端部および接合部32における遠位端部において共に接合されている。
【0033】
アンカー24は、好適には、ニッケル−チタンワイヤーから製作されており、これらのワイヤーを接合部30および32で溶接することができる。アンカーを構成しているこれらのセグメントは実質的に真っ直ぐであってよく、または共に、図4に関して以下で検討されているように、正弦波の形状を有していてもよい。アンカー24は、患者の血管系内に経管的に挿入するのに適した送達用の形状から、図3Aの展開された形状へ弾性的に自己拡張することができ、ここで、図3Aの展開された形状において、アンカー24は、図3Bに示されているように、患者の血管Vの内壁に係合するように適合されている。場合によって、アンカー24は、一旦血管内で展開された後にアンカーが移動するのを防ぐため、縦方向に延びる部分26から半径方向に延びるかかり(barb)29を含んでいてよい。
【0034】
材料22は、フィラメント36によりアンカー24内に保持された(which is anchor 24 by filament 36)ペレット34を含んでおり、このフィラメント36は、アンカーの縁から離れた位置にペレットを保持している。例示的に、フィラメント36は、生体適合性材料、例えばステンレス鋼、ニッケルチタン合金、または生体適合性ポリマーなどでできた伸縮自在なバンドを含んでいる。また、フィラメント36は、アンカーの拡張を容易化するため、アンカー24に張力を及ぼすこともできる。更に、本装置を尚も一層しっかりと固定し、アンチグレードフロー(antigrade flow)の真っただ中での移動を防止するため、縁にかかりまたはフックを付け加えることもできる。ペレット34は、最初、患者の血管系内へ経管的に送達され得るようなサイズにされている。血管V内の血流に晒されるときに、ペレット34は、アンカーの内部スペースの実質的な部分を満たし、血管の中心付近を高速度で流れる血液に対して高い表面接触面積をもたらすように拡張してよい。
【0035】
本発明の原理によれば、ペレット34は、生物活性因子、例えば(ベクター内に封入された、または単独の)遺伝子治療配列、薬物、タンパク質またはホルモンなどを溶出または分泌する生物活性物質を含んでいる。例えば、ペレット34は、天然に存在するかもしくは合成のタンパク質またはホルモンを増殖させまたは分泌することができる生体適合性培地のマトリックス内に配置された自己細胞またはドナー細胞の凝集体、例えば脾臓細胞、幹細胞、単離された膵島細胞または他の細胞などの凝集体を含んでいてよい。血管系内において送達されると、血液がペレット34と接触し、これにより、細胞、更には下流の毛細血管床が上述の物質に晒され、局所療法または全身療法が施される。
【0036】
糖尿病を治療する場合においては、ペレット34は、患者の血流から抽出された栄養物質を用いて自己またはドナーの膵臓細胞または膵島細胞に栄養を与え、且つ、それらの細胞を維持することができる培地を含んでいてよく、装置20は、膵臓または肝静脈に隣接した動脈内に埋め込まれてよい。また、膵臓から離れた位置にある血管内への埋め込みも、標的とする内分泌器官に差し向けて配置する代替的な手段を提供し得る。例えば、脾臓動脈は、タンパク質凝集体および細胞副産物が脾臓により拾い上げられることを可能にするため、理想的であり得る。このようにして、装置20は、ペレット34内に含有されている膵島細胞から分泌されたインスリンが血流中に分散されるような移植片として機能する。代替的に、脾臓細胞は、Kodamaらによる上述の文献で説明されているように、これらの細胞により分泌されたタンパク質複合体が自己免疫疾患の影響を軽減することができるように、膵臓の上流に埋め込まれる装置用に使用されてもよい。
【0037】
アテローム性動脈硬化症を治療する場合においては、ペレット34は、アポリポタンパク質A−I(Milano)または他のHDL様類似体を増殖させ、且つ、分泌することができる培地を含んでいてよい。先行する実施態様において開述されている膵島細胞の場合のように、このペレットを含むマトリックスは、患者の血流から抽出された栄養物質で栄養補給されてよい。例えば患者の大静脈または他の静脈構造に埋め込まれた場合、本発明の装置は、望ましいタンパク質を増殖し、それらのタンパク質を数週間から数ヶ月の期間にわたって患者の血流に分散させ、これにより、アテローム性動脈硬化の進行を阻み、更にはアテローム性動脈硬化の進行を逆転させることさえあり得よう。
【0038】
代替的に、ペレット34は、薬物、遺伝子ベクター、合成のホルモンもしくはタンパク質、または他の生物活性因子が搭載された生体吸収性材料を含んでいてよく、そのようなペレット34は、このペレットの材料が溶解したときに、上述の生物活性因子を血流中に放出する。尚も更なる代替的な態様として、上述の如き生物活性因子がペレットから溶出された後、本装置が患者の血管系から回収されてよい。アンカー24を回収しやすくするため、アンカー24のストラットは、内皮化を防止する薬物、例えば細胞分裂抑制剤などでコーティングされていてよく、またはそのような薬物が含浸されていてよい。
【0039】
場合によって、装置20は、更に、半径方向に延びる部分28の周り、またはペレット34もしくはアンカー24内における凝固または血栓の構築を防ぐため、抗凝固剤、例えばヘパリン、クマジン、直接的なトロンビン阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤またはアスピリンなどが含浸されていてよく、またはそのような抗凝固剤でコーティングされていてよい。代替的に、装置20が下流の望ましくない組織または罹患した組織を殺すことを意図したものである場合、アンカー24及び/又はペレット34は、標的とする細胞の死滅、またはその血管もしくは標的器官支脈(tributaries)のクロッティングオフ(clotting−off)を促進する薬物でコーティングされていてよく、またはそのような薬物が含浸されていてよい。図1Bにおけるステント10の被膜Cの配置とは対照的に、図3Bに示されているような、血管V内におけるペレット34の中央配置が、これまでに知られている血管性溶出技術を上回る本発明の主要な利点を説明付けている:本発明では、装置20の生物活性物質は比較的高い速度の血流に晒される。
【0040】
薬物を送達する目的で使用される場合、ペレット34から送達される生物活性因子は、例えば化学療法用の薬物などの治療用毒素を含んでいてよい。化学療法用の薬物は、一般的に、単に癌細胞に対してだけでなく、一つの生命体全般に対して毒性である。従って、腫瘍を供じている動脈区域内における持続放出によるその血管系内への直接的なこれらの薬物の送達は、これまでよりも一層集約された治療効果をもたらすものと期待される。この生物活性因子は代替的に抗生物質を含んでいてもよい。例えば免疫不全または深在性(deep seeded)感染を患っている患者の場合には、膿瘍または感染領域内への直接的な抗生物質の送達が有益であり得る。
【0041】
更に、望ましい生物活性因子の長期間にわたる全身性の送達は、患者の血管系の中心静脈内に装置20を配置することによっても達成することができる。現在の技術は、中心静脈内(「IV」)アクセスを通じて、または常在性の特別に設計されたIV装置を通じて、持続的な薬物注入を提供するに過ぎない。これとは反対に、装置20は、中心静脈内で展開させ、その後、もっと後になって、例えば1週間から2週間後に取り除くことができる。その期間の間、装置20は患者に全身性の治療を施すことができ、これにより、長期間にわたるIV使用から生じる感染のリスクを排除することができる。
【0042】
図4を参照すると、本発明による代替的なアンカーが示されている。アンカー40は正弦波の形状を有するケージ42を含んでおり、このケージは、本明細書のこれまでの箇所で開述されているような溶出用または分泌用材料と共に使用するように適合されている。ケージ42は複数の正弦波の形状を有するセグメント44から形成されており、これらのセグメントは、それぞれ、接合部46および48において、近位端部および遠位端部で接合されている。
【0043】
セグメント44は、好適には、ニッケル−チタンワイヤーから製作されており、これらのワイヤーを接合部46および48で溶接することができる。図3のアンカー24と同様に、正弦波の形状を有するケージ42は、患者の血管系内へ経管的に挿入するのに適した送達用の形状から図4の展開された形状へ拡張することができ、ここで、前述の展開された形状において、アンカー40は、患者の血管の内壁と係合するように適合されている。アンカー40が正弦波の形状を有していることは、迅速且つ信頼性のある展開および回収を促進させるものと期待される。
【0044】
図5を参照すると、本発明の送達および回収装置が示されている。装置50は、図3Aおよび3Bの装置20のほかに、送達用シース52、プッシャー54および回収用具56を含んでいる。図5Aでは、プッシャー54および装置20は、シース52の管腔53内に共軸的に配置されている。アンカー26はプッシャー54に接続されておらず、患者の血管内に半恒久的に埋め込むように適合されている。
【0045】
アンカー24は、プッシャー54を遠位側に進め、管腔53からアンカーを押し出すことにより拡張される。代替的に、アンカー26に寄り掛かっているプッシャー54を動かさずに保持した状態でシース52を近位側に引き込むことによってアンカーをシースから押し出すこともできる。このとき、アンカー26は、図5Bの展開された形状へと弾性的に拡張する。アンカー24およびペレット34は、予め定められた期間の間、血管内に埋め込まれ、この期間の後、回収用具56を用いて、患者の血管系からペレットを取り除くことができる。
【0046】
回収用具56は細長い部材58を含んでおり、この部材の遠位端部はフック59で終結している。装置20を回収する場合、管腔53からプッシャー54が取り除かれ、回収用具56と置き換えられる。次いで、フック59がシース52の遠位端部を越えてアンカー24の内部へ進められ、この後、フックが接合物30においてアンカーと係合するようにしてフック59が引き込まれる。引き込み続けることにより、アンカー26は折り畳まれることとなり、シース52内において図5Aの送達用の形状に戻る。回収用具56は、代替的に、プッシャー54の随意的な管腔55を通じて進められてもよい。
【0047】
図6を参照すると、一時的な埋め込みに適した、本発明の装置の代替的な実施態様が示されている。装置60は、溶出用または分泌用材料62、アンカー64、送達用シース52およびガイドワイヤー66を含んでいる。材料62は、アンカー64内に配置されたスポンジ状材料68を含んでいる。
【0048】
アンカー64は折り畳み可能なケージを含んでおり、このケージは、一時的な埋め込み後に装置60の迅速な回収を可能にすべくアンカー64が近位側接合部72においてガイドワイヤー66に取り付けられている点を除き、本明細書のこれまでの箇所で開述されているアンカー24のケージと同じである。スポンジ状材料20およびアンカー64は、図6Cに示されているように、シース52内において送達用に折り畳まれており、血管系内へ送達されたときに、図6Aおよび6Bに示されているように、弾性的に拡張する。スポンジ状材料20は、例えば膨張可能な多孔質発泡体、膨潤性のヒドロゲルマトリックス、ナノテクノロジー/MEMSを利用して設計された小形の機械式注入システムまたは生体適合性金属合金フィラメントから製作することができる。材料20は、本明細書のこれまでの箇所で開述されているような生物活性物質を含んでおり、場合によっては、更に、同じくこれまでに開述されている如き抗凝固剤、抗血栓剤または抗内皮化剤なども含んでいてよい。図6Eに示されているように、材料20は、拡張された形状において、患者の血管の大部分をカバーしており、これにより、そこを通過する大部分の血液に生物活性物質を晒している。
【0049】
次に図7A〜7Cを参照すると、本発明による装置の別な代替的実施態様が示されている。装置80は、送達用シース52のほかに、溶出用または分泌用材料82、アンカー84およびガイドチューブ86を含んでいる。ガイドチューブ86はシース52の管腔53内に共軸的に配置されている。アンカー84は折り畳み可能なケージ88を含んでおり、このケージはガイドチューブ86に取り付けられている。ケージ88は、チューブ86の管腔87を通じてケージ88の内部へのアクセスを提供するような様式でケージ88がガイドチューブ86に接続されている点を除き、先行する実施態様のケージと同様である。
【0050】
溶出用または分泌用材料82は柔軟な細長い部材90を含んでおり、この部材は、チューブ86の管腔87を通じてケージ88の内部へ通っており、その遠位端部はケージ88の接合部92に結合されている。患者の血管内でケージ88を展開させる場合、チューブ86を動かさずに保持した状態で部材90を進めることができる。この前進は、部材90の遠位端部がケージ88の接合部92に取り付けられているため、部材90の曲がりを引き起こす。前進を続けることにより材料82の多数のゆがみ94が創出され、これらの多数のゆがみは、好適には、図7Aおよび7Bに示されている如く、ケージ88の内部の大部分を占有する。多数のゆがみ94は、本明細書のこれまでの箇所で開述されているような一つまたはそれ以上の生物活性物質でコーティングされている。
【0051】
装置80は、ケージ88の内部からゆがみ94を取り除くべく細長い部材90を近位側に引き込むことにより回収することができる。このとき、ケージ88は、図7Cに示されているように、送達用シース52の管腔53内で折り畳まれ、患者からの送達および回収を容易化することができる。
【0052】
次に図8A〜8Dを参照すると、図5の装置を使用する方法が示されている。図8Aに示されているように、アンカー24およびペレット34が送達用シース52内で送達用の形状にある状態で、装置20が既知の経皮的アクセス技術を用いて患者の血管V内へ進められる。この後、アンカー24およびペレット34は、送達用シース52を動かさずに保持した状態でプッシャー54を遠位側に進め、これによってアンカー24を管腔53から押し出し、送達用シース52の遠位端部を越えて進めることにより、展開された形状に拡張される。代替的に、プッシャー54を動かさずに保持し、その一方で、送達用シース52を近位側に引き込むことにより、アンカー24を管腔53から解放することもできる。
【0053】
図8Bに示されているように、アンカー24は展開された形状へ弾性的に拡張し、一方、水分により膨潤するペレット34は、血管Vを通じて流れている血液と接触したときに膨張する。接合部30および32の弾力性、更には伸縮自在なバンド36の弾力性は、アンカー24を展開された形状に優先的に方向付けており、これにより、一層低めのエネルギー状態が確立される。アンカー24は血管Vの内壁と係合し、ペレット34を高速度の血流領域内に適切にしっかりと固定する。
【0054】
血液は血管Vを通じて方向Dに流れている。これまでに検討されているように、ペレット34は生物活性因子を溶出または分泌する一つまたはそれ以上の生物活性物質を含んでおり、このような生物活性因子は薬物、天然に存在するかもしくは合成のホルモンまたはタンパク質、遺伝子ベクターなどを含む。ペレット34およびアンカー24は、これに加え、装置20の周囲または装置20内での凝固形成を防ぐため、抗凝固剤、例えばヘパリン、クマジン、GP IIb/IIIa阻害剤、直接的なトロンビン阻害剤またはアスピリンなどで、または抗内皮化剤でコーティングされていてよく、またはそのような薬物が含浸されていてよい。
【0055】
血液は、ペレット34を通じて流れ、上述の如き生物活性物質と接触することとなり、これにより、細胞、更には下流の毛細血管床がそのような物質に晒され、局所療法が施される。生物活性物質が遺伝子治療ベクターを含んでいる場合には、ペレット34を通って流れる血液のうちの30%程もの多くがこれらのベクターを取り込むことが期待される。このような局所化された送達および発現に適した遺伝子治療は血管形成および血管再生を含む。送達用シース52およびプッシャー54は患者から取り外されてよく、装置20は、ストラットが抗増殖剤でコーティングされている場合には、4週間またはそれ以上もの長い間、患者内にそのまま残しておくことができる。
【0056】
処置が完了すると、シース52は、シースがアンカー24のすぐ近くに位置付けられるまで血管V内に再度導入される。回収用具56が、管腔53を通じ、シース52の遠位端部を越えてアンカー24の内部に進められる。この後、回収用具56は、図8Cに示されているように、フック60がアンカー24の接合部30と係合するように近位側に引き込まれる。代替的に、罠または他の回収メカニズムを使用することもできる。回収用具56の引き込みを続けることにより、装置20は、折り畳まれ、図8Dに示されているように、シース52内で送達用の形状へ戻る。本発明による装置は、アンカーおよび溶出用材料の拡張または折り畳みを容易化するため、一つまたはそれ以上の放射線不透過性機構(features)(図示せず)を含んでいてよい。この後、装置50は血管Vから取り外される。
【0057】
図9を参照すると、患者の虚血下肢内における閉塞を放散させるべく薬物を送達する目的で装置50を使用する方法が示されている。図9は下肢の主要な動脈を図示しており、それらの動脈は外腸骨動脈EIA、大腿浅動脈FA、外側大腿回旋動脈LCA、大腿深動脈DFA、膝動脈GA、前脛骨動脈ATA、腓骨動脈PAおよび後脛骨動脈PTAを含む。遠位大腿浅動脈FAが閉塞Oで閉塞されている状態が示されている。この大腿の遠位側に位置する幾つかの動脈も閉塞Oで閉塞されていることが考えられる。これらの閉塞が放散されない場合、この患者のこれらの閉塞の下側に位置する脚は治らず、切断を必要とする可能性がある。
【0058】
総大腿動脈が大腿深動脈および大腿浅動脈に分岐している部分のすぐ近くにまでカテーテル50が患者の血管系に経皮的に導入されている状態が示されている。アンカー24およびペレット34をシース52内における送達用の状態に配置した後、装置20をその分岐部の遠位側に進めた。アンカー24およびペレット34は、アンカー24が大腿浅動脈FAの内面と係合するように、プッシャー54と送達用シース52との間の相対的な動きにより展開された形状に拡張された状態で示されている。
【0059】
ペレット34は、本明細書のこれまでの箇所で開述されているような生物活性物質を含んでいる。閉塞Oを放散させるため、この生物活性物質は血栓溶解剤を含んでいてよい。適切な血栓溶解剤は、例えば組織プラスミノゲン活性化因子(「TPA」)、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼを含む。代替的に、この生物活性物質は、抗凝固剤、例えばクマジン、ヘパリン、アスピリンまたはGP IIb−IIIa阻害剤などを含んでいてもよい。閉塞Oを放散させることに加え、抗凝固剤は、治療中にケージ26およびペレット34の内部および周囲で凝固するのを防ぐためにも使用することができる。この生物活性物質は、尚も更に、抗血小板薬を含んでいてよい。抗凝固剤、血栓溶解剤及び/又は抗血小板薬を相互に組み合わせて使用することもできる。
【0060】
ペレット34から溶出または分泌された生物活性物質は、図9における矢印で示されている方向に流れている血液によって下流に運ばれる。この物質は、血管形成または他の方法によりこの患者の下肢に適切な血流を取り戻すべく閉塞Oを放散させる。装置20は、この後、折り畳まれてシース52内における送達用の状態に戻されてよく、また、装置50は、本明細書のこれまでの箇所で開述されている如く、患者から散り外されてよい。
【0061】
閉塞Oの形、サイズ、重症度もしくは場所に依存して、または様々な他の要因のうちのいずれかに依存して、アンカー24は、代替的に、図9のI、IIおよびIIIの符号が付けられている場所で、またはそのような場所の近くで展開されてもよい。
【0062】
次に図10を参照すると、腫瘍組織を治療するために装置50を使用する方法が示されている。図10は患者の肝臓Lの主要な動脈を図示しており、それらの動脈は総肝動脈CHA、固有肝動脈HAP、右肝動脈RHA、胆嚢動脈CA(胆嚢に注いでいる)および左肝動脈LHAを含む。この肝臓Lは左肝動脈LHAの少し遠位側に腫瘍組織Tを含んでおり、そのため、治療が必要である。
【0063】
装置50は、経皮的に進められ、左肝動脈内で展開されている。適切な生物活性物質を含むペレット34を伴ったアンカー24は左肝動脈LHAの内壁と係合している。この動脈を通じて図10における矢印で示されている方向に流れている血液はペレット34を通過し、これにより、その経路にある生物活性物質と腫瘍組織Tとの接触がもたらされる。別の実施態様によれば、装置50は、全身性治療のため、脾臓動脈に位置付けられてよい。同様に、本装置は、腫瘍への動脈性の支えを供じているいずれかの血管に位置付けられてもよい(即ち、肺癌に対する気管支動脈または肺動脈、脳腫瘍に対する大脳動脈など)。上で開述されているように、生物活性物質は遺伝子治療もしくは薬物療法、またはそれら両方の療法を含むことができる。遺伝子治療の場合、その物質は、ゲノムレベルでの発現を停止させることにより、例えば新たな癌細胞の複製を停止させることにより、癌組織を死滅させることを目指している。薬物療法の場合には、その物質は、毒殺することにより腫瘍組織を死滅させることを目指している。
【0064】
次に図11Aから11Eまでを参照すると、本発明の装置20の代替的な実施態様を用いてアテローム性動脈硬化症を治療する方法が示されている。図11の実施態様においては、アンカー24’は、縦方向に延びるストラット26’および半径方向に延びるストラット28’を包含したケージを含んでいる。それらのそれぞれ近位端部および遠位端部が相互に溶接されているのではなく、これらの半径方向に延びるストラット28’は、生体吸収性材料でできたビーズ30’により接合されている。本明細書の以降の箇所で開述されているように、数週間から数ヶ月の期間の後にビーズ30’が溶解すると、半径方向に延びるストラット28’は再構成して血管Vの壁に寄り掛かる。これに加え、この実施態様では、ペレット34’およびフィラメント36’も生体吸収性であり、従って、これらの構成要素も、移植後、数週間から数ヶ月までの期間で溶解する。
【0065】
図11Aでは、送達用シース52’内において送達用の形状にあるアンカー24’およびペレット34’が、既知の経皮的なアクセス技術を用いて、患者の血管V内に、例えば下大静脈などに送達されている様子が示されている。この後、アンカー24’およびペレット34’は、送達用シース52’を動かさずに保持した状態でプッシャー54’を遠位側に進め、これにより、アンカー24’を管腔53’から押し出し、送達用シース52’の遠位端部を越えて進めることにより、展開された形状へ拡張される。代替的に、プッシャー54’を動かさずに保持し、その一方で送達用シース52’を近位側に引き込むことによっても、アンカー24’を管腔53’から解放することができる。
【0066】
図8Bに示されているように、アンカー24’は、ペレット34’が血管Vを通じて流れている血液と接触した状態のまま、展開された形状へ弾性的に拡張する。ストラット26’および28’はアンカー24’を展開された形状に優先的に方向付けており、これにより、アンカー24’は血管Vの内壁と係合し、ペレット34’を高速度の血流領域内に適切にしっかりと固定する。血液は、血管Vを通じて方向Dに流れている。
【0067】
アテローム性動脈硬化を阻止し、または逆転させることを意図した実施態様では、ペレット34’は、好適には、アポ−AI(Milano)タンパク質または同様なタンパク質を増殖させる物質を維持することができ、且つ、そのような物質に栄養を与えることができる培地を含んでいる。従って、ペレット34’は、そのペレットの周囲を流れている血液から栄養物質を抽出することができ、且つ、産生されたタンパク質を分泌して血液に戻すことができる材料を含んでいる。代替的に、ペレット34’は、望ましいタンパク質が含浸された生体吸収性材料を含んでいてもよく、これにより、ペレット34’が溶解する際に、数週間から数ヶ月の期間にわたってそのタンパク質を血流中に放出することができる。IVCは、細胞培養を支持する上での適切な酸素分圧を満たしていない可能性があり、従って、動脈ステーションを用いることが好適であろう(即ち、脾臓への動脈供給)。
【0068】
また、ペレット34’は、生物活性因子を溶出または分泌する一つもしくはそれ以上の他の生物活性物質も含んでいてよく、そのような生物活性因子は薬物、天然に存在するかもしくは合成のホルモンまたはタンパク質、遺伝子ベクターなどを含む。ペレット34’およびアンカー24’は、これらに加え、半径方向に延びるストラット28’の周囲または内部で凝固するのを防ぐため、抗凝固剤、例えばヘパリン、クマジンまたはアスピリンなどでコーティングされていてもよく、またはそのような抗凝固剤が含浸されていてもよい。
【0069】
図11Cに示されているように、血液はペレット34’を通じて流れ、生物活性物質と接触することとなり、これにより、下流の血管系がそれらの有益なタンパク質及び/又は薬物に晒されることとなる。文献で報じられているアポ−AI(Milano)タンパク質または同等物を用いて得られた限られた数のデータに基づいて判断すると、数週間から数ヶ月までの時間的経過にわたるペレット34’からのこのタンパク質の連続的な放出は、患者の血管系に構築されたアテローム性動脈硬化によるプラークを低減させ、これにより、心臓血管機能を回復し、発作もしくは限局性虚血、または心筋梗塞のリスクを低減させるものと期待される。
【0070】
数週間から数ヶ月の期間後、ペレット34’およびフィラメント36’は完全に溶解し、図11Dに示されている如く、原形を保っているアンカーから消え去る。このプロセスの間、縦方向に延びるストラット26’は、アンカー24’を血管内において適切に保持すべく内皮化することが期待されている。最後に、図11Eに示されている如く、更なる時間的期間の後、例えば更に数週間が経過した後、ビーズ30’が溶解する。この事象が起こると、半径方向に延びるストラット28’が再構成し、血管Vの壁にぴったりと接した状態になり、この後、その血管内皮がこれらのストラットも包み込んでしまう。その結果、図8に示されているアンカーの実施態様(このアンカーは、一時的な埋め込み期間の後、回収された)とは異なり、図11のアンカー24’は、ペレット34’が溶解した後に再構成するように組み立てられており、付加的な回収手順を必要としない。
【0071】
本発明の付加的な側面によれば、拡張可能なケージを使用することなく血管の中心にコアマトリックスを位置付けるため、比較的低めのプロフィールを有するアンカーを使用することができる。例えば、マイクロ診断チップまたはマイクロ診断デバイスを確保するためのセンタリングシステムとして、二つまたはそれ以上のワイヤーセグメントを含むアンカーを使用することができる。先行する実施態様と同様に、一つまたはそれ以上の小さな装置をアンカーに位置付けるため、ナノテクノロジーを利用することができる。マイクロ診断チップまたはマイクロ診断デバイスの適切な用途は、これらに限定するものではないが:(1)圧力を測定すること;(2)血液化学レベルを測定すること;(3)他の血液特性を測定すること;および(4)それらの結果を身体の外部に配置されたアンテナまたは装置に送信すること;を含む。
【0072】
図12Aおよび12Bを参照すると、本発明の原理により構築された装置100が示されている。装置100は、好適には、血管内で生物活性物質を血流に効率的に送達するように構成されている。このような生物活性物質は、その物質を血管腔の中心に近付けた領域に配置することにより、血液によって一層迅速に吸収される。当然のことながら、血液は、血管腔の中心に近付くほど、速い速度で流れている。装置100は、好適には、図12Aに示されている拡張されたプロフィールと図12Bに示されている縮小された送達用プロフィールとの間で折り畳み可能であり、且つ、拡張可能である。
【0073】
図示されている実施態様では、装置100は、アンカー104に付着された溶出用または分泌用材料102を含んでいる。アンカー104は一対の弾力性のある脚部106を含んでおり、これらの脚部は、材料102内に配置されたヒンジ108で会合している。アンカー102の回収をし易くするため、これらの脚部は内皮化を防止する薬物でコーティングされていてよく、またはそのような薬物が含浸されていてよい。半径方向に延びるかかり100は、弾力性のある脚部106から半径方向に拡がっており、一旦アンカーが血管内で展開された後、アンカーが移動するのを防いでいる。本装置を更にしっかりと固定し、例えばアンチグレードフローの真っただ中での移動を防ぐため、付加的なかかりまたはフックを付け加えてもよい。アンカー104は、ヒンジ108で曲げられたニッケル−チタンワイヤーから製作されてよい。操作に際して、アンカー104は、縮小された送達用のプロフィール(患者の血管系内へ経管的に挿入するため)から拡張されたプロフィール(この状態で、アンカー104は、患者の血管の内壁と係合する)へと弾性的に自己拡張される。
【0074】
幾つかの実施態様によれば、血管内で血流に晒されたときに、材料102は、血管の中心付近を高速度で流れる血液に対して大きな表面接触面積を提供することができるように拡張してよい。材料102は、生物活性因子、例えば遺伝子治療配列、薬物、タンパク質またはホルモンなどを溶出または分泌する生物活性物質を含んでいてよい。例えば、その材料は、天然に存在するかもしくは合成のタンパク質またはホルモンを増殖または分泌することができる生体適合性培地のマトリックス中に配置された、自己細胞またはドナー細胞の凝集体、例えば脾臓細胞、幹細胞、単離された膵島細胞または他の細胞などの凝集体を含んでいてよい。本発明のアンカーが患者の血管系内へ送達された後、血液はその材料と接触し、これは、細胞および下流の毛細血管床を上述の物質に晒すこととなり、これにより、局所療法または全身療法が施される。
【0075】
別の実施態様によれば、材料102は、患者の血流から抽出された栄養物質を用いて自己またはドナーの膵臓細胞または膵島細胞に栄養を与え、且つ、それらの細胞を維持することができる培地を含んでいてよく、また、装置100は、膵臓または肝静脈に隣接した動脈に埋め込まれてよい。アテローム性動脈硬化症を治療する場合、材料102は、アポリポタンパク質A−I(Milano)または他のHDL様類似体を増殖および分泌することができる培地を含んでいてよい。代替的に、材料102は、薬物、遺伝子ベクター、合成のホルモンもしくはタンパク質、または他の生物活性因子が搭載された生体吸収性材料を含んでいてよく、この生体吸収性材料は、溶解したときに、前述の生物活性因子を血流中に放出する。更なる一つの代替的な実施態様として、生物活性因子は上述の材料から溶出されてよく、また、この装置は、後に、患者の血管系から回収されてよい。
【0076】
先行する実施態様と同様に、装置100は、凝固または血栓の形成を防ぐため、抗凝固剤、例えばヘパリン、クマジン、直接的なトロンビン阻害剤、糖タンパク質IIb IIIa阻害剤またはアスピリンなどが含浸されていてよく、またはそのような抗凝固剤でコーティングされていてよい。代替的に、装置100は、標的細胞の死滅または望ましくない下流の組織または罹患した下流の組織を殺すための血管のクロッティングオフを促進する薬物でコーティングされていてよく、またはそのような薬物が含浸されていてよい。
【0077】
薬物を送達する目的で使用する場合、材料102から送達される生物活性因子は、治療用の毒素、例えば化学療法用の薬物などを含んでいてよい。有利なことに、持続放出により血管系内に直接的に行われる毒性薬物の送達(例えば、腫瘍を供じている動脈区域内への送達)は、通常の方法よりも一層集約された治療効果をもたらす。他の実施態様によれば、生物活性因子は抗生物質を含んでいてよく、この場合においては、抗生物質が直接的に膿瘍または感染領域に有益に送達される。更なる実施態様によれば、装置100は、望ましい生物活性因子の長期間にわたる全身性の送達を提供するため、患者の血管系の中心静脈に配置される。また、装置100は、中心静脈内で展開させ、その後、もっと後になって取り除かれてもよく、こうすることにより、長期間にわたるIV使用から生じる感染のリスクを排除しながら、患者に全身性の治療を施すことができる。
【0078】
図13を参照すると、装置100’は、アンカー104’に取り付けられた溶出用または分泌用材料102’を含んでいる。アンカー104’は、遠位側の端部に配置されたかかり110’を有する三つの弾力性のある脚部106’を含んでいる。幾つかの実施態様によれば、装置100’は、アンカーの付加的な安定性および血管壁との付加的な係合をもたらすため、弾力性のある付加的な脚部を含んでいる。当業者により理解される如く、装置100’は、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる個数の付加的な弾力性脚部を含んでいてよい。
【0079】
図14Aを参照すると、患者の血管V内における装置100が描かれており、この図において、血液は矢印Aで指示されている方向に流れている。血管V内における材料102の中心的な配置は、有利なことに、生物活性物質を比較的高い速度の血流に晒すことになる。かかり110は弾力性脚部106から血管壁内へ延びており、これにより、本装置を、ある選定された場所において、血管V内に固定している。
【0080】
図14B〜14Fを参照し、血管から装置100を回収する方法を次に説明する。先ず図14Bを参照し、最初に、ガイドワイヤー116の遠位側先端を装置100の遠位側に位置付けるようにして、ガイドワイヤー116が血管V内へ経管的に進められる。次に図14Cを参照し、カテーテル118の遠位側先端を装置100の遠位側に位置付けるようにして、管腔を有するカテーテル118がガイドワイヤー上を進められる。
【0081】
次に図14Dを参照し、ガイドワイヤー116が引き込まれ、カテーテルの遠位端部から回収用エレメントが展開される。このとき、カテーテル118を引き込んでよく、または部分的に引き込んでもよい。図示されている実施態様では、この回収用エレメントは、ある長さのワイヤー122の遠位端部に取り付けられた弾力性のあるループ120を含んでいる。幾つかの実施態様においては、弾力性ループ120は、カテーテルの管腔の境界から出たときに、縮小された送達用のプロフィールから拡張されたプロフィールへ自動的に拡張する。
【0082】
次に図14Eを参照し、弾力性ループ120が近位側に引き込まれ、これにより、装置100が捕捉される。より詳細には、弾力性ループ120は、このループがかかり110に引っ掛かるまで、材料102および脚部106上を引き込まれる。次に図14Fを参照し、弾力性ループ120の更なる引き込みにより、都合よく弾力性脚部が血管Vの中心に向けて半径方向内向きに折り畳まれる状態が引き起こされ、これにより、血管壁からかかりが外される。この後、折り畳まれた装置が、例えばカテーテルの管腔を通じて回収される。当業者により認識される如く、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの他の回収用エレメントを使用することができる。
【0083】
図15を参照しながら説明すると、本発明の幾つかの実施態様によれば、材料102の周囲に外側層128が形成される。外側層128は、生物学的物質がその表面に付着するのを防ぐ薬物でコーティングされた多孔質材料を含んでいてよい。次に図16を参照しながら説明すると、他の実施態様によれば、一つもしくはそれ以上の小型のデバイスまたはセンサー130を材料102に埋め込むため、ナノテクノロジーが利用される。センサー130は、血流中の温度、圧力および他の生理学的及び/又は生物化学的特性を測定し、その後、それらの取得した情報を患者の身体の外部にある受信装置へ送信するために使用されてよい。
【0084】
図17Aおよび17Bを参照し、送達用装置100のための例証的な送達システム150を次に説明する。図17Aでは、プッシャー154および装置100は、シース152の管腔153内に共軸的に配置されている。装置100は、プッシャー154に接続されておらず、患者の血管内に半恒久的に埋め込むように適合されている。装置100は、プッシャー154を遠位側に進め、アンカーを管腔53から押し出すことにより拡張される。代替的に、プッシャー154を動かさずに保持した状態でシース152を近位側に引き込み、こうすることによってアンカーをシースから押し出すこともできる。
【0085】
図17Bを参照しながら説明すると、装置100は、シースから押し出されると、展開された形状へ弾性的に拡張する。装置100および材料102は、予め定められた期間の間、血管内に埋め込まれ、その期間の後、回収用具156を用いて本装置を患者の血管系から取り出すことができる。回収用具156は細長い部材158を含んでおり、この部材はフック159の遠位端部で終結している。装置100を回収する場合には、プッシャー154が管腔153から取り除かれ、回収用具156で置き換えられる。この後、シース152の遠位端部を越えてフック159を進め、このフックを用いて、例えばかかりのうちの一つを弾力性脚部に引っ掛けることにより、本装置を捕捉または捕獲することができる。引き込むことにより、装置100は折り畳まれ、縮小された送達用のプロフィールに戻る。代替的に、弾力性のあるループ、例えば図14に関して説明されているようなループを回収用具として使用することもできる。
【0086】
本発明の特定の実施態様をこれまでに詳細に説明してきたが、この説明は単に例証することを目的としたものであることが理解されよう。本発明の特定の特徴は、幾つかの図面では示されているが、他の図面では示されていない;これは、単に便宜上のことであり、あらゆる特徴を本発明による別の特徴と組み合わせることができる。更に、この開示に照らし、当業者にとっては種々の変形態様が明らかであろう。同様に、当業者にとっては、様々の代替的な溶出用材料および生物活性物質が明らかであろう。これらの変形態様および他の変形態様は、添付の特許請求項の範囲内に収まることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
本発明の上述の目的および利点、ならびに他の目的および利点は、添付図面と組み合わせて行われる以下の詳細な説明を検討することにより明白になるであろう。これらの添付図面では、同様な参照文字は全体を通じて同様な部分を表している。
【図1】図1Aおよび図1Bは、従来技術による溶出用ステントの図であって、それぞれ、患者の血管内における等角図および図1Aの線A−Aに沿った断面図で示されている。
【図2】図2は、患者の血管の断面を通じる速度プロフィールを示すグラフである。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明により構築された装置の図であって、それぞれ、患者の血管内において拡張された展開形状における側面図および線B−Bに沿った断面図で示されている。
【図4】図4は、拡張された展開形状における本発明のアンカーの代替的な実施態様の側面図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、図3の装置と共に使用されている本発明の送達および回収装置の図であって、それぞれ、折り畳まれた送達用形状における側断面図および拡張された展開形状における側面図で示されている。
【図6】図6A〜図6Cは、図5の装置の代替的な実施態様の図であって、それぞれ、拡張された展開形状における側面図、図6Aの線C−Cに沿った断面図および折り畳まれた送達用形状における側断面図で示されている。
【図7】図7A〜図7Cは、別の代替的な実施態様の図であって、それぞれ、拡張された展開形状における側面図、図7Aの線D−Dに沿った断面図および折り畳まれた送達用形状における側断面図で示されている。
【図8】図8A〜図8Dは、患者の血管系内における図5の装置の側断面図であって、使用方法を示している。
【図9】図9は、患者の閉塞した大腿浅動脈の近位側に位置する患者の虚血下肢内における図5の装置の側断面図であって、閉塞を放散させるための使用方法を示している。
【図10】図10は、患者の肝臓動脈内における図5の装置の側断面図であって、患者の肝臓内における腫瘍を治療するための使用方法を示している。
【図11】図11A〜図11Eは、それぞれ、患者の下大静脈または他の静脈構造において使用するための本発明の再構成可能な実施態様の側面図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは、患者の血流中において生物活性物質を送達するための装置の側面図であって、ここで、図12Aは拡張されたプロフィール形状を描いており、また、図12Bは小さくされた送達用プロフィールを描いている。
【図13】図13は、患者の血流中において生物活性物質を送達するための代替的な装置の側面図である。
【図14】図14A〜図14Fは、患者の血管から図12の装置を回収する方法を示す側断面図である。
【図15】図15は、患者の血流中において生物活性物質を送達するための更なる代替的な装置の側面図である。
【図16】図16は、患者の血流中において生物活性物質を送達するための尚も別の装置の側面図である。
【図17】図17Aおよび図17Bは、図12の装置と共に使用している本発明の送達および回収装置の図であって、それぞれ、折り畳まれた送達用の形状における側断面図および拡張された展開形状における側面図で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に生物活性物質を送達するための装置であって、当該装置が:
送達用シース内における配置に適合されている送達用の形状から該血管の内壁との係合に適合されている展開された形状へ拡張可能なアンカー;および
生物活性物質を含み、上記アンカーを通じて流れる血液中に生物活性因子を溶出または分泌するように適合されている材料;
を含む、生物活性物質の送達装置。
【請求項2】
更に、近位端部および遠位端部を有し、且つ、前記近位端部および遠位端部の間に延びる管腔を有する送達用シースを含み、上記アンカーが、該送達用の形状において前記管腔内に配置するように適合されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる前進装置を含み、該前進装置が、上記アンカーを該送達用の形状から該展開された形状へ拡張させるように構成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる回収用具を含み、該回収用具が、上記アンカーを該展開された形状から該送達用の形状へ折り畳むように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
上記生物活性因子が、遺伝子治療ベクター、遺伝子治療配列、薬物、天然に存在するホルモン、天然に存在するタンパク質、合成タンパク質および合成ホルモンからなる群より選択される、請求項1記載の装置。
【請求項6】
上記生物活性物質が、自己幹細胞、ドナー幹細胞、自己脾臓細胞、ドナー脾臓細胞、尿細管細胞、自己膵島細胞およびドナー膵島細胞からなる群より選択される多数の細胞を含有した培地を含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
上記薬物が、血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板薬、抗生物質および化学療法用の薬物からなる群より選択される、請求項5記載の装置。
【請求項8】
上記血栓溶解剤が、組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼからなる群より選択される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
上記抗凝固剤が、クマジン、ヘパリン、アスピリン、直接的なトロンビン阻害剤およびGP IIb−IIIa阻害剤からなる群より選択される、請求項7記載の装置。
【請求項10】
上記遺伝子治療ベクターは、該ベクターが接触することとなる細胞の一部のゲノムに組み込まれるように適合されている、請求項6記載の装置。
【請求項11】
上記前進装置が、ガイドワイヤー、ガイドチューブおよびプッシャーからなる群より選択される、請求項3記載の装置。
【請求項12】
上記前進装置が前記アンカーの近位端部に結合されている、請求項3記載の装置。
【請求項13】
上記アンカーが、折り畳まれて前記送達用の形状へ戻ることができる、請求項12記載の装置。
【請求項14】
上記アンカーが弾性的に拡張可能なケージを含む、請求項1記載の装置。
【請求項15】
上記アンカーが一対の拡張可能な弾力性のある脚部を含む、請求項1記載の装置。
【請求項16】
上記アンカーが三つまたはそれ以上の拡張可能な弾力性のある脚部を含む、請求項1記載の装置。
【請求項17】
上記アンカーが、生体吸収性ビーズにより近位端部および遠位端部で接合された複数のストラットを含み、前記生体吸収性ビーズが、該複数のストラットの再構成を可能にすべく、予め定められた時間の後に溶解する材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項18】
上記材料が、スポンジ状材料、多数回曲がることができるように適合された柔軟な細長い部材、および拡張可能なペレットからなる群より選択される、請求項1記載の装置。
【請求項19】
上記材料が伸縮自在なバンドによって前記アンカーに結合されている、請求項1記載の装置。
【請求項20】
外側層が上記材料を取り巻いている、請求項1記載の装置。
【請求項21】
上記外側層が多孔質材料を含み、前記多孔質材料は、生物学的物質が該材料の表面に付着するのを防止するため、薬物でコーティングされている、請求項20記載の装置。
【請求項22】
一つまたはそれ以上のセンサーが上記材料内に埋め込まれている、請求項1記載の装置。
【請求項23】
上記センサーが、該血流中における生理学的および生物化学的特性を測定し、その後、前記生理学的および生物化学的特性に関する情報を受信装置へ送信するために使用される、請求項22記載の装置。
【請求項24】
アテローム性動脈硬化症を治療するための装置であって、当該装置が:
送達用シース内における配置に適合されている送達用の形状から該血管の内壁との係合に適合されている展開された形状へ拡張可能なアンカー;および
上記アンカー内に配置され、アポ−AI(Milano)タンパク質または同様な物質を溶出または分泌するように適合されている材料を含むマトリックス;
を含む、装置。
【請求項25】
更に、近位端部および遠位端部を有し、且つ、前記近位端部および遠位端部の間に延びる管腔を有する送達用シースを含み、上記アンカーが、該送達用の形状において前記管腔内に配置するように適合されている、請求項24記載の装置。
【請求項26】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる前進装置を含み、該前進装置が、上記アンカーを該送達用の形状から該展開された形状へ拡張させるように構成されている、請求項24記載の装置。
【請求項27】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる回収用具を含み、該回収用具が、上記アンカーを該展開された形状から該送達用の形状へ折り畳むように構成されている、請求項24記載の装置。
【請求項28】
上記マトリックスが、アポ−AI(Milano)タンパク質または同様な物質を増殖させるための培地を含む、請求項24記載の装置。
【請求項29】
上記マトリックスが生体吸収性材料を含み、前記生体吸収性材料が、該生体吸収性材料の溶解中に、アポ−AI(Milano)タンパク質または同様な物質を溶出または分泌する、請求項24記載の装置。
【請求項30】
上記アンカーが血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板薬および抗生物質からなる群より選択される薬物でコーティングされているか、または上記アンカーに前記薬物が含浸されている、請求項24記載の装置。
【請求項31】
上記前進装置が前記アンカーの近位端部に結合されている、請求項26記載の装置。
【請求項32】
上記アンカーが、折り畳まれて前記送達用の形状へ戻ることができる、請求項31記載の装置。
【請求項33】
上記アンカーが弾性的に拡張可能なケージを含む、請求項24記載の装置。
【請求項34】
上記アンカーが一対の拡張可能な弾力性のある脚部を含む、請求項24記載の装置。
【請求項35】
上記各弾力性のある脚部が、該血管との改善された係合をもたらすため、一つまたはそれ以上のかかりを含む、請求項34記載の装置。
【請求項36】
上記アンカーが三つまたはそれ以上の拡張可能な弾力性のある脚部を含み、前記脚部がヒンジで接続されている、請求項24記載の装置。
【請求項37】
上記各弾力性のある脚部が、該血管との改善された係合をもたらすため、一つまたはそれ以上のかかりを含む、請求項36記載の装置。
【請求項38】
上記アンカーが、生体吸収性ビーズにより近位端部および遠位端部で接合された複数のストラットを含み、前記生体吸収性ビーズが、該複数のストラットの再構成を可能にすべく、予め定められた時間の後に溶解する材料を含む、請求項24記載の装置。
【請求項39】
一つまたはそれ以上のセンサーが上記材料内に埋め込まれている、請求項24記載の装置。
【請求項40】
上記センサーが、該血流中における生理学的および生物化学的特性を測定し、その後、前記生理学的および生物化学的特性に関する情報を受信装置へ送信するために使用される、請求項30記載の装置。
【請求項41】
糖尿病を治療するための装置であって、当該装置が:
送達用シース内における配置に適合されている送達用の形状から該血管の内壁との係合に適合されている展開された形状へ拡張可能なアンカー;および
上記アンカー内に配置され、糖尿病を緩和するタンパク質またはホルモンを溶出または分泌するように適合されている材料を含むマトリックス;
を含む、装置。
【請求項42】
上記マトリックスが、多数の細胞および、前記細胞に栄養を与え、且つ、該細胞を維持するための培地を含む、請求項41記載の装置。
【請求項43】
上記多数の細胞が、糖尿病の原因となる自己免疫反応を阻害する複合タンパク質を分泌する自己またはドナーの脾臓細胞を含む、請求項42記載の装置。
【請求項44】
上記マトリックスが、糖尿病の原因となる自己免疫反応を阻害する複合タンパク質を溶出または分泌する生体吸収性材料を含む、請求項41記載の装置。
【請求項45】
上記マトリックスが、インスリンを分泌する多数の自己またはドナーの膵島細胞および、前記多数の細胞に栄養を与え、且つ、該細胞を維持するための培地を含む、請求項42記載の装置。
【請求項46】
上記マトリックスが、尿細管細胞の代わりをして血液を濾過することができる生体適合性培地を含む、請求項41記載の装置。
【請求項47】
更に、近位端部および遠位端部を有し、且つ、前記近位端部および遠位端部の間に延びる管腔を有する送達用シースを含み、上記アンカーが、該送達用の形状において前記管腔内に配置するように適合されている、請求項41記載の装置。
【請求項48】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる前進装置を含み、該前進装置が、上記アンカーを該送達用の形状から該展開された形状へ拡張させるように構成されている、請求項47記載の装置。
【請求項49】
更に、上記送達用シースの管腔内に配置され、該送達用シースの近位端部の近位側に延びる回収用具を含み、該回収用具が、上記アンカーを該展開された形状から該送達用の形状へ折り畳むように構成されている、請求項41記載の装置。
【請求項50】
上記アンカーが血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板薬および抗生物質からなる群より選択される薬物でコーティングされているか、または上記アンカーに前記薬物が含浸されている、請求項41記載の装置。
【請求項51】
上記前進装置が前記アンカーの近位端部に結合されており、該アンカーが、折り畳まれて前記送達用の形状へ戻ることができる、請求項48記載の装置。
【請求項52】
上記アンカーが弾性的に拡張可能なケージを含む、請求項41記載の装置。
【請求項53】
上記アンカーが一対の拡張可能な弾力性のある脚部を含む、請求項41記載の装置。
【請求項54】
上記アンカーが三つまたはそれ以上の拡張可能な弾力性のある脚部を含む、請求項41記載の装置。
【請求項55】
上記アンカーが、生体吸収性ビーズにより近位端部および遠位端部で接合された複数のストラットを含み、前記生体吸収性ビーズが、該複数のストラットの再構成を可能にすべく、予め定められた時間の後に溶解する材料を含む、請求項41記載の装置。
【請求項56】
一つまたはそれ以上のセンサーが上記マトリックス内に埋め込まれている、請求項41記載の装置。
【請求項57】
上記センサーが、該血流中における生理学的および生物化学的特性を測定し、その後、前記生理学的および生物化学的特性に関する情報を受信装置へ送信するために使用される、請求項56記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【公表番号】特表2008−502446(P2008−502446A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527641(P2007−527641)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/019934
【国際公開番号】WO2005/123044
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506408748)パラゴン インテレクチュアル プロパティーズ, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】