説明

疾患管理システム

【課題】 患者の病態の変化に対応できるように、フェーズパスを容易に変更することができる疾患管理システムを提供する。
【解決手段】 疾患管理システムは、入力手段1と、検査結果に基づき1又は複数のフェーズを特定し当該特定した各フェーズに対応する患者状態に依存する紐付け項目からなるアウトカム、アセスメント、及びタスクを特定するフェーズ設定手段6と、検査結果に基づき特定される設定病日によって各フェーズを分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定するサブフェーズ設定手段8と、検査結果に基づき特定される患者状態に依存しない単独項目及びサブフェーズ設定手段8から出力されるサブフェーズに基づきフェーズパスを作成するフェーズパス作成手段10と、フェーズパスを表示する表示手段11と、作成したフェーズパスの内容に基づく実行結果を入力手段1から入力し、紐付け項目又は単独項目の変更の要否を判断するフェーズパス編集手段12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者が受ける一連の治療目標(アウトカム)、判断基準(アセスメント)及び治療行為(タスク)の情報を一覧表示する疾患管理システムに関するものであり、特に、状態軸(フェーズ)、作業項目軸(アウトカム−アセスメント−タスク)及び時間軸(病日)の3軸により構成して表示する疾患管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアウトカム指向型電子医療記録システムにおいては、疾患の名称及び術後の経過日毎に作成されるアウトカムと、各アウトカム毎に割り当てられるアウトカムコードと、アウトカムを選ぶときに検索項目となる分類と、前記経過日におけるアウトカム達成度合いの評価の基準となる指標であるアセスメントと、各アセスメント毎に割り当てられるアセスメントコードと、アセスメントの適正範囲と、各アウトカム達成すると実行可能になるタスクと、アウトカムが使用されているパスのコードである使用パスコードとが電子項目として記述されているアセスメントシートデータを一疾患毎に全経過日分集合したアセスメントクラスデータをさらに各疾患について集合して構成したアセスメントファイルをデータベースとして備えている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−86506号公報(第4−6頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のアウトカム指向型電子医療記録システムは、時間軸(術後何日目)における、アウトカムとアセスメントとタスクとに関連性を持たせて、日めくり式パス型のテンプレートを作成するものであり、毎朝、アウトカムを設定し、日めくり式パス型のテンプレートを作成しなければならない煩雑さがあるという問題点があった。
【0004】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、患者の診断当初に治療計画を立てフェーズパスを設定した場合であっても、患者の病態の変化に対応できるように、フェーズパスを容易に変更することができる疾患管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る疾患管理システムにおいては、患者に対する治療目標、判断基準、及び治療行為に関連性を持たせたフェーズパスを設定し、当該設定されたフェーズパスを表示する疾患管理システムであって、患者における検査結果を入力する入力手段と、前記入力した検査結果に基づき、1又は複数のフェーズを特定し、当該特定した各フェーズに対応する、患者状態に依存する紐付け項目からなるアウトカム、アセスメント、及びタスクを特定するフェーズ設定手段と、前記特定した各フェーズに対応する標準日数によって前記各フェーズを分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定するサブフェーズ設定手段と、前記入力した検査結果に基づき特定される患者状態に依存しない単独項目及び前記サブフェーズ設定手段から出力されるサブフェーズに基づき、フェーズパスを作成するフェーズパス作成手段と、前記作成したフェーズパスを表示する表示手段と、を備えるものである。
【0006】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、作成したフェーズパスの内容に基づく実行結果を前記入力手段から入力し、前記紐付け項目又は単独項目の変更の要否を判断するフェーズパス編集手段を備え、前記フェーズパス編集手段は、判断結果によって、前記フェーズの変更の命令を前記フェーズ設定手段に出力、及び/又は前記単独項目の日付設定の命令を前記フェーズパス作成手段に出力するものである。
【0007】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、入力した検査結果に基づき、患者の疾患を判断する適用基準データを格納した適用基準ファイルと、患者の疾患によって使用できないフェーズを除外する除外基準データを格納した除外基準ファイルと、治療による患者の最終状態を示すゴール設定データを格納したゴール設定ファイルとを備え、前記フェーズ設定手段は、前記各データに基づき前記フェーズを特定するものである。
【0008】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、アウトカムデータを格納したアウトカムデータベースと、アセスメントデータを格納したアセスメントデータベースと、タスクデータを格納したタスクデータベースとを備え、前記フェーズ設定手段は、前記特定したフェーズに対応して、前記各データを紐付けて読み出すものである。
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、単独項目は、病状説明、栄養指導、運動指導、自己測定記載、内服薬確認、専門医受診、CT検査又はMRI検査である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る疾患管理システムにおいては、患者に対する治療目標、判断基準、及び治療行為に関連性を持たせたフェーズパスを設定し、当該設定されたフェーズパスを表示する疾患管理システムであって、患者における検査結果を入力する入力手段と、前記入力した検査結果に基づき、1又は複数のフェーズを特定し、当該特定した各フェーズに対応する、患者状態に依存する紐付け項目からなるアウトカム、アセスメント、及びタスクを特定するフェーズ設定手段と、前記特定した各フェーズに対応する標準日数によって前記各フェーズを分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定するサブフェーズ設定手段と、前記入力した検査結果に基づき特定される患者状態に依存しない単独項目及び前記サブフェーズ設定手段から出力されるサブフェーズに基づき、フェーズパスを作成するフェーズパス作成手段と、前記作成したフェーズパスを表示する表示手段と、を備えることにより、状態軸(フェーズ)、作業項目軸(アウトカム−アセスメント−タスク)及び時間軸(病日)の3軸により構成するフェーズパスで、患者に対する治療目標、判断基準、及び治療行為を一覧表示することができる。また、時間軸を取ることで医療行為の順序を容易に把握することができるうえに、時間にバラつきの多い疾患に関しては状態軸を取ることでクリティカルパスの一致率を向上させることができ、急性疾患及び慢性疾患の双方に対応したフェーズパスを得ることができる。
【0010】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、作成したフェーズパスの内容に基づく実行結果を前記入力手段から入力し、前記紐付け項目又は単独項目の変更の要否を判断するフェーズパス編集手段を備え、前記フェーズパス編集手段は、判断結果によって、前記フェーズの変更の命令を前記フェーズ設定手段に出力、及び/又は前記単独項目の日付設定の命令を前記フェーズパス作成手段に出力することにより、患者の病態の変化によって、紐付け項目又は単独項目をそれぞれ独立して変更することができる。また、紐付け項目の変更に伴って設定病日を追加又は削除した場合であっても、単独項目の実施日が設定病日の追加又は削除に伴ってスライドすることがなく、所望の実施日とすることができる。
【0011】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、入力した検査結果に基づき、患者の疾患を判断する適用基準データを格納した適用基準ファイルと、患者の疾患によって使用できないフェーズを除外する除外基準データを格納した除外基準ファイルと、治療による患者の最終状態を示すゴール設定データを格納したゴール設定ファイルとを備え、前記フェーズ設定手段は、前記各データに基づき前記フェーズを特定することにより、医師が判断することなく、フェーズ設定手段によって、患者の疾患を判断し、患者の疾患によって使用できないフェーズを除外し、治療による患者の最終状態を示すことができる。
【0012】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、アウトカムデータを格納したアウトカムデータベースと、アセスメントデータを格納したアセスメントデータベースと、タスクデータを格納したタスクデータベースとを備え、前記フェーズ設定手段は、前記特定したフェーズに対応して、前記各データを紐付けて読み出すことにより、フェーズが特定されれば、そのフェーズに紐付いてアウトカム、アセスメント及びタスクを読み出すことができる。
【0013】
また、この発明に係る疾患管理システムにおいては、必要に応じて、単独項目は、病状説明、栄養指導、運動指導、自己測定記載、内服薬確認、専門医受診、CT検査又はMRI検査であることにより、単独項目を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
図1はこの発明を実施するための第1の実施形態における疾患管理システムの全体構成を示すブロック図、図2は標準日数が設定されているフェーズの繰り返しを説明するための説明図、図3は実際に使用されるサブフェーズの設定及び編集画面の一例を示す模式図、図4はフェーズテンプレートの一例を示した説明図、図5は実際に使用されるフェーズパスの一例を示す模式図、図6はフェーズパスの作成方法を示すフローチャート、図7はこの発明を実施するための第1の実施形態における疾患管理システムに入力する入力要素を説明するための説明図、図8はフェーズパスの編集方法を示すフローチャート、図9は紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例1を示した説明図、図10は紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例2を示した説明図、図11は紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例3を示した説明図、図12は紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための説明図である。
【0015】
図1において、入力手段1は、患者に対する生化学検査、教育理解度チェック、生活習慣チェック、診察などによる検査結果を入力するための手段であり、例えば、キーボードやマウスなどである。
疾患ファイル2は、後述する適用基準DB2a、除外基準DB2b及びゴール設定DB2cのデータベースからなり、患者に応じた1又は複数のフェーズを特定するための基準データを格納したものである。
【0016】
適用基準DB2aは患者の疾患を判断する適用基準データを格納したデータベースであり、適用基準の一例として、「JCS(Japan Coma Scale:日本式昏睡尺度)が1以上である。」が挙げられる。また、除外基準DB2bは患者の疾患(合併症を持つなど)によって使用できないフェーズを除外する除外基準データを格納したデータベースであり、除外基準の一例として、「脳梗塞の場合に、心原性閉塞症である。」が挙げられる。また、ゴール設定DB2cは治療が終了した際の患者の最終状態を示すゴール設定データを格納したデータベースであり、ゴール設定の一例として、「歩行ができる。」が挙げられる。
【0017】
PIDファイル3は、後述するアウトカムDB3a、アセスメントDB3b及びタスクDB3cのデータベースからなり、フェーズに対応するアウトカムデータ、アセスメントデータ及びタスクデータを格納したものである。ここで、PIDとは、「Point ID」の略称であり、治療目標、治療行為及び判断基準の各項目をユニーク化するためのコードを示す。PIDファイルの一例として、「PIDNo.002AC0009」であれば、「術部異常無し、胆嚢摘出術、判断基準、合併症」を意味する。
【0018】
アウトカムDB3aはアウトカムデータを格納したデータベースであり、治療目標の例として、「術後合併症がない。」又は「患者状態が安定している。」などが挙げられる。また、アセスメントDB3bはアセスメントデータを格納したデータベースであり、判断基準の例として、「手術後の術部異常がない。」、「腹鳴・悪心・嘔吐などがない。」又は「体温が38度以下である。」などが挙げられる。また、タスクDB3cはタスクデータを格納したデータベースであり、治療行為の例として、「腹部状態観察」、「創部・ガーゼの性状観察」、「ペンローゼドレーン抜去」、「呼吸・循環状態が安定」、「アナムネーゼ聴取」又は「VS3検」などが挙げられる。
【0019】
疾患DB4は疾患データを格納したデータベースであり、疾患の例として、「脳梗塞」又は「胆嚢摘出」などが挙げられる。また、フェーズDB5はフェーズデータを格納したデータベースであり、治療段階の例として、「手術準備」、「手術」又は「手術後」などが挙げられる。
【0020】
フェーズ設定手段6は、入力手段1から入力した検査結果を、適用基準DB2aから出力される適用基準データと比較することで、患者の疾患を判断し、疾患DB4から患者に対応する疾患データを読み出す。また、フェーズ設定手段6は、疾患DB4から読み出された疾患データに対応する1又は複数のフェーズデータをフェーズDB5から読み出す。
【0021】
また、フェーズ設定手段6は、入力手段1から入力した検査結果を、除外基準DB2bから出力される除外基準データと比較することで、患者に適用できない1又は複数のフェーズデータを特定し、フェーズDB5から読み出したフェーズデータから適用できないフェーズデータを除外する。また、フェーズ設定手段6は、入力手段1から入力した検査結果に基づいて、ゴール設定DB2cからゴール設定データを読み出す。
【0022】
さらに、フェーズ設定手段6は、患者に適用できる特定した1又は複数のフェーズデータに対応する1又は複数のアウトカムデータをアウトカムDB3aから読み出し、この各アウトカムデータに対応する1又は複数のアセスメントデータをアセスメントDB3bから読み出し、この各アセスメントデータに対応する1又は複数のタスクデータをタスクDB3cから読み出す。
【0023】
すなわち、フェーズ設定手段6は、患者の検査結果に対応する、疾患、フェーズ、アウトカム、アセスメント及びタスクを関連付けたツリー構造(疾患−フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)として、各データベースからそれぞれのデータを読み出す。ここで、フェーズに紐付いているアウトカム、アセスメント及びタスクは、治療目標(アウトカム)、判断基準(アセスメント)及び治療行為(タスク)のうち、患者状態(合併症の進行状況など)に依存し、治療工程の終了日に影響を及ぼす項目(以下、紐付け項目と称す)である。なお、「入浴」や「シャワー」は患者状態にほぼ依存しており、紐付け項目としている。また、ベッド角度(「30°」、「60°」、「90°」、「歩行」)、清潔(「清拭」、「シャワー」)、排泄(「ベッド上」、「ポータブル」、「トイレ」)などのタスクも紐付け項目としている。
【0024】
設定病日DB7は、フェーズ以下を関連付けたツリー構造(フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)の繰り返しを演算するための標準日数データを格納したデータベースであり、標準日数の例として、「1日間」又は「2日間」などが挙げられる。
【0025】
サブフェーズ設定手段8は、フェーズ設定手段6によって特定した各フェーズデータに対応する、設定病日DB7から読み出した標準日数データによって、フェーズ設定手段6で設定されたフェーズ以下を関連付けたツリー構造(フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)をフェーズ毎に分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定する。なお、分岐させた元のフェーズにおける各サブフェーズのツリー構造(フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)のデータは、元のフェーズのツリー構造(フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)のデータと同一(繰り返し)とする。
【0026】
図2は標準日数が設定されているフェーズの繰り返しの一例を示している。図2に示すように、フェーズ1は標準日数が2日間と設定されており、この標準日数分だけフェーズを繰り返すと、状態軸(フェーズ)は時間軸(病日)に変換される。同様に、フェーズ4は標準日数が2日間と設定されているので、フェーズ4を2日間繰り返すことになる。例えば、2月5日に入院したとすると、完成したフェーズパスにおいて、2月5日はフェーズ1の「アウトカム1−アセスメント1−タスク1」が予定表に入り、同じく、2月6日もフェーズ1の「アウトカム1−アセスメント1−タスク1」が予定表に入る。また、2月7日はフェーズ2の「アウトカム2−アセスメント2−タスク2」が予定表に入り、2月8日はフェーズ3の「アウトカム3−アセスメント3−タスク3」が予定表に入り、というように、各フェーズが標準日数分だけ繰り返し、次のフェーズに変更されることになる。なお、この演算は、入力値が変更される度に行なわれるために、常に今後の予定を時間軸で確認することが可能となる。また、図3に示すように、後述する表示手段11に表示された設定画面で、各サブフェーズの標準日数を設定することが可能である。
【0027】
これらにより、フェーズ設定手段6及びサブフェーズ設定手段8は、患者の検査結果に対応する、疾患、フェーズ、サブフェーズ、アウトカム、アセスメント及びタスクを関連付けたツリー構造(疾患−フェーズ−サブフェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク)として、各データベースからそれぞれのデータを読み出し、フェーズテンプレートを作成することとなる。図4はフェーズテンプレートの一例を示している。
【0028】
単独項目DB9は、患者状態の変化(良化、悪化)に依存しない、すなわち、患者状態に関係なく病院の運営による物理的制約(例えば、検査室の予約状況、栄養士の出勤状況)に依存する単独項目データを格納したデータベースであり、単独項目の例として、「病状説明」、「栄養指導」、「運動指導」、「自己測定記載」、「内服薬確認」、「専門医受診」、「CT検査」又は「MRI検査」などが挙げられる。なお、「CT検査」は検査の順番待ちのために患者の病状とは無関係に実施日が変更されるため、単独項目としている。すなわち、単独項目とするものは、教育、説明及び一部の特殊な検査などである。
【0029】
なお、急性疾患の患者に対する急性期パスでは、「CT検査」及び「MRI検査」はほぼ単独項目であり、看護士が行なう「注射」、「点滴」及び「ベッド角度の変更」はほぼ紐付け項目である。また、慢性疾患(例えば、糖尿病)の患者に対する慢性期パスでは、「内服薬確認」、「運動指導」、「食事指導」及び「自己測定記載」は、単独項目であるが、「専門医受診」は単独項目と紐付け項目の両方が存在する。すなわち、初回に実施する項目や定期的に実施する項目(例えば、糖尿病で合併症が無いのであれば、「眼科年1回定期受診」)は単独項目であり、患者状態の変化により合併症が新規に発症した場合には紐付け項目となる。
【0030】
フェーズパス作成手段10は、入力手段1から入力された検査結果に基づき特定される単独項目DB9から読み出した単独項目データを、サブフェーズ設定手段8で作成されたフェーズテンプレートに併合することで、フェーズパスを作成する。
表示手段11は、フェーズパス作成手段10から出力されるフェーズパスを表示する手段であり、例えば、CRTモニターや液晶モニターなどの表示装置である。
【0031】
ここで、図5に示すように、フェーズパスは、各患者に対して、病日毎に多項目について詳細な治療目標(アウトカム)、判断基準(アセスメント)及び治療行為(タスク)が定められている。
【0032】
フェーズパスは、入力手段1から入力した検査結果に基づき、フェーズ設定手段6及びサブフェーズ設定手段8が、患者に応じた一連の疾患−フェーズ−サブフェーズ−アウトカム−アセスメント−タスクを自動的に決定しているが、担当医などの判断によって、手動でフェーズパスの各項目の内容を変更することができる。
特に、フェーズパスの内容に基づき、患者に対して、治療行為(タスク)を実施した場合に、実施結果に対する判断基準(アセスメント)に基づく判断結果によっては、フェーズパスの内容を変更する必要性が生じる場合がある。
【0033】
そこで、フェーズパス編集手段12は、フェーズパスの内容に基づく実行結果(治療行為(タスク)による実施結果、判断基準(アセスメント)による判断結果)を入力手段1から入力し、紐付け項目又は単独項目の変更の要否を判断する。また、フェーズパス編集手段12は、紐付け項目又は単独項目の変更の判断結果によって、フェーズの変更の命令をフェーズ設定手段に出力、及び/又は単独項目の日付設定の命令をフェーズパス作成手段に出力する。
【0034】
このように、治療目標(アウトカム)、判断基準(アセスメント)及び治療行為(タスク)は、フェーズに管理されるべき紐付け項目と、フェーズに管理されない単独項目とに分類し、紐付け項目と単独項目とをそれぞれ独立して変更できることで、フェーズパスを容易に編集することが可能となる。
【0035】
つぎに、フェーズパスの作成方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、入力手段1によって、患者に対する生化学検査、教育理解度チェック、生活習慣チェック、診察などによる検査結果を、フェーズ設定手段6に入力する(ステップ1)。
ここで、検査結果である入力要素について、図7を用いて説明する。図7に示すように、まず、生化学検査では患者の病状(合併症)を予測できるものの、生化学検査の検査結果のみでは合併症の併発の有無や病名を確定することができない。そこで、合併症を確定するための特殊検査を行なうか否かを判断し、特殊検査の必要性があれば、特殊検査を行ない、合併症の併発の有無や病名を確定する。また、教育理解度については、図示しない教育支援シートなどによって患者による知識の抜けを把握する。また、生活習慣については、患者における意欲の面と行動の面から判断し、患者に合った目標を設定する。
【0036】
そして、これらの入力要素を、この第1の実施形態に係る疾患管理システムに入力することで、後述するフローチャートに従ってフェーズパスを確定し、確定したフェーズパスの内容に沿って、患者に対して、生化学検査、教育及び生活習慣指導を行なう。
【0037】
なお、ここでの生化学検査の通常の検査として、特殊検査を行ない、再度、フェーズパスを変更する場合もある。また、電話などの問診によって、合併症の兆候が判明した場合には、特殊検査を行なうことで、再度、フェーズパスの変更を行なう場合もある。特に、網膜症を判断するための情報は、生化学検査では得られず、黒いものが見えるとか、急に暗い所に行くと見えないなどの白内障の兆候を、問診によって明らかにすることができる。
【0038】
また、教育の理解度や生活習慣を確認することで、場合によっては、再度、教育理解度チェックや生活習慣チェックの検査を行ない、フェーズパスを変更する。
このように、フェーズ設定手段6に入力する入力要素は、様々な場合がある。
【0039】
つぎに、フェーズ設定手段6が、ステップ1で入力した検査結果を、適用基準DB2a、除外基準DB2b及びゴール設定DB2cに格納されたそれぞれのデータと比較することで、患者の疾患、適用できないフェーズ及びゴール設定を判断し、疾患DB4及びフェーズDB5から患者に応じた疾患データ及び1又は複数のフェーズデータを読み出す(疾患−フェーズ)(ステップ2)。
【0040】
つぎに、フェーズ設定手段6は、ステップ2にて読み出したフェーズデータに対応する1又は複数のアウトカムデータをアウトカムDB3aから読み出し、この各アウトカムデータに対応する1又は複数のアセスメントデータをアセスメントDB3bから読み出し、この各アセスメントデータに対応する1又は複数のタスクデータをタスクDB3cから読み出す(疾患−フェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク(紐付け項目))(ステップ3)。
【0041】
さらに、サブフェーズ設定手段8は、フェーズ設定手段6によって特定した各フェーズデータに対応する、設定病日DB7から読み出した標準日数データによって、ステップ3にて読み出したフェーズ以下を関連付けたツリー構造をフェーズ毎に分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定する(疾患−フェーズ−サブフェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク(紐付け項目))(ステップ4)。
【0042】
つぎに、フェーズパス作成手段10は、入力手段1から入力された検査結果に基づき特定される単独項目DB9から読み出した単独項目データを、ステップ4にて設定されたサブフェーズに併合する(疾患−フェーズ−サブフェーズ−アウトカム−アセスメント−タスク(紐付け項目、単独項目))ことで、フェーズパスを完成する(ステップ5)。
このように、ステップ1からステップ5までが、初期設定であるフェーズパスの作成方法を示したフローチャートである。
【0043】
つぎに、フェーズパスの編集方法について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、患者に対して、完成したフェーズパスで定められた治療行為(タスク)を実施し、判断基準(アセスメント)によって判断する(ステップ6)。
ステップ6にて実施した治療行為(タスク)による実施結果及び判断基準(アセスメント)による判断結果(以下、実行結果と称す)を、入力手段1によってフェーズパス編集手段12に入力する(ステップ7)。
【0044】
ステップ7にて入力した実行結果により、フェーズパス編集手段12は、治療目標(アウトカム)が成立するか否かを判断する(ステップ8)。ここで、例えば、アウトカムが「手術ができる体温である。」であり、アセスメントが「体温が38℃以下でないと手術をしてはいけない。」である場合に、タスクの実施結果が「体温39℃」であれば、アセスメントからアウトカムが判断されて、アウトカムが不成立となる。
【0045】
ステップ8において、アウトカムが成立すると判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、サブフェーズが成立するか否かを判断する(ステップ9)。
ステップ9において、サブフェーズが成立しないと判断した場合には、ステップ6に戻る。
また、ステップ9において、サブフェーズが成立すると判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、フェーズが成立する否かを判断する(ステップ10)。
【0046】
ステップ10において、フェーズが成立しないと判断した場合には、ステップ6に戻る。なお、ここでは、翌日、次のサブフェーズに紐付いた治療行為(タスク)及び判断基準(アセスメント)を患者に対して実行することになる。
また、ステップ10において、フェーズが成立すると判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、最終のフェーズであるか否かを判断する(ステップ11)。
【0047】
フェーズパス編集手段12は、ステップ11で最終のフェーズではないと判断した場合には、ステップ6に戻る。なお、ここでは、翌日、次のフェーズの最初のサブフェーズに紐付いた治療行為(タスク)及び判断基準(アセスメント)を患者に対して実行することになる)。
また、フェーズパス編集手段12は、ステップ11で最終のフェーズであると判断した場合には、治療終了(退院)となる。
【0048】
つぎに、ステップ8において、アウトカムが成立しないと判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、フェーズパスの内容を変更するか否かを判断する(ステップ12)。ここで、フェーズパスの内容の変更とは、アウトカム、アセスメント及びタスクに関する変更、追加及び削除をいい、例えば、タスクの実施日を変更したり、必要になったタスクを追加したり、不要になったタスクを削除したりすることをいう。また、同種のタスクが重複してオーダされている場合に、一方のタスクを削除する場合も含む。
【0049】
ステップ12において、フェーズパスの内容を変更しないと判断した場合には、強制実行(中止)するために、ステップ9に移行する。
また、ステップ12において、フェーズパスの内容を変更すると判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、変更する項目が単独項目であるか否かを判断する(ステップ13)。
【0050】
ステップ13において、変更する項目が単独項目であると判断した場合には、フェーズパス編集手段12は、単独項目データの変更の命令をフェーズパス作成手段10に出力し、フェーズパス作成手段10は、単独項目DB9から変更する単独項目データを読み出し、単独項目の日付を設定する(ステップ14)。例えば、「CT検査」の実施日を、1日目と4日目から2日目と5日目に変更する場合には、変更前の初期設定において「1,0,0,1,0,0」というデータをフェーズパス作成手段10が単独項目DB9から読み出していたものを、「0,1,0,0,1,0」というデータに置き換える。
【0051】
また、ステップ13において、変更する項目が単独項目でないと判断した場合は、変更する項目が紐付け項目であると判断した場合であり、フェーズパス編集手段12は、フェーズデータの変更の命令をフェーズ設定手段6に出力し、フェーズ設定手段6は、フェーズDB5から変更するフェーズデータを読み出し、フェーズを変更する(ステップ15)。つまり、フェーズを変更するということは、そのフェーズに紐付いた、サブフェーズ、アウトカム、アセスメント及びタスクも変更することであり、それぞれのデータはそれぞれのデータベースから変更したフェーズに紐付いてくることになる。なお、図3に示すように、表示手段11に表示された編集画面で、サブフェーズを特定し、サブフェーズの標準日数を変更することや、アウトカムの項目を追加又は削除することが可能である。
【0052】
ここで、紐付け項目の延長は、例えば、標準日数がn日間として設定されているフェーズF1の紐付け項目の1日延長であれば、フェーズF1を、標準日数がn+1日間として設定されているフェーズF2(フェーズF1のアウトカム、アセスメント及びタスクと同一のアウトカム、アセスメント及びタスクを持つ)に変更することである。また、紐付け項目の前倒しは、例えば、フェーズF3をフェーズF4(F3よりも後の治療段階のタスクを持つ)に変更することである。また、紐付け項目の逆戻りは、例えば、フェーズF6をフェーズF5(F6よりも前の治療段階のタスクを持つ)に変更することである。
【0053】
つぎに、ステップ14における日付の設定、又はステップ15におけるフェーズの変更に基づいて、フェーズパス作成手段10は、フェーズパスの内容を編集し(ステップ16)、ステップ6に戻る。なお、ここでは、翌日、編集したサブフェーズに紐付いたタスク及びアセスメントを実行することになる。
【0054】
以上のように、この第1の実施形態に係る疾患管理システムにおいては、フェーズに管理されるべき紐付け項目と、フェーズに管理されない単独項目とに分類し、紐付け項目と単独項目とをそれぞれ独立して変更することについて説明してきたが、以下に、単独項目は変更せずに紐付け項目だけを変更できることによる作用効果について、図9乃至図12を用いて説明する。
【0055】
図9(a)、図10(a)、図11(a)及び図12(a)に示すような脳梗塞に対する治療行為が設定されていた場合に、ベッド角度「30°」を一日延長することを考える。
まず、図9(b)に示すように、単純に2日目のベッド角度の欄に「30°」を加えると、2日目のベッド角度が「30°」と「60°」と2つの角度が設定されてしまい不具合が生じる。
また、図10(b)に示すように、ベッド角度の横列に対して「30°」を2日目に挿入すると、6日目には「シャワー」及び「トイレ」に行けなくなるという不具合が生じる。
【0056】
また、図11(b)に示すように、1日目の縦列を2日目に繰り返すと、「病状説明」が1日目と2日目とで重複するうえに、「頭部CT」及び「栄養指導」の実施予定日が当初設定した実施予定日と異なってしまい、物理的制約(検査室の予約状況、栄養士の出勤状況)により「頭部CT」及び「栄養指導」が実施できなくなる。
【0057】
そこで、この第1の実施形態に係る疾患管理システムにおいては、図12(b)に示すように、単独項目のタスクである検査及び教育は固定したまま、紐付き項目のタスクであるベッド角度、清潔及び排泄に対応する1日目の縦列の「30°」、「清拭」及び「ベッド上」を2日目に繰り返すことができ、不具合なく紐付け項目の延長を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明を実施するための第1の実施形態における疾患管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】標準日数が設定されているフェーズの繰り返しを説明するための説明図である。
【図3】実際に使用されるサブフェーズの設定及び編集画面の一例を示す模式図である。
【図4】フェーズテンプレートの一例を示した説明図である。
【図5】実際に使用されるフェーズパスの一例を示す模式図である。
【図6】フェーズパスの作成方法を示すフローチャートである。
【図7】この発明を実施するための第1の実施形態における疾患管理システムに入力する入力要素を説明するための説明図である。
【図8】フェーズパスの編集方法を示すフローチャートである。
【図9】紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例1を示した説明図である。
【図10】紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例2を示した説明図である。
【図11】紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための比較例3を示した説明図である。
【図12】紐付け項目だけを変更できることによる作用効果を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 入力手段
2 疾患ファイル
2a 適用基準DB
2b 除外基準DB
2c ゴール設定DB
3 PIDファイル
3a アウトカムDB
3b アセスメントDB
3c タスクDB
4 疾患DB
5 フェーズDB
6 フェーズ設定手段
7 設定病日DB
8 サブフェーズ設定手段
9 単独項目DB
10 フェーズパス作成手段
11 表示手段
12 フェーズパス編集手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する治療目標、判断基準、及び治療行為に関連性を持たせたフェーズパスを設定し、当該設定されたフェーズパスを表示する疾患管理システムであって、
患者における検査結果を入力する入力手段と、
前記入力した検査結果に基づき、1又は複数のフェーズを特定し、当該特定した各フェーズに対応する、患者状態に依存する紐付け項目からなるアウトカム、アセスメント、及びタスクを特定するフェーズ設定手段と、
前記特定した各フェーズに対応する標準日数によって前記各フェーズを分岐させた1又は複数のサブフェーズを設定するサブフェーズ設定手段と、
前記入力した検査結果に基づき特定される患者状態に依存しない単独項目及び前記サブフェーズ設定手段から出力されるサブフェーズに基づき、フェーズパスを作成するフェーズパス作成手段と、
前記作成したフェーズパスを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする疾患管理システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の疾患管理システムにおいて、
前記作成したフェーズパスの内容に基づく実行結果を前記入力手段から入力し、前記紐付け項目又は単独項目の変更の要否を判断するフェーズパス編集手段を備え、
前記フェーズパス編集手段は、判断結果によって、前記フェーズの変更の命令を前記フェーズ設定手段に出力、及び/又は前記単独項目の日付設定の命令を前記フェーズパス作成手段に出力することを特徴とする疾患管理システム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の疾患管理システムにおいて、
前記入力した検査結果に基づき、患者の疾患を判断する適用基準データを格納した適用基準ファイルと、
患者の疾患によって使用できないフェーズを除外する除外基準データを格納した除外基準ファイルと、
治療による患者の最終状態を示すゴール設定データを格納したゴール設定ファイルと
を備え、
前記フェーズ設定手段は、前記各データに基づき前記フェーズを特定することを特徴とする疾患管理システム。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の疾患管理システムにおいて、
アウトカムデータを格納したアウトカムデータベースと、
アセスメントデータを格納したアセスメントデータベースと、
タスクデータを格納したタスクデータベースと
を備え、
前記フェーズ設定手段は、前記特定したフェーズに対応して、前記各データを紐付けて読み出すことを特徴とする疾患管理システム。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の疾患管理システムにおいて、
前記単独項目は、病状説明、栄養指導、運動指導、自己測定記載、内服薬確認、専門医受診、CT検査又はMRI検査であることを特徴とする疾患管理システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−146233(P2008−146233A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330777(P2006−330777)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(501389729)社会福祉法人 恩賜財団済生会熊本病院 (2)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】