病原体の結合
サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させる病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の病原体を検出する方法に関する。前記方法は、病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、サンプルに接触させる工程を含む。前記細胞表面受容体タンパク質は、病原体のin vivoでの野生型感染において、該病原体を結合するタンパク質であることが好ましい。本発明は、また、被験体を診断する方法、及び本発明の方法において使用される融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
診断を改善するために病原体の検出感度を向上させることは、重要な目的である。被験体及び患者のいずれかから採取したサンプル中の病原体を検出する従来のアッセイには、種々の制約がある。例えばC型肝炎ウイルス(HCV)の検出を行うために最もよく使用される手段は、微量の核酸を増幅したりするもの及び抗体を使用してウイルスタンパク質を検出するもののいずれかである(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。これらの方法は、患者のサンプルを比較的多く用いることができて(例えば数ミリリットルの血液)検出に十分な量の核酸及び抗原のいずれかを利用できる場合に適切である。しかしながら、より少ない量の血液中における低力価ウイルスを検出すること、及びサンプル由来の病原体を濃縮及び精製する能力は、診断の大きな助けとなる。
【0003】
1つの解決策が非特許文献7によって与えられており、これにはA群ロタウイルスの群特異的内部カプシドタンパク質(VP6)に対して製造されたモノクローナル抗体で被覆された磁性ビーズの使用が示されている。ウイルスが磁石によって捕捉され精製されると、次にウイルス粒子を熱破壊することによってウイルスのゲノムが逆転写に利用可能になり、ウイルスの検出及び分析の両方が可能になる。
【0004】
ウイルスを濃縮する自明の方法は、抗体で被覆された不活性媒体を使用することであろう。しかし、このような解決策は、独自の問題点を抱えている。例えば、HCVなどのRNAウイルスの検出においては、ウイルスのゲノムは、絶え間なく突然変異を起こしており、ウイルス表面のエピトープは、高アフィニティー抗体による検出を「回避する」ことができる。事実、一人の患者が有するHCVの形態は、単一ではないことが示されている。それどころか、ウイルスは、多くの異なるゲノムを有する亜種として存在し、それゆえその宿主中では僅かに異なる表面タンパク質を有して存在する。このようなウイルスに対して感染の正確な分析結果を得るのは、困難となる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Erensoy, Diagnosis of hepatitis C virus(HCV) infection and laboratory monitoring of its therapy. J Clin Virol. 2001年,21巻(3号),pp.271−81.
【非特許文献2】Kuo et al. An assay for circulating antibodies to a major etiologic virus of human non−A, non−B hepatitis. Science 1989年,244巻,pp.362−4.
【非特許文献3】Hodinka, R.L., The clinical utility of viral quantitation using molecular methods. Clinical and Diagnostic Virology. 1998年,10巻,pp.25−47.
【非特許文献4】Kurtz,et al. The diagnostic significance of an assay for ‘total’ hepatitis C core antigen. Journal of Virological Methods. 2001年,96巻(2号),pp.127−32.
【非特許文献5】Trimoulet,et al. Evaluation of the VERSANT HCV RNA 3.0 Assay for Quantification of Hepatitis C Virus RNA in Serum. Journal of Clinical Microbiology. 2002年,40巻(6号),pp.2031−2036.
【非特許文献6】Strader et al. Diagnosis, management and treatment of hepatitis C. Hepatology 2004年,39巻(4号),pp.1147−71.
【非特許文献7】Grinde B et al. Sensitive detection of group A rotaviruses by immunomagnetic separation and reverse transcription−polymerase chain reaction. J. Virol.Methods 1995年,55巻(3号),pp.327−38.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、サンプル中の病原体の有無を決定及び診断することができる改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って本発明は、サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明は、また、サンプルにおける病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、いずれのシステムにも適用できるが、特にマイクロ流体システム及びナノ流体システムのいずれかに適しており、特にこのようなシステムにおいて行われる診断フロープロセスに適している。
【0010】
前記方法が、サンプルと、細胞表面受容体タンパク質の病原体を結合させる部分のみ(例えばCD81における大型細胞外ループ(LEL))とを接触させる工程を含むのも特に好ましい。これは、関与する分子種のサイズを低減する一方で、病原体への結合に使用される手段を単純化するという利点を有し、これは、マイクロ流体システム及びナノ流体システムに特に適している。従来から、病原体の結合に関与する受容体の部分のみを使用する方法は、その信頼性に問題があった。しかし本発明では、これら問題点が克服されると共に信頼できる過程が開発されている。
【0011】
好ましい態様において、前記方法は、結合病原体を濃縮する工程を更に含む。
【0012】
この方法は、検出の前にサンプルからの低力価病原体を濃縮することを可能にするので特に有利である。その結果、比較的少量のサンプルで病原体を検出することができ、そして現行のアッセイの感度を向上させることができる。従って、病原体を比較的低濃度で有する患者も特定することができる。
【0013】
特に、本発明の方法では、血液及び他の組織のいずれかからの無傷のC型肝炎ウイルスを、CD81受容体、CD209受容体、及びCD209L受容体のいずれか又はこれらの断片に対する該ウイルスの結合アフィニティーを利用して、濃縮及び検出することができる。これらのタンパク質及びその断片のいずれかは、不活性表面に結合させて使用できる。これらの受容体をそれ自体でタグにカップリングするか(例えばCD81−GST融合タンパク質)、磁性ビーズ及び他のビーズ(例えばアガロース)のいずれかなどの表面上でタグと混合させるかすることで、血液及び組織マトリックスのいずれかからウイルスを分離及び濃縮することが可能になる。結合させたウイルスは、次いで、検出及び下流におけるタンパク質、核酸、及び脂質の分析のために崩壊させることができる。
【0014】
CD81受容体は、高アフィニティーでHCV粒子のE1E2表面複合体に結合することが示されており、細胞へのウイルスの侵入に不可欠である。異なる遺伝子型のHCVの全てがCD81に結合するが、そのアフィニティーは、僅かに異なる。仮に、結合時に極めて重要な役割を果たすウイルスのアミノ酸残基が突然変異によって有効に受容体にドッキングすることができなければ、ウイルスは、生育不能になり、細胞に侵入し複製することができないであろう。したがって、本発明の利点は、感染性を有するウイルス粒子のみ、即ちCD81受容体に結合可能なウイルス粒子のみを検出できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面を参照して本発明を更に説明するが、これは、ほんの一例に過ぎない。
【図1】図1は、CD81タグ付融合タンパク質に結合したC型肝炎ウイルス粒子の概略図である。
【図2】図2は、磁性粒子表面に結合したCD81 LELタグ付融合タンパク質を介して磁性粒子に結合させられるC型肝炎ウイルス粒子の概略図である。
【図3】図3は、血漿サンプル由来のウイルスを濃縮、検出、及び分析する本発明の方法の一実施形態を示す概略図である。
【図4】図4は、GFPレポータータンパク質を使用してサンプル中のウイルスの有無を検出する本発明の方法の一実施形態を示す概略図である。
【図5】図5は、細胞膜におけるCD81のin situでの構造を示す。LELが見られる。
【図6】図6は、実施例1において使用されるCD81LELのアミノ酸配列(配列番号1)とDNA配列(配列番号2)を示す。
【図7】図7は、pGEX6p−1ベクターからのGST遺伝子のアミノ酸配列(配列番号3)とDNA配列(配列番号4)を示す。
【図8】図8は、(A)CD81LEL−GST融合タンパク質を発現している細菌細胞培養物から単離された封入体のSDS−PAGEゲル;(B)CD81LEL−GSTと思われる高分子量バンドを示すウエスタンブロット(16倍希釈)−より色の薄いバンドは、分解産物及びGSTに相当する;(C)グルタチオンカラムからの溶出画分、レーン1:最初の封入体調製物、レーン2〜5溶出画分、を示す図である。
【図9】図9は、既知のBSA量との比較によるタンパク質濃度の決定を示す図である。
【図10】図10は、タンパク質アッセイキット(BSA標準曲線)を用いたタンパク質濃度の決定を示す。
【図11】図11は、タンパク質のカルボキシル基への結合に関する化学反応を示す。
【図12】図12は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動を示す。キー;+ve対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81被覆ビーズ、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve対照、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【図13】図13は、3種のPCR産物の蛍光測定値を示す。励起波長、497nm;520nmの波長の発光を読み取る。
【図14】図14は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動を示す。キー;D、2log−DNA Ladder;+ve、陽性対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;CD81B、ストレプトアビジン被覆磁性ビーズに結合させたビオチン化CD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法に関する。
【0017】
本発明の病原体は、特に制限されず、in vivoでの野生型感染において特異的細胞表面受容体に結合する病原体であれば如何なる病原体であってもよい。病原体は、DNAウイルス及びRNAウイルス、細菌類、真菌類、寄生生物類、及びプリオン類から選択することができる。本発明の方法は、上述したように、継続的に突然変異し易いRNAゲノムを有するRNAウイルスであって、ウイルス表面のエピトープが変化し得るRNAウイルスを用いる場合に特に有用である。
【0018】
本発明の方法は、被験体から採取したサンプル及び環境由来サンプルのいずれかにおける病原体の有無を決定するのに使用できる。したがって、用語「サンプル」は、特に限定されない。サンプルが被験体から採取される場合には、サンプルは、全血、尿、血漿、脊髄液又は血清等の体液、及び、固形組織又は細胞の粗溶解物のいずれかであってもよい。また、サンプルは、組織培養物由来であってもよい。サンプルを環境から採取する場合には、サンプルは、土壌サンプル、大気サンプル、水サンプル等の流体サンプルであってよい。
【0019】
サンプルは、本発明の方法において使用する前に処理工程に付してもよい。例えば本発明における使用前にin vitroでサンプルを培養してもよい。
【0020】
本発明の好ましい態様では病原体は、C型肝炎ウイルスであり、本発明の方法は、血液及び他の組織のいずれかから無傷のC型肝炎ウイルス粒子を検出するために使用することができる。特に好ましい態様においては本発明の方法を、血液及び他の組織のいずれかから無傷のC型肝炎ウイルス粒子を濃縮及び検出するために使用することができる。
【0021】
細胞表面受容体及びその一部のいずれかの性質は、病原体を特異的に結合する限り、特に制限されない。受容体及びその一部のいずれかは、in vivoでの病原体の野生型感染の際に病原体に結合するタンパク質であることが好ましい。特に、この野生型感染は、哺乳動物、例えばヒトへの感染である。
【0022】
用語「その一部」とは、細胞表面受容体タンパク質の断片を意味する。前記断片は、ウイルスへの結合を可能にするために正しい立体構造(即ち、野生型の立体構造)をとることができるように、十分に長いことが好ましい。しかし、より短い断片であっても、ウイルスの有効な検出及び分離の少なくともいずれかが可能となるのに十分高いアフィニティーでウイルスと結合するならば、これらの断片も使用することができる。特に、本発明の一実施形態においては、前記断片は、in vivoで細胞表面の外膜上に露出する前記受容体の部分を含むのが好ましい。
【0023】
前記受容体及びその一部のいずれかは、高アフィニティー及び高アビディティーのいずれかで病原体と結合するタンパク質であることが好ましい。特に受容体は、病原体を、10−4M及びこれより高い親和性を示す解離定数(KD)のいずれかで結合するタンパク質である。受容体が病原体を10−6MのKDで結合タンパク質であることが最も好ましい。これらの値は、従来技術の諸方法において成功裏に用いられるタンパク質の解離定数に匹敵する。例えば、10−4MのKDを有する抗体が使用されている。更に、グルタチオンとグルタチオン−S−トランスフェラーゼは、「良好」と見なされる約10−6MのKD(解離定数)を有し、そしてGSTタグが組換えタンパク質を精製するのに使用されている(Nieslanik及びAtkins The Catalytic Tyr−9 of Glutathione S−Transferase A1−1 Controls the Dynamics of the C terminus. J.Biol.Chem. 2000年,275巻(23号),pp.17447−51)。自然抗体は、最高で約10−9Mのアフィニティーを有する。更に、CD81も、約10−9MのKDでHCVタンパク質に結合することが示されており、これは、「強い」親和性と見なされる。ビオチンは、ストレプトアビジンに10−15MのKDで結合し、これは、「非常に強く−殆ど共有結合に近い」親和性と見なされる(Boder et al. “Directed evolution of antibody fragments with monovalent femtomolar (10−15M) antigen−binding affinity.” PNAS. 2000年,97巻(20号),pp.10701−5)。
【0024】
好ましい実施形態においては、前記細胞表面受容体は、in vivoでの野生型感染の際に、病原体の結合及び細胞への侵入の少なくともいずれかを可能にするタンパク質、又は病原体結合及び細胞侵入の少なくともいずれかに部分的に関与するタンパク質である。
【0025】
更に好ましい実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、病原体と結合してタンパク質−病原体複合体を形成する。
【0026】
前記細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを本発明の方法に使用できる。本発明の一態様においては、前記タンパク質及びその一部のいずれかは、融合タンパク質として使用される、即ち、タグに結合させられる。適切なタグ、即ち融合タンパク質のパートナーには、二量体化し結合を促進することが示されているグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)等がある。
【0027】
特にGSTタグは、病原体粒子の濃縮、分離、及び精製のいずれかが必要とされる方法に使用することができる。前記GSTタグは、細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかのN末端及びC末端のいずれかに融合される。GST−融合タンパク質は、例えばE.coli等の細菌システムにおいて組換えタンパク質として容易に産生することができる。GST融合タンパク質にサンプルを接触させて病原体を結合させた後、GST−融合タンパク質−病原体複合体を、GSTの基質であるグルタチオンと接触させることによってサンプルから分離することができる。特に、このグルタチオンで、セファロースビーズを被覆してもよい。前記複合体がビーズに結合した時点で、洗浄してサンプルの残りを除去し、サンプルの残りと病原体とを分離し、病原体を濃縮する。
【0028】
本発明の別の実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、GFP及び他のレポータータンパク質のいずれかとの融合タンパク質として使用される。このような融合タンパク質は、サンプル中の病原体の有無の検出に抗体の場合と同様にして使用することができる。図4に示す概略図は、この実施形態がどのように行われるかを示す。具体的には、受容体(例えばCD81LEL)遺伝子及びレポーター(例えばGFP)遺伝子を、適切なプロモーター配列と、ポリアデニル化配列と、必要に応じて精製用タグ(例えばGST、ポリヒスチジン、IgGFcなど)とを含有するプラスミド中にクローン化することができる。前記の各遺伝子は、プラスミド中に同時に存在し、小型のリンカー領域で隔てられていてもよい。前記プラスミドを、次に細胞(細菌細胞及び真核細胞のいずれか)に形質導入又はトランスフェクトする。そして、発現した組換え受容体/レポーター融合タンパク質は、確立された技法を使用して精製することができる(例えばGSTタグに対するグルタチオンカラムの使用、及び、抗受容体抗体若しくは抗レポーター抗体で被覆されたカラムの使用のいずれか)。
【0029】
(未結合)受容体は、プラスチックイムノプレート、アガロースビーズ、磁性ビーズ等の不活性表面上に固定化させる。前記磁性ビーズの直径は、10nm以上であることが好ましく、10nm〜10μmであることがより好ましく、100nm〜5μmであることが更に好ましい。これらのビーズの市販品としては、Dynabeads(Invitrogen Corporation)、MACSビーズ(Miltenyi Biotec)、Bio−Adembeads(Ademtech Parc Scientifique Unitec)等を利用することができる。アガロースビーズもまた適切なものが市販されており、例えばPolysciences,Incから入手することが利用できる。
【0030】
固定化された無傷の病原体を、前記受容体/レポーター融合タンパク質を用いて検出することができる。レポーターが蛍光性を有する場合、レポーターは直接検出できる。レポーターは、また、基質の化学的特性の変化を誘発することができる酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等)であってもよい。更には、抗レポーターコンジュゲート抗体を、病原体の有無を検出するために使用することもできよう。
【0031】
病原体が受容体へのドッキング部位を複数有するウイルスである場合には、これら部位の幾つかは、捕捉のために用いることができ、また他の幾つかは、検出のために用いることができる。
【0032】
前記融合タンパク質は、不活性表面及び固体表面上のいずれかに結合させることができる。適切な表面としては、例えば受動的吸着(例えば重炭酸ナトリウム緩衝液を用いて)、イオン性吸着、臭化シアン、カルボジイミド、ニッケル/ヒスチジン、光化学反応等の多数の利用可能なカップリング化学反応を用いて前記融合タンパク質を結合させることができる磁性ビーズ及びアガロースビーズのいずれかなどがある。また、前記融合タンパク質は、融合タンパク質を前記表面に結合させることを可能にする更なるタンパク質及びペプチドのいずれかを含んでいてもよい。例えば、アビジンで被覆したビーズへ結合させるために、前記融合タンパク質にビオチンタグを付加してもよい。
【0033】
利用可能と考えられるRNAウイルスとそのそれぞれに対応する細胞表面受容体の組み合わせは、C型肝炎ウイルスとCD81(特にCD81の大型細胞外ループ(LEL));C型肝炎ウイルスとCD209;C型肝炎ウイルスとCD209L;ライノウイルスとICAM1;ヒト免疫不全ウイルスとCD4;ヒト免疫不全ウイルスとCCR5;インフルエンザとシアロ糖タンパク質等である。
【0034】
利用可能と考えられるDNAウイルスとそのそれぞれに対応する細胞表面受容体の組み合わせは、単純ヘルペスウイルスとnectin−1(Spear et al. Different receptors binding to distinct interfaces on herpes simplex virus gD can trigger events leading to cell fusion and viral entry. Virology. 2006年,344巻(1号),pp.17−24;Compton. Receptors and immune sensors: the complex entry path of human cytomegalovirus. Trends in Cell Biology. 2004年,14巻(1号));サイトメガロウイルス(CMV)(同じく、ヘルペスウイルス)と上皮増殖因子受容体(EGFR)(Spear. Herpes simplex virus: receptors and ligands for cell entry. Cell Microbiol. 2004年,6巻(5号),pp.401−10);麻疹とCD150(Sidorenko及びClark The dual−function CD150 receptor subfamily: the viral attraction. Nat Immunol. 2003年,4巻(1号),pp.19−24);エプスタイン−バーウイルス(腺熱及び多数の癌を引き起こす)と補体受容体2(CR2)(Fingeroth et al. Epstein−Barr virus receptor of human B lymphocytes is the C3d receptor CR2. PNAS. 1984年、81巻,pp.4510−14)等である。
【0035】
本発明の1つの態様においては、病原体がC型肝炎ウイルス(HCV)であり、細胞表面受容体がCD81である。HCVは、フラビウイルス科のプラス鎖RNAウイルスである。肝細胞及びBリンパ球等の種々の細胞に発現する細胞表面受容体であるCD81が、HCVのエンベロープタンパク質E2に結合することが示されている。特に、CD81の大型細胞外ループ(LEL)が、HCV粒子に結合することが示されている(Pileri et al. Binding of Hepatitis C virus to CD81. Science. 1998年,282巻,pp.938−41)。更に、他の有用な受容体としては、CD209、CD209L等(Cormier et al. L−SIGN (CD209L) and DC−SIGN (CD209) mediate transinfection of liver cells by hepatitis C virus. PNAS 2004年,101巻(39号),pp.14067−14072)及びこれらに由来するペプチドのいずれかがある。
【0036】
これらの及び他のウイルス−受容体の組み合わせを次の表1に示す。
【表1】
【0037】
好適な細菌と受容体との組み合わせを次の表2に示す。
【表2】
出典:http://textbookofbacteriology.net/colonization.html
【0038】
更に、次の表3に好適な寄生生物と受容体の組み合わせを示す。
【表3】
【0039】
本発明の好ましい態様においては、被験体を診断する方法が提供される。具体的には、被験体における病原体の有無を診断する方法であって、
(a)被験体からサンプルを採取する工程と、
(b)前記サンプルにおける病原体の有無を上述の方法によって決定する工程と、
(c)工程(b)の結果に基づいて診断を行う工程とを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0040】
更に本発明は、被験体由来のサンプルにおいて病原体の有無を決定するためのキットであって、上述の融合タンパク質を含むキットを提供する。特に、前記融合タンパク質は、細胞表面受容体の全部及び一部のいずれかと緑色蛍光タンパク質(GFP)とを含み、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、病原体のin vivoでの野生型感染において病原体に結合するタンパク質である。特定の実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質は、CD81、CD209、及びCD209Lのいずれかである。
【0041】
本発明のキットは、被験体から採取したサンプル中及び環境由来サンプル中のいずれかの病原体の有無を決定するのに使用できる。
【0042】
更にキットは、細胞表面受容体タンパク質に結合した磁性ビーズ及び不活性ビーズのいずれか、例えばCD81LELが結合した磁性ビーズ及び不活性ビーズのいずれかを含むことができる。あるいは、前記キットは、遊離のCD81LELなどの、単独で存在する細胞表面受容体タンパク質と、カップリング緩衝液とを含むことができる。カップリング緩衝液は、例えばCD81のビーズへの結合など、ペプチド/タンパク質等の不活性表面との効率的な共有結合若しくは水素結合、及び他のタンパク質/ペプチド/核酸等との効率的な共有結合若しくは水素結合のいずれかを可能にする最適なレベルの塩、pH等を有する緩衝液である。適切なカップリング緩衝液の例としては、0.1M炭酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH9.0;0.1Mホウ酸ナトリウム、pH8.5;0.02Mリン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、及び3.0g/Lシアノ水素化ホウ素ナトリウム、pH7.5;0.01M K2HPO4、0.15M NaCl、pH5.5などが挙げられる。
【0043】
本発明のキットは、次の緩衝液の1以上を更に含んでいてもよい:洗浄緩衝液、結合緩衝液、溶出緩衝液、及び希釈緩衝液。
【0044】
洗浄緩衝液は、非特異的に結合した汚染物質の除去に使用され、また最適レベルの塩、pH等を有する。この緩衝液は、また、Tween−20、nonidet等の非イオン性界面活性剤をしばしば含有する。
【0045】
結合緩衝液は、関心のあるアナライトの結合(例えばHCVのCD81への結合)を最適化し、その例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。
【0046】
ブロッキング緩衝液は、「遊離の」反応基をブロックすることによって、人工的にシグナルを増加させることもある汚染物質(例えば第二抗体など)の結合を防止する。ブロッキング緩衝液は、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、1Mエタノールアミン、魚皮ゼラチン、ブタゼラチン等を含有することができる。
【0047】
溶出緩衝液は、関心のあるアナライトを結合状態から分離状態とすることを可能にし、最適レベルの塩等を含有する、及び結合した抗原と直接競合する可溶性化合物を含有するのいずれかである。例えば、グルタチオンカラムに結合したGST融合タンパク質は、10mMの還元型グルタチオンを含有する緩衝液によって溶出される。加えて、溶出を最適化するために、これら溶液のpHを他の緩衝液のpHよりも上昇させたり低下させたりすることができる。例としては、グリシン緩衝液を挙げることができる。
【0048】
希釈緩衝液は、サンプルを希釈して実際に使用できる範囲内の濃度にするために使用され、その後の反応には干渉しない緩衝液である。例としては、トリス緩衝液、PBS等を挙げることができる。
【0049】
更に、本発明のキットは、基質及び基質緩衝液;陽性対照及び陰性対照;検量用物質(calibrators)、検出タンパク質、及び増幅タンパク質(amplification proteins)を更に含んでいてもよい。
【0050】
受容体で被覆されたビーズを含む場合には、前記キットには多くの用途が見出される。前記受容体被覆ビーズは、例えば、診断及び研究の両方において使用できる。医学的用途の例としては、透析タイプの療法において患者の血液から病原体(例えばHCV)ウイルス粒子を除去することが挙げられる。前記ビーズを、患者由来のサンプル(血液及び生検材料のいずれか)及び培養サンプルのいずれかに混合することができる。ビーズをウイルスに結合させ、次いで例えば電磁石上に固定化することができる。続いて前記ビーズを洗浄し、必要に応じて以降の用途のために汚染物質を除去することができる。結合したウイルス粒子を次に少量の液体中で崩壊させて(即ち濃縮し)核酸、タンパク質、及び脂質を放出させることができ、これらの試料は、更なる分析のために利用することができる。あるいは、GSTタグを切断し(確立されたプロトコールを使用して)、CD81LELに結合した精製済の無傷のウイルスを研究用途における更なる分析のために使用することができる。
【実施例】
【0051】
(背景及び概略図)
図3及び図4は、本発明がどのようにウイルス(例えばHCV)及び細胞表面受容体タンパク質(例えばCD81)のLEL部分に働きかけるかについての概略図である。
【0052】
受容体(例えばCD81 LEL)遺伝子を、適切なプロモーター配列、ポリアデニル化配列、更には精製用タグ(GST、ポリヒスチジン、IgGFc等)を含有するプラスミド中にクローン化する。次に前記プラスミドの、細胞(細菌細胞及び真核細胞のいずれか)への形質導入及びトランスフェクトのいずれかを行う。そして、発現した受容体タンパク質は、確立された技法(例えばGSTタグを利用する場合にはグルタチオンカラム、抗受容体抗体被覆カラム、プロテインA/Gカラム等)を用いて精製することができる。
【0053】
次に前記精製ペプチドを、例えば磁性ビーズ、非磁性ビーズ、免疫吸着プレート等の不活性表面に結合させるが、不活性表面は、これらに制限されるものではない。次に、無傷HCVウイルスを含有する血漿を添加してインキュベートし、ウイルス粒子を固定化受容体に接触させる。続いて血漿を除去しウイルス粒子を少量の液体に再懸濁する。このプロセスには、確立された手段による検出及び上述した受容体/レポーター法を介した検出のいずれかに先立ち、HCVウイルスを濃縮する働きがある。
【0054】
以下の実施例において使用される略語は、以下の意味を有する。
BSA ウシ血清アルブミン
CD81 分化抗原81のクラスター
EDAC N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩
HCV C型肝炎ウイルス
HCVpp HCV擬似粒子(HCV pseudoparticles)
HIV ヒト免疫不全ウイルス
IgG 免疫グロブリンG
LEL 大型細胞外ループ(CD81の)
mAb モノクローナル抗体
MES 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
NHS N−ヒドロキシコハク酸イミド
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RT−PCR 逆転写PCR
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
【0055】
(実施例1−HCV擬似粒子を濃縮するためのアッセイにおけるCD81被覆ビーズの使用)
この実施例では、粒子表面上にHCVのE1、E2を発現するHCV擬似粒子(HCVpp)を濃縮するアッセイにおける、CD81被覆ビーズの構築及び使用について詳述する。
【0056】
CD81は、HCVを結合するための受容体である。HCV表面上のE2タンパク質は(E1との複合体として)、大型細胞外ループ(LEL)を介してCD81に直接結合する(図5参照)。加えて、CD209及びCD209L等の他の受容体もまた、ウイルスの細胞への結合において重要であることが示されている。
【0057】
(方法)
<CD81LEL−GSTの設計、クローン化、発現、及び精製>
この実施例において使用されるCD81LEL−GST融合タンパク質は、自由に利用可能な配列(受託番号:NM004356、EF064749、及びBC093047)を使用して設計した。使用したCD81LELのアミノ酸配列及びDNA配列を、図6及び以下に示す:
【0058】
【0059】
【0060】
この設計には、E2エンベロープタンパク質に結合することが先に示されているCD81LELを含んでいた。CD81LELをヒトcDNAライブラリーから得ると共に増幅し、これを、標準的な分子生物学的技法を使用して遺伝子改変したGST遺伝子(FusionAntibodies,Ltd(ベルファスト、北アイルランド)製)を含有するpGEX6p−1ベクター(GE Healthcare Life Sciences)中にクローン化した。このGSTのアミノ酸配列及びDNA配列を、図7及び以下に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
この融合タンパク質の発現は、E.coliの実験室株(BL21 STAR株)を使用して達成した。先ず、この融合タンパク質を、封入体(そのドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲル(SDS−PAGE)像は、図8参照のこと)を単離することによって単離した。精製タンパク質の可溶化及びリフォールディングは、透析によって行った。リフォールディングの間、凝集は、見られなかった。この発現融合タンパク質を、更に、グルタチオンアガロースカラム(GSTrapカラム)に添加し、PBSで洗浄し、遊離グルタチオン(これは、後に透析によって除去される)を用いて溶出し、カラムクロマトグラフィーを用い濃縮して精製した。この融合タンパク質の濃度(0.6mg/mL)を、SDS−PAGEゲル上で既知量のBSAと比較し(図9)、またタンパク質アッセイキット(PierceのMicro BCA)を使用することによって(図10)決定した。そのデータを以下に示す。
【表4】
【0064】
<CD81LEL−GSTの常磁性マイクロビーズへの結合>
CD81LEL−GST融合タンパク質を、Dynal(Invitrogen)の直径2.8μmのカルボン酸被覆常磁性ビーズに共有結合させた。比較のために、ビオチン化CD81LEL−GSTをストレプトアビジン被覆ビーズ(非共有結合とはいえ強力な水素結合によって結合している)と混合した。使用した濃度及び技法は、製造元の推奨事項に基づいたものである。次に、HCVppの濃度測定が可能かどうかを判定するアッセイにこのビーズを使用した。
【0065】
3%ビーズ懸濁液1mgに対し500μgの融合タンパク質の濃度割合で、マイクロビーズを融合タンパク質で被覆した。
【0066】
(材料)
【表5】
【0067】
<カルボン酸活性化ビーズへのCD81LEL−GSTの共有結合>
Dynabeadsを0.136mL(2.72×108ビーズ)ずつ1.5mLチューブに等分した。このビーズを、磁石を使用して1分間固定化することによって洗浄した。上清を取り除き、1mLの50mM MESを添加した。この溶液を、rotamixerを用いて5分間穏やかに回転することにより混合した。ビーズを前述のようにして固定化し、上清を取り除いた。この洗浄工程は、2回繰り返した。0.925mLの50mM MES溶液を、溶液から分離したビーズに添加した。この溶液を回転により5分間混合した。50mMのMESに60mg/mLでNHSを溶解させた溶液25μLを、50mMのMESに100mg/mLでEDACを溶解させた溶液25μLと共にビーズに添加し、結合用のビーズを調製した。この溶液を15分間回転し、次に上清を前述と同様にして取り除いた。この活性化工程は、2回繰り返した。0.9mLのCD81LEL−GST溶液を、pHを維持するための0.5mLの50mM MES溶液と共にビーズに添加した。100μLの1Mトリス−塩酸緩衝液を混合物に添加し、続いてこれを1時間回転し、その後上清を前述と同様にして除去した。このビーズを1mLの洗浄緩衝液中に穏やかに再懸濁した。次にこの混合物を5分間回転し、前述と同様にして上清を除去した。この洗浄工程をもう1度繰り返し上清を除去した。ビーズは、1mLの希釈緩衝液に再懸濁し、2℃〜8℃で保存した。
【0068】
タンパク質のカルボキシル基への結合に関する化学反応を図11に示す。脱水剤であるEDACがビーズ上のカルボキシル基と反応して、アミン反応性O−アシルイソウレア中間体を形成する。NHS分子が、中間体をアミン反応性スルホ−NHSエステルへ変換することによって中間体を安定化させ、これは、EDACが媒介する結合反応の効率を向上させる。
【0069】
(実施例2−CD81濃縮HCVpp eGFP遺伝子のRNA単離、逆転写、PCR増幅)
(材料)
HCV擬似粒子
MagMAXウイルスRNAキット−Cat#AM1939 Lot#0709004
Forwardプライマー−Oligo No 70727 Bruce 2F03 3/4
Reverseプライマー−Oligo No 70731 Bruce 2A014/4
高圧蒸気滅菌水
逆転写酵素(improm II)−M314A Lot#24139602
逆転写酵素緩衝液×5−Cat# M289A Lot# 17198558
MgCl2−Cat# A351H Lot# 22535642
SYBR green−Lot#125k1212
アガロース−A9539−25G Lot#12kk0157 ×10TAE緩衝液
PCR精製キット−Cat#28104 GR# 21166/1 Lot# 127147854
RNase H−Cat#M02975 5000U/ml Lot# 3
RNase ×10緩衝液−Cat# B0297S Lot#1105
Easy A high fidelity PCR master mix−Cat#600640−51 Lot#0870448
Quick load 2−log ladder−#N0469S Lot:5
Corning thermowell gold PCR tubes 0.5ml−lot#32006023
Corning thermowell gold PCR tubes 0.2ml−lot#08807020
高圧蒸気滅菌PBS
【0070】
<ウイルスの濃縮>
100μLの擬似粒子溶液(ウイルス濃度:105/mL)と100μLの被覆済みビーズとを500μLのPCRチューブに添加した。得られたミックスを3秒間、中程度の速度でボルテックスした。この処理チューブを37℃で1時間インキュベートした。次に、ビーズを捕捉するために処理チューブをマグネットスタンドに移動させた。このチューブを、マグネットスタンド上に30秒間放置し、その後、注意深く上清を吸引除去した。次に、100μLのPBS(10mM)をサンプルに添加した。ボルテックスする工程、インキュベートする工程、マグネットスタンドに設置する工程、及び吸引する工程を繰り返し、ビーズを20μLのPBS中に再懸濁した。
【0071】
<MagMaxウイルスRNAの単離>
各処理チューブに、200μLの調製済みMagMaxウイルスRNA単離キット溶解/結合溶液と、20μLのビーズミックスと、100μLのサンプル(擬似粒子)と、75μLのMagMaxウイルスRNA単離キット洗浄溶液no.1とを添加した。3秒間ボルテックスすることにより、混合した。ビーズを捕捉するために処理チューブをマグネットスタンドに移動させた。このチューブを、マグネットスタンド上に30秒間放置し、その後、注意深く上清を吸引除去した。次に、112μLのMagMaxウイルスRNA単離キット洗浄溶液no.2をサンプルに添加した。ボルテックスする工程、インキュベートする工程、マグネットスタンドに設置する工程、及び吸引する工程を繰り返し、50μL溶出緩衝液をサンプルに添加し、5秒間ボルテックスした。RNA結合ビーズをマグネットスタンド上で30秒間捕捉した。RNAを含有する上清を、ヌクレアーゼを含有しない容器に移した。
【0072】
<逆転写プロトコール>
PCRを行うためには、このGFPのRNAを先ずcDNAへ逆転写する必要がある。これは、次のプロトコールを使用することで達成した。
1.プライマー及びRNAを共に加え、70℃で5分間融解させ、次にこれらを氷上に移した。この工程によって、プライマーのRNAへのアニーリングを行った。
2.最初のプライマー/RNA混合物を氷冷した後、残りの成分を添加した。
【0073】
逆転写のための成分を以下に示す。
全RNA=50μL(精製工程において回収した50μL)
GFP Reverseプライマー=5μL
H2O=逆転写用成分の最終容量を100μLにするために補充される量=9μL
酵素緩衝液×5=20μL
MgCl2=10μL
10mM dNTPs=5μL
逆転写酵素=1μL
【0074】
用いた逆転写プログラムは、42℃で2分間、95℃で5分間、次に4℃に維持するものとした。
【0075】
<RNase H処理>
PCRを終了した後、如何なる残存RNA鎖をも消化するために1μLのRNase Hを添加した。この酵素を11μLの×10RNase緩衝液と共に添加した。反応混合物を37℃で10分間、続いて95℃で5分間置いた。
【0076】
<QIAquick PCR精製微小遠心プロトコール>
1容量の前記PCR反応物に対して5容量のバッファーPBIを添加し、混合した。QIAquickカラムを、提供された2mLのコレクションチューブ中に設置した。前記サンプルをこのQIAquickカラムにアプライし、カラムを30秒間〜60秒間遠心した。フロースルーを廃棄し、QIAquickカラムを同一のチューブ中に戻した。洗浄のために0.75mLのバッファーPEをQIAquickカラムに添加し、カラムを30秒間〜60秒間遠心した。フロースルーを廃棄し、QIAquickカラムを同一のチューブ中に戻した。カラムを2mLのコレクションチューブ(提供される)中で1分間遠心した。各QIAquickカラムを、汚染物質を含まない1.5mLの微小遠心管中に設置した。50μLのバッファーEB(10mMトリス−HCl,pH8.5)及び水のいずれかを、QIAquickメンブランの中心に添加し、カラムを1分間遠心しDNAを溶出させた。DNA濃度を増大させるために、30mLの溶出緩衝液(elution buffer)を前記QIAquickメンブランの中心に添加し、このカラムを1分間放置し次いで遠心した。精製DNAをゲル上で分析する場合には、5容量の精製DNAに対して1容量のローディングダイを添加する。ゲルに添加する前に、ピペットでこの溶液の吸い上げと吐き出しを行って混合した。
なお、全ての遠心は、17,900×gで行った。
【0077】
<PCRプロトコール>
ここで上述の工程において製造されたcDNAを、使用してPCRによって増幅することができるようになっている。これは、以下のようにして行った。
【0078】
成分:
cDNA=1μL(RT−PCRからの製造物の一部)
GFP Forwardプライマー=2μLの10pmole/μL溶液
GFP Reverseプライマー=2μLの10pmole/μL溶液
H2O=成分の最終容量を50μLにするために補充される量
Easy A high fidelity master mix=25μL
(dNTPs、酵素、及びMgCl2を含有する)
【0079】
用いたプログラムは、95℃で2分間の初期変性ステップと、これに続いて、95℃(0.30);55℃(0.30);72℃(0.10)を1サイクルとする処理を25サイクル行うステップと、72℃で7.00の処理を行うステップと、4℃に保持するステップとを含む。
【0080】
<増幅試験>
TAE(1gのアガロースを100mL緩衝液に溶解)を用いて0.75%のアガロースゲルを調製した。SYBR green(50μLに対して1μL)を用いてDNAを染色した。5μLのローディングバッファーを各50μLの反応混合物にピペットで添加し、続いてその10μLをゲルのウェルにピペットで添加した。SYBR greenを添加した10μLのquick load 2 log ladderを、ゲルのレーン1に添加した。電気泳動を、150V、100mAで1時間30分間行った。
【0081】
<結果>
図12は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動像を示す。ゲルを構成するレーンは;+ve対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81被覆ビーズ、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve対照、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【0082】
図13は、3種のPCR産物の蛍光測定値を示す。励起波長、497nm;520nmの波長の発光を読み取る。
【0083】
図14は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動像を示す。キー;D、2log−DNA Ladder;+ve、陽性対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;CD81B、ストレプトアビジン被覆磁性ビーズに結合させたビオチン化CD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【0084】
結論として、CD81LEL−GSTを共有結合させた磁性ビーズ及びビオチン化CD81LEL−GSTを結合させたストレプトアビジン被覆磁性ビーズの両方が、HCVppを200μLの出発容量から20μLまで濃縮するのに使用可能であるということが言える。このHCVppを、その後、崩壊させてRNAを単離し、PCR増幅反応を用いて検出することができる。したがって、細胞表面受容体を用いて病原体(ウイルスなど)の検出及び濃縮/精製の少なくともいずれかを行う方法の有効性が示された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の病原体を検出する方法に関する。前記方法は、病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、サンプルに接触させる工程を含む。前記細胞表面受容体タンパク質は、病原体のin vivoでの野生型感染において、該病原体を結合するタンパク質であることが好ましい。本発明は、また、被験体を診断する方法、及び本発明の方法において使用される融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
診断を改善するために病原体の検出感度を向上させることは、重要な目的である。被験体及び患者のいずれかから採取したサンプル中の病原体を検出する従来のアッセイには、種々の制約がある。例えばC型肝炎ウイルス(HCV)の検出を行うために最もよく使用される手段は、微量の核酸を増幅したりするもの及び抗体を使用してウイルスタンパク質を検出するもののいずれかである(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。これらの方法は、患者のサンプルを比較的多く用いることができて(例えば数ミリリットルの血液)検出に十分な量の核酸及び抗原のいずれかを利用できる場合に適切である。しかしながら、より少ない量の血液中における低力価ウイルスを検出すること、及びサンプル由来の病原体を濃縮及び精製する能力は、診断の大きな助けとなる。
【0003】
1つの解決策が非特許文献7によって与えられており、これにはA群ロタウイルスの群特異的内部カプシドタンパク質(VP6)に対して製造されたモノクローナル抗体で被覆された磁性ビーズの使用が示されている。ウイルスが磁石によって捕捉され精製されると、次にウイルス粒子を熱破壊することによってウイルスのゲノムが逆転写に利用可能になり、ウイルスの検出及び分析の両方が可能になる。
【0004】
ウイルスを濃縮する自明の方法は、抗体で被覆された不活性媒体を使用することであろう。しかし、このような解決策は、独自の問題点を抱えている。例えば、HCVなどのRNAウイルスの検出においては、ウイルスのゲノムは、絶え間なく突然変異を起こしており、ウイルス表面のエピトープは、高アフィニティー抗体による検出を「回避する」ことができる。事実、一人の患者が有するHCVの形態は、単一ではないことが示されている。それどころか、ウイルスは、多くの異なるゲノムを有する亜種として存在し、それゆえその宿主中では僅かに異なる表面タンパク質を有して存在する。このようなウイルスに対して感染の正確な分析結果を得るのは、困難となる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Erensoy, Diagnosis of hepatitis C virus(HCV) infection and laboratory monitoring of its therapy. J Clin Virol. 2001年,21巻(3号),pp.271−81.
【非特許文献2】Kuo et al. An assay for circulating antibodies to a major etiologic virus of human non−A, non−B hepatitis. Science 1989年,244巻,pp.362−4.
【非特許文献3】Hodinka, R.L., The clinical utility of viral quantitation using molecular methods. Clinical and Diagnostic Virology. 1998年,10巻,pp.25−47.
【非特許文献4】Kurtz,et al. The diagnostic significance of an assay for ‘total’ hepatitis C core antigen. Journal of Virological Methods. 2001年,96巻(2号),pp.127−32.
【非特許文献5】Trimoulet,et al. Evaluation of the VERSANT HCV RNA 3.0 Assay for Quantification of Hepatitis C Virus RNA in Serum. Journal of Clinical Microbiology. 2002年,40巻(6号),pp.2031−2036.
【非特許文献6】Strader et al. Diagnosis, management and treatment of hepatitis C. Hepatology 2004年,39巻(4号),pp.1147−71.
【非特許文献7】Grinde B et al. Sensitive detection of group A rotaviruses by immunomagnetic separation and reverse transcription−polymerase chain reaction. J. Virol.Methods 1995年,55巻(3号),pp.327−38.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、サンプル中の病原体の有無を決定及び診断することができる改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って本発明は、サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明は、また、サンプルにおける病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、いずれのシステムにも適用できるが、特にマイクロ流体システム及びナノ流体システムのいずれかに適しており、特にこのようなシステムにおいて行われる診断フロープロセスに適している。
【0010】
前記方法が、サンプルと、細胞表面受容体タンパク質の病原体を結合させる部分のみ(例えばCD81における大型細胞外ループ(LEL))とを接触させる工程を含むのも特に好ましい。これは、関与する分子種のサイズを低減する一方で、病原体への結合に使用される手段を単純化するという利点を有し、これは、マイクロ流体システム及びナノ流体システムに特に適している。従来から、病原体の結合に関与する受容体の部分のみを使用する方法は、その信頼性に問題があった。しかし本発明では、これら問題点が克服されると共に信頼できる過程が開発されている。
【0011】
好ましい態様において、前記方法は、結合病原体を濃縮する工程を更に含む。
【0012】
この方法は、検出の前にサンプルからの低力価病原体を濃縮することを可能にするので特に有利である。その結果、比較的少量のサンプルで病原体を検出することができ、そして現行のアッセイの感度を向上させることができる。従って、病原体を比較的低濃度で有する患者も特定することができる。
【0013】
特に、本発明の方法では、血液及び他の組織のいずれかからの無傷のC型肝炎ウイルスを、CD81受容体、CD209受容体、及びCD209L受容体のいずれか又はこれらの断片に対する該ウイルスの結合アフィニティーを利用して、濃縮及び検出することができる。これらのタンパク質及びその断片のいずれかは、不活性表面に結合させて使用できる。これらの受容体をそれ自体でタグにカップリングするか(例えばCD81−GST融合タンパク質)、磁性ビーズ及び他のビーズ(例えばアガロース)のいずれかなどの表面上でタグと混合させるかすることで、血液及び組織マトリックスのいずれかからウイルスを分離及び濃縮することが可能になる。結合させたウイルスは、次いで、検出及び下流におけるタンパク質、核酸、及び脂質の分析のために崩壊させることができる。
【0014】
CD81受容体は、高アフィニティーでHCV粒子のE1E2表面複合体に結合することが示されており、細胞へのウイルスの侵入に不可欠である。異なる遺伝子型のHCVの全てがCD81に結合するが、そのアフィニティーは、僅かに異なる。仮に、結合時に極めて重要な役割を果たすウイルスのアミノ酸残基が突然変異によって有効に受容体にドッキングすることができなければ、ウイルスは、生育不能になり、細胞に侵入し複製することができないであろう。したがって、本発明の利点は、感染性を有するウイルス粒子のみ、即ちCD81受容体に結合可能なウイルス粒子のみを検出できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面を参照して本発明を更に説明するが、これは、ほんの一例に過ぎない。
【図1】図1は、CD81タグ付融合タンパク質に結合したC型肝炎ウイルス粒子の概略図である。
【図2】図2は、磁性粒子表面に結合したCD81 LELタグ付融合タンパク質を介して磁性粒子に結合させられるC型肝炎ウイルス粒子の概略図である。
【図3】図3は、血漿サンプル由来のウイルスを濃縮、検出、及び分析する本発明の方法の一実施形態を示す概略図である。
【図4】図4は、GFPレポータータンパク質を使用してサンプル中のウイルスの有無を検出する本発明の方法の一実施形態を示す概略図である。
【図5】図5は、細胞膜におけるCD81のin situでの構造を示す。LELが見られる。
【図6】図6は、実施例1において使用されるCD81LELのアミノ酸配列(配列番号1)とDNA配列(配列番号2)を示す。
【図7】図7は、pGEX6p−1ベクターからのGST遺伝子のアミノ酸配列(配列番号3)とDNA配列(配列番号4)を示す。
【図8】図8は、(A)CD81LEL−GST融合タンパク質を発現している細菌細胞培養物から単離された封入体のSDS−PAGEゲル;(B)CD81LEL−GSTと思われる高分子量バンドを示すウエスタンブロット(16倍希釈)−より色の薄いバンドは、分解産物及びGSTに相当する;(C)グルタチオンカラムからの溶出画分、レーン1:最初の封入体調製物、レーン2〜5溶出画分、を示す図である。
【図9】図9は、既知のBSA量との比較によるタンパク質濃度の決定を示す図である。
【図10】図10は、タンパク質アッセイキット(BSA標準曲線)を用いたタンパク質濃度の決定を示す。
【図11】図11は、タンパク質のカルボキシル基への結合に関する化学反応を示す。
【図12】図12は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動を示す。キー;+ve対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81被覆ビーズ、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve対照、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【図13】図13は、3種のPCR産物の蛍光測定値を示す。励起波長、497nm;520nmの波長の発光を読み取る。
【図14】図14は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動を示す。キー;D、2log−DNA Ladder;+ve、陽性対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;CD81B、ストレプトアビジン被覆磁性ビーズに結合させたビオチン化CD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法に関する。
【0017】
本発明の病原体は、特に制限されず、in vivoでの野生型感染において特異的細胞表面受容体に結合する病原体であれば如何なる病原体であってもよい。病原体は、DNAウイルス及びRNAウイルス、細菌類、真菌類、寄生生物類、及びプリオン類から選択することができる。本発明の方法は、上述したように、継続的に突然変異し易いRNAゲノムを有するRNAウイルスであって、ウイルス表面のエピトープが変化し得るRNAウイルスを用いる場合に特に有用である。
【0018】
本発明の方法は、被験体から採取したサンプル及び環境由来サンプルのいずれかにおける病原体の有無を決定するのに使用できる。したがって、用語「サンプル」は、特に限定されない。サンプルが被験体から採取される場合には、サンプルは、全血、尿、血漿、脊髄液又は血清等の体液、及び、固形組織又は細胞の粗溶解物のいずれかであってもよい。また、サンプルは、組織培養物由来であってもよい。サンプルを環境から採取する場合には、サンプルは、土壌サンプル、大気サンプル、水サンプル等の流体サンプルであってよい。
【0019】
サンプルは、本発明の方法において使用する前に処理工程に付してもよい。例えば本発明における使用前にin vitroでサンプルを培養してもよい。
【0020】
本発明の好ましい態様では病原体は、C型肝炎ウイルスであり、本発明の方法は、血液及び他の組織のいずれかから無傷のC型肝炎ウイルス粒子を検出するために使用することができる。特に好ましい態様においては本発明の方法を、血液及び他の組織のいずれかから無傷のC型肝炎ウイルス粒子を濃縮及び検出するために使用することができる。
【0021】
細胞表面受容体及びその一部のいずれかの性質は、病原体を特異的に結合する限り、特に制限されない。受容体及びその一部のいずれかは、in vivoでの病原体の野生型感染の際に病原体に結合するタンパク質であることが好ましい。特に、この野生型感染は、哺乳動物、例えばヒトへの感染である。
【0022】
用語「その一部」とは、細胞表面受容体タンパク質の断片を意味する。前記断片は、ウイルスへの結合を可能にするために正しい立体構造(即ち、野生型の立体構造)をとることができるように、十分に長いことが好ましい。しかし、より短い断片であっても、ウイルスの有効な検出及び分離の少なくともいずれかが可能となるのに十分高いアフィニティーでウイルスと結合するならば、これらの断片も使用することができる。特に、本発明の一実施形態においては、前記断片は、in vivoで細胞表面の外膜上に露出する前記受容体の部分を含むのが好ましい。
【0023】
前記受容体及びその一部のいずれかは、高アフィニティー及び高アビディティーのいずれかで病原体と結合するタンパク質であることが好ましい。特に受容体は、病原体を、10−4M及びこれより高い親和性を示す解離定数(KD)のいずれかで結合するタンパク質である。受容体が病原体を10−6MのKDで結合タンパク質であることが最も好ましい。これらの値は、従来技術の諸方法において成功裏に用いられるタンパク質の解離定数に匹敵する。例えば、10−4MのKDを有する抗体が使用されている。更に、グルタチオンとグルタチオン−S−トランスフェラーゼは、「良好」と見なされる約10−6MのKD(解離定数)を有し、そしてGSTタグが組換えタンパク質を精製するのに使用されている(Nieslanik及びAtkins The Catalytic Tyr−9 of Glutathione S−Transferase A1−1 Controls the Dynamics of the C terminus. J.Biol.Chem. 2000年,275巻(23号),pp.17447−51)。自然抗体は、最高で約10−9Mのアフィニティーを有する。更に、CD81も、約10−9MのKDでHCVタンパク質に結合することが示されており、これは、「強い」親和性と見なされる。ビオチンは、ストレプトアビジンに10−15MのKDで結合し、これは、「非常に強く−殆ど共有結合に近い」親和性と見なされる(Boder et al. “Directed evolution of antibody fragments with monovalent femtomolar (10−15M) antigen−binding affinity.” PNAS. 2000年,97巻(20号),pp.10701−5)。
【0024】
好ましい実施形態においては、前記細胞表面受容体は、in vivoでの野生型感染の際に、病原体の結合及び細胞への侵入の少なくともいずれかを可能にするタンパク質、又は病原体結合及び細胞侵入の少なくともいずれかに部分的に関与するタンパク質である。
【0025】
更に好ましい実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、病原体と結合してタンパク質−病原体複合体を形成する。
【0026】
前記細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを本発明の方法に使用できる。本発明の一態様においては、前記タンパク質及びその一部のいずれかは、融合タンパク質として使用される、即ち、タグに結合させられる。適切なタグ、即ち融合タンパク質のパートナーには、二量体化し結合を促進することが示されているグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)等がある。
【0027】
特にGSTタグは、病原体粒子の濃縮、分離、及び精製のいずれかが必要とされる方法に使用することができる。前記GSTタグは、細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかのN末端及びC末端のいずれかに融合される。GST−融合タンパク質は、例えばE.coli等の細菌システムにおいて組換えタンパク質として容易に産生することができる。GST融合タンパク質にサンプルを接触させて病原体を結合させた後、GST−融合タンパク質−病原体複合体を、GSTの基質であるグルタチオンと接触させることによってサンプルから分離することができる。特に、このグルタチオンで、セファロースビーズを被覆してもよい。前記複合体がビーズに結合した時点で、洗浄してサンプルの残りを除去し、サンプルの残りと病原体とを分離し、病原体を濃縮する。
【0028】
本発明の別の実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、GFP及び他のレポータータンパク質のいずれかとの融合タンパク質として使用される。このような融合タンパク質は、サンプル中の病原体の有無の検出に抗体の場合と同様にして使用することができる。図4に示す概略図は、この実施形態がどのように行われるかを示す。具体的には、受容体(例えばCD81LEL)遺伝子及びレポーター(例えばGFP)遺伝子を、適切なプロモーター配列と、ポリアデニル化配列と、必要に応じて精製用タグ(例えばGST、ポリヒスチジン、IgGFcなど)とを含有するプラスミド中にクローン化することができる。前記の各遺伝子は、プラスミド中に同時に存在し、小型のリンカー領域で隔てられていてもよい。前記プラスミドを、次に細胞(細菌細胞及び真核細胞のいずれか)に形質導入又はトランスフェクトする。そして、発現した組換え受容体/レポーター融合タンパク質は、確立された技法を使用して精製することができる(例えばGSTタグに対するグルタチオンカラムの使用、及び、抗受容体抗体若しくは抗レポーター抗体で被覆されたカラムの使用のいずれか)。
【0029】
(未結合)受容体は、プラスチックイムノプレート、アガロースビーズ、磁性ビーズ等の不活性表面上に固定化させる。前記磁性ビーズの直径は、10nm以上であることが好ましく、10nm〜10μmであることがより好ましく、100nm〜5μmであることが更に好ましい。これらのビーズの市販品としては、Dynabeads(Invitrogen Corporation)、MACSビーズ(Miltenyi Biotec)、Bio−Adembeads(Ademtech Parc Scientifique Unitec)等を利用することができる。アガロースビーズもまた適切なものが市販されており、例えばPolysciences,Incから入手することが利用できる。
【0030】
固定化された無傷の病原体を、前記受容体/レポーター融合タンパク質を用いて検出することができる。レポーターが蛍光性を有する場合、レポーターは直接検出できる。レポーターは、また、基質の化学的特性の変化を誘発することができる酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等)であってもよい。更には、抗レポーターコンジュゲート抗体を、病原体の有無を検出するために使用することもできよう。
【0031】
病原体が受容体へのドッキング部位を複数有するウイルスである場合には、これら部位の幾つかは、捕捉のために用いることができ、また他の幾つかは、検出のために用いることができる。
【0032】
前記融合タンパク質は、不活性表面及び固体表面上のいずれかに結合させることができる。適切な表面としては、例えば受動的吸着(例えば重炭酸ナトリウム緩衝液を用いて)、イオン性吸着、臭化シアン、カルボジイミド、ニッケル/ヒスチジン、光化学反応等の多数の利用可能なカップリング化学反応を用いて前記融合タンパク質を結合させることができる磁性ビーズ及びアガロースビーズのいずれかなどがある。また、前記融合タンパク質は、融合タンパク質を前記表面に結合させることを可能にする更なるタンパク質及びペプチドのいずれかを含んでいてもよい。例えば、アビジンで被覆したビーズへ結合させるために、前記融合タンパク質にビオチンタグを付加してもよい。
【0033】
利用可能と考えられるRNAウイルスとそのそれぞれに対応する細胞表面受容体の組み合わせは、C型肝炎ウイルスとCD81(特にCD81の大型細胞外ループ(LEL));C型肝炎ウイルスとCD209;C型肝炎ウイルスとCD209L;ライノウイルスとICAM1;ヒト免疫不全ウイルスとCD4;ヒト免疫不全ウイルスとCCR5;インフルエンザとシアロ糖タンパク質等である。
【0034】
利用可能と考えられるDNAウイルスとそのそれぞれに対応する細胞表面受容体の組み合わせは、単純ヘルペスウイルスとnectin−1(Spear et al. Different receptors binding to distinct interfaces on herpes simplex virus gD can trigger events leading to cell fusion and viral entry. Virology. 2006年,344巻(1号),pp.17−24;Compton. Receptors and immune sensors: the complex entry path of human cytomegalovirus. Trends in Cell Biology. 2004年,14巻(1号));サイトメガロウイルス(CMV)(同じく、ヘルペスウイルス)と上皮増殖因子受容体(EGFR)(Spear. Herpes simplex virus: receptors and ligands for cell entry. Cell Microbiol. 2004年,6巻(5号),pp.401−10);麻疹とCD150(Sidorenko及びClark The dual−function CD150 receptor subfamily: the viral attraction. Nat Immunol. 2003年,4巻(1号),pp.19−24);エプスタイン−バーウイルス(腺熱及び多数の癌を引き起こす)と補体受容体2(CR2)(Fingeroth et al. Epstein−Barr virus receptor of human B lymphocytes is the C3d receptor CR2. PNAS. 1984年、81巻,pp.4510−14)等である。
【0035】
本発明の1つの態様においては、病原体がC型肝炎ウイルス(HCV)であり、細胞表面受容体がCD81である。HCVは、フラビウイルス科のプラス鎖RNAウイルスである。肝細胞及びBリンパ球等の種々の細胞に発現する細胞表面受容体であるCD81が、HCVのエンベロープタンパク質E2に結合することが示されている。特に、CD81の大型細胞外ループ(LEL)が、HCV粒子に結合することが示されている(Pileri et al. Binding of Hepatitis C virus to CD81. Science. 1998年,282巻,pp.938−41)。更に、他の有用な受容体としては、CD209、CD209L等(Cormier et al. L−SIGN (CD209L) and DC−SIGN (CD209) mediate transinfection of liver cells by hepatitis C virus. PNAS 2004年,101巻(39号),pp.14067−14072)及びこれらに由来するペプチドのいずれかがある。
【0036】
これらの及び他のウイルス−受容体の組み合わせを次の表1に示す。
【表1】
【0037】
好適な細菌と受容体との組み合わせを次の表2に示す。
【表2】
出典:http://textbookofbacteriology.net/colonization.html
【0038】
更に、次の表3に好適な寄生生物と受容体の組み合わせを示す。
【表3】
【0039】
本発明の好ましい態様においては、被験体を診断する方法が提供される。具体的には、被験体における病原体の有無を診断する方法であって、
(a)被験体からサンプルを採取する工程と、
(b)前記サンプルにおける病原体の有無を上述の方法によって決定する工程と、
(c)工程(b)の結果に基づいて診断を行う工程とを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0040】
更に本発明は、被験体由来のサンプルにおいて病原体の有無を決定するためのキットであって、上述の融合タンパク質を含むキットを提供する。特に、前記融合タンパク質は、細胞表面受容体の全部及び一部のいずれかと緑色蛍光タンパク質(GFP)とを含み、前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかは、病原体のin vivoでの野生型感染において病原体に結合するタンパク質である。特定の実施形態においては、前記細胞表面受容体タンパク質は、CD81、CD209、及びCD209Lのいずれかである。
【0041】
本発明のキットは、被験体から採取したサンプル中及び環境由来サンプル中のいずれかの病原体の有無を決定するのに使用できる。
【0042】
更にキットは、細胞表面受容体タンパク質に結合した磁性ビーズ及び不活性ビーズのいずれか、例えばCD81LELが結合した磁性ビーズ及び不活性ビーズのいずれかを含むことができる。あるいは、前記キットは、遊離のCD81LELなどの、単独で存在する細胞表面受容体タンパク質と、カップリング緩衝液とを含むことができる。カップリング緩衝液は、例えばCD81のビーズへの結合など、ペプチド/タンパク質等の不活性表面との効率的な共有結合若しくは水素結合、及び他のタンパク質/ペプチド/核酸等との効率的な共有結合若しくは水素結合のいずれかを可能にする最適なレベルの塩、pH等を有する緩衝液である。適切なカップリング緩衝液の例としては、0.1M炭酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH9.0;0.1Mホウ酸ナトリウム、pH8.5;0.02Mリン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、及び3.0g/Lシアノ水素化ホウ素ナトリウム、pH7.5;0.01M K2HPO4、0.15M NaCl、pH5.5などが挙げられる。
【0043】
本発明のキットは、次の緩衝液の1以上を更に含んでいてもよい:洗浄緩衝液、結合緩衝液、溶出緩衝液、及び希釈緩衝液。
【0044】
洗浄緩衝液は、非特異的に結合した汚染物質の除去に使用され、また最適レベルの塩、pH等を有する。この緩衝液は、また、Tween−20、nonidet等の非イオン性界面活性剤をしばしば含有する。
【0045】
結合緩衝液は、関心のあるアナライトの結合(例えばHCVのCD81への結合)を最適化し、その例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。
【0046】
ブロッキング緩衝液は、「遊離の」反応基をブロックすることによって、人工的にシグナルを増加させることもある汚染物質(例えば第二抗体など)の結合を防止する。ブロッキング緩衝液は、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、1Mエタノールアミン、魚皮ゼラチン、ブタゼラチン等を含有することができる。
【0047】
溶出緩衝液は、関心のあるアナライトを結合状態から分離状態とすることを可能にし、最適レベルの塩等を含有する、及び結合した抗原と直接競合する可溶性化合物を含有するのいずれかである。例えば、グルタチオンカラムに結合したGST融合タンパク質は、10mMの還元型グルタチオンを含有する緩衝液によって溶出される。加えて、溶出を最適化するために、これら溶液のpHを他の緩衝液のpHよりも上昇させたり低下させたりすることができる。例としては、グリシン緩衝液を挙げることができる。
【0048】
希釈緩衝液は、サンプルを希釈して実際に使用できる範囲内の濃度にするために使用され、その後の反応には干渉しない緩衝液である。例としては、トリス緩衝液、PBS等を挙げることができる。
【0049】
更に、本発明のキットは、基質及び基質緩衝液;陽性対照及び陰性対照;検量用物質(calibrators)、検出タンパク質、及び増幅タンパク質(amplification proteins)を更に含んでいてもよい。
【0050】
受容体で被覆されたビーズを含む場合には、前記キットには多くの用途が見出される。前記受容体被覆ビーズは、例えば、診断及び研究の両方において使用できる。医学的用途の例としては、透析タイプの療法において患者の血液から病原体(例えばHCV)ウイルス粒子を除去することが挙げられる。前記ビーズを、患者由来のサンプル(血液及び生検材料のいずれか)及び培養サンプルのいずれかに混合することができる。ビーズをウイルスに結合させ、次いで例えば電磁石上に固定化することができる。続いて前記ビーズを洗浄し、必要に応じて以降の用途のために汚染物質を除去することができる。結合したウイルス粒子を次に少量の液体中で崩壊させて(即ち濃縮し)核酸、タンパク質、及び脂質を放出させることができ、これらの試料は、更なる分析のために利用することができる。あるいは、GSTタグを切断し(確立されたプロトコールを使用して)、CD81LELに結合した精製済の無傷のウイルスを研究用途における更なる分析のために使用することができる。
【実施例】
【0051】
(背景及び概略図)
図3及び図4は、本発明がどのようにウイルス(例えばHCV)及び細胞表面受容体タンパク質(例えばCD81)のLEL部分に働きかけるかについての概略図である。
【0052】
受容体(例えばCD81 LEL)遺伝子を、適切なプロモーター配列、ポリアデニル化配列、更には精製用タグ(GST、ポリヒスチジン、IgGFc等)を含有するプラスミド中にクローン化する。次に前記プラスミドの、細胞(細菌細胞及び真核細胞のいずれか)への形質導入及びトランスフェクトのいずれかを行う。そして、発現した受容体タンパク質は、確立された技法(例えばGSTタグを利用する場合にはグルタチオンカラム、抗受容体抗体被覆カラム、プロテインA/Gカラム等)を用いて精製することができる。
【0053】
次に前記精製ペプチドを、例えば磁性ビーズ、非磁性ビーズ、免疫吸着プレート等の不活性表面に結合させるが、不活性表面は、これらに制限されるものではない。次に、無傷HCVウイルスを含有する血漿を添加してインキュベートし、ウイルス粒子を固定化受容体に接触させる。続いて血漿を除去しウイルス粒子を少量の液体に再懸濁する。このプロセスには、確立された手段による検出及び上述した受容体/レポーター法を介した検出のいずれかに先立ち、HCVウイルスを濃縮する働きがある。
【0054】
以下の実施例において使用される略語は、以下の意味を有する。
BSA ウシ血清アルブミン
CD81 分化抗原81のクラスター
EDAC N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩
HCV C型肝炎ウイルス
HCVpp HCV擬似粒子(HCV pseudoparticles)
HIV ヒト免疫不全ウイルス
IgG 免疫グロブリンG
LEL 大型細胞外ループ(CD81の)
mAb モノクローナル抗体
MES 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
NHS N−ヒドロキシコハク酸イミド
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RT−PCR 逆転写PCR
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
【0055】
(実施例1−HCV擬似粒子を濃縮するためのアッセイにおけるCD81被覆ビーズの使用)
この実施例では、粒子表面上にHCVのE1、E2を発現するHCV擬似粒子(HCVpp)を濃縮するアッセイにおける、CD81被覆ビーズの構築及び使用について詳述する。
【0056】
CD81は、HCVを結合するための受容体である。HCV表面上のE2タンパク質は(E1との複合体として)、大型細胞外ループ(LEL)を介してCD81に直接結合する(図5参照)。加えて、CD209及びCD209L等の他の受容体もまた、ウイルスの細胞への結合において重要であることが示されている。
【0057】
(方法)
<CD81LEL−GSTの設計、クローン化、発現、及び精製>
この実施例において使用されるCD81LEL−GST融合タンパク質は、自由に利用可能な配列(受託番号:NM004356、EF064749、及びBC093047)を使用して設計した。使用したCD81LELのアミノ酸配列及びDNA配列を、図6及び以下に示す:
【0058】
【0059】
【0060】
この設計には、E2エンベロープタンパク質に結合することが先に示されているCD81LELを含んでいた。CD81LELをヒトcDNAライブラリーから得ると共に増幅し、これを、標準的な分子生物学的技法を使用して遺伝子改変したGST遺伝子(FusionAntibodies,Ltd(ベルファスト、北アイルランド)製)を含有するpGEX6p−1ベクター(GE Healthcare Life Sciences)中にクローン化した。このGSTのアミノ酸配列及びDNA配列を、図7及び以下に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
この融合タンパク質の発現は、E.coliの実験室株(BL21 STAR株)を使用して達成した。先ず、この融合タンパク質を、封入体(そのドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲル(SDS−PAGE)像は、図8参照のこと)を単離することによって単離した。精製タンパク質の可溶化及びリフォールディングは、透析によって行った。リフォールディングの間、凝集は、見られなかった。この発現融合タンパク質を、更に、グルタチオンアガロースカラム(GSTrapカラム)に添加し、PBSで洗浄し、遊離グルタチオン(これは、後に透析によって除去される)を用いて溶出し、カラムクロマトグラフィーを用い濃縮して精製した。この融合タンパク質の濃度(0.6mg/mL)を、SDS−PAGEゲル上で既知量のBSAと比較し(図9)、またタンパク質アッセイキット(PierceのMicro BCA)を使用することによって(図10)決定した。そのデータを以下に示す。
【表4】
【0064】
<CD81LEL−GSTの常磁性マイクロビーズへの結合>
CD81LEL−GST融合タンパク質を、Dynal(Invitrogen)の直径2.8μmのカルボン酸被覆常磁性ビーズに共有結合させた。比較のために、ビオチン化CD81LEL−GSTをストレプトアビジン被覆ビーズ(非共有結合とはいえ強力な水素結合によって結合している)と混合した。使用した濃度及び技法は、製造元の推奨事項に基づいたものである。次に、HCVppの濃度測定が可能かどうかを判定するアッセイにこのビーズを使用した。
【0065】
3%ビーズ懸濁液1mgに対し500μgの融合タンパク質の濃度割合で、マイクロビーズを融合タンパク質で被覆した。
【0066】
(材料)
【表5】
【0067】
<カルボン酸活性化ビーズへのCD81LEL−GSTの共有結合>
Dynabeadsを0.136mL(2.72×108ビーズ)ずつ1.5mLチューブに等分した。このビーズを、磁石を使用して1分間固定化することによって洗浄した。上清を取り除き、1mLの50mM MESを添加した。この溶液を、rotamixerを用いて5分間穏やかに回転することにより混合した。ビーズを前述のようにして固定化し、上清を取り除いた。この洗浄工程は、2回繰り返した。0.925mLの50mM MES溶液を、溶液から分離したビーズに添加した。この溶液を回転により5分間混合した。50mMのMESに60mg/mLでNHSを溶解させた溶液25μLを、50mMのMESに100mg/mLでEDACを溶解させた溶液25μLと共にビーズに添加し、結合用のビーズを調製した。この溶液を15分間回転し、次に上清を前述と同様にして取り除いた。この活性化工程は、2回繰り返した。0.9mLのCD81LEL−GST溶液を、pHを維持するための0.5mLの50mM MES溶液と共にビーズに添加した。100μLの1Mトリス−塩酸緩衝液を混合物に添加し、続いてこれを1時間回転し、その後上清を前述と同様にして除去した。このビーズを1mLの洗浄緩衝液中に穏やかに再懸濁した。次にこの混合物を5分間回転し、前述と同様にして上清を除去した。この洗浄工程をもう1度繰り返し上清を除去した。ビーズは、1mLの希釈緩衝液に再懸濁し、2℃〜8℃で保存した。
【0068】
タンパク質のカルボキシル基への結合に関する化学反応を図11に示す。脱水剤であるEDACがビーズ上のカルボキシル基と反応して、アミン反応性O−アシルイソウレア中間体を形成する。NHS分子が、中間体をアミン反応性スルホ−NHSエステルへ変換することによって中間体を安定化させ、これは、EDACが媒介する結合反応の効率を向上させる。
【0069】
(実施例2−CD81濃縮HCVpp eGFP遺伝子のRNA単離、逆転写、PCR増幅)
(材料)
HCV擬似粒子
MagMAXウイルスRNAキット−Cat#AM1939 Lot#0709004
Forwardプライマー−Oligo No 70727 Bruce 2F03 3/4
Reverseプライマー−Oligo No 70731 Bruce 2A014/4
高圧蒸気滅菌水
逆転写酵素(improm II)−M314A Lot#24139602
逆転写酵素緩衝液×5−Cat# M289A Lot# 17198558
MgCl2−Cat# A351H Lot# 22535642
SYBR green−Lot#125k1212
アガロース−A9539−25G Lot#12kk0157 ×10TAE緩衝液
PCR精製キット−Cat#28104 GR# 21166/1 Lot# 127147854
RNase H−Cat#M02975 5000U/ml Lot# 3
RNase ×10緩衝液−Cat# B0297S Lot#1105
Easy A high fidelity PCR master mix−Cat#600640−51 Lot#0870448
Quick load 2−log ladder−#N0469S Lot:5
Corning thermowell gold PCR tubes 0.5ml−lot#32006023
Corning thermowell gold PCR tubes 0.2ml−lot#08807020
高圧蒸気滅菌PBS
【0070】
<ウイルスの濃縮>
100μLの擬似粒子溶液(ウイルス濃度:105/mL)と100μLの被覆済みビーズとを500μLのPCRチューブに添加した。得られたミックスを3秒間、中程度の速度でボルテックスした。この処理チューブを37℃で1時間インキュベートした。次に、ビーズを捕捉するために処理チューブをマグネットスタンドに移動させた。このチューブを、マグネットスタンド上に30秒間放置し、その後、注意深く上清を吸引除去した。次に、100μLのPBS(10mM)をサンプルに添加した。ボルテックスする工程、インキュベートする工程、マグネットスタンドに設置する工程、及び吸引する工程を繰り返し、ビーズを20μLのPBS中に再懸濁した。
【0071】
<MagMaxウイルスRNAの単離>
各処理チューブに、200μLの調製済みMagMaxウイルスRNA単離キット溶解/結合溶液と、20μLのビーズミックスと、100μLのサンプル(擬似粒子)と、75μLのMagMaxウイルスRNA単離キット洗浄溶液no.1とを添加した。3秒間ボルテックスすることにより、混合した。ビーズを捕捉するために処理チューブをマグネットスタンドに移動させた。このチューブを、マグネットスタンド上に30秒間放置し、その後、注意深く上清を吸引除去した。次に、112μLのMagMaxウイルスRNA単離キット洗浄溶液no.2をサンプルに添加した。ボルテックスする工程、インキュベートする工程、マグネットスタンドに設置する工程、及び吸引する工程を繰り返し、50μL溶出緩衝液をサンプルに添加し、5秒間ボルテックスした。RNA結合ビーズをマグネットスタンド上で30秒間捕捉した。RNAを含有する上清を、ヌクレアーゼを含有しない容器に移した。
【0072】
<逆転写プロトコール>
PCRを行うためには、このGFPのRNAを先ずcDNAへ逆転写する必要がある。これは、次のプロトコールを使用することで達成した。
1.プライマー及びRNAを共に加え、70℃で5分間融解させ、次にこれらを氷上に移した。この工程によって、プライマーのRNAへのアニーリングを行った。
2.最初のプライマー/RNA混合物を氷冷した後、残りの成分を添加した。
【0073】
逆転写のための成分を以下に示す。
全RNA=50μL(精製工程において回収した50μL)
GFP Reverseプライマー=5μL
H2O=逆転写用成分の最終容量を100μLにするために補充される量=9μL
酵素緩衝液×5=20μL
MgCl2=10μL
10mM dNTPs=5μL
逆転写酵素=1μL
【0074】
用いた逆転写プログラムは、42℃で2分間、95℃で5分間、次に4℃に維持するものとした。
【0075】
<RNase H処理>
PCRを終了した後、如何なる残存RNA鎖をも消化するために1μLのRNase Hを添加した。この酵素を11μLの×10RNase緩衝液と共に添加した。反応混合物を37℃で10分間、続いて95℃で5分間置いた。
【0076】
<QIAquick PCR精製微小遠心プロトコール>
1容量の前記PCR反応物に対して5容量のバッファーPBIを添加し、混合した。QIAquickカラムを、提供された2mLのコレクションチューブ中に設置した。前記サンプルをこのQIAquickカラムにアプライし、カラムを30秒間〜60秒間遠心した。フロースルーを廃棄し、QIAquickカラムを同一のチューブ中に戻した。洗浄のために0.75mLのバッファーPEをQIAquickカラムに添加し、カラムを30秒間〜60秒間遠心した。フロースルーを廃棄し、QIAquickカラムを同一のチューブ中に戻した。カラムを2mLのコレクションチューブ(提供される)中で1分間遠心した。各QIAquickカラムを、汚染物質を含まない1.5mLの微小遠心管中に設置した。50μLのバッファーEB(10mMトリス−HCl,pH8.5)及び水のいずれかを、QIAquickメンブランの中心に添加し、カラムを1分間遠心しDNAを溶出させた。DNA濃度を増大させるために、30mLの溶出緩衝液(elution buffer)を前記QIAquickメンブランの中心に添加し、このカラムを1分間放置し次いで遠心した。精製DNAをゲル上で分析する場合には、5容量の精製DNAに対して1容量のローディングダイを添加する。ゲルに添加する前に、ピペットでこの溶液の吸い上げと吐き出しを行って混合した。
なお、全ての遠心は、17,900×gで行った。
【0077】
<PCRプロトコール>
ここで上述の工程において製造されたcDNAを、使用してPCRによって増幅することができるようになっている。これは、以下のようにして行った。
【0078】
成分:
cDNA=1μL(RT−PCRからの製造物の一部)
GFP Forwardプライマー=2μLの10pmole/μL溶液
GFP Reverseプライマー=2μLの10pmole/μL溶液
H2O=成分の最終容量を50μLにするために補充される量
Easy A high fidelity master mix=25μL
(dNTPs、酵素、及びMgCl2を含有する)
【0079】
用いたプログラムは、95℃で2分間の初期変性ステップと、これに続いて、95℃(0.30);55℃(0.30);72℃(0.10)を1サイクルとする処理を25サイクル行うステップと、72℃で7.00の処理を行うステップと、4℃に保持するステップとを含む。
【0080】
<増幅試験>
TAE(1gのアガロースを100mL緩衝液に溶解)を用いて0.75%のアガロースゲルを調製した。SYBR green(50μLに対して1μL)を用いてDNAを染色した。5μLのローディングバッファーを各50μLの反応混合物にピペットで添加し、続いてその10μLをゲルのウェルにピペットで添加した。SYBR greenを添加した10μLのquick load 2 log ladderを、ゲルのレーン1に添加した。電気泳動を、150V、100mAで1時間30分間行った。
【0081】
<結果>
図12は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動像を示す。ゲルを構成するレーンは;+ve対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81被覆ビーズ、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve対照、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【0082】
図13は、3種のPCR産物の蛍光測定値を示す。励起波長、497nm;520nmの波長の発光を読み取る。
【0083】
図14は、HCVppからのPCR増幅eGFP遺伝子のゲル電気泳動像を示す。キー;D、2log−DNA Ladder;+ve、陽性対照、RNA単離ビーズを直接混合したHCVpp;CD81、磁性ビーズに共有結合させたCD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;CD81B、ストレプトアビジン被覆磁性ビーズに結合させたビオチン化CD81LEL−GSTを使用して濃縮したHCVpp;−ve、陰性対照(cDNA鋳型はない)。
【0084】
結論として、CD81LEL−GSTを共有結合させた磁性ビーズ及びビオチン化CD81LEL−GSTを結合させたストレプトアビジン被覆磁性ビーズの両方が、HCVppを200μLの出発容量から20μLまで濃縮するのに使用可能であるということが言える。このHCVppを、その後、崩壊させてRNAを単離し、PCR増幅反応を用いて検出することができる。したがって、細胞表面受容体を用いて病原体(ウイルスなど)の検出及び濃縮/精製の少なくともいずれかを行う方法の有効性が示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
方法がマイクロ流体法及びナノ流体法のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを診断フロープロセス(diagnostic flow process)の一部として行う請求項2から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が、サンプルと、細胞表面受容体タンパク質の病原体を結合させる部分のみとを接触させる工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
細胞表面受容体タンパク質が、病原体のin vivoでの野生型感染(wild−type infection)の間、病原体に結合させられるタンパク質である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
タンパク質に結合した病原体を濃縮する工程を更に含む請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サンプルにおける病原体を定量する工程を更に含む請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タンパク質に結合した病原体をサンプルから分離する工程を更に含む請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
病原体がウイルス及び細菌のいずれかである請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ウイルスがRNAウイルスである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞表面受容体タンパク質がCD81受容体、CD209受容体、及びCD209L受容体から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞表面受容体タンパク質の一部がCD81受容体の大型細胞外ループ(LEL)である請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)である請求項11に記載の方法。
【請求項16】
細胞表面受容体タンパク質がCD4及びCCR5のいずれかである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ウイルスがインフルエンザウイルスである請求項11に記載の方法。
【請求項18】
細胞表面受容体タンパク質が、α2−3結合シアル酸受容体及びα2−6結合SA受容体のいずれかから選択されるシアロ糖タンパク質である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスがライノウイルスである請求項11に記載の方法。
【請求項20】
細胞表面受容体タンパク質がICAM1である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
受容体の全部及び一部のいずれかが固体表面に結合される請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
固体表面がビーズである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ビーズが磁性ビーズである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ビーズが非磁性ビーズである請求項22に記載の方法。
【請求項25】
受容体の全部及び一部のいずれかが、融合タグを有する融合タンパク質である請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
融合タグがグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
融合タグが蛍光タンパク質である請求項25に記載の方法。
【請求項28】
病原体の有無の決定、及び、病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかのいずれかが被験体からのサンプルにおいて行われる請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
サンプルが被験体から採取された体液である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
体液が血液、尿、血清、及び血漿から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
病原体の有無の決定、及び、病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかのいずれかが環境由来サンプルにおいて行われる請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
サンプルが土壌サンプル、大気サンプル、及び水サンプルのいずれかである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
被験体における病原体の存在を診断する方法であって、
(a)被験体からサンプルを採取する工程と、
(b)前記サンプル中の病原体の有無を請求項1から30のいずれかに記載の方法によって決定する工程と、
(c)工程(b)の結果に基づいて診断を行う工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
(a)サンプルを採取する工程と、
(b)サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを請求項1から30のいずれかに記載の方法によって行う工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
細胞表面受容体の全部及び一部のいずれかと緑色蛍光タンパク質(GFP)とを含む融合タンパク質であって、細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかが病原体に結合するタンパク質である融合タンパク質。
【請求項36】
細胞表面受容体タンパク質がCD81、CD209、及びCD209Lのいずれかである請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
サンプル中の病原体の存在を決定する方法における、及び、サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行う方法のいずれかにおける、請求項35から36のいずれかに記載の融合タンパク質の使用。
【請求項38】
マイクロ流体法及びナノ流体法のいずれか、及び診断フロープロセスの少なくともいずれかにおける請求項35から36のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
請求項1から28のいずれかに記載の方法における請求項37から38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
被験体において病原体の存在の診断を行う方法における請求項37から39のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
請求項33から34のいずれかに記載の方法における請求項40に記載の使用。
【請求項42】
サンプル中の病原体の存在を決定するため、及び、サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行うため、のいずれかのキットであって、請求項35から36のいずれかに記載の融合タンパク質を含むことを特徴とするキット。
【請求項43】
サンプルが被験体由来のサンプルである請求項42に記載のキット。
【請求項44】
サンプルが環境由来サンプルである請求項42に記載のキット。
【請求項1】
サンプル中の病原体の有無を決定する方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
a)前記病原体を結合することができる細胞表面受容体タンパク質の全部及び一部のいずれかを、前記サンプルに接触させる工程と、
b)前記細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかを前記病原体に結合させる工程と、
c)前記受容体タンパク質及びその一部のいずれかを結合させた病原体の有無を決定する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
方法がマイクロ流体法及びナノ流体法のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかを診断フロープロセス(diagnostic flow process)の一部として行う請求項2から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が、サンプルと、細胞表面受容体タンパク質の病原体を結合させる部分のみとを接触させる工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
細胞表面受容体タンパク質が、病原体のin vivoでの野生型感染(wild−type infection)の間、病原体に結合させられるタンパク質である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
タンパク質に結合した病原体を濃縮する工程を更に含む請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サンプルにおける病原体を定量する工程を更に含む請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タンパク質に結合した病原体をサンプルから分離する工程を更に含む請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
病原体がウイルス及び細菌のいずれかである請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ウイルスがRNAウイルスである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞表面受容体タンパク質がCD81受容体、CD209受容体、及びCD209L受容体から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞表面受容体タンパク質の一部がCD81受容体の大型細胞外ループ(LEL)である請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)である請求項11に記載の方法。
【請求項16】
細胞表面受容体タンパク質がCD4及びCCR5のいずれかである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ウイルスがインフルエンザウイルスである請求項11に記載の方法。
【請求項18】
細胞表面受容体タンパク質が、α2−3結合シアル酸受容体及びα2−6結合SA受容体のいずれかから選択されるシアロ糖タンパク質である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスがライノウイルスである請求項11に記載の方法。
【請求項20】
細胞表面受容体タンパク質がICAM1である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
受容体の全部及び一部のいずれかが固体表面に結合される請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
固体表面がビーズである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ビーズが磁性ビーズである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ビーズが非磁性ビーズである請求項22に記載の方法。
【請求項25】
受容体の全部及び一部のいずれかが、融合タグを有する融合タンパク質である請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
融合タグがグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
融合タグが蛍光タンパク質である請求項25に記載の方法。
【請求項28】
病原体の有無の決定、及び、病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかのいずれかが被験体からのサンプルにおいて行われる請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
サンプルが被験体から採取された体液である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
体液が血液、尿、血清、及び血漿から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
病原体の有無の決定、及び、病原体の捕捉、濃縮、精製及び単離の少なくともいずれかのいずれかが環境由来サンプルにおいて行われる請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
サンプルが土壌サンプル、大気サンプル、及び水サンプルのいずれかである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
被験体における病原体の存在を診断する方法であって、
(a)被験体からサンプルを採取する工程と、
(b)前記サンプル中の病原体の有無を請求項1から30のいずれかに記載の方法によって決定する工程と、
(c)工程(b)の結果に基づいて診断を行う工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行う方法であって、
(a)サンプルを採取する工程と、
(b)サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを請求項1から30のいずれかに記載の方法によって行う工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
細胞表面受容体の全部及び一部のいずれかと緑色蛍光タンパク質(GFP)とを含む融合タンパク質であって、細胞表面受容体タンパク質及びその一部のいずれかが病原体に結合するタンパク質である融合タンパク質。
【請求項36】
細胞表面受容体タンパク質がCD81、CD209、及びCD209Lのいずれかである請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
サンプル中の病原体の存在を決定する方法における、及び、サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行う方法のいずれかにおける、請求項35から36のいずれかに記載の融合タンパク質の使用。
【請求項38】
マイクロ流体法及びナノ流体法のいずれか、及び診断フロープロセスの少なくともいずれかにおける請求項35から36のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
請求項1から28のいずれかに記載の方法における請求項37から38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
被験体において病原体の存在の診断を行う方法における請求項37から39のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
請求項33から34のいずれかに記載の方法における請求項40に記載の使用。
【請求項42】
サンプル中の病原体の存在を決定するため、及び、サンプル中の病原体の捕捉、濃縮、精製、及び単離の少なくともいずれかを行うため、のいずれかのキットであって、請求項35から36のいずれかに記載の融合タンパク質を含むことを特徴とするキット。
【請求項43】
サンプルが被験体由来のサンプルである請求項42に記載のキット。
【請求項44】
サンプルが環境由来サンプルである請求項42に記載のキット。
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図7】
【図10】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【公表番号】特表2010−518046(P2010−518046A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548679(P2009−548679)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051361
【国際公開番号】WO2008/095905
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507194084)アイティーアイ・スコットランド・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051361
【国際公開番号】WO2008/095905
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507194084)アイティーアイ・スコットランド・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】
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