説明

病原体不活化のための脆い化合物

【課題】物質中の病原体を不活化するための化合物を提供すること。
【解決手段】物質中の病原体を不活化するための化合物および方法が述べられ、赤血球製剤および血漿のような生物学的物質における病原体の不活化のための組成物および方法を包含する。この化合物および方法は、臨床試験または輸血のようなインビトロまたはインビボでの使用を意図した物質の処置のために使用し得る。化合物は核酸に特異的に結合しおよび核酸と反応し、次いで分解して分解生成物を形成するように設計される。好ましくは、分解反応は核酸との反応よりも遅い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願番号第60/043,696号(1997年4月15日出願)の利益を請求し、この開示は本明細書中で参考として援用される。
【0002】
本願はまた、米国特許出願番号第08/779,885号の一部継続出願(1997年1月6日出願)であり;および米国特許出願番号第08/779,830号の一部継続出願(1997年1月6日出願)であり、これらの開示は本明細書中で参考として援用される。
【0003】
連邦委託研究のもとでなされた発明に対する権利の記載
本発明は、NHLBIのGrant 1−RO1−HL41221のもと、米国政府の支援によってなされた。米国政府は本発明において特定の権利を有する。
【0004】
技術分野
本発明は、物質(例えば、血液製剤)の病原体不活化に有用な化合物、およびこの化合物の使用法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
血液製剤および他の生体物質による疾患の伝染は、重大な健康問題のままである。血液ドナーのスクリーニングおよび血液試験において有意な進歩が生じたが、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、低レベルのウイルスまたはウイルス抗体により、試験の間、血液製剤における検出から逃れ得る。ウイルスの危険性に加え、輸液における使用が意図される、血液中の細菌および原生動物の存在をスクリーニングするための認可された試験は、現在ない。また、今までは未知の病原体が血液供給において流行し得、そして疾患伝染の恐れを示し得るという危険も存在し、これは実は、血液の輸液を介したHIV伝染の危険認識前に起こっていた。
【0006】
検査室作業者の血液または他の体液に対する曝露もまた、健康被害を示す。疾患管理センター(the Centers for Disease Control)の推定(「Guidelines for Prevention of Transmission of Human Immunodeficiency Virus and Hepatitis B Virus to Health−Care and Public−Safety Workers」、Morbidity and Mortality Weekly Report、第38巻、第S−6号、1989年6月)によると12,000人のヘルスケア作業者(彼らの仕事には血液への曝露が含まれる)が毎年B型肝炎ウイルスに感染している。
【0007】
ドナーのスクリーニングおよび血液試験を補完し、輸液による疾患の発生率を低下させるいくつかの方法が提案されている。血液製剤の臨床使用の前に病原体を不活化するために、化学薬剤の血液または血漿への導入が示唆されている。強力な殺ウイルス剤の研究で、ナイトロジェンマスタード(CH−N(CHCHCl))を血液成分に添加した。しかしながら、研究されたウイルスの1つを不活化するのに必要な濃度で、実質的な溶血が発生した。これはナイトロジェンマスタードが血液での使用に不適切であることを示している。非特許文献1。
【0008】
ウイルスを不活化するための「溶媒/界面活性剤」(S/D)法が、非特許文献2および非特許文献3に記載されている。この方法は、1%トリ(n−ブチル)ホスフェートおよび1%Triton X−100を、30℃で4時間利用し、新鮮凍結血漿中のウイルスを不活化する。非特許文献4(1%トリ(n−ブチル)ホスフェートおよび1%オクトキシノール−9を使用し、新鮮凍結血漿中のウイルスを不活化した)。血液中のウイルスを不活化する別の方法には、フェノールまたはホルムアルデヒドの血液への添加が挙げられる。特許文献1。しかしながら、溶媒/界面活性剤法およびフェノール/ホルムアルデヒド法は両方とも、血液製剤の臨床使用の前に化学添加剤の除去を必要とする。
【0009】
光活性化剤を用いた血液製剤中の病原体の不活化もまた、記載されている;例えば、非特許文献5を参照のこと。しかしながら、いくつかの領域のヘモグロビンによる、紫外および可視スペクトルにおける吸光によって、光処理は、その適用において、赤血球を含む物質に限定される。赤血球の光処理には、いくつかの様式で細胞を変化させるいくらかの徴候もまた存在する;非特許文献6を参照のこと。
【0010】
従って、血液、血液由来の製品、および他の生体物質を処理する化合物および方法(これは製品または物質中に存在する病原体を、製品または物質をそれらの意図される利用に不適切でないように、不活化する)が必要となっている。使用前に生体物質から除去される必要のない組成物が特に有用である。なぜなら、組成物を除去するのに必要な装置および供給品が除去され、生体物質の取扱いコストを減少させるからである。しかしながら、組成物が生体物質に残存する場合、生体物質を意図される目的に用いるときに危険の種となってはならないという点で、これは組成物にさらなる要件を生じる。例えば、血液サンプル中の病原体を不活化する高毒性化合物は、輸液目的の血液の使用を不可能にする(しかし、血液サンプルはまだ検査分析には適し得るが)。
【0011】
本発明の1つの意図は、生体物質中の病原体を、物質を意図する目的に不適切でないように、不活化するための組成物および組成物の使用法を提供することである。これが達成され得る方法の例としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:生体物質のエキソビボまたはインビトロ処理において化合物を使用し、次いで、物質の使用前に化合物を除去する工程;たとえ物質中に残存するとしても、物質を意図される使用に不適切なものにしない組成物の使用によって;あるいは、物質中の病原体不活化後に製品に分解する組成物の使用によって(ここで分解生成物は、物質をその意図する使用に不適切でないように、物質中に残存し得る)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,833,165号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】LoGrippoら、Proceedings of the Sixth Congress of the International Society of Blood Transfusion, Bibliotheca Haematologica (Hollander編), 1958, 225−230頁
【非特許文献2】Horowitzら、Blood 79:826 (1992)
【非特許文献3】Horowitzら、Transfusion 25:516 (1985)
【非特許文献4】Piquetら、Vox Sang 63:251 (1992)
【非特許文献5】Wagnerら、Transfusion, 34:521 (1994)
【非特許文献6】Wagnerら、Transfusion 33:30 (1993)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明の目的は物質中の病原体を不活化するための化合物を提供することであり、ここでそのような化合物は以下を含有する:核酸結合部分;核酸との共有結合の形成を可能にする、エフェクター部分;そして核酸部分およびエフェクター部分を共有連結している(covalently linking)脆い(frangible)リンカー。ここで、その物質を意図した目的に不適切にしない条件下で、もはや核酸結合部分およびエフェクター部分が共有連結しないように、脆いリンカーが分解する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、物質中の病原体を不活化するための化合物を提供することであり、その化合物の核酸結合部分はアクリジン、アクリジン誘導体、ソラレン、イソソラレンおよびソラレン誘導体からなる群より選択される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、物質中の病原体を不活化するための化合物を提供することであり、ここで、脆いリンカーが、本明細書中で定義される通りの順方向(forward)エステル、逆方向(reverse)エステル、順方向アミド、逆方向アミド、順方向チオエステル、逆方向チオエステル、順方向および逆方向チオノエステル、順方向および逆方向ジチオ酸、スルフェート、順方向および逆方向スルホネート、ホスフェートさらに順方向および逆方向ホスホネートの基からなる群から選択される官能性単位から構成される。
【0017】
本発明のさらなる目的は、物質中の病原体を不活化するための化合物を提供することであり、その化合物のエフェクター基がアルキル化試薬の官能性単位を含む。
【0018】
本発明のさらなる目的は、物質中の病原体を不活化するための化合物を提供することであり、ここで、エフェクター基が、マスタード(mustard)基、マスタード基等価物、エポキシド、アルデヒドおよびホルムアルデヒドシントンからなる群より選択される官能性単位を含む。
【0019】
本発明のさらなる目的は、物質中の病原体を不活化するための以下の式の化合物ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)を提供することである:
【0020】
【化1】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが以下で定義される通りの−V−W−X−Eであり、そして余剰のR、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
Vは、独立して、−R11−、−NH−R11−または−N(CH)−R11−であり、ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0021】
【化2】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gはそれぞれ独立して−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0022】
本発明の他の目的は、以下の式の化合物ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)を提供することである:
【0023】
【化3】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、およびRが−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
20は−Hまたは−CHであり;そして
21は−R11−W−X−Eであり、
ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは独立して−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0024】
【化4】

からなる群より独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0025】
本発明の他の目的は、以下の式の化合物ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)を提供することである:
【0026】
【化5】

ここでR44、R55、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが−V−W−X−Eであり、そして余剰のR44、R55、R、R、RおよびRが−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
Vは、独立して、−R11−、−NH−R11−または−N(CH)−R11−であり、ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0027】
【化6】

からなる群より独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0028】
本発明のさらに他の目的は、以下の式の化合物およびその全ての塩を提供することである:β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステル;4−アミノ酪酸 N−[(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステル;5−アミノ吉草酸 N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステル;β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),3−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]プロピルエステル;β−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステル;β−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)],2−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]エチルエステル;[N,N−ビス(2−クロロエチル)]−2−アミノエチル 4,5’,8−トリメチル−4’−ソラレンアセテート;およびβ−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステル。
【0029】
生物学的な物質のような物質中の病原体を不活化するための方法が提供され、この方法は物質へ本発明の化合物を1つ以上添加する工程;および該物質をインキュベートする工程を包含する。その化合物が、例えば、1μMと500μMとの間の濃度(または1つより多い化合物を使用する場合、全化合物の全濃度)を有する最終溶液の形態で物質へ添加され得る。処理され得る生物学的物質には、ヒト源または他の哺乳動物源または脊椎動物源に由来する血液、血液製剤、血漿、血小板製剤、赤血球、濃縮赤血球、血清、脳脊髄液、唾液、尿、汗、便、精液、乳、組織試料および均質化組織試料が挙げられる。
【0030】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)物質中の病原体を不活化するための化合物であって、以下を含有する化合物:
核酸結合部分;
核酸との共有結合の形成を可能にする、エフェクター部分;および
該核酸部分と該エフェクター部分とを共有連結している(covalently linking)脆い(frangible)リンカー;
ここで、該物質をその意図した目的に不適切にしない条件下で、もはや該核酸結合部分および該エフェクター部分が共有連結しないように、該脆いリンカーが分解する。
【0031】
(項目2)前記核酸結合部分が、アクリジン、アクリジン誘導体、ソラレン、イソソラレンおよびソラレン誘導体からなる群より選択される、項目1に記載の化合物。
【0032】
(項目3)項目1に記載の化合物であって、ここで前記脆いリンカーが、順方向(forward)エステル、逆方向(reverse)エステル、順方向アミド、逆方向アミド、順方向チオエステル、逆方向チオエステル、順方向および逆方向チオノエステル、順方向および逆方向ジチオ酸、スルフェート、順方向および逆方向スルホネート、ホスフェート、および順方向および逆方向ホスホネートの基からなる群から選択される官能性単位から構成される、化合物。
【0033】
(項目4)エフェクター基が、アルキル化試薬である官能性単位を含む、項目1に記載の化合物。
【0034】
(項目5)項目1に記載の化合物であって、ここで前記エフェクター基が、マスタード(mustard)基、マスタード基等価物、エポキシド、アルデヒドおよびホルムアルデヒドシントンからなる群より選択される官能性単位を含む、化合物。
【0035】
(項目6)以下の式を含有する化合物、ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む):
【0036】
【化53】

ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3,ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり、
20は−Hまたは−CHであり;そして、
21は−R11−W−X−Eであり、
ここで−R11は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり、
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり、;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0037】
【化54】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは独立して−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0038】
(項目7)以下の式を有する化合物、ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む):
【0039】
【化55】

ここでR44、R55、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが−V−W−X−Eであり、そして余剰のR44、R55、R、R、RおよびRが−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
Vは、独立して、−R11−、−NH−R11−または−N(CH)−R11−であり、ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり、;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0040】
【化56】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
(項目8)以下の式を有する化合物:
【0041】
【化57】

およびその全ての塩。
(項目9)以下の式を有する化合物:
【0042】
【化58】

およびその全ての塩。
(項目10)以下の式を有する化合物:
【0043】
【化59】

およびその全ての塩。
(項目11)以下の式を有する化合物:
【0044】
【化60】

およびその全ての塩。
(項目12)以下の式を有する化合物:
【0045】
【化61】

およびその全ての塩。
(項目13)以下の式を有する化合物:
【0046】
【化62】

およびその全ての塩。
(項目14)以下の式を有する化合物:
【0047】
【化63】

およびその全ての塩。
(項目15)以下の式を有する化合物:
【0048】
【化64】

およびその全ての塩。
(項目16)物質中の病原体を不活化するための方法であって、該物質へ項目1に記載の化合物を添加する工程;および該物質をインキュベートする工程を包含する、方法。
(項目17)前記化合物が1μMと500μMとの間の濃度を有する最終溶液を形成するために前記物質へ添加される、項目16に記載の方法。
(項目18)前記物質が生物学的な物質である、項目16に記載の方法。
(項目19)項目18に記載の方法であって、ここで前記生物学的な物質が以下からなる群から選択される組成物を含む、方法:血液、血液製剤、血漿、血小板製剤、赤血球、濃縮赤血球、血清、汗、脳脊髄液、唾液、尿、便、精液、乳、組織試料、均質化組織試料、細胞培養培地、細胞培養物、ウイルス培養物および生存している生物由来の物質を配合した培養物。
(項目20)前記物質が血液製剤を含む、項目18に記載の方法。
(項目21)前記物質が赤血球を含む、項目18に記載の方法。
(項目22)項目16に記載の方法であって、ここで該方法が、少なくとも約2ログ(2 log of)の前記物質中の病原体を不活性にするための有効量の前記化合物を前記物質へ添加する工程を包含する、方法。
(項目23)インキュベーション時間が少なくとも約1〜48時間である、項目16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は物質中に見出される病原体の不活化、特に血液または他の体液のような生体物質に見出される病原体の不活化に有用な化合物を提供する。本発明はまた、物質中の病原体を不活化するこのような化合物の使用法を提供する。本発明はまた、生物学的使用のための物質中または物質に見出される病原体を不活化する工程を提供する。この化合物はインビトロおよびエキソビボで用いられ得る。生体物質または生物学的使用のための物質は、インビトロ、インビボ、またはエキソビボでの使用が意図され得る。
【0050】
本化合物は核酸との反応によって、病原体を不活化するために設計される。水溶液中、適切なpH値において、本化合物は、核酸に結合し核酸と反応し得る間の活性期間を有する。この期間の後、化合物は製品に分解し、これはもはや核酸と結合し得ないしまた核酸と反応し得ない。
【0051】
本化合物の化学的機構は、アンカー(脆いリンカーに共有結合した)として、広範に記載され得、これはエフェクターに共有結合している。「アンカー」は核酸生体高分子(DNAまたはRNA)に非共有結合的に結合する部分として定義される。「エフェクター」は、核酸との共有結合を形成する機構により、核酸と反応する部分として定義される。「脆いリンカー」は、アンカーとエフェクターとを共有連結するよう働き、特定の条件下で分解し、その結果、アンカーおよびエフェクターはもはや共有連結されない、部分として定義される。アンカー−脆いリンカー−エフェクター配列は、本化合物が核酸に特異的に(アンカーの結合能によって)結合することを可能にする。このことはエフェクターを核酸との反応に近づける。
【0052】
本化合物は、物質中、特に血液および他の体液のような生体物質中に見出される病原体の不活化に有用である。細胞内および細胞外およびまたは他の病原体物質が不活化され得る。例えば、本発明の化合物を、病原体含有赤血球組成物と生理的pHで組み合わせた場合、化合物のエフェクター部分は病原体核酸と反応する。核酸と反応しないエフェクター部分は次第に溶媒によって加水分解される。脆いリンカーの加水分解は、エフェクター−核酸反応およびエフェクター加水分解と同時に起こる。脆いリンカーが、物質中の病原体の不活化を可能にするのに十分な程、ゆっくりとした速度で分解するのが望ましい;つまり、脆いリンカーの分解速度は、化合物が核酸と反応する速度よりも遅い。十分な量の時間が経過した後、化合物はアンカー(これはまた、脆いリンカーのフラグメントを有し得る)およびエフェクター−核酸分解生成物(ここで、脆いリンカーのフラグメントはまた、エフェクターに結合したままであり得る)に分解されるか、またはアンカー(これはまた、脆いリンカーのフラグメントを有し得る)および加水分解されたエフェクター分解生成物(ここで、脆いリンカーのフラグメントはまた、エフェクターのいずれにも結合されたままであり得る)に分解される。脆いリンカーのさらなるフラグメントはまた、アンカーまたはエフェクターのいずれにも結合されたままでない化合物の分解時に、生成され得る。本発明の化合物の正確な実施態様は、アンカー分解生成物またはエフェクター分解生成物が脆いリンカーのフラグメントを有するか否か、あるいはアンカーまたはエフェクター分解生成物のいずれにも結合されたままでない、脆いリンカーのさらなるフラグメントが生成されるか否かを決定する。
【0053】
本発明の好ましい実施態様は、脆いリンカーの切断時、低変異原性の分解生成物を生じる化合物を包含する。化合物の変異原性は、エフェクターの加水分解後、主にアンカー部分により、なぜなら、たとえエフェクター部分が加水分解された場合でも、アンカーは核酸と相互作用し、核酸複製物と干渉する可能性を有し得るからである。好ましくは、脆いリンカーの切断後、アンカーフラグメントは実質的に変異原性が低下している。
【0054】
定義
「病原体」は、ヒト、他の哺乳動物、または脊椎動物に疾患を生じ得る、任意の核酸含有因子として定義され得る。例には、単細胞または多細胞微生物のような微生物が含まれる。病原体の例は、細菌、ウイルス、原生生物、真菌、酵母菌、カビ、および、マイコプラズマであり、これらはヒト、他の哺乳動物、または脊椎動物に疾患を生じる。病原体の遺伝物質は、DNAまたはRNAであり得、そして遺伝物質は一重鎖または二重鎖核酸として存在し得る。病原体の核酸は、溶液中、細胞内、細胞外、または細胞に結合したものであり得る。表Iは、ウイルスの例を列挙しており、本発明を任意の様式に制限することを意図されない。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】

物質または化合物の「インビボ」使用は、物質または化合物の、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物への導入として定義される。
【0057】
物質または化合物の「インビトロ」使用は、物質または化合物の、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物外での使用として定義され、ここで物質および化合物のいずれも、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物への再導入を意図されない。インビトロ使用の例としては、実験室の設備を用いた、血液サンプルの成分分析がある。
【0058】
化合物の「エキソビボ」使用は、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物外での生体物質の処理に、化合物を用いることとして定義され、ここで処理された生体物質は、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物内での使用を意図される。例えば、ヒトからの血液の取り出し、および病原体を不活化するための化合物のその血液内への導入は、血液がそのヒトまたは別のヒトへの再導入を意図される場合、その化合物のエキソビボ使用として定義される。ヒト血液のそのヒトまたは別のヒトへの再導入は、血液のインビボ使用であり、これは化合物のエキソビボ使用と対照的である。ヒトへ化合物が再導入されたとき、血液中に化合物がまだ存在する場合、化合物はまた、そのエキソビボ使用に加え、インビボ導入される。
【0059】
「生体物質」は、任意のタイプの生物学的有機体からもたらされる物質として定義される。生体物質の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:血液、血液製剤(例えば、血漿、血小板調製物、赤血球、濃縮赤血球、および血清)、脳脊髄液、唾液、尿、糞便、精液、汗、乳、組織サンプル、ホモジナイズされた組織サンプル、および生物学的有機体にその起源を有する任意の他の物質。生体物質にはまた、生物学的有機体にその起源を有する物質を取り込む合成物質が含まれる。これは例えば、ミョウバンから構成されるワクチン調製物および病原体(この病原体は、この場合、生物学的有機体にその起源を有する物質である)、分析のために調製されたサンプルであり、このサンプルは血液と、分析試薬、細胞培養培地、細胞培養物、ウイルス培養物、および他の生きた生物由来の培養物との混合物である。
【0060】
「生物学的使用のための物質」は、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物と接触するか、またはそれらに導入される任意の物質として定義され、ここでこのような接触は、疾患または病原体を伝染する危険を有する。このような物質には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ペースメーカーおよび人工関節のような医療用インプラント;持続的薬物放出のために設計されたインプラント;注射針、静脈内ラインなど;歯科用ツール;歯冠のような歯科用材料;カテーテル;ならびに、生きたヒト、哺乳動物、または脊椎動物と接触するか、または導入された場合に、疾患または病原体を伝染する危険を伴う、任意の他の物質。
【0061】
「病原体の不活化」は、物質中の病原体が増殖することを不可能にすることによって、定義される。不活化は、残存する増殖しうる病原体の画分の負対数として表される。従って、特定の濃度の化合物が、物質中の99%の病原体を増殖不可能にする場合、1%または100分の1(0.01)の病原体が増殖可能なままである。0.01の負対数は2であり、そしてこの化合物の濃度は、2logによって表される不活化された病原体を有すると言われる。あるいは、この化合物は、この濃度において2logs殺生を有すると言われる。
【0062】
本明細書中で用いられる「アルキル」は、環式、分枝、または直鎖の炭素および水素を含む化学基(例えば、メチル、ペンチル、およびアダマンチル)をいう。アルキル基は、非置換または1つ以上の置換基(例えば、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、または他の官能基)で置換されるかのいずれかであり得る。アルキル基は、1つまたはいくつかの位置で飽和または不飽和であり得る(例えば、−C=C−または−C≡C−サブユニットを含む)。典型的には、アルキル基は、他に特定していない限り、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を含む。
【0063】
本明細書中で用いられている「ヘテロアルキル」は、鎖に組み込まれた1個以上のN、O、S、またはPのヘテロ原子を有するアルキル鎖である。ヘテロ原子は、上記の置換基を有さないか、1つ、または1つ以上有し得る。「ヘテロ原子」はまた、ヘテロ原子N、SおよびPの酸化形態を含む。ヘテロアルキル基の例には以下のものが挙げられる(しかしこれらに限定されない):メトキシ、エトキシ、および他のアルキルオキシ基;エーテル含有基;ポリペプチド鎖のようなアミド含有基;ピペリジニル、ラクタムおよびラクトンのような環系;ならびにヘテロ原子を炭素鎖に組み込んだ他の基。典型的には、ヘテロアルキル基は、ヘテロ原子に加えて、特に特定しない限り、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を含む。
【0064】
「アリール」または「Ar」は、単環(例えば、フェニル)または多重縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する不飽和芳香族炭素環式基を意味し、これは必要に応じて、非置換であり得るか、またはアミノ、ヒドロキシル、C1−8アルキル、アルコキシ、ハロ、チオール、および他の置換基で置換され得る。
【0065】
「ヘテロアリール」基は、単環(例えば、ピリジルまたはフリル)あるいは多重縮合環(例えば、アクリジニル、インドリル、またはベンゾチエニル)を有する、不飽和芳香族炭素環式基であり、これは少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)を少なくとも1つの環内に有する。環は、必要に応じて、非置換であり得るかまたは、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ハロ、チオール、アシルオキシ、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、およびその他の置換基で置換され得る。
【0066】
略語
以下の略語が用いられる:QM(キナクリンマスタード);Hct(ヘマトクリット);RBC(赤血球);LB(Luriaブロス);cfu(コロニー形成単位);pfu(プラーク形成単位);DMEM(Delbecco改変eagle培地);FBS(ウシ胎仔血清);PRBC(濃縮赤血球);rpm(毎分の回転数);TC(組織培養);NHSP(正常ヒト血清プール);NCS(新生仔ウシ血清);PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)。
【0067】
化合物の化学的構造
広範で多様な群が、アンカー、リンカー、およびエフェクターとしての使用に利用可能である。本化合物において使用し得るアンカー群の例には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:インターカレーター、副溝バインダー、主溝バインダー、静電相互作用により結合する分子(例えば、ポリアミン)、および配列特異的相互作用により結合する分子。以下は、可能なアンカー群の、非限定的リストである:
アクリジン(およびアクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリフラビン、ジアクリジン、アクリドン、ベンゾアクリジン、キナクリジン))、アクチノマイシン、アントラサイクリノン、ロドマイシン、ダウノマイシン、チオキサンテノン(およびチオキサンテノン誘導体(例えば、miracil D))、アントラマイシン、ミトマイシン、エチノマイシン(キノマイシンA)、triostin、エリプチシン(ならびにその二量体、三量体およびアナログ)、ノルフィリンA、フルオレン(および誘導体(例えば、フルオレノン、フルオレノジアミン))、フェナジン、フェナントリジン、フェノチアジン(例えば、クロルプロマジン)、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、キサンテンおよびチオキサンテン、アントラキノン、アントラピラゾール、ベンゾチオピラノインドール、3,4−ベンゾピレン、1−ピレニルオキシラン、ベンゾアントラセン、ベンゾジピロン、キノリン(例えば、クロロキン、キニン、フェニルキノリンカルボキサミド)、フロクマリン(例えば、ソラレンおよびイソソラレン)、エチジウム、プロピジウム、コラリン(coralyne)、ならびに多環式芳香族炭化水素およびそれらのオキシラン誘導体;
ジスタマイシン、ネトロプシン、他のレキシトロプシン、Hoechst 33258およびその他のHoechst色素、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)、berenil、およびトリアリールメタン色素;
アフラトキシン;
スペルミン、スペルミジン、およびその他のポリアミン;ならびに
核酸、または三重らせん体、Dループ体、および一本鎖の標的への直接塩基対のような配列特異的相互作用により結合するアナログ。これらの化合物の誘導体はまた、アンカー群の非制限的例であり、ここで化合物の誘導体には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:任意の位置で、任意のタイプの1個以上の置換基を有する化合物、この化合物の酸化生成物または還元生成物など。
【0068】
本発明で用いられ得るリンカーの例は官能基を含む化合物であるが、これらに限定されない。この官能基は例えば、エステル(ここで、エステルのカルボニル炭素はアンカーとエステルのsp酸素との間にある;この配列はまた「順方向のエステル」と呼ばれる)、「逆方向のエステル」(ここで、エステルのsp酸素は、アンカーとエステルのカルボニル炭素との間にある)、チオエステル(ここで、チオエステルのカルボニル炭素は、アンカーとチオエステルの硫黄との間にあり、これはまた、「順方向のチオエステル」と呼ばれる)、逆方向のチオエステル(ここで、チオエステルの硫黄は、アンカーとチオエステルのカルボニル炭素との間にあり、これはまた、「逆方向のチオエステル」と呼ばれる)、順方向および逆方向のチオノエステル、順方向および逆方向のジチオ酸、スルフェート、順方向および逆方向のスルホネート、ホスフェート、ならびに順方向および逆方向のホスホネート基。「チオエステル」は、−C(=O)−S−基を示し;「チオノエステル」は、−C(=S)−O−基を示し、そして「ジチオ酸」は、−C(=S)−S−基を示す。脆いリンカーはまた、アミドを含み得、ここでアミドのカルボニル炭素は、アンカーとアミドの窒素との間にある(これはまた「順方向のアミド」と呼ばれる)か、またはここでアミドの窒素は、アンカーとアミドのカルボニル炭素との間にある(これはまた「逆方向のアミド」と呼ばれる)。「順方向の」および「逆方向の」として示され得る基について、順方向の配向は、官能基の加水分解後、得られる酸性官能基がアンカー部分に共有連結され、そして得られるアルコールまたはチオール官能基がエフェクター部分に共有連結される、官能基の配向である。逆方向の配向は、官能基の加水分解後、得られる酸性官能基がエフェクター部分に共有連結され、そして得られるアルコールまたはチオール官能基がアンカー部分に共有連結される、官能基の配向である。
【0069】
脆いリンカー(例えば、アミド部分)はまた、酵素分解の条件下、処理された生体物質における内在性酵素によるか、または物質に添加された酵素によって、分解可能であり得る。
【0070】
本発明で用いられ得るエフェクターの例は、以下のものであるが、これらに限定されない:マスタード基、マスタード基等価体、エポキシド、アルデヒド、ホルムアルデヒドシントン、および他のアルキル化剤および架橋剤。マスタード基は、モノまたはビスハロエチルアミン基、およびモノハロエチルスルフィド基を含むものとして定義される。マスタード基等価体は、マスタードと同様な機構によって(つまり、アジリジニウム中間体の形成によって、またはアジリジン環(これは求核試薬と反応し得る)を有するかもしくは形成することによって)反応する基によって定義され、これは例えば、モノまたはビスメシルエチルアミン基、モノメシルエチルスルフィド基、モノまたはビストシルエチルアミン基、およびモノトシルエチルスルフィド基である。ホルムアルデヒドシントンは水溶液中でホルムアルデヒドに分解する任意の化合物として定義され、これにはヒドロキシメチルグリシンのようなヒドロキシメチルアミンが含まれる。ホルムアルデヒドシントンの例は、米国特許第4,337,269号および国際特許出願第WO 97/02028号に示される。本発明は任意の特定機構に制限されないが、エフェクター基(これは求電子基であるかまたは求電子基を形成し得る、例えばマスタード基)は、核酸と反応し、そして核酸と共有結合を形成すると考えられている。
【0071】
本発明の化合物の3つの実施態様を、以下の一般式I、IIおよびIIIにより述べる。
【0072】
一般式Iは、以下の式、ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)である:
【0073】
【化7】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが以下で定義される通りの−V−W−X−Eであり、そして余剰のR、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
Vは、独立して、−R11−、−NH−R11−または−N(CH)−R11−であり、ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0074】
【化8】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0075】
一般式IIは、以下の式、ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)である:
【0076】
【化9】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、およびRが−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
20は−Hまたは−CHであり;そして
21は−R11−W−X−Eであり、
ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0077】
【化10】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0078】
一般式IIIは、以下の式、ならびにその全ての塩および立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)である:
【0079】
【化11】

ここでR44、R55、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが−V−W−X−Eであり、そして余剰のR44、R55、R、R、RおよびRが−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルであり;
Vは、独立して、−R11−、−NH−R11−または−N(CH)−R11−であり、ここで−R11−は、独立して、−C1−8アルキル−、−C1−8ヘテロアルキル−、−アリール−、−ヘテロアリール−、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−、−アリール−C1−3アルキル−、−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル−、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル−、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−または−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル−であり;
Wは、独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−C(=S)−S−、−S−C(=S)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−O−S(=O)−O−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−O−P(=O)(−OR10)−O−、−P(=O)(−OR10)−O−、−O−P(=O)(−OR10)−であり;
Xは、独立して、−R11−であり;そして
Eは−N(R12、−N(R12)(R13)、−S−R12
および
【0080】
【化12】

からなる群から独立して選択され;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは、独立して、−Cl、−Br、−I、−O−S(=O)−CH、−O−S(=O)−CH−Cまたは−O−S(=O)−C−CHであり;
そしてここでR13は、独立して、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール−、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルである。
【0081】
上記の一般式Iにおいて、アクリジン核はアンカー部分であり、−V−W−X−基は脆いリンカーを含み、そしてE基はエフェクター基であることが認められる。同様に上記の一般式IIIにおいて、ソラレン核はアンカー部分であり、−V−W−X−基は脆いリンカーを含み、そしてE基はエフェクター基である。一般式IIは、一般式Iのサブセットである。
【0082】
本発明の典型的な化合物はIVとして示した下記の構造である:
【0083】
【化13】

IVにおいて、2−カルボメトキシアクリジン環系は、インターカレーションを介してアンカー部分としての役割をする。ビス(クロロエチル)アミン基は、エフェクター部分としての役割をし、これは核酸をアルキル化し得る;核酸と反応しない場合は窒素マスタードが加水分解する。リンカーは、−NH−CHCH−C(=O)−O−CHCH−である。生理的pHでの水溶液では、このエステル含有リンカーは、数時間内に加水分解する。溶液のpHを変えると、リンカーが加水分解する速度が変化する;IVの対応するアルコールアナログについて(ここでIVの−Cl原子は−OH基と置換される)、エステル連結の1%以下の加水分解がpH3で100分後37℃で観測され;pH8でエステル連結の50%以上の加水分解が100分後、37℃で観測される。得られたIVの加水分解生成物は、N−(2−カルボメトキシ−9−アクリジニル)−β−アラニンおよびトリエタノールアミンである:
【0084】
【化14】

ここで2−カルボメトキシアクリジンは、リンカーフラグメントとしてβ−アラニンを有し、そしてエフェクター分解生成物は、リンカーフラグメントとしてエタノール基を有する。
【0085】
生理的pH値で、β−アラニンのカルボキシレートは負電荷であり、結合した2−カルボメトキシアクリジン基が、負電荷の核酸分子中にインターカレートする傾向を減少させる。これは9−アミノアクリジンに関して、N−(2−カルボメトキシ−9−アクリジニル)−β−アラニンの突然変異誘発力を低下させる。アンカーフラグメントの突然変異誘発力を低下させるこのポテンシャルは、脆いリンカーによって与えられた1つの利点を説明する。
【0086】
IVに類似した化合物における脆いリンカーの別の利点は、加水分解速度が9−アミノアクリジンアンカー部分とエステル官能基との間のリンカーアームの長さを変えることで調節され得ることである。下記の実施例7および表IIIおよび表IVに記載のように、アミノアクリジンアンカー部分とエステル基との間のメチレン基の数の増加は、本発明の特定の化合物(ここでマスタードの−Cl原子は−OH基で置換される)のジオールアナログに関する、pH8、37℃での水溶液に見られる加水分解の量の減少をもたらす。
【0087】
本発明の化合物の例を以下に示すがこれは例示であり、本発明を制限するものではない。
【0088】
【化15】

【0089】
【化16】

【0090】
【化17】

【0091】
【化18】

用途
本発明の化合物の使用例は次のものを含むが、これらに制限されない:固体または溶液形態の本発明の化合物の生体物質への添加(生体物質中に存在する病原体を不活化するため);本発明の化合物の溶液中での生物学的使用のための物質の浸漬または他の処理(物質の中または上に存在する病原体を不活化するため);および標的リポソームにおける本発明の化合物の封入(それらの細胞の核酸を損傷させるために特定の細胞に化合物を向けるため)。
【0092】
本発明の化合物は、特定の条件下で加水分解をするように設計されるが、それらは他の条件下では安定であることに留意すべきである。脆いリンカーおよびエフェクター基にとって保存に用いる特定の状況下で比較的安定であることが望ましい。化合物が保存され得る様式の例は、乾燥固体、少量の水分含有のオイル、凍結した水溶液、凍結した非水性溶液、懸濁液、および脆いリンカーまたはエフェクター基の加水分解を可能にしない溶液、例えば液体非水性溶液を包含するが、これらに制限されない。化合物は0℃以下の温度で(例えばフリーザー中で)、あるいは0℃を越える温度で(例えば、冷蔵庫中または周囲温度で)、貯蔵され得る。化合物は好ましくは、3日〜1年の間、1週間〜1年の間、1ヶ月〜1年の間、3ヶ月〜1年の間、6ヶ月〜1年の間、1週間〜6ヶ月の間、1ヶ月〜6ヶ月の間、3ヶ月〜6ヶ月の間、1週間〜3ヶ月の間、または1ヶ月〜3ヶ月の間の期間、保存条件下で安定である。化合物の安定性は、それらが保存される温度、およびそれらが保存される状態(例えば非水性溶液、乾燥固体)の両方によって決定される。
【0093】
病原体不活化の条件
生体物質を病原体不活化化合物で処理するための条件は、選択された物質および不活化化合物に基づいて選択され得る。血液製剤のような生体物質の処理のための病原体不活化化合物の代表的な濃度は、約0.1μMから5mMのオーダーであり、例えば約500μMである。例えば、サンプル中に少なくとも約1 log、または少なくとも約2 log、または例えば少なくとも約3から6 logの病原体を不活化するのに充分な病原体不活化化合物の濃度が使用され得る。1つの実施態様では、病原体不活化化合物は約500μM以下の濃度で、少なくとも1 logを殺傷し、より好ましくは500μMより大きくない濃度で、少なくとも3 logを殺傷する。他の制限のない実施例では、病原体不活化化合物は少なくとも1 logを殺傷し得、好ましくは約0.1μMから約3mMの濃度で少なくとも6 logを殺傷し得る。
【0094】
病原体不活化化合物との血液製剤のインキュベーションは、例えば約5分から72時間またはそれ以上、あるいは約1から48時間、例えば約1から24時間、あるいは例えば、約8から20時間行われ得る。赤血球について、インキュベーションは代表的には約2℃から37℃の温度で行われ、好ましくは約18℃から25℃である。血小板について、温度は好ましくは約20℃から24℃である。血漿について、温度は約0℃から60℃であり得、代表的には約0〜24℃である。処理されている物質のpHは、好ましくは約4から10で、より好ましくは約6から8である。
【0095】
本発明のひとつの実施態様は、血液または血液製剤中で病原体を不活化するのに使用する化合物および方法を包含し、そしてこの目的のための好適な一連の保存条件は、便利な保存および保存血での化合物の使用を可能にするそれらの条件である。
【0096】
物質の中または上での病原体不活化に使用される条件下で、脆いリンカーおよびエフェクター基は加水分解または反応を受ける。脆いリンカーおよびエフェクター基の両方の加水分解は、好ましくは所望の量の病原体不活化が起こり得るのに充分に遅い。病原体不活化に必要な時間は、例えば約5分から72時間であり得る。
【0097】
赤血球の処理
好ましくは、病原体不活化化合物を伴う物質を含む赤血球の処理は処理後に赤血球の機能に損傷を与えないか、または赤血球を改変する。赤血球機能に対して実質的に損傷を与える効果の欠如は、赤血球機能の試験に関する当業者に公知の方法で測定され得る。例えば、細胞内ATP(アデノシン5’−トリホスフェート)、細胞内2,3−DPG(2,3−ジホスホグリセロール)、または細胞外カリウムのような指標のレベルが測定され得、そして未処理のコントロールと比較され得る。さらに、溶血、pH、ヘマトクリット、ヘモグロビン、浸透圧脆弱性、グルコース消費、および乳酸生成が測定され得る。
【0098】
ATP、2,3−DPG、グルコース、ヘモグロビン、溶血、およびカリウムを決定する方法が当該分野で利用可能である。例えば、Daveyら、Transfusion,32:525〜528(1992)を参照のこと(その開示内容は本明細書中で援用される)。赤血球機能を決定する方法はまた、Greenwaltら、Vox Sang,58:94〜99(1990);Hogmanら、Vox Sang,65:271〜278(1993);およびBeutlerら、Blood,59巻(1982)(その開示内容は本明細書中で参考として援用される)にも記載される。細胞外のカリウムのレベルは、Ciba Corning Model 614K/Na Analyzer(Ciba Corning Diagnostics Corp.,Medford,MA)を使用して測定され得る。pHは、Ciba Corning Model 238 Blood Gas Analyzer(Ciba Corning Diagnostics Corp.,Medford,MA)を用いて測定され得る。
【0099】
IgG、アルブミン、およびIgMのような種の赤血球への結合もまた当該分野で利用可能な方法を使用して測定され得る。分子の赤血球への結合は、例えばアクリジンおよびIgGに対する抗体を使用することで検出され得る。アッセイで使用される抗体は市販で入手され得、または例えばHarlow and Lane,「抗体、研究室マニュアル、Cold Spring Harbor研究所」1988年(その開示内容は本明細書中で援用される)に記載されるように、当該分野で利用可能な方法を使用して作製され得る。例えば、抗IgGはCaltag,Burlingame,CA;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MOおよびLampire Biological Laboratory,Pipersvelle,PAから市販されている。
【0100】
病原体不活化による赤血球を含む物質の処理方法において、好ましくは細胞外のカリウムのレベルは3倍以下であり、より好ましくは1日後に未処理のコントロールにおいて示される2倍以下の量である。別の実施態様において、好ましくは処理された赤血球の溶血は4℃での28日の保存後で3%未満であり、より好ましくは42日の保存後で2%未満であり、そして最も好ましくは42日の保存後で約1%以下である。
【0101】
生体物質
種々の生体物質が病原体不活化化合物によって処理され得る。生体物質は、全血、濃縮赤血球、血小板、および新鮮なまたは凍結した血漿のような血液製剤を包含する。血液製剤はさらに血漿タンパク部分、抗血友病因子(第VIII因子)、第IX因子、および第IX因子複合体、フィブリノーゲン、第XIII因子、プロトロンビンおよびトロンビン、免疫グロブリン(例えばIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMならびにそれらのフラグメント)、アルブミン、インターフェロン、ならびにリンホカインを包含する。さらに合成血液製剤が考えられる。
【0102】
他の生体物質は、ワクチン、タンパク質を産生する組換えDNA、およびオリゴペプチドリガンドを包含する。また尿、汗、唾液、排泄物、髄液のような臨床サンプルも包含する。さらには合成血液または血液製剤保存媒体を包含する。
【0103】
処理後の物質における化合物の濃度の減少
血液製剤のような生体物質における病原体不活化化合物の濃度は処理後に減少され得る。使用され得る方法および装置は、PCT US96/09846;1997年1月6日に出願された米国出願番号第08779,830;および同時出願された1998年1月6日出願の、出願番号PCT/US98/00531、代理人整理番号2000440の「血液製剤由来の小有機化合物の還元に関する方法およびデバイス」(これらの各開示内容は本明細書中においてその全てが参考として援用される)に記載される。
【0104】
クエンチング(quenching)
別の実施態様では、本発明の化合物はクエンチャーと組み合わせて使用され得る。生体物質における病原体不活化化合物の所望でない副反応をクエンチングする方法は、同時出願された米国仮出願番号第60/070597号、1998年1月6日出願、代理人整理番号282173000600、「生体物質における病原体不活剤をクエンチングする方法」(この開示内容は本明細書中で援用される)に記載される。同時出願で開示されたものは、求電子基または求電子基を形成し得る官能基を含む、病原体不活化化合物の所望でない副反応をクエンチングするための方法である。この実施態様では、物質は病原体不活化化合物およびクエンチャーによって処理され、ここでクエンチャーは求電子基と共有結合的に反応可能な求核性官能基を含む。好適なクエンチャーは、グルタチオンのようなチオールである。
【実施例】
【0105】
以下の特定の実施例には本発明の方法で有用である代表的な化合物の調製方法を例示し、当業者に有用である化合物に関する関連データを提供し、および化合物の有効性が決定される方法を例示するために示され、そしてこれは本発明の範囲を制限すると解釈されるべきものではない。別に記載されなければ、全てのNMRスペクトルをCDCl中でVarian 200MHz装置で記録した;化学シフトをテトラメチルシラン(TMS)に対して報告する。IRスペクトルをPerkin Elmer FTIRで記録した。HPLCを移動相Aとして5mMのHPO水溶液、および移動相Bとして5mMのCHCNを用いるグラジエントモードでYMC C8カラムを使用して実施した。サンプルをDMSOまたはエタノール中で調製し、そして注入前に15℃以下に保持した。
【0106】
表IIは、種々の化合物に使用された化合物番号の命名を示す。
【0107】
【表2】

実施例1
β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(化合物IV,)の合成
工程A. β−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステル
下、−15℃で、N−(tert−ブトキシカルボニル)−β−アラニン(20.3g,107mmol)および4−メチルモルホリン(13.0mL,12.0g,119mol)の乾燥THF(200mL)攪拌溶液にイソブチルクロロホルメート(13.9mL,14.6g,107mmol)を添加して直ちに白色沈澱物(4−メチルモルフォリン・HCl)を生じた。反応混合物を−15℃で5分間攪拌し、次に反応混合物を、トリエタノールアミン(48.3g,324mmol)の−15℃の乾燥THF(150mL)攪拌溶液を含むフラスコに移した。反応混合物を23℃まで加温し、そしてさらに1.5時間攪拌し、次に減圧濾過によって沈澱物を取り除いた。次いでTHFを減圧下で濾液から除去し、そして残留した粘性のある黄色の油状物を水(500mL)とEtOAc(5×150mL)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。減圧下での溶媒の除去によって所望の生成物であるβ−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステルを淡黄色の油状物として25.8g(75%)得た。
【0108】
【化19】

工程B. β−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステル
下で、工程Aからのβ−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステル(22.7g,70.9mmol)およびイミダゾール(11.1g,163mmol) のアセトニトリル(70mL)攪拌溶液を0℃まで冷却した。次いで、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(534mg,3.54mmol)を添加し、そして反応混合物をさらに5分間、0℃で攪拌した。反応混合物を23℃まで加温し、そして2時間攪拌し、次に得られた白色沈殿物(イミダゾール・HCl)を減圧濾過で取り除いた。アセトニトリルを減圧下で濾液から除去し、そして残留した物質を飽和ブライン(600mL)とEtOAc(3×200mL)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。減圧下での溶媒の除去によって所望の生成物であるβ−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステルを黄色の油状物として35.2g(90%)得た。
【0109】
【化20】

工程C. β−アラニン, 2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステル
工程Bからのβ−アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステル(3.01g,5.48mmol)を含むフラスコに、ニートなトリフルオロ酢酸(5mL)を添加し、COガスの放出が起きた。反応混合物を5分間攪拌し、そしてトリフルオロ酢酸を減圧下で取り除いた。残留した物質を飽和NaHCO(100mL)とEtOAc(3×30mL)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。減圧下での溶媒の除去によって所望の生成物であるβ−アラニン, 2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステルを淡黄色の油状物として2.45g(100%)得た。
【0110】
【化21】

工程D. β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステル
β−アラニン, 2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルエステル(736mg,1.64mmol)をメチル9−メトキシアクリジン−2−カルボキシレート(669mg,2.50mmol)と室温で12.5時間、10mLのCHCl中で攪拌することで反応させた。次いで沈澱物(アクリドン)を濾別し、そして濾液を飽和NaHCO水溶液(100mL)とCHCl(3×35mL)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、そして減圧下での濃縮で1.61gの粘性のある茶色の油状物を得た。得られたジオールの脱保護を、N下で3.0mLのTHFに粗中間体を溶解し、そして0℃まで冷却し、HF/ピリジン(1.0mL)で処理することによって実施した。溶液を1時間攪拌しながら室温まで加温した。揮発物を減圧下で除去し、そして残留物を飽和NaHCO水溶液(100mL)とCHCl(3×35mL)の間で分配した。合わせた有機層を乾燥させ、そして濃縮して649mgの茶黄色の固体を得た。調製用のTCL(C−18,CHCN)で所望のジオール、β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステル(HPLCによる純度が>80%)を20%の収率で得た。
【0111】
【化22】

アミンおよびヒドロキシルのプロトンは観測されなかった。
【0112】
工程E β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド
β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステルのジクロロ化合物への転換を、Peckらの方法と同様の方法によって行った(J. Am. Chem. Soc. 1959, 81: 3984)。工程Dからの生成物(41mg、0.090mmol)のニートSOCl(6ml)中黄色の溶液を室温で20時間撹拌した。次いでSOClを減圧で除去し、黄色の固体(ジヒドロクロリド塩)を得た。次いでこの物質を飽和NaHCO(50ml)およびCHCl(3×20ml)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥した。溶媒を減圧で除去し、35.4mgのジクロロ化合物遊離塩基をオレンジ色のガム状で得た。
【0113】
【化23】

他の炭素は観測されなかった。HCl塩はエーテル中の1M HClを加えることによってCHClから沈澱させ、β−アラニン,N−(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(化合物IV)を黄色固体として得た(HPLCによって81%純粋であった)。
【0114】
β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(化合物V)を同様の方法で調製した。このように、工程D中でメチル9−メトキシアクリジン−2−カルボキシレートの代わりに9−メトキシアクリジンを使用して、中間体ジオール(7.1%)を黄色のオイル状で得た(HPLCによって74%純粋であった)。
【0115】
【化24】

アミンおよびヒドロキシルのプロトンは観測されなかった。
【0116】
中間体ジオール(37.3mg、0.0793mmol)の塩化チオニル(4.0ml)溶液を23℃で7.5時間撹拌した。塩化チオニルを減圧で除去し、黄色のオイルを得た。この物質をエタノール(約4mL)に溶解し、そして溶媒を減圧で除去した。次いでこの物質をCHCl(4mL)に溶解し、そして溶媒を減圧で除去し;この工程を2回繰り返した。次いでこの物質をヘキサン(3×4ml)を用いて粉末化し、40mgの生成物(HPLCによって42%純粋であった)を黄色のヒドロスコピックな(hydroscopic)ガラス状固体として得た。飽和NaHCOとCHClとの間の分配、続いて合わせた有機層をNaSOで乾燥し、そして溶媒を減圧で除去することにより、分析目的のために一部の物質を遊離アミンに転換した。
【0117】
【化25】

アミンのプロトンは観測されなかった。
【0118】
上記手順に従い、しかしN−(tert−ブトキシカルボニル)−β−アラニンをN−(tert−ブトキシカルボニル)−4−アミノ酪酸に置き換えて、4−アミノ酪酸N−[(2−カルボメトキシアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド、化合物VI(HPLCによって78%純粋であった)を調製した。
【0119】
【化26】

アミンのプロトンは観測されなかった。
【0120】
実施例2
実施例1、工程Aのトリエタノールアミンを3−[N,N−ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)]アミノプロパノールで置換し、次いで工程Cから続け、β−アラニン,N−(2−カルボメトキシ−アクリジン−9−イル),3−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]プロピルエステルジヒドロクロリド、化合物VIII(HPLCによって63%純粋であった)を調製した。
【0121】
【化27】

アミンのプロトンは観測されなかった。
【0122】
実施例3
実施例1で合成した化合物は以下の方法によっても調製され得る:
β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(化合物V)の合成:方法II
工程A: β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),メチルエステルヒドロクロリド
9−クロロアクリジン(11.7g、Organic Synthesis, Coll. Vol III, 57頁)、β−アラニンメチルエステルヒドロクロリド(9.9g)およびナトリウムメトキシド(3.26g)を混合し、60mLのメタノールを加えた。混合物をマグネチックスターラーで撹拌し、5.5時間還流した。熱源を取り除き、懸濁液を温時濾過した(≦35℃)。固体の塩を約10mLの追加のメタノールですすぎ、合わせた濃緑色の濾液を濃縮し、21gの湿った緑黄色固体を得た。
【0123】
固体を350mLの沸騰している2−プロパノールに溶解し、室温で結晶化させた。得られた結晶を約15mLの2−プロパノールおよび15mLのヘキサンですすぎ、次いで風乾し、15.5gの明るい黄色の生成物、β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),メチルエステルヒドロクロリド(収率78.5%)を得た。
【0124】
【化28】

工程B: β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド
工程Aからのβ−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),メチルエステルヒドロクロリド(5.00g)をトルエン(750mL)、NaCO飽和水溶液(200mL)およびHO(50mL)の間で分配した。水層をトルエン(3×250mL)を用いて再度抽出し、有機層を合わせ、そしてNaCO飽和水溶液(50mL)を用いて洗浄した。ロータリーエバポレーションによってトルエンの体積を約100mLにまで減じた。次いで、部分的に混和しない系を形成するために、トリエタノールアミン(30mL)を加えた。次いでNaOMe(50mg)のMeOH(2mL)溶液を加えた。室温で撹拌しながらのロータリーエバポレーションによって反応混合物から溶媒を素早く除去した。溶媒を除去した後、反応混合物をさらに1から1.5時間減圧下に置き、シロップ状の溶液を得た。
【0125】
粗混合物をCHCl(200mL)およびブライン(200mL)の間で分配し、過剰のトリエタノールアミンを除去した。ブライン層をCHCl(5×100mL)で抽出した。有機層を合わせブライン(50mL)で洗浄し、次いで0.5M HCl(2×100mL)で抽出した。酸性水層を合わせ、CHCl(50mL)で洗浄した。酸性溶液を、CHCl(200mL)存在下で粉末KCO3(S)を用いて塩基性とした。有機層を分離し、水層を再びCHCl(5×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSO4(S)を用いて乾燥し、ストリップし、粗ジオール遊離アミン(5.02g)を粘着性の黄色のガム状で得た。この物質は、代わりの手順によって実施例1で調製されたものと、NMRによって同一であった。
【0126】
上記粗生成物の一部(0.400g)をイソプロパノール(100mL)と激しく撹拌し、エーテル中1M HClで酸性とした。スラリーを冷却し、最初の沈殿物を廃棄した。溶媒の半分を除去した後に、結晶の2番目の集合体、β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリドを明るい黄色の結晶性固体として得た(0.200g)(HPLCにより>95%純粋)。
【0127】
【化29】

工程C: β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド
工程Bのβ−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(113mg、0.24mmol)のCHCN(0.5mL)中の撹拌懸濁液に、SOCl(0.5mL)を加えた。生じた黄色の溶液を23℃で16時間撹拌し、続いて揮発性物質を減圧で除去した。残余オレンジオイルをEtOH(約2mL)に溶解し、EtOHを減圧で除去して黄色の固体を得た。次いでこの物質をヘキサン(2×3mL)を用いて粉末化した。残留溶媒を減圧で除去し、123mgの所望の物質、β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド(HPLCにより93%純粋)を黄色固体として得た。
【0128】
【化30】

実施例4
β−アラニン,N−(4−メトキシ−アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド、化合物IX
1.4g(5.84mmol)の4,9−ジメトキシアクリジン、0.89g(6.42mmol)のβ−アラニンメチルエステルヒドロクロリドおよび20mlのメタノールを混合し、次いでN下で12時間加熱還流させることによって、β−アラニン,N−(4−メトキシ−アクリジン−9−イル)、メチルエステルを調製した。次いで反応物を減圧で濃縮し、CHCl−イソプロパノール(50ml、4:1v/v)に溶解し、50%NHOH(2×25ml)およびブライン(1×25ml)で洗浄した。有機層をNaSOを用いて乾燥し、減圧で濃縮して1.24g(68%)のメチルエステル(HPLCにより>74%純粋)を黄色オイルとして得た;R(SiO2, エチルアセテート)=0.25;IR(薄いフィルム):
【0129】
【化31】

これを、実施例3、工程Bで記述した条件下でジオールに変換し、647mgの黄色オイルを得た。粗混合物のHPLC分析により85%の収率を示した(λ=278nm);R(SiO2, 20%メタノール−エチルアセテート)=0.17;IR(薄いフィルム):
【0130】
【化32】

これを、実施例3、工程Cで記述したように塩化チオニルを用いてβ−アラニン,N−(4−メトキシ−アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリドに変換した。粗生成物のエチルアセテート、続いて10%メタノール−エチルアセテートを使用したフラッシュ濾過(SiO)により、一部の生成物の見かけのカラム上分解の後に58mgの黄色オイルを得た;R(SiO2, エチルアセテート)=0.26;IR(薄いフィルム):
【0131】
【化33】

ジヒドロクロリド塩を、反応物を減圧で過剰の塩化チオニルの共沸除去(2×5mlトルエン)を用いた濃縮によって粗生成物の形態で単離し得た。HPLC分析により出発物質の完全な消費および4−メトキシアクリドン(R=22.3分)が主な不純物であることを示した。
【0132】
【化34】

3−クロロ−9−メトキシ−4−メチルアクリジンからβ−アラニン,N−(3−クロロ−4−メチルアクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド、化合物Xを同様に調製した。遊離塩基のH NMR:
【0133】
【化35】

6−クロロ−2,9−ジメトキシアクリジンからβ−アラニン,N−(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド、化合物XIIIを同様に調製した。遊離塩基のH NMR:
【0134】
【化36】

実施例5
β−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステルジヒドロクロリド、化合物XI。
工程A β−アラニン,[N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチル] エチルエステル
アセトニトリル(175mL)中のβ−アラニンエチルエステルヒドロクロリド(1.99g、12.9mmol)、KCO(6.0g、43.4mmol)およびヨードエチルトリイソプロピルシリルエーテル(9.47g、28.9mmol)のスラリーを5〜7日還流した。溶媒の減圧エバポレーションの後、固体をCHClを用いて粉末化した。有機層を希NaCO水溶液、次いでブラインを用いて洗浄し、無水NaSOを用いて乾燥した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(1:4EtOAc/ヘキサン)によって精製し、5.60gのオイル状でβ−アラニン,[N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチル] エチルエステル(83.1%)を得た。
【0135】
【化37】

工程B β−アラニン,N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチル
上記工程Aのβ−アラニン,[N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチル] エチルエステル(5.60g、10.8mmol)および水酸化リチウム(0.59g、14.1mmol)をエタノール中で撹拌し、3時間還流した。溶媒を除去し、粗生成物をCHClおよび希NaHCO水溶液の間で分配した。有機層をブラインを用いて洗浄し、無水NaSOを用いて乾燥し、ストリップしてβ−アラニン,N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチルを淡黄色オイルとして得た(5.03g、収率95.1%)。
【0136】
【化38】

工程C β−アラニン,[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステル
上記工程Bのβ−アラニン,N,N−ビス(2−トリイソプロピルシリルオキシ)エチル(51.0mg、0.104mmol)をN下でCHCl(1ml)中で撹拌した。氷浴で冷却しながら、SOCl(0.5mL)を滴下し、反応物を2.25時間撹拌した。反応混合物をストリッピングして、過剰のSOClを除去した後、乾燥CHCl(0.5ml)を加え、N下にしながら溶液を氷浴で冷却した。 CHCl(1ml)中9−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノ−6−クロロ−2−メトキシ−アクリジン(29.0mg、91.5mmol)の冷却したスラリーを加えた。0.5時間後、この混合物をCHClおよびNaHCO水溶液の間で分配した。有機層をブラインを用いて洗浄し、無水NaSOを用いて乾燥し、ストリップした。得られたガム状物をヘキサンを用いて粉末化し、ヘキサン抽出物をストリップしてトリイソプロピルシリル保護出発物質および生成物の非常に粗な混合物(53.5mg)を得た。
【0137】
トリイソプロピルシリル基を除去するために、粗保護ジオールの一部(33.1mg)を氷冷THF(1mL)中で撹拌した。HF/ピリジン(0.5mL)の添加の後に、室温で、Nを充填した風船下で2.5時間混合物を撹拌した。反応混合物をCHClおよびNaHCO水溶液の間で分配し、有機層を希NaHCO水溶液を用いて数回洗浄し、過剰のHF/ピリジンを除去した。ブライン、次いで無水NaSOを用いた予備的な乾燥の後、溶媒をストリップオフし、粗ジオール(13.1mg)を得た。
【0138】
これをさらなる粗ジオール(5.0mg)と混合し、95 CHCl/5 iPA/1 TFAを溶離液として用いてC−18分取TLCによって精製し、ジオールTFA塩を得た。塩をCHClおよびNaHCO水溶液の間で分配した後に、有機層をブライン、次いで無水NaSOを用いて乾燥し、ストリップし、ジオールの遊離塩基、β−アラニン,[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステル(5.0mg)を得た。
【0139】
【化39】

工程D β−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステルジヒドロクロリド、化合物XI。
【0140】
上記によるβ−アラニン,[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)],3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステル(4.0mg、0.0073mmol)をCHCl(1mL)に溶解し、氷/水浴中で冷却した。氷冷SOCl(0.1mL)を加え、反応物を室温で4時間撹拌した。溶媒を除去するために反応混合物をストリップし、ヘキサンを用いて粉末化し、CHClおよびNaHCO水溶液の間で分配した。有機層をブライン、次いで無水NaSOを用いて乾燥し、ストリップした後に、ジクロロ−化合物を黄色のガム状で得た。
【0141】
【化40】

遊離アミンを冷却CHCl中で撹拌し、エーテル中1M HClを用いて酸性化し、2、3滴のメタノールを用いてストリップし、所望の化合物、β−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)]、3−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]プロピルエステルジヒドロクロリド(2.5mg)、(3.5mg、81%)を黄色固体として得た。
【0142】
6−クロロ−9−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノ−2−メトキシ−アクリジンの代わりに6−クロロ−9−(2−ヒドロキシ)エチルアミノ−2−メトキシ−アクリジンを使用する以外は上述の工程Cと同様の方法で類似のジオールを調製した。
【0143】
【化41】

工程Dとの類似によってこれはβ−アラニン,[N,N−ビス(2−クロロエチル)]、2− [(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]エチルエステルジヒドロクロリド、化合物XIIに転換した。
【0144】
【化42】

実施例6
[N,N−ビス(2−クロロエチル)]−2−アミノエチル 4,5’,8−トリメチル−4’−ソラレンアセテートヒドロクロリド、化合物XIV
工程A:[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)]−2−アミノエチル 4,5’,8−トリメチル−4’−ソラレンアセテート
メチル 4,5’,8−トリメチル−4’−ソラレンアセテート(250mg、0.832mmol)、トリエタノールアミン(12mL)およびエーテル(2mL)中1M HClのスラリーを100℃で2時間撹拌した。得られた透明な褐色溶液を室温まで冷却し、CHClおよび飽和NaHCO水溶液の間で分配した。有機層を飽和NaHCO水溶液を用いて数回すすいだ。無水NaSOを用いた乾燥の後、溶媒を減圧で除去し、残渣をCHClおよび1M HCl水溶液の間で分配した。水層をCHClを用いて数回すすぎ、次いで有機溶媒の存在下でKCO(s)を用いて塩基性とした。中性の生成物を含む有機層を水で数回すすぎ、次いで乾燥し、濃縮した。酸−塩基抽出手順を繰り返して所望の生成物をベージュの固体(84.3mg、24.3%)として得た:
【0145】
【化43】

工程B:[N,N−ビス(2−クロロエチル)]−2−アミノエチル 4,5’,8−トリメチル−4’−ソラレンアセテートヒドロクロリド
CHCl(1ml)中の上記ジオール(9.8mg、0.023mmol)の氷冷混合物に塩化チオニル(0.2mL)を加え窒素下で室温で一晩撹拌した。得られたスラリーを濃縮し、次いでヘキサンを用いて粉末化し、所望の生成物(6.2mg、53.9%)をオフホワイトの固体として得た。
【0146】
【化44】

実施例7
β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルアミド(化合物XV)
工程A:2−[N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)]−N−(tert−ブトキシカルボニル)エチレンジアミン
0℃の乾燥CHCl(25mL)中N−(tert−ブトキシカルボニル)エタノールアミン(1.21g、7.5mmol)およびトリエチルアミン(1.57mL、1.1g、11mmol)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.64mL、0.95g、8.3mmol)を滴下した。反応物を0℃で1時間撹拌し、23℃まで温め、一晩撹拌した。揮発性物質を減圧で除去し、メシレートを白色固体として得た。ジエタノールアミン(7.2mL、7.9g、75mmol)を加え、反応混合物を撹拌しながら6時間75℃に加熱した。粗反応混合物をHO(60mL)およびCHCl(4×20mL)の間で分配した。合わせた有機層をブライン(20mL)を用いて洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を減圧で除去し、1.21g(65%)のジオールを濃厚な黄色のオイルとして得た。
【0147】
【化45】

ヒドロキシルのプロトンは観測されなかった。
工程B:2−[N’,N’−ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)]−N−(tert−ブトキシカルボニル)エチレンジアミン
0℃、乾燥CHCl(12mL)中の工程Aのジオール(1.21g、4.87mmol)およびピリジン(1.59mL、1.55g、19.6mmol)の撹拌溶液に、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.21g、14.7mmol)を加えた。反応混合物を23℃まで温め、2時間撹拌した。反応混合物をCHCl(80mL)で希釈し、HO(3×25mL)、次いでブライン(3×25mL)で洗浄した。有機層をNaSOを用いて乾燥した。溶媒を減圧で除去し、2.26g(97%)の淡黄色オイルを得た。
【0148】
【化46】

工程C:2−[N,N−ビス(2,tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)]−エチレンジアミン
工程Bの保護アミン(4.24g、8.89mmol)を含むフラスコに、23℃で、5mLのトリフルオロ酢酸を加えた。反応混合物を23℃で15分撹拌し、続いてトリフルオロ酢酸を減圧で除去した。粗生成物を2N NaOH(100mL)およびCHCl(3×35mL)の間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥した。溶媒を減圧で除去し、1.76g(53%)の黄色オイルを得た。
【0149】
【化47】

工程D β−4アラニン,N−(tert−ブトキシカルボニル),2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルアミド
3−(N−tert−ブトキシカルボニル)アミノプロパン酸(822.0mg、4.34mmol)および4−メチルモルホリン(442.0mg、4.37mmol)の14mL乾燥THF溶液に−15℃でイソブチルクロロホルメート(0.53mL、0.56g、4.1mmol)を添加した。反応混合物を1分間ー15℃で撹拌し、続いて工程Cからのアミン(1.72g、4.57mmol)を添加した。反応混合物を23℃に加温し、そして1時間撹拌した。次いで、混合物を濾過し、沈殿物をTHF(5mL)で洗浄し、そして濾液を減圧濃縮した。残った物質を2N NaOH(50mL)とCHCl(3×20mL)との間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、そして溶媒を減圧下で除去して2.25gの茶色がかった黄色のガムを得た。中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、1:1のCHCl/EtOAc)で粗生成物(2.25g)を精製し、淡黄色オイル627.0mg(26%)を得た。
【0150】
【化48】

アミドおよびカルバメートのプロトンは観察されなかった。
【0151】
工程E β−4アラニン,2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルアミド
工程D(627.0mg、1.14mmol)で生成した保護アミンを23℃でトリフルオロ酢酸(5mL)に溶解した。得られた溶液を5分間(COの発生が終わるまで)撹拌し、続いて減圧下でトリフルオロ酢酸を除去した。残った物質を飽和NaHCO(50mL)とCHCl(3×20mL)との間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、そして溶媒を減圧除去して淡黄色オイル203.4mg(40%)を得た。
【0152】
工程F β−4アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)アミノ]エチルアミド
工程Eからの粗製アミン(203.4mg、0.45mmol)、9−メトキシアクリジン(96.8mg、0.46mmol)およびメタノール(10mL)の混合物を4時間加熱還流した。反応混合物を23℃に冷却し、そしてさらに2.5日間撹拌した。メタノールを減圧除去し、そして残った物質を2N NaOH(50mL)とCHCl(3×20mL)との間で分配した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、そして溶媒を減圧除去して黄色オイル69.6mgを得た。TLC(シリカゲル、1:1のCHCl/EtOAc)で粗生成物(69.6mg)を精製し、黄色オイル23.4mg(8.3%)を得た。
【0153】
【化49】

アミンのプロトンは観測されなかった。
【0154】
【化50】

工程G β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチルアミド二塩酸塩
工程F(22.0mg、0.04mmol)からのビス−保護基ジオールのイソプロパノール(1.0mL)撹拌溶液に5〜6N HCl/イソプロパノール溶液(0.05mL)を23℃で添加した。反応混合物を23℃で17時間撹拌し、そして生じた黄色沈殿物を減圧濾過で集めた。この黄色固体を1.0mLのイソプロパノールでさらにリンスした。残っているイソプロパノールを減圧除去(一晩)し、黄色固体としてジオール二塩酸塩11.4mg(69%)を得た。
【0155】
【化51】

アミド、アミン、ヒドロキシルのプロトンは観測されなかった。
工程H β−アラニン,N−(アクリジン−9−イル),2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルアミド二塩酸塩
工程G(11.4mg、0.024mmol)からのジオールのCHCN(1.0mL)撹拌懸濁液に23℃でSOCl(0.12mL、200mg、1.7mmol)を添加した。反応混合物を23℃で15分間撹拌し、そして溶液を50℃まで3.5時間加熱した。生じた黄色沈殿物を減圧濾過で集め、CHCN(3×1.0mL)でリンスし、減圧乾燥して、黄色粉末8.3mg(67%)を得た(HPLCにより95%の純度)。
【0156】
【化52】

アミドおよびアミンのプロトンは観測されなかった。
【0157】
実施例8
脆い化合物の加水分解
脆いリンカー中のエステル基(「順方向」および「逆方向」エステル)に組み込む脆い化合物について、モデル化合物をエステル加水分解の量を決定するために研究した。
【0158】
反応は、
AcrNH−(CH−C(=O)−OR→AcrNH−(CH−COH + HO−R
(「順方向エステル」) (「アクリジン酸」)
ここでAcrNHは、以下の表で示された置換基を有する9−アミノアクリジンを指し、そしてnおよびRは示されたものを研究した。表IIIはエステルの加水分解の速度増強を示し、エステル連結がアクリジン環とアルキルアミノ基との間に、近接して位置する。加水分解速度は、アクリジン部分がエステルの酸末端またはアルコール末端に位置しているかにかかわらず急速である。
【0159】
【表3】

以下の反応に関して
AcrNH−(CH−O−C(=O)−R→ AcrNH−(CH−OH + HOC(=O)−R
(「逆方向エステル」) (「アクリジンアルコール」)
ここで、AcrNHは、以下の表で示された置換基を有する9−アミノアクリジンを指し、そしてnおよびRは表に示され、以下の結果が得られた:
【0160】
【表4】

pH3において、表IIIおよび表IVの全ての化合物が100分における1%以下の加水分解を示した。
【0161】
マスタード化合物は、多数の分解経路が同時に起こるので、同じ様式で評価できない。それにもかかわらず、化合物VIIIを表IIIおよび表IVにおいて同じ条件下でインキュベートする場合、アクリジン酸は、長いインキュベーション時間後の主生成物(95%以上)であり、そして40%は100分において形成される。これは、類似ジオール(100分で57%の加水分解)についての表の記述と比較して好ましい。
【0162】
エステル連結の加水分解速度は9−アミノアクリジン部分とエステル基との間のリンカーアームの長さに対して逆に変化する(表IIIおよび表IVにおいて、nが増加するにつれて100分における加水分解の量が減少する)ことが表IIIおよび表IVのデータから理解される。これは、化合物の加水分解速度を調整する方法を提供する。リンカーの切断を調整するこの能力は、化合物の反応性を、所望されるような種々の用途について調整し得る。
【0163】
物質
以下の物質を以下の実施例で使用した:
Adsolは、Baxter Healthcare Corp., Deerfield,ILから市販されているが、ここでおよび以下の実験に使用されるAdsolは以下の混合物を滅菌濾過することによって作製した:蒸留水1リットル中の22gグルコース、9gNaCl、7.5gマンニトール、および0.27gアデニン。
【0164】
キナクリンマスタードをAldrich Chemical Co., St.Louis,MOから入手した。
【0165】
全ての血液をSacramento Blood Center(Sacramento CA)から入手した。
【0166】
実施例9
水疱性口内炎ウィルス(VSV)の不活性化
各化合物の保存溶液(代表的に10〜30mM)を、前もって2mM HPOで酸性化された血液貯蔵生理食塩水に適量の物質を溶解することによって調製し、次いで1mLアリコート中ですばやく凍結した。使用する際、アリコートを10℃以下まで加温し、そして1時間以内に使用した。
【0167】
濃縮赤血球(PRBC)の調製のために、全血を測定したHctとともに、6分間3800rpmで遠心分離する。上清血漿を除去し、測定する。Adsolを60%HctとともにPRBCを供給するために添加する。血漿濃度は15〜20%である。
【0168】
VSV(保存溶液、約10pfu/mLをATCC American Type Cell Culture,Rockville,MDから得た)を組織培養培地(10%NCSを有するDMEM)で、または2mLの滅菌したo−リングチューブにアリコートにした(aliquoted)(1mL)試験培地を提供するPBRCで、1:10に希釈する。
【0169】
各チューブに、10〜300μMの試験化合物濃度を提供するのに十分な試験化合物溶液を添加する。各サンプルを、混合物を数回十分にピペッティングすることによりすばやく混合する。懸濁液を4時間周囲温度でインキュベートする。ウィルスの力価をBHK(乳児(baby)ハムスター腎臓)宿主細胞の処理した培地でのインキュベーションの後に確かめた。PRBCは上清単独よりもむしろ直接使用した。ウィルスの死滅は細胞培養のプラークの出現に反比例した。処理していない試験培地の力価と処理した試験サンプルの力価との間の相違は、その濃度での化合物に対する死滅のlogを提供する。検出限界は101.4pfu/mLである。
【0170】
組織培養培地においてキナクリンマスタード(QM)、および化合物IV、VI、XI、VIIおよびはVIIIは、50μMより少ない試験化合物でVSVの3logより大きく不活性化した。化合物XIIは、約200μMで2logを不活性化した。この化合物はエステル加水分解に関して特に不安定であると考えられる。実施例8、表IVで最初の欄に記載されるように、相当するジオール化合物(β−アラニン,[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)],2−[(6−クロロ−2−メトキシアクリジン−9−イル)アミノ]エチルエステル)は、100分後、pH8、37℃で99%加水分解された。マスタード化合物はまた、急速な加水分解をうけた。これは、核酸に分子のエフェクター部分を向かわせるアンカー部分の重要性、およびこれらが実際の使用条件下で有効であるように9−アミノアクリジンクラスの化合物の反応性を調整することの重要性を例示する。記述された不活性化のプロトコルで、化合物XIIの加水分解は不活性化で競合的であると考えられる。
【0171】
PRBCにおいて、QMおよび化合物IV、VI、VIII、V、およびXIIIは150μMより少ない試験化合物でVSVの2logより大きく不活性化した。
【0172】
実施例10
Yersinia enterocoliticaの不活性化
PRBCおよび保存溶液を実施例9のVSVのように調製した。
【0173】
Yersinia(California Department of Health Services,Microbial Disease Laboratory,Berkeley,CA)を37℃で一晩振盪器上でLB−ブロス中で培養する。一部(10mL)を15mLコニカルチューブ中で10分間2500rpmで遠心分離する。そのペレットを約10バクテリア/mLを提供するようにAdsol 1mL中で再懸濁する。力価を測定するために、光学密度をAdsolで1:100に希釈して測定した(10バクテリア/mLでOD610=0.2)。次いで、細菌保存溶液を滅菌した2mLのo−リングチューブにアリコートにした(1mL)試験培地を提供するために生理食塩水またはPRBC中に1:100に希釈する。
【0174】
各チューブに、10〜300μMの試験化合物濃度を提供するのに十分な量の試験化合物溶液を添加する。各サンプルを、混合物を数回、十分にピペッティングすることによりすばやく混合する。次いで、それを2時間周囲温度でインキュベートし、次いで10−1希釈から始めて、つづけて10−8希釈まで100μLのサンプルで開始するLB−アガー上にプレーティングする。プレートを37℃で一晩インキュベートし、そしてコロニーをカウントする。処理していない試験培地の力価と処理したサンプルのものとの相違は、その濃度での化合物に関する死滅のlogを提供する。検出限界は10バクテリア/mLである。
【0175】
生理食塩水において、キナクリンマスタード(QM)および化合物IV、VI、VIII、V、IX、およびXは、200μM以下の濃度でYersiniaを2logより強く不活性化する。
【0176】
実施例11
本発明の化合物の導入後の血液機能アッセイ
本発明の化合物の1つの考えられる使用は、輸血を意図される血液または血液製剤に1つ以上の本発明の化合物の導入を含む。血液または血液製剤は化合物での処置後、輸血に適したままでなければならない。赤血球機能における化合物の効果を評価するために、化合物は以下の記述のように試験された。
【0177】
50%ヘマトクリット(Hct)を有する濃縮赤血球を2500rpmで6分間公知のHctと全血を遠心することによって調製する。上清を除去し、そして測定する。懸濁液を所望のHctを達成するために十分な量のAdsolで希釈する。
【0178】
1.5mLのPRBCを各2mLのo−リングチューブに入れ、そして十分な試験化合物の保存溶液を所望の濃度を達成するために添加する。サンプルを4時間周囲温度でインキュベートし、次いで4℃で一晩保存する。溶血はHogmanら,Transfusion,31:26−29(1991)の記述のように決定される。
【0179】
溶解標準を、2工程で水を用いてインキュベートした混合物10μMを希釈することによって各サンプルについてに調製し、最終的に1:4000の希釈を与える。
【0180】
アッセイに関して、サンプルを4℃での保存から取り出し、そして15分間未満加温した。簡単にボルテックスして混合した後、アリコートを取り除き、そして2分間14000rpmで遠心した。上清を除去し、そして10分間14000rpmで遠心した。上清を除去し、そして水で必要とされるだけ希釈した。溶解標準および希釈した上清の414nmでの吸収を、ブランクの水に対して読みとった。溶血のパーセントは以下のように算出された:
(100%−50%Hct)×(サンプルのA414×希釈因子)/(溶解標準のA414×4000)
サンプルのA414は、本発明の化合物の存在によるいかなる吸収についても訂正されていない。その結果を表Vaに示す。
【0181】
【表5a】

BBS=血液保存生理食塩水
**ABBS=酸性血液保存生理食塩水
***QM=キナクリンマスタード。
【0182】
細胞外カリウムをCiba Corning Model 614 K/Na Analyzer(Ciba Corning Diagnostics Corp.,Medford,MA)を用いて測定した。ATPをSigma procedures No.366(Sigma,St.Louis,MO)を用いて測定した。
【0183】
表Vbはその実験において未処理PRBCサンプルのコントロール値に対する細胞外カリウムの相対値を示す。例えば、相対値1.03は処理サンプルが未処理コントロールより3%高い細胞外カリウム濃度を有することを意味した。
【0184】
【表5b】

*[K+](処理)/[K+](未処理)。
【0185】
表Vcはその実験において未処理PRBCサンプルのコントロール値に対する相対的ATP値を示す。例えば、相対値1.03は処理サンプルが未処理コントロールより3%高いATPを有することを意味した。
【0186】
【表5c】

*[ATP](処理)/[ATP](未処理)。
【0187】
実施例12
本発明の化合物によるHIVの不活性化
TC培地中の細胞結合HIV(Popovicら、Science,224:497(1984)):おおよそ10pfu/mL以上の力価で懸濁液を提供するために、 H9−IIIb細胞をTC培地中で懸濁する。15mLコニカルチューブ中の試験培地の2mLのアリコートに、活性物質の所望の濃度を達成するために十分な量の試験化合物溶液を添加する。懸濁液を数回、十分にピペッティングすることによってすぐに混合し、次いで簡単にボルテックスする。サンプルを2〜4時間周囲温度でインキュベートし、次いで遠心分離する。ペレットを1mLのプラークアッセイ希釈剤で再懸濁し、次いですばやく−80℃で凍結し、そしてマイクロプラークアッセイによって滴定する。(Hansonら、J.Clin.Micro.,28:2030(1990))。
【0188】
化合物キナクリンマスタード、IVおよびVIは、25μM以下の試験化合物で3logより多いHIVを不活性化した。
【0189】
PRBC中の細胞結合HIV:PRBC中でアッセイするために、濃縮細胞をVSVアッセイで記述したように調製する。HIV9−IIIb細胞を遠心分離した細胞を希釈する前にAdsolに添加する。生じた懸濁液は全ての物質を十分ピペッティングすることによって混合する。試験化合物のインキュベーション終了後、サンプルを5μLのヘパリンを含む3mLの1:1の血漿:DMEM溶液で希釈する。次いで、感染した細胞をfycol−hypaqueの勾配を用いて単離し、1mLの希釈剤で再懸濁し、そして後の滴定のために凍結する。
【0190】
化合物キナクリンマスタード、VIおよびVは、200μM以下の試験化合物で3logより多いHIVを不活性化した。
【0191】
PRBC中の細胞フリーHIV:プロトコルは、調製後のPRBCに細胞フリーHIVを直接的に加えること以外は上記と同様である。インキュベーション後、培地を遠心分離し、そして上清を後の滴定のために凍結する。
【0192】
化合物キナクリンマスタード、IV、VおよびVIは、100μM以下の試験化合物で3logより多いHIVを不活性化した。
【0193】
前述の発明は、明瞭性および理解するための例証および例示よっていくつか詳細に記載されたが、特定の変化および改変が実際的であり得ることが当業者に明白である。従って、記載および実施例は本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、添付の請求の範囲によって記述される。米国特許番号第5,559,250号および5,399,719号の全ては、本明細書において参考として援用される。本明細書で引用した他の全ての特許および文献は、本明細書中において参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を含有する化合物、またはその全ての塩もしくは立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む):
【化65】

ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、−H、−R10、−O−R10、−NO、−NH、−NH−R10、−N(R10、−F、−Cl、−Br、−I、−C(=O)−R10、−C(=O)−O−R10、および−O−C(=O)−R10からなる群より独立して選択され、
ここで−R10は、独立して、H、−C1−8アルキル、−C1−8ヘテロアルキル、−アリール、−ヘテロアリール、−C1−3アルキル−アリール、−C1−3ヘテロアルキル−アリール、−C1−3アルキル−ヘテロアリール、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール、−アリール−C1−3アルキル、−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3アルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3アルキル、−C1−3ヘテロアルキル−アリール−C1−3ヘテロアルキル、−C1−3アルキル−ヘテロアリール−C1−3ヘテロアルキルまたは−C1−3,ヘテロアルキル−ヘテロアリール−C1−3,ヘテロアルキルであり、
20は−Hまたは−CHであり;そして、
21は−R11−W−X−Eであり、
ここで−R11は、−C1−8アルキル−であり、
Wは、−C(=O)−O−であり、;
Xは、−R11−であり;そして
Eは−N(R12であり;
ここで−R12は−CHCH−Gであり、ここで各Gは−Clであり;
ただし、該化合物は以下の式の化合物を含まない:
【化66】

【請求項2】
以下の式を有する請求項1に記載の化合物、またはその全ての塩もしくは立体異性体:
【化67】

【化68】

【請求項3】
以下の式を有する化合物または薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【化69】


【公開番号】特開2010−95527(P2010−95527A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286996(P2009−286996)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【分割の表示】特願平10−531199の分割
【原出願日】平成10年1月6日(1998.1.6)
【出願人】(500226638)セラス コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】