説明

病原体及び微粒子検出システム並びに検出法

本システムは源となる波長を有している電磁放射線ビームを与えるための励起光源を備えている。第一の波長選択装置は電磁放射線ビームに当たるように配置せしめられている。該第一の波長選択装置は源となる波長を有しているいかなる電磁放射線についてもその少なくとも一部を伝え、そして、他の波長の放射線を反射するように構成されている。粒子を含有している媒質は電磁放射線のビームに当たるように配置せしめられている。電磁放射線のビームの少なくとも一部は、該媒質の中で散乱されることとなり、その散乱せしめられた電磁放射線は進行方向側に散乱された電磁放射線と反対方向側に散乱された電磁放射線とを含んだものである。光学検出器が反対方向側に散乱された電磁放射線及び/又は進行方向側に散乱された電磁放射線を収集するように配置せしめられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2005年7月15日に出願された米国仮特許出願第60/700,008号(発明の名称: 病原体及び微粒子検出システム並びに検出法)の優先権を主張するもので、該米国仮特許出願第60/700,008号の内容はそれを参照することにより本明細書にすべて含まれる。
【0002】
本発明は、空中浮遊微粒子又は水中浮遊微粒子を検出する装置システム及び方法に関し、特には、空中浮遊微粒子又は水中浮遊微粒子を検出すると共に検出した微粒子をサイズで分類する装置システム及び方法に関する。本発明は、特には、アレルゲンや生物兵器を検出し、サイズでもって分類するのに有用であり、そうした利用に関連して、その他の利用も意図されるけれども、本明細書中で開示されるものである。
【背景技術】
【0003】
炭疽菌〔bacillus anthracis (炭疽, anthrax)〕などの生物兵器の放出を含む都市テロ攻撃は、現在、現実性のある問題である。兵器化された炭疽菌胞子は、人間の肺に入っていくことができるため、非常に危険なものである。人間に対する炭疽菌胞子の致死性の吸入量、すなわち、LD50 (被爆したヒトの50%が死亡するに充分な致死性の量)は、2,500 〜 50,000 個の胞子であると見積もられている〔T. V. Inglesby, et al., "Anthrax as a Biological Weapon", JAMA, vol. 281, page 1735, 1999)(非特許文献1)参照〕。その他の生物兵器として可能性があるのは、ペスト菌〔yersinia pestis(ペスト, plague)、ボツリヌス菌〔clostidium botulinum(ボツリヌス中毒症, botulism)、および野兎病病原体(francisella tularensis)がある。この可能性がある脅威に鑑みて、現在そのような攻撃を検出する早期警戒システムに対する需要がある。
【0004】
サンプルを通過するようにレーザ光を指向し、その光、すなわち、サンプル中を伝播する光を検出解析してサンプル中の微粒子からの散乱光を検出するレーザ微粒子計数器(カウンター)が知られている。散乱光を検出するために設計された既存の検出器または微粒子計数器の問題の1つは、入射照明光源シグナル(信号)から散乱シグナルを抽出する必要があることである。これは、非常にノイズの多いバックグラウンド(レーザ光源によるグレア)から、弱いシグナル(小さな粒子による散乱)を検出することを意味する。こうした特徴は長い間レーザ微粒子カウンターの装置を編成するにあたり大きな困難性をもたらしている。慣用的にデザインされたレーザ微粒子カウンターはレーザ発光源からのグレアを減らしたり、大きなバックグラウンドのノイズに対して粒子散乱を測定するために費用のかかる精巧で複雑な手段を使用しており、装置が故障しやすかったり高価なものとなるようにするものである。現在のところ、従来の設計によるレーザ粒子計数器は、脆弱で高価なものであり、この用途には適していない。レーザ粒子計数に用いる従来技法には、レーザドップラー法、すなわち、粒子の速度を測定してサイズの情報を推論する手法、粒子が検出領域を横断するのに必要な時間を測定する過渡時間法、小さい粒子のみを測定可能な大角複数センサーデザインなどがある。パルスUVレーザを用いるレーザ誘起蛍光に基づくバイオセンサーの提案が、T.H. Jeys, et al., Proc. IRIS Active Systems, Vol. 1, p. 235, 1998(非特許文献2)に記載されている。これは空気1リッターあたり5個の微粒子からなるエアロゾルの濃度を検出可能であるが、高価で精密な装置が必要である。その他の粒子計数器としては、オレゴン州グランツパス(Grants Pass, Oregon)のMet One Instrument, Inc、コロラド州ボルダー(Boulder, Colorado)のParticle Measurement Systems, Inc.、そしてカリフォルニア州アナハイム(Anaheim, California)のTerra Universal Corp.により製造されているようなものが挙げられる。その設計のため、これらの粒子計数器の構成は、精密な光学アライメントが必要で、さらに精巧なセンサーと電子機器・技術が必要である。これらの製品は研究室での使用を意図しており、1台数千ドルもの費用がかかる。このため、これらの製品は実際の現場への配置には不適であるばかりでなく、生物兵器検出用に特別に設計されているものでもない。
【0005】
空気サンプル中の微粒子数がある所定最小値を超えた場合、流体中浮遊アレルゲン粒子を検出して被害を受けやすい個々の人に対して警報を発するように種々の検出器が設計されてきた。こうした装置は、米国特許第5,646,597号明細書(特許文献1)、同第5,969,622号明細書(特許文献2)、同第5,986,555号明細書(特許文献3)、同第6,008,729号明細書(特許文献4)、及び同第6,087,947号明細書(特許文献5)〔すべてHamburger et al.に対する特許である〕に記載されている。これらの検出器はすべて、光線の一部を空気中の何らかの微粒子により散乱するように自然環境の空気のサンプルを通過する光線を指向すること、所定アレルゲンのサイズの範囲に対応するある所定角度の範囲で散乱する光のみを伝達する光線遮光装置、及びその伝達された光を検出する検出器を備えている。該検出器で検出された光がある所定レベルをこえると、警報装置が作動する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,646,597号明細書
【特許文献2】米国特許第5,969,622号明細書
【特許文献3】米国特許第5,986,555号明細書
【特許文献4】米国特許第6,008,729号明細書
【特許文献5】米国特許第6,087,947号明細書
【非特許文献1】T. V. Inglesby, et al., "Anthrax as a Biological Weapon", JAMA, vol. 281, page 1735, 1999)
【非特許文献2】T.H. Jeys, et al., Proc. IRIS Active Systems, Vol. 1, p. 235, 1998
【非特許文献3】Yong-Le Pan et al., Appl. Opt. Vol. 41, 2994, 2002, "Backward-enhanced fluorescence from clusters of microspheres and particles of tryptophan"
【非特許文献4】Igor Veselovskii et al., Appl. Opt. Vol. 41, 5783, 2002, "Angle- and size-dependent characteristics of incoherent Raman and fluorescent scattering by microspheres"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの装置はアレルゲン微粒子の存在に基づいて警告の表示を行う目的には充分なものであるが、これらの装置は実際の現場への配置には適しているものでなく、さらに、生物兵器を検出する病原体検出器に対するより厳しい要求仕様を満たしているものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は病原体及び微粒子を検出するための先行技術のシステム(装置)並びに方法を改善する技術を提供するものである。より具体的には、非弾性散乱強度の独特の角度分布パターン、すなわち、微粒子からの蛍光の独特の角度分布パターンを十分な態様で利用するための新規な蛍光シグナルの収集手法が開発せしめられた。微粒子による非弾性散乱は優先的な強度を持った角度分布、すなわち、反対方向の側(最も強い)と進行方向の側(第二番目に強い)といったものを有していることが理論的にも実験的にも両方で示されてきている〔非特許文献3:"Backward-enhanced fluorescence from clusters of microspheres and particles of tryptophan" Yong-Le Pan et al., Appl. Opt. Vol. 41, 2994, 2002; 非特許文献4:"Angle- and size-dependent characteristics of incoherent Raman and fluorescent scattering by microspheres" Igor Veselovskii et al., Appl. Opt. Vol. 41, 5783, 2002〕。
【0009】
簡潔に述べれば、一つの具体的な態様では、本システム(装置)は源となる波長を有している電磁放射光線(放射ビーム)を提供するための励起光源を備えているものである。例えば、二色性ビームスプリッターなどの第一の波長選択装置は電磁放射線のビームに当たるように配置せしめられている。該第一の波長選択装置は源となる波長を有しているいかなる電磁放射線についてもその少なくとも一部を伝え、そして、他の波長の放射線を反射するように構成されている。微粒子を含有している媒質は電磁放射線のビームに当たるように配置せしめられている。電磁放射線のビームの少なくとも一部は、該媒質の中で散乱されることとなり、その散乱せしめられた電磁放射線は進行方向側に散乱された電磁放射線と反対方向側に散乱された電磁放射線とを含んだものである。一つの光学検出器又は複数の光学検出器が進行方向側に散乱された電磁放射線と反対方向側に散乱された電磁放射線を収集するように配置せしめられている。
【0010】
また、本発明は病原体及び微粒子検出法を提供するものでもある。こうした点で、とりわけ、そうした方法の一つの具体的な態様では、広く要約してみると、次なる工程よりなるものである:電磁放射線のビームを出し;電磁放射線のビームの少なくとも一部を第一の波長選択装置を通して送出せしめ;微粒子を含有する媒質中に電磁放射線のビームの一部を当てて通し、そこで微粒子により電磁放射線を進行方向及び反対方向に散乱せしめ;反対方向側の散乱電磁放射線の少なくとも一部を該第一の波長選択装置でもって反射し;進行方向側の散乱電磁放射線の少なくとも一部と反対方向側の散乱電磁放射線の少なくとも一部とを第一の光学検出器の所で収集し、それにより進行方向と反対方向の電磁放射線を散乱する微粒子のサイズを区分けすること。
【0011】
本発明のその他のシステム(装置)、方法、特徴、そして利点は、以下の図面並びに詳細な説明を見ることにより当業者には明らかとなるであろう。そうした付加的なシステム(装置)、方法、特徴、そして利点のすべては本明細書の記載に含まれるものであり、本発明の範囲内のもので、添付の特許請求の範囲により保護されるものであることは意図されているものである。
【0012】
本発明の数多くの態様は、次なる図面を参照することによってよりよく理解される。図面中に示された構成部品装置などは必ずしも寸法通りでなく、その代わりに本発明の原理を明快に示すために強調されているものである。さらに、図面においては、同様な参照番号は幾つかの図面を通して相当する部品部材などを示すものとしてある。
【0013】
本発明は、同じような部品・部材に対しては同様な参照番号を付してある添付図面を参照しながら、本発明の例示的な具体的態様についての以下の詳細な説明の記載により理解がより良くなされよう。
【0014】
図1は、本発明の第三の具体例の流体微粒子検出器システムのための光学システムの代表例である。
図2は、本発明の第三の具体例の微粒子検出器システムであって、図1の光学システムを取り入れているもののブロック図である。
図3は、本発明の第四の具体例の流体微粒子検出器システム701のための光学システムの代表例である。
図4は、本発明の第三の具体例の微粒子検出器システムであって、図3の光学システムを取り入れているもののブロック図である。
図5は、微粒子の半径に対するミー散乱断面の関係を示すグラフである。
図6は、パルス高測定回路のブロック図である。該回路は、本発明の第四の具体例ではアナログ-デジタルコンバーター、ウィンドウコンパレータ回路、そしてコントロール及び出力表示装置ユニットを形成している。
図7は、本発明の第四の具体例に従ったアナログ-デジタルコンバーター(変換器)を示す概略図である。
図7Aは、本発明の第四の具体例の様々なところでのアナログ-デジタルコンバーターの出力を図示したものである。
図8は、微粒子サイズの分布のヒストグラムの一例を描いたものである。
図9は、四種の代謝産物の蛍光発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第一の具体例の流体微粒子検出器システムのための光学システムの代表例である。
本システム(装置)の第一の具体例は、特には、テロリスト又はその他の者により故意に撒かれる空中浮遊又は水中浮遊の生物テロ剤(生物テロ兵器)を検出することに向けられたものである。しかしながら、それは、例えば、カビや細菌などの自然界に存在している、あるいは、偶発的に、不注意で、自然と、又は、意図的にまかれたといったその他の空中浮遊微粒子又は水中浮遊微粒子の有害レベルを検出するような民生用に使用されることもできるし、例えば、食品工業や製造工業などのその他の工業的な用途、並びに清浄室用途で使用されることもできる。
【0016】
本明細書で使用の用語「流動体中に浮遊している粒子」又は「流体中浮遊微粒子」とは、空中浮遊粒子(又は微粒子)及び/又は水中浮遊粒子(又は微粒子)の両方を意味している。
本明細書で使用の用語「病原体」とは、もし充分な量で空気中又は水中に存在するとそれに被爆した人間は危害を受けるとか殺されることさえありうるといった空中浮遊又は水中浮遊粒子、バイオ活性剤、トキシン(毒素)のいずれのものであってよい。本明細書で使用の「バイオ活性剤」とは、微生物、病原体、又は、感染性を有する物質、トキシン、生物トキシンのいずれか、あるいは、その由来や生産法にかかわらず、そうした微生物、病原体、又は、感染性を有する物質のうちのいずれかの自然発生によるか、生物工学技術によるか、あるいは、合成により得られた成分のいずれかである。そうしたバイオ活性剤としては、例えば、生物トキシン、バクテリア、ウイルス、リケッチア、芽胞(胞子)、真菌、プロトゾア、当該分野で知られたその他のものが挙げられる。
【0017】
「生物トキシン」とは、生きている植物、動物、又は微生物により生産される、あるいは、それから誘導される毒性を有する物質であるが、化学手段で生産されたり、変えられることもできる。しかしながら、トキシンとは、一般的には、宿主生物体中で天然に発生するものである〔すなわち、サキトキシン(saxitoxin)は海洋藻類により産生される〕が、遺伝子的に変えたり及び/又は合成手法で製造したトキシン類は実験室環境で生成されてきたものである。微生物と比べると、トキシンは相対的に簡単な生化学的組成を有しており、それ自体で再度生み出されるといったものではない。多くの面で、それらのものは化学活性剤に匹敵するものである。そうした生物トキシン類としては、例えば、ボツリヌス及び破傷風トキシン類、ブドウ球菌のエンテロトキシンB (enterotoxin B)、トリコセシンマイコトキシン類(trichothecene mycotoxins)、リシン(ricin)、サキトキシン、赤痢菌志賀菌又は志賀菌様トキシン類、デンドロトキシン類(dendrotoxins)、エラブトキシンb(erabutoxin b)、並びにその他の公知のトキシン類が挙げられる。
【0018】
本検出システムは、空中浮遊又は水中浮遊微粒子を検出し、例えば、サンプル中で検出され且つそのサイズ範囲内にあるそれぞれのサイズの粒子の数を示すような出力を生成し、該粒子が生物のものか、あるいは、非生物のものかを示すようにデザインされている。また、該検出システムは、粒子の数が通常のバックグラウンドのレベルを上回るといった、ある所定値を超えていると、及び/又は、それが生物体又はバイオ活性剤であり且つ危険な可能性があると、警告のシグナル又はその他の応答を発する。
【0019】
図1は、本発明の第一の具体例の流体微粒子検出システムのための光学システム210の代表例である。図1に示されているように、光学システム210は、源となる波長を有している電磁放射線214のビームを与える励起源212を備えている。第一の波長選択装置216は、電磁放射線214のビームが当たるように配置せしめられている。かかる第一の波長選択装置216は、一つの具体的な例では、二色性ビームスプリッターを包含する。該第一の波長選択装置216は、源となる波長を有しているどんな放射もその少なくとも一部を伝え、その他の波長の放射を反射するように構成されている。該第一の波長選択装置216は該励起光源212からの起こりえるスプリアスなスペクトルの放射を反射するように作動するものであることができる。電磁放射線214のビームの一部はパワーモニター検出器250に向けて第一の波長選択装置216により反射せしめられる。該パワーモニター検出器 250は該励起光源212と情報交換するように動作してよく、任意に、該励起光源212からの出力パワーを一定に保つというフィードバックループの一部として働くものであってよい。該パワーモニター検出器250に向けて第一の波長選択装置216により反射された電磁放射線のビーム214の一部は、パワーモニターレンズ256により焦点が合わせられてよい。
【0020】
微粒子220を含有している媒質218は電磁放射線のビーム214が当たるように配置せしめられている。電磁放射線のビーム214の少なくとも一部は、該媒質218の中で散乱された電磁放射線になる。該散乱電磁放射線は、進行側散乱電磁放射線222と反対側散乱電磁放射線224とを含んでいるものである。第一の光学検出器226は、反対方向側の散乱電磁放射線224を受けるように配置せしめられている。該反対方向側の散乱電磁放射線224は、該光学検出器226に向けて該第一の波長選択装置216により反射せしめられてよい。バンドパスフィルタ252は、該第一の波長選択装置216と該光学検出器226との間で利用されて、電磁放射線のビーム214からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよい。焦点用レンズ254は、該第一の波長選択装置216と該光学検出器226との間で利用されて、該光学検出器226に対して反対方向側の散乱電磁放射線224の焦点を合わせるようにしてよい。
【0021】
図1に示されているように、該進行方向側の散乱電磁放射線222は、第一のビーム遮断レンズ260に当たるように向けられていてよい。該第一のビーム遮断レンズ260は、電磁放射線のビーム214の非散乱光成分を反射するようにデザインされていてよく、光学検出器におけるグレアを防止するようにしてよい。該第一のビーム遮断レンズ260は、電磁放射線のビーム214の非散乱光成分を反射するように前方の表面に取り付けられた物質、例えば、ビニルのような物質を有するものであってよい。該第一のビーム遮断レンズ260についての更に考慮すべきことについては、米国特許出願第11/193,204号に開示されており、それを参照することにより本明細書に含められる。
【0022】
次に、該進行方向側の散乱電磁放射線は、第一の光学素子262に向けられてよい。かかる第一の光学素子262は、第三の具体例では、ローパスフィルタ、又は類似の波長選択素子である。該第一の光学素子262は、該進行方向側の散乱電磁放射222の少なくとも一部を通し、該進行方向側の散乱電磁放射222の一部を反射するものであってよい。より具体的には、該第一の光学素子262は、該進行方向側の散乱電磁放射222の蛍光シグナル部分を反射するが、一方で該進行方向側の散乱電磁放射222の残部がそれを通過するのを許容するものであってよい。第二のビーム遮断レンズ264は、該進行方向側の散乱電磁放射222の透過した部分を微粒子検出器266に向けてその焦点を合わせるものであってよい。該微粒子検出器266は、例えば、該微粒子220のサイズを区分けするためのフォトダイオードであってよい。
【0023】
該進行方向側の散乱電磁放射222の反射蛍光シグナルの部分は、該媒質218を通して後方に向けられて該第一の波長選択装置216によって該光学検出器226に向けて反射せしめられてよい。該焦点用レンズ254は、該第一の波長選択装置216と該光学検出器226の間で利用されて、該光学検出器226に向けて該進行方向側の散乱電磁放射222の反射蛍光シグナルの部分の焦点を合わせるものであってよい。
【0024】
図2は、本発明の第一の具体例の微粒子検出器であって、図1の光学システム210を取り入れているもののブロック図である。該光学システム210は、電磁放射線のビーム214を該第一の波長選択装置216の中に向けている励起光源212を備えている。電磁放射のビーム214は、該第一の波長選択装置216を通って該媒質218の中を透過する。そして電磁放射線のビーム214の一部は該第一の光学検出器226に向けて反対方向側に散乱せしめられ、電磁放射線ビーム214の別の部分は該微粒子検出器266に向けて進行方向側に散乱せしめられる。
【0025】
二つのシグナルディバイダー230A, 230Bは、該第一の光学検出器226と該微粒子検出器266のそれぞれの出力を該パワーモニター検出器250の出力で割ることを行う。二つのアンプ(増幅器: AMP)232A, 232Bは、該シグナルディバイダー230A, 230Bの出力に繋げられている。アナログ-デジタルコンバーター(変換器)234は該アンプ232A, 232Bに繋げられている。ウィンドウコンパレータ回路236は、アナログ-デジタルコンバーター234に接続されている。コントロール及び出力表示装置ユニット238は、ウィンドウコンパレータ回路236の出力に繋げられている。ローシグナル検出回路240は、該励起光源212の出力に接続せしめられ、電磁放射線214に関連したパワーレベルを与えている。また、ローシグナル検出回路240の出力は、コントロール及び出力表示装置ユニット238に接続されている。また、警報装置242も、コントロール及び出力表示装置ユニット238に接続されている。該コントロール及び出力表示装置ユニット238は、コンピュータ、又は、該微粒子検出器の動作を制御するようにカスタムデザインされたハードウェア/ソフトウェアであることができる。
【0026】
図3は、本発明の第二の具体例の流体微粒子検出システムのための光学システムの代表例である。図3に示されているように、該光学システム310は、源となる波長を有している電磁放射線314を与える励起源312を備えている。第一の波長選択装置316は、電磁放射線314のビームが当たるように配置せしめられている。該第一の波長選択装置316は、源となる波長を有しているどんな放射もその少なくとも一部を伝え、その他の波長の放射を反射するように構成されている。該第一の波長選択装置316は該励起光源312からの起こりえるスプリアスなスペクトルの放射を反射するように作動するものであることができる。電磁放射線314のビームの一部はパワーモニター検出器350に向けて第一の波長選択装置316により反射せしめられてよい。該パワーモニター検出器350は該励起光源312と情報交換するように動作してよく、任意に、該励起光源312からの出力パワーを一定に保つというフィードバックループの一部として働くものであってよい。該パワーモニター検出器350に向けて第一の波長選択装置316により反射された電磁放射線のビーム314の一部は、パワーモニターレンズ356により焦点が合わせられてよい。
【0027】
微粒子320を含有している媒質318は電磁放射線のビーム314が当たるように配置せしめられている。電磁放射線のビーム314の少なくとも一部は、該媒質318の中で散乱された電磁放射線になる。該散乱電磁放射線は、進行側散乱電磁放射線322と反対側散乱電磁放射線324とを含んでいるものである。第一の光学検出器326は、反対方向側の散乱電磁放射線324を受けるように配置せしめられている。該反対方向側の散乱電磁放射線324は、該光学検出器326に向けて該第一の波長選択装置316により反射せしめられてよい。バンドパスフィルタ352は、該第一の波長選択装置316と該光学検出器326との間で利用されて、電磁放射線のビーム314からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよい。焦点用レンズ354は、該第一の波長選択装置316と該光学検出器326との間で利用されて、該光学検出器326に対して反対方向側の散乱電磁放射線324の焦点を合わせるようにしてよい。
【0028】
図3に示されているように、該進行方向側の散乱電磁放射線322は、第一のビーム遮断レンズ360に当たるように向けられていてよい。該第一のビーム遮断レンズ360は、電磁放射線のビーム314の非散乱光成分を反射するようにデザインされていてよく、光学検出器におけるグレアを防止するようにしてよい。次に、該進行方向側の散乱電磁放射線は、光学素子370に向けられてよい。かかる光学素子370は、第四の具体例では、第二の波長選択装置316である。該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の少なくとも一部を通し、該進行方向側の散乱電磁放射322の一部を反射するものであってよい。より具体的には、該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分を反射するが、一方で該進行方向側の散乱電磁放射322の残部がそれを通過するのを許容するものであってよい。第二のビーム遮光レンズ364は、該進行方向側の散乱電磁放射322の透過した部分を微粒子検出器366に向けてその焦点を合わせるものであってよい。該微粒子検出器366は、例えば、該微粒子320のサイズを区分けするためのフォトダイオードであってよい。
【0029】
該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分は、第二の光学検出器376に向けられていてよい。第二のバンドパスフィルタ372が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、電磁放射線のビーム314からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよい。焦点用レンズ374が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、該第二の光学検出器376に向けて該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分の焦点を合わせるものであってよい。該第二の光学検出器376は、例えば、PMT光学検出器であってよい。
【0030】
図4は、本発明の第二の具体例の微粒子検出器システム301であって、図3の光学システム310を取り入れているもののブロック図である。該光学システム310は、電磁放射線のビーム314を該第一の波長選択装置316の中に向けている励起光源312を備えている。電磁放射のビーム314は、該第一の波長選択装置316を通って該媒質318の中を透過する。そして電磁放射線のビーム314の一部は該第一の光学検出器326に向けて反対方向側に散乱せしめられ、電磁放射線ビーム314の別の部分は該微粒子検出器366に向けて進行方向側に散乱せしめられる。
【0031】
三つのシグナルディバイダー330A, 330B, 330Cは、該第一の光学検出器326、該微粒子検出器366及び該第二の光学検出器376のそれぞれの出力を該パワーモニター検出器350の出力で割ることを行う。三つのアンプ332A, 332B, 332Cは、該シグナルディバイダー330A, 330B, 330Cの出力に繋げられている。アナログ-デジタルコンバーター334は該アンプ332A, 332B, 332Cに繋げられている。ウィンドウコンパレータ回路336は、アナログ-デジタルコンバーター334に接続されている。コントロール及び出力表示装置ユニット338は、ウィンドウコンパレータ回路336の出力に繋げられている。ローシグナル検出回路340は、該励起光源312の出力に接続せしめられ、電磁放射線314に関連したパワーレベルを与えている。また、ローシグナル検出回路340の出力は、コントロール及び出力表示装置ユニット338に接続されている。また、警報装置342も、コントロール及び出力表示装置ユニット338に接続されている。該コントロール及び出力表示装置ユニット338は、コンピュータ、又は、該微粒子検出器の動作を制御するようにカスタムデザインされたハードウェア/ソフトウェアであることができる。
【0032】
システム設計は、光の波長に相当するサイズを有する微粒子による光のミー散乱の原理に基づくものである。該ミー散乱では、散乱光の角度分布および強度の両方が粒子サイズおよび粒子形状に強く依存する。散乱は次の特性により特徴付けられる。すなわち、1)散乱光が進行方向及び後方に集中する、2)散乱光強度の角度分布は散乱する粒子サイズに非常に敏感である、そして、3)微粒子の散乱断面は単調であるが複雑に粒子サイズに比例する。波長が0.67 μmの可視半導体レーザの光出力光線などの可視光を用いると、ミー散乱法は理論的には、ミクロンメートルサイズの範囲にある流体中浮遊微粒子を検出し且つ特徴付けるのに好適である。図5は、ミー散乱断面と粒子半径との関係を描いたグラフを示すものである。
【0033】
本発明の第二の具体例の本検出器システム301の光学システム310は、サンプル中を透過する光の光路中に位置する該第一の光線遮光レンズ360を用いてある所定範囲外に散乱される光を除去するために、散乱角が粒子サイズに比例するという原理を用いている。本微粒子検出器366は、前述のようにおよび図5に示すように、微粒子の散乱断面は単調であるが複雑に粒子サイズに比例するので、検出され且つ異なる高さを有するパルスを判別することによりサンプル中の粒子サイズの分布を検出するように設計される。それ故、該微粒子検出器366からの電気的なパルス出力の高さは粒子サイズに依存する。
【0034】
微粒子検出器366の出力は、図4に示すように、該第二のシグナルディバイダー330Bの1つの入力に接続される。一方、パワーモニター検出器350の出力(これは励起用源312に対応する)は該第二のシグナルディバイダー330Bのもう1つの入力に接続され、これらのシグナルの比は該第二のシグナルディバイダー330Bから出力される。図6は、パルス高測定回路のブロック図であり、本発明の第二の例示的な具体例において、ウィンドウコンパレータ回路336、およびコントロール/出力表示ユニット338を構成する。一方、図7は、デジタル変換器334の類似体をより詳細に示す概略図である。該微粒子検出器366の出力は、各パルスが媒質318中の微粒子により散乱される光を表し且つパルスの高さが粒子サイズに比例するという、一連のアナログパルスのパルスシグナルであり、例えば図6に示すようなシグナル60である。微粒子検出器366から入力される各パルスは、DCバックグラウンドを除去するためにハイパスフィルタ62を通過し、その後バッファ64を通って、入力されるパルスの高さを測定するピーク検出器65に達する。ピーク検出器65の出力は、パルス高のデータを備えた一連のパルス計数シグナルとなる。該デジタル変換器334の類似体およびピーク検出器回路の一例を図7により詳細に示し、図7Aは該回路の種々の箇所におけるパルス出力を示すものである。図7A中の出力シグナル「ピーク出力」は、分類のためにウィンドウコンパレータ回路336に送られる。図7A中に示されるその他のパルスは、ウィンドウコンパレータ回路336に計数を行い且つ記憶するように命じるタイミングおよびイネーブルシグナルである。
【0035】
ウィンドウコンパレータ回路336は、それぞれある所定の電圧範囲(ウィンドウ電圧)中のパルスを検出するように設計された一連のウィンドウコンパレータ66(一例として図6の符号1〜10)を有する。各ウィンドウコンパレータ66は、入力されるパルス高がそのウィンドウ電圧内の場合のみ(例えば、コンパレータNo.5に対して5mV〜7.5 mVの場合)、シグナルをそれに対応付けられたデジタル計数器68に送る。関連デジタル計数器68の出力は、表示パネル70に接続され、その表示パネル70が各粒子サイズにあるビン(箱)内の粒子数を表示する。このように、コントロールおよび出力表示ユニット338は、対応する計数器からの入力に基づいて各粒子サイズについて順に点灯する発光ダイオード(LED)を供えているLEDアレーにより、粒子サイズ分布のヒストグラムを生成して棒グラフを表示するものを含んでいる。棒グラフは異なる粒子サイズに対して色が異なってもよい。出力は、粒子サイズ分布のヒストグラムをその表示スクリーン上に表示するようにプログラムされたコンピュータに接続していてもよいし、別の方法としてそうされていてもよい。
【0036】
ウィンドウコンパレータ回路336は、複数のウィンドウコンパレータ66、および関心のある範囲にある粒子サイズに対応するパルスを計数するためのデジタル計数器68を有する。図6では、そのような10個のビンが示されている。しかし、0.5ミクロンメートル間隔で1〜7ミクロンメートルの粒子サイズに対しては14個のビンが必要である。例えば、1 〜 5 μm であるといったより限定された病原体サイズの範囲のように、比較的小さなサイズ又はより大きいサイズの範囲が必要である場合には、より少ないまたはより多い数のコンパレータおよび計数器を設けてもよい。図8は粒子サイズ分布のヒストグラムの例を示す。この例は1 〜 19 μm の範囲内の分布を示すが、該コントロールおよび出力表示ユニット338は、前述のように、比較的小さな範囲であるl〜7μm 又は所望の範囲のいずれかについての粒子サイズの分布のヒストグラムを表示するようにプログラムされてもよいものとする。コントロールおよび出力表示ユニット338の出力は、筐体の前面の警報灯やブザーなどのように、可視および/または可聴の警報装置342に接続されてもよい。
【0037】
テキサス州オースチンのNational Instruments Corporationから入手可能なLabViewソフトウェアなど、出力表示ヒストグラムを生成するように、あらゆる好適なソフトウェアを用いてもよい。このソフトウェアは、病原体またはバイオ活性剤(生物兵器)の粒子サイズに対応する粒子サイズの範囲内の計数が通常の環境レベルよりもある高い所定レベルを超えたとき、出力を生成して警報装置342を起動するように用いてもよい。これは、誤った警報を減少あるいは無くすのにさえ役立つであろう。コンピュータの出力は、例えば、PCRに基づく炭疽症検出装置などの、比較的より精巧なバイオ活性剤検出装置を起動するために用いてもよい。このような組合せによる検出手法は、費用対効果が大きく、さらに誤った警報を発生する危険を減らすであろう
【0038】
本発明の改良された装置においては、流体中浮遊微粒子のサイズ分布のヒストグラムを、そのようなバイオ活性剤用の処理工程というものは該工程で使用される機械に特有のシグニチャーサイズ分布を有するということが知られているので、兵器化された公知のバイオ活性剤のヒストグラムと比較してもよい。このように、本発明の検出システムは、バイオ活性剤を製造する者についての出所の可能性に関する法科学的情報を提供することができる。
【0039】
前述のように、テロ攻撃で使用される可能性が最も高いバイオ活性剤(生物兵器)は、1 μm 〜 7 μm の粒子サイズの範囲を有する。米国疾病管理センター(the Center for Disease Control)により分類されているカテゴリーAの生物テロ活性剤(バイオテロ兵器)の特徴を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
環境空気中には、粒子サイズが約 1μm 〜 7μmの大きさの範囲にある非常に低い濃度で且つ一定の濃度の自然に発生する流体中浮遊微粒子が存在している。大都市地域のスモッグの発生および局所的なダスト源(塵源)の急激な成長の場合の粒子サイズの範囲は、それぞれ0.3 μm 及び5 μmにピークがある。また花粉と他のアレルゲンも開花期中の空気に存在し、アレルゲン微粒子の粒子サイズの範囲は、約 5 〜 50 μm である。このように、兵器化されたバイオ活性剤(生物兵器)の典型的な粒子サイズの範囲(1 〜 7 μm)中には、これらの自然に発生する流体中浮遊微粒子はあっても殆ど無い。加えて、カビ菌は約 1 〜 5 μmの粒子サイズを有しているが、特定の場所の如何なるところの空気中のカビ菌の量も突然には変化しない。そのため、本第四の例示的な具体例の検出システム301は、この特定の粒子サイズの範囲中にある微粒子を検出して、0.5 μmの間隔で検出した粒子サイズの範囲を表示するように出力を生成する。1 〜 7 μmのサイズの範囲内において流体中浮遊粒子の数が突然に且つ局地的に増加することは、敵対的なバイオ活性剤(生物兵器)または病原体が故意に放出されたことを意味する可能性が高い。本システムは、関心のある粒子サイズの範囲内の粒子の自然なバックグラウンドレベルを検出して記憶するように調整された後、突然増加するのを検出したとき警報を作動させるために、これをその後の出力ヒストグラムに対する比較レベルとして用いることができる。図8の粒子サイズ分布ヒストグラムは、1 〜 7 μm の粒子サイズ範囲において検出される微粒子の数が通常レベルを超えている場合の有害となりうる状況を示している。
【0042】
上記した本微粒子検出システムは微粒子の種類を特定しないが、通常の気象条件において関心ある範囲での流体中浮遊粒子が比較的少ないために、流体中浮遊バイオ活性剤(生物兵器)攻撃に対する高感度で費用対効果の高い警報としてその機能を果たす。この範囲内のすべての微粒子は、人の肺に侵入でき、それらを吸い込んだ人に対して潜在的に有害あるいは致命的である。該警報装置342は、付近の個々の人々に速やかに避難すべきとの警報を発することにより、そのようなバイオ活性剤に曝されることを減らす。
【0043】
また、該検出システム301を、製造設備中の潜在的に有害なダスト(粉塵)の危険レベルを検出するために用いることもできる。例えば、有害なアスベスト繊維は約 5 μm の粒子サイズ範囲にあり、典型的な長さが約 5 μm 以上であり直径が約 1〜2 μmである。また、ベリリウムダスト(粉塵)は、肺に吸い込むと有害で、1〜5 μmの範囲にあるときにそうしたことが発生する。該検出システム301は、アスベストを含む建物に設置することができる。あるいは、作業員がそのような建物で働く際に、1 〜 5 μm の範囲において異常なピークが検出されて、空気中のアスベスト繊維が危険なレベルであることを示す可能性がある場合に警報を発することができる。同様に、1 〜 5 μm の粒子サイズの範囲中の粒子数が突然増加した場合に警報シグナルを発するために、作業員がベリリウム部品を加工する際に該検出システム301をその付近で用いてよい。それにより、有害レベルのベリリウムダストが存在することを表示できる。該検出システム301が同じ粒子サイズ範囲の無害粒子とアスベストまたはベリリウムダストを区別できなくても、アスベストまたはべりリウム環境中の作業において、この粒子サイズ範囲で検出される粒子レベルが急激に増加することは、その地域からの避難またはさらに詳しい検査が必要な潜在的に危険な状況を提示することになる。
【0044】
同様に、本検出システム301は食品などの無菌的な製造設備又は薬剤製造業者などの医薬品製造設備あるいは食品加工設備において微生物の突発的発生について連続してモニターするために使用されることができる。そうして結果として問題解決の行動を素速くすることができることとなる。また、本検出システム301は経歴データ及び傾向を示す情報を得るための連続モニターリングシステムとしても使用され、設備における特定の清浄性についての要求に従い微生物が検出されたことを設備管理者に警告することもできる。
【0045】
上記の検出システム301において、2段階の検出および判別工程が用いられており、該システムの光学システム310によって、関心のある粒子サイズの範囲を含んでおり且つある所定の角度範囲の外側に散乱される光を最初に除去している。次に、検出された出力パルスをパルス高さに応じて判別し、各高さのパルスの数を計数して、例えば、0.2 μm 以内の粒子サイズに変換し、そして、結果をヒストグラムとして表示すると共に、新しいヒストグラムを好適な時間間隔で生成して、変化する粒子分布状況を示すのである。しかし、粒子サイズ分布のヒストグラムを表示する代わりに、別法として、検出システム301の光学部分を配置して、1 〜 7 μmの粒子サイズの範囲に対応する散乱光シグナルのその部分のみを検出器14に指向させて、検出システム301の出力がある所定の閾値レベルを超えたときに該検出システム301の残りの部分が警報シグナルを発するように構成してもよい。これにより出力の正確さが減少し、検出される粒子サイズの範囲内にある粒子サイズの判別ができなくなるが、それでも公知の流体中浮遊病原体、アレルゲン、又はその他の有害粒子、例えば、ベリリウムダスト又はアスベストなどに対応するサイズの範囲で異常に大量の粒子が存在するとの比較的正確な警報を発生することができる。図3の検出システム301は、より大きな遮光領域を中央に形成して約 7 μmよりも大きなサイズを有する粒子により散乱される光を遮光するように変更することのみが必要であろう。また、該出力回路は、粒子検出器366の出力のところに閾値レベル判別器を備え、該判別器からの出力シグナルを供給して、検出したシグナルがその選択した閾値よりも高いときに警報器を起動するように変更されよう。
【0046】
本発明の病原体検出器は種々の応用用途において使用可能である。例えば、本発明の病原体検出器は、現場作業員用の電池駆動で携帯可能な手持ち式の検出器として実現することもできる。この場合、外部筐体は、光学ユニットと電気回路との双方を支持して、サイズの範囲により粒子を計数してよいし、さらに各粒子サイズに対して現在の粒子数を表示する装置、例えば、LED表示装置を有するであろう。それは無線のシグナルを基地ステーションに送るための送信機を備えてあってよい。また、それはレーザの低パワー状態に対する可聴の警報器および警告灯も内蔵していてよい。また、単独で使用するディスクトップ型は、オフィスビルなどでの使用が可能である。これは屋外型と同じであるが、壁にある差込口の標準電気からAC/DC変換器を経由して電力を供給されるであろう。後者の場合、該検出器は、オフィスのディスク上に設置された状態でバイオ活性剤に汚染された手紙や荷物を防止するように使用されてよい。
【0047】
また、該検出器は建物の安全対策用複合システムの一部であり、中央の監視コンピュータやコントロールステーションに接続されて、各部屋に設置される多数の検出器から成るものであってよい。該コントロールステーションは、各部屋からの粒子のカウントを監視して、病原体サイズの微粒子が異常に増加した場合には原因及び源を解析して、建物内の潜在的な拡散パターンを予測するようにプログラムすることもできる。本検出器は、潜在的なバイオ活性剤又は生物兵器の粒子の増加の原因又は源およびすべての生物兵器の潜在的な拡散を再度解析することが可能であるような中央コントロールステーションにデータを送信するための無線送信機を有するものであってよい。
【0048】
また、本明細書記載の流体中浮遊微粒子検出器は、クリーンルームの設備を監視して、汚染の可能性及び/又は物質の紛失の可能性について監視するのに有利に使用されてよい。より大きな範囲の本検出器システム301を利用すると、該警報装置342は次の二つの条件が満たされたときにのみ作動されてよい:(1) ある所定のサイズの範囲 (約 1 〜 約 7 nm) 内にある空中浮遊微粒子の数が突然に上昇することが検出された場合、そして、(2) 例えば、レーザ励起光を用いて生物体又はバイオ活性剤あるいは有機物質が下記するように検出された場合。
【0049】
それ自体では、粒子サイズのセンサーは周囲にある粒子からの誤った警告に対して弱点がある。こうした誤った警告をさらに減らすために、本病原体検出システム301はUV光誘起蛍光センサーでもって粒子をサイズでみる能力を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するようにした生物体又はバイオ活性剤について検証する検出器というものである。また、本発明の検出システム301は、生物兵器を含む生物体又はバイオ活性剤中に存在している代謝産物を検出するレーザ誘起蛍光センサーを有している該第一の光学式検出器326および該第二の光学式検出器376を備えている。特には、該光学システム310は約 270 nm 〜 約 410 nm、好ましくは、約 350 nm 〜 約 410 nmの波長で動作する励起源312を備えている。バイオ活性剤は次の三種の一次代謝産物を含有しているという前提に基づいて約 270 nm 〜 約 410 nmの波長が選択される:トリプトファン、これは、通常、約 220 nm 〜 約 300 nmのレンジを伴う約 270 nmの蛍光; ニコチナミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH)、これは、通常、約 340 nmの蛍光(レンジ 約 300 nm 〜 約 400 nm); そして、リボフラビン、これは、通常、約 400 nmの蛍光(レンジ 約 320 nm 〜 約 420 nm)。好ましくは、しかしながら、該励起源312は、約 350 〜 約 410 nmの波長を有している。この波長はバイオ活性剤中の上記三種の一次代謝産物のうちの二種、NADHとリボフラビンを確実に励起し、ディーゼルエンジン排ガスや、例えば、ダスト又はベビーパウダーなどの、その他の不活性微粒子といった干渉性物質を励起することを排除することになる。このように、該第四の具体例では本発明は励起源312の波長の範囲を公正に選択するものであり、該励起光源はNADHやリボフラビンからの蛍光を励起する能力(トリプトファンを励起する能力に先行する)を保持している一方、例えば、ディーゼルエンジン排ガスなどの干渉性物質を励起することはない。本処理はディーゼル排ガス(例えば、266 nmの光などの短波長UVで励起される)により生まれる誤った警報を減少せしめるように採用される。
【0050】
図9は、上記した四種の代謝産物の傾向発光スペクトルを示すものである。スペクトル解析、特には異なった励起波長でもってのスペクトル解析で、微生物の組成を探索することができるし、微生物の検出並びに分類の目的に得られた情報を使用できるであろう。該光学検出器326, 376からの出力は、該ディバイダー330A, 330Cにそれぞれ接続せしめられ、かかるディバイダーは、一方で、アンプ330A, 330C並びに該アナログ-デジタルコンバーター(変換器)334を経由して該コントロール及び表示装置ユニット338に接続せしめられており、さらに該コントロール及び表示装置ユニットは、該警報装置342に接続せしめられている。
【0051】
上記本発明の具体例は、特には「好ましい」とされた具体例のいずれのものも、単に可能な実施例であり、本発明の原理を明確に理解するために示されているだけのものであることは強調されるべきである。本発明の精神並びに原理から実質的に逸脱しないかぎり上記本発明の具体例に対して多くの変形並びに修飾をなしてよい。そうした変形及び修飾のすべては、本明細書の開示並びに本発明の範囲内に含まれることが意図されており、添付の特許請求の範囲により保護されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の第三の具体例の流体微粒子検出器システムのための光学システムの代表例である。
【図2】図2は、本発明の第三の具体例の微粒子検出器システムであって、図1の光学システムを取り入れているもののブロック図である。
【図3】図3は、本発明の第四の具体例の流体微粒子検出器システム701のための光学システムの代表例である。
【図4】図4は、本発明の第三の具体例の微粒子検出器システムであって、図3の光学システムを取り入れているもののブロック図である。
【図5】図5は、微粒子の半径に対するミー散乱断面の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、パルス高測定回路のブロック図である。該回路は、本発明の第四の具体例ではアナログ-デジタルコンバーター、ウィンドウコンパレータ回路、そしてコントロール及び出力表示装置ユニットを形成している。
【図7】図7は、本発明の第四の具体例に従ったアナログ-デジタルコンバーター(変換器)を示す概略図である。図7Aは、本発明の第四の具体例の様々なところでのアナログ-デジタルコンバーターの出力を図示したものである。
【図8】図8は、粒子サイズの分布のヒストグラムの一例を描いたものである。
【図9】図9は、四種の代謝産物の蛍光発光スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル用セル領域を有している外部筐体と
サンプル用セル領域の片側にある光源であって、収束光線が該サンプルを通過するように当てて、それによりサンプル領域中に存在する種々のサイズの微粒子により光線の一部を様々な角度に散乱せしめる一方、光線の散乱されない部分を散乱されないままであるようにする光源と、
該サンプル用セル領域の反対の側にある光線遮光装置であって、該光線の散乱されない部分の少なくとも一部を遮光し且つ測定される微粒子の範囲を制限する光線遮光装置と、
該光線遮光装置の下流側の光路中に位置している第一の検出器であって、進行方向側の散乱光の一部を検出し、ある所定サイズの範囲内にあり且つ光路中に存在しており且つ進行方向側に散乱する微粒子の数についての情報を含んでいる出力を生成する第一の検出器と
空気サンプル用セルの光源側にある第二の検出器であって、反対方向側の散乱光の一部を検出し、ある所定サイズの範囲内にあり且つ光路中に存在しており且つ反対方向側に散乱する微粒子の数についての情報を含んでいる出力を生成する第二の検出器と
を備えていることを特徴とする微粒子検出システム。
【請求項2】
媒質内でそれから反射せしめられた反対方向側の散乱光をさらに第一の波長選択装置により反射せしめて該検出器により受容されるようにするものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
所定のサイズの範囲の内にある微粒子の数が、当該所定のサイズの範囲内にある所定の通常レベルを超えた場合に警報を与える警告ユニット、好ましくはおおよそ1〜7μmのサイズの範囲内で検出される微粒子の数がある所定レベルを超過した場合に警告のシグナルを生成する警報ユニットを、さらに備えていることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
該光源が紫外光を放射するものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
該光源はLEDを包含しているものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
該光源と該第一の波長選択装置との間に光学的に位置しているコリメータレンズをさらに備えるものであることを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項7】
パルス高判別器の出力に繋がっているプロセス処理ユニットであって、それぞれのパルスの高さに基づいて、ある与えられた時点の粒子サイズの分布を処理し、空中浮遊微粒子サイズの分布のヒストグラムを生成し、且つ、出力装置に該ヒストグラムを表示するものを、さらに備えているものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
光線が当たる位置に置かれている第一のレンズと、
光線が当たる位置に置かれている第一のフィルタと、
進行方向側の散乱光の少なくとも一部を通す位置に置かれている第二のレンズと、
該進行方向側の散乱光の少なくとも一部が当たる位置に置かれている第一の光学素子であって、そこでは該第一の光学素子が該進行方向側の散乱光の一部のある特定の波のバンドのみを通すものである該第一の光学素子と、
該第一の光学素子を透過する該進行方向側の散乱光の一部を受容する位置に置かれている第二の光検出器であって、それにより該第二の光検出器は媒質中の微粒子をサイズにより分けるというものである該第二の光検出器とを、
さらに備えているものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
該第一のレンズが平行光にするレンズをさらに備えていることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項10】
該第一の波長選択装置により反射せしめられた放射光を受け且つ透過する位置に置かれている検出器用レンズと、該検出器用レンズからの放射光を受ける位置に置かれている検出器であって、そこでは該検出器は該光源と情報伝達するようになっているものとを、さらに備えるものであることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項11】
第三の光学検出器であって、そこでは該第三の光学素子は該進行方向側の散乱光の少なくとも一部を該第三の光学検出器に向けて反射する位置に置かれている第二の波長選択装置であるというものを、さらに備えていることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項12】
該第一の光学素子が該進行方向側の散乱光の一部のある特定の波のバンドのみを通す位置に置かれているフィルタであり、そこではその他の波のバンドは該第一の光学検出器に向けて光路に沿って該フィルタにより反射せしめられるものであることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項13】
源となる波長がおおよそ350nmと400nmとの間にあり、該第一のフィルタがおおよそ400nmより下回る光を透過するものであることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項14】
該媒質と該第二の光学検出器との間に光学的にある少なくとも1個の光線遮断用レンズであって、そこでは該光線遮断用レンズは散乱光を透過し且つ非散乱光を反射又は吸収するというものをさらに備えていることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項15】
該媒質と該第一の光学検出器との間に光学的にある少なくとも1個のフィルタであって、そこでは該フィルタは該媒質からの反対方向側の散乱光を透過し且つ光源からの電磁放射線を反射するというものをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項16】
該LEDからの光をほぼ平行にされた光に成形するための光学レンズをさらに備えていることを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項17】
該光源が光の形を整えるため及び/又は該光線からの雑音を除去するための光学レンズを備えているものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項18】
サンプル用セルが空気サンプル用セルを備えたものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項19】
サンプル用セルが水サンプル用セルを備えたものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項20】
該第一の波長選択装置が二色性ビームスプリッターを備えているものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項21】
該第一の波長器が二色性ビームスプリッターを備えているものであることを特徴とする請求項11記載のシステム。
【請求項22】
該第一の光学素子がローパスフィルタであることを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項23】
光線を放射し、
光線の少なくとも一部を第一の波長選択装置を通して送出せしめ、
微粒子を含有する媒質中に光線の一部を通し、そこで微粒子により光を進行方向及び反対方向に散乱せしめ、そして
進行方向側の散乱光及び反対方向の散乱光を測定する
という工程を包含しているものであることを特徴とする病原体及び微粒子検出法。
【請求項24】
反対方向側の散乱光の少なくとも一部を該第一の波長選択装置でもって反射し、
反対方向側の散乱光の少なくとも一部を第一の光学検出器の所で反射し、それにより反対方向側で光を散乱する微粒子のサイズを区分けすること
をさらに包含していることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項25】
第二のレンズを通して進行方向側の散乱光の少なくとも一部を伝達し、
第一の光学素子を通して進行方向側の散乱光の一部のある特定の波のバンドのみを伝達し、
該第一の光学素子を通して伝わる進行方向側の散乱光の一部を第二の光学検出器で受けて、それにより第二の光学検出器が進行方向側で光を散乱する微粒子のサイズを分類するということ
をさらに包含していることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項26】
第一の光学素子を使用して第三の光学検出器に向けて進行方向側の散乱光の一部を反射し、そこでは該光学素子は第二の波長選択装置であることをさらに包含するものであることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項27】
第二の光学検出器に向けて第一の光学素子を通して伝わった進行方向側の散乱光の一部を第三のレンズでもって焦点を合わせ、そこで該第三のレンズは非散乱光を反射するということをさらに包含していることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項28】
該第一の光学検出器に向けて第一の波長選択装置により反射せしめられた反対方向側の散乱光の一部を第四のレンズでもって焦点を合わせることをさらに包含していることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項29】
該第一の光学検出器に向けて第一の波長選択装置により反射せしめられた反対方向側の散乱光の一部をフィルタでもってフィルター処理することをさらに包含していることを特徴とする請求項23記載の検出法。
【請求項30】
微粒子からのサイズの情報と蛍光発光の双方を収集するために当該システムを使用し、そこにおいてそれぞれ個々の粒子から発せられる蛍光シグナルを散乱レーザ光シグナルから分離するために波長選択装置が用いられていることを特徴とする請求項8記載の検出法。
【請求項31】
該システムにより集められた微粒子の蛍光強度及びサイズの情報を該微粒子が生物のものであるか不活性なものであるかを決定するのに使用することを特徴とする請求項30記載の検出法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−501907(P2009−501907A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521694(P2008−521694)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027638
【国際公開番号】WO2007/011854
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505233343)バイオヴィジラント システムズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】