説明

病原性株に特有のポリペプチドの組成物およびワクチンとしておよび免疫療法におけるそれらの使用

本発明は、第一群および第二群の、配列番号159の配列を含む群から選択される配列、または、該ポリペプチドの配列全体との最小25%の同一性を有する第一群および/または第二群のポリペプチドの相同配列を有する少なくとも1種のポリペプチドを含む、病原株に特有のポリペプチドの組成物に関する。大腸菌腸外感染症に特異的なワクチン組成物の調製の適用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性株、特に腸外大腸菌株に特有のポリペプチドの新しい組成物に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、抗原ポリペプチドの組合せおよび該ポリペプチドに対抗するように仕向けられた抗体の組合せおよびワクチンとしておよび免疫療法におけるそれらの使用に関する。
【0003】
大腸菌(Escherichia coli)は、おそらく、最もよく知られた細菌種であり、臨床微生物学研究所において単離される最も一般的なものの一つであるにもかかわらず、種々のタイプの大腸菌およびそれらが引き起こす感染症に関して誤解が多い。
【0004】
人間にとって生物学的な重要性を有する大腸菌株は、概して、3つの主要な群に分類され得る:
1.共生株(正常叢の部分);
2.腸の病原性株(正常叢の部分ではない):この群は、種々の病原型(EPEC、EHEC、ETEC、EIEC)を含むが、赤痢菌(Shigella)を含まない;
3.腸外株(ExPEC)(胃腸(gastro-intestinal:GI)管の外部の感染症の原因となるが、正常叢の部分でもあり得る);免疫機能が低下したまたは低下していない全ての宿主がこれらの感染症に感染しやすい。
【0005】
ExPEC株は、大部分の尿路感染症(urinary tract infection:UTI)、特に、膀胱炎、腎盂腎炎およびカテーテルが関連する感染症の原因となる。
【0006】
それらは、腹部感染症、院内肺炎、新生児髄膜炎、軟部組織感染症および骨感染症の原因にもなる。これらの局在化のいずれもが、臓器不全の場合には敗血症の危険を伴う菌血症につながり得る。ExPEC株は、実際に、血液培養から単離される最も一般的なグラム陰性桿菌である。
【0007】
750000の細菌性敗血症の事例が、毎年米国において起こっており、225000人の死の原因となっている。敗血症の1690の事例についての最近の研究において、確認された主要な細菌性敗血症がExPECであり(事例の16%)、次いで、黄色ブドウ球菌(S.aureus)である(事例の14%)ことが示された。
【0008】
これらの数は、病院および共同体において罹る感染症におけるExPEC株の重要性を証明する。
【0009】
ExPEC株は、大腸菌株の同種亜集団に相当する。大腸菌株中の系統発生関係のMLEEによる分析は、大腸菌がA、B1、B2およびDと称される4つの主要な系統発生群に属することを示した。
【0010】
ExPEC株の病因は、細胞外微生物の病因であり、すなわち、それらは、細胞外の流体中での生育によく適応させられ、多形核(polymorphonuclear)による貪食に効果的に抵抗する。初期の研究は、細胞外生育にとって重要であることが知られている毒性因子(virulence factor)が主としてB2/Dの大腸菌において見られることを示し、これにより、B2/DのサブグループがExPEC株の大部分を含むことが示唆される。これは、動物について行われた、B2/D株がAおよびB1株より毒性が強いことを示す実験によって補足された。続く疫学的研究により、実際に、これらの仮説が確認された。B2/D分離株は、主に、新生児髄膜炎(87%)および共同体または院内獲得型の尿路性敗血症(それぞれ93%および85%)の原因となるものである。
【0011】
類似の結果が、膀胱炎について報告され(70%が単独のB2大腸菌に起因している)、これにより、ExPEC株の重要性が証明された。
【0012】
これらの最近の所見により、株のB2/Dサブグループが細胞外流体における生育に最もよく適応させられる大腸菌のコアゲノムであることが証明される。
【0013】
このコアゲノムに加えて、ExPEC株は、腸外大腸菌感染症(UTI、尿路性敗血症、新生児髄膜炎等)の異なる病因に関連する毒性因子をエンコードする種々の病原性島を有する。主要な毒性因子の中に、細胞外生育にとって重要であることが周知である莢膜(capsule)と、鉄のキレーション系(例えば、アエロバクチンおよびエンテロチェリン(enterochelin))とがある。加えて、病因に応じて、これらの株は、毒素(CNF、溶血素等)、付着因子(pap、sfa等)および他の鉄キレーション系を産生し得る。
【0014】
B2/D大腸菌が病原性大腸菌株の異なったサブセットに相当するという概念は、B2/D大腸菌が概して人間の糞便から単離されないという事実によって補強される。それらは各人の11%だけから回収され、これに対して、AおよびB1のサブグループは、人間の集団の各人の74%の糞便中に存在する。
【0015】
上記のように、ExPEC株の病因は、細胞外流体でのそれらの増殖能および補体の殺菌作用および多形核による貪食に抵抗する能力に依存する。したがって、他の細胞外病原体(インフルエンザ菌、肺炎球菌および髄膜炎菌)に関して、ExPECに対する防御抗原は、血清のオプソニン作用および/または殺菌活性を促進する抗体を誘導しなければならない。
【0016】
上記記載を考慮すると、効果的な抗原は、B2/D大腸菌の集団の中で大きく提示されなければならない。
【0017】
他の細胞外病原体と同様に、莢膜多糖体が理想的な抗原であろうが、しかしながら、大抵の病原性B2株は、K1多糖体を発現する。K1多糖体は、B群髄膜炎菌の構造と同一の構造を有する。B群髄膜炎菌は、非免疫原性であり、共通の抗原を脳と共有する。別の可能なターゲットは、リポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS)であり得る。しかしながら、種々のサブグループによって共有される多数の異なるLPS抗原型がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、現在、B2/Dゲノムによってコード化されるが、AおよびB1大腸菌株にはないポリペプチドのいくつかの特定の組成物が、抗原として特に有用であり、かつ、具体的には、ExPEC株に起因する病状を予防し得ることを見出した。これらの抗原成分のホモログは、他の病原性細菌種において見出され得、したがって、これらの細菌によって引き起こされる病状を予防するために有用である。したがって、ExPEC株に特有の産物およびそれらの用途に対するあらゆる参照は、これらの種における構成要素を包含する。
【0019】
例えば、相同抗原は、下記種において予防し得、かつ、細菌に起因する疾患の予防のためにそれ自体で用いられ得た:
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌O157:H7、ペスト菌(Yersinia pestis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophia)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulium)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、らい菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、パラチフス菌(Salmonella paratyphi)、チフス菌(Salmonella typhi)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、A群赤痢菌(Shigella dysenteriae)、B群赤痢菌(Shigella flexneri)、D群赤痢菌(Shigella sonnei)、麦皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)および上記種のいずれかの属の範囲に入る任意の種。
【0020】
そこで、本発明の目的は、単離された抗原ポリペプチドの新しい組合せおよびコアB2/Dゲノムに属するが共生大腸菌に存在しない、単離されたポリヌクレオチドの新しい組合せを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、前記組合せの抗原ポリペプチドまたはそれらのペプチドのフラグメントに対抗してもたらされた抗体の新しい組合せを提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、前記ポリヌクレオチドを含有するベクターおよび宿主細胞を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、ExPECによって引き起こされる腸外感染症およびExPEC抗原ポリペプチドと相同の抗原ポリペプチドを発現する他の病原性株によって引き起こされる病状に特異的なワクチン組成物を提供することである。
【0024】
本発明は、ヒトまたは動物の腸外である区画内の大腸菌の進展(全身性および非下痢性の感染症、例えば、敗血症、腎盂腎炎、新生児髄膜炎)を検出および治療する手段にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明にしたがって用いられた単離された抗原ポリペプチドの組合せは、B2/D大腸菌株に特有であり、大腸菌のAおよびB1分離株には存在しないポリペプチドの中から選択される。それらは、コアB2/Dゲノムに属する遺伝子によってエンコードされ、共生大腸菌には存在しない。
【0026】
それらは、少なくとも1種の第一群ポリペプチドおよび少なくとも1種の第二群ペプチド、または、前記のポリペプチドの全体的な配列との最小25%の同一性を有する第一群および/または第二群のポリペプチドの相同配列を含む。第一群のポリペプチドは、配列番号1〜66または133〜145の配列を含む群から選択される配列を有し、第二群のペプチドは、配列番号159の配列を有する。
【0027】
好ましい組成物は、配列番号159の配列を有する第二群のポリペプチドとの組合せを含む。
【0028】
他の好ましい組成物は、第一群のポリペプチドが配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63および133〜138を含む群から選択される配列を有する組合せを含む。
【0029】
他の好ましい組成物は、配列番号159の配列を有するポリペプチドと、配列番号2、26、28、36、34、134、141および145の配列を有するペプチドを含む群から選択されるポリペプチドとを含む。
【0030】
上記の第一群のポリペプチドおよびそのポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、WO03/074553にMutabilis SAの名において開示されている。
【0031】
配列番号159の配列のポリペプチドおよび配列番号160の配列を有し、前記ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、WO01/21636においてニューヨーク大学の名で開示されている。
【0032】
本発明は、前記第一群の相同の単離された抗原ポリペプチドが、初期設定のパラメータによりBLASTPまたはBLASTXを用いて測定される場合に、上記に規定された配列番号、より特定的には、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63、133〜138の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも25%の同一性を有するか、または、前記の諸配列番号に相当する配列を有するポリペプチドの少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60または60超の連続アミノ酸を含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有する組合せにも関する。
【0033】
本発明は、第二群の相同の単離抗原ペプチドであって、配列番号159の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも25%の同一性を有するものを含む組合せにも関する。
【0034】
本発明は、普遍遺伝子コードに従い、かつ、このコードの縮重を考慮して上記に規定されたような、第一群のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドおよび第二群のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドの組合せでの使用にも関する。用語「ポリヌクレオチド」は、cDNAを含むDNA、mRNAを含むRNA等のあらゆるヌクレオチド配列を包含する。
【0035】
第一群のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号67〜132または146〜158に相当する配列を有し、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組み合わされる。
【0036】
より好ましくは、前記のポリヌクレオチドは、配列番号80、81、83、87、88、89、94、95、96、98、102、104、105、107〜110、112、115、116、118、119、126、127、130、132、135、146〜151に相当する配列を有し、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組み合わされる。
【0037】
他の好ましい組合せは、配列番号68、92、89、94、100、154、147および146を有するポリヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む。
【0038】
第二群のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号160の配列を有する。
【0039】
本発明は、前記のポリヌクレオチドに対するホモログの組合せにも関する。前記ホモログは、初期設定のパラメータによりBLASTNを用いて測定される場合に、前記配列を有するポリヌクレオチドに対して少なくとも25%の同一性、または、前記配列の一つを有するポリヌクレオチドの少なくとも15、少なくとも30、少なくとも60、少なくとも90、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180または180超の連続的なヌクレオチドを含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有してもよく、本発明によるものの抗原特性を有するポリヌクレオチドをコード化することが可能である程度まで本発明によって包含される。
【0040】
本出願はまた、普遍の遺伝子コードに従い、かつ、このコードの縮重を考慮した、前記第一群のポリペプチドをコード化する少なくとも1種の単離されたポリヌクレオチドと、前記第二群のポリペプチドをコード化する少なくとも1種のポリヌクレオチドとを含むあらゆる発現ベクターを目的とする。用語「ポリヌクレオチド」は、cDNAを含むDNA、mRNAを含むRNA等の任意のヌクレオチド配列を包含する。
【0041】
好ましいベクターは、第一群、好適には、配列番号77〜132または146〜158に相当する配列を有するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを含む。
【0042】
より好ましいベクターは、配列番号80、81、83、87、88、89、94、95、96、98、102、104、105、107〜110、112、115、116、118、119、126、127、130、132、135、146〜151に相当する配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0043】
より好ましいベクターは、第二群の配列番号160の配列を有するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドをさらに含む。
【0044】
他の好ましい発現ベクターは、配列番号68、92、89、94、100、154、147および146の配列を有するポリヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む。
【0045】
前記ベクターはまた、前記ポリヌクレオチドに対するホモログを含んでもよい。前記ホモログは、初期設定のパラメータによりBLASTNを用いて測定される場合に、前記配列を有するポリヌクレオチドに対して少なくとも25%の同一性、または、前記諸配列番号の一つの配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも15、少なくとも30、少なくとも60、少なくとも90、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180または180超の連続的なヌクレオチドを含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有してよく、本発明によるものの抗原特性を有するポリペプチドをコード化することが可能である程度まで本発明によって包含される。
【0046】
本発明は、遺伝子工学によって形質転換されたあらゆる細胞であって、トランスフェクションによって、前記第一群のポリペプチドをコード化する少なくとも1種のポリヌクレオチドおよび前記第二群のポリペプチドをコード化する少なくとも1種のポリヌクレオチド、および/または、本発明による少なくとも1種のベクターを含むこと、および/または、前記の形質転換は、この細胞による前記ポリペプチドの産生を誘導することを特徴とするものにも関する。
【0047】
前記抗原ポリペプチドの組合せは、病状および感染部位(UTI、腎盂腎炎、敗血症、菌血症、新生児髄膜炎)を問わずExPEC株に起因する感染症の予防のための抗体応答を誘導することが可能である。
【0048】
本発明は、それ故に、大腸菌腸外感染症に特異的なワクチン組成物であって、第一群の少なくとも1種の抗原ポリペプチドまたはそのフラグメントおよび第二群の少なくとも1種の抗原ポリペプチドまたはそのフラグメントの有効量を担体と共に、特には、配列番号1〜66および133〜145の配列の少なくとも1種のペプチドおよび相同ポリペプチド、および配列番号159の配列の少なくとも1種のポリペプチドを含む、ものに関する。
【0049】
このようなワクチン組成物は、泌尿器系の感染症、腎盂腎炎、敗血症、菌血症、新生児髄膜炎を予防するために特に有用である。
【0050】
本発明のワクチン組成物は、以下の治療に適用される:
− 免疫抑制された患者(理想的には、免疫抑制療法の開始前):癌、糖尿病、白血病を患う患者、移植患者、長期ステロイド療法を受けている患者;
− 大腸菌感染症の危険が大きい外科手術(腹部の外科手術)前の患者;
− 全てのこれらの事例において、本発明の大腸菌ワクチンは、黄色ブドウ球菌ワクチンまたはB群連鎖球菌ワクチンと関連して投与され得る;
− 再発UTIを有する、特に、1回腎盂腎炎をしたことがあった後の患者;
− 新生児感染症の予防は母親の予防接種を必要とするだろう;これは、潜在的な問題を避けるため妊娠のずっと前の予防接種を意味する;理想的には、このようなワクチンは、遅発性の新生児感染症をも予防するために、B群連鎖球菌多糖類ワクチンと関連付けられるべきである;妊婦におけるB2/D大腸菌に対する抗体のレベルの誘導もUTIを予防するだろうが、これは、常時、妊娠の関係で危険であることも指摘されるべきである。
【0051】
前記ワクチン組成物の製剤形態および用量は、目標とされる適応症、所望の投与方法および対象となる患者(年齢、体重)に応じて当業者によって開発および調節され得る。
【0052】
これらの組成物は、1以上の生理的に不活性な賦形剤、特に、その目的に適したあらゆる賦形剤を含む。
【0053】
例えば、ワクチンは、アルミニウムをベースとする無機塩を免疫補助剤として含む滅菌水中の精製ポリペプチド懸濁液であり得、および、最初のおよび二次免疫(boosting)の注射により皮下投与され得る。
【0054】
前記第一群の少なくとも1種のポリペプチドおよび前記第二群の少なくとも1種のポリペプチドに対抗してそれぞれもたらされる抗体の組合せも、本発明の一部である。
【0055】
それらは、ヒトまたは動物の生物体に投与された場合には生理的タイプの条件(インビトロまたは擬似的なインビボ)、結合産物がインビトロのアッセイおよび方法において用いられることが意図される場合にはELISAタイプの条件下に前記ポリペプチドに結合することが可能である。抗体のこのような組合せは、都合よく、ヒトまたは動物内のExPEC株の腸外生育を阻害する。
【0056】
本発明は、それ故に、上記に規定されたような抗体の組合せの有効量を含む医薬組成物に関する。
【0057】
このような医薬組成物は、新生児または外科手術の処置を受ける、または尿路感染症を有する患者等の危険な集団における深刻な感染症の治療および予防のための免疫療法の適用に敗血症を予防するために特に有用である。これらの適用のために、特異的なヒトモノクローナル抗体(Mab)が前記のペプチドまたはポリペプチドから誘導される。
【0058】
上記に規定されたような抗体の組合せの有効量を含むこのような医薬組成物はまた、黄色ブドウ球菌に対する抗体および/またはB群連鎖球菌に対する抗体と関連して、新生児の感染症を治療するために有用である。
【0059】
本発明による組合せのポリペプチドを用いてこのような抗体を製造する方法は、当業者に利用可能である。それらは、特に、ウサギ等の動物の免疫処置、生じた血清の採取および場合によっては得られた血清の精製を含む従来法である。モノクローナル抗体の生産に適した技術は、KohlerおよびMilsteinの技術である(Nature 1975,256:495-497)。
【0060】
前記抗体は、それが向けられたヒトまたは動物の細胞を認識しない。
【0061】
抗体またはそのフラグメントは、有利には、ヒトの投与に提供するように意図される場合にはヒト化される。
【0062】
あるいは、ヒト化されたMabは、抗原に特異的なマウスまたはラットのMabから誘導され得る。これらの完全にヒト化されたMabは、親マウスまたはラットの抗細菌抗体からヒトIgG1κの重および軽鎖骨格に相補的な決定領域を移植する従来の分子レベルの技術を用いて構築される。
【0063】
本発明はまた、望ましくない腸外大腸菌の有無の診断および/または腸外大腸菌感染の診断ための、前記の、第一群、特に、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63、133〜138の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドおよび第二群、特に、配列番号159の配列を有する1種のポリペプチドの組合せ、前記の、前記ポリペプチドに対抗してもたらされた抗体、または、前記ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの使用を目的とする。
【0064】
本発明は、特に、望みでない腸外大腸菌の有無の診断および/または腸外大腸菌感染の診断のための、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63または133〜138の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドおよび配列番号159の配列を有するポリペプチドの組合せの使用、前記ポリペプチドに対抗してもたらされた抗体の使用、またはポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの使用に関する。
【0065】
本発明は、配列番号159の配列を有するポリペプチドと、配列番号2、26、28、36、34、134、141および145の配列を有するペプチドを含む群から選択される少なくとも1種のポリペプチドとを含むポリペプチドの組合せの使用にも関する。
【0066】
このような化合物の有無の検出は、特に、ヌクレオチドのハイブリッド形成、PCR増幅またはそれらのポリペプチド産物の検出によって行われ得る。このような化合物の存在の検出は、B2/D大腸菌株が存在すると結論を出すことを可能にする。
【0067】
本発明は、大腸菌の望ましくない生育を軽減および/または予防および/または治療するための、第一群について配列番号1〜66または133〜145の配列を、第二群について配列番号159の配列を特に有する前記の各群の少なくとも1種のポリペプチドの有効量を、医薬上許容される担体と組合せて含む医薬組成物にも関する。
【0068】
好ましい医薬組成物は、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63、133〜138の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドと、配列番号159の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドとを含む。
【0069】
他の好ましい医薬組成物は、配列番号2、26、28、36、34、134、141および145の配列を有する少なくとも1種のポリペプチドと、配列番号159の配列を有するポリペプチドとを含む。
【0070】
本出願はまた、上記に規定されたようなポリペプチドの組合せの、大腸菌感染症(例えば全身性および非下痢性の感染)等の大腸菌の望みでない生育、腸外大腸菌の存在または公衆衛生の汚染を軽減および/または予防および/または治療することを意図する組成物、特に、医薬組成物の製造のためのあらゆる使用を目的とする。
【0071】
本発明は、後述の制限しない容量で与えられる実施例によって例示される。この実施例において、ポリペプチドの組合せが予防接種された動物の生存率の増加を示す結果のヒストグラムを表す図1が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
ポリペプチドの免疫原性を証明するための予防接種の実施例:
(実施例1:抗原ペプチドの組合せの調製)
配列番号28の配列を有するポリペプチドが、大腸菌株、または組み換え発現プラスミドを含有する宿主細胞から精製された。
【0073】
配列番号28および配列番号159の配列を有するポリペプチドが、それぞれ、精製され、そして、毒素により包合された。
【0074】
生理的に不活性な担体が調製物に加えられ、これは殺菌され、そして、非経口、皮下または筋肉内注射され得る。
【0075】
前記組成物はまた、スプレーを用いて粘膜上に噴霧され得る。
【0076】
ポリペプチドの前記組合せは、児童用ワクチンに加えられてもよい。
【0077】
(大腸菌が感染したマウスにおける前記組合せの保護効果)
合計100μgの前記精製されたポリペプチドの組合せは、通常の免疫化の手順にしたがって、BalbCマウスに投与された。
【0078】
感作されていない動物と比較して感作された動物における死亡率の減少が観察された。
【0079】
(実施例2)
大腸菌の病原性株(ExPEC)による実験的な抗原投与の後にマウスを保護する免疫応答を誘導する抗原の組合せの実施例:
実験のプロトコール:
− Balb/cマウス(雌、6週齢)が、第1日に、2種の精製されたポリペプチドの組合せ(各20マイクログラム)および完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s adjuvant CFA)を含有するPBS溶液の皮下注射によって免疫化され、コントロールのマウスには、PBS緩衝液中のCFAが注射された;
− 3週間後に、不完全フロイントアジュバントを伴うポリペプチドの同一の組合せ(各10マイクログラム)の溶液の二次免疫注射が行われた;
− 第42日の抗原投与の前に、第41日に血清が集められ、予防接種された動物における抗体応答が分析された;
− 免疫化されたマウスからの血清のWB分析が行われ、上記の免疫処置のために用いられた組み換えタンパク質に対する抗体応答が検出された。
【0080】
− 予防接種された動物において得られた、ポリペプチドに特異的な抗体の抗体価を測定するためにELISAアッセイが用いられた。
【0081】
抗原の組合せによって誘導された保護を測定するための実験的な抗原投与:
第42日に、予防接種されたマウスおよびコントロールのマウスに、B2群に属する大腸菌ExPEC毒性株が、LD50に等しい用量(5×10cfu/マウス)で、腹腔内注射によって抗原投与された。アッセイの終点は、致死抗原投与に対する生存率であった。動物の各群において観察された死亡率が、48時間および120時間において記録された。結果は、表1に示され、ワクチン群の生存率対コントロールのマウス群の生存率の百分率として表されている。
【0082】
【表1】

【0083】
図1は、その結果のヒストグラムを表し、本発明によるポリペプチドの組合せにより予防接種された動物において生存率の増加を示す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ポリペプチドの組合せが予防接種された動物における生存数の増加を示す結果のヒストグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原株に特有のポリペプチドの組成物であって、該組成物は、第一群の少なくとも1種のポリペプチドおよび第二群の少なくとも1種のペプチド、または、前記のポリペプチドの全体的な配列との最小25%の同一性を有する第一群および/または第二群のポリペプチドの相同配列を含み、第一群のポリペプチドは、配列番号1〜66または133〜145の配列を有し、第二群のペプチドは、配列番号159の配列を有する、組成物。
【請求項2】
第二群のポリペプチドは、配列番号159の配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第一群のポリペプチドは、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63または133〜138の配列を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
2種のポリペプチドの組合せは、配列番号159の配列を有するポリペプチドと、配列番号2、26、28、36、34、134、141および145の配列を有するペプチドを含む群から選択される少なくとも1種のポリペプチドとを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記第一群の相同の単離された抗原ポリペプチドは、初期設定パラメータによりBLASTPまたはBLASTXを用いて測定された場合に、請求項1において規定された前記の配列、より特定的には、配列番号14、15、17、21、22、23、28、29、30、32、36、38、39、41〜44、46、49、50、52〜55、58、60、63、133〜138の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも25%の同一性、または、前記配列番号に相当する配列を有するポリペプチドの少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60または60超の連続的なアミノ酸を含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
前記第二群の相同の単離された抗原ポリペプチドは、配列番号159の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも25%の同一性を有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
普遍遺伝子コードに従い、かつ、このコードの縮重を考慮して、請求項1において規定された、第一群のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドと、第二群のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドとの組合せの使用。
【請求項8】
第一群の配列番号67〜132または146〜158に相当する配列を有するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
配列番号80、81、83、87、88、89、94、95、96、98、102、104、105、107〜110、112、115、116、118、119、126、127、130、132、135、146〜151に相当する配列を有するヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
配列番号68、92、89、94、100、154、147および146の配列を有するポリヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
初期設定パラメータによりBLASTNを用いて測定された場合に、前記配列番号の配列の一つを有するポリヌクレオチドの少なくとも15、少なくとも30、少なくとも60、少なくとも90、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180または180超の連続のヌクレオチドを含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有する前記ポリヌクレオチドのホモログを、本発明によるものの抗原特性を有するポリペプチドをコード化することが可能である程度まで含む、請求項7〜10のいずれか1つに記載の使用。
【請求項12】
普遍の遺伝子コードに従い、かつ、このコードの縮重を考慮して、前記第一群のポリペプチドをコード化する少なくとも1種の単離されたポリヌクレオチドと、前記第二群の少なくとも1種のポリペプチドとを含み、前記各群は、請求項1〜6のいずれか1つに規定される、発現ベクター。
【請求項13】
第一群のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、配列番号67〜132または146〜158に相当する配列を有する、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
ポリヌクレオチドは、配列番号80、81、83、87、88、89、94、95、96、98、102、104、105、107〜110、112、115、116、118、119、126、127、130、132、135または146〜151に相当する配列を有する、請求項12または13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
第二群のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、配列番号160の配列を有する、請求項12〜14のいずれか1つに記載の発現ベクター。
【請求項16】
配列番号68、92、89、94、100、154、147および146の配列を有するポリヌクレオチドを、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドと組合せて含む、請求項13または14に記載の発現ベクター。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドに対するホモログを含み、該ホモログは、初期設定のパラメータによりBLASTNを用いて測定される場合に、前記配列番号の一つの配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも15、少なくとも30、少なくとも60、少なくとも90、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180または180超の連続するヌクレオチドを含むフラグメントに対して少なくとも25%の同一性を有し、本発明によって、本発明によるものの抗原特性を有するポリペプチドをコード化することが可能である程度まで包含される、請求項12〜16のいずれか1つに記載の発現ベクター。
【請求項18】
配列番号68、92、89、94、100、154、147、146の配列を有するポリヌクレオチドと、配列番号160の配列を有するポリヌクレオチドとを含む、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか1つに記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
大腸菌腸外感染症に特異的なワクチン組成物であって、該ワクチン組成物は、第一群の少なくとも1種の抗原ポリペプチドまたはそのフラグメントと、第二群の少なくとも1種の抗原ポリペプチドまたはそのフラグメントとの有効量を担体と共に含み、特に、配列番号1〜66または133〜145の配列の少なくとも1種のポリペプチドおよび相同ポリペプチドと、配列番号159の配列の少なくとも1種のポリペプチドおよび相同ポリペプチドとを含む、ワクチン組成物。
【請求項21】
泌尿器系感染症、腎盂腎炎、敗血症、菌血症または新生児髄膜炎を予防するための、請求項14に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
黄色ブドウ球菌、B群連鎖球菌等の他の細菌または全身性の感染症に関与する他の細菌に対抗するように仕向けられた成分と組合せて、特定の適応症に適応させられる、請求項20または21に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
病原性株、特に、腸外大腸菌株のポリペプチド性抗原に特異的な抗体組成物であって、該抗体組成物は、請求項1〜6のいずれか1つに規定された、第一群の少なくとも1種のポリペプチドに対抗するように仕向けられた抗体と、第二群の少なくとも1種のポリペプチドに対抗するように仕向けられた抗体との組合せを含む、抗体組成物。
【請求項24】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項23または24に記載の抗体の組合せを含む医薬組成物。
【請求項26】
新生児感染症を治療するために、請求項23または24に記載の抗体の組合せの有効量を、黄色ブドウ球菌に対抗する抗体および/またはB群連鎖球菌に対抗する抗体と関連して含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
腸外株ExPECに起因する深刻な感染症の治療または予防のための、このような感染症の危険がある新生児および患者における、請求項25または26に記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
大腸菌の望みでない生育を軽減および/または予防および/または治療するための、請求項1〜6のいずれか1つに記載の少なくとも1種の組成物の有効量を、医薬上許容される担体と組合せて含む医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530022(P2007−530022A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504382(P2007−504382)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003972
【国際公開番号】WO2005/097823
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506325881)
【Fターム(参考)】