説明

痩身美容組成物中の痩身活性剤としての穀類抽出物の使用

【課題】生体適合性を有し、毒性がなく、且つ量的制限なく工業生産プロセスにより容易に調製される、再生可能な天然資源を使用する新規痩身剤の提供。
【解決手段】少なくとも1つの極性溶媒で抽出することにより得られる穀類抽出物を含む痩身剤。好ましくは、糖化合物を豊富に含有し、キシラン又はアラビノキシラン等の少なくとも1つのキシラン誘導体を含有する穀物が用いられ、更に好ましくは小麦、ライ麦、大麦又はオート麦から選択される穀類が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痩身美容組成物中の痩身活性剤としての穀類抽出物の新規な使用、及び上記組成物の使用による美容術の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織は生体のエネルギー均衡の制御において中心的役割を果たす。脂肪組織は、凝集細胞、脂肪細胞、及び豊富な結合性血管性間質から構成される。脂肪細胞(又は脂肪性細胞)は、脂質(本質的にトリグリセリド)としてエネルギーを蓄えるかこのエネルギーを脂肪酸及びグリセリンとして細胞外媒質中に放出する。この目的で、脂肪細胞は細胞全体の約80%を占める非常に大きな脂肪液胞を含む。
【0003】
これらの脂質は脂肪酸のエステル化によりトリアシルグリセリンとして貯蓄される(脂質生成)。トリグリセリドリパーゼによりトリアシルグリセリンが加水分解されると、脂肪酸が放出されて血流中に入る(脂肪分解)。
【0004】
皮下組織内に存在する成熟脂肪細胞は脂肪細胞前駆体又は前駆脂肪細胞から形成され、脂肪細胞前駆体又は前駆脂肪細胞とは脂肪組織内で脂肪細胞に分化可能な線維芽細胞である。成長期の後、前駆脂肪細胞の細胞増殖は停止する。次いで脂肪細胞分化過程に入る。
【0005】
最終分化の過程で脂肪細胞は著しい脂質生成能力を示す。その結果、細胞質中に脂肪液胞が徐々に蓄積され、その後融解する。このステップは周囲媒質中のホルモン、サイトカイン、生長因子又はビタミン等の因子により上方又は下方制御される。
【0006】
脂肪細胞の分化過程により「インテグリン」として知られる細胞表面タンパク質の発現特性及び組成が変化する。
【0007】
これらのインテグリンは、大きな細胞外部分、膜貫通部分、及び概して非常に短く且つ酵素活性のない細胞質部分を各々有する。
【0008】
インテグリンは結合組織を形成する分子の受容体に例えることができる。インテグリンは細胞表面に存在するヘテロダイマーのファミリーであり、その各々は非共有結合により結合するα−サブユニット及びβ−サブユニットから構成される。α鎖としては14のアイソフォームが知られ、β鎖としては9のアイソフォームが知られている。これらのα及びβアイソフォームが様々な形で互いに結合することにより20以上の受容体が生じ、その結果系に多様性がもたらされる。
【0009】
インテグリンは細胞間接着及び細胞−細胞外マトリックスタンパク質(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン等)接着に関連する。細胞内では、インテグリンの細胞質部分がタリン又はα−アクチニン等の細胞骨格の多様なタンパク質と結合している。膜貫通部分は接着の制御を促進するだけでなく、細胞の挙動(静止状態、遊走状態、増殖、分泌等)を変更できる細胞内シグナルの伝達も可能にする。
【0010】
インテグリンはまたシグナル伝達及び遺伝子制御における役割も有する。それぞれフィブロネクチン及びラミニンの受容体であるα5及びα6インテグリンが前駆脂肪細胞の増殖及び脂肪細胞への分化を相互に制御することが示されている(Liu J et al.,Cell Metab.2005 Sep;2(3):165−77)。上記著者らはα5インテグリンの発現が増大すると分化する細胞が減少することを示している。α5サブユニットは前駆脂肪細胞中に多く発現するが脂肪細胞中では検出されていない。逆に、α6サブユニットは前駆脂肪細胞中では検出されていないが脂肪細胞中では豊富である。
【0011】
α5インテグリンを過剰発現する細胞は、線維芽細胞の表現型を維持し脂肪滴をほとんど含まない。細胞中におけるα6インテグリンの過剰発現は、細胞分化誘導の5日後に細胞内トリグリセリドの合成を誘導する。
【0012】
したがって、細胞を未分化の状態(前駆脂肪細胞)に維持するα5インテグリンと、シグナル伝達過程の「制御」により脂肪細胞への最終分化を導くα6インテグリンとの間のインテグリンタンパク質発現の切り替えが、脂肪細胞分化過程において生じるということである。
【0013】
FR2893504(SILAB)は水溶液として得られる穀類及び/又はマメ科植物抽出物を開示している。上記抽出物は抗老化、特に抗しわ効果を目的とした美容組成物中で活性剤として使用される。
【0014】
しかし、FR2893504中には、上記抽出物に関し、皮膚脂肪組織の細胞におけるインテグリン発現に対しての有効性は示唆されず、また上記抽出物の美容組成物の痩身活性剤としての使用についても想定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主要な目的は、生体適合性を有し、毒性がなく、且つ量的制限なく工業生産プロセスにより容易に調製される、再生可能な天然資源の使用する新規痩身剤の提供からなる、新たな技術的課題の解決である。
【0016】
上記技術的課題は、工業及び化粧品規模で利用可能な容易且つ安価な方法で本発明により初めて解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】未処理対照細胞の培地における4つの異なる部分について得られた4つの画像を示し、これらを、細胞核及び未処理対照細胞表面におけるα5インテグリン網目状構造の発現の検知のための免疫標識に関する本明細書中の実施例2、第4項に記載の方法により分析する。
【図2】培地中で固形分約0.05質量%となるよう希釈したライ麦水抽出物で処理した細胞の培地における4つの異なる部分について得られた4つの画像を示し、これらを処理細胞表面におけるα5インテグリンの発現について観察する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つの極性溶媒で抽出することにより得られる穀類抽出物を含む新規痩身剤、及び上記痩身剤を含む美容組成物である。本発明は、上記痩身剤を含む、身体の必要箇所に対して痩身効果をもたらす美容術の方法にも関する。
【0019】
特定の一実施形態によれば、抽出物は単独の穀類の全体若しくは一部から又は少なくとも1つの他の穀類との混合物として得られる。
【0020】
別の特定の実施形態によれば、上記穀類は糖化合物を豊富に含有し、特に少なくとも1つの[α]−L−アラビノ−フラノース基が[β]−(1−4)結合により結合したD−キシロピラノース骨格からなる、キシラン又はアラビノキシラン等の少なくとも1つのキシラン誘導体を特に豊富に含有する穀類である。
【0021】
別の特定の実施形態によれば、上記穀類は小麦、ライ麦、大麦、又はオート麦から選択される。
【0022】
更に別の特定の実施形態によれば、上記穀類抽出物は、線維、特に穀類の茎若しくは葉、種子、殻、又はふすまに含有される線維から選択される少なくとも1つの穀類の断片から、又は上記穀類のフレークから得られる。一変形実施形態によれば、上記フレークは抽出前に湿熱処理した穀類の種子から得ることができる。
【0023】
特に好ましい一実施形態によれば、上記抽出物はライ麦フレークの抽出物である。
【0024】
上記穀類抽出物は、選択された穀類又は穀類断片を極性溶媒又は極性溶媒混合物に接触させることにより有利に調製される。
【0025】
抽出ステップに使用可能な極性溶媒として、溶媒又は溶媒混合物は、水、エタノール等のC−Cアルコール、並びにグリセリン、ブチレングリコール及びプロピレングリコールから好ましく選択されるC〜Cグリコール、並びにそれらの混合物から有利に選択される。
【0026】
特定の一実施形態によれば、上記抽出物は水抽出物、又は少なくとも50体積%の水を含むアルコール水溶液若しくはグリコール水溶液中での抽出により得られる抽出物である。
【0027】
特に好ましい一変形形態によれば、調製方法は仏国特許出願第2,893,504号に記載の方法に従い、その内容は本出願に参照により組み込まれる。
【0028】
したがって、本発明の穀類抽出物は、以下のステップを連続して有利に含み得る方法により有利に調製される:
穀類又は穀類の一部を水に懸濁するステップ、
同時に又は続いて酵素により加水分解(複数回可)するステップ、
濾過、遠心分離、沈降により可溶相と不溶相を分離するステップ、
熱処理するステップ、
濾過により活性画分を精製するステップ、並びに
滅菌ろ過するステップ。
【0029】
本発明の好ましい一変形形態によれば、上記穀類抽出物はグルコース、キシロース、及びキシラン並びにそれらの誘導体等の糖化合物を特に豊富に含有する。
【0030】
本発明の更に別の好ましい変形形態によれば、上記抽出物は、抽出物を構成する固形分に対するパーセントで表わして糖少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%の総糖類を含む。
【0031】
第2の態様によれば、本発明は、痩身活性を有する美容組成物において、糖化合物を豊富に含有し、少なくとも1つの極性溶媒により得られる穀類抽出物を痩身剤の1つとして含むことを特徴とする美容組成物をも対象とし、上記抽出物は上記に定義される通り、又は以下の記載全体の結果として得られる。
【0032】
上記組成物の特定の一実施形態によれば、上記組成物は、穀類抽出物の濃度が、美容組成物の質量に対する抽出物乾燥質量として、0.0001質量%〜1質量%、特に0.01質量%〜0.5質量%であることを特徴とする。
【0033】
本発明の組成物は、本発明の美容効果に類似する及び/又はこれを補足する美容効果を有する1つ又は複数の別の美容活性剤を有利に含んでもよい。
【0034】
上記有利な活性剤は特に、例えば、環状3’,5’−アデノシン一リン酸(環状AMP又はcAMP)の細胞内濃度に対して作用することによる脂質生成、脂質分解、又は脂質貯蔵に対する作用により痩身効果を有する活性剤、組織内への水の浸透等セルライトの出現を引き起こす因子に対して作用する活性剤、及び細胞外マトリックスの保護により再構成効果を有し且つ組織の堅さを保持するよう作用する活性剤から選択されてもよい。
【0035】
したがって、本発明の組成物は、フィトスフィンゴシン、又は化粧料に許容されるその塩、特にその塩酸塩を、好ましくは、組成物総質量に対して0.001質量%〜1質量%、好ましくは0.05質量%〜0.5質量%の濃度で含んでもよい。
【0036】
本発明の組成物は、cAMP及びその誘導体、アデニル酸シクラーゼ酵素を活性化する活性剤、並びにホスホジエステラーゼ酵素を阻害する活性剤からなる群より選択される1つ又は複数の活性剤を含んでもよい。
【0037】
cAMP誘導体としては、化粧料に許容される任意のcAMP誘導体、特に塩又はアシル化誘導体、とりわけモノブチリル又はジブチリル誘導体を選択してもよい。
【0038】
上記美容組成物において、cAMP又はその誘導体は組成物総質量に対して0.001質量%〜5質量%の濃度で有利に使用される。
【0039】
アデニル酸シクラーゼ活性化剤としては、組成物総質量に対して好ましくは0.001質量%〜1質量%、好ましくは0.05質量%〜0.25質量%の濃度の、フォルスコリン又はフォルスコリン含有植物抽出物が有利に選択される。
【0040】
フォルスコリン含有抽出物としては、コレウス・フォルスコリ(Coleus forskholii)抽出物、特に上記植物の外皮抽出物が好ましく選択される。このような抽出物は欧州特許第486595号記載の方法等の抽出方法により取得可能である。
【0041】
植物テフロシア・パープレア(Tephrosia purpurea)の抽出物、特に上記植物の種子抽出物を組成物総質量に対して0.001質量%〜5質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%の濃度でアデニル酸シクラーゼ活性化剤として使用してもよい。上記抽出物は例えば、欧州特許第711141号記載の抽出方法により取得可能である。
【0042】
ホスホジエステラーゼ阻害剤としては、3−イソブチル−1−メチルキサンチン若しくはIBMX等のキサンチン、カフェイン、又はテオフィリンを、組成物質量に対して好ましくは0.001質量%〜10質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%の濃度で使用してよい。
【0043】
本発明の組成物は、ヒメコラノキ(Cola acuminata)抽出物、リノール酸、ヴィニフェラ種ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)抽出物、スフィンゴ糖脂質、ジヒドロミリセチン、ヘキサペプチド−11、セイヨウウツボグサ(Prunella vulgaris)加水分解抽出物とケイトウ(Celosia cristata)加水分解抽出物の混合物、アノゲイスス・レイオカープス(Anogeissus leiocarpus)抽出物、特に上記植物の外皮抽出物、キャッサバ(Manihot utilissima)の葉抽出物、マデカッソシド又はマデカッソシド含有植物抽出物、ビタミンAエステル、特にパルミチン酸レチノール、セリコサイド又はセリコサイド含有植物抽出物、N−アセチル−ジペプチド−1−ヘキサデシルエステル、及びビスナガベラ抽出物から選択される活性剤を含んでもよい。
【0044】
本発明の組成物は、顔料、着色剤、ポリマー、界面活性剤、流動剤、香料、電解質、pH調整剤、抗酸化剤、及び防腐剤、並びにそれらの混合物から特に選択されてもよい、化粧料に許容される少なくとも1つの添加剤を更に含む。
【0045】
本発明の美容組成物は、例えば、美容液、ローション、クリーム等のエマルション、又はヒドロゲルの形態であってもよく、又はスティック若しくはパッチの形態であってもよい。
【0046】
第3の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの穀類抽出物を含む痩身美容組成物の身体皮膚の対象領域に対する局所塗布を含むことを特徴とする痩身美容術方法にも関し、上記組成物は上記に定義される通り、又は以下の記載全体の結果として得られる。
【0047】
したがって、本発明は、容易且つ安価であり且つ工業及び化粧品規模で利用可能な方法により、再生可能な天然資源を使用して新規痩身剤を提供することにより上述の新たな技術的課題を確かに解決することが理解される。
【実施例】
【0048】
実施例1−本発明のライ麦抽出物の調製
植物ライ麦(Secale cereale)の種子から得たフレークの蒸煮処理により抽出物を調製する。
【0049】
抽出方法は以下のステップを有利に含む:
ライ麦フレークを水に懸濁するステップ、
酵素的加水分解をするステップ、
可溶相と不溶相を分けるステップ、
熱処理するステップ、
精製及び滅菌ろ過するステップ。
【0050】
抽出プロセス終了後、固形分約5質量%を含有するライ麦抽出物の水溶液が得られる。
【0051】
乾燥物の割合は、105℃のオーブン中に所与の質量の試料を入れて質量が実質上一定に達するまで保持することにより測定される。
【0052】
総糖類濃度はデュボワ(DUBOIS)の方法(Dubois M.§ al(1956)Analytical chemistry,28,N°3,P 350−356)により決定される。
【0053】
この方法は、濃硫酸及びフェノールを糖と反応させて黄味がかったオレンジ色の化合物を得ることを含む。検量線から試料の総糖類濃度を決定できる。
【0054】
本発明の活性剤を構成する穀類抽出物(本実施例中ではライ麦抽出物)の水溶液中の総糖類濃度は45〜65g/lである。
【0055】
単糖(モノサッカライド)濃度は5%程度であり、グルコース約96%、キシロース約3%、及びアラビノース約1%を含む。
【0056】
下記表により、本発明の抽出物/活性剤の糖類又は糖分画に含まれるグルコース、キシロース、及びアラビノースが実質的に二糖、五糖、及びオリゴ糖として含まれることが示される。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例2−脂肪細胞におけるα5インテグリン発現に対する活性剤の調節効果
3T3−F442A前駆脂肪細胞をスライドグラス上で培養し、その上にフィブロネクチンを流すことにより接着及び細胞増殖を促進する(Kuwada SK et al.,Mol Biol Cell.2000 Jul;11(7):2485−96;Sastry SK et al.,J Cell Biol.1999 Mar 22;144(6):1295−309)。
【0059】
実施例1により得られたライ麦水抽出物で処理した3T3−F442A前駆脂肪細胞を免疫蛍光法に供して、α5インテグリン発現を調べる。多様な標識を共焦点顕微鏡により視覚化し、次いで、細胞表面におけるα5インテグリンの存在に対応する蛍光を画像解析により定量する。
【0060】
材料及び方法
1−試薬
ダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM)+グルコース4.5g/l:INVITROGEN
仔ウシ血清(CS):BIOWEST
PBS(DPBS+CaCl+MgCl GIBCO14040−091)
BSA:ウシ血清アルブミンSIGMA
10%ホルマリン、4%ホルムアルデヒド溶液(SIGMA)
抗α5インテグリン抗体(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY)
アレクサ・フルオル(Alexa fluor)546結合抗ウサギヤギ抗体(IN Vitrogen、Molecular Probes)
シトックスグリーン(SYTOXGREEN):(核酸染色、DMSO保存溶液中に5mM、Molecular Probes)。最終希釈20000倍、即ち第1希釈でPAB中に100倍希釈し、次に第2抗体調製溶液で200倍希釈。
フィブロネクチン被覆スライドグラス:バイオコートセルウェア(BIOCOAT CELLWARE)、ヒトフィブロネクチン4ウェル(FALCON)。
【0061】
2−細胞培養
静止状態でトリグリセリドを大量に蓄積するクローンを株化マウス線維芽細胞株3T3から単離する。このマウス前駆脂肪細胞(3T3−F442A)(Green H.and Kehinde O.Cell.1976;7(1):105−13)は増殖及び分化可能であり、成熟脂肪細胞の分化した機能に特徴的な形態的及び生化学的表現型を呈する。対数増殖期においては、線維芽細胞の細長い形状を呈し、且つ支持体に非常によく付着する。
【0062】
3T3−F442A前駆脂肪細胞をフィブロネクチン被覆4ウェルラボテック(Labtek)スライドグラス上に培地1ml中、2×10細胞/ウェルの割合で播種し、37℃のインキューベータ内に空気−CO(95−5%)雰囲気下で静置する。細胞を10%仔ウシ血清(CS)添加DMEM培地(グルコース4.50g/l)培地中で48時間培養し、次いで、同培地中において活性剤で処理する。
【0063】
3−処理
細胞をウェル中で24時間処理する。
実施例1で調製したライ麦抽出物を培地中で固形分0.05質量%に希釈して試験する。
【0064】
4−α5インテグリンの免疫標識
処理終了時、細胞をカルシウム及びマグネシウム含有PBSで洗浄し、次いで、ホルマリンで洗浄し、室温で20分間ホルマリン固定する。次いで、細胞をPBS−BSA(PAB)3%(付属I参照)で洗浄し、3%PAB溶液に1時間接触させる。スライドグラスを乾燥させ、次いで、α5インテグリンに対する抗体を3%PABで50倍希釈したものと共に室温で1時間インキュベートする。PABにより各15分間ずつ2回洗浄し且つ各15分間ずつ2回浸漬した後、スライドグラスを乾燥させ、次いで、PABで200倍希釈したアレクサ・フルオル(Alexa fluor)546結合抗ウサギ抗体と共に45分間インキュベートする。細胞核をシトックスグリーン(上記溶液にて200倍希釈)で染色する。PABにより各15分間ずつ2回洗浄し且つ各15分間ずつ2回浸漬した後、スライドグラスを乾燥させ、スライドグラスとカバーグラスの間に配置する。
【0065】
共焦点顕微鏡(バイオラッド(BIORAD)MRC1024)により観察し、レーザーシャープ(LaserSharp)2000ソフトウェア(バイオラッド)により対照及び処理試料について培地における10の異なる部分について10の画像を取得する。10の画像からランダムに選択した4つの画像により、図1(未処理対照)及び図2(本発明の抽出物により処理)を参照して本発明が例示される。
【0066】
蛍光(α5インテグリン網目状構造について赤色、核染色について緑色)を解析し、ライカ(LEICA)クウィン(QWIN)V3ソフトウェアにより以下のステップに従って標識を定量する:
ステップ1:元の写真の組み合わせから得られる画像により、赤色のα5インテグリン標識及び緑色の細胞核標識が示される。
ステップ2:画像解析ソフトウェアによりα5インテグリン標識を示す画素を検出する。検出された赤色画素の数を測定する。この数は各細胞中にあるα5インテグリンの量に対応する。
ステップ3:ソフトウェアにより細胞核に対応する緑色画素を検出する。対象の数を測定する。
ステップ4:測定領域は添付の図1又は2に示す顕微鏡視野全体からなる。
【0067】
実施例1により取得され且つ固形分0.05質量%にて試験されたライ麦抽出物について、α5インテグリン標識の強度に対する作用を評価する。前駆脂肪細胞中のα5インテグリン標識の総量を測定し、続いて標識を測定領域内で計数された核の数に対して標定する。
【0068】
結果:
処理後の結果を下記表に示す。
【0069】
【表2】


は対照との有意差を示す(p≦0.05)。
【0070】
結論:
共焦点顕微鏡で得られた画像から、斑点状の表面標識が細胞のライ麦抽出物処理後に強くなることが明らかになる。外観が変化しており、蛍光の位置が変化しており、処理することによってより多くの線維状構造に置き換わっている。
【0071】
定量により、未処理対照細胞とライ麦抽出物希釈溶液で処理した細胞とを比較すると、蛍光が約80%増加することが示される。
【0072】
ANOVA統計分析により、未処理対照とライ麦抽出物で処理した細胞とにおいてα5インテグリン標識の強度における有意差が示される。
【0073】
本発明に従ってライ麦抽出物の存在下で培養し且つ実施例1に従って調製した前駆脂肪細胞はα5インテグリンをより多く発現し、これにより細胞を非脂肪細胞状態に維持する能力が増大する:処理後、細胞は細胞分化に入りにくい状態となる。
【0074】
実施例3−痩身美容組成物
固形分約0.05質量%に希釈された水溶液としてライ麦抽出物を含む痩身ボディクリームを調製する。
【0075】
上記美容組成物は、当業者であれば調製方法を知っているものなどの水中油エマルションである(割合は最終組成物に対する質量%で示す)。

ライ麦抽出物 0.1
テフロシア・パープレア種子抽出物 1
クリーム添加剤 十分量 100
【0076】
組成物を、使用を要する身体個所に2〜3週間、所望の痩身効果が得られるまで毎日塗布する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの極性溶媒で抽出することにより得られる穀類抽出物を含む痩身剤。
【請求項2】
抽出物は単独の穀類の全体若しくは一部から又は少なくとも1つの他の穀類との混合物として得られる請求項1に記載の痩身剤。
【請求項3】
穀類は、糖化合物を豊富に含有し、特にキシラン又はアラビノキシラン等の少なくとも1つのキシラン誘導体を豊富に含有する請求項1又は2に記載の痩身剤。
【請求項4】
穀類は、小麦、ライ麦、大麦又はオート麦から選択される請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項5】
抽出物は、線維、特に穀類の茎若しくは葉、種子、殻、又はふすまに含有される線維から選択される少なくとも1つの穀類の断片から、又は前記穀類のフレークから得られる請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項6】
抽出物は、ライ麦フレークの抽出物である請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項7】
穀類抽出物は、選択された穀類又は穀類断片を極性溶媒又は極性溶媒混合物に接触させることにより調製される請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項8】
溶媒又は溶媒混合物は、水、エタノール等のC〜Cアルコール、C〜Cグリコール、及びそれらの混合物から選択される請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項9】
グリコール溶媒は、グリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物から選択される請求項8に記載の痩身剤。
【請求項10】
抽出物は、水抽出物、又は少なくとも50体積%の水を含むアルコール水溶液若しくはグリコール水溶液中での抽出により得られる抽出物である請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項11】
穀類抽出物は、一連の以下のステップ:
穀類又は穀類の一部を水に懸濁するステップ、
同時又は連続的な酵素により加水分解(複数回可)するステップ、
濾過、遠心分離、沈降により可溶相と不溶相を分けるステップ、
熱処理するステップ、
濾過により有効画分を精製するステップ、並びに
滅菌ろ過するステップ
を含む方法により調製される請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項12】
抽出物は、グルコース、キシロース及びキシラン並びにそれらの誘導体等の糖化合物を豊富に含有する請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項13】
抽出物は、抽出物を構成する固形分に対するパーセントで表わして、少なくとも90質量%の総糖類を含む請求項1又は3に記載の痩身剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の穀類抽出物を含む痩身剤を痩身剤の1つとして含む痩身活性を有する美容組成物。
【請求項15】
穀類抽出物の濃度は、0.0001質量%〜1質量%である請求項14に記載の美容組成物。
【請求項16】
穀類抽出物の濃度は、美容組成物の質量に対して、抽出物乾燥質量として、特に0.01質量%〜0.5質量%である請求項14に記載の美容組成物。
【請求項17】
本発明の美容効果に類似する及び/又はこれを補足する美容効果を有し、且つ例えば、細胞内cAMP濃度に対して作用することによる脂質生成、脂質分解、又は脂質貯蔵に対する作用により痩身効果を有する活性剤、組織内への水の浸透等セルライトの出現を引き起こす因子に対して作用する活性剤、及び細胞外マトリックスの保護により再構成効果を有し且つ組織の堅さを保持するよう作用する活性剤である、1つ又は複数の別の美容活性剤を含む請求項14又は15に記載の美容組成物。
【請求項18】
顔料、着色剤、ポリマー、界面活性剤、流動剤、香料、電解質、pH調整剤、抗酸化剤及び防腐剤並びにそれらの混合物から特に選択されてもよい、化粧料に許容される少なくとも1つの添加剤を更に含む請求項14又は15に記載の美容組成物。
【請求項19】
美容液、ローション、クリーム等のエマルション、又はヒドロゲルの形態である、又はスティック若しくはパッチの形態である請求項14又は15に記載の美容組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285431(P2010−285431A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−128089(P2010−128089)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】