説明

痰吸引装置

【課題】介護者の負担をなるべく軽減できる痰吸引装置を提供する。
【解決手段】痰吸引装置1に、痰を吸引する吸引カテーテル17と、吸引を行う吸引ポンプ55と、前記吸引カテーテル17と前記吸引ポンプ55とを接続するチューブA3と、該チューブA3の途中に設けられたT字管B1と、該T字管B1に接続された人体側陰圧スイッチ95と、前記チューブA3における前記T字管B1の前記吸引ポンプ55側に該チューブA3の開閉を行う気管内吸引ソレノイド40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば気管切開された患者の気管や口腔から痰を吸引するような痰吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中、脳外傷、ALS(amyotrophic lateral sclerosis)、重症呼吸器疾患等を発症した患者は、主に大病院で救命処置を受ける。このような患者は、気管切開や胃瘻が施された状態が続くことがある。患者がこのような状態であっても、病院は、1ヶ月程度経過すると患者家族に患者の退院を促すことがある。そうすると、患者家族は、介護施設などに入所を打診することになる。ここで、ほとんどの介護施設は、胃瘻が施された患者は受け入れるが、気管切開された患者は受け入れない。
【0003】
気管切開が施されても、患者の気管内や口腔内には分泌物(痰)がたまる。患者は、この痰を自力で排出できない。このため、看護師や患者家族などの介護者が痰を除去する必要がある。この痰を除去する処置は、患者自身の痰による窒息を防ぐものである。
【0004】
ここで、気管切開が施された患者は、MRSA(Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus)や緑膿菌などの保菌者であることが多い。このため、介護者は、自分自身が汚染されることを防止しなければならない。また、患者自身の新たな感染も防止しなければならない。したがって、介護者は、消毒した手袋を着用し、吸引カテーテルを摂氏でつまみ、吸引カテーテルを気管内に挿入し痰を吸引し、抜き取った吸引カテーテルをヒビテン水等で消毒するといった一連の処置を行う。
【0005】
一方、気管切開が施された患者は、意思表示ができないことも多い。そして、意思表示が出来ない患者は、痰がたまっても介護者に伝えることができない上に、上述したように自力で痰の排出もできない。このため、介護者は、気管切開部に取り付けられたカニューレに痰がたまってゴロゴロ音がしたときや咳をしたときに初めて気づき、急いで処置することになる。そして、こういったことは度々起こる。
【0006】
従って、痰吸引の処置は、介護者にとって、処置する負担だけでなく精神的にも非常に大きな負担となる。
【0007】
このような痰吸引の負担を軽減できるものとして、人工呼吸システムおよび気管カニューレが提案されている(特許文献1参照)。この気管カニューレは、送気および排気用の呼吸路と吸引路とが二重管構造で別々に設けられており、吸引路から痰を吸引するものである。
【0008】
しかし、この気管カニューレは、呼吸路の存在のために吸引路が細くなるものである。吸引路が細くなると、呼吸抵抗が増大するという問題点と、吸引した痰が詰まりやすいという問題点がある。痰がつまると吸引路の交換あるいは清掃が必要になり、これが頻繁に発生すると介護者の負担が過大になるという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−283329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述の問題に鑑み、痰による窒息の危険から患者を保護し、介護者の負担をなるべく軽減できる痰吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、痰を吸引するカテーテルと、吸引を行う吸引ポンプと、前記カテーテルと前記吸引ポンプとを接続するチューブと、該チューブの途中に設けられた第1分岐部と、該第1分岐部に接続された第1陰圧計と、前記チューブにおける前記第1分岐部の前記吸引ポンプ側に該チューブの開閉を行う開閉弁とを備えた痰吸引装置であることを特徴とする。
好ましくは、気管切開上部に送気して患者の発声訓練を可能にする発声用送気手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、痰による窒息の危険から患者を保護し、介護者の負担をなるべく軽減できる痰吸引装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、痰吸引装置1の外観構成を示す斜視図であり、図2は、開閉駆動ユニット30の拡大斜視図であり、図3は、痰吸引装置1の吸引に関する構成を示す構成図である。
【0015】
痰吸引装置1は、図3に示すように、吸引系統として、主に気管切開チューブユニット10、吸引カテーテル17、ピストル型吸引器20、開閉駆動ユニット30、本体装置60、吸引排液ビン51、貯陰圧タンク53、吸引ポンプ55、および送吸引管(ダブルルーメンチューブ)137がチューブA1〜A10で接続されて構成されている。
【0016】
また、痰吸引装置1は、加湿吸入系統として、気管切開チューブユニット10にY字管151、153を介して接続される超音波ネブライザー161、および蒸留水貯留部163が備えられている。
【0017】
また、痰吸引装置1は、送気系統として、送吸引管137に接続される減圧弁145、コンプレッサー140、および送気ソレノイド147が備えられている。
【0018】
これらの各ユニットは、図1に示すように、支柱2に装着された台3に主に取り付けられている。支柱2は、下方に図示省略する足が設けられており、該足の底面に図示省略するキャスターが設けられている。これにより、痰吸引装置1は、容易に移動できる構成となっている。
【0019】
気管切開チューブユニット10は、気管切開された部位から患者の気管内に挿入する気管カニューレ15が下方に設けられており、上面からこの気管カニューレ15に連通する挿通孔12が設けられている。この挿通孔12には、吸引カテーテル17を挿入できるようになっている。また、気管切開チューブユニット10の側面には、超音波ネブライザー161(図3参照)や人工呼吸器(図示省略)などの他の装置を接続できる接続部13が設けられている。
【0020】
吸引カテーテル17は、内部が中空の柔軟性のあるチューブであり、同様に内部が中空で柔軟性のあるチューブA1に一端が接続されている。吸引カテーテル17の他端は、気管切開チューブユニット10の挿通孔12に挿入される。
【0021】
気管切開チューブユニット10の接続部13には、図3に示すようにY字管151が接続されている。このY字管151の一方には、リザーバーが接続され、他方にはY字管153が接続されている。また、Y字管151には、患者の気管に痰が溜まった際に発生する音および咳の音(以下、ゴロ音という)を検知する集音手段としてのゴロ音検知マイク90が設けられている。
【0022】
Y字管153の一方には、結露ドレーン155が接続され、他方には、超音波ネブライザー161が接続されている。超音波ネブライザー161は、蒸留水貯留部163とチューブ162とで構成される点滴セットが接続されている。これにより、蒸留水貯留部163から供給される蒸留水を超音波ネブライザー161が霧状にして加湿空気を生成し、この加湿空気をY字管151、153を介して接続部13から気管切開チューブユニット10に送り出し、患者に投与することができる。
【0023】
ピストル型吸引器20は、略L字型で一方にハンドル部を有する本体22と、該本体22の略中間部分のL字内側に支軸23で軸支された操作レバー21と、カテーテル27とで構成されている。操作レバー21は、本体22のハンドル部と略並行に設けられている。本体22のハンドル部側の一端には、チューブA4が挿入されており、本体22の他端には、カテーテル27が挿入されている。このカテーテル27とチューブA4は、本体22の内部で空気及び痰を挿通可能に接続されている。操作レバー21は、本体22の内側に向けて図示省略する押圧突起を有しており、この押圧突起がカテーテル27あるいはチューブA4を押圧(圧迫)して空気の通過を遮断して閉状態にしている。介護者によって操作レバー21がハンドル部側に向かって握りこまれると、押圧突起がカテーテル27あるいはチューブA4の押圧を開放し、空気および痰が通過する開状態になる。介護者が操作レバー21を離すと、図示省略するバネなどの付勢手段によって押圧突起がカテーテル27あるいはチューブA4を押圧し、閉状態に戻る。
【0024】
送吸引管137は、カテーテルであり、途中で二股に分かれている。この送吸引管137は、二股の一方が、チューブA5を介してピストル型吸引器20より少し人体側のY字管B2に接続されている。チューブA5の中間には、口腔内吸引ソレノイド130が設けられており、この口腔内吸引ソレノイド130のON/OFFによって口腔内吸引の実行/停止が切り替えられる。
ここで、この実施例でいう口腔内吸引とは、厳密には気管切開部上部の気管内の吸引のことを指す。そして、気管切開チューブユニット10のサイドラインの機械側をダブルルーメンチューブとすることで、吸引と発声送気の切替を可能にしている。
なお、厳密に口腔内を吸入するには、サイドラインに替えて、気管切開部より上行性に声帯を超えて別途の吸引カテーテル(図示省略)の先端を口腔内に留置するか、経鼻又は経口的に別途の吸引カテーテル(図示省略)の先端を口腔内に留置しても良い。この場合、送吸引管137は、ダブルルーメンではなくシングルルーメンチューブを用いれば良い。この場合も口腔内の吸引を実行できる。
【0025】
送吸引管137の二股の他方は、チューブA21,A23を介してコンプレッサー140に接続されている。チューブA21の途中には、送気ソレノイド147が設けられている。この送気ソレノイド147のON/OFFにより、送気の実行/停止が切り替えられる。また、チューブA21の途中における送気ソレノイド147よりコンプレッサー140側に、減圧弁145が設けられている。減圧弁145とコンプレッサー140の間を繋ぐチューブA21,A23の間には、T字管B5が設けられている。このT字管B5の先は、チューブA22を介してエアーシリンダーに接続されている。
【0026】
開閉駆動ユニット30は、図2に示すように、概略長方形な板状の台部35と、概略長方形な板状の蓋部31とが折りたたみ開閉可能に蝶番(図示省略)で接続され、その下方に気管内吸引ソレノイド40および口腔内吸引ソレノイド130が取り付けられて構成されている。蓋部31の蝶番と反対側には、ロック係合部32が複数設けられている。台部35の蝶番と反対側には、前記ロック係合部32に係合して蓋部31と台部35が開かないようにロックするロック操作部38が、前記ロック係合部32に対応して設けられている。
【0027】
台部35の蓋部31との重なり合う面には、一直線状の溝36,37が平行に設けられていると共に、ソレノイド蓋外れ検知スイッチ67が設けられている。
ソレノイド蓋外れ検知スイッチ67は、台部35と蓋部31が重なり合ってしっかり固定されていればOFFになり、蓋部31が少しでも開くとONになる。
【0028】
溝36には、チューブA1,A3と、これらの間に連結されたT字管B1が嵌め込まれている。溝36の一部には、上下に貫通する貫通孔36aが設けられている。この貫通孔36aには、気管内吸引ソレノイド40の鉄心である押圧突起43が下方から上方へ向かって挿通されている。この気管内吸引ソレノイド40は、図示省略するバネなどの付勢手段によって押圧突起43を常時上方(チューブA3側)に向かって押圧している。これにより、チューブA3を押圧突起43と蓋部31の内側面とで挟み込み、チューブA3を押しつぶして空気および痰が通過しない閉状態にする。気管内吸引ソレノイド40がONになると、押圧突起43を下方(チューブA3から離れる側)へ向かって移動させ、チューブA3を開放して空気および痰の通過を許容する開状態になる。
【0029】
溝37には、チューブA5が嵌め込まれている。溝37の一部には、上下に貫通する貫通孔37aが設けられている。この貫通孔37aには、口腔内吸引ソレノイド130の鉄心である押圧突起131が下方から上方へ向かって挿通されている。この口腔内吸引ソレノイド130は、図示省略するバネなどの付勢手段によって押圧突起131を常時上方(チューブA5側)に向かって押圧している。これにより、チューブA5を押圧突起43と蓋部31の内側面とで挟み込み、チューブA5を押しつぶして空気および痰が通過しない閉状態にする。口腔内吸引ソレノイド130がONになると、押圧突起131を下方(チューブA5から離れる側)へ向かって移動させ、チューブA5を開放して空気および痰の通過を許容する開状態になる。
【0030】
蓋部31には、ロック係合部32側の端部から開閉基部(蝶番側)へ向かって真っ直ぐ伸びる溝孔33が設けられている。この溝孔33は、蓋部31と台部35が閉じられた状態で溝36の位置まで到達する長さで、T字管B1およびチューブA2が挿通する程度の幅に形成されている。この溝孔33により、T字管B1の位置を位置決めするとともに、蓋部31を開閉する際にT字管B1が邪魔にならないようにしている。チューブA2は、図3に示すように人体側陰圧スイッチ95に接続されている。なお、チューブA2の中間には、液体貯留部49(図1参照)が設けられている。これにより、水滴が人体側陰圧スイッチ95に送り込まれることを防止している。
【0031】
チューブA3の吸引ポンプ55側には、T字管B3が接続されている。このT字管B3には、ピストル型吸引器20に繋がるチューブA4と、第1貯陰圧タンクでもある吸引排液ビン51に繋がるチューブA6が接続されている。
【0032】
本体装置60は、図1に示すように、スイッチ類、センサ類、ランプ類などの各種素子を備えた電気回路が内蔵されており、操作部と表示部などが正面に配置されている。本体装置60の正面には、電源スイッチ61、電源ランプ62、気管内吸引中ランプ89a、口腔内吸引中ランプ89b、カテーテル詰まり警報ランプ105、タンク蓋外れ警報ランプ75、ソレノイド蓋外れ警報ランプ71、スタートスイッチ126(126a,126b)、自動吸引ランプ84、モード切替スイッチ81、および手動吸引ランプ83が設けられている。本体装置60の左側面には、ナースコールを接続する接続端子59が設けられている。
【0033】
吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53は、図3に示すように、吸引する空気の流れに対して直列的に設けられている。詳述すると、吸引排液ビン51と貯陰圧タンク53は、チューブA7により接続されている。吸引排液ビン51は、チューブA6により最終的に吸引カテーテル17およびピストル型吸引器20に繋がれている。貯陰圧タンク53は、チューブA8により最終的に吸引ポンプ55に接続されている。
【0034】
チューブA8には、T字管B4が接続され、このT字管B4にポンプ側陰圧スイッチ68に繋がるチューブA9と、吸引ポンプ55に繋がるチューブA10が接続されている。チューブA10には、逆流防止弁9が設けられている。
吸引ポンプ55は、吸引を行うポンプであり、スイッチONされると吸引を行う。
【0035】
また、痰吸引装置1には、全体の制御を行う制御部100が設けられている。この制御部100は、ポンプ側陰圧スイッチ68、人体側陰圧スイッチ95、およびゴロ音検知マイク90に接続されており、これらの検出信号を受けて各種ソレノイド等の駆動制御を行う。
【0036】
図4は、痰吸引装置1の回路構成を示す構成図であり、図5および図6は、痰吸引装置1の回路構成を部分的に詳しく示す構成図である。
【0037】
痰吸引装置1の回路構成は、主に、電源スイッチ61がONとなっている間常時動作する常時動作部、モード切替スイッチ81が自動81aに設定されると動作する自動時動作部、および、モード切替スイッチ81が手動81bに設定されると動作する手動時動作部により構成されている。
【0038】
常時動作部には、図5に示すように、電源スイッチ61、4Aヒューズ63、コンプレッサー140、口腔内吸引ソレノイド130、気管内吸引ソレノイド40、吸引ポンプ55、トランス77、図4に示すように+1.5kg圧力スイッチ65、ソレノイド蓋外れ検知スイッチ67、ポンプ側陰圧スイッチ68、ソレノイド蓋外れ警報ランプ71、タンク蓋外れ警報スイッチ73、およびタンク蓋外れ警報ランプ75が設けられている。
【0039】
ソレノイド蓋外れ検知スイッチ67は、開閉駆動ユニット30の蓋部31の開閉を検知する。蓋部31が開いているとONになり、ソレノイド蓋外れ警報ランプ71を点灯させる。蓋部31が閉まっていればOFFになる。これにより、ロック操作部38とロック係合部32が外れて蓋部31が少しでも開くと、吸引ポンプ55が作動しないようにしている。
【0040】
ポンプ側陰圧スイッチ68は、所定陰圧を検知しているときにONとなり、それ以外のときにOFFとなるスイッチである。この実施例では、0〜−400cmH2Oの陰圧を検知しているときにONとなるように構成されている。
【0041】
タンク蓋外れ警報スイッチ73は、吸引排液ビン51か貯陰圧タンク53の蓋が外れて十分な陰圧が得られない場合にタンク蓋外れ警報ランプ75を点灯させるスイッチである。
【0042】
トランス77は、コンセントから入力されるAC100Vの商用電源をDC12Vに変圧する変圧器である。
コンプレッサー140は、エアシリンダーおよび発声送気用のコンプレッサーである。
【0043】
自動時動作部には、気管内吸引ソレノイド40、自動吸引ランプ84、タンク蓋外れ検知タイマ85、ゴロ音アンプ電源86、吸引間隔タイマ87、吸引間隔スイッチ88、気管内吸引中ランプ89a、口腔内吸引中ランプ89b、人体側陰圧スイッチ95,96、最短吸引時間計測タイマ97、カテーテル詰まり検知タイマ101、口腔内スタートスイッチ126a、カテーテル詰まり警報スイッチ103、カテーテル詰まり警報ランプ105、口腔内吸引タイマ108、口腔内吸引停止スイッチ110、気管内吸引切替スイッチ111、最短吸引時間計測スイッチ112、カテーテル詰まり検知スイッチ113、気管内スタートスイッチ126b、および口腔内吸引ソレノイド130が設けられている。これらの構成要素のうち、特にタンク蓋外れ検知タイマ85、吸引間隔タイマ87、最短吸引時間計測タイマ97、カテーテル詰まり検知タイマ101、および口腔内吸引タイマ108は、モード切替スイッチ81が自動81aに設定されている場合にのみ駆動する。
【0044】
気管内吸引ソレノイド40は、吸引カテーテル17からの気管内吸引の実行と停止を制御する電磁弁である。
【0045】
タンク蓋外れ検知タイマ85は、吸引排液ビン51か貯陰圧タンク53の蓋が外れていることを検知するためのタイマである。このタンク蓋外れ検知タイマ85は、ポンプ側陰圧スイッチ68により駆動される。まず、ポンプ側陰圧スイッチ68がONのときは正常であるので特別な動作は行わない。ポンプ側陰圧スイッチ68がOFFときは、吸引ポンプ55が長時間空運転することになり、吸引排液ビン51か貯陰圧タンク53の蓋が外れているなどの異常が発生していると考えられる。このため、吸引ポンプ55がOFFになるとタンク蓋外れ検知タイマ85が時間経過の測定を開始し、所定時間(この実施例では30秒)が経過するとタンク蓋外れ警報スイッチ73をONにしてタンク蓋外れ警報ランプ75を点灯させる。
【0046】
気管内吸引中ランプ89aは、気管内吸引ソレノイド40がONになって吸引カテーテル17からの気管内吸引が実行されている間点灯し、それ以外は消灯するパイロットランプである。
口腔内吸引中ランプ89bは、口腔内吸引ソレノイド130がONになって送吸引管137からの口腔内吸引が実行されている間点灯し、それ以外は消灯するパイロットランプである。
【0047】
ゴロ音アンプ電源86は、図6に示すように低周波トランス91、ブリッジ92、感度メーター93、および定圧力出力回路94等により構成されている。これにより、ゴロ音検知マイク90からの検知信号の入力を受け、痰詰まりが発生している場合に、ゴロ音および咳を検知することができる。このゴロ音アンプ電源86は、モード切替スイッチ81が自動81aに切り替えられている場合に作動する。
【0048】
図5に示すRvoisce120は、発声送気スイッチ121がONとなっている時間に2秒加算した時間の間は痰溜まり音を検出しない構成となっている。これにより、発声送気音および発声音を痰溜まり音と誤検知することを防止している。
【0049】
人体側陰圧スイッチ95,96は、気管内吸引ソレノイド40よりも人体側(カテーテル17)で生じる陰圧を検知し、所定陰圧になるとON/OFFを切り替える。この実施例では、0〜−20cmH2Oの陰圧(ポンプ側陰圧スイッチ68の切替陰圧より弱い陰圧)でOFF、それより強い陰圧でONとしている。ONのときは、吸引中でありカテーテル詰まり検知タイマ101に時間測定を行わせる。OFFのときは、必要な吸引が終了しているから最短吸引時間計測タイマ97に時間測定を行わせる。
【0050】
最短吸引時間計測タイマ97は、吸引終了検知から最短吸引時間(この実施例では1.5秒)の経過を検知し、この最短吸引時間経過後に最短吸引時間計測スイッチ112をOFFにして気管内吸引ソレノイド40をOFFにし、吸引停止を行う。これにより、吸引カテーテル17から吸引した痰をチューブA1、A3内で搬送して気管内吸引ソレノイド40による圧迫部分まで確実に到達させることができる。
【0051】
カテーテル詰まり検知タイマ101は、最長吸引時間(この実施例では20秒)の経過を検知し、この最長吸引時間が経過するとカテーテル詰まり警報スイッチ103をONにし、カテーテル詰まり警報ランプ105を点灯させる。また、これと同時にナースコールを連動させる。これにより、自動制御で吸引している際に吸引カテーテル17等で痰詰まりが発生すると、警報することができる。このため、介護者は、痰詰まりに気づいて詰まった痰を除去することができる。また、これと同時にカテーテル詰まり検知スイッチ113のON/OFFを切り替える。これにより、吸引を継続し続けることができる。このため、吸引カテーテル17の先端に痰が吸着して詰まっているような場合でも、この痰を落とさずに吸着し続けることができる。したがって、詰まった痰を除去した後にさらに患者の気管内の痰を手作業で除去する作業を省略でき、患者の気管を傷つけることも防止できる。
【0052】
口腔内吸引タイマ108は、口腔内吸引を実行する口腔内吸引時間(この実施例では5秒)の経過を検知し、この口腔内吸引時間経過後に口腔内吸引停止スイッチ110をOFFにして口腔内吸引ソレノイド130をOFFにし、吸引停止を行う。これにより、口腔内吸引を行う時間を一定時間にすることができる。また、口腔内吸引タイマ108は、口腔内吸引停止スイッチ110をOFFにすると同時に気管内吸引切替スイッチ111をONにし、気管内吸引ソレノイド40をONにして気管内吸引を実行する。これにより、口腔内吸引が終了すると続けて気管内吸引を実行するようにしている。
【0053】
口腔内吸引ソレノイド130は、口腔内吸引停止スイッチ110によりOFFに制御され、吸引間隔スイッチ88によりONに制御される。そして、この口腔内吸引ソレノイド130は、ON状態のときに送吸引管137に連なる口腔内吸引カテーテルまたはボーカレイドのサイドラインにより口腔内の痰吸引を実行する。
【0054】
口腔内スタートスイッチ126aは、スイッチONにされると、口腔内吸引ソレノイド130をONにする。これにより、送吸引管137に連なる口腔内吸引カテーテルまたはボーカレイドのサイドラインにより口腔内の痰の吸引を実行できる。そして、引き続き気管内吸引を即時・随時に実行できる。
【0055】
気管内スタートスイッチ126bは、スイッチONにされると、気管内吸引ソレノイド40をONにする。これにより、吸引カテーテル17から気管内の痰の吸引を即時・随時に実行できる。
【0056】
手動時動作部には、気管内吸引ソレノイド40、および気管内吸引中ランプ89aが設けられている。この手動時動作部は、モード切替スイッチ81が手動81bに切り替えられると通電し、気管内吸引ソレノイド40がONになり、気管内吸引中ランプ89aが点灯して、吸引を行い続ける。これにより、従来の吸引ポンプを用いる場合と同様に、介護者が確認しながら連続的に吸引を行うことができるようにしている。モード切替スイッチ81が自動81aに切り替えられると、気管内吸引ソレノイド40がOFFになり、気管内吸引中ランプ89aが消灯する。
【0057】
流量調節機能付き電磁弁122(図5参照)は、コンプレッサー140からの送気の流量を調節する機能が付いている電磁弁である。これにより、送吸引管137から患者に供給する送気の流量を調節するようにしている。発声送気スイッチ121は、ON/OFFの切替によって患者への送気の実行/停止を切り替える。
【0058】
図7は、痰吸引装置1の制御部100が実行する動作を示すフローチャートである。
痰吸引装置1は、電源スイッチ61がONされるまで待機し(ステップS1:No)、電源スイッチ61がONされると(ステップS1:Yes)、吸引ポンプ55による吸引を開始する(ステップS2)。このとき、気管内吸引ソレノイド40はOFFの状態であり、チューブA3が閉状態に押しつぶされて吸引カテーテル17からの吸引は行わない。また同様に、口腔内吸引ソレノイド130もOFFの状態であり、チューブA5が閉状態に押しつぶされて送吸引管137からの吸引は行わない。このため、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53内の陰圧が序々に高まり、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53内に陰圧が貯留される。
【0059】
吸引開始したにもかかわらずポンプ側陰圧スイッチ68がON(予め定められた陰圧である−400cmH2Oより検知陰圧が強い状態)にならない場合(ステップS3:No)、痰吸引装置1は、タンク蓋外れ検知タイマ85による計時を行って30秒間待機する(ステップS4:No)。30秒経過してもポンプ側陰圧スイッチ68がONにならない場合(ステップS4:Yes)、タンク蓋外れ警報スイッチ73を切り替えてタンク蓋外れ警報ランプ75を点灯させて警告し(ステップS5)、処理を終了する。
【0060】
前記ステップS3でポンプ側陰圧スイッチ68がONになれば(ステップS3:Yes)、モード切替スイッチ81が自動81aと手動81bのいずれに切り替えられているかによって以降の処理を異ならせる(ステップS6)。
【0061】
モード切替スイッチ81が手動81bに切り替えられている場合(ステップS6:手動)、痰吸引装置1は、気管内吸引ソレノイド40をONにし、吸引カテーテル17からの痰吸引を実行する(ステップS7)。この痰吸引は、モード切替スイッチ81が他のモード(自動81a)に切り替えられるまで継続して行う。
【0062】
モード切替スイッチ81が自動81aに切り替えられている場合(ステップS6:自動)、痰吸引装置1は、気管内吸引ソレノイド40がONであればOFFにし、口腔内吸引ソレノイド130がONであればOFFにする(ステップS8)。
【0063】
痰吸引装置1は、ゴロ音検知マイク90がゴロ音を検知すると(ステップS9:Yes)、ステップS16に処理を進める。
痰吸引装置1は、スタートスイッチ126が操作されて気管内スタートスイッチ126b側がONにされれば(ステップS10:Yes)、ステップS16に処理を進める。
【0064】
痰吸引装置1は、スタートスイッチ126が操作されて口腔内スタートスイッチ126a側がONにされれば(ステップS11:Yes)、ステップS13に処理を進める。
【0065】
ゴロ音検知マイク90がゴロ音を検知せず(ステップS9:No)、気管内スタートスイッチ126bと口腔内スタートスイッチ126aがいずれも操作されなければ(ステップS10:No、ステップS11:No)、痰吸引装置1は、予め定められた吸引実行間隔である10分が経過するまで待機する(ステップS12:No)。
【0066】
口腔内スタートスイッチ126aがON操作されるか(ステップS11:Yes)、吸引実行間隔が経過すると(ステップS12:Yes)、痰吸引装置1は、口腔内吸引ソレノイド130をONにして送吸引管137による口腔内の痰吸引を実行する(ステップS13)。このとき、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53内に陰圧が貯留されているため、送吸引管137からの吸引は、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53無しで吸引ポンプ55により直接吸引する場合よりも強力で安定した陰圧で実行できる。また、口腔内吸引ソレノイド130は、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53よりも送吸引管137に近い位置に設けられているため、チューブA5を開状態にするとタイムラグなく強力な陰圧で痰を周囲の空気ごと一気に吸引できる。
【0067】
痰吸引装置1は、口腔内吸引時間である5秒が経過するまで、口腔内吸引を継続する(ステップS14:No)。
5秒が経過すると(ステップS14:Yes)、痰吸引装置1は、口腔内吸引ソレノイド130をOFFしてチューブA5を閉状態にし、口腔内吸引を停止する(ステップS15)。
【0068】
そして、痰吸引装置1は、気管内吸引ソレノイド40をONにして吸引カテーテル17による気管内の痰吸引を実行する(ステップS16)。このときも、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53内に陰圧が貯留されているため、吸引カテーテル17からの吸引は、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53無しで吸引ポンプ55により直接吸引する場合よりも強力で安定した陰圧で実行できる。また、気管内吸引ソレノイド40は、吸引排液ビン51よりも吸引カテーテル17に近い位置に設けられているため、チューブA3を開状態にするとタイムラグなく強力な陰圧で痰を周囲の空気ごと一気に吸引できる。
【0069】
痰吸引装置1は、痰吸引の陰圧によって人体側陰圧スイッチ95がONになると(ステップS17:Yes)、カテーテル詰まり検知タイマ101により詰まり検知時間である20秒経過を検知するまで待機する(ステップS18:No)。
【0070】
20秒経過すると(ステップS18:Yes)、痰吸引装置1は、吸引カテーテル17内などに痰が詰まったと考えられるため、カテーテル詰まり警報スイッチ103を切り替えてカテーテル詰まり警報ランプ105を点灯させて警報し(ステップS19)、処理を終了する。このとき、気管内吸引ソレノイド40はONの状態を保ち、吸引ポンプ55は吸引を継続する。これにより、吸引カテーテル17の先端に痰が詰まっているような状況であっても、この痰を落とすことなく警報によって駆けつけた介護者に除去させることができる。
【0071】
前記ステップS17で人体側陰圧スイッチ95がOFFになると(ステップS17:No)、痰吸引装置1は、予め定められた痰搬送時間である1.5秒が経過するまで気管吸引を継続する(ステップS20:No)。1.5秒が経過すると(ステップS20:Yes)、痰吸引装置1は、気管内吸引ソレノイド40をOFFにしてチューブA3を閉状態にし、気管内吸引を停止する(ステップS21)。
【0072】
以上の構成および動作により、口腔内の痰吸引と気管内の痰吸引を自動制御にて実行することができる。したがって、介護者が常に患者のそばにいて手作業によって痰吸引を行う労力を削減でき、患者は痰による窒息から開放される。
【0073】
また、自動運転中に異常が発生すれば、その異常の種類に応じて警告が行われるため、介護者は警告内容を把握して容易に対応し、正常状態に戻すことができる。
【0074】
また、介護者は、このように警告されたときだけ作業を行えばよいため、患者の様子を常に見ながら痰を手作業で除去しなければならないという精神的負担から開放される。
【0075】
また、10分間隔に実行する自動吸引だけでなく、手動吸引、および自動運転中の気管内スタートスイッチ126bや口腔内スタートスイッチ126aの操作により、介護者が任意のタイミングで口腔内の痰吸引および気管内の痰吸引を実行できる。
【0076】
また、気管内吸引ソレノイド40や口腔内吸引ソレノイド130を、痰吸引を行う先端部分になる吸引カテーテル17や送吸引管137に近い位置に配置したため、吸引開始当初から強力な陰圧で一気に吸引することができる。したがって、口腔内や気管内に粘りつきやすい痰を、周囲の空気ごと塊で一気に吸引することができ、取り残しが発生することを極力防止できる。
【0077】
また、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53に陰圧を貯留することにより、吸引開始時の陰圧を強力にすることができ、かつ、吸引力を安定化させることができる。
またこの吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53により、余陰圧を得ることができ、長時間の吸引によって吸引ポンプ55の吸引力が弱まっても吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53の余陰圧で十分な吸引力の吸引を行うことができる。
【0078】
また、開閉駆動ユニット30は、蓋部31をワンタッチでロック/アンロックして開閉できるため、チューブA3の交換等の作業を短時間で容易に実行することができる。特に、チューブA3における気管内吸引ソレノイド40による押圧部分は消耗が激しいと考えられるが、この部分の交換を容易にかつ短時間で実行できるため、自動運転を長時間停止するといったことを回避できる。
【0079】
また、開閉駆動ユニット30の蓋部31には、T字管B1を位置固定する溝孔33が設けられているため、気管内吸引ソレノイド40によるチューブA3の押圧位置を常時一定の場所にすることができる。これにより、気管内吸引ソレノイド40の押圧による消耗部分を特定することができ、その部分だけを交換するといった運用を容易に実現できる。
【0080】
また、開閉駆動ユニット30の台部35には、チューブA3を嵌め込む溝36が設けられており、この溝36上に気管内吸引ソレノイド40の押圧突起43が通る貫通孔36aが設けられている。このため、チューブA3を適切な位置に配置することを容易に行える。またこれにより、気管内吸引ソレノイド40がチューブA3をきちんと押圧できずに閉状態で空気漏れが生じるといったことを防止できる。また、開閉駆動ユニット30の台部35と蓋部31がきちんと閉まっていなければ、ソレノイド蓋外れ検知スイッチ67で検出することができる。
【0081】
また、ピストル型吸引器20も設けられているため、口腔内などの任意の場所の痰などを、ピストル型吸引器20によって個別に吸引し除去することもできる。
【0082】
また、超音波ネブライザー161から加湿空気を気管内に供給することもできる。
また、コンプレッサー140からの送気を送吸引管137から口腔内に供給することができる。これにより、患者が発声すること、および発声訓練することが可能となる。
【0083】
なお、気管内吸引ソレノイド40、口腔内吸引ソレノイド130、および送気ソレノイド147は、いずれもソレノイドによって構成したが、これに限らずエアーシリンダー等の適宜の駆動手段で構成することができる。これにより、作動時のカチカチという音を小さくできる。
また、このようにエアーシリンダーで構成した場合には、チューブA3,A5,A21を閉状態にするための押圧力を高めることができるため、チューブA3,A5,A21に肉厚の厚いものを用いることができる。これにより、耐用期間を長期化することができる。また、肉厚を厚くできることにより、チューブA3,A5,A21の耐圧を強くでき、より強い陰圧での吸引に耐えることができる。また、肉厚を厚くできることにより、チューブA3,A5,A21の管内直径を大きくすることもできるため、吸引によるチューブ内の痰の搬送を良好にでき、痰が途中で詰まることを防止できる。
【0084】
また、貯陰圧タンクとして機能する吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53は2つに限らず、さらに多数の貯陰圧タンクを用いる、あるいは1つの貯陰圧タンクで構成するなど、適宜の構成とすることができる。この場合、吸引カテーテル17から見て1つめの貯陰圧タンクを吸引排液ビン51に設定すると良い。また、このように貯陰圧タンクを増加させる場合、たとえば台3(図1参照)の肉厚を厚くしてその中に空洞を作成し、この空洞部分を貯陰圧タンクとして利用する構成にしてもよい。この台3に設けた貯陰圧タンクは、吸引用のタンクと、エアーコンプレッサ用のタンクの両方に利用すると良い。この場合、タンクの容量を増加することができるとともに、タンクの設置に必要なスペースを極力少なくすることができる。
【0085】
また、以上の実施例では、接続部13に超音波ネブライザー161を接続したが、これに限らず人工呼吸器を接続してもよい。この場合、気管内への空気経路が閉鎖系にされて空気漏れが防止され、人工呼吸器から患者の肺に空気が送られる。
このように人工呼吸器が接続された場合は、人工呼吸器による送気と連動して気管内吸引を実行する構成にすればよい。詳述すると、人工呼吸器の加圧値または送気量が最大値に達した時点で気管内吸引を行うと良い。そして、この気管内吸引を行っている間は、人工呼吸器からの加圧送気を継続するか、空気経路を開放系に切り替えると良い。これにより、患者の肺の中の空気がなくなって肺が収縮するといったことを防止できる。従って、空気を送り込む人工呼吸と、これとは逆に空気を吸引する痰吸引を並存させて、いずれも良好に実施することができる。
【実施例2】
【0086】
また、痰吸引装置1は、上述した実施例1のように各種スイッチ等を用いた構成に限らず、図8のブロック図に示すように制御基板を用いて構成してもよい。この場合、制御部201に、電源スイッチ61、ポンプ側陰圧スイッチ68、モード切替スイッチ81、ゴロ音検知マイク90、人体側陰圧スイッチ95、スタートスイッチ126、気管内吸引ソレノイド40、吸引ポンプ55、発声送気スイッチ121、流量調節機能付き電磁弁122、口腔内吸引ソレノイド130、コンプレッサー140、減圧弁145、送気ソレノイド147、超音波ネブライザー161、および警報部202を接続すればよい。
【0087】
制御部201は、CPU、ROM、RAM等により構成すればよい。この制御部201は、タイマ機能を有して時間測定も行う構成とすればよい。そして、このタイマ機能により、次の(1)〜(5)各時間を計測する構成にすると良い。
【0088】
(1)タンク蓋外れを検知するために、吸引ポンプ55による吸引を開始してからポンプ側陰圧スイッチ95がOFFのままの場合に計測する所定時間(この実施例では30秒)。
【0089】
(2)カテーテル詰まりを検知するために、吸引開始後に人体側陰圧スイッチ95が所定値(この実施例では−20cmH2O)以上を検知してから当該所定値以下にならない最長吸引時間(この実施例では20秒)。
【0090】
(3)吸引した痰を気管内吸引ソレノイド40まで搬送するために、吸引開始後に人体側陰圧スイッチ95で所定値(この実施例では−20cmH2O)以下への陰圧低下を検知してから気管内吸引ソレノイド40をOFFにするまでの最短吸引時間(痰除去から吸引停止までの時間。この実施例では1.5秒)。
【0091】
(4)口腔内吸引を十分に行うために必要な口腔内吸引時間(この実施例では5秒)。
【0092】
(5)ゴロ音検知マイク90が発声送気音、発生音を痰溜まり音と誤検知することを防止するために、気管内吸引ソレノイド40がONとなってから検知を中断する検知中断時間(この実施例では、気管内吸引ソレノイド40がONとなっている時間に2秒加算した時間)。
【0093】
警報部202は、上述した実施例1のソレノイド蓋外れ警報ランプ71、タンク蓋外れ警報ランプ75、およびカテーテル詰まり警報ランプ105で構成する、または警告メッセージを表示する液晶ディスプレイ等の表示装置で構成する、あるいは警告メッセージをアナウンスする音声出力装置などで構成する、もしくは、ナースコールから携帯型電話機に通報する通報装置で構成すると良い。
【0094】
また、人体側陰圧スイッチ95およびポンプ側陰圧スイッチ68は、陰圧を測定して測定値を制御部201に出力する陰圧測定器で構成すると良い。そして、制御部201が、受け取った測定値が基準値に対して大きいか小さいかといった判定を行い、各種制御を実行する構成とすればよい。
【0095】
他の構成および動作は、実施例1と同一であるので、その詳細な説明を省略する。
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。
【0096】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のカテーテルおよび気管内吸引カテーテルは、実施形態の吸引カテーテル17に対応し、
以下同様に、
開閉カバーは、蓋部31および台部35に対応し、
開閉弁および押圧手段は、気管内吸引ソレノイド40に対応し、
タンクは、吸引排液ビン51および貯陰圧タンク53に対応し、
第2陰圧計は、ポンプ側陰圧スイッチ68に対応し、
第1陰圧計は、人体側陰圧スイッチ95に対応し、
第1制御手段は、ステップS20を実行する制御部100に対応し、
第2制御手段は、ステップS19を実行する制御部100に対応し、
警報手段は、カテーテル詰まり警報ランプ105に対応し、
口腔内吸引カテーテルは、送吸引管137に対応し、
チューブは、チューブA3に対応し、
第1分岐部は、T字管B1に対応し、
第2分岐部は、T字管B4に対応し、
基準値以下の陰圧は、−20cmH2O以下の陰圧に対応し、
所定時間は、1.5秒に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】痰吸引装置の外観構成を示す斜視図。
【図2】開閉駆動ユニットの拡大斜視図。
【図3】痰吸引装置の吸引に関する構成を示す構成図。
【図4】痰吸引装置の回路構成を示す構成図。
【図5】痰吸引装置の回路構成を部分的に詳しく示す構成図。
【図6】痰吸引装置の回路構成を部分的に詳しく示す構成図。
【図7】痰吸引装置の制御部が実行する動作を示すフローチャート。
【図8】他の実施例の痰吸引装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0098】
1…痰吸引装置、17…吸引カテーテル、31…蓋部、35…台部、40…気管内吸引ソレノイド、51…吸引排液ビン、53…貯陰圧タンク、55…吸引ポンプ、68…ポンプ側陰圧スイッチ、95…人体側陰圧スイッチ、100…制御部、105…カテーテル詰まり警報ランプ、137…送吸引管、A3…チューブ、B1,B3…T字管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痰を吸引するカテーテルと、
吸引を行う吸引ポンプと、
前記カテーテルと前記吸引ポンプとを接続するチューブと、
該チューブの途中に設けられた第1分岐部と、
該第1分岐部に接続された第1陰圧計と、
前記チューブにおける前記第1分岐部の前記吸引ポンプ側に該チューブの開閉を行う開閉弁とを備えた
痰吸引装置。
【請求項2】
前記開閉弁を、前記チューブを外部から押圧/開放し、これによってチューブ内の通路を開閉する押圧手段で構成した
請求項1記載の痰吸引装置。
【請求項3】
開閉可能で閉状態のときに前記第1分岐部を覆う開閉カバーを備え、
該開閉カバーに、前記開閉弁を装着した
請求項1または2記載の痰吸引装置。
【請求項4】
前記開閉弁が開状態になって吸引開始され、前記第1陰圧計で基準値以下の陰圧を所定時間検知した後に前記開閉弁を閉状態に駆動させる第1制御手段を備えた
請求項1、2または3記載の痰吸引装置。
【請求項5】
警報を行う警報手段と、
前記第1陰圧計で陰圧の上昇を検知したのち、所定時間が経過しても陰圧が基準値以下に下がらなければ、吸引を継続したまま前記警報手段による警報を行う第2制御手段とを備えた
請求項1から4のいずれか1つに記載の痰吸引装置。
【請求項6】
前記チューブにおける前記吸引ポンプと前記第1分岐部の間に位置して陰圧を貯留するタンクを備えた
請求項1から5のいずれか1つに記載の痰吸引装置。
【請求項7】
前記チューブにおける前記タンクと前記吸引ポンプとの間に位置する第2分岐部と、
該第2分岐部に接続された第2陰圧計とを備えた
請求項7記載の痰吸引装置。
【請求項8】
前記カテーテルを気管内の痰を吸引する気管内吸引カテーテルとし、
口腔内の痰を吸引する口腔内吸引カテーテルを備えた
請求項1から4のいずれか1つに記載の痰吸引装置。
【請求項9】
前記気管内吸引カテーテルによる気管内吸引と、前記口腔内吸引カテーテルによる口腔内吸引とを、いずれか一方を実行した後に他方を続けて実行する構成にした
請求項8記載の痰吸引装置。
【請求項10】
気管切開上部に送気して患者の発声訓練を可能にする発声用送気手段を備えた
請求項1から9のいずれか1つに記載の痰吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264212(P2008−264212A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111453(P2007−111453)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(594063603)
【Fターム(参考)】