説明

療法に対する応答を予測するための方法

本発明は、ステロイド抵抗性患者のための療法を選択するためのインビトロ方法に関し、この方法は、上述の患者から採取される試料から細胞を単離するステップ、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において上述の単離細胞を培養するステップ、上述の単離細胞において少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを決定するステップ、およびステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、もしくはその混合物の存在下における健常な人からの細胞の培養物から得られる値に対して、または健常な集団から得られる標準化された値に対して、上述の少なくとも1つのマーカー遺伝子の上述の発現レベルを比較するステップを含む。マーカー遺伝子の例は、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド抵抗性またはステロイド依存性疾患または障害の診断および治療に関する。本発明は、療法に対する応答を予測するためのおよび療法を選択するための、特に、再感作療法の適用性を決定するための方法に関する。本発明は、ステロイド抵抗性またはステロイド依存性に関する疾患または障害を示す患者からの試料における、1つまたは複数のマーカー遺伝子の発現レベルのインビトロにおける決定に基づく。この方法は、方法において有用なマーカー遺伝子の同定に適用されてもよい。本発明はまた、上述の方法における使用のための試薬および検査キット、ならびに上述の患者のための効率的な療法を選択するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
天然グルココルチコイドは、成長、発達、分化、および基礎的で、かつストレス関連性のホメオスタシスの維持におけるそれらの多様な役割によって、多種多様の生物学的プロセスを調節し、多くの生理学的機能に影響を及ぼすステロイドホルモンである(Munck、1984;Clark、1992)。グルココルチコイドは、哺乳動物の身体における、おそらくすべての器官に影響を与えるが、それらの影響の多くは、ある種の細胞型または組織に特異的である。さらに、合成グルココルチコイドは、世界中で最も広く処方される薬剤の中で、主として抗炎症薬および免疫抑制薬として使用される。
【0003】
現在の療法が、深刻な副作用を誘発し得る、強力な免疫調節剤の使用に依存しているので、ステロイド抵抗性またはステロイド依存性はなお、炎症性疾患に罹患しているたくさんの患者にとって、主な臨床的問題である。グルココルチコイド感受性における異常は、2つの主なグループ:抵抗性および過敏性に分類することができる。グルココルチコイドに対する抵抗性は、生物体または標的組織が、ステロイド分子に応答することができないことによって特徴づけられ、全身性のまたは組織特異的な、一時的なまたは持続性の、部分的なまたは全体的な、および代償性のまたは非代償性のものとなり得る(Chrousos、1982;Chrousos、1993)。GR−/−ノックアウトマウスにおける機能的なグルココルチコイド受容体(GR)の欠如により、重篤な新生児呼吸促迫症候群および出生の後の数時間以内の死に至るということを考慮すれば、全体的なグルココルチコイド抵抗性は、生存と相容れないものとなる(Cole、1995)。
【0004】
グルココルチコイドを用いる治療は、急性および慢性喘息に、とりわけ重篤な疾患を有する患者に利用可能な最も強力な療法である。不幸にも、ある少数の喘息患者は、ステロイド抵抗性(SR)であり、標準的な治療が有効でない。概算によれば、SR喘息は、喘息の集団の約15〜20%において生じる。できるだけ早く、これらの患者を同定することは重大である。低ステロイド用量に応答しない患者は、多くの場合、SR喘息患者において著しい利益を提供することなく著しく有害な影響をもたらし得る、より高用量に移される。(Leung、1995年)。
【0005】
天然または合成グルココルチコイドを用いて通常治療される炎症性障害は、喘息、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、および他の障害を含む。炎症性障害は、複雑な疾患を含み、これらは、多くの要因および細胞型を伴い、異なる炎症性サイトカインプロファイルを有する。免疫応答の性質および大きさは、免疫系が曝露された外来抗原のプロファイルによって大部分は決められる。このイベントは、体液性および細胞性免疫の発生に最終的に至る一連のイベントを推進する。これらの異なる2つのエフェクター機能は、ヘルパーT細胞の2つの亜集団(Th1およびTh2)の存在によって引き起こされる。「正常な」健康状態下で、細胞型Th1およびTh2によって生産されるサイトカインの間に微妙なバランスがある。このバランスが失われた場合、Th1型またはTh2型の炎症を優勢的にもたらす極性が生じ、疾患の臨床症状が生じるであろう。また示されるように、異なる炎症性疾患は、観察されるサイトカインプロファイルに依存して、Th1またはTh2であるとして分けることができる。サイトカイン像は、喘息および潰瘍性大腸炎が、Th2型疾患であることを示すが、関節リウマチが、Th1型の炎症に関連していることを示す。
【0006】
新しい治療剤は、Th1のサイトカインプロファイルを低下させ、それによって、Th2プロファイルの増加を可能にすることによって、Th1型疾患において「バランスがとれた状態」を回復するために適用されてきた(Neurathら、1995;Mannonら、2004)。細菌DNAは、非メチル化CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)の存在により、B細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化することができる免疫刺激効果を有することが示された(Krieg、1998において概説)。脊椎動物免疫系は、非メチル化CpGモチーフを認識し、体液性および細胞性免疫の誘発に至る、急速な協調性サイトカイン応答を用いて応答する能力を進化させてきた(Krieg、1996)。たとえば、ヒトおよびマウスの細胞は、インターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ)(Ihoら、1999:Cowderyら、1996)、IL−1、IL−6、IL−12、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)(Staceyら、1996;Jakobら、1998;Sparwasserら、1998)の分泌の増強によって、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドに応答する。誘発されるサイトカインの性質により、CpG含有オリゴヌクレオチドは、インビトロおよびインビボの両方においてTh1プロファイルを誘発すると大部分は考えられる(Zimmermannら、1998;Kline、2000)。CpGモチーフの存在に加えて、研究者らはまた、十分なヌクレアーゼ抵抗性のホスホロチオエート骨格を用いるCpGオリゴヌクレオチドの合成が、おそらくB細胞の刺激を介する、オリゴヌクレオチドの刺激効果を強化し得るが、本来のホスホジエステル骨格を有する同じ配列が、効果を有していなかったことにも注目した(Zhaoら、1996)。
【0007】
アレルゲン特異的または非特異的Th1応答を誘発するCpGモチーフ含有オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)またはDNAワクチン接種の使用は、現在、喘息の予防および療法の両方のための戦略と考えられている(Wolleben、2006)。
【0008】
国際特許出願WO2007/004977は、所与の抗炎症治療に応答しない、または不十分にもしくは不適当に応答する、炎症性の状態に罹患しているステロイド難治性またはステロイド依存性患者の治療に関する。ステロイド効力は、配列5’−Xm−CG−Yn−3’を有する有効量のオリゴヌクレオチドを患者に投与することによって増強することができる。このオリゴヌクレオチドの配列において、Xは、A、T、C、またはGであり、Yは、A、T、C、またはGであり、m=1〜100であり、n=1〜100であり、少なくとも1つのCGジヌクレオチドは、非メチル化である。
【0009】
国際特許出願WO2007/004979は、配列5’−TTCGT−Yn−3’を有する有効量のオリゴヌクレオチドを患者に投与することによって、所与の抗炎症治療に応答しない、または不十分にもしくは不適当に応答する、炎症性の状態に罹患しているステロイド難治性またはステロイド依存性患者におけるステロイド効力を増強するための方法に関する。このオリゴヌクレオチド配列において、Xは、A、T、C、またはGであり、Yは、A、T、C、またはGであり、m=1〜7であり、n=1〜7であり、少なくとも1つのCGジヌクレオチドは、非メチル化である。
【0010】
上記の方法はまた、抗炎症治療の投薬から離脱させることが無効である状況においても適用可能である。オリゴヌクレオチドの使用を伴う他の療法は、国際出願WO2002/085308において提示され、これは、喘息、感染症、癌、および肺に対して二次性の影響を有する疾患を含む呼吸器疾患および肺疾患の治療のための組成物、製剤、およびキットを開示する。これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびステロイド薬の両方ならびに/またはユビキノンを含有する組成物が、各作用物質のみよりも優れた効果を有し、防止的、予防的、もしくは治療的単一療法としてまたは他の療法と共に使用されてもよいことを示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、約0〜15%のアデノシン(A)を含有し、開始コドン、コード領域、5’端もしくは3’端ゲノムフランキング領域、5’もしくは3’イントロン−エキソンジャンクション、または肺もしくは気道機能不全または癌に関連している標的ポリペプチドを調節またはコードする少なくとも1つの遺伝子のジャンクションの2〜10ヌクレオチド内の領域に対してアンチセンスであり、またはそれは、対応するmRNAに対してアンチセンスである。
【0011】
国際特許出願WO2004/001073において開示される多重遺伝子アプローチは、特異的なマーカー遺伝子を提供し、これらは、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、およびクローン病の区別を可能にする。方法は、腸における炎症性エリアからおよび任意選択で同様に非炎症性エリアから得られる生検試料における遺伝子発現プロファイルを比較する。
【0012】
U.S.20040197786は、アトピー性皮膚炎患者におけるステロイド応答性を試験するための方法を提示する。この方法において、遺伝子RING6およびHLA−DMBの発現レベルは、ステロイド応答性を検査するためのおよびステロイド応答性を改善するために使用されてもよい化合物のスクリーニングにおける使用のためのマーカーとして示唆される。
【0013】
国際特許出願WO2003/021261は、患者から単離される試料における遺伝子発現プロファイルを分析することによって、炎症性疾患を治療するための薬剤の効力を予測するための方法に関する。
【0014】
ステロイド依存性およびステロイド抵抗性はまた、ステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)、ステロイド依存性角膜炎症、様々な病因の浮腫などのような他の状態においても生じる。
【0015】
多数の利用可能な療法にもかかわらず、上述の療法に対する個人差は、所与のステロイド療法に対して応答しないまたは応答が弱い、疾患に関する症候群を示す患者に直面している医師にとって課題のままである。選ばれる療法に対する個々の患者の応答の、比較的信頼できる予測を可能にするであろう、単純で急速なインビトロ検査を有することは、上述の問題を扱っている医師にとって有利であろう。
【0016】
そのため、ステロイド非応答性の個人におけるステロイド効力を予測するためのおよびステロイド非応答性、つまり、ステロイド抵抗性またはステロイド依存性の個人におけるステロイド効力を増強することができるかどうかを決定するための単純で、簡単で、急速なインビトロ方法の大きな需要がある。応答を予測するための方法は、抗炎症治療の選抜を単純化し、問題の疾患を寛解させるのを助け、ステロイド療法の費用および有害な副作用を減少させて、それによって、たくさんの患者の生存の質および期間を増加させるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2007/004977
【特許文献2】WO2007/004979
【特許文献3】WO2002/085308
【特許文献4】WO2004/001073
【特許文献5】米国特許出願公開20040197786
【特許文献6】WO2003/021261
【発明の概要】
【0018】
本発明は、ステロイド抵抗性またはステロイド依存性障害または疾患に関し、特に、ステロイド抵抗性もしくはステロイド依存性であると思われる患者のための療法を選択するための、または上述の患者が示す応答を予測するためのインビトロ方法であって、上述の患者の試料から単離され、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において培養される細胞からの少なくとも1つの潜在的に有用なマーカー遺伝子の発現レベルを決定するステップを含む方法に関する。上述の発現レベルは、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の非存在下において得られる発現レベルおよびコントロール、たとえば、これらに限定されないが、ボランティアの健常な人の試料から単離される細胞からの上述のマーカー遺伝子を用いて得られる対応する発現レベルと比較される。
【0019】
方法はまた、ステロイド抵抗性患者にとって有効な療法のインビトロ選択のためのマーカー遺伝子として潜在的に有用である遺伝子の同定のためにまたは異なる療法に対する上述の患者の応答性を予測するために使用されてもよい。適用可能なマーカー遺伝子は、炎症性の状態を有する患者におけるステロイド応答に関与する遺伝子の中で同定されてもよい。方法において使用するために選択される遺伝子は、選択される治療薬の存在下または非存在下において培養される単離細胞において発現レベルを呈する遺伝子であり、統計的方法を使用するこれらの発現レベルは、健常な人またはステロイド感受性の人からの細胞と比較して、患者からの細胞において著しく異なる。
【0020】
本発明はまた、炎症性の症状を示すステロイド抵抗性患者のための療法を選択するための検査キットであって、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルのインビトロ分析を可能にするための、特異的なプライマーペアおよび使用のための説明書を含む検査キットにも関する。
【0021】
本発明はまた、ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のステロイド応答性およびこのステロイド応答性を、免疫調節オリゴヌクレオチド療法の投与によって増強することができるかどうかを決定するためのキットならびにステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者の療法における方法およびキットの使用にも関する。
【0022】
本発明の一実施形態は、ステロイド抵抗性患者、たとえば炎症性の症状を示す患者のための療法を選択するためのインビトロ方法であって、
上述の患者から採取される試料から細胞を単離するステップ、
ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において上述の単離細胞を培養するステップ、
上述の単離細胞において少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および
ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、もしくはその混合物の存在下における、健常な人からの細胞の培養物から得られる値に対して、または健常な集団から得られる標準化された値に対して、上述の少なくとも1つのマーカー遺伝子の上述の発現レベルを比較するステップを含む方法である。
【0023】
上記の方法の一実施形態によれば、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの著しい類似性は、選択マーカー遺伝子が、ステロイド応答性についての潜在的なマーカーであることを示し、得られる結果は、評価され、上述の患者のための療法を選択するために使用される。
【0024】
さらに、上記の方法の他の実施形態によれば、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの著しい類似性は、選択マーカー遺伝子が、ステロイドの作用に対する再感作についての潜在的なマーカーであることを示す。
【0025】
上記の方法の他の実施形態によれば、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞における、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの著しい差異は、選択マーカー遺伝子が、免疫調節オリゴヌクレオチドの追加によって増強されない可能性のある、ステロイド抵抗性についての潜在的なマーカーであることを示す。
【0026】
上記の方法の一実施形態によれば、著しく異なる発現レベルを呈する、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP1、およびTXKから選ばれる1つまたは複数である。
【0027】
上記の方法の一実施形態によれば、ステロイドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞における選択マーカー遺伝子の少なくとも1つの発現レベルの上昇は、患者が、ステロイド療法が有効であろうということを示す。好ましくは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、およびIL1−R2の少なくとも1つである。
【0028】
上記の方法の一実施形態によれば、上述のステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞における選択マーカー遺伝子の少なくとも1つの発現レベルの上昇、好ましくは用量依存的な増加は、患者が、併用療法が有効であろうということを示す。好ましくは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、およびIL1−R2の少なくとも1つである。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料からの単離細胞において測定される、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルの著しい差異は、前記ステロイド抵抗性患者が、ステロイド療法から除外され、免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む代替療法にかけられることが有効であろうということを示す。ここで、選択マーカー遺伝子は、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKから好ましくは選ばれる。
【0030】
本発明の方法において、細胞は、好ましくは血液細胞、より好ましくは末梢血単核細胞(PMBC)である。
【0031】
本発明に記載の方法は、患者が、ステロイド抵抗性または依存性を示す、すべての状態に適用可能である。当業者は、状態を同定することができるであろう、ここで、患者がステロイド依存性または抵抗性であるかどうかおよび上述の患者が、特異的療法が有効であるかどうかを決定することは有益であろう。
【0032】
本発明は、特に、炎症性の症状を示す患者に関し、特に、炎症性の症状は、急性または慢性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、乾癬、および気腫から選ばれる炎症性の症状である。
【0033】
当該療法は、たとえば免疫調節オリゴヌクレオチドの投与を含む併用療法または代替療法であってもよい。好ましくは、併用療法は、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの投与を含む。
【0034】
用語「ステロイド」は、コルチコステロイドおよびグルココルチコステロイドの両方を包含するように使用される。ステロイドは、等価な薬剤を含む、ベクロメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、フルチカゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、またはデキサメタゾンから選ぶことができるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の様々な実施形態において、ステロイドは、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、デオキシコルチコステロン、およびアルドステロン、好ましくはデキサメタゾンなどのようなグルココルチコイド、好ましくは合成グルココルチコイドである。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、上述のマーカー遺伝子の発現レベルは、遺伝子特異的プライマーを使用する上述の遺伝子の核酸増幅および増幅結果の定量によって決定される。好ましくは、核酸増幅は、リアルタイムPCRおよび配列番号1〜7から選ばれる遺伝子特異的プライマーの使用によって実行される。
【0037】
本発明はまた、炎症性の症状を示すステロイド抵抗性患者のための療法を選択するための検査キットであって、上述の検査キットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルのインビトロ分析を可能にするための、特異的なプライマーペアおよび使用のための説明書を含む検査キットに関する。
【0038】
上記のキットにおいて、上述の特異的なプライマーペアは、配列番号1〜14の群または遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP1、およびTXKの少なくとも1つに特異的である機能的に等価なプライマーペアから選択される。
【0039】
特定の実施形態において、上述の特異的なプライマーペアは、配列番号1および配列番号2またはCD163マーカー遺伝子に特異的な、機能的に等価なプライマーペアである。
【0040】
本発明に記載のキットは、好ましくは、細胞を培養するための手段およびステロイドの作用に対して細胞を感作するための作用物質をさらに含んでいてもよい。
【0041】
上述のキットは、好ましくは、ハイブリダイゼーションまたはアニーリングアッセイを実行するための手段をさらに含む。
【0042】
本発明はまた、ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のステロイド応答性を決定するための、上記に規定されるような方法の使用に関する。あるいは、方法は、免疫調節オリゴヌクレオチド療法が有効であろうステロイド抵抗性患者を同定するために使用される。あるいは、方法は、免疫調節化合物が、ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のステロイド応答性を増強するかどうかをスクリーニングするために使用される。
【0043】
本発明はまた、ステロイド療法が有効であろうステロイド応答性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するためのまたはステロイド療法および免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む併用療法が有効であろうステロイド抵抗性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するためのまたはステロイド療法から除外されることが有効であろう、ステロイド応答性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するためのまたは免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む代替療法にかけられることが有効であろうステロイド抵抗性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP1、およびTXKのいずれか1つの使用を開示する。
【0044】
上記において、試薬は、好ましくは、上述の遺伝子に特異的なプライマーペアである。
より好ましくは、試薬は、上述の遺伝子の特異的な領域に相補的であり、上述の遺伝子とハイブリダイズまたはアニールすることができるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0045】
本発明のさらなる態様は、参照によって本明細書によって組み込まれる添付の請求項において記載される。
【0046】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の説明、実施例、および特許請求の範囲の中でさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】リアルタイムPCRによって定量した、免疫調節オリゴヌクレオチドIDX0150のみ、デキサメタゾン(Dex)のみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、末梢血単核細胞(PBMC)中でのCD163遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。PBMCは、10人(n=10)の健常者(HV)および7人の(n=7)ステロイド抵抗性喘息患者(SR)の血液試料から単離した。実施例1に記載するように、細胞を、基本培地中、または漸増濃度のIDX0150(25μMもしくは100μM)を含む基本培地中、漸増濃度(10−10M、10−8M、または10−6M)のDexの存在下または非存在下でインキュベートした。インキュベーション後、全RNAをPBMCから単離し、第1鎖cDNAの合成に使用した。PBMC cDNAを用いたリアルタイムPCR反応を、それぞれの試料/処理の組み合わせについては3連で、ハウスキーパー遺伝子(γ−アクチン)については2連で行った。ヒストグラムのそれぞれのバーは、実施例1に記載する基底発現レベル値によって標準化した、平均発現レベル値を示す。エラーバーは、様々な血液の提供者の中での発現レベルの値の偏差範囲を示す。
【0048】
【図2】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのTsp1遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【0049】
【図3】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのIL1−R2遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【0050】
【図4】リアルタイムPCRによって定量した、免疫調節オリゴヌクレオチドIDX0150のみ、デキサメタゾン(Dex)のみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、末梢血単核細胞(PBMC)中でのCD163遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。PBMCは、10人(n=10)の健常者(HV)および7人の(n=7)ステロイド抵抗性潰瘍性大腸炎患者(SR)の血液試料から単離した。実施例1に記載するように、細胞を、基本培地中、または漸増濃度のIDX0150(25μMまたは100μM)を含む基本培地中、漸増濃度(10−10M、10−8M、または10−6M)のDexの存在下または非存在下で、インキュベートした。インキュベーション後、全RNAをPBMCから単離し、first strand cDNAの合成に使用した。PBMC cDNAを用いたリアルタイムPCR反応を、それぞれの試料/処理の組み合わせについては3連で、そしてハウスキーパー遺伝子(γ−アクチン)については2連で行った。ヒストグラムのそれぞれのバーは、実施例1に記載する基底発現レベル値によって標準化した平均発現レベルの値を示す。エラーバーは、様々な血液の提供者の中での発現レベルの値の偏差範囲を示す。
【0051】
【図5】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのTsp1遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図4および実施例1に記載するとおりとした。
【0052】
【図6】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのIL1−R2遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図4および実施例1に記載するとおりとした。
【0053】
【図7】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのTLR2遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【0054】
【図8】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのTLR4遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【0055】
【図9】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのTXK遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【0056】
【図10】リアルタイムPCRによって定量した、IDX0150のみ、Dexのみ、またはIDX0150とDexとの併用での48時間の刺激に応答した、PBMC中でのMKP1遺伝子の発現レベルの平均値を示す図である。実験条件とデータの取り扱いは、図1および実施例1に記載するとおりとした。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明が詳細に記載される前に、デバイスおよび方法は、変更されてもよいので、本発明は、記載されるデバイスの特定の構成部分または記載される方法のプロセスのステップに限定されないことが理解されたい。本明細書において使用される術語は、特定の実施形態のみを説明するための目的のためであり、限定するように意図されないこともまた理解されたい。
【0058】
明細書および添付される請求項において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」はまた、文脈が明確に指定する場合を除いて、複数の指示対象をも含むことに注目されなければならない。したがって、たとえば、「配列」への言及は、1つを超えるそのような配列およびその他同種のものを含む。
【0059】
本明細書および続く請求項において、以下の意味を有するように定義されるものとするたくさんの用語に対して言及が成される。
【0060】
用語「約」は、所与の値の+/−2%、適用可能な場合、数値の、好ましくは+/−5%、最も好ましくは+/−10%の偏差を示すために使用される。
【0061】
用語「応答性」は、所与の作用物質または医薬に対する、患者または患者から得られる細胞の応答を指す。用語「ステロイド応答性」または「ステロイド応答」は、ステロイドに曝露された場合の、免疫応答の変化を説明する。この変化は、多くの場合、インターフェロンおよびインターロイキンなどのようなある種のサイトカインの放出ならびに増殖などのような他の生理学的パラメーターを通して測定可能である。応答は、等しく、問題のステロイド治療によって誘発されるサイトカインに依存して、免疫系を刺激するおよび免疫系を抑圧するのに役立つものとすることができる。その症状がステロイド投与によって軽減される患者は、「ステロイド応答性」であると考えられる。対照的に、そのような疾患を有する患者および健常な人において典型的に有効であるステロイドの投与が無効である患者は、「ステロイド抵抗性」または「ステロイド難治性」患者と考えられ、これらはまた、本発明において、不十分にまたは不適当に応答する、つまり、症状のわずかな効果または改善しか示さない患者をも含む。2つの型のステロイド抵抗性患者、つまり獲得性ステロイド抵抗性(I型)および一次性ステロイド抵抗性(II型)が、説明されており、これらの両方が、本発明において含まれる。
【0062】
そのような状態を評価するために使用することができる、一般に承認されている方法が存在せずまたは実際にエンドポイントが存在しないので、患者が、ステロイド難治性であるかどうかの決定は、困難である。さらに、ステロイド非応答性は、動的な基準であり、非応答性の程度は、変動する。臨床的観点から、ステロイド非応答性の診断は、多くの場合、医師の判断およびステロイドを用いる治療歴に基づく。たとえば、IBDにおいて、症状の軽減を達成することなく、一定の期間、ステロイドの用量が増加すると、その個人がステロイド非応答性の状態である可能性があることを示す可能性がある。喘息において、患者は、比較的高いステロイド用量の2週間のコースを施され得る、その後、患者は、肺機能検査を受ける。一定の閾値未満の成績は、ステロイド難治性状態を示唆する可能性がある。以下の参考文献は、医師が、どのように基礎疾患の治療を評価し、ステロイド難治性患者を同定するかについて開示する例を成す(Reinischら、2002;Munkholmら、1994;Leungら、2002;Gisbertら、2008)。
【0063】
副腎皮質ホルモンまたはコルチコステロイドは、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、および性ホルモンとして分類されるステロイドホルモンである。臨床的に有用な「ステロイド」の多くは、特異的なサイトゾル受容体に結合することによってそれらの効果を発揮する、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ならびにプレドニゾンおよびデキサメタゾンなどのようなそれらの医薬誘導体を含むグルココルチコイドまたはグルココルチコステロイドである。グルココルチコイド受容体に対する親和性が増加したおよび/または血漿クリアランスが延ばされた、より高いグルココルチコイド活性を有する合成グルココルチコイドが開発されてきた。グルココルチコイドは、主として、「抗炎症」および「免疫抑制」薬として使用される。用語「抗炎症」は、炎症の症状を低下させる物質または治療の特性を指す。「免疫抑制薬」は、細胞性免疫を抑制する作用物質を指す。
【0064】
本発明の目的のために、用語「オリゴヌクレオチド」は、複数の連結された個々のヌクレオシド単位から形成されるポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAまたはcDNAを含む、既存の核酸供給源から得ることができるが、好ましくは合成法によって生産される。ヌクレオシド残基は、多数の知られているヌクレオシド間連結のいずれかによって互いに結合することができる。そのようなヌクレオシド間連結は、天然ヌクレオシド間ホスホジエステル結合またはこれらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダート、シロキサン、カルボネート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミダート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオシド間連結などのような実際に修飾されたヌクレオシド間連結を限定を伴うことなく含む。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、1つまたは複数の立体特異的ヌクレオシド間連結(たとえば(Rp)−またはSp)−ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル連結)を有するポリヌクレオシドをも包含する。本明細書において使用されるように、用語「オリゴヌクレオチド」および「ジヌクレオチド」は、明らかに、連結がリン酸基を含むか含まないかにかかわらず、任意のそのようなヌクレオシド間連結を有する、ポリヌクレオシドおよびジヌクレオシドを含むように意図される。
【0065】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、タンパク質群、親油基、挿入剤、ジアミン、葉酸、コレステロール、およびアダマンタンを限定を伴うことなく含むさらなる置換基を有するポリヌクレオシドをも包含する。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを有する骨格部を有するオリゴヌクレオチドを限定を伴うことなく含む、任意の他の核酸塩基を含有するポリマーをも包含する。
【0066】
オリゴヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、またはその混合物を含有する。本明細書において使用されるように、用語「修飾ヌクレオシド」は、修飾複素環式塩基、修飾糖部分、またはその組み合わせを含むヌクレオシドである。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシドは、本明細書において記載されるように、非天然ピリミジンまたはプリンヌクレオシドである。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシドは、2’−置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシド、または2’−デオキシ−2’−置換−アラビノシドである。
【0067】
本発明の方法において使用されるオリゴヌクレオチドは、当業者に知られており、上記に規定される方法に従って修飾することができる。たとえば、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格修飾を有することができ、リン酸骨格修飾は、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。修飾は、オリゴヌクレオチドの全長に沿った任意の位置の1つまたは複数のヌクレオチドで生じ得る。一実施形態において、核酸骨格は、5’ヌクレオチド間連結上にリン酸骨格修飾を含む。代替として、核酸骨格は、3’ヌクレオチド間連結上にリン酸骨格修飾を含む。
【0068】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、ハイブリッドおよびキメラオリゴヌクレオチドをも含む。「キメラオリゴヌクレオチド」は、その配列構造内に1種を超えるヌクレオシド間連結を有するオリゴヌクレオチドである。そのようなキメラオリゴヌクレオチドの好ましい一例は、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、またはホスホロジチオエート領域およびアルキルホスホネートまたはアルキルホスホノチオエート連結などのような非イオン性連結を含むキメラオリゴヌクレオチドである(Pedersonら 米国特許第5,635,377号および第5,366,878号)。
【0069】
「ハイブリッドオリゴヌクレオチド」は、1種を超えるヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドである。そのようなハイブリッドオリゴヌクレオチドの好ましい一例は、リボヌクレオチドまたは2’−置換リボヌクレオチド領域およびデオキシリボヌクレオチド領域を含む(MetelevおよびAgrawal、米国特許第5,652,355号、第6,346,614号、および第6,143,881号)。
【0070】
本発明の目的のために、用語「免疫調節オリゴヌクレオチド」は、哺乳動物などのような脊椎動物に投与された場合に、生物体において免疫系を刺激することまたは免疫系を抑圧することまたはその両方によって免疫応答を誘発する、上記に記載されるようなオリゴヌクレオチドを指す。本明細書において使用されるように、用語「哺乳動物」は、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ウサギ、非ヒト霊長動物、およびヒトを限定を伴うことなく含む。
【0071】
好ましくは、「免疫調節オリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つの天然に存在するホスホジエステルまたは修飾ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートヌクレオシド間連結を含むが、好ましい連結または実際の骨格修飾は、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、N−メチルヒドロキシルアミン、カルボネート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホロアミダート、とりわけ第一級アミノホスホロアミダート、N3ホスホロアミダートおよびN5ホスホロアミダート、ならびに立体特異的連結(たとえば(Rp)−または(Sp)−ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル連結)を限定を伴うことなく含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、「免疫調節オリゴヌクレオチド」は、式5’−Pyr−Pur−3’の免疫賦活性ジヌクレオチドを含み、Pyrは、天然または合成ピリミジンヌクレオシドであり、Purは、天然または合成プリンヌクレオシドである。いくつかの好ましい実施形態において、免疫調節オリゴヌクレオチドは、式5’−Pur−Pur−3’の免疫賦活性ジヌクレオチドを含み、Purは、合成プリンヌクレオシドであり、Purは、天然または合成プリンヌクレオシドである。様々な所で、ジヌクレオチドは、RpG、CpG、またはYZとして表現され、この場合には、それぞれ、R、C、またはYは、合成プリンを表わす。特に好ましい合成プリンは、2−オキソ−7−デアザ−B−メチルプリンである。この合成プリンが、ジヌクレオチドのPurの位置にある場合、免疫賦活性効果の種特異性(配列依存性)は、克服され、サイトカインプロファイルは、改善される。本明細書において使用されるように、用語「ピリミジンヌクレオシド」は、ヌクレオシドの塩基成分が単環式核酸塩基であるヌクレオシドを指す。同様に、用語「プリンヌクレオシド」は、ヌクレオシドの塩基成分が二環式核酸塩基であるヌクレオシドを指す。本発明の目的のために、「合成」ピリミジンまたはプリンヌクレオシドは、天然に存在しないピリミジンもしくはプリン塩基、天然に存在しない糖部分、またはその組み合わせを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、ヌクレオシドの糖部分は、天然に存在しない糖部分とすることができる。本発明の目的のために、「天然に存在する糖部分」は、核酸の一部として天然に存在する糖部分、たとえばリボースおよび2’−デオキシリボースであり、「天然に存在しない糖部分」は、核酸の一部として天然に存在しないが、オリゴヌクレオチドの骨格中に使用することができる任意の糖、たとえば、これに限定されないが、ヘキソースである。アラビノースおよびアラビノース誘導体は、好ましい糖部分の例である。
【0074】
本発明に記載の好ましい「免疫賦活性部分」は、2’−O−メチルリボース、2’−O−メトキシエチル−リボース、2’−O−プロパルギルリボース、および2’−デオキシ−2’−フルオロリボースを限定を伴うことなく含む2’−置換ペントース糖;3’−O−メチルリボースを限定を伴うことなく含む3’−置換ペントース糖;1’,2’−ジデオキシリボース;アラビノース;1’−メチルアラビノース、3’−ヒドロキシメチルアラビノース、4’−ヒドロキシメチルアラビノース、3’−ヒドロキシアラビノース、および2’−置換アラビノース糖を限定を伴うことなく含む置換アラビノース糖;1,5−アンヒドロヘキシトールを限定を伴うことなく含むヘキソース糖;ならびにアルファ−アノマーを限定を伴うことなく含む、糖修飾を有するヌクレオシドをさらに含む。
【0075】
他の実施形態において、本発明に記載の好ましい「免疫賦活性部分」は、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基(PHONA)を有するペプチド核酸、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを限定を伴うことなく含む、約2オングストローム〜約200オングストロームの長さを有する骨格リンカー部を有するオリゴヌクレオチドを含む、他の炭水化物骨格修飾および置換を有するオリゴヌクレオチドをさらに含む。アルキルリンカーは、分岐または非分岐、置換または非置換、およびキラル的に純粋またはラセミ混合物であってもよい。最も好ましくは、そのようなアルキルリンカーは、約2〜約18の炭素原子を有する。いくつかの好ましい実施形態において、そのようなアルキルリンカーは、約3〜約9の炭素原子を有する。いくつかのアルキルリンカーは、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、尿素、およびチオエーテルから成る群から選択される1つまたは複数の官能基を含む。いくつかの官能性を持たせたアルキルリンカーは、式−O−(CH2−CH2−O−)(n=1〜9)のポリ(エチレングリコール)リンカーである。他のいくつかの官能性を持たせたアルキルリンカーは、ペプチドまたはアミノ酸である。
【0076】
さらなる実施形態において、本発明に記載の好ましい「免疫賦活性部分」は、L−デオキシリボヌクレオシドおよびa−デオキシリボヌクレオシドを限定を伴うことなく含むDNAアイソフォームをさらに含む。本発明に記載の好ましい免疫賦活性部分は、3’修飾を組み込んでおり、2’−5’、2’−2’、3’−3’、および5’−5’連結を限定を伴うことなく含む非天然ヌクレオシド間連結位を有するヌクレオシドをさらに含む。
【0077】
本発明に記載の「免疫調節オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオシド間連結を介して連結される少なくとも5つのヌクレオシドまたは官能性を持たせた核酸塩基または非ヌクレオチドリンカーを介しての糖を含む。本発明の目的のために、「非ヌクレオチドリンカー」は、共有結合または非共有結合によってオリゴヌクレオチドに連結することができる任意の部分である。
【0078】
非共有結合は、静電的相互作用、疎水的相互作用、スタッキング相互作用、および水素結合を含むが、これらに限定されない。用語「非ヌクレオチドリンカー」は、上記に記載されるように、ヌクレオシド間連結、たとえば、2つのヌクレオシドの3’ヒドロキシル基を直接つなぐホスホジエステル、ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート官能基を指すことを意味しない。本発明の目的のために、そのような直接の3’−3’連結(リンカーは伴わない)は、「ヌクレオチド連結」であると考えられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、限定を伴うことなく金粒子を含む金属である。いくつかの他の実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、可溶性または不溶性の生分解性ポリマービーズである。他の実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、オリゴヌクレオチドに対する結合を可能にする官能基を有する有機的部分である。そのような結合は、好ましくは、任意の安定した共有結合によるものである。いくつかの実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、ポリペプチド、抗体、脂質、抗原、アレルゲン、およびオリゴ糖を限定を伴うことなく含む生体分子である。他のいくつかの実施形態において、非ヌクレオチドリンカーは、小分子である。本発明の目的のために、小分子は、1,000Da未満の分子量を有する有機的部分である。
【0080】
いくつかの実施形態において、小分子は、脂肪族または芳香族炭化水素であり、どちらも、任意選択で、オリゴヌクレオチドをつなぐまたはそれに付加される直鎖状の鎖において、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、尿素、およびチオ尿素から成る群から選択される1つまたは複数の官能基を含むことができる。小分子は、環式または非環式とすることができる。小分子リンカーの例は、アミノ酸、炭水化物、シクロデキストリン、アダマンタン、コレステロール、ハプテン、および抗生物質を含むが、これらに限定されない。しかしながら、非ヌクレオチドリンカーを記載するために、用語「小分子」は、ヌクレオシドを含むように意図されない。
【0081】
いくつかの実施形態において、小分子リンカーは、式HO−(CH2)o−CH(OH)−(CH2)p−OHのグリセリンまたはグリセリン同族体であり、oおよびpは、独立して、1〜約6、1〜4、または1〜3の整数である。他のいくつかの実施形態において、小分子リンカーは、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのそのような誘導体は、式HO−(CH2)m−C(O)NH−CH2−CH(OH)−CH2−NHC(O)−m−OHを有し、mは、0〜約10、0〜6、2〜6、または2〜4の整数である。
【0082】
修飾または置換オリゴヌクレオチドは、多くの場合、たとえば細胞の取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、およびヌクレアーゼの存在下における安定性の増加などのような望ましい特性のために、本来の形態に対して好ましい。オリゴヌクレオチドは、好ましくは約8(8)および約40(40)の間、最も好ましくは約8(8)および約20(20)の間であるが、通常、2(2)を超える、典型的に10(10)を超える、100(100)まで、またはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される。厳密なサイズは、多くの要因に依存するであろう、これは、次には、オリゴヌクレオチドの最終の機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、またはその組み合わせを含む任意の方法において生成されてもよい。
【0083】
用語「CpG含有オリゴヌクレオチド」は、その全配列長内に少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチドを有し、好ましくは長さが8〜100核酸塩基であるオリゴヌクレオチドを包含するように使用される。
【0084】
潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む、腸の炎症性の状態に罹患しており、ステロイド療法に応答しない患者に、ステロイドと共に、CpGモチーフを含有する免疫調節オリゴヌクレオチドを提供した場合に、患者の急速で明白な改善およびステロイドの用量の低下を以前に実証した本発明者らは、選択される療法に対する患者の応答性を予測するために使用することができるマーカー遺伝子を有することが有利であろうということを認識した。本発明者らは、いくつかの選択マーカー遺伝子の発現レベルおよび所与の療法に対する応答の間の相関性を実証した。そのため、本発明は、療法の応答を予測するための、特に、炎症性の状態に罹患しているステロイド抵抗性患者のための有効な療法を選択するための、急速で容易なインビトロ方法に関する。問題の療法は、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む併用療法または他の療法と組み合わせられる免疫調節オリゴヌクレオチドを含む代替療法のいずれかである。
【0085】
本発明の第1の目的は、健常者のこれらの遺伝子の発現と比較した場合に、ステロイドの作用に対するステロイド抵抗性喘息患者の再感作のための潜在的なマーカー遺伝子およびステロイド治療に対する喘息患者の抵抗性のための潜在的なマーカーとして働くであろうステロイド応答性遺伝子を同定することであった。言いかえれば、本発明の目的は、容易で急速なインビトロ方法によって、IDX0150またはIDX0150化合物などのような非メチル化CpGモチーフを含有する免疫調節オリゴヌクレオチドが施された場合に、ステロイド感受性およびステロイド抵抗性喘息患者を区別するであろう遺伝子およびさらに、ステロイド抵抗性患者においてポジティブ応答の可能性があることを示す候補遺伝子を同定することであった。そのような患者は、いわゆる再感作療法に応答性であろう。
【0086】
選択マーカー遺伝子は、ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のための最良の療法を選択するのに有用であろう。
【0087】
本発明は、炎症性の症状を示すステロイド抵抗性患者のための療法を選択するためのインビトロ方法であって、細胞からの少なくとも1つの潜在的に有用なマーカー遺伝子の発現レベルを比較するステップを含み、細胞は、上述の患者および健常な人の試料から単離され、細胞は、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において培養されるインビトロ方法に関する。
【0088】
一実施形態において、本発明は、抗炎症治療に応答しない、または不十分にもしくは不適当に応答する、炎症性の状態に罹患しているステロイド難治性患者における「ステロイド効力」を決定するためのおよびこの「ステロイド効力」が、上述の患者に有効量で投与される、配列5’−Xm−CG−Yn−3’を有する免疫調節オリゴヌクレオチドの投与によって増強されるかどうかを予測するため方法であって、Xは、A、T、C、またはGであり、Yは、A、T、C、またはGであり、m=1〜100であり、n=1〜100であり、少なくとも1つのCGジヌクレオチドは、非メチル化である方法に関する。あるいは、免疫調節オリゴヌクレオチドは、配列5’−Xm−TTCGT−Yn−3を有していてもよく、Xは、A、T、C、またはGであり、Yは、A、T、C、またはGであり、m=1〜7であり、n=1〜7であり、少なくとも1つのCGジヌクレオチドは、非メチル化である。
【0089】
用語「炎症性の症状」または「炎症性の状態」は、本発明において同じことを意味するために使用され、感染症または刺激作用に対する免疫系の一次応答を指し、先天性免疫系と呼ばれてもよい。炎症は、疾患と戦うのを助けるが、長期において、それは、進行性の損傷をもたらす。免疫応答の性質および大きさは、免疫系が曝露された外来抗原のプロファイルによって大部分は決められる。このイベントは、体液性および細胞性免疫の発生に最終的に至る一連のイベントを推進する。炎症性疾患は、急性または慢性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、関節リウマチ、乾癬、および気腫などのようなものを含む。好ましい実施形態において、炎症性の状態は、喘息である。
【0090】
「マーカー遺伝子」の遺伝子発現は、組織もしくは細胞培養物の薬理学的作用物質の投与に応じて、細胞分化の進行に応じて、または環境条件における変化に応じて変化する。そのため、マーカー遺伝子の発現の定量は、特に医学的診断法において予測的な可能性を有する。
【0091】
用語「発現レベル」は、異なる実験または環境条件下での、メッセンジャーRNA(mRNA)への標的遺伝子の転写およびタンパク質への続く翻訳の強度を指す。遺伝子発現は、特定の遺伝子について存在するmRNAのコピーの数に対応する。生細胞において、遺伝子発現は、遺伝子の調節領域に結合する転写因子によってコントロールされる。遺伝子は、誘発性のものとすることができる、つまり、mRNAの量の増加をもたらすまたは恒常的に発現される、つまり、異なる状態下で一定の量のmRNAを有する。転写mRNAの質および量を分析するための方法は、いくつかの研究所のハンドブックにおいて(たとえばSambrookおよびRussell、2001において)記載されており、当業者によく知られている。これらの方法は、リボヌクレアーゼ保護、プライマー伸張、ノーザンブロッティング、ドットブロットハイブリダイゼーション、および従来のまたはリアルタイムPCRを含む。
【0092】
伝統的に、生産される特定のmRNAの量、したがって遺伝子の活性化ステータスは、ノーザンブロッティングによって測定されてきた。試料から単離される全RNAは、アガロースゲル電気泳動によって分離され、興味のある遺伝子に特異的な相補DNAプローブを用いてプローブされる。従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、分析されることになっている細胞または組織から単離される全RNAは、第1の鎖cDNAに逆転写され(RT−PCR)、次いで、これは、標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて二本鎖アンプリコンを増幅するために鋳型として使用される。両方の技術において、検出は、蛍光染料または放射性同位体などのような検出可能な標識に基づく。さらに、DNAチップまたはマイクロアレイとして知られている最近開発された技術は、相補的な標的特異的プライマーへの標的DNAのハイブリダイゼーション、非結合DNAの洗浄、および結合標的DNAの定量に基づく。ハイブリダイゼーション反応において使用されるプローブおよびプライマーは、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列またはマーカー遺伝子に対応する、翻訳タンパク質のアミノ酸配列に基づいて設計されてもよい。発現されるRNAの量の変化を決定するための好都合な定量的ハイブリダイゼーション法は、国際特許出願WO2002/055734において記載される。
【0093】
好ましくは、「マーカー遺伝子発現」は、定量的リアルタイムPCRとも呼ばれるリアルタイムPCRを用いて定量されてもよい。方法は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般的なパターンに従うが、標的DNAの増幅領域は、二本鎖DNAにインターカレートする、SYBRグリーンなどのような蛍光染料または相補DNAとハイブリダイズした場合に蛍光を発する修飾DNAオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって、増幅の各ラウンドの後に定量される。しばしば、リアルタイムPCRは、低含量mRNAを定量するために逆転写と組み合わせられる。データは、標準曲線に基づいて、いくつかの試料の間の相対的な遺伝子発現またはmRNAコピー数を計算するためにApplied Biosystems 7500または7500 Fast Real Time PCR Systemsなどのようなコンピューターソフトウェアによって分析することができる。相対的な定量化(RQ)は、突然変異対立遺伝子と野生型の発現レベルまたは異なる組織における遺伝子の発現レベルを比較するために一般に使用される。RQは、基礎的なまたは標準物質の試料(試料は、相対的な結果の基礎として使用される)における同じ配列と比較した、検査試料における標的遺伝子の発現における変化を決定する。標準物質の試料は、未処理コントロールまたは時間的経過の研究における0時間の試料とすることができる。内在性または内因性コントロールを使用することによって、各反応に加えられるcDNAの量の差異についてcDNA標的の定量化を標準化することは可能である。典型的には、β−アクチン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、およびリボソームRNA(rRNA)などのようなハウスキーピング遺伝子は、それらの発現レベルが比較的安定しているので、内在性コントロールとして使用される。試料および内在性コントロール当たりの反復反応は、統計的有意性を確認するために必要とされる。
【0094】
ステロイド抵抗性患者および弱いステロイド応答を有する患者からの試料における発現レベルは、上記に記載されるようなマーカー遺伝子の発現の強度を決定することによってまたはマーカー遺伝子から翻訳されるタンパク質、つまり、たとえば、マーカータンパク質に結合する抗体を利用するマーカータンパク質を分析することによって比較されてもよい。結合は、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫沈降、およびELISAなどのような技術によって検出することができる。さらに、所与の治療に対する応答は、遺伝子産物が、機能的タンパク質、たとえば酵素である場合には、マーカータンパク質の活性を測定することによって定量することができる。あるいは、マーカータンパク質の異なる形態に翻訳されることが示され、健常な人および炎症症状を示す患者の細胞において優勢が異なる、マーカー遺伝子の異なるmRNAスプライシング変異体の比較分析は、ステロイド療法の効果を予測するために使用されてもよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、ステロイド抵抗性患者のための療法を選択するための方法において有用なマーカー遺伝子は、炎症性の状態におけるステロイド応答と関与する遺伝子の中で同定されてもよい。選択される遺伝子は、好ましくは、患者および健常な人の試料から単離される細胞において著しく異なる発現レベルを呈する遺伝子である。
【0096】
潜在的に有用なマーカー遺伝子の選択は、特異的な炎症性の状態におけるステロイド応答に関することで知られている遺伝子についてのデータベースおよび文献検索に基づいて実行されてもよい。あるいは、そのようなマーカー遺伝子は、多数の遺伝子の発現レベルが、リアルタイムPCRなどのような方法またはDNAチップもしくはDNAマイクロアレイを使用する方法によって決定されるスクリーニングアプローチによってまたはステロイド抵抗性患者および健常な人から調製されるcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって規定されてもよい。潜在的なマーカー遺伝子の数は、発現レベルを決定するために入手可能な情報および/または選ばれる方法に依存して、変動してもよい。
【0097】
細胞生物学における多くの実験は、インビボ検査とは対照的に、試験管においてなどのようなコントロールされた環境において、生物体または細胞の外部で、つまり「インビトロ」において行われ、これらは、本発明の方法の結果を確認するためにのみ使用される。「インビトロ」条件は、作用のメカニズムを推定するのに適している。インビトロにおける決定は、選択される治療薬の存在下または非存在下において、患者および健常な人から単離され、培養される細胞を使用して得られる発現レベルまたは相対的発現プロファイルを決定することによって実行される。これらのインビトロ方法によって発見される効果は、臨床検査において最終的な結論を得、結果を確認する前に、細胞だけではなく、動物実験もまた使用して、生きている生物体の内部で検査されてもよい。
【0098】
所与の治療に対する応答は、ステロイド抵抗性患者および健常な人からの生検試料または血液試料などのような生物学的試料から単離される細胞を培養することによって決定されてもよい。本発明の好ましい末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配遠心分離によってヘパリン添加血試料から単離されてもよい。上述の細胞は、細胞を生存させるためにならびにそれらの成長および分化のために必要とされる塩、ビタミン、ホルモン、ならびに微量要素を含有する適している緩衝培養培地において培養される。PBMCは、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において48℃でRPMI培地において培養され、潜在的なマーカー遺伝子の発現レベルは、上記に記載される方法を使用して決定される。最後に、上記に記載されるように処理された、上述の患者および健常な人の細胞における特定のマーカー遺伝子の発現レベルは、統計的に比較される。
【0099】
用語「著しい類似性」および「著しい差異」は、統計的方法を使用して、ステロイド抵抗性患者および健常な人から単離される培養細胞において測定される発現レベルが、それらが、検査される治療薬の存在下または非存在下において培養され、成長させられた場合に、ほぼ同一であり、または明確に異なることを意味する。これらの著しい類似性または差異は、患者の応答を予測するためにおよび適切な療法を選択するために使用されてもよい。
【0100】
本発明の一実施形態において、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの「著しい類似性」は、選択マーカー遺伝子が、ステロイド応答性についての潜在的なマーカーであることを示す。
【0101】
本発明の他の実施形態において、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの著しい類似性は、選択マーカー遺伝子が、ステロイドの作用に対する再感作についての潜在的なマーカーであることを示す。
【0102】
用語「再感作」は、所与の刺激性の薬剤に対して感受性または敏感であるはずであるが、その特性を失ってしまった細胞が、感作療法を通して、上述の刺激性の薬剤に対して再び感受性または敏感になる可能性があるということを意味する。
【0103】
語句「ステロイド効力を増強する」または「ステロイド増強効果」は、免疫調節オリゴヌクレオチドを用いる同時のまたは連続的な治療、好ましくは前治療が、炎症を管理し、または症状をより速く改善するのに必要なステロイド用量を低下させることが示される臨床像として明白な、ステロイドの使用を控える効果を包含するように本明細書で使用される。語句「ステロイド効力を増強する」はまた、炎症を管理し、または免疫調節投与なしよりも患者の症状を速く軽減するのに必要なステロイド用量を低下させることが示される、同時のもしくは実質的に同時のまたは連続的なもしくは実質的に連続的な、免疫調節オリゴヌクレオチドおよびステロイドの相乗効果的な使用を包含するようにも意図される。
【0104】
本発明のさらなる実施形態において、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞における少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの「著しい差異」は、選択マーカー遺伝子が、免疫調節オリゴヌクレオチドの追加によって増強されない可能性のある、ステロイド抵抗性についてのマーカー遺伝子であることを示す。
【0105】
用語「著しい」または「著しく」の意味は、当業者によって理解され、これらに限定されないが、スチューデントのt検定、ダネットの検定、またはボンフェローニ検定などのような統計的検定を使用して決定される。
【0106】
本発明のインビトロアッセイを開発するための候補遺伝子は、ヒトPBMCステロイド応答に関することで知られている遺伝子についてのデータベースおよび文献検索に基づいて選択された。そのような遺伝子は、いくつかの研究グループによって記載されている(Galonら、2002、Vermeerら、2004、Shahidi、1999、Mariette、2003、Wuら、2004)。本発明者らは、7つの遺伝子を選んだ。これらの遺伝子は、インターロイキン1シグナル伝達経路の1つのメンバー(IL1−R2)、マクロファージスカベンジャー受容体ファミリーの1つのメンバー(CD163)、マトリックス糖タンパク質トロンボスポンジン−1(Tsp1)、Toll様受容体ファミリーの2つのメンバー(TLR2およびTLR4)、ならびに2つの酵素(TXKおよびMPK−1)を含む。抗炎症IL1−R2受容体(Galonら、2002;Mariette、2003)は、たとえばサイトカインIL1αおよびIL1βならびにIL1受容体アンタゴニストを認識する、インターロイキン1(IL1)シグナル伝達経路のメンバーである。グルココルチコイドは、IL1−R2遺伝子発現をアップレギュレートすることが示された(Re 1994;Galonら、2002)。
【0107】
M130(Galonら、2002)とも呼ばれるCD163は、血液単核細胞およびほとんどの組織マクロファージにおいて発現されるマクロファージスカベンジャー受容体ファミリーのメンバーである。炎症におけるCD163の機能は、それらの機能特性において異なる可能性のある、異なるmRNAスプライシング変異体の存在に依存する可能性がある(Ritterら、1999)。さらに、転写開始部位の1.4kb上流のL1転位因子は、CD163プロモーター活性に影響を及ぼす可能性がある。CD163は、先天性免疫応答に関与することが知られている。
【0108】
マトリックス糖タンパク質トロンボスポンジン−1、Tsp1(Galonら、2002)は、構造上、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に関し、それらの機能を調節するタンパク質である(Chen、2000)。グルココルチコイドは、Tsp1発現をアップレギュレートすることが示された。
【0109】
Toll様受容体(TLR)は、一旦、微生物が、皮膚または腸管粘膜などのような物理的な障壁を破ったら、微生物を認識し、免疫細胞応答を活性化するI型膜貫通型タンパク質である(Galonら、2002)。TLRは、病原体によって広く共有されるが、宿主分子から区別可能な分子を認識する。TLR2は、たとえばリポタンパク質、グラム陽性ペプチドグリカン、およびウイルス糖タンパク質を認識する。TLR4は、リポ多糖に対する受容体の重要な成分である(Beutlerら、2006)。
【0110】
休止リンパ球キナーゼ(resting lymphocyte kinase)(RLK)とも呼ばれるタンパク質チロシンキナーゼ(TXK)の発現は、主としてT細胞において検出され、Th1細胞特異的転写因子として作用する(Takeba 2002;Wuら、2004)、またいくつかの骨髄細胞系において検出される。デキサメタゾン処理によるグルココルチコイド受容体の活性化は、乳癌細胞系において、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼホスファターゼ−1(MKP−1)の発現を誘発することが示された(Wuら、2004)。
【0111】
本発明の一実施形態において、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において培養された、患者および健常なボランティアからの細胞における発現レベルの著しい類似性または差異を呈する選択マーカー遺伝子は、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、TXKマーカー遺伝子である。
【0112】
本発明の他の実施形態において、ステロイドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞における少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルの増強は、患者が、ステロイド療法が有効であろうということを示す。好ましくは、マーカー遺伝子は、CD163、Tsp1、およびIL1−R2遺伝子である。
【0113】
本発明の他の実施形態において、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞における少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルの増強は、患者が、併用療法が有効であろうということを示す。好ましくは、マーカー遺伝子は、CD163、Tsp1、およびIL1−R2遺伝子である。
【0114】
本明細書において、用語「併用療法」は、続くまたは同時の剤形または治療レジメンにおいて、有効量のステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物をステロイド抵抗性患者に提供することを意味する。治療薬の一方は、他方の前もしくは後に提供されてもよく、または両方とも、単一用量もしくは混合用量として混合して提供されてもよい。有効量は、約0.01mg〜約2mg/体重kgの間で変動してもよく、治療する医師によって決定することができる。併用療法という用語は、好ましくは、ステロイドありまたはなしの、代替治療薬ありのまたはなしの免疫調節オリゴヌクレオチドおよび1つまたは複数の薬学的に許容可能なアジュバントまたは成分を含む組成物として提供される。療法は、疾患および患者の状態に依存して、治療のコースを変えることを含んでいてもよく、一時的に間隔を置いた治療レジメンまたは様式を含んでいてもよく、投薬の間隔は速められ、または間隔は数か月の間隔まで延ばされる。
【0115】
本発明のさらなる実施形態において、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される、健常な人から単離される、対応する試料と比較した、ステロイド抵抗性患者の試料からの単離細胞において測定される、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルの著しい差異は、ステロイド抵抗性患者が、コルチコステロイド療法から除外されることおよび免疫調節オリゴヌクレオチドを含む代替療法にかけられることが有効であろうということを示す。本発明における代替療法は、単独療法としてのまたはたとえばモノクローナル抗体、化学療法、もしくは放射線療法と組み合わせた免疫調節オリゴヌクレオチド再感作療法を含む。好ましくは、マーカー遺伝子は、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKである。
【0116】
血液細胞は、本発明にとって好ましい細胞である。より好ましくは、細胞は、末梢血単核細胞(PMBC)である。
【0117】
本発明の好ましい一実施形態において、炎症性の症状は、急性または慢性喘息、気腫、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、および乾癬を含む。
【0118】
本発明の一実施形態において、療法は、免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む併用療法または代替療法である。好ましくは、療法は、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチド療法である。より好ましくは、免疫調節オリゴヌクレオチドは、DNAベースの免疫調節配列IDX0150である。
【0119】
本発明の一実施形態において、ステロイドは、コルチコステロイドである。好ましくは、コルチコステロイドは、デキサメタゾン、プレドニゾロン、またはその誘導体もしくは混合物である。
【0120】
本発明の一実施形態において、上述のマーカー遺伝子の発現レベルは、遺伝子特異的プライマーペアを使用する上述の遺伝子の核酸増幅および増幅結果の定量によって決定される。好ましくは、核酸増幅は、リアルタイムPCRおよび配列番号1〜7から選ばれる遺伝子特異的プライマーペアの使用によって実行される。
【0121】
用語「遺伝子特異的プライマーペア」は、PCR増幅を通して、マーカー遺伝子の規定領域が生産されるように、興味のあるマーカー遺伝子をコードするDNAの反対の鎖にハイブリダイズまたはアニールするように設計される。「プライマーペア」は、したがって、センスおよびアンチセンス配列とも呼ばれる二本鎖DNA分子上のそれぞれの配向に関して、一方は、フォワードという名称を有し、他方は、リバースという名称を有する2つのプライマーを指し、本発明において記載されるPCR増幅条件下で、フォワードプライマーは、センス配列にアニールして、その増幅をプライムし、リバースプライマーは、アンチセンス配列にアニールして、その増幅をプライムする。プライマーは、反応における他のプライマーと最小限の相補性を有すること(プライマー二量体の形成を最小限にするため)および増幅方法、好ましくはPCRに適切な、反応温度の範囲を有するTm値を有することに基づいて増幅反応における使用のために選択することができる。さらに、プライマーは、結果として生じるDNA増幅産物が、50〜1000塩基対、好ましくは長さが50〜300塩基対、最も好ましくは長さが約150塩基対のサイズの範囲となるように、RNA鋳型の特異的な領域とアニールするように選択することができる。
【0122】
たとえば、本発明のリアルタイムPCRにおいて、特異的なプライマーペアは、フォワードプライマーとして配列番号1のオリゴヌクレオチドおよびリバースプライマーとして配列番号2のオリゴヌクレオチドから成ってもよい。
【0123】
典型的に長さが10〜100ヌクレオチド、好ましくは10〜60ヌクレオチドのプライマーは、適切な条件下で、つまり、ヌクレオシド三リン酸、ポリメリゼーション作用物質、適している温度、pH、および緩衝液の存在下において、標的核酸にアニールし、核酸合成の開始のポイントとして働くことができる、天然に存在する、または合成的に生産されるオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドプライマーを設計するためのならびにPCRおよび増幅DNA産物の検出を実行するための原理は、当技術分野においてよく知られている。
【0124】
本発明はまた、炎症性の症状を示すステロイド抵抗性患者のための療法を選択するための検査キットであって、上述の検査キットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルのインビトロ分析を可能にするための、特異的なプライマーペアおよび使用のための説明書を含む検査キットにも関する。
【0125】
好ましくは、上述の特異的なプライマーペアは、配列番号1〜14の群またはCD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKマーカー遺伝子に特異的である機能的に等価なプライマーペアから選択される。好ましい特異的なプライマーペアは、配列番号1〜6の群またはCD163、Tsp1、およびIL1−R2マーカー遺伝子に特異的な、機能的に等価なプライマーペアから選択される。特に好ましい特異的なプライマーペアは、配列番号1および配列番号2またはCD163遺伝子に特異的な、機能的に等価なプライマーペアである。
【0126】
用語「機能的に等価である」は、挙げられるプライマーのいずれかである必要はないが、マーカー遺伝子の特異的な鎖に相補的であり、ハイブリダイゼーションまたは増幅反応を可能にする配列を有する、他のプライマーを意味する。
【0127】
本発明の一実施形態によれば、キットは、細胞を培養するための手段をさらに含む。好ましくは、キットは、細胞を感作するための作用物質を含む。そのような作用物質は、ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物であってもよい。
【0128】
本発明の他の実施形態において、キットは、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイを実行するための手段をさらに含む。
【0129】
本発明はまた、ステロイド抵抗性患者のステロイド応答性を決定するための、先に記載されるような方法の使用に関する。
【0130】
本発明はまた、免疫調節オリゴヌクレオチド療法が有効であろうステロイド抵抗性患者を同定するための、先に記載されるような方法の使用に関する。
【0131】
本発明は、さらに、免疫調節化合物が、ステロイド抵抗性患者のステロイド応答性を増強するかどうかをスクリーニングするための、先に記載されるような方法の使用に関する。
【0132】
本発明は、さらに、コルチコステロイド療法が有効であろうステロイド患者のインビトロ同定のための試薬の調製のための、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXK遺伝子の使用に関する。
【0133】
本発明は、さらに、ステロイド療法および免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む併用療法が有効であろうステロイド患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXK遺伝子の使用に関する。
【0134】
本発明はまた、ステロイド療法から除外されることが有効であろうステロイド患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、TLR2、TLR4、MPK−1、およびTXK遺伝子の使用にも関する。
【0135】
本発明は、さらに、免疫調節オリゴヌクレオチドの投与を含む代替療法にかけられることが有効であろうステロイド患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、TLR2、TLR4、MPK−1、およびTXK遺伝子の使用に関する。
【0136】
本発明はまた、ステロイド療法または併用療法が有効であろうステロイド患者またはステロイド療法から除外されることが有効であろう患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXK遺伝子の使用であって、試薬は、上述の遺伝子に特異的なプライマーペアである使用にも関する。
【0137】
本発明はまた、ステロイド療法または併用療法が有効であろうステロイド患者またはステロイド療法から除外されることが有効であろう患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXK遺伝子の使用であって、試薬は、上述の遺伝子の特異的な領域に相補的であり、上述の遺伝子とハイブリダイズまたはアニールすることができるオリゴヌクレオチドプローブである使用にも関する。
【0138】
本発明の実施形態の利点は、質的におよび量的にの両方において、ステロイド抵抗性を客観的に評価することが今や可能であろうということである。この患者グループを同定するだけではなく、そのサブグループ、たとえば、再感作に応答しそうであるが、低応答者である、または繰り返しの治療を必要とする患者を区別することもまた可能になる。
【0139】
本発明は、個々の患者の状態を正確に決定することができるという点でおよび患者の応答を予測することができ、最も適している療法を選ぶことができるという点で、より個別化された療法へのステップとなる。さらなる利点は、説明、実施例、および請求項の検討に際して当業者に明らかになるであろう。
【0140】
以下の実施例は、最初に、研究において使用される治療的化合物および細胞を含む試験材料ならびに選択される遺伝子の発現プロファイルを研究するための条件および発現レベルを定量するための方法を示す。以下の実施例は、再感作または所与の療法に対する抵抗性を示すことができる遺伝子を決定するための結果の評価およびマーカー遺伝子の選択を提示する。
【0141】
後半の実施例は、喘息患者からの他の細胞型に関係する、または関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、およびクローン病などのような他の炎症疾患を有する患者の細胞からの他の潜在的なマーカー遺伝子のスクリーニングならびにこれらの疾患におけるステロイド応答性を予測し、コルチコステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物に対する細胞の応答を決定するのに有用なマーカー遺伝子の選択のための実施例である。本発明のインビトロ方法およびインビボにおいて得られる結果の間の相関性は、優先期間の間に実行されることが予定されている前臨床試験においておよびおそらく臨床試験においても確認されるであろう。
【実施例1】
【0142】
材料および方法
被験物質
本発明においては、CpGモチーフを含むDNAベースの免疫調節オリゴヌクレオチドIDX0150(IDX0150;Kappaproct(登録商標),InDex Pharmaceuticals AB,Stockholm,Swedenとしても知られている)を、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)中での定義された遺伝子の刺激を試験するために使用した。凍結乾燥されたIDX0150を秤量し、室温で1×PBS pH7.4(Gibco)中に溶解させた。ストック濃度は、UV分光測定(SmartSpec(商標)3000,BIORAD)を用いて95%の精度になるように調整した。IDX0150ストック溶液は−20℃で保存した。刺激実験のために、ストック溶液の一部を、低濃度のストック溶液が1種類と高濃度のストック溶液が1種類(それぞれ、25μMおよび100μMの最終濃度)とが得られるようにさらに希釈した。濃度は、上記に記載したように分光光度計を使用して光学密度(OD)を測定することにより、同様に決定した。
【0143】
実験で使用したコルチコステロイドデキサメタゾン(Dex)は、粉末としてSigma(Cat.No.D−8893)から購入し、20mg/mlのストック濃度になるように、重炭酸塩緩衝系とアミノ酸およびビタミンの量の変化とを利用するRoswell Park Memorial Institute(RPMI)で最初に開発された培地であるRPMI培地(Gibco/Sigma)中に溶解させた。デキサメタゾンストック溶液は4℃で保存した。
【0144】
本発明のインビトロでのRT−PCRに基づくアッセイの開発のために、7個の候補遺伝子を選択した(表1)。これらの遺伝子の中には、IL1−R2、マクロファージスカベンジャー受容体ファミリーの1つのメンバー(CD163)、マトリックス糖タンパク質トロンボスポンジン−1、インターロイキン1シグナル伝達経路の2つのメンバー(TLR2とTLR4)、および2種類の酵素(MKP−1とTXK)が含まれる。
【0145】
【表1】

【0146】
候補遺伝子に特異的なPCRプライマーオリゴヌクレオチドは、7500 System Applied Biosystems software Primer Express(v.3)を使用して設計した。プライマーオリゴヌクレオチドは、MWG Biotech(Edersberg,Germany)に特注した。プライマーを、室温で滅菌脱イオン水(Gibco)中に溶解させた。すべてのプライマーオリゴヌクレオチドを−20℃で保存した。使用したPCRプライマーオリゴヌクレオチドの配列を表2に列挙する。
【0147】
【表2】

【0148】
生物学的系
細胞の調製
末梢血単核細胞(PMBC)を、7人のステロイド抵抗性喘息患者または潰瘍性大腸炎患者、および10人の健常者の血液試料から、Ficoll−Paque Plus(Pharmacia Biotech)を使用した密度勾配遠心分離法によって単離し、緩衝生理食塩溶液(PBS)中で3回洗浄し、15%の熱不活化ウシ胎児血清(FCS)(Gibco,Life Technologies)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Life Technologies)、2mMのL−グルタミン(Sigma)、ゲンタマイシン25ug/ml(Sigma)、および5mMのHepes(Gibco,Life Technologies)を含む完全RPMI 1640(Sigma/Gibco)中に再懸濁した。細胞を、0.4%トリパンブルー溶液(Sigma Aldrich)を使用して計数した。平均すると、PBMCの収量は、提供者の試料あたり細胞60〜120×106個の範囲であった。
【0149】
技法
インビトロでのPBMCの刺激
上記に記載したように調製したPBMCを、5%のFBSを含むRPMIc(Gibco,Life Technologies)中に再懸濁し、96ウェル平底細胞培養プレート(Falcon)に、1ウェルあたり細胞0.5×106個の細胞密度で播種した。プレーティングの直後に、細胞を、コルチコステロイドDex(10−10M、10−8M、または10−6M)の存在下または非存在下で、IDX0150(25μMまたは100μM)で刺激した。処理の間、細胞を、加湿したSteriCycle CO2細胞培養インキュベーター(ThermoForma)の中で、5%の二酸化炭素(CO2)、37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション期間後、上清を吸引し、細胞を、1.0%のβ−メルカプトエタノールを含む50μl/ウェルのRLT溶解緩衝液(Qiagen)によって覆った。PBMCを含む培養プレートは、RNAの単離手順まで−20℃で保存した。
【0150】
刺激したPBMCからの全RNAの単離
上記に記載したように調製した96ウェルプレートを−20℃から取り出し、室温で解凍した。解凍後、PBMCを、1.0%のβ−メルカプトエタノールを含む50μl/ウェルのRLT溶解緩衝液(Qiagen)中に再懸濁した。RNAの単離は、製造業者の説明書に従ってRNeasy RNA単離キット(Qiagen)を使用して行った。RNAを40μlのRNaseフリー水中で溶出させ、5μlのRNA溶出液を使用して、分光測定(SmartSpec(商標)3000,BIO−RAD)によってRNA濃度を決定した。RNAの質は、RNAを可視化するためのエチジウムブロマイドを含む、1×TAE緩衝液を用いた1%アガロース(Sigma)ゲルでのゲル電気泳動によってチェックした。
【0151】
従来法によるcDNA合成
第1鎖cDNAの合成のために、0.3〜1.0μgの全PBMC RNAについて、プライマーとしてd(T)20オリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応を用いた従来法による逆転写(RT−PCR)を行った。選択したヌクレオチド配列(表1)に特異的なPCRプライマーオリゴヌクレオチド(表2)を使用したPCRによって二本鎖cDNAを合成した。cDNAストック溶液を適切な容量の滅菌脱イオン水(Gibco)中で希釈した。cDNA試料は、合成されたPCR産物について予想した長さを確認するためのエチジウムブロマイドを含む、1×TAE緩衝液を用いた1%アガロース(Sigma)ゲルでのゲル電気泳動によって分析した。
【0152】
RT−PCR反応試料のアリコートをMWG Biotech(Edersberg,Sverige)で配列決定し、得られたDNA配列をNCBI Blastバイオインフォマティックス分析によって確認した。
【0153】
PBMC cDNAのリアルタイムPCR分析
PBMC cDNAを用いたリアルタイムPCRを、検討した遺伝子についてはそれぞれの試料−処理/遺伝子の組み合わせについては3連で、ハウスキーパー遺伝子(γ−アクチン)については2連で行った。二本鎖のcDNAを、選択したヌクレオチド配列(表1)に特異的なPCRプライマーオリゴヌクレオチド(表2)を使用したリアルタイムPCRによって合成した。個々の立ち上がりサイクル数(Cycle threshold)(ΔCt)と相対定量(Relative Quantitation)(RQ)値についてのリアルタイムPCRデータを計算し、供給業者(Applied Biosystems)の説明書に従って7500 System SDS Softwareで分析した。個々の値をExcelにエクスポートし、統計学的に分析した。処理しなかった試料中での遺伝子発現の基底レベルを、個々のΔCt値からのRQ値の計算によってExcelで決定した。
【0154】
それぞれの特定の遺伝子について、すべての平均RQ値を、この遺伝子の基底発現の平均RQ値に対して標準化した。個々の値の分布を評価するために、値の範囲の平均偏差を計算した。値の範囲の平均偏差の指標とともに、標準化した平均RQ値をExcelにプロットした。個々の発現値の分布は、GraphPad Prism version 4.03 for Windows(登録商標),GraphPad Software,San Diego California USA,www.graphpad.comを使用してプロットした。
【0155】
IDX0150で刺激した際のPBMCの遺伝子発現の評価
7個の選択した遺伝子を、先に記載したようにPBMC培養実験において遺伝子発現について分析した。それぞれの遺伝子/患者のペアについて、PBMC培養物を、オリゴヌクレオチドIDX0150を含む、またはコルチコステロイドDexを含む、またはIDX0150/Dexを一緒に含むCpGでの処理のために、6個のアリコート試料に分けた。IDX0150は、25μMおよび100μMの最終濃度で使用し、Dexは、10−10M、10−8M、または10−6Mの最終濃度で細胞増殖培地に添加した。細胞を、先に記載したように48時間培養した。
【0156】
遺伝子発現の結果を実施例2〜8に示す。
【実施例2】
【0157】
IDX0150で刺激した際のPBMCのCD163遺伝子発現の評価
PBMC培養実験の設定は、実施例1に記載したとおりに行った。CD163遺伝子の発現レベルの平均値を図1および4に示す。偏差バーは、健常者(HV)の群およびステロイド抵抗性喘息患者または潰瘍性大腸炎患者(SR)の群における発現レベル値の範囲を示す。平均発現レベル値を、実施例1に記載したように基底発現レベル値に対して標準化した。
【0158】
スカベンジャー受容体は、自然免疫応答に関与していることが知られている。CD163の発現は、抗炎症性媒介因子およびコルチコステロイドによってアップレギュレートされることが示されている(Buechler,2000;Galon,2002)。本発明の実験により、CD163の発現がコルチコステロイドデキサメタゾン(Dex)によって、健常者(HV)のPBMCおよびステロイド抵抗性患者(SR)のPBMCの両方において、用量依存的にアップレギュレートされることを確認し、最初に、いずれの群においても、IDX0150を用いる同時処理によってこのアップレギュレーションが大幅に増大することを示した(図1および4)。この増強作用は、ステロイド抵抗性喘息患者および潰瘍性大腸炎患者(SR)の試料の中ではなおさらに顕著であった。この観察は、両方の試験群におけるIDX0150のステロイド「増強」作用についての証拠を提供する。
【実施例3】
【0159】
IDX0150での刺激の際のPBMCのTsp1遺伝子およびIL1−RL2遺伝子の発現の評価
トロンボスポンジンは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と構造的に関係があり、それらの機能を調節する(Chen,2000)。Tsp1の発現は、グルココルチコイドによってアップレギュレートされることが示されている(Galon,2002)。また、インターロイキン1(IL−1)の有害な作用を制限する抗炎症性デコイ受容体であるIL1−R2は、その遺伝子の中でも、グルココルチコイドによって強くアップレギュレートされるものである(Re,1994;Galon,2002)。
【0160】
PBMC培養実験の設定を、先に記載のとおりに行った(実施例1を参照のこと)。
【0161】
Tsp1遺伝子およびIL1−R2遺伝子の発現レベルの平均値を、それぞれ図2、3(喘息)および図5、6(潰瘍性大腸炎)に示す。Tsp1およびIL1−R2のおよそ3〜5倍の誘導が、10−6MのDexによって明らかになった。この結果から、Tsp1およびIL1−R2のアップレギュレーションを、IDX0150を用いた同時処理によって用量依存性の様式で大幅に増大させることができたことが初めて示された。この作用は、ステロイド抵抗性喘息患者および潰瘍性大腸炎患者(SR)の試料において、なおさらに顕著であった。この観察は、両方の試験群におけるIDX0150のステロイド「増強」作用についての証拠を提供する。
【実施例4】
【0162】
IDX0150での刺激の際のPBMCのTLR2遺伝子、TLR4遺伝子、MKP−1遺伝子、およびTXK遺伝子の発現の評価
PBMC培養実験の設定を、先に記載したとおりに行った(実施例1を参照のこと)。TLR2遺伝子、TLR4遺伝子、MKP−1遺伝子、およびTXK遺伝子の発現レベルの平均値を、それぞれ、図7、8、9、および10に示す。
【0163】
TLR2遺伝子、TLR4遺伝子、MPK−1遺伝子、およびTXK遺伝子は、Dexのみで処理した場合、およびIDX0150とDexとの併用によって処理した場合に、ステロイド抵抗性喘息患者(SR)と比較して、健常者(HV)のPBMC材料中では異なる発現レベルを示した(図7〜10)。
【0164】
この観察は、健常者におけるこれらの遺伝子の発現と比較する場合に、コルチコステロイドでの処理に対する喘息患者の抵抗性についての推定マーカーとしてのこれらの遺伝子の使用を立証している。
【実施例5】
【0165】
ヒトでのパイロット研究
臨床試験は、DNAをベースとする免疫調節オリゴヌクレオチドIDX0150(Kappaproct(登録商標),InDex Pharmaceuticals AB)とコルチコステロイドデキサメタゾンとを含む併用療法の臨床的有効性を検討すること、特に、本発明の1つの実施形態に従うインビトロ方法との間での相関関係を検討することを主目的として進められている。この研究ではまた、上記インビトロ方法に基づいて選択された処理の臨床的有効性も試験される。試験群は、インビトロ方法で上記併用療法に応答することが示されている潰瘍性大腸炎患者からなり、すなわち、これらの患者から得られたPBMC細胞は、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下で選択マーカー遺伝子の発現の増強を示したものである。臨床的有効性は、内視鏡的および臨床的寛解/改善率、組織学的改善、ならびに臨床検査値の変化によって決定される。
【0166】
この試験は、プラセボ対照二重盲検単回投与であり、コルチコステロイドに応答しない、またはコルチコステロイド依存性であって、ステロイド療法が同時に行われた患者とする。
【0167】
使用した服用レベルは、単回の直腸投与として投与した3mgおよび30mgである。
【0168】
特定の実施形態が本明細書中で詳細に開示されてきたが、これは説明の目的のための例として開示されているにすぎず、以下の添付の特許請求の範囲に関する限定とは意図されない。特に、本発明について、様々な置き換え、変更、および改良を、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができることが、本発明者によって意図される。
【0169】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド抵抗性またはステロイド依存性であると思われる患者のための療法を選択するためのインビトロ方法であって、
前記患者から採取される試料から細胞を単離するステップ、
ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において前記単離細胞を培養するステップ、
前記単離細胞において少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および
ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、もしくはその混合物の存在下における健常な人からの細胞の培養物から得られる値に対して、または健常な集団から得られる標準化された値に対して、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを比較するステップを含み、
ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの類似性は、選択マーカー遺伝子が、ステロイド応答性についての潜在的なマーカーであることを示し、結果は、前記患者のための療法を選択するために使用されるインビトロ方法。
【請求項2】
ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの類似性は、選択マーカー遺伝子が、ステロイドの作用に対する再感作についての潜在的なマーカーであることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞において測定される、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子の発現レベルの差異は、選択マーカー遺伝子が、免疫調節オリゴヌクレオチドの追加によって増強されない可能性のある、ステロイド抵抗性についての潜在的なマーカーであることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異なる発現レベルを呈する、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKから選ばれる1つまたは複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステロイドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドの存在下において培養される細胞における選択マーカー遺伝子の少なくとも1つの発現レベルの上昇は、患者が、ステロイド療法が有効であろうということを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、およびIL1−R2の少なくとも1つである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの非存在下における発現レベルと比較した、患者の試料から単離され、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される細胞における選択マーカー遺伝子の少なくとも1つの発現レベルの上昇は、患者が、併用療法が有効であろうということを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の選択マーカー遺伝子は、CD163、Tsp1、およびIL1−R2の中で選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの存在下において培養される、ステロイド抵抗性患者および健常な人の試料からの単離細胞において測定される、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルの差異は、前記ステロイド抵抗性患者が、ステロイド療法から除外され、免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む代替療法にかけられることが有効であろうということを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
選択マーカー遺伝子は、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKから選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞は、血液細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞は、末梢血単核細胞(PMBC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
患者は、炎症性疾患の症状を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
炎症性疾患は、急性または慢性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、乾癬、および気腫から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
療法は、免疫調節オリゴヌクレオチドの投与を含む併用療法または代替療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
併用療法は、ステロイドおよび免疫調節オリゴヌクレオチドの投与を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステロイドは、コルチコステロイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ステロイドは、デキサメタゾンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マーカー遺伝子の発現レベルは、遺伝子特異的プライマーを使用する前記遺伝子の核酸増幅および増幅結果の定量によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
核酸増幅は、リアルタイムPCRおよび配列番号1〜14から選ばれる遺伝子特異的プライマーの使用によって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性の症状を示すステロイド抵抗性患者のための療法を選択するための検査キットであって、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルのインビトロ分析を可能にするための、特異的なプライマーペアおよび使用のための説明書を含む検査キット。
【請求項22】
前記特異的なプライマーペアは、配列番号1〜14の群または遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKの少なくとも1つに特異的な、機能的に等価なプライマーペアから選択される、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記特異的なプライマーペアは、配列番号1〜6の群または遺伝子CD163、Tsp1、およびIL1−R2の少なくとも1つに特異的な、機能的に等価なプライマーペアから選択される、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記特異的なプライマーペアは、配列番号1および配列番号2またはCD163マーカー遺伝子に特異的な、機能的に等価なプライマーペアである、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
細胞を培養するための手段をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項26】
ステロイドの作用に対して細胞を感作するための作用物質をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項27】
ハイブリダイゼーションまたはアニーリングアッセイを実行するための手段をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項28】
ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のステロイド応答性を決定するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項29】
免疫調節オリゴヌクレオチド療法が有効であろうステロイド抵抗性患者を同定するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項30】
免疫調節化合物が、ステロイド抵抗性患者または弱いステロイド応答を有する患者のステロイド応答性を増強するかどうかをスクリーニングするための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項31】
ステロイド療法が有効であろうステロイド応答性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKのいずれか1つの使用。
【請求項32】
ステロイド療法および免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む併用療法が有効であろうステロイド抵抗性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、遺伝子CD163、CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKのいずれか1つの使用。
【請求項33】
ステロイド療法から除外されることが有効であろう、ステロイド応答性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKのいずれか1つの使用。
【請求項34】
免疫調節オリゴヌクレオチド療法を含む代替療法にかけられることが有効であろうステロイド抵抗性患者のインビトロ同定のための試薬を調製するための、遺伝子CD163、Tsp1、IL1−R2、TLR2、TLR4、MKP−1、およびTXKのいずれか1つの使用。
【請求項35】
試薬は、前記遺伝子に特異的なプライマーペアである、請求項30〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
試薬は、前記遺伝子の特異的な領域に相補的であり、前記遺伝子とハイブリダイズまたはアニールすることができるオリゴヌクレオチドプローブである、請求項30〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
炎症性の症状を示す患者における、免疫調節薬剤に対する応答性を決定するためのインビトロ方法であって、
前記患者から採取される試料から細胞の3つの部分標本を単離するステップ、
ステロイド、免疫調節オリゴヌクレオチド、またはその混合物の存在下において前記部分標本を培養するステップ、
各部分標本について、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを決定するステップ、
免疫賦活性オリゴヌクレオチドの存在が、発現レベルに影響を及ぼしたかどうかを決定するために、各前記または少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを比較するステップ、および応答性の基準として発現の程度を使用するステップを含むインビトロ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−505829(P2011−505829A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537899(P2010−537899)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051446
【国際公開番号】WO2009/078793
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】